世界を移住した以上、やらねばならない事が一つある。
それは、就職である。
「陛下が平民と混じって働くなど!」
「今の予は平民だ。働くのは当然の事だ」
幸い、カリュート達はケルト王子のつてがあった。
そして、陛下とフーデル、エルーシュ、雅は文官として就職する事となったのだ。
カリュートと萌子は今まで通り教師である。
さて、ケルト王子が婚姻し、しばしば舞踏会が行われる事となった。
カトレアはもちろん出席を望む。
「カリュート! 出席しますわよ」
「俺は平民だが」
「くぅ、では冒険ですわ! 手柄を立てますのよ」
「最近教師なのに遠出しすぎたからな。抗議が殺到しているから、しばらく真面目に授業をする」
カトレアは唇をかむ。ついに、涙を滲ませて叫んだ。
「貴方は、私が嫌いですの!?」
「割と」
「何故ですの!?」
「あれだけの事をやっておいて、臆面も無く聞けるその神経が羨ましい。今も他国から魂具の被験者が担ぎ込まれているんだぞ」
カトレアはぐっと黙る。
「ならば、私一人でも行きますわ」
カトレアは走り出す。カリュートが追いかける気配はない。仲良くするきっかけにするはずだったのに……。カリュートが関わると、何もかも上手くいかない。
それでも、今更戻る事など出来ず、カトレアは一人で冒険へと向かった。
けれど、カトレアは知らなかったのだ。
今まで、どれほどの困難から、レイフォンや周囲の人間が守ってくれていたかを。
今も、萌子がこっそりと白閃をその影に滑らせていた事を。
そして、しばらく時が過ぎた。
その間、フーデル、陛下、エルーシュは物凄い勢いで出世していた……。
半年ほど立った、その日。
カトレアは、ぼろぼろになって白閃を抱いて帰って来た。
旅は、女一人に優しいものでは決してなかったのだ。
調子に乗って他国まで出向いてしまったカトレアは、人と魔物の悪意に晒され、白閃だけを頼りに帰ってきていた。
「レイフォン……レイフォン……」
赤子のように泣きじゃくるカトレアを、レイフォンは迷うことなく優しく抱きしめた。
「私、知りませんでしたわ。レイフォンが、どんなに守ってくれているか。ごめんなさい。ごめんなさい。レイフォン……」
レイフォンは、辛そうな顔をする。
冒険者の顔とも言えるカトレアのその醜態は、反乱を誘発するのに十分だった。
二週間後。
城を取り囲む冒険者たち。
そして、そこに降☆臨する将軍にまで出世した陛下。
神々しいまでに、輝ける陛下は冒険者達を一掃した。
力と神々しさを示した陛下が第三勢力となってしまうのは、当然すぎるほど当然の事だった。
陛下に王位をと言う言葉まで出てくるくらい、その国の民度はなんというか斜め上に終わっていた。
ややこしくなった事態に、どうしようかな、と全員が思った時。
彼らの真下に魔法陣が現れる!
魔法陣には一つの輝くドアがあり、ばたんとドアを開けて興奮した女が出て来た。
「今、行き場が無いと思いましたね? 思いましたね!? そこで皆さんおめでとう! 新たなる異世界にご招待! やったー! 嬉しー! ついでに神様までランクアップもついてくる! 超お得! おめでとう皆さん、おめでとう、ありがとう、ありがとう! これで私の世界もきっと安泰ですね! さあ、皆さん、おいでになってー」
そうして、カリュート達は世界から浚われた。