仁?何それ美味しいの? 第六話 エンディング×3
赤麒が各州を巡回するのに二カ月もかからなかった。
既に民衆の多くは新たな麒麟を歓迎し、一部の心ある官達も少々の怯えはあるものの賛同している。
各州を収める州候達には、既に武力による鎮圧した残されていなかった。
しかし、人の武力ではどうしようもない差が存在していた。
全ての戦術は見透かされるか正面から突破され、元々民だった兵達は次々と離反していく。
逃げようにも周囲は民衆と離反した兵、妖魔の群れに囲まれて、騎獣も怯えて動かない。
残ったのは他に行く所も無い兵と専横を振るった官達に、逃げ遅れた女官や雑用達。
最後には壁をすり抜けて来る使令達と妖魔に食われるか、赤麒直々に処刑されるしかない。
功国が再統一され、国家としての体裁を持つまで、あっという間だった。
ごぉ…と雲海の近くを赤い麒麟が駆けていく。
その後ろには白い雲が長く伸び、その先は功国へと続いている。
ここまでずっと駆け通しでやや疲れが出ているが、それを推してまでするべき事があった。
「ととと、赤いの!?お前、どうしたんだよ!」
並走する様に使令に乗った延麒が声をかけてくる。
強烈な風で怒鳴る様に話しているが、赤麒はそれに構う余裕は無い。
この先に、いる。
探し求めていたものが、確かにある。
確信と共に、赤麒が更に加速した。
なお、赤麒の真下の城下町では強烈な風や騒音が発生したとの報告が後日の調査で明らかになった。
ズン、と延の王宮に上がり込んだ。
夏官率いる警備達が武器を構えているが、戸惑いと恐れからか、遠巻きに囲んでいる事しかできていない。
その内、面白そうとでも言う様に延王が現れた。
「どうした塙麒?探し物か?」
『無礼を承知して言う。この上に功国出身の者はいるか?』
ガヤガヤワイワイキシャーと騒いでいる周囲を置いて、2人は歩を進めながら勝手に話を進めた。
「ふむ、心当たりはいるが…それがお前の主か?」
『己の主は己だけだが……妙に気になる。』
「…兎も角、案内しよう。」
『使令か騎獣を使え。急ぐぞ。』
そして前代未聞の騎獣と麒麟が王宮内を駆け回るという暴挙の後、赤麒は漸く目指していたものに出会った。
「へ?え、延王様!?一体どうしたんです?」
見習い秋官の使用する一室、そこには一人の青年(仙であるか外見は頼りにならないが)が資料を整理していた。
昨年、延の大学を首席で卒業した秀才。
そして現在の慶国王とその侍従にとっての大恩人。
名を清張、字を楽俊。功国出身のネズミの半獣だ。
赤麒はじっと楽俊の顔を見つめた。
それに何を見出したのかは、本人(麒?)以外誰も解らない。
或いは同族である麒麟になら解るのかもしれない。
赤麒は獣形のままその膝を折り、その頭を楽俊の足元へと下げた。
『御前を離れず、忠誠を誓うと誓約する。』
規格外。
十二国においてその代名詞とでも言うべき赤麒が、初めて常識に則った時だった。
「お…私はまだまだ未熟者です。ここで働いてるのも経験を積んで慶国で出仕するためです。そんな私が…王に、ですか?」
『功国の王気はあなたにある故。しかし断るというのなら、それもまた良し。』
「良くねぇよ!?」
楽俊の断りの言葉に然したる反対も見せない赤麒に、延麒が思わずつっこみ。
しかし外野の騒ぎに赤麒は気にも留めない。
『主上がそう望むのであれば、己が王位を強要する訳にはいかない。』
「え!?いや、そう言う訳にゃ!」
「悩む位ならやってみてはどうだ?」
ここに来て延王が口を挟んだ。
「慶に続いて漸く期待できそうな王が登極するのだ。延としては近所が安定するのは好ましい。援助は弾むぞ。」
面白いもん見つけた、といった具合ににやにやする延王。
あんた絶対この状況楽しんでるだろ!と言ってやりたいが、母のいる生まれ故郷の功国のためにはやらねばならない。
「解った。許すよ。おいらが功国の王になる。」
こうして周囲を騒がせ続けた赤麒の契約は、意外とあっさりと結ばれたのだった。
楽俊は功国にて赤麒の王とは思えない仁に則った治世を続けた。
半獣差別が酷いと言われた功国であったが、赤麒の『半獣と言えば己もそうだ。何だ、己と己の主に喧嘩を売るのか?』の一言で沈静化、表だって歯向かう者は消えた。
また、禁軍は大幅な再編成がなされ、災害援助を専門とする珍しい編成となり、未だ災害の多い国内で多くの民を救う結果となる。
官の方も延国から大量の官を期間限定で借り受け、新人の教育と半獣・海客・山客差別を始めとした悪法の撤廃を始めとした制度改革を行った。
また、不足する食糧などは延国から大安売りで輸入、安定化しつつあるお隣の慶国とも非常に良好な関係を築いている。
赤麒は配下の使令と妖魔を用いて国内の不穏分子の粛清、王の身辺警護を徹底、新たな功国の統治を盤石とした。
余談だが、この主従の統治の方法が後世にて「楽王の故事」と呼ばれ、所謂「飴と鞭」を意味する言葉として広く使われる事となる。
更に余談だが、妖魔の調理法などが確立された後、妖魔の肉が食される際、必ず天帝の他に赤麒への感謝の言葉が捧げられるようになる。
エンディング1 楽俊編
赤麒麟が懐かしい黄海を訪れ、それを発見したのは偶然の事だった。
黄海の奥深く、とある大きな滝の裏にある洞。
そこに見事な桜の木とそこで手を合わせる偉丈夫の姿があった。
腰に佩いた立派な太刀から明らかに一角の武人であると解る男は、その巨躯からは威圧感は無く、代わりに何処か清水のような涼やかな雰囲気があった。
「ん~?なんだお前さん?此処に何か用かい?」
人懐っこい笑みを浮かべる男に、赤麒は無言で洞の奥に進み、桜の木を見上げた。
どれ程の年月を経たのだろうか、その桜、本来は向こう側にある筈のその木は今が旬とばかりに咲き誇っていた。
『立派な桜だ。』
「おう!これはオレが此処に住むようになってから見つけてな。凄いだろう?もうかれこれ400年以上になる。」
赤麒は見事に咲く桜を見上げた。
あぁ、そう言えば向こうにいた頃から桜は大好きだった。
桜を見ていた時は昔感じていた苛立ちも和らぎ、本当に心休まる時だった。
そうだ。桜で思い出したが、家族はどうしたろうか?
こちらに来てからずっと生存競争を続け、理不尽に民を苦しめる要因を潰してきた。
随分と、家族の事を忘れていた。
もう皆、自分の事など忘れてしまったろうか?それとも悲しんでくれたろうか?
赤麒の中に、久しく感じていなかった家族への情が湧き始めていた。
『ここは…墓、か?』
「あぁ、オレの友の松風だ。」
桜の木の下、よく見ると小さな墓石があった。
「松風」と刻まれたそれは古くはあったがきちんと手入れがなされてあった。
『…また来させてもらう。邪魔をした。』
「おう、またな!」
名も告げずに赤麒は去った。偉丈夫も名乗らなかった。
彼らが再会するのは1年後。
赤麒が向こうの世界から帰還した直後の事だった。
そして、主従となった彼らは功国中興の名君として長い善政を敷く事となる。
エンディング2 前田慶次編
赤麒がその漢と出会ったのは、或いは必然だったのだろう。
鍛え上げられた全身から放たれる覇気に、赤麒は口角を吊り上げる。
これ程の手合い、伝説級の大妖魔を前にしても感じた事は無かった!
己と正面から目を合わせ、覇気を叩きつけて来る者はいなかった!
「気に入った。名を名乗るがいい。」
『赤麒と、人は呼ぶ。』
「そうか。では我が名を聞け。そして、その心にしかと刻みつけぇい!」
マントと兜を投げ捨て、漢は宣言した。
まるで世界全てに告げる様なその咆声に周囲のものがギシギシと軋んだ。
「我が名は拳王!貴様を地につける者の名だ!!」
『ほざくなぁッ!!』
この世界最強の生物とも言える両雄が、激突した。
この後、この主従は功国を十二国最大の武力国家へと育て上げ、各国への傭兵派遣業を営む事となる。
「この程度の数で、この拳王が満足するとでも思うかぁッ!!」
『■■■■■――ッ!!』
勿論、自分達も率先して前に出ていた。
エンディング3 ラオウ編
とりあえず感想掲示板で見た奴を文章にしてみた
にしてもそれぞれ個性的過ぎるわwww