原作?そんな道理、私の無理でこじ開ける!
今回からさらに原作設定の崩壊が進みます。それでもいい人のみ見てください。
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「私の名前は織斑一夏。現在11歳だ」
「何言ってるの?一夏」
「男にはやらないといけないときがあるらしいぞ」
前回から4年か。再び相まみえるとは…この四年にあった出来事を紹介しよう。
まずは私の横にいる少女からだな。彼女は鳳鈴音。通称、鈴。私がDr.ブシドーのときに助けた者の一人だ。転校生で、中国から来ていたので日本語がうまく使えず、それでいじめられていた。私はいじめは絶対にゆるさん!それで、うまくやったつもりが彼女の執念に探しだされてしまってな。それ以来仲良くしている。今では大切な者の一人だ。
私を挟んで鈴の反対側を歩いているのはご存知、篠ノ之箒だ。ん?なぜ鈴と一緒にいるかだと?なにをおかしなことを言っている。確かに小学3年生の時に一時期隠れようとしたが、篠ノ之束から全世界に「私の家族とちーちゃんといっくんに手を出したらどうしようかな?かな?かな?」とメッセージが送られて来たので現在も平和に暮らしている。
篠ノ之家の仲もだいぶ良くなった。なに、私は対話のきっかけを作っただけさ。父親の師範と娘の束殿の両方に関係があったからな。少し機会を設けてみた。言い争いながらもわかり合うことができた。束殿は2年前にISのコアを467個作って失踪してしまったが、実は連絡は取れる。
初めは私だけが知っていた。これは客観的に見ると束殿との関係が薄いからだ。篠ノ之家は家族で、姉上は唯一の友達。それに比べ私は、ISの開発に携わったということも公表されていないので、親友の家族という位置づけだ。だから、初めは私だけであったが、世界が誰も束殿の行方を知らないと認識すると、姉上と篠ノ之家族には教えた。これは前もって束殿と決めていたことだ。
束殿は失踪する前に、
「私はこの世界を変えたいんだよ。この世界はいっくんの言い方では『歪んで』いる。その歪みを正す一歩となればいいと思ってる。それに伴う代償はなるべく私が一人で受ける。少しは迷惑かけちゃうと思う。ごめん」
と言っていた。それに師範は、
「私達は家族だ。そして私は父親だ。子は親に迷惑をかけて育つものだ。少しと言わず、いっぱいかけて来い。私達が支えてやる」
その言葉に束殿は涙を流しながらうなずき、いなくなった。
彼女はいなくなる前に私と箒に青い宝石のようなものがはめられたネックレスを渡してきた。曰く、「お守りみたいなものだからずっとつけててね」だそうだ。
私は覚えていたすべての技術を束殿に渡した。それは太陽炉を含めてだ。私は技術家ではなかったのでしっかりと覚えてはいなかったが盟友に熱く語られた断片的な記憶を呼び覚まして伝えた。それを彼女は使えるようにするために研究していたが、完成したかどうかは不明である。
ISができ、俗に言う『白騎士事件』というのが起きてから世界は変わった。女尊男卑の世界が進み、軍もだいぶ変わって来た。ISの国際条約であるアラスカ条約が結ばれ、IS学園が日本にできた。そして、昨年ISのチャンピオンを決めるモンド・グロッソが始まった。第一回の総合チャンピオンは姉上だ。今年ももう始まっている。今日は準決勝だ。順調にいけば今年も優勝であろう。学校があるので、仕方がなく録画したもので妥協している。本当なら行きたいのだが、行ったら行ったで乗りたくなってしまいそうなのでな。自粛している。
「にしても千冬さんって強いね。去年も見たけど、さらに強くなってるんじゃない?」
「当り前であろう。変わらない人間などほとんどいない。……この世界にはな」
人はみな、本来変われるのであろう。私は変われた。あの少年のおかげで。
「そうよね。もう前回より圧倒的だともう他の国は絶望的じゃない」
私の行ったことの後半は聞こえなかったか。その方がよい。この少女たちが背負う業ではないのだから。
「当り前だ。私の姉さんが調整しているのだぞ。あの人の努力も考えれば勝てない理由がないであろう」
箒は自分の姉を尊敬している。姉と比べられたこともあり、劣等感も持ったが、彼女はそれを乗り越えた。私はほんの少し前を向くのを手伝っただけだよ。
「放課後だ!」
「そんなことはわかってるわよ」
今日もいつもの通り3人でいっしょに帰っている。今年は三人とも同じクラスなのでな。迎えに行く必要がなくなったよ。
「今日は早く帰れば姉上の試合が見れるかもしれんな」
「急ぐわよ」「急ごうか」
「速いな」
私が呟いた瞬間彼女達は走り出した。まさに神速だ。
「流石だな」
「うむ」
たった今、姉上の試合が終わった。結果は言わずもがなだ。圧倒的と言った言葉が似合う試合であった。
翌日。まだ昼前。
「箒ー!一夏君!お買い物に行ってきてくれない?」
「了解した」「わかりました」
今の声は箒の母上だ。いつも世話になっているからな。これくらいはせんといかん。
「じゃあ箒はこっちの方に行ってね。一夏君はここ。そこが一番安いのよ」
主婦というものは大変であるな。私自身も姉上のために家事を覚えてはいるが、やはり母というものには遠く及ばない。
「じゃあ、一夏。行こうか」
「うむ」
「ここだな」
いつも買いにきているうちの一つの場所だ。人通りは多いとも少ないとも言えぬくらいのところだ。
「さっさと終わらせて姉上に激励の電話をしようではないか」
午後からは決勝なのでな。私も楽しみにしている。
少し顔をほころばせながら、店に入ろうとした時、後ろから手が伸びてくるのを感じた。
「ふっ!」
一瞬で手の範囲から抜け出すと同時に回し蹴り。相手が倒れたところを抑えつける。
「何者だ」
よく見ると、腰に不自然なふくらみがある。銃だ。そして、手にはハンカチ。たぶん薬品がしみこませてあるのだろう。
「くそっ」
「抵抗は無駄だと思え。主導権はこちらにある。何が目的だ」
周りが騒ぎ初め、警察が駆けてくる。それを見て、引き渡した。次の瞬間。
殺気!
私は立っていた場所から飛び退く。すると、一瞬前までいた場所を何かが通り過ぎていった。銃弾だ。
「二人以上いるというわけか」
銃弾が来た方向から狙撃してきた奴がいる位置を推測。
「そこにネズミがいたというわけか」
ビルの上にいた。私はそのビルに向かって走り出す。銃弾がいくつか飛んでくるがうまく狙いをつけさせないようにし、一気に近づいていく。
ビルに入り、階段を駆け上がる。屋上のドアを蹴り開けると同時に前転。撃たれた銃弾をかわす。
相手が銃を変える。あれは
「ショットガンか…」
私は非常用に差していたナイフを抜く。圧倒的に状況は不利。だが、
全力で横に飛ぶ。相手が銃を向けようとした瞬間に
「ふっ!」
ナイフを投げる。それは敵の手にしっかりと刺さり。
「ぎゃあぁぁぁ!」
痛みで銃を手放す。その時私は既に走りだしており、そのままの勢いで頭を殴りつける。
バコン!っといったいい音がしながら拳をぶつけられた男は10mくらい吹っ飛び、気絶した。
その男が持っていた無線機に連絡が入る。
「こちらβ3.4。ミッション完了。こちらβ5目標の家についた。偵察を開始する」
その男から武器を奪い取り警察に渡す。そして、ほとんど使わない携帯電話を急いで取り出す。まずは箒に電話をかける。定型句となっている留守番メッセージが届く。まずい!
いったん切り、鈴の方に連絡をかける。繋がった。
「めづらしいね、一夏が携帯から連絡をかけてくるなんて。なにか」
私はその声を遮り、
「いいか、鈴。絶対に外にでるな!家で警戒していろ。親にも伝えておけ」
そう言って切り、鈴の家に駆けだす。ここからなら5分で着ける。
鈴の家の近くには一人の男がいた。ふらふらと歩いているように見えるが、鈴の家の近くから離れないようにしている。
その男がバッグから無線機を取り出し、どこかへ通信を開始した。
私はその背後に近付き、通信を聞くことにした。
「こちらβ5、これよりミッションを開始する」
「こちらβ3.4、β1.2から通信がない。ミッションは失敗したものと考える」
「っ!なんだと。たかが子供一人に二人がかりで負けたのか」
「こちらも目標の抵抗が思ったより強力であった。もしかしたら危険かもしれない。早めに終わらせるぞ」
「了解」
そう言って通信を切った男に私は背後から近付き、一撃で急所を突く。
「ぐっ!がはっ」
そう言って倒れた男を先ほど警察からもらった強力な縄で縛りつけ、警察に連絡する。そして、鈴の家に入っていった。
「一夏!」
鈴がこちらを見て涙目で駆けてくる。両親も無事だ。
「無事であったな。よかった」
「よかったじゃないわよ。あんたは無事なの!」
「なに、この通り健康体だ」
「そう。よかった」
ほっとした表情をする鈴。その表情から本気で私のことを心配していたようなので少し無茶しすぎたか、と思ってしまう。
「これから鈴の家族には篠ノ之家の家にいってもらう。あそこなら束殿の作ったセキュリティが働いている。それに日本の護衛部隊も到着しているはずだ」
そう言って私は周囲を警戒しながら鈴の家族を送っていく。そして、篠ノ之家についてひと段落したところで携帯が鳴った。
「いっくん!箒ちゃんが!」
「わかっている。落ちつけ。場所は」
錯乱しているとも言える声をいきなり聞かせてきたのは予想していたが篠ノ之束であった。
「す~う、は~あ。うん、少し落ち着いたかな。場所はそう遠くない。箒ちゃんに付けておいた発信機が役立ったよ」
そう言って場所の説明をしてくる。大した距離ではない。
「いっくん。今、ちーちゃんが向かってる。ドイツ軍が衛星を使って見つけたっぽい。どうする?」
姉上が向かっているということは決勝を放りだしてきているのであろう。それにISも持ってきているはずだ。私が行かなくても解決してくれる可能性が高いし、なおかつ銃すらもっていない私では足手まといになる可能性もある。
だが、
「言うまでもない!箒は私の大切な人の一人だ。私がいかなくてどうする!」
「わかった。箒ちゃんを頼むね」
そう言って電話を切ろうとする。そこに束殿の呟きが聞こえた。
「これが変わることの痛みなのかな…」
私は電話を切り、家を飛び出し、走りだした。