「私の名前は織斑一夏。現在7歳だ!」
「何を言っているのだ一夏?」
「なに、男にはやらねばならぬ時もあるのだよ」
「???」
諸君、久しぶりであるな。前は4歳であったから約3年ぶりということか。
この三年、誠に大変であった。篠ノ之家に行くと、まず束殿のIS作りを手伝い、その後道場で剣道をやるといったことをしていた。そのおかげでIS作りはもう試作機も作り終わり、姉上に渡されている。国にも提出したのだが、相手にされなかったらしい。明後日、ある計画を実行する。これが決まれば世界も驚くだろう。
「そういえばだな、一夏。再来月の大会にはでるのか?」
「む、いや、興が乗らん。道場で稽古をしていたほうがよい」
横から話しかけてくるのは篠ノ之箒、束殿の妹で剣道娘だ。私も剣道はだいぶ上達した。今では、師範とも互角に戦えるようになった。この前、一度だけ大会に出たのだが、なんとも張り合いのない戦いであった。少し気合いをいれるとほとんどの相手が下がってしまってな。簡単に優勝してしまったよ。それ以来もう出てはいない。
「そうか…私は出るのでな。試合の後、アドバイスがもらいたいのだが、いいだろうか?」
「ふむ、それなら了解した。来年の全国大会までに教えられることは教えておこう。同門の仲であるからな」
今年の全国大会では、箒は入賞であった。まぁ、箒が当たった相手が優勝したので仕方がないといえばそうであるが。
箒とは2回目に篠ノ之家に行ったときに会った。初めは父親が同年代の子をほめているのが気に入らなかったらしく、私に挑んできたが、最終的にわかり合うことができた。それ以来、ライバルであり仲間でもある。
そういえば、この3年にあったことを語っていたのだな。IS、剣道以外にも大きなことがあった。
1年前、両親が突如失踪したのだ。家に帰って来なく、電話もつながらず、一時期姉上はパニックに陥っていたが、なんとか立て直してくれた。それ以来、実は篠ノ之家にお世話になっている。流石に女子高校生と小学生だけにしておくのはまずいと思ったのだろう。これには助かったというほかない。
姉上は、自分だけでなんとかしようとしていたので、だいぶプレッシャーがかかっているのがわかった。そこで、師範と束殿にお願いさせてもらった。
ついでに、姉上が思いつめないように、体を動かせるISの試作機を与えてもらった。体を動かすことで少しは楽になってくれたらのでよかった。
「それでは、また放課後会おう」
「ああ」
先ほどまでの会話は小学校への登校中のものだ。去年は一緒だったのだが、今年は箒とはクラスが分かれてしまった。だが、放課後は一緒に帰っている。
「放課後だ!」
「織斑君、静かにしようね」
怒られてしまったか……。
さて、いつもの通り箒を迎えに来たのだが居ない。
「ふむ…」
なかなかめずらしいことだ。彼女はほぼ100%近くの確率で迎えに行くと教室にいる。いなかったのは先生が特別に用事があった一回だけだ」
「失礼、箒はどこにいるか知っているか?」
近くにいた少女に聞くと、
「えっ、ああ、………」
「むっ、どうした?」
「わ、私は知らないよ…」
そう言って逃げてしまった。ふむ、なにかおかしい。教室を出て、別の生徒に聞くと、
「箒ちゃん?ああ、さっきいっぱいの男の子と屋上のほうにいってたよ」
む、これはもしやいじめとかいうやつでは。箒が負けるとは思わんがこれからエスカレートしても困る。ならば私がなんとかしなければ、
「たしかあれを持ってきていたはずだ」
あとは、あれの代わりとなるものがいるのだが、
そう、焦りながら考えていた、私の横を保険医が通り過ぎていった。む、これならば、
SIDE 箒
「やーい。男女」
私はいじめられていた。なぐりかかってもよかったし、たぶんそうすれば勝てただろうがしなかった。
私自身は口下手だが、なるべく友達はほしいとおもっている。それと、ここで問題を起こして両親に迷惑をかけたくない。私が耐えればすむ問題なのだから。
「なにも言わないのかよ男女」
それでも悔しいものは悔しい。でも耐えるんだ私。武士は耐えるものだろう。
そうやって耐えていると、いきなり声が響いた。
「待ちたまえ、少年たち!」
私を含めたみんなが声のした方を向く。そこには変な仮面をし、すその長い白衣を着たやつがいた。
「なんだ?こいつ」
いじめのリーダーが呟く。
「私の名前はDr.ブシドー。卑怯なやつは絶対にゆるさない男だ」
そういいながらよくわからないポーズを取る。これでわかった。一夏だ。あの変な男の子は一夏だ。
「なんだよ、こいつ」
「私のことなどどうでもいい。わたしはいじめはゆるさん。行くぞ」
そう言って走り出す。
それからは乱闘だった。ただし、Dr.ブシドーには攻撃があたらず、いいように反撃されていた。
「こんだけの人数がいたのに」
そう言うリーダーしかもう立っているものはいない。
「成敗!」
そういって、リーダーも倒したのであった。
「無事かね?」
そうかけられた声に私は首を縦にふることしかできなかった。
「そうか、ならばよい。さらばだ!」
そう言って去っていくDr.ブシドーの背中に
「一夏…」
とだけ声をかけると、
「私の名前はDr.ブシドー。決して、織斑一夏とか言う名前ではない!」
そう言って去っていった。その背中を見て、私はもう一度想い直すのだった。
『織斑一夏のことが好き』と……
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グラハム・エーカーって孤児だったらしいですね(ドラマCDより)
そんな彼はまたこの小説では親をなくしてしまう。
親に恵まれないな……
いや、片方は自分が書いてるんだけどさ……