私は、とりあえずGを10倍に値上げして、DもGと同じ値段を要求する事に決めた。これ以上高くは出来ない。低レベル者は死ぬものだ。彼らが払える金額でないと意味が無い、というのが私の考えだ。でなくば、冒険者にする時に黙って復活の準備の儀式を行いはしない。事前に復活の準備の儀式……冒険の書に記載してしまえば、その時点のレベルと死んだとき持っていたGの半分でワープ付きで復活できる。もしもそれをしていなかったら、恐らく死体を持って来て、死んだときのレベルの代金を貰わねばならないのだろう。それに、どの程度から生きかえらせられるのかもわからない。他の宗派では、時間を置くと復活は厳しいという。
私だって同じだろう。
私は人の死を背負える程、強くはない。死体を持って来られるなんて、絶対に嫌だ。
私は、更にいくつも張り紙をする事にした。
「復活の条件。下記の全ての条件を満たさないと、復活は出来ません。また、強い人程、何をするにも高いGとDが必要になりますので、ご注意ください。また、値上げさせて頂きました。・料金をきちんと払う・ルビス様の加護を受けている・死んだ時に冒険者モードがオンになっている・パーティの場合、仲間がきちんと棺桶を持ってくる」
そして、死体を持って縋って来る人に謝り倒し、新米冒険者さんやベテラン冒険者さんに祝福をした。
ベテラン冒険者さんは、私の提示した金額に目を剥いた。
「高いな。前の人と値段が十倍は軽く違っているじゃないか」
「すみません。神殿の連名で、料金の値上げをお願いされまして。それに、ルビス様の加護を受けるには、強い人程たくさんGを払わなければならないんです。宿と復活がレベルで変動します。レベルに見合ったものでないと加護が受けられないので、お願いします」
「ギルドでは逆に強いものほど優遇されるのだがな。しかし、復活の値段と考えれば、それでも安いか。払おう」
「ありがとうございます」
そう話していると、ベテラン冒険者さん達の一人がこんな事を言い出した。
「じゃあさ、せーので掛かった金額見せあおーぜ。強い程高いんだろ?」
これはもめごとの予感!
「あ、あの、同じレベルでもですね。その人の素質によって強さが違うというか! レベルはその人の成長具合を示すといいますか!」
「つまり同レベルで強さが違うって事は、才能から違うってことな。了解了解」
そして、ベテランさん達は金額を見せあったり、レベルを見せあったりする。
初心者さん達も、真似をし始めた。
「お前、俺と同じ強さなのに何そんなに支払っちゃってるんだよ。よわっ」
「なんだと!?」
「なんで貴方がレベル1ですの……!」
「あ、あはは……」
もめもめもめもめもめもめもめ。
揉み合いまで初めてしまったので、外に出て行ってもらう。
なんだか育ちの良さそうな人が、子供を連れて来た。
「実は、この子を祝福して欲しいのです。この子は大事な跡取り。もしも何かあればと思いまして……」
「もうしわけありませんが、改宗を認めない宗派もあると聞きます。ご自分の意志で加護を決められたのでなくば、お断りさせて頂きます。子供の未来が制限される事はあってはなりません。この子が自分の未来を決めるにしても、まだ早いのでは」
「我が家は商人の家系です、神官様。ぼくも将来、商人になります。商人にとって、精霊ルビス様よりすぐれた神がおりましょうか。いたとしても、僕はルビス様を選んだ事を決して後悔しません。弱い魔物をふせぐ結界、怪我や死から守る加護、様々なお店の守護……これだけあれば、十分です」
「そっか。ありがとう。なら、君を祝福するよ。私がもうちょっと信者を増やしたら、また来てね。まだ私の力が弱くて今は転職出来ないけど、冒険者にも、商人って職業があるんだ。インパスを覚えるだけでも、大分役に立つはずだよ。とりあえず、今は戦士の気持ちで祈ってね」
私は心をこめて祈り、少年はレベル1になった。
一週間ほど、忙しい日々が続いた。主だった神殿の会議がその時あったらしいと商人伝いに聞いた。★を貰っているのに呼ばれないのは異例らしいが、私、負けないから!
そして、気がつけば熟練度が★3になっていた。しんかん! しんかんである。
★3しんかん
特技 ルビスの祝福 戦士への転職の儀式 武道家への転職の儀式 僧侶への転職の儀式 ルイーダへの転職の儀式 銀行への転職の儀式 宿屋への転職の儀式★3 武器屋への転職の儀式★3 防具屋への転職の儀式★3 道具屋への転職の儀式★3 結界師への転職の儀式★3 復活アイテムの作成 解呪の儀式
技術 結界術 魔力弾
僧侶が出来る! これは素晴らしい事である。それに、結界師。これは要するに、10年後、魔物が溢れた時にそこで街を作る技術だ。あんまり大群で結界を攻撃されると破れちゃうけど、侵攻が無い限りは大丈夫。すごいぞー!
早速、私は周囲の教祖達も招いてパーティーを開く事にする。
あ、でも、まだ結界師は必要ないよね。へっくしょん、まものさんも呼ぶし、これは黙っておこう。
魔力弾も嬉しい。レベルがあんまり上がっていないから。そうだ、そろそろダンジョンも落ち着いたようだし、皆を誘ってダンジョンに行こう。パプワくんがいるから、きっと大丈夫。あそこの信者さんちょっと怖いけど、まあ大丈夫大丈夫!
私が開いたパーティには、沢山の信者さんが来てくれた。特に商人さんは、商売のチャンスと張り切って来てくれた。
早速転職の儀式を行う。
だが、ここで予期せぬ事が起こった。新人商人さんへの商人★3への転職の儀式が失敗したのだ。普通の商人さんは問題なく転職できた。
どうやら、隠しパラメーターのような物があるらしい。今はいいけど、熟練度が上がってきたらきついな……。
「先輩は転職できたのですし、私の腕が足りないのでしょう。修行して出直してまいります。今の私は、つかいっぱしりで十分という事です」
「ごめんなさい。私達の装備は商人さん頼りですから、期待しています」
私はぺこりと頭を下げる。けど、てつのつえを得たよー! ひのきのぼうからクラスチェンジで来て本当に嬉しい。
皮のドレスと共に私が見せびらかすと、皆微笑ましくお祝いしてくれた。
リュリュは予備の武器としてブーメランを買っていた。あれは複数に攻撃できるからいい物だ。
道具屋では、満月草が出た。これで、怪我、毒、マヒ、全てをカバーする事になる。
「まだ一週間だが、ルビス様の武器は壊れないのが良いな。割と乱暴に使っているんだが。ルビス様を一旦信仰すると、他の神への改宗はできなかろうな。勝手が違って戦場ですぐに死ぬのがオチだ」
「えへへ。ルビス様は本当に偉大なんだから!」
「私どもとしては、武器は壊れてもらった方がいいのですがね。その分高くしましょうか」
「げぇっやめてくれ! 俺はただでさえレベル高くて余裕が無いんだから」
「ダンジョンに泊まり込みで稼げばいいでしょう、稼げば。これで今までよりもさらに奥で宿を開設できるようになりますし」
「そこもどうせ高いんだろ」
「ばれましたか」
笑い声で満ちる。
私は、更に場を明るくするべく言う。
「職業増えたよー。武道家と僧侶になりたい人は並んで―」
「武道家はわかるが、僧侶?」
「ホイミが使える人の事。ちょっと弱くなるけどね! ★8になれば、仲間とパーティ登録して、仲間のHPが0になった時にザオラルで生きかえらせることも出来るよ。半分の確率だけど、何度も掛ければ大丈夫。これだとタダ!」
「それは誰でも転職できるのか!?」
リュリュが、勢い込んで聞いた。
「えっもちろん適性はあるけど、大丈夫だと思う。MPがちゃんとあれば、ね」
なんか大騒ぎになりました。
「★はどうやったら8になるんだ!?」
「戦っている最中に増えたが」
わあわあと話しあう冒険者達。
「ああ、自分と同格以上の敵をいっぱい倒したら増えるよ! 頑張って戦ってね。僧侶は戦士と組むといいと思うよ。僧侶は回復を使える分弱くなるし、戦士は丈夫だから、守ってもらうの。喜んでもらえて、良かったぁ。ルビス様、将来国教になれるかな?」
照れながら私が言うと、商人さんは真剣な顔をして言った。
「いずれは……潰されなければ、必ず台頭するでしょう。しかし、貴方の力は、あまりにも便利すぎて、複数の勢力に喧嘩を売るものです。私達商人ですら、武器が不滅というのは非常に痛い。これからは、身辺の護衛をつけた方がいいでしょう。それと、他の神殿に寄付をしなさい。とにかく、敵を作らない努力をすべきです。……この国の国教と戦って勝つという事は、決して楽な道でも、綺麗事でもない」
な……なに。どういう事? そんな真剣な顔をして言う事なの? 怖いよ……。