*四課はともかく、五課はフィクションです。 奇怪な事件が、現場を検証しに来た刑事を悩ませていた。 まるで猛獣に食いちぎられたかのような死体。 「こりゃあ……」 そう呟きつつ、どう報告書を書いたものかと悩んでいたところに、現場にはいまいちそぐわない人物が現れた。 女性用のビジネススーツで身を固めた、妙齢の美女。 見た目は日本人なのに、雪のように白い髪が印象的だった。 「現場の方に申し上げます。この事件は捜査部第六課の預かりとなります。速やかに引き継ぎをお願いいたしますわ」 噂には聞いたことがあった。現在の表向きの組織図には乗っていない、刑事部捜査第六課。 四課が独立部署となり、電子犯罪が二課から独立して暫定的に五課として成立していく中、新たな設けられた謎の部課。 何故かその組織員のほとんどが女性というその部署は、極端な秘密主義で内輪には知られている。 そしてその部課が、今彼が見ているような、超常現象的な事件を主に扱うという事も。 現職刑事としては、厄介事から遠ざかれたと喜ぶべきなのか、真相を究明する機会が失われたと嘆くべきなのか、思いは複雑であった。 「以上が現場の状況です」 場所は変わって、とある秘密の場所で事件の様子を報告する、白髪の女性。それを受けるのは、ショートカットのいかにも切れ者らしい40代の女性。だがその容姿は20代で通用しそうなくらい若々しい。 「ご苦労様、三国主任」 「最近増えましたね、魔人や落ちた魔女による被害が。リリアンの小笠原さんや聖應の十条さんも頑張っているのですが、なにぶん最近は……」 「仕方ないわよ。現役を担ってくれているのは、中高生の少女達なのだから。私たちも昔のことは言えないけど、同じようなものだったでしょう?」 「はい。でも歯がゆく感じることも」 「先輩としてはね。でも、信じて成長を待つのも先達の努めよ。あ、報告書も完璧ね、さすが三国主任。かつての『白の巫女姫』ね」 「それを言ったら管理官は……」 「お願い。あなたがそれを知っているのはわかるけど、蒸し返さないで。私だって黒歴史の一つはあるのよ」 「わかりました。では失礼いたします、鹿目管理官」 白髪の女性……美国織莉子主任が帰るのを見届けた鹿目旬子管理官は、世の無常に思いをはせつつ独りごちた。 「女神まどか……世が世なら我が娘であったって言う神様。世間は今でも理不尽に満ちていますよ」 捜査六課……別名を魔法事件課。 魔獣や魔人、魔女による犯罪を世間から秘匿するための特別部署である。 その係員は、全て『元魔法少女』に限られている。 そんな世界を眺める女神様達は。 「なんでこんな世界に」 「未来の女神様の権能で、魔法少女の『引退』が可能になりましたからね~。そりゃ社会的にもひっそりと認知されますよ」 「でも何あの、『スール』とか、『エルダー』って」 「心を合わせられるパートナーを、積極的に作るために、魔法少女の存在を知る女学校が試行錯誤した結果だって」 「別の所には、なんかやたら熱い2人もいたし……」 「ああ、あの『一人一人は小さな火でも、2人合わせれば炎となる』って言ってイグニッションしていたペアですか? 強かったですね~、あの2人」 「おかげで沖縄の守りは万全でした。あそこって基地がらみとかでストレス多いから、魔獣が魔人に変化しやすくて大変なのに」 「……勝手にして」 女神の悩みは、まだまだ尽きないようだった。