「あなた、まどかはお泊まりだって」 「やれやれ、まあ、気持ちも判るけどね」 「だとすると、いけるわね。承諾の返事しておくわ」 とある酒場で、二組の夫婦がテーブルを囲んでいた。 「いやはや、信じられないような本当の話ですな」 「ええ、私も何かと思いましたよ」 二組の夫婦は、まだ若く見える二人と、中年の二人。 女性二人がどちらもやり手のキャリアウーマン的な雰囲気なのに対して、男性は典型的な職人バカと人の良さそうな若い男性。 「全く、死んだはずの娘からのメッセージとは何事かと思いましたが、まさか平行世界で生きていたとはねえ」 「うちの娘なんか、どうも神様になってたそうで」 男性二人の会話は、どこかぶっ飛んでいる。 「しかし○○商事の鹿目さんとこんなところで接点が出来るとはねえ」 「それを言ったら、添田さんこそ伝説の先輩じゃないですか」 「所で今入り用の仕事はあるの?」 「いえ、今のプロジェクトでそちら様の仕事になるようなものは残念ながら。でも、もう少し早くお知り合いになれていたら」 対して女性二人はどうもビジネス臭い話になっていたりする。 「おい母さん、そりゃ鹿目さんはおまえが気にしていた人かもしれんが、今する話じゃないだろ」 「はいはい。わたしもつい、ね。もしくすぶってたら、絶対引き抜くって狙っていたこともあるし」 「私も今の仕事場に不満があったら乗ったかもしれませんね」 「詢子さん、今はその話じゃないでしょう」 「それもそうね」 どうやら話は脱線していたらしい。 「真面目な話、うちの娘が何か迷惑をかけたようで」 「いえこちらこそ」 「まあ……うちの本当の娘は、もう死んでますからあれですけど、そちらさんはこれから巻き込まれるというか、踏み込む訳でしょう?」 「ええ。私の娘は、こんなことになったらら絶対引かない子ですし」 「いい子を持つと親は大変なのよね」 「たぶん止めても無駄でしょうし。黙って見守りますよ」 「そうそう、そういえば親を亡くして子供だけで生きている子が三人もいるらしいですわね」 「ええ。一人は親の遺産もありますからまだましですけど、残り二人はどこの紛争地域の子供だって言う生活しているみたいで」 「まあ、どうなっているか、様子は見ないといけませんね。すぐに調べましょう」 「全く、子供が頑張っているのに、大人がなにも出来ないって言うのもいやなものですな」 「僕たちに出来るのは、信じることだけですからね」