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No.27882の一覧
[0] 【一気に逝ったよ~ッ!】永遠のほむら(魔法少女まどか☆マギカ)【本編アフター再ループ】【完結】[ゴールドアーム](2012/01/07 01:52)
[1] プロローグ[ゴールドアーム](2011/06/20 04:38)
[2] プロローグ・裏[ゴールドアーム](2011/06/20 04:28)
[3] 真・第1話 「私はなにも知らなかった」[ゴールドアーム](2011/07/13 00:05)
[4] 真・第2話 「次は、絶対助けてあげる」[ゴールドアーム](2011/07/13 00:05)
[5] 真・第3話 「先輩、よろしくおねがいします!」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:40)
[6] 裏・第3話 『契約は成立したよ』[ゴールドアーム](2011/07/13 00:06)
[7] 真・第4話 「これからよろしく」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:41)
[8] 真・第5話 「ケーキ、おいしいです」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:41)
[9] 真・第6話 「行くわよ」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:41)
[10] 真・第7話 「あなたを知りたい」[ゴールドアーム](2011/07/05 03:05)
[11] 真・第8話 「とっても恐い。だけど」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:42)
[12] 真・第9話 「魔法少女の、真実よ」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:42)
[13] 真・第10話 「私のあこがれでしたから」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:42)
[14] 真・第11話 「聞かせて。あなたの、お話を」[ゴールドアーム](2011/07/05 03:04)
[15] 裏・第11話 「それ、どういう意味なの」[ゴールドアーム](2011/06/20 04:42)
[16] 真・第12話 「なんで、ここに」[ゴールドアーム](2011/08/29 20:52)
[17] 裏・第12話 「ごめんなさい……先輩」[ゴールドアーム](2011/06/23 02:26)
[18] 真・第13話 「だから信じるわ」[ゴールドアーム](2011/06/24 15:32)
[19] 真・第14話 「どうしてこんなことに」[ゴールドアーム](2011/06/25 15:49)
[20] 真・第15話 「お姉さんになって貰います」[ゴールドアーム](2011/06/28 05:00)
[21] 真・第16話 「私が迷惑なんです」[ゴールドアーム](2011/06/28 05:00)
[22] 裏・第16話 「ただ一人彼女だけが」[ゴールドアーム](2011/06/28 05:00)
[23] 真・第17話 「全てが冗談ではないのですよ」[ゴールドアーム](2011/07/05 03:11)
[24] 真・第18話 「それが私の名前」[ゴールドアーム](2011/07/12 01:27)
[25] 真・第19話 「なんであなたが魔法少女なんですか」[ゴールドアーム](2011/07/17 16:20)
[26] 真・第20話 「もう引き返せない」[ゴールドアーム](2011/07/24 05:14)
[27] 真・第21話 「人違いですね」[ゴールドアーム](2011/10/30 14:36)
[28] 真・第22話 「私は……知りたい」[ゴールドアーム](2011/07/31 19:24)
[29] 真・第23話 「甘い事は考えない事ね」[ゴールドアーム](2011/07/31 23:33)
[30] 裏・第23話 「それじゃ、駄目なんだよ」[ゴールドアーム](2011/08/07 19:46)
[31] 真・第24話 「ここは、私の望んだ世界ではない」[ゴールドアーム](2011/08/17 19:42)
[32] 裏・第24話 「早く気がついてね」[ゴールドアーム](2011/08/17 19:42)
[33] 真・第25話 「変な夢って言うだけじゃない」[ゴールドアーム](2011/08/28 17:52)
[34] 真・第26話 「もう私は、決して……ならないわ」[ゴールドアーム](2011/09/19 10:33)
[35] 真・第27話 「とっても恐くて、悲しくて……でも」[ゴールドアーム](2011/09/14 10:02)
[36] 裏・第27話 「これで潰してあげる」[ゴールドアーム](2011/09/19 10:47)
[37] 真・第28話 「ひとりに、しないで」[ゴールドアーム](2011/09/27 12:33)
[38] 真・第29話 「絶対、これ、夢じゃないよね」[ゴールドアーム](2011/10/11 13:54)
[39] 真・第30話 「そんな他人行儀な態度だけは、とらないで」[ゴールドアーム](2011/10/23 19:09)
[40] 真・第31話 「あたし……恭介が好き」[ゴールドアーム](2011/10/30 14:37)
[41] 真・第32話 「これが、あたしの、力」[ゴールドアーム](2011/11/06 22:49)
[42] 真・第33話 「その性質は飢餓」[ゴールドアーム](2011/11/28 00:24)
[43] 真・第34話 「ゆえにその攻撃は届かない」[ゴールドアーム](2011/11/28 00:25)
[44] 真・第35話 「「あきらめてなんてやるものか!」」[ゴールドアーム](2011/12/04 21:45)
[45] 裏・第35話 「全てを知るというのも、つらいものよね」[ゴールドアーム](2011/12/04 21:45)
[46] 真・第36話 「希望は、どこから生まれると思いますか?」[ゴールドアーム](2011/12/11 20:04)
[47] 真・第37話 「それはきっと、素敵な世界なのでしょうね」[ゴールドアーム](2011/12/18 23:54)
[48] 真・第38話 「悪いけど、その願いは通せないのよ」[ゴールドアーム](2011/12/18 23:55)
[49] 裏・第38話 「わたしを見ていてくれたんでしょ」[ゴールドアーム](2011/12/18 23:55)
[50] 真・第39話 「私も考える」[ゴールドアーム](2012/01/04 20:39)
[51] 裏・第39話 「僕たちに出来るのは、信じることだけですからね」[ゴールドアーム](2012/01/04 20:39)
[52] 真・第40話 「お願い、します」[ゴールドアーム](2012/01/06 00:13)
[53] 真・第41話 (……わかんないよ、ほむらちゃん)[ゴールドアーム](2012/01/07 01:48)
[54] 真・第42話 「契約しよう、キュゥべえ。私の祈りは――  new![ゴールドアーム](2012/01/07 01:30)
[55] 真・第43話 「これが、私の答えだよっ!」 +new![ゴールドアーム](2012/01/07 01:39)
[56] 神・第0話 おまけ的なエピローグ Last![ゴールドアーム](2012/01/07 01:48)
[57] 謎予告[ゴールドアーム](2014/07/18 17:39)
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[27882] 真・第17話 「全てが冗談ではないのですよ」
Name: ゴールドアーム◆63deb57b ID:d108ff8c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/05 03:11
 滝の上の遠征は、結局もう一日延長されて終わった。
 翌日はとにかく狩れるだけの魔女を連戦して狩り、滝の上町の沈静化に努める。
 同時になにをしたのか、ちえみは杏子に一枚のカードを手渡していた。
 
 「この中のお金、いくら使っても文句言いませんから、泥棒は止めてください。
 施しを受けるのが嫌だって言うなら、いずれ返してくれればいいです。
 あ、後そのカードは家族用のキャッシュカードですから、返却とかは気にしないでください。暗証番号は……」
 「……判ったよ。借りとく」
 「ついでにこれも渡しておきます。大人の名前が必要になったら、これ見せて連絡するように言ってください。後どうしても泊まる所無くなったらこの住所に来ればいつでも泊めてあげます」
 
 渡されたのは、ちえみの両親の名前その他が入った名刺だ。
 
 「全く、押しが強いったらありゃしねえ……」
 
 ぶつくさ言いながらも、突き返しはしない杏子。
 ほむらはそんな杏子にそっと耳元で囁く。
 
 (お金はちゃんと払って、子供が一人という所に疑問を持たせないように魔法を使えばいいのよ)
 (あ、その手があったか)
 (あなたの場合はホテルより漫画喫茶とかの方が気楽でしょうしね)
 (確かにな。ホテルは飯たけーし)
 
 「なにこそこそ話しているんですか、先輩」
 「別に大したことではないわ。そんなに悪い事じゃないから安心しなさい」
 「という事は少しは悪い事なんですね」
 「そこは否定しないわ。まあ、本来悪くはないけど世間では悪いと見なされる程度の事よ」
 「いまいち信用おけませんけど、そこは先輩を信じます」
 
 む~っ、という感じてほむらと杏子を睨むちえみ。
 
 「いいですか。先輩は信じますけど、杏子さん、絶対これ以上悪い事しないでくださいね。お金なんかまた稼げばいいだけですけど、悪い事は取り返し付かないんですよ」
 「ったく……わあったよ。無駄にも使わねえ。けどとりあえず借りとくわぁ」
 「もし泥棒したら、強制的に養子にした上でうちで責任持って被害者に弁済しますからね」
 「それ、なんか違わねえか……?」
 
 もちろんおかしい。だが、ちえみの迫力には、それを本当にしかねない妙な説得力があった。
 そしてほむらには、まともに罰せられるより、杏子にはその方が堪えるという事がよく判っていた。






 そして、転校の日がやって来た。
 
 「暁美、ほむらです」
 
 もう何度したか判らない挨拶。目玉焼き談義の後に付け足されたような紹介で、ほむらは名を名乗る。
 そして座席に着くのだが、今回は少し違和感を感じた。
 視線を感じる。二人分プラス気配で。
 視線の主はすぐ判った。まどかとさやかだ。明らかに他のクラスメイトとは違う視線を向けてきている。
 そしてもう一つの気配、これは魔法少女のものだ。となれば相手はマミしかいない。
 席について授業が始まった所で、マミからのテレパシーが来た。
 
 『ありがとう暁美さん。あなたのおかげで助かったわ』
 
 助かった? その言葉に違和感を持つほむら。
 マミがこの時期危機に陥るような相手はシャルロッテしかいない。しかもそのオリジナルをここに来る前に黒幕ごと討伐してしまったので、見滝原病院での一幕を歴史から消してしまったと思っていたのだが。
 だとするとどんなイレギュラーがあったというのか。
 
 『危うくあなたのクラスメイトが魔女に食べられちゃう所だったし』
 
 必死に動揺を押し隠すほむら。
 
 『よければ授業中で悪いけど、話を聞かせて。このままじゃ気になって集中できないわ』
 
 テレパシーではそう言いつつ、指名されたほむらは黒板ならぬ白板へ向かう。
 すらすらと答えを書きながらも、思考の大半はマミとのテレパシーに向かっている。
 
 『あなたからの話を聞いた後、改めて学校で素質の有りそうな子を調べてみたの。そうしたら結構いるものだったのね。二人同じクラスだったのは今そちらにいる二人だけだったからこの子達が『縁』のある子だって判ったけど、他にも何人か素質の有りそうな子がいたわ。
 特に一人気になる子がいたんだけど、残念ながらその子は不登校気味で、見つけられたのも偶然だったの。私と同じ三年で……名前は、確か、呉……呉キリカって言ったかしら』
 
 その言葉を聞いた瞬間、ほむらは板書中にもかかわらず硬直してしまった。
 
 「どうしたのかね」
 
 数学の教師に声を掛けられ、慌てて計算の続きを再開するほむら。
 キリカ……その名前には覚えがあった。
 長いループの中での、ただ一度のイレギュラー。ほむらが唯一、ワルプルギスの夜を迎える前に時を戻したあの時。
 白い魔法少女、美国織莉子。ループの中でただ一人、鹿目まどかの真実を知って、彼女を殺害した女。
 それに付き従っていた魔法少女、学校襲撃の際、自分たちの目の前で魔女化した、おそらくは魔法少女殺しの実行犯。
 彼女は織莉子に、『キリカ』と呼ばれていた。そしてあの事件の時、カメラに写った姿は……
 
 (見滝原中学の制服を着ていた)
 
 うかつだった。いや、何故思い至っていなかったのか。ループの中でも、あれは一度だけのイレギュラーであり、後のループにおいても魔法少女殺しの黒い魔法少女はいなかった。
 だがそれは、イレギュラーが一度だけである事を証明するものではないのだ。
 
 『その子には少し気をつけておいてくれるかしら。もし魔法少女になっていたとしたら、ちょっと気になる事があるから』
 『……あなたの並行世界記憶で、何かやらかしたのかしら、その子。一応気には留めておくけど、たまにしか学校に来ない子みたいだから、接触は難しいわ』
 『そう。ありがとう。無理はしなくていいわ』
 
 ここでちょうど答えを書き終えた。
 教師が解説を加えていく。
 
 「で、こうなるわけだが、暁美君」
 「は、はい」
 
 ここで教師に声を掛けられるなど長いループでも初めてだったので、思わず返事がうわずるほむら。
 
 「解法も見事だが、ここの記号を書き間違っておる。前後を見れば単なる書き間違いである事はすぐに判るが、ケアレスミスには気をつけたまえ。特にこのような長い解法においては、よくある事だから、皆も一度きちんと見直す癖をつけるように」
 
 ほむらは真っ赤になって下を向いていた。
 
 
 
 休み時間、今までのループとは少し違った事になった。
 取り巻く人の数が倍近かったのだ。なぜだかさっぱり判らず、さすがに少しパニックになりかけていた所に、救いの神が現れた。
 
 「みんな、暁美さん、心臓の病気だったからまだお薬飲まなきゃいけないんだ」
 「気持ちはわかるけど、一旦解放してやってよ」
 「私からもお願いしますわ」
 
 まどか、さやか、仁美の三人だった。
 
 「あ、そうなの」「ごめんなさい暁美さん」「またお話ししたいですわ」などと言いながら、クラスメイトが散っていく。
 
 「あ、暁美さん、薬飲まないといけないんでしょ? 保健室の場所わかる? 私、保健係だから、案内するよ」
 「心配だからあたしも付いてってやるよ」
 「わたくしはクラス委員ですし」
 
 何故かなし崩しに四人で保健室に行く事になってしまった。
 事態の変わりっぷりに、さすがにほむらも少しパニック気味になった。
 というか、元々本来のほむらは今のようなパニック気質だ。長いループで慣れきってしまったからこそ、いつものクールビューティーが保てたと言ってもよい。
 実際こんな展開は全ループを通して初めてである。
 しかし爆弾はまだ爆発すらしていなかった。
 
 「あ、あの、暁美さん」
 
 道すがらそう話しかけてくるまどか。
 
 「ほむら、でいいわ、鹿目さん」
 「あ、じゃああたしもまどかって呼んでいいです」
 「あたしもさやかでいいよ」
 「わたくしも仁美、と呼んでくださって結構です」
 
 なんだこれは、ずいぶん好感度が高いわねと、ゲームのような事を思ってしまうほむら。
 そこに、
 
 「あの、ほむらちゃんも、マミさんと同じ魔法少女なんですよね。マミさん、アドバイスのおかげで助かったって言っていました」
 
 特大の爆弾が炸裂した。
 ふっ、とほむらの意識は白くなっていった。
 
 「きゃあっ、ほむらちゃん!」
 「ちょ、しっかりしてほむらっ!」
 「みんなで保健室へっ! 発作かも」
 
 
 
 
 
 
 
 ほむらが気がつくと、保健室だった。よく知っている保険医の先生が、心配そうにこちらの顔をのぞき込んでいる。
 
 「大丈夫? 暁美さん。幸い心臓の発作じゃなかったけど、まだ無理は禁物よ。一時的な貧血みたいだったから、もう大丈夫だとは思うけど、くらくらしたりしない?」
 「……はい、大丈夫です」
 「もうすぐお昼だから、鹿目さん達にお礼を言うといいわよ」
 「はい」
 
 今度の返事は、微笑みと共にであった。
 
 
 
 四限目のチャイムが鳴って少ししたときに、ほむらは教室に着いた。
 教室に入るとクラスメイト達が寄ってくる。
 
 「あ、大丈夫でしたか暁美さん」
 「ごめんなさい、いろいろと」
 
 心配そうに言葉を掛けてくるクラスメイトに、ほむらは聞く。
 
 「あの……鹿目さん達は」
 「あ、彼女たちなら屋上で集まってご飯食べていると思うわ。最近先輩の方と仲良くなったとか言ってたし」
 「あ、巴先輩でしょ? あの人素敵なのよね」
 
 ほむらは頭痛がしてくるのを感じながら、すっと立ち上がった。
 弁当箱を取り出し、クラスメイトに礼をしてから教室を出る。
 屋上に向かいながら、今回はずいぶんと様相が変わっていると思い耽る事になった。
 
 
 
 屋上に着くと、そこではマミ、まどか、さやか、仁美の四人が仲良くお弁当を広げていた。
 するとこちらに気がついたマミが声を掛けてくる。
 
 「あ、暁美さん、もう大丈夫なの?」
 「ええ。もう平気よ。倒れたのも心臓が原因じゃないから安心して」
 「あ、よかった~」
 
 それを聞いてまどかが安心した声を出す。
 
 「さ、こちらへどうぞ」
 
 仁美が場所を空けてほむらを誘った。
 誘われるままにほむらは腰を下ろす。
 何となく柔らかい雰囲気のまま、それでも言葉だけは鋭くして、ほむらはマミに聞いた。
 
 「所でマミ、これはどういうことなの」
 「あら、あなたはこうなるって予想していたと思っていたけど、違ったの?」
 「いろいろと。だから最初から話が聞きたいわ」
 
 聞いた話はある意味頭が痛く、ある意味大変危険な綱渡りであった。
 なんと今回の世界では、まどか、さやか、仁美の三人が、既にシャルロッテに襲われていたというのだ。
 理由は不明だが、今回シャルロッテの出現が一週間近く早まっていたのだ。
 そのため、いつもなら今日の放課後にゲルトルートの結界と接触するのが魔法少女との初会合になる所が、まどか達が恭介のお見舞い中に結界発生、危うくそのままになる所だったというのだ。
 たまたままどか達の話を聞いてマミが様子を見ていなかったら、間違いなく間に合わなかったという。
 そしてまどか達はキュゥべえとも接触。これは後でキュゥべえからほむらが聞いたことも含むのだが、キュゥべえはほむらとの約束があるため二人をそれほど積極的には勧誘しなかった。が、まどかとさやかに魔法少女の素質がある事は告げたという。後、もしマミが間に合わないときは契約を勧めるつもりだったとも。
 そしてまどかもさやかも契約に乗り気になっていた。仁美や恭介がいたせいもあるかもしれない。
 実際さやかは恭介の怪我を治せるのか聞いていたという。
 そしてそんな二人の様子を見て、マミにはほむらの危惧が判った。
 特にさやかと恭介の関係の危うさに。
 そのため、マミはまどかとさやかだけではなく、仁美と恭介にも魔法少女となる事の重さを教えたという。ほむらの事はその話の流れで隠せなくなってしまったのだとか。
 幸いシャルロッテは、マミが一旦ひどい怪我を負わされたものの撃退できたという。
 
 「再生の魔法と、弱点の事を教えてもらっていたおかげよ」
 
 マミは真顔でほむらに礼を言う。
 
 「実際、鹿目さんのお弁当に、チーズカツが残っていなかったら倒しきれなかったかもしれなかったわ」
 「なんかやたらにまどかばっかり狙っていたから、あの化け物」
 「わたくしは才能がないせいか、今でも夢を見ていた気がするのですけど、命をマミさんに救われたのは確かです」
 
 まどか達も口々に言う。
 
 「その辺の事って、ほむらちゃんがマミさんに教えてくれていたんでしょ? だとしたらほむらちゃんもあたし達の命の恩人だよ」
 「そうそう。おまけにクールかと思えばちょっとドジな所もあるし、冷たいかと思えば可愛いし。ギャップ萌え?」
 
 最後のさやかの言葉を聞いて、ほむらはようやくなんで休み時間の人が倍増したのかに思い至った。
 多分、外から見ると、恥ずかしがって下を向いていた自分は可愛かったのだ。
 内心げんなりすると同時に、何故か血がほおに集まってしまっていた。
 
 「あら、ほむらさん、真っ赤ですわ」
 「う……これはくる。萌える」
 
 仁美とさやかにからかわれ、ほむらの調子はますます狂うのであった。
 
 
 
 そして放課後。
 まどか達五人は、ショッピングモール内のバーガーショップで、かしましくもお茶会をしていた。
 まどか達三人が、もう少し詳しく魔法少女の事を聞きたいといったのだ。
 ちなみにキュゥべえもちゃっかり参加していたりする。
 
 「でも残念ですわ。何故私にはキュゥべえちゃんが見えないのでしょうか」
 
 仁美が少しわざとらしい態度でいう。
 
 「その方がいいわよ。魔法少女になるというのは、一見かっこよさそうに見えても、その実体は命を売り渡す悪魔の契約と同じなのだから。そんなものに縋るのは、どうしようもない馬鹿か、それだけの願い、祈りを抱えている人だけよ。そしてそういう人は、たいていが悲惨な目にあっていたりするものなのよ。私然り、マミだってそう」
 『ちなみに仁美の場合は、環境が満ち足りていてエントロピーを覆すほどの祈りを潜在的にも持っていないからだね。実際の所、単なる才能だけなら、君たち思春期の少女はほとんどが魔法少女になる事は可能な潜在能力を持っているものなんだ』
 「ってキュゥべえが言ってるよ、仁美ちゃん」
 
 まどかが通訳をする。
 
 『だから仁美の場合、環境に何か変化があって、強い思いを抱いたら、その時はぼくが見えるようになるかもしれないね。ただ、そういう場合、起きているのはたいていが悲劇だから、ぼくとしてもそんな事は望まない方がいいと思うよ』
 「だって」
 「そうですの……私の場合だと、会社が倒産するとか、そう言う事になるわけですね」
 『そうだよ。そういう環境の激変が原因で僕たちの存在を感じ取れるようになる少女はそれなりに存在するし』
 「でも、もし私がキュゥべえの存在を見えるようになったとしたら、おそらくは原因なんかほっぽり出して恭介さんの回復を願ってしまいそうですわ」
 
 そういう仁美の事を、さやかが複雑そうな目で見つめていた。
 
 「さやか」
 
 それを見たほむらは、少しちょっかいを掛けてみる事にする。
 
 「私の事は、どのくらいマミから聞いているの?」
 「たいした事は聞いていないけど、ある意味新人でありながら新人じゃない、ちょっと不思議な人だって」
 「そう……信じてもらえなくてもいいけど、私には並行世界の記憶があるわ」
 
 マミに説明するときに使った嘘を、ここでも引っ張り出す。
 実際、ループをごまかすに当たって、この理屈は大変に使い心地がよかった。ちえみに起こった現象がなければ、こんな便利な言い訳は思いつきもしなかっただろう。
 
 「ああ、あの別の結果を辿った世界の記憶って言うやつ?」
 「そう。世界の可能性を調べているみたいな、いろんな結果を迎えた世界の記憶。その中には、あなたの未来に関わる記憶もあったわ」
 「それって、要するに悪い意味じゃないカンニング……じゃない、えっと……そう、攻略本! ゲームの解説本見ているような感じ?」
 「それ、うまいたとえね」
 
 ほむらも思わず感心していた。確かに言い得て妙な例えだ。ちえみの魔女の記録と合わせると、ほむらのループによる知識は、まさに人生の攻略本とも言える。
 
 「その攻略本を読んだ魔法少女から言わせてもらうと、さやか、あなたが彼の腕を治す事を願うと、たいてい悲劇が待っているわ」
 「え、どうして?」
 
 それを聞いたまどかが悲しそうな声で言う。
 そしてほむらは、話の流れがいい方向に向かったのを感じた。
 
 「他人のための願いは、裏切られやすいのよ。魔女の脅威からみんなを守りたい、誰かを助けてあげたい。そういう願いはね、一見すばらしく聞こえるけど、それは同時にものすごく無責任な願いでもあるのよ」
 「むせき、にん?」
 
 不思議そうなまどかに、ほむらは説明を続ける。
 
 「そう。どんな人だって、人生を決めるのは自分。他人のための願いというのは、その相手の意思を無視して自分の願望を押しつける事でもあるわ。そして同時に、どんな願いにも付いてくる、願いの結果に対する責任を、自分では一切取らない、そういう事でもあるの」
 「う~、なんだか難しくてよくわかんないよ、ほむらちゃん」
 「わからないうちは魔法少女になろうなんて思わない事ね。死ぬわよ」
 
 そこはきっぱりと言うほむら。
 
 「難しい事かもしれないけど、暁美さんの言う事は正しいわ、鹿目さん」
 
 マミもほむらの意見に同意する。
 
 「そして恭介君の怪我に関してだけど、さやか」
 「なに?」
 
 言葉は軽いものの、まなざしは真剣にほむらを見つめるさやか。
 
 「もし仮に恭介君の腕をあなたが願いで治したとして、それで彼からどうされたいの? あなたは彼から感謝してもらいたいの? それともそのまま彼が名声を取り戻した上であなたなんか忘れて誰かと結婚したりしても後悔しないの?」
 「ちょっとそれひどいよほむらちゃん!」
 
 切りつけるようなほむらの言葉に、むしろまどかの方が反発した。
 
 「いいえ、まどか。これは大事な事なのよ。他人のための願いっていうのは、そういうものなの。見返りを求める気があるのか、無いのか。殉教者のような無私の心なのか、それなりの利益を計算しての事なのか。
 そういうある意味下世話な、自分がどう思っているのかという事をきっちりと把握していないと、いつの間にか自分の心の中にずれが生じてくるわ。
 そしてそうやってずれた心は、必ず悲惨な事を巻き起こす。整備不良の車で高速道路を走るような行為なのよ、それは」
 「でも……」
 「いいんだよ、まどか」
 
 まだ何か言いたげだったまどかを、さやかが止めた。
 
 「ねえほむら、あんた、私がそれを願っちゃ駄目とは言ってないんだよね」
 「そうよ。その願いに対して、自分がどう感じているのか、それをごまかし無しに自覚しなければ、あなたは壊れるわ」
 「……私にも、少しわかる気がいたしますわ」
 
 さやかに寄り添うように、仁美が言った。
 
 「私はこう見えても結構利己的な女ですから、もし仮に私が魔法少女になれたとしたら、多分私は上条君の腕を治すと同時に、そこにつけ込むと思いますもの」
 「仁美!」
 
 さすがにその言葉にさやかが驚く。
 
 「幸い、上条君も魔法少女の事を今回の事で知っていますし。うまく恩を着せて、彼の事を振り向かせるくらいはしてしまいますわね」
 「ちょっと仁美! いくら何でも冗談だよね!」
 
 叫ぶような声で言ってしまい、思わずまわり中の注目を集めてしまうさやか。
 そして仁美は、
 
 「もちろん冗談ですわ」
 
 と平然とした顔で言った。思わずこけるさやか。
 
 「全く……仁美もきついんだから」
 「でも全てが冗談ではないのですよ、さやかさん」
 
 一転して仁美の顔は真顔になっていた。
 
 「魔法少女になる願いで彼の腕を治すというのは、つまりはそういう事ですの。あなた、それをわかっていまして?」
 「え……」
 
 凍りつくさやか。
 
 「……やはり、わかっていませんでしたのね。ほむらさんが忠告してくれたのは、要するにはそういう事ですのよ」
 「仁美……」
 
 その時、仁美は何かに気がついたように壁の方を見つめ、携帯を取りだして何かを確認した。
 
 「いけませんわ、時間になってしまいました。皆さん、お先に失礼いたします」




 
 仁美が去った後の場は、微妙な沈黙に包まれていた。
 
 「マミ、この後少しいいかしら」
 「いいけど、何か?」
 「ちょっと大事な話があるの。まどか、さやか」
 
 そこでほむらはまどか達の方をじっと見つめる。
 先ほどの雰囲気もあり、思わず腰を引くまどか。
 
 「仁美に感謝しなさい。そして……よく考えるのね。ここを間違えた魔法少女の末路は、文字通り救いようがないわ」
 そしてほむらはマミを連れてその場を立ち去った。
 
 残されたまどかとさやかは、なにも言えずに、じっとその場に座ったままだった。
 
 
 
 
 
 
 ちなみにゲルトルートは、逃げる間もなく、ほむらの八つ当たりで粉砕された。
 


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