都市外装備のフェイススコープにはいくつか種類がある。
念威操者のサポートがなければ全くヘルメットの外の様子の見えないフェイススコープを使ったものと、念威操者のサポートがなくても一応は外の様子が見えるものだ。
前者のものは後者のものに比べて視界が鮮明で、さらに都市外において砂塵などによるヘルメット前面の汚れを心配する必要がない。しかし、もしも念威によるサポートを受けられなくなった場合、視界を完全に封じられてしまう。
一方後者のものは、前者のものに比べて念威操者のサポートを受けた時の視界の鮮明さは格段に落ちるが、しかし何かのトラブルで念威操者のサポートを受けられなくなった時の対応力が格段に上がる。
そして今回ガルロアが使用していたのは前者のタイプ。
すなわち念威操者のサポートがないと外部の様子が全く見えないタイプのヘルメットで、だから現在ガルロアは暗闇の中にいた。
「・・・・・・どうすればいい・・・・・」
暗闇の中で考える。
ともすれば叫びだしたくなりそうな、そんなパニックに陥りそうになる自分の感情を必死で抑えつけながら、自分の現状とその対処法を必死に考える。
「・・・・・現状。都市外に放置。ランドローラーは破壊されているから移動手段もなし。そしてそれに対する対処法。・・・・・・・・・・・・・なし・・・・・・・」
どうしようもないなと、ガルロアは泣きそうになる。
現在の自分の現状は、おそらくカリアンによって作り出されたものだろう。
思えば、念威操者がフェリではなかったという時点でもう少し怪しむべきだった。
そもそも、なぜ自分はツェルニがユリアから逃げるという事実を忘れてしまっていたのだろう。
あまりにも迂闊すぎる。
しかし、それによってカリアンは自分とユリアという、二人の厄介な不審人物をツェルニへの被害が皆無の状態で都市外追放することに成功したわけだ。
そしてそのうえ、ツェルニの進行方向にいる汚染獣を回避できるというオマケつきだ。
出て行けと言われたら素直に出ていくと、ガルロアは確かに宣言していたはずだが、しかしカリアンはそれを信じなかったらしい。
それが都市長の立場なのかもしれないが、しかしガルロアはそれを恨むしかない。
「くっそ。あの陰険眼鏡。ぶっとばしてやる」
カリアンは必ずぶっとばす。
この怒りを思い知らせるために、一発だけぶん殴ってやろうと思う。
首の骨を折るつもりで殴ってやろう。
現代の医療は発達しているから、首の骨が折れる程度どうってこともないだろう。
「・・・・・・よし・・・・・・」
カリアンへの報復を考えていると、何故だかガルロアの心は平静を取り戻し始めていた。
そして冷静になれば、恐らく現状打開の手段がまるでないという訳ではないことに気づく。
自分にできないなら、人に頼めばいい。
自分にはできないことを軽々とやってのけてしまうであろう存在がここにはいるのだ。
ガルロアはそう思って後ろを振り返る。
振り返っても何も見えないのだが、多分ユリアは自分の視線の先にいるだろうとガルロアは推測する。
「ユリア、聞こえる」
ヘルメットの中で声がくぐもる。
しかしユリアまで声が届かないということはないだろう。
「聞こえるわ」
聞こえてきたユリアの声にガルロアは安堵感がこみ上げてきた。
どうやら自分は思った以上にユリアに助けられているんだと、ガルロアは改めて実感する。
それとともに、ガルロアは心のどこかで何やらデジャヴのようなものを感じた。
何だろう?と頭の片隅で考えながら、ガルロアはユリアとの会話を続ける。
「どうしようか。ヘルメットをかぶっていたら何も見えないし、それにランドローラーは破壊されてる。そんな中で現状を打開できる、なにかいい手はあるかな?」
そんなガルロアの言葉に答えるように、ガチリと何かが外れる音がした。
次いでガラン、と何か硬いものを大地に落ちたかのような音がする。
そして、先ほどと比べてややクリアな声が聞こえてきた。
「私はヘルメットを外せるから何の問題もないわね」
確かにその通りだとガルロアは納得する。
汚染物質の中で生きるどころか、汚染物質をエネルギーとして吸収できてしまうユリアが、汚染物質遮断スーツを着ている必要などまるでないのだ。
「状況を詳しく教えてほしいのだけど。私は今の現状を余り理解できていないわ。私たちは今どうなってるの?」
そういえばユリアはこの状況を判断できる予備知識を何も持っていないことを思い出す。
「そういえば、会長と話してたのは僕一人だったもんな。あの人はユリアとは極力会わないようにしてたみたいだったし」
それに僕もそういった嫌な話はユリアにはしなかったしね・・・・・・とガルロアは心の中で締めくくる。
「会わないようにしてた?」
ユリアが軽く首をかしげる。
まぁそれは気にしないでおいてもらうことにして、ガルロアは現状の説明を始めることにした。
「ま、そんなややこしい事情があるわけでもないんだよね。単純にツェルニの都市長が僕たちの存在を厄介だと思ってて、だから僕たちは・・・・・っていうか僕は上手いこと騙されて追放されちゃったってわけだ。ごめん。僕が馬鹿だったばかりにユリアまで巻き込んじゃって」
「・・・・・そう」
短くそう言って、ユリアは数秒の間、黙り込んだ。
「私は今の状況でも特に何の問題もないけれど、でもロアはこのままじゃ死んでしまうわよね?」
「……まぁそうだね」
『人間』は汚染物質の中で生きられない。
ガルロア・エインセルとユリア・ヴルキアは決定的に違う生き物だ。
それを見せつけられた気がした。
別に汚染獣になりたいと思うわけではないが、しかしこういう時自分とユリアの決定的な違いがもどかしくなる。
「・・・・・私はあなたに死んでほしくないわ」
「僕も同じだ。でもこのままだと僕は死ぬ」
ガルロアの言葉に、ユリアが軽く息を呑むのが分かった。
人間とは根本的に弱い生き物だ。
剄という力を得て、見かけだけは強さを得たが、しかし都市の外に出てしまえば、人間は生きることすら許されない。
正面を見据える。
見据えたからといって目に映るのは闇だけだが、それでもガルロアはユリアの声がする方向をしっかりと見る。
「だからさ、ユリアがこの状況を打破する術を持つのなら、僕を助けてくれないかな?」
二日前の夜にガルロアはユリアから言われた。
「あなたを守る」と。
その時ガルロアは何やら情けない気分になったが、しかし今は素直に頼もうと思った。
世界を敵に回してでも、共に生きると決めたのだ。
こんなところで終わるつもりなど毛頭ない。
「・・・・・・・・・そうね」
しばしの沈黙の後のユリアの声に、ガルロアの背筋はゾクリと粟立った。
先ほどまでと特に変わらない静かな口調の中に、ガルロアは恐ろしいものを感じた。
視界はきかなければ、音もくぐもってしか聞こえない。
しかし分かるのだ。
感じるのだ。
ユリアの持つすさまじいまでの、怒りと殺気を。
「・・・ユリア?」
ガルロアが思わず声をかける。
「・・・・・・・・闘争本能とか破壊本能とか、いつだって私はそういった物をを内包しているわけだけど、今感じているそれは、今までのとは比較にならないわね」
「・・・・・っ」
どんどんとユリアから発せられるプレッシャーが高まっていく。
本能的に後ずさりしそうになるが、しかし他の誰でもない、ユリアの味方でいつづけると誓った自分にだけは、それは許されることではないと、ガルロアは必死に自分の足を押さえつける。
「昨日ロアには、私が暴走するかもしれないと言ったわよね。・・・・・ごめんなさい。私は今、確かに暴走してると思うわ」
暴走という言葉を使うには、ずいぶんと冷静さを保っている気もするが、しかしこのプレッシャーは本物だ。
「・・・・・ロアを助けるためには・・・・・・、まずツェルニに追いつかないといけないわね」
確認するような口ぶりでユリアが呟く。
「・・・・・・・でも、ランドローラーはない。僕は視界もきかない。ツェルニを追いかけられるようなコンディションじゃないし、そもそもたとえ追いかけられたとしても、僕の視力で見えないほどの距離を追いかけるには遮断スーツの耐久力が不安だ」
ユリアの迫力に圧されながらもガルロアは声を出す。
ガルロアもユリアも、ランドローラー以上の速さで走ることは可能なのだが、現在遮断スーツを着ているというのが大きく足を引っ張る。
ガルロアの着ている遮断スーツは汚染獣と戦うことを前提として作られているのだから、かなり耐久力はあるはずなのだが、しかし長時間かけて長距離を超スピードで踏破するなどという、普通想定されないような行動をして、遮断スーツが持つ保証はない。
そもそも、ランドローラーの爆破まで行ったカリアンが今ガルロアの着ている遮断スーツに何か細工を施していないとも限らないのだ。
破れやすくなっている箇所があったとしても驚きはしない。
「大丈夫。それならそれで方法はあるわ」
ユリアが別の方向に歩き出す気配をガルロアは感じ取った。
そしてしばらく後に強烈な破砕音が響いてくる。
ガルロアの足元が大きく揺れた。
視界が消える前に見た限りでは、確かその方向にはやや小ぶりな岩山があったと思うのだが、今の轟音とその岩山に関連性はあるのだろうか。
「ユリア?」
何が起こっているのか分からない。きかない視界がもどかしい。
「ロア、あなただけは死なせない。私はあなたに救われた。だからあなたは――」
そして再度の激音。
今度は破砕音ではなく、なにか二つのものが、すさまじい勢いで激突したかのような、そんな音だった。
「――あなただけは死なせない」
ガルロアはユリアが近づいてくる気配を感じた。
そして目の前まで来たユリアに手を取られる。
そして取られたその手からユリアの温かい体温が伝わってきた。
「・・・・・・あぁ・・・そうだった・・・・・」
それを感じた瞬間に、直前までガルロアを襲っていた、後ずさりしようとする本能的な衝動は嘘のように消え去った。
触れ合うことで分かることがある。
未だ激しさを増すユリアの殺気は凄まじいが、しかしもはやガルロアがそれを恐れることはない。
ユリアがどれほど怒りや殺気を振りまこうとも、ガルロアにとってユリアは何物にも代えられない、世界で一番大切な存在なのだ。
「それじゃ、行きましょう」
どこに?と返そうとしてガルロアはその言葉を飲み込む。
今ユリアが何をしたのかも、これから何をしようとしているのかも、さっぱり分からないが、しかし今のガルロアにできることなど何もない。
そうであるならば、ガルロアは何も聞かずにユリアを信じることに決めたのだ。
「うん。行こう。よろしく」
自分の無力さにもどかしいものを感じながら、ガルロアは手を引かれるままに歩き出す。
と、そこでガルロアの頭の中にピンとくるものがあった。
なるほど。とガルロアは心の中で納得する。
先ほどから感じていたデジャヴの正体が、ここにきてやっと掴めた。
今のこの状況はあの時に似ているのだ。
ガルロアとユリアの関係など、違う点も多々あるが、都市外の荒野でユリアと自分が二人だけで立っているというこの状況が、ユリアと初めて出会った時と重なった。
まだ数か月前のことでしかない、しかしそれでも大切な過去を思い出しながら、ガルロアはきかない視界の中で、ユリアに手を引かれながら歩きつづける。
†††
都市が大きく揺れた。
幼生体襲来の時に比べれば幾分小さい揺れだった。が、以前感じた揺れと、今回の揺れはどこか違ったとカリアンは気づく。
激しい揺れによって落とされた、生徒会室の様々な備品には目もくれず、カリアンはこの揺れについて考える。
幼生体襲来のときの揺れは、ツェルニが地盤を踏み外したが故の揺れだった。つまり都市は縦に揺れた。
しかし今回は、確かに横に揺れたようにカリアンは感じた。
それが何を意味するのか。それを必死に考える。すぐに報告が来ると分かっていても、カリアンは考えることをやめなかった。
苦悩の末に決めたガルロアとユリアの追放を成功させ、その副次的なものだったとはいえ、ツェルニが接近していた汚染獣から回避したというこのタイミングで、今度は一体何が起こったというのだろうか。
バタン、と大きく音を立てて生徒会室の扉が開いた。
そして息を切りながら一人の生徒が入ってくる。
その生徒が落ち着くのを待ってからカリアンは報告を聞き、そして聞いたその内容はカリアンを大いに驚愕させた。
「・・・・・これはもしかしたら・・・・・」
報告に来た生徒を退室させてから、カリアンは呆然としたように呟いた。
報告の内容はあまりに非常識だった。
しかしなんとなく確信したことがある。
「・・・・・もしかしたら私は・・・・・選択を誤ったのかもしれない」
非常識だった報告の内容。
都震の原因と、それに伴って起こった都市の異常。
いや、逆か。
都震に伴って都市の異常が起きたのではなく、都市の異常を引き起こした原因こそが、都震を引き起こしたのだ。
都震は単なる二次効果に過ぎず、だからむしろ、都震のことなど考える必要すらない。
「・・・・・全く・・・。ままならないものだね・・・・・」
これは偶然の事故などでは有り得ない。
起こるべくして起こった必然で、起こるべくして引き起こされた必然だ。
もしもその必然に因果があるのなら、それは間違いなく・・・・・。
と、そこでカリアンは思考を切りやめる。
「最悪を想定して、やるべきことをやっておかなくてはね」
そうしてカリアンは、まずは妹であるフェリと連絡を取ることにした。
†††
レイフォンがその揺れを感じたのは十七小隊での訓練の最中だった。
本当ならば、二着目の遮断スーツができ次第、都市の外へと向かえるように、出撃デッキで待機しているべきだったのだが、極力普段のリズムを崩さないために、今日も訓練に参加していた。
「なんだ?」
ニーナが無茶をしすぎないレベルで行っていた素振りを中断させて、険しい表情をする。
「レイフォン、なにか分かるか?」
同じ小隊員である四年生のシャーニッドに問われるが、しかしレイフォンは答えを持ってはいなかった。
汚染獣が接近しているという極秘の事実があったのだが、しかしそれはつい先ほどツェルニが急激な方向転換をしたために警戒レベルを下げていいとカリアンから連絡を受けている。
そもそも、汚染獣の接近と都市の揺れに関連性などありえないだろう。
そんなことを考えていると、どこからかフェリの念威端子が飛んできた。
それを見てニーナが今度はムッとした表情を浮かべる。
「おい、フェリ。堂々とサボりを働いておきながら、何をしている」
『あなたには関係ありません。それよりレイフォンさん。兄が呼んでいます』
ニーナの言葉を鬱陶しそうにしながらフェリの声がレイフォンに告げる。
フェリとて、汚染獣接近に対して非常線を張っていて、それゆえに訓練を休んでいるだけなのだから、ニーナの物言いには多少イラっとするところがあったのだろう。
「生徒会長が僕を?一体なにがあったんですか?今の揺れは?」
レイフォンの矢継ぎ早の質問に、しかしフェリは念威の向こうで困ったように小さく嘆息した。
『すみません。私もまだ詳しいことは教えられていません。兄に聞いてみましたが、まずはあなたを生徒会室に呼ぶようにとだけしか』
「そうですか」
状況はまるで不明だが、しかし生徒会室に行けば説明してもらえるだろう。
そう結論付けてレイフォンは生徒会室に向かおうと動き出した。
「いや、待てよ、レイフォン」
しかしそれを何故かシャーニッドが引き留められた。
「なんですか」
「まぁ、待てって」
レイフォンの問いかけをシャーニッドは軽く受け流し、そしてフェリの端子へと視線を向ける。
「なぁ、フェリちゃん。呼ばれたのはレイフォンだけなのか?」
『そうですが。それがどうかしましたか?』
フェリが質問の意図を掴みかねたような、困惑した声を出す。
「そうかい。・・・・・それじゃ、俺もついて行かせてもらうことにするわ」
『はい?』
フェリの驚いたような様子にシャーニッドは軽く笑う。
「カリアンの旦那もらしくねぇミスをするもんだな。それほど焦ってるってことなのかね」
一人で納得した様子のシャーニッドに、レイフォンは首を傾げる。
レイフォンにはシャーニッドの行動の意図が全く読めず、ただただ混乱するしかない。
「おい・・・・・、どういうことだ」
ニーナが困惑した様子でシャーニッドに問いかける。
どうやらシャーニッドの意図がつかめないのはレイフォンだけではなかったようだ。
「おいおいニーナ、よく考えてみろよ」
シャーニッドは呆れたと言わんばかりの様子を見せる。
「確かに今の都震は前回ほど大きくもなかったし、それに今回は前回みたいに警報が鳴る様子もない。だからこそお前さんもこうしてのんびりいてるんだろうが、・・・・・レイフォンが呼ばれたんだぜ?十七小隊の招集とかじゃなくて、レイフォン一人だけが呼ばれたんだぜ?この場合の最悪ってのを考えてみろよ?」
「・・・・・・・・・そういうことか・・・・」
何かに気が付いたようにニーナが憎々しげに表情を歪めた。
「分かったか?そういうことだよ。例えばこれが十七小隊の招集とか、各小隊長の招集とかだったら、それは普通の非常事態でしかないんだが、レイフォン個人が呼ばれたんなら話は違ってくる」
そこまで言われてレイフォンにもようやくピンとくる。
「戦うしか能のねぇレイフォンが。バカ強ぇレイフォンが。このタイミングで個人で招集されたんだ。この場合の最悪ってのはつまり、警報は鳴ってねぇが、また汚染獣が来たってことだ」
レイフォンは心の中でシャーニッドのことを見直した。
洞察力も高ければ頭の回転も速い。
普段飄々としていて分かりにくいが、シャーニッドはこれでなかなか頼りになる人なのかもしれない。
「ま、実際にはただ単に今回の都震に対して、経験豊かなレイフォンを招集しただけなのかもしれねぇけどよ。まぁ俺の深読みのし過ぎだったってんなら、それはそっちの方が良い訳だし。とりあえず行こうぜ。カリアンの旦那に話を聞きによ」
そういってシャーニッドは颯爽と訓練室を出ていく。
「あっ、おい待て。私も行くぞ」
それをあわててニーナが追いかける。
残されたレイフォンは二人を追いかける前に、ふと思ったことを隣に浮かぶフェリの端子へと問いかけた。
「そういえば、ガルロアとユリアさんはどうなったんですか?出発前にツェルニは進路を変えたんですか?それとも出発後にツェルニが進路を変えたんですか?出発後に変えたんだとしたら、二人は無事に戻ってこれてるんですか?」
一応聞きはしたが、レイフォンは、自分に伝言を伝えてくるフェリの余裕そうな様子から、二人は無事なんだろうと、そう心の中では思っていた。
だから、フェリから帰ってきた答えはあまりにも予想外だった。
『ガルロアさんとユリアさん?・・・・・・それって何のことですか?』
全く訳が分からないといった風な口ぶりだった。
嘘をついてるようには思えないし、そもそもそんな理由だってないだろう。
「ガルロアとユリアさんですよ?僕より前に都市の外に出て行ったはずなんですが」
しかしフェリから返される言葉はやはり『そんな話は知らない』というものだった。
一体どういうことだろう?
ツェルニの中で、フェリ以上の念威操者はいないのに、そのフェリがガルロアの出撃を知らされていないなどと言うことがあるのだろうか?
そこまで考えて、レイフォンはそれもカリアンに訪ねればいいと結論付ける。
レイフォンは先に出て行ったシャーニッドとニーナを追いかけて走り出した。