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No.27694の一覧
[0] 【ネタ】カンストキャラを放り込んでみた【オリDQ】[ソリトン](2011/05/09 01:08)
[1] プロローグ:カンストに至るまで[ソリトン](2011/05/09 01:13)
[2] 第一話:美少女じゃなくてごめんね[ソリトン](2011/05/09 01:11)
[3] 第二話:学術都市[ソリトン](2011/05/10 23:38)
[4] 第三話:行くなよ? 絶対行くなよ?[ソリトン](2011/06/01 00:56)
[5] 第四話:予兆と予感[ソリトン](2011/06/01 00:56)
[6] 第五話:心の向こう[ソリトン](2011/06/01 00:58)
[7] 第六話:暁の旅立ち[ソリトン](2011/09/08 20:04)
[8] 第七話:フラグびんびん[ソリトン](2011/09/11 22:01)
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[27694] 第三話:行くなよ? 絶対行くなよ?
Name: ソリトン◆c040fcc2 ID:b4c89df6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/01 00:56
「ん……………」


窓から差し込む陽光で、銀河は目を覚ました。

まどろんだ視界が、木製の天井を捉える。

それは明らかに現代日本建築のものではなく、文化レベルを数段階下げた建築物のそれである。

ひょっとしたら全てが夢で、目が覚めたら自室のベッドだった、という展開を期待しなかった訳ではない。

だがそこまで期待値は高くなかったので、そこまで気を落とすようなことはなかった。


「……………おはようございますー」


誰も返事をしないのは分かりきっているが、一応言っておく。

ベッドから半身を起こし、首に手を当ててコキリと鳴らす。

そして部屋の全体を見回し、一言。


「……………さむっ」


掛け布団はいつの間にかはだけてしまっていたようだ。

夕べはそこまで気にならなかったが、流石に初夏とは言え早朝の空気は少し肌寒い。

のそのそと緩慢な動作で、しかしまごつく事はなく銀河は「セラフィムのローブ」を身に着ける。

昨日は丸一日着ていたにも関わらず全く汚れや匂いが付いていないのは、装備を覆う魔力のおかげなのだろうか。

まあ、洗濯が要らないのは便利だ。


「………………」


立ったまま寝てしまうところだった。

彼は何とか洗面所まで歩き、冷たい水を思いっきり顔面に浴びせると、そこでようやく意識がハッキリしてくる。

パン、と両手で頬を叩く。


「げっ」


衝撃波で鏡が揺れた。以後気を付けよう。

朦朧としながら思い、そして数秒、目の前の鏡を見る。


「……………」


無造作に散らされ、パーマがかった茶色の髪、細く整った眉、目鼻立ちのくっきりした顔立ち。

取り立てて騒ぐほどの美男子という訳でもないが、着飾ればそれなりに人目を引きそうな、中々のイケメンである。


「……………ふっ」


無駄に爽やかに笑い、銀河は朝食を摂るためロビーへ降りて行った。





「さて………………まずは金稼ぎか」


朝のエルシオーネの町。

街道に備え付けられたベンチに腰掛け、銀河は腕を組んで呟いた。

何をするにも、まずは金だ。

図書館に行って情報を集めるにしても、どうやら「入場料」が必要らしい。

手元にあるのは99G。

入場料は一回30G。

公共施設なんだからタダで読ませろよ! と思った銀河だが、この時代では書物は貴重なのだろう。仕方ないと割り切る事にする。

しかし、現在の所持金が99G。

装備を買いそろえる必要が無いとは言え、これから先の宿屋での宿泊代を踏まえたら、かなり心許ない金額である。

故に、銀河は何よりも先にまず金を稼ぐ事を決断した。

ドラクエで金を稼ぐと言ったら、やはり魔物退治しか思いつかない。

銀河自身の強さ的には全く問題ないのが唯一の救いか。

万が一怪我を負っても、昨日の感覚で〝ベホマ〟を使えれば問題ないだろう。


「稼ぐついでに、色々探検してみるか」


思い立ったが吉日。再び人々の好奇の目から逃げたいし、ここで考えていても埒が明かない。

もしかしたら、何か元の世界に戻る手がかりがあるかもしれない。

そんな淡い期待を抱いて、銀河はベンチから立ち上がる。

腰に下げられた青い伝説の剣が、陽光を反射してキラリと光った。





「とは言っても、あんまり遠くまでは行けないんだよな……………」


数刻後。

背後に広がる新緑の草原と、その中に広がるエルシオーネの美しい姿を見つめ、銀河は呟いた。

現在の位置は、エルシオーネから歩いて数十分の位置にある森の入り口だ。

ちなみに、昨日の森とは別の場所である。昨日の森は馬車でも数時間かかる遠さのため、とても徒歩で行ける距離ではない。いや、もしかしたら行けるかもしれないけれども(なんと言っても素早さ999)、試そうという気にはならなかった。それはもっと余裕ができてからの話である。

この森に来たのは、適当に帰りの道を見失わない程度に遠出するつもりで、手頃な場所がここだったという訳だ。

意外と言うか拍子抜けと言うか、ここに来るまで魔物に襲われるような事はなかった。

まあ、エルシオーネからこの森まで広がる草原はこれ以上ない程に見晴らしがよく、あんな所では魔物も人を襲う気にはなれないのだろうか。

とりあえず、入り口でじっといていても仕方が無い。

銀河は森に足を踏み入れた。



――――瞬間、どこからともなく飛来した矢を、銀河は完全に無意識の内に片手で掴み取った。


「え?」


超人的な神業を成した己の手とそこに握られた剣呑な矢をしばしじーっと見つめ、銀河は言う。


「………………あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


いくら超人的なステータスを持っていようと、所詮中身は一般人。

襲いかかる殺気に対応できるはずもなく、絶叫する。

恐らく体力的に考えて、命中しても死にはしないだろう。

しかしそれでも、今まで体験した事のない恐怖には抗いがたかった。

今回ばかりは、身体が勝手に動いてくれた事を感謝する。


「やっべぇ…………ガチで死ぬとこだったかも………………」


思わず深呼吸し、バクバクと激しく動く心臓を落ち着かせる。

そこで、第二撃。

今度は「勘のようなもの」が働いていたため、割と冷静に対処する事が出来た。

ひらりと身を躱す。

そしてこれまた超人的になった視力――――具体的には、飛んでいる羽虫の足の数を余裕で視認できる程度――――を駆使して、矢の飛んで来た方向を見やる。

森の緑の中に、こちらを見つめる二つの真っ赤な目玉があった。

茶色の頭巾をすっぽりとかぶり、手にした短弓をこちらに真っ直ぐ向けている。

この世界において「リリパット」と呼ばれるヒトガタの魔物である。


「テンメェ……………舐めた真似してくれてんじゃん」


バキリ、と小さな音が響く。

青年の手の中にある矢が握力によってへし折られた音だ。

果たして自分にヒトガタの魔物を倒せるのだろうか、という懸念はこれで吹き飛んだ。

相手が到底同じ人間とは思えない容姿をしていたというのもあるが、それよりも。

命を狙って来た相手をわざわざ見逃すほど、今の銀河に心の余裕は無かったのだ。

あれは敵だ。敵は殺す。

現代にいた頃からは到底考えつかないような物騒な思考のまま、青年は己の名前と同じ銘を持つ腰の剣を引き抜いた。






ゴォッ!

全体重を乗せるような形で己の身体近くもある大木槌を振り回す魔物の一撃を、銀河は身体を反転させて避ける。

渾身の力を込めて放った攻撃を躱され、魔物はその場でたたらを踏む。

紫色の頭巾をかぶり、大きな木槌を持った魔物――――「おおきづち」は、次なる攻撃を青年に放とうとするが、その前に迸った青白い剣閃によってその身体を縦に両断された。

「銀河の剣」を振り上げた姿勢のままの青年へ、今度は別のおおきづちが襲いかかる。

短い足を踏ん張って跳躍、木槌を高く振り上げたところで――――銀河の左脚が、おおきづちの右腕を蹴り上げた。

神業的なタイミングであった。

勢いに負けた魔物の手から木槌がすっぽ抜け、くるくると宙を舞う木槌を、銀河は跳躍して剣を握っていない方の手で掴み取る。


「………………ッ!!」


無言の気合いを込めて、得物を失った魔物に、青年は重力と腕力に物を言わせて、木槌を叩き付けた。

ビタン! という間の抜けた音とは裏腹に、攻撃を受けた魔物は木槌を叩き付けられた身体の反対部分が破裂し、悲惨な事になっている。

青白い体液が撒き散らされるがそれも一瞬、即座に姿が薄れた魔物の死体は、やがて数枚の金貨を残して消え去った。

衝突の勢いで折れてしまった大木槌の柄を投げ捨て、銀河は油断無く周囲を見渡す。

しかし敵の影が視界に入る事はなかった。どうやら恐れをなして逃げ出したようだ。


「ふう…………大分慣れてきたな」


息を吐き、剣を鞘に収める。

その表情は、安堵の色こそあるものの、恐れや焦りの色は全く見えない。

昨日この世界に来たばかりだというのに、信じがたい適応スピードだ。

凄まじいを通り越して、恐ろしくもある。


「ひい、ふう、みい………………今ので40Gか」


地面に落ちた金貨を拾い上げ、腰の巾着袋に入れる。

最初のリリパットから幕を開けた魔物退治。

戦闘開始から数時間、危なげなく襲いかかる全ての魔物を倒している銀河の懐には、結構な額のGが貯まっていた。

中身を確認してみると、なんと。


「合計……………うわお、670Gか。午前中だけにしては、中々の金額じゃないの」


他にも、魔物が落として行った「やくそう」らしき道具も沢山あったのだが、生憎と袋がなかったので、結局拾えたのは「絶対のズボン」のポケットに入る分だけだった。

――――やっぱり、「ふくろ」もいるな。今度、買おう。ていうか、普通に売ってあるのかね?

そんな事を考えながら、青年は立ち込める木々の隙間から空を見上げる。

朝からぶっ通しで魔物を倒し続けて数時間。そろそろお昼の時間だろう。


「へっへっへ……………じゃーん! おにぎりだぜーっ」


懐から一つの包みを取り出し、一人でテンションを上げる銀河。

出立の際、エルシオーネの入り口付近の露天で買い求めたものだ。ひとつ100Sと、中々に手頃な価格である。

そういえば、この世界の通貨は、どうやら「G」の下に「S」という単位があるらしかった。

正式な読み方は定かではないが、恐らく「シルバー」であろう。

考えてみれば、確かに「G」だけでは不便だ。大きすぎる。

ゲームの中では食料品や日常品などを買う必要がなかったため分からなかったが、そう考えれば道理だ。

――――ドラクエの世界の人間も、ちゃんと現代と同じようにご飯を食べ、風呂に入り、生活している。

それを思うと、銀河はなんだか変な気持ちになるのであった。


「ま、いいや。いただきまーす」


とりあえず腹が減った。

三つあるおにぎりの中からシャケおにぎりを選び、銀河はそれを歩きながら口に放り込んだ。




ここで、一つの違和感がある。

あまりにも、あっさりしすぎている。

あまりにも、冷静に対処しすぎている。

異世界に来て、まだ二日目だ。

果たして普通の一般人が、殺されそうになったからと言って、身体のスペックでは圧倒的に上回っているからと言って、そうそう魔物に立ち向かえるものだろうか?

また、その魔物が山ほど徘徊する危険極まりない森の中で、能天気に昼飯を食べられるものだろうか?

何しろ、「魔の物」である。その殺気は、身体の小さな個体が発するものでも、並の大人の戦意を挫くには十分なプレッシャーを秘めているというのに。

この青年は、氷川銀河は、それを物ともせずに、逆にプレッシャーを怒りに変換して魔物に牙を剥いた。

先ほどのリリパットの一件についてもそうだ。

自分が矢で狙われているという事態だけでも異常なのに、青年はあまつさえ放たれた矢が間一髪で当たるところだった。

普通の人間では、腰を抜かしても仕方がない。

加えて、彼は人に限りなく近い姿を持つこの魔物を、何も躊躇う事なく斬り捨てた。

並の大学生の神経ならば、罪悪感に苛まれるのも当然。

だというのに、この青年は何なのか?


――――簡単な話。

青年は、一般人ではなかったのだ。

平和な現代日本に住んでいたため、平凡に見えていただけだ。

人を殴ったり、命のやり取りをする機会が無かったため、その本性が表に出てこなかっただけだ。

恐れより怒り。

絶望するくらいなら反抗する。

現代に生きる人類にとって不必要な、そして失って久しいモノ……………「野性」。

異世界に放り込まれるという極限に近い状況下に置かれ、ようやくその一端が顔を覗かせた、といったところだろうか。

現に、魔物と対峙した際の彼の心の奥底には、理性を凌駕しそうな程に膨れ上がった闘争本能が燻っている。

剣を握った時、うっすらと口元に笑みさえ浮かべているのは、無意識だろう。

見知らぬ魔物と対峙した時、瞳が爛々と輝いているのも、無意識だろう。

正直な話。

銀河は、下手をすれば命を失う「戦闘」という行為を楽しんでいたのだ。

――――もっとだ。もっと強い奴と戦いたい。

現代からすれば危険人物とされても仕方ない思考。

銀河はまだ、己の中に潜む本性に気付いていなかった。







「ごちになりましたー。いや、おにぎりはやっぱシャケだろ」


そんな心の中の野性はともかく、今の銀河は、予想以上に美味だったおにぎりにご満悦の様子だった。

全てを奇麗にたいらげ、銀河は満足げに呟く。

やたらと独り言が多いのは、寂しさを紛らわすための本能的な行動だろう。普段の彼はこんなに独り言を言ったりしない。

事前に買っておいた水筒(容器5G)で喉を潤し、再び魔物退治を再開する。

先ほどからずっと、何かしらの視線を感じていた。

辺りを見渡してみれば――――ホラ、いた。

視線が交わった瞬間、その魔物は手にした杖から拳ほどの大きさの火の玉を発射して来た。


「おっと」


昨日出会った戦士ウィリアムも苦戦していた、ねこまどうだ。

プロ野球選手も顔負けの速度で迫るそのメラを、しかし銀河は、片手でパシンと薙ぎ払った。

方向を狂わされたメラは、近くの木に着弾。ゴォッ、とそれなりの音を出して燃え上がる。

しかし、それを放ったねこまどうは目を見開いている。魔物でも、手を出してはいけない相手というものが分かるのだろうか。


「悪い。別に恨んでないけど、俺の生活費になってくれ」


またしても薄らと笑いながら言い、銀河は剣を片手に跳躍した。








本日の戦利金、1080G。

戦利品、やくそう×5、樫の杖×3、大木槌×2。


「いやいや、結構溜まるもんだなぁ」


樫の杖を右肩に、大木槌を背中に背負い、銀河は帰路に着きながら呟いた。

時刻は夕方。夕日の紅に照らされたエルシオーネの草原は、一種の幻想的な雰囲気を醸し出している。

その中で、銀河はホクホク顔だ。

何せ一日で1000Gである。昨日の宿屋になら200日も泊まれるのである。

――――この分なら、俺ってかなりの金持ちになれるんじゃないか?

そんな調子に乗った事を考えるのも仕方の無い事。

エルシオーネへと帰還する足取りも軽くなるというものだ。


「到着っと………………あるぇ?」


街に入った瞬間、銀河は街の様子が今朝とは違っている事に気が付いた。

行き交う人々の様子が何やら、慌ただしい。心無しか、冒険者然とした人物の数も多くなっているような気がする。

それらの人々の顔に共通しているのが、何やら不安げな、あるいは焦っているような表情。

明らかに何かが起こった風情である。


「えっと……………すんません、何かあったんですか?」

「ん? ああ、君は旅人かね? いやさ、何でもこの近くの鉱山に未確認の魔物が出たらしいんだよ」


近くにいた男に訪ねると、彼は顎に手を当てながら答えてくれた。

銀河の身なりを見て多少は驚いた様子だったが、どうやら旅人という事で納得してくれたらしい。

————やっぱり普段着は買うべきだな。魔力のおかげで汚れなくても目立つのは勘弁だ。

そんな今この場では関係ない事を考える銀河の心中はいざ知らず、男は話を続ける。


「しかも恐ろしく強いそうだ。話によれば、討伐に向かったこの街のベテランの冒険者が悉く返り討ちに遭ったらしい。幸い死者は出ていないようだが……………」

「へぇ……………大変ですね」

「うむ。今までこんな事はなかっただけに、皆浮き足立っているよ。………………ん?」


そこまで言って、男はふと言葉を切る。

不審に思った銀河が話しかけようとした時、銀河の方をどこか品定めするかの様な目で見て、男は言った。


「そういえば、ルイーダの酒場で対策のための会議を開いているそうだよ。パーティーの募集もしているそうだ。腕に自慢のある者なら、一度くらいは覗いてみるといいんじゃないかな?」


ハイ飛び出しました「ルイーダの酒場」。

世界は変わってもドラクエである以上、この単語は共通なのね……………と、銀河は変な感慨を抱く。


「あの鉱山はこの街で使用する金属のほとんどを採掘しているからね。きっと報酬も破格だと思うよ」

「………………そうですか。お話、ありがとうございました」

「うむ。早く討伐されるといいね」


ひらひらと手を振って、銀河は男と別れた。

————というか今の言葉はフリだよな? 確実にフリだよな? 俺に行けって暗示してるんだよな?

「あー」片手で頭を掻きむしる。

まあ、ちょうどいい。この世界のルイーダの酒場にも興味はあったところだ。


「でも、この装備だと少し目立つか………………」


自分の格好を見下ろし、嘆息。

それなりの冒険者が見れば、この装備の詳しい価値まで分かってしまうだろう。

根堀り歯堀り聞かれては面倒だ。ボロを出す危険性もある。


「よし、買い出し買い出し。まずはこいつらの換金からだな」


背負った「大木槌」と「樫の杖」を担ぎ直し、銀河は街の商店街へと歩き出した。







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