<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.27393の一覧
[0] 悪魔との契約(なのはオリ主) 【チラ裏から】[悪役](2011/10/23 23:19)
[3] 第一話[悪役](2011/12/16 00:27)
[4] 第二話[悪役](2011/10/23 23:20)
[5] 第三話[悪役](2011/10/23 23:20)
[6] 第四話[悪役](2011/10/23 23:20)
[7] 第五話[悪役](2011/10/23 23:21)
[8] 第六話[悪役](2011/10/23 23:21)
[9] 第七話[悪役](2011/10/23 23:21)
[10] 第八話[悪役](2011/10/23 23:21)
[11] 第九話[悪役](2011/10/23 23:22)
[12] 第十話[悪役](2011/10/23 23:22)
[13] 第十一話[悪役](2011/10/23 23:22)
[14] 第十二話 <修正>[悪役](2011/10/23 23:22)
[15] 第十三話[悪役](2011/10/23 23:23)
[16] 第十四話  <無印編スタート>[悪役](2011/10/23 23:23)
[17] 第十五話[悪役](2012/01/05 16:09)
[18] 第十六話    <微グロ注意>[悪役](2011/10/23 23:24)
[19] 第十七話[悪役](2011/10/23 23:24)
[20] 第十八話[悪役](2012/01/09 23:30)
[21] 第十九話[悪役](2011/10/23 23:24)
[22] 第二十話[悪役](2011/10/23 23:25)
[23] 第二十一話[悪役](2011/10/23 23:25)
[24] 第二十二話[悪役](2011/10/23 23:25)
[25] 第二十三話[悪役](2011/10/23 23:25)
[26] 第二十四話[悪役](2011/10/23 23:26)
[27] 第二十五話  <無印完結>[悪役](2011/10/23 23:26)
[28] 第二十六話  【A’S開始】[悪役](2011/10/23 23:26)
[29] 第二十七話[悪役](2011/10/23 23:27)
[30] 第二十八話[悪役](2011/10/23 23:27)
[31] 第二十九話[悪役](2011/10/23 23:27)
[32] 第三十話[悪役](2011/10/23 23:27)
[33] 第三十一話[悪役](2011/10/23 23:28)
[34] 第三十二話[悪役](2011/10/23 23:28)
[35] 第三十三話[悪役](2011/10/23 23:28)
[36] 第三十四話[悪役](2011/10/23 23:28)
[37] 第三十五話[悪役](2011/10/23 23:29)
[38] 第三十六話  【修正】[悪役](2011/11/06 22:45)
[39] 第三十七話[悪役](2011/11/23 21:35)
[40] 第三十八話[悪役](2011/12/01 19:54)
[41] 第三十九話[悪役](2011/12/17 12:06)
[42] 第四十話[悪役](2012/01/09 12:20)
[43] 第四十一話[悪役](2012/02/05 11:56)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27393] 第四十一話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:d44a4ec3 前を表示する
Date: 2012/02/05 11:56

「じゃ、行こうか」

「……そうね。でも、良かったの?」

「ん、何が?」

「別に貴女は残っても良いのよ?そうすれば汚名は私だけが被る事になって貴女はお父様と一緒に過ごすことが出来るわ」

「……そうだね。でも、■■■だけにそんな辛い重荷を背負わせることは出来ないよ。だって、あたし達は━━━姉妹じゃんか」

「……■■■」

「そんな顔しないでよ……そりゃあ、未練はないなんて格好いい台詞は言えないよ。そんな台詞が言えたのならばこんな選択はなかっただろうしね」

「……」

「でも、あたし達はここにいる。それは運命とか神様の意思とかじゃなくてあたしの意思だ。それにあたしはこんな所で尻尾撒いて逃げるような頭が良い性格じゃないでしょ?」

「……そうね、そうだったわね。出来ればもうちょっと賢くなってほしかったけどね」

「そんな事言って。■■■だってこういう馬鹿みたいに損するような事をしてるじゃない」

「ふふふ、そうね。結局、私達二人とも馬鹿っていう事かしら」

「だから言ってでしょう。結局、私達は似たもの姉妹なんだよ」

「ええ……そうね」

「……お父様、怒るかな」

「怒るでしょうね」

「……その時はよろしくね」

「私だけ叱られるなんて嫌よ。叱られる時も一緒よ」

「うわっ、藪蛇だったか……」

「でも、きっとそのお叱りは私達を想っての事なんだと思うわ」

「……うん、そうだね。だって、お父様」

「「優しいんだもの」」

そこにあるのは暗い部屋で笑う二人。声から察するに女性のようだ。二人とも影だけしか見えないが、それだけで解るくらい早熟した女性であるというのが解る。

二人は凄く朗らかに笑っていた。とても、朗らかであった。これから血生臭い事をしようとしている二人には全く見えなかった。これではただいたずらをしようと計画している子供みたいであった。

でも、しようとしているのはやはりいたずらではなく━━━人を殺そうとしているのである。もしかしたら人が死ぬ……のではない。結果、必ず人を殺しているのだ。そこに偶然という単語は入り込まない。突発的な感情で殺人を起こしてしまったのならば、多少は偶然が入るかもしれないが、そこに計画性が混じっているのならばそれは明確な理性に基づく殺人である。

もっとも、計画を敷く理性があったとしても動機はやはりこの二人の場合は感情であるだろうけど。ありとあらゆる動機は感情から作られるのだから。感情無くして人は動かない。無感情で動ける者はいない。それはどこぞの無表情の少年にしても同じのはずだ。

「優しいからこそ━━━私達も胸を張って頑張ることが出来るんだものね」

「ええ。私達が命を賭しても構わないと思えるお父様だから」

「だから……」

「だから……」

「行こう」

「ええ、私達はこれからただの山猫の使い魔から、泥を被る泥猫になりましょう」

そうして二人は唐突にその場から消え去った。正しく影も形も残さずに消えた。その光景を見たものは誰もいなかった。そうして閉幕のチャイムは鳴り終わった。残ったのはこれからどうなるか解らないという当たり前な不安感であった。



























「……主、準備はよろしいでしょうか?」

剣の騎士の一言だけで、自分は既に進むしかないという事に改めて気付かされた。普段なら温かみがあって、頼れるシグナムの声が状況を変えればまるで死刑執行の一言をかける死刑執行人のように思えてしまう。

無論、そんなの自分が錯覚しているだけや。シグナムは何時もよりも更に優しさを滲ませた声で私を心配している。それはシグナムだけやなくて、ヴィータや、シャマル、ザフィーラも私を物凄く心配してくれている。

その顔を見て、私は皆に大丈夫やと伝えなくてはと思い、笑おうと思ったが、失敗した。確かに笑うことは出来たが━━━こんな引き攣った笑顔を見て誰が安心できるやろうか。鏡を見ていなくても解るんやから間違いない。

その証拠に、今、私と向かい合っているなのはちゃんとフェイトちゃんの顔が少し強張っていた。それは恐怖とかではなく、それもヴォルケンリッター達と同じ心配の表情やった。

それを言うならばこの場にいる誰もが私に心配の視線を向けていた。当然の視線やろう。ここは既に決戦場なのだから。私と闇の書。どっちが勝てるかどうかの正しく瀬戸際。

ドクンと心音が高らかに叫ぶ。ここは地球とは違って誰もいない世界。人も動物もいない世界。故に例え失敗したとしても━━━誰にも被害はいかない。自分を除いてと続くけど。

ドクンと心音が心臓そのものを裂きそうだ。自分がかなり混乱しているのが解る。むしろ、混乱以外の感情が自分の内側にどこにもない。嫌な汗がさっきからダクダクと溢れ出ている。これが数分も続ければ自分はミイラになってしまうのではないかと錯覚してしまう。

「……大丈夫か、はやて?」

クロノさ……じゃなかった。クロノ君までもが心配してくれた(本人が別にさん付けでなくても良いと言うので君付けにさせてもらった)。だから、咄嗟意に大丈夫と今度は口で言おうとして、口を開けてみたら

「━━━」

言葉を上手く出せなかった。

こんなんじゃあかんと自分で自分を叱咤する。ちゃんと呼吸をしろと自分に言い聞かせて、呼吸を何回もする。これじゃあ、何時まで経っても始めることが出来ひんやんかと。

意思はある。だけど、それでもそれが行動に繋がらへんのが現状。覚悟があってもそれら全てが感情に覆い隠されているのだ。これでは何も出来ひん。何でもいいから何か言ってリラックスせんとと思い、どうにかして声を出したら

「だ、大丈夫、やで……わ、私は、い、何時でも……」

情けない声が出た。震えた声が出た。それが今の八神はやての状態を表していた。そしてそれらは今度こそ周りに伝わってしまった。不味いと思った。これじゃあ、皆動けへんと思った。

皆いい人や。そんな人たちがこんな風に怖がっている人間相手にそのまま戦えるとは思えへん。だから大丈夫って落ち着かせなきゃ。でも、どうやって?焦りが思考を乱し、乱れた思考が恐怖を生み出し、恐怖が体の動きを封じる。

その恐怖が臨界点を突破する瞬間。


チリンと綺麗で澄み切った音が耳に聞こえた。


条件反射で音が鳴った方向を見る。そしてそこにあるモノを見て思わず苦笑してしまった。まるで狙ったようなタイミングでの音であった。本当に送り主と似た性格を持った物である。

「……?それは……?」

フェイトちゃんが急に静まった私を見て疑問に思ったのか。私が見ているものについて疑問の声を出してきた。隠し理由はないので私は素直にそれを彼女に見せてまた手首を振った。その動きにつられて再びチリンという音が響く。

「ん?これは鈴やな。日本やったらそんなに珍しくないもんなんやけどな。まぁ、腕輪に鈴が付いているのって言うのは珍しいと思うんやけど……多分」

最後の方が自信がないのは自分もそんなに知らへんから。正直そういうのには疎いのは女の子としてはどうなんかなぁと自分でも思っている。でも、慧君と会う前まではそんな事に気を回す余裕がなかったんやから仕方がない。

何を隠そう。これはあの時、ヴォルケンリッターが出てきたときに慧君がくれた誕生日プレゼントなのである。鈴が付いているだけの余りにもシンプルなデザインに大分慌てて買ったなと思うプレゼント。

この事について何故これを選んだのかと彼に問い詰めてみると

『なに━━━獣には鈴がいいと良く言うだろう?』

『……んん?おかしいなぁ……ここに獣なんていないんやけどなぁ。ついに慧君の脳味噌がミキサーでシェイクされてジュースになってしまったんかなぁ?』

『はははは。やれやれ、この狸は……直ぐに現実逃避をするからいけないね。少しは妄想を視るよりは現実を見るべきだと思うがね。だから、お前は貧乳なんだよ』

『失礼な!これでも大きくなってるんやで!!』

『……(むにっ)、三十点』

『……』

ドカバキ。

『ぐふぅ……貴様何の遠慮もなく人中とは……さては、既に獣の心に侵されているな』

『……スケベ心があるようでないような手つきと視線で何の遠慮もなく人の乳を揉む慧君に言われたくないなぁ。というか反省しろ。警察に連行されへんだけマシやと思った方が良いと思い』

『おやおや。俺は良かれと思いお前に真実を教えてやったというのに……人の親切を無視する狸だね?』

『OK。最近ツッコミキャラになってきてしもうた自分を改善するため私はあえてバトルを申し込む所存やで!!』

『こっちは望むかもしれないのかもしれないのはずがないような気がするようだが別にそんな事はどうでもよくないような知ったことではないような所存だぜ!!』

『結局どっちや!?』

そのまま乱闘したんやけど結局最終的に慧君のシャイニングウィザードが決まって負けてもうた。くそぅ……月村特製車椅子に秘められし七色の裁きでも駄目やったか……。

っていうか結局誤魔化されているという事に今気付いた。あの野郎、流石は暴論遣いや。煙に巻くことだけは超一流の言論使いや……お蔭で何人の人間が彼に騙されている事やら。

そこまでどうでも良い事を考えて気づいた。震えが止まっている。恐怖はまだ少し残っているけどそれでもさっきに状態に比べれば百億倍マシと言っても過言ではない状態や。

ある意味感心してしまう。この場にいないのにこの影響力。私達はどれだけ慧君の影響を受けているんやろうか?この年でここまで友達の存在に影響されるというのは嬉しい半分少し恥ずかしい。

まるで親離れできない子供みたいだ。慧君を親なんて死んでも認めたくないんやけど……。うわっ、背筋がぞわぞわっとしてきた。どう足掻いても慧君が親になっている姿なんて考えられない。というか気持ち悪い。

すずかちゃんには悪いけど彼ほど結婚という単語からほど遠い人間はいないと思う。彼の子供がいる姿なんて考えたこともなければ予想も出来ない。アットホームな慧君なんてどうかと思う。

そんな意味もない思考を繰り返してはまた、つい笑ってしまう。周りの人間は何故自分が笑っているのかどうかわからないという顔をしているのがほとんどだったが、一番この中で付き合いが長いなのはちゃんは理解してくれたような顔だった。

「そっか。慧君がくれた鈴だものね。きっと何か憑いてるかもしれないよ?」

「はっはっはっ、やだなぁ、なのはちゃん━━━そんな洒落にもならへん事言わんといて」

「にゃはははは━━━洒落じゃないと思うから言っているんだよ?」

有り難い気遣いだった。有り難すぎてマジ泣きするところやった。でも、うん、大丈夫や。何時もの私や。何処にでもいる少女で、決して闇の書によって悲劇にされた少女とかいう設定の人間やない。八神はやてという個人のままだ。

そうや、少し気負い過ぎていた。何を世界を背負っているような気分で緊張していたんやろう。自分がそんな世界なんて背負えるような器じゃないのは知っているやろうに。闇の書の主とかそんなんどうでもいい。

私は『ただの』はやて。八神はやて。聖祥小学校の三年生でしかない少女や。そんな事、慧君に散々口酸っぱく言われてきていたやろうに。うん、反省反省。

「……大丈夫そうだね」

「うん、ユーノ君。私は何時でも行けるで」

「……全く。あの暴論遣いはいないくせに馬鹿みたいな影響を及ぼすのか」

ユーノ君の微笑とクロノ君の苦笑に私も苦笑で答える。今更な事だ。慧君が他人に与えている影響なんて物凄いとしか言いようがないのだから。それが良い事か悪い事かはさておきやけど。

「じゃあ、最後の確認だ。まず僕達ははやてが闇の書を覚醒する前にシグナム達をバインドで捕えておく。卑怯だと思うけど、もしもヴォルケンリッターが予想通り闇の書の指揮下に入ってしまうのであれば少しでも僕達の勝機を上げるために保険を取っておきたいからね。ヴォルケンリッター達もそれでいいかな?」

「ああ、異論はない」

「……まぁ、少し気は悪いがこれもはやての為だ」

「はやてちゃんの為ならばそれぐらいはするわ」

「少しでも主を助ける可能性を上げるためにな」

「助かる。……他の武装局員はアースラで待機だ。彼らには申し訳ないが彼らの実力じゃ、君達を相手にするのは難しい。だから、戦闘をするのは僕になのは、フェイト、アルフ。そしてフェレットもどきだ」

「……クロノは後で僕に縛られて新しい世界に目覚めたいようだね」

「残念ながら僕は君やあいつみたいに変態じゃないから遠慮しとくよ」

「誰が変態だ!!」

「何だその普通のツッコミは……それでは底が知れるぞ」

「くっ……!別にどうでもいい事なのに何故か負けた気分がする……!」

「それは君が僕にありとあらゆる部分で負けている証拠だ。その調子じゃあ僕はおろかあの暴論遣いにも勝てないな」

「何時かエイミィさんの前で子供のように泣かせたやる……!」

「地味に陰湿な……さて、話を続けるぞ。そして最後にはやて……君の出番だ」

「うん。私が管理者権限で闇の書の暴走を止めて私をちゃんと主として認めさせるやな」

簡単に私らは言っているけど、実際はどれも超を幾つつけても良いくらいの難関ばっかりなんやろう。ヴォルケンリッター達の実力は何回もなのはちゃん達と訓練しているところを見ているし、私……というか闇の書はかなり強いらしい。

それを才能があるからとはいえ僅か五人で相手するのだ。無茶苦茶としか言いようがない作戦や。いや、こんなのは作戦とは言えへんってこれを聞いたらみんな言うやろう。実際ユーノ君もそう評していた。

無理もない。それにフェイトちゃんやクロノ君は訓練を受けているが、なのはちゃんは戦いとかそういうのは無縁だった少女なのだ。管理局の人は全員、なのはちゃんの才能は凄いものだと言っているが、才能だけあっても努力がなければ凄いだけの一言だろう。

例で言えば恭也さんや美由希さん、慧君にこの前のお爺さん。どの人も努力を以て力を得てきた人達だ。皆、なのはちゃんほど派手な力ではなかった。単純な力で言えばもしかしたら、皆、なのはちゃんに劣っていたかもしれない。

でも、今でた全員の動きは魔法無しのなのはちゃんを圧倒していたと思う。というよりも、動きというよりはその思考速度と作戦がと言った方が正しいかもしれない。

恭也さん、美由希さん、お爺さんは魔法を使ったり、持ち前の運動能力を使った相手の隙をついての攻撃。単純故に強力な作戦。一方、慧君は相手の嫌なところを突いたり、周りを利用した攻撃方法。攻撃を喰らってもむしろ利用する異様さ。小さな言葉で相手の精神をほんの少しでも揺るがす狡猾さ。そしてどんな攻撃を受けても立ち上がるその執念。

強い人からしたら小賢しいとか言いそうな方法やけど、ある意味これは彼が全力を以て挑んでいると言ってもいいのではないだろうか。そして今出した人は皆共通点がある。それはなのはちゃんにはないもの。つまり、戦いになったら相手の言葉を聞こうという甘さは捨てて全力で戦うという所だ。

なのはちゃんは良く言えば優しくて、悪く言えば甘い。私かて強く言える立場やないけどそれでも思う事はある。それじゃあ、戦いでは不利になる。素人でも解る事や。無論、こんなんは他人事やから言えるのだろう。

他人事。そう他人事だ。自分やったら結局はなのはちゃんと同じことをしてしまうだろう。だから責める事なんてできる立場やないし、そんな立場にしているのは自分のせいなのである。

それに優しさを責める事なんて誰にも出来る筈がない。むしろなのはちゃんが当たり前なんや。恭也さんや美由希さん、慧君が悪いけどおかしいとしか言いようがない。戦う覚悟を、相手を倒す覚悟なんて一回の小学生が持っているはずがない。それはフェイトちゃんやユーノ君も同じ。この状況を想い、慧君が言っていたことを思い出す。

生きるという事は誰かを傷つける事という事を。その立場になって自覚したら本当にその言葉の意味がよく解るようになった。正しくその通りや。私は私の都合で皆に傷ついてと言っているんやからundefined・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・undefined

でも、だからこそ謝罪とかはしてはいけないのだろう。言うのならばありがとうの一言やと思う。なのはちゃん以外はまだ短い付き合いやけどそれでもこんな時に謝られて喜ぶような性格ではないことは分かっている。つまり、皆いい人やということ。

だから私は別の事を言う。

「なのはちゃん、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさん、クロノ君。」

「にゃ?」

「え?」

「ん?」

「お?」

「何だ?」

「クリスマスパーティー……全員で出席しような」

ヴォルケンリッターには言うまでもない。既にこの言葉は何度も彼女たちに伝えた。そして答えも聞いている。だからこそ、皆の答えも聞きたかった。自分を鼓舞させたいだけかもしれないけど、それでもやはり皆もちゃんと生き残るという覚悟みたいなものを視たかったのだ。

それを察してくれたのか、皆は一度目を合わせてそして笑って私に応えた。

「「「「「勿論」」」」」

これで本当に心配はなくなった。ほっとするという言葉は正しくこういう状態の事を言うのだろう。大丈夫。奇跡は起こるはずだ。だって、私の友人は奇跡をバンバン起こしてしまう暴論遣いだ。なら、私一人の命を救うくらいの奇跡は起きてくれるはずだ。ある意味神頼みとかよりも重用されそうな存在なのである。

今度から神社の代わりに利用できるかもしれへんなと思いながら、準備に入る。何の?決まっている。闇の書の起動を。やり方は周りの人から聞いている。難しい手順はない。ただ、こう言えばいい。闇の書起動と。

それだけで私は一端夢の世界に。そこから起きられるかは自分次第。覚めない夢になるか、何時もの目覚めを迎えることが出来るか。こういう時は何時ものお呪い。もしも、慧君ならばどう思うだろうか?

そう思い少し考えて何時も通りのお呪いの結果くしょう。決まっている。面倒臭がりな彼だからこう考えるだろう。つまり━━━そんな事はどうでもいいからとっとと終わらせようと。

本当にその通りやと強がる。こんなのはさっさと終わらせて速く翠屋で皆でクリスマスパーティーをしたいと切に願う。それだけが叶うのならば今は他に何もいらない。そう、今はもうそれ以上は望まない。

だからそれ以上を望むのは未来でしよう。

決意したのに皆気付いたのか、全員の顔が引き締まった。私の顔も今あんな格好いい顔になっているのやろうか?そんな愚にも付かない考えをしながら今度こそ準備を開始する。

最早言葉はなかった。所定の位置についてそしてヴォルケンリッター達をバインドで動きを封じておく。そして各自デバイスや拳を構える。もう後戻りもすることも出来ないし、する気もない。

腕の動きと連動して腕輪についている鈴が再び鳴り響く。その音が私を急かしているようで再び苦笑する。普通ならば応援していると解釈するべきなんだろうけど、慧君の贈り物やからどう足掻いても急かしているとしか解釈できない。

だから期待に乗ってやろうかなとらしくもなくそう思いながら周りの皆の方を見る。その意図に皆気付いてくれたのか、皆は真剣な顔になってただ頷いた。こちらの準備はもうできていると。


今、この時間、この場所で闇が顕現する。


スイッチは自らの言葉。言霊とはよく言ったものだ。正しく、私は今、魔法の呪文を唱えようとしているのだ。そしてその呪文で起きる内容が何とも陳腐な世界を滅ぼす呪文だ。何時から私はRPGに出てくる魔王になってしまったのだろうか。その場合、私は大魔王○ーンやろうか?

どうでもいい思考を出来ていることから自分が何時ものコンディションである事を再確認。最後に皆の顔を見て大丈夫と確信する。だから、呪文を用意するために息をすーっと吸い込もうとして



そこでいきなり光の輪が私を捕まえた。



「……は?」

唐突な展開。勿論、こんな事は作戦の内容では絶対になかったことである。理由は簡単で幾ら才能ありの少年少女が五人いるとはいえ、それが666ページ分の魔力を蓄えた闇の書相手にバインドが簡単に聞くとは思えなかったので無駄な魔力消費は避けようという事で私にはバインドは無しの方向だったのだ。

だから、この光の輪はおかしなものだ。それに今思えばこの色は自分が知っている色ではない。なのはちゃんの桜色でもなければフェイトちゃんとアルフさんの金色でもなく、ユーノ君の翠色でもなく、クロノ君の青色でもない。かと言ってヴォルケンリッターの皆の色でもない。

じゃあ、これは誰のだ?

その思考に到った瞬間。目の前に急に人が現れた。誰かは知らない。ただ、とても綺麗な人であるというのは確かである。ただ、忍さんみたいに綺麗なお姉さんというよりはどちらかと言うと勝気なお姉さんと言った感じでアルフさんと似たような雰囲気を持っている感じがする年上ですらりとした手足を持っている人だと思う。

何故断言できないのかと言えば、それは彼女には人間にはない筈のものが備わっていたからである。それは耳と尻尾である。どう足掻いてもそれはコスプレという感じには……見えるかもなぁと少し思う。

今の現代の技術は凄い。ならば、あれくらい実は簡単なのではと思う。少なくとも忍さんならば楽に出来るのではと本気で思う。ううむ、今度量産化を真剣に頼んでみようかな。すずかちゃんや、フェイトちゃんにぴったしやと思う。いやいや、そこは敢えてのアリサちゃんにウサ耳とかを付けて辱めるのもアリやな~と現実逃避をしてみる。

そんな馬鹿な思考をしている場合ではないというのに本当にどこかの無表情少年に毒されていると結構危険やと思った。何が悲しくてこんな状態で友人にウサ耳を付けることを検討しないといけないんやろうか。

「……!!ロッテ!」

「……久しぶりだね、クロスケ。こんな形で出会いたくなかった……なんて私達が言える立場じゃないか」

ロッテとクロノ君は驚いた顔で彼女を見ていて、ロッテさんは悲しそうな顔でクロノ君を見ていた。

ロッテさん。聞いている。ちゃんと慧君から聞かされた。本当はクロノ君が言おうとしていたようだけど彼が先回りして私に聞かせたのだ。前回の闇の書事件。その最後の被害者である━━━クロノ君のお父さんであり、リンディさんの夫である人の話。


そして彼女達、使い魔を生み出した主。グレアムおじさんの部下であるという事を。


彼が何故そんな聞かしたら私を苦しめるだけの話を私に聞かせたのは何となくわかっている。それぐらい解っていないと彼を友達呼ばわりするのは絶対にできない。

きっと彼のことだ。彼女たちが来ることは予測というよりは確信していたのだと思う。そしたらきっとその時にこの話を聞かされていたのだと思う。そして大事な場面だというのに自分が混乱したりして、致命的なミスをさせないようにしたのだと思う。

そして彼はやっぱりいつも通りの憎まれ役をただで買う。今更そんな事をしても私達の慧君への評価は変わらないというのに。そう言ったところの心の機微を彼は全く理解できていないのだろうか。そして私はまたいつも通りの現実逃避をしてしまっていたようや。

「……状況が分かっていないのか、ロッテ。君の実力は確かに使い魔としては最上級だけど、ここには発展途上とはいえ魔力ランクは最高クラスの魔道士が二人とその使い魔が二人にまだまだとはいえ執務間の僕がいるんだ。幾ら君でもまさか僕たち全員に勝てるとは思っていないだろう」

「……ん。さり気なく今、僕、使い魔にカテゴリーされていなかったかい?」

「まぁ、確かに一人や二人ならばともかく五人じゃあ私の勝ち目は少ないだろうねぇ」

ユーノ君が何かツッコミをいれたようやけど今は無視。いかんなぁ。ユーノ君、段々と慧君と行動パターンが似てきたような気がする。早めに直さないと外道病を永久に患ってしまうかもしれへん。

「ロッテさん……私には多分、貴女の気持ちは解りません。大切なものを失くしたことがないから……でも。やっぱり、それでも私は復讐が正しくないことだけは解ります!だからお願いします!」

「……私からもお願いします。なのははそう言ってますけど、私は……大切なものを亡くしているからあなたの気持ちを少しは理解できると思います。恨みました。呪いました。嘆きました。ですけど、それで他人に八つ当たりしてもいいという事には絶対にないです!」

「フェイトがそう言っているんだ……今は帰ったほうが良いと思うよ……それに出来ればアタシは同族としてアンタを殴りたくはないんだ。それに使い魔ならばアンタも自分の主人の間違いを正すぐらいしなよ!じゃなきゃ、何でアタシ達がいるんだよ!!」

「……うわぁ、いい子たちばかりだねぇ。一応監視していたから知ってはいたけど、やっぱり知っていると体験じゃあ全然違うわ……大人からしたら少し羨ましくもあるし、妬みたくもなる様な子達ばかりだ。まぁ、正論で人が動くんならば今頃、戦争なんてないんだけどね」

なのはちゃんが思い思いに説得をしようとするが、それを聞いてロッテさんは疲れたような苦笑をするばかり。そこで納得してもうた。この人もあのおじいさんと同じで言葉で立ち止まるような人ではないということを。

それに気づいているのか。クロノ君とユーノ君は既に動けるように身構えているし、ヴォルケンリッターの皆もバインドを破って攻撃をしようかともくろんでいるような体勢である。

そうや。幾らロッテさんが強いかどうかは知らんけど、とりあえず強いと仮定してもこれだけの人数に勝てるとは思えへん。数が全てなんていうつもりはないけど、やっぱり人海戦術は基本の力やと思う。

だが

「やる気満々なのは結構だけど━━━出来ればこの映像を見てからにして欲しいわね」

ピッと彼女は突然、空中に映像を映す。これも異世界の技術というのは知っているけど、やっぱり何度見ても慣れるものではなかった。魔法も技術と言えば技術なのだが、魔法はまだ機械というよりは少しロマンが溢れすぎている。

何となくだが自分はなのはちゃん達が使っている魔法をまだちゃんと認識していないのではないかと思う。現実離れしすぎているのだ、魔法は。自分にもその力があるとは言われても実感はできないのだ。だからこそ簡単に受け入れることはできたのだが。

閑話休題。

そして何の映像を急に見せられるのやと思い少し警戒をした瞬間。



ピシリとガラスが罅割れるような音が頭の中で響いた。



無論、幻聴や。頭の中に硝子があったらそれは絶対死んでるからそんなことは絶対にない。だからこれは幻聴。自分の理性が耐えられなくなったから、その音を自分が知っている音で代弁した音なのである。

皆も同じらしく誰も彼もが動くことを止めた。呼吸すらしているかどうか解らない。最早この場にいる誰もが戦意を喪失しているように思える。

カタカタとなのはちゃんとフェイトちゃんのデバイスが揺れている音が聞こえる。ブルブルとクロノ君とユーノ君の拳が震える音が聞こえる。わなわなとシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの口が震える。ぷるぷると私に膝が笑う。もう何がなんだか解らない。

そんな中、ロッテさんだけはさっきと変わらず疲れたようなそして冷めたような顔でこちらをにこりともせずに見て、ただ無情に呟いた。その表情は無表情ではあったけど、慧君とは違って自然体の無表情ではなく、明らかに我慢したような無表情であった。

「さて……八神はやてちゃん。君が良い子なのはわかってるから、良い子は今、何をすればいいか解るよね?」

それは本当に正しく使われた脅し文句であった。答えはその映像を見たら頭に浮かぶものであった。



























拝啓、サンタ野郎。俺はビルの屋上で知り合い達の中心でポツンと佇むような罰を受けるような事をしたでしょうかとほとんど八つ当たり気味にクリスマスよろしくでサンタに恨みつらみを吐き出してみた。

勿論、そんな事をしても現実にはなんも変化もないので意味がないことなのだがと溜息をつく。現状の説明をするのが忘れていた。簡単に言うと買い物途中でいるといきなり周りの人間がいないなぁと気づいた直後、いきなり地面が光りだして何のスタンド攻撃だと思ったらいつの間にかこの寒い冬空の下、どこかのビルの屋上で周りには見覚えのある奴らが隣のビルに一色のバインドで捕まえられていて、というか俺が知っている全員がメルヘンチックな光の輪に捕まっており、そして目の前には勝気なお姉さんっぽい人と物静か系のお姉さんが空に浮かんでこっちを睨んでいた。しかも、獣耳と尻尾のオプション付き。マニアにはたまらないだろうなぁ。

「俺のタイムセールスを返せ!!」

「開口一番がそれなの!!?」

「なのは。今更よ……」

とりあえず、お決まりの冗談を言いながらやれやれ仕草で荷物を地面に落とす。この展開ならば起きるのは当然血が流れるアレだ。一応言っておくが、女が経験するアレではない。

「で、この状況なんだが」

「……ごめん、慧……僕が油断しなきゃ……」

「ああ、別に状況を説明しなくてもいいぞ、ユーノ。どうせ、さぁ、いよいよ闇の書を解放しようと思った瞬間。この二人に使い魔の内のどっちかが現れて、一時的に動きを止められたところに魔法世界の映像技術を使った映像でもう一人のほうが翠屋でお前らの為に仕方なく用意していたクリスマスパーティーの準備をしていた奴らをバインドで締め上げられている映像を見せられて、反撃するにも出来ずにあえなく捕まってしまって、そしてこの現状といったところだろう?ははははははは、黒いの。弁解とか言うつもりはないだろうな?」

「……まるで見たような説明口調だな」

んな事はない。明らかに争った形跡もない綺麗な姿の魔道士組の姿や流石に力になれない高町家や月村家。そしてすずかとバニングスがあんなふうに捕まっているのを見たら大体は予想がつく。

まぁ、一筋縄で成功するとは思えなかったけど、こうまで深刻化するのは予想できなかった……わけでもなかった。相手が闇の書を封印するのに固執する復讐者ならばこうはならなかっただろう。それならば、こんな人がいる世界に再び戻すわけがない。

ならば、彼女達は義務よりも感情を優先したということだろう。

「成程。正しい人間の姿だな」

「……残念ながらあたし達は使い魔だから人間っていうわけじゃないよ」

「これは失礼したと言った方がいいのかな?」

「……いや、別に」

まぁ、敵対している相手にこんな事を言われても嫌味にしか聞こえないのだろうけど。事実、ある意味で嫌味を言っているんだけどね。結局、タイプ的に言えばこの前来た老兵と似たようなタイプかなと適当に思ってみる。

とは言っても実力も同じなわけない。あの老兵も魔法世界ではかなりの実力者だったのかもしれないけど、如何せん、彼の才能はノーマルの俺でも一応戦える才能であった。

彼女達もそうならば嬉しいけど、それは絶対にない。何故ならば高町達はバインドで捕まっているのだから。ならば、絶対に相手のどっちかが、もしくはどちらも補助系に長けているか、万能型のどっちかだ。

120%で自分が死ぬことを頭は冷静に告げる。全くもって何時も通りで困る。偶には50%の確率で勝てるとかそういうのはないのだろうか。人生の厳しさに思わず笑ってしまいそうだ。別にどうでも良い事だけど。

「安心しなよ。バインドを使うつもりは今のところはないよ」

「あん?」

「だって、そんな風に勝ってもあの子たちはそんな魔法ひきょうで勝っただけとか言いそうじゃない?それじゃあ、駄目なんだよ。あの子には何の言い訳もできない絶望を貰って狂って貰わなきゃ」

「さいですか。じゃあ、一つ質問があるんだが、何で俺なんだ。はっきり言えば俺は八神の友達ではないし、あっちも口ではそう言っているけど俺みたいなのを友達と認定しているはずがない。まぁ、仮に聖女みたいな心で認定していたとしても俺が一番の友達とかいうロマン溢れるような立ち位置にいるわけないだろう。一番の絶望を与えたいのならば俺みたいなモブキャラじゃなくてもっと主人公格を狙った方がいいんじゃないのか?」

これは本音。賭けてもいい。俺程度の存在が死んでも八神はそんなに苦しまないのではと思う。だって、俺はそういう風に生きてきたし、八神に優しくするような事もした覚えもない。悲劇な少女でも同情する気がないのにどうしてそんな奴が死んだところで悲しむだろうか?

「……今までの監視で予想はしていたけど、これからあんたを殺そうとしている相手が言う台詞でもないけど━━━あんたは本当に馬鹿だね」

知るかと呟く。二度ネタのお前らに言われたくない。とりあえず、言質は取れた……と言っても安心できるはずがなかった。どうせ遠慮なく魔法とか使ってきそうだし、何よりも今のところはとか言っているし。この前の老兵みたいにやばい状況になったら遠慮なく使う気満々なんだろう。

半吸血鬼化も便利そうに見えてかなりの付け焼刃。かなりテンションを上げないと使用はできないし、それにオリジナルには程遠い身体強化。すずかにも劣っていると思う。一番使えるのは回復能力だけ。それも夜の一族と比べたら雀の涙だけど。

俺の戦力が微々たるもので一方的な戦いになると自分で理解していてもどうにもならないのが現実というものだけど。またもや、何時も通りに命を懸けなければいけないということだ。別にどうでもいいけど。

「はぁ……何が悲しくて聖夜に命を懸けて殺しあわなきゃいけないんだよ……まぁ、聖夜って決めたのは人間だけど」

「って慧君!余裕かましてんとはよ逃げて!!今回は恭也さんもいいひんのやで!?今回だけは前回みたいに上手くいくなんて可能性はないんやで!!」

「おーおー。八神がそんな現実を予測できるようになるなんて……思わず感涙してしまいそうだぜ━━━出番のない高町姉が」

「こんな場面で私に出番を回すの!?」

おっ、いたのか。まさかあそこまで気配殺しを身に着けているとは……さすがは御神の剣士。全てにおいて規格外の人外だなぁ。あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ。

「……覚悟は出来ているようだね。なら、精々出来るだけ苦しんで死にな」

「おいおい、違うだろう?何を根本的な間違いをしているんだ」

「……何がさ」

本気で解っていないようだ。本当にそれでも俺よりも長く生きてきて、戦った奴らだろうか?これぐらいの常識くらい知ってほしいものだ。別に知っていようが知っていなかろうが、どうでもいい事なのだけど。

「簡単さ。苦しむことができるのはお前らみたいな真っ当な人間の特権だよ。仕事に悩んだり、痛みに苦しんだり、友情の事で考えたり、自分の才能のなさに嘆いたり、新しい壁にぶち当たって止まったり、恋に思い悩み苦しむ。相手を痛めつけたくないのにそれでも感情が許せずに復讐をする。全部、幸福になる人の特権だ。あんたも大人だろう?なら、苦しむっていうのは悪いことばかりではないというのは知っているだろう?残酷に嬲られている時の苦痛でさえ、それから逃れようと必死に生き残ろうとする決意にもなるものさ」

「……じゃあ、あんたはどうなのさ。人としての表情を失い、人としての躊躇いを失い、人としてのルールを忘れた、あんたみたいな奴らは」

決まっていると前置きをして一旦言葉を止め、呼吸をする。そして大したことを言う気はないという感じでさらりと呟いた。

楽しむか、喜ぶんだよ・・・・・・・・・・。ああ、とは言ってもそれは別にマゾ的な意味ではないぞ。まぁ、中にはそういった奴らもいるかもしれないけど。俺みたいな屑共は死にそうになった瞬間、苦痛で喘ぐはずの瞬間。俺たちは楽しむか、喜ぶかのどちらかをするんだよ。まぁ、どっちをするかは人によって違うがね。」

そして何を楽しむのか。何を喜ぶのかも人によって違う。ははははは、こんな所で余所は余所。家は家の哲学を知ってしまうとは中々微妙な体験だね。まったく有難くない事柄なのでどうでもいいのだけど。

「……意味が分からないね」

「分からなくてもいいんじゃない?分かったところでどうにもならないんだし」

「……ふん、じゃあ、もう始めようか。正直に言ってあんたが時間稼ぎをしているようにも思えてきたし」

「おうおう。そいつは同感だ。正直言ってこの寒空の下で何時までも棒立ちなんて馬鹿ぐらいしかしねぇよ。いい加減温まりたくなってきたよ」

お互いに構える。どうやらもう一人の空中にいる奴は戦う気は毛頭にないらしい。つまりは一騎打ちの状態。最近は騎士とかそういうのが流行っているのだろうか。見たところ相手は格闘で勝負をしようという構えだ。

無論、そこから魔法が飛んでくる可能性もあるのだけど。あっちは戦術がある意味で無限で、こっちは有限。やになっちゃう。普通ならば戦う前から戦意を放棄してしまうかもしれない。

「さて、では、正々堂々戦おうとしようではないか」

「……上等じゃない。来なよ。私は真正面らかあんたを……!」

瞬間的に袖から取り出したナイフを相手の胴体を狙って投げた。それも結構な速さで投げたのだが、相手もすぐに気付いたのか。俺以上恭也さん達以下のスピードで危なげなく躱した。

ちっ、今のでケリが付いていたら楽に終わったものを。そう思ってたら、周り全員がいきなり叫んだ、

「初手からいきなり嘘を吐きやがった(なの、吐いたよ、吐いたわ、)!!!」

「ええい、五月蠅い。もう少し静かにしやがれ」

嘘をついて何が悪い。戦力差が歴然なのだから騙し技でも何でもしなきゃ生き残るなんてとてもじゃないが無理に決まっているじゃないか。才能がないのならば小手先に頼るのみ。これ常識ね。

「……!こんの━━━」

「糞餓鬼ってか!おいおい騙し討ちされたくらいで何を逆ギレしてんだよ。しっかりしろ。むしろ奇襲を仕掛けているのはお前達なんだぞ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、この猫共」

「……っ!」

勘違いすんな、思い上がるな、つけあがるな、善人ぶんな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は被害者でお前らが加害者なんだぞ・・・・・・・・・・・・・・・・・

自分で言っておいて思う。これではどっちが加害者か解らないと。理解して言葉をしゃべる。言葉とは言所の時代からある一種の力ある魔法だ。障害さえなければ誰でも出来る魔法。酷く陳腐でそこらの石程度の輝き。

でも、仕方がない。名付けたのは俺ではなく、周りの人間だ。誰が最初に呼んだかは━━━忘れたが、それでも名付けたのは俺ではないのだから責任は俺じゃなくそいつのせいという事にしてもらおう。


暴論遣い。


名付けられたのは俺はその名の通り暴れる論理で相手を惑わせ、痛めつけ、傷つけ、狂わせよう。最弱が強者に挑む術なぞそれぐらいしかないのだから。痛覚遮断と集中力、そしてこのひねくれた口しか、自分のは武器はないのだから。

「まさか卑怯だなんて言わないだろうね?こっちはたかが非力の餓鬼。そっちは英雄の使い魔等と言うぐらいなんだ。経験豊富に更には魔法使いなんてメルヘン。卑怯はそっちの方だと全員が口を揃えているだろうね」

「……解っていたけど……!ほんと、むかつく……!」

ギリギリという歯軋り音がここまで聞こえてくる。ネコ科が怒れくるっているねぇ。と思っていたら何故か顔つきが誰かの話を聞いている感じになっている。何故だと思い、直ぐに答えを思いついた。

確か念話とかいうやつだろう。多分、上空にいる高町達の見張り組の役を請け負っている清楚系の女の人が目の前の暴力系猫に冷静になるように注意をしているのだろう。

厄介だ。どうやらもう一人はユーノや黒いのみたいに冷静なブレイン役らしい。こういう相手には暴論は通じるといえば通じるけど余程上手くやらないと決まらない。今のならば普通なら片方は完璧に冷静さを失わせることはできたのだけど、魔法という常識外の手段のせいで上手く立ち直らされてしまった。

むしろ、肉声だったならば逆効果だっただろうに。冷静さを失っているときに他人の声で落ち着けと言われても大抵は逆効果で冷静さを失わされるという可能性があるのだ。しかし、念話というものが詳しいことは知らないが、要は頭の中に響く声なのだろう。

音量のほうは知らないが、他人の声をいきなり頭の中で聞かせられたら嫌でも思考が停止すると思う。それが慣れた魔法使いでも(一方的な偏見だが)。とりあえず肉声よりかは驚くだろう。

ちっ、この様子だと言論は通じないと見たほうがいいかもしれない。

「まっ、いいや。」

呟いてネガティブ思考を放棄する。別に逆境は今に始まったことではない。これぐらいの逆境ならば何時も乗り越えてきた。何度も死に掛け、それでも地獄に這い上がってきた。まだ死ねないという妄執を持って他人の願いを■■した。

そこに何の後悔もなければ罪悪感もない。間違ったことしかしてないという自覚なんてありまくりだ。しかし、だからと言って自分が選んだことだ。

間違いだったとも。最低だったとも。失敗だったとも。汚濁だったとも。最悪だったとも。醜悪だったとも。やってはいけない事だったとも。しかし、そんなのはする前から解りきっていた事だ。

ならば、することは後悔ではなく、再び手を汚すための前進だ。

「とっとと来たらどうだ、英雄の使い魔。正当防衛という素敵な言葉にのっとってお前たちを殺してやる」

だから俺は何の躊躇もなくお前たちを殺すと宣言した。陳腐な宣言だと思う。そしてこれによって相手がまた少し怒り狂ってくれないかという下心もある。だけど、何故か反応は想像していたものと違った。

もっとこう、雰囲気が冷たくなると思っていた。静まりはした。しかし、それは思っていたものとは違った。それは相手の視線がだ。格下の子供に殺してやると言われたのだ。もっと冷たい殺気を込めてにらんでくるか、もしくは怒気を込めてこっちを睨むか、感情によって起きる動揺を無視してこっちを無視のどれかだと思っていた。

しかし、どれでもなかった。予想外にもその瞳には何故かこちらを憐れんでいるような感情が込められていた。そしてその視線のままこっちに向けて語られた。

「……無理だと思うな。あんたじゃ、どう足掻いても私たちを殺せないと思うよ」

「ほう?それは自分の実力が俺よりも上だという自信からくるものかね?あんまり過信をしていると自分の足元がおろそかになってしまうので注意しておいた方がいいと思うよ」

「……ううん、違うね。私の実力云々じゃない。問題はあんたのほうにあるわ」

「はてさて。もしかして、俺の実力が今度は低いと思っての発言だったのかね。それに関しては否定はしないと言っておこうではないか。まぁ、窮鼠の例があるから気を付けたほうがいいかもしれないよ?」

「……違う。実力だけで言っているんじゃない」

「はぁ……じゃあ、何だと言うのかね?このままではグダグダの展開になってしまうぞ」

「……だって、あんた」

ようやくかといった調子で、ずっと口を濁していた台詞を吐きだした。


「こっちが使い魔なのに……こっちがあんたを殺そうとしているのに……それなのにあんた。私たちを━━━真っ当な人間だなって私達に言ってくるじゃないか……」


「……」

意図したことではない。憐れんでほしいだなんて全くこれっぽちも思っていないのだから当たり前だ。だから、これはある意味事故みたいなもの。素で思ってしまった事を言っただけなのだ。

だけど━━━それは仕方がない事であった。だって、俺の理論みたいなものでは相手の二人は明らかちゃんとした『人間』だったのだから。どっかの吸血鬼の御嬢さんと同じで。

「……ふん。まぁ、いいか」

それを気にせずわざと芝居かかった風に右手を上げ、そして指を鳴らす。バチンと良い音が鳴る。それを何だと思ってこっちを睨んでいる猫姉妹。

直後。


パリンとガラスを割るような音と共に黒いのがバインドを破って上空に浮かんでいるもう一人の方を攻撃しようとする。


「!!クロノ!?」

「アリア!!」

何時の間に取り出したのか、機械的な杖を構えており既に光が灯っている。俺は知らないが、それはブレイズキャノンと言って黒いのの魔法では一番攻撃力が高い砲撃だ。

「アリア!」

直後に俺の目の前の奴が魔方陣を目の前に出してまるで鎖のようなバインドを出してアリアとかいう女性に向けて発射し、彼女の足を絡め捕る。そのまま引っ張って脱出させようという魂胆か。

だが、目の前に俺がいる事をお忘れのようだ。だから、その無褒美なお腹に素晴らしいキックを御馳走させて貰った。ドガッと良い音が響いて、相手の体がくの字に曲がる。しかし、ど根性か、吹っ飛びながらもバインド制御を怠らずに上にいた女性を自分の傍に無理矢理引っ張って黒いのの魔法を避けさせていた。

ちっ、あれでせめて片方死んでいたら楽だったものをと愚痴っても仕方がない。こっちに来た黒いのに向けて喋りかけてくる。

「何だ黒いの。意外と本当に抜け出れたな。こっちは全然信じていなかったけど」

「ああ、僕の方も君がまさか時間稼ぎだなんて凄い事を出来るとは思ってもいなかったよ。精々0秒くらいしか稼げないと思っていたよ。ん?ああ、済まない。これじゃあ、君は何もできていないな」

「ははははは。地獄に堕ちたら閻魔さんにその舌を引っこ抜いてもらえ。そうすれば不特定多数の人間が喜ぶと思うぞ」

「閻魔に舌を抜かれるべきは君の方だと思うけどね。ああ、君の場合は舌程度では済まない悪行を積み重ねているからかなりの罰を受けることになっているからか。それは残念だったな。」

この野郎。出会った時からは考えられないくらい舌が回りやがる。こんな風に育てた覚えお兄ちゃんないのに。まぁ、冗談を言えるという事は冷静であるという証だから、どうやら相手が知り合いでも戦える様子だ。

「……っ!クロスケ!あんたどうやって……いや、それよりもどうやって意思疎通をしたんだ……!そこの子は魔導師じゃないから念話は使えないはずだ!!」

「……最初の質問は僕が一体どれだけ君達の修業を受けていたと思うんだ。あれからも修業をしていたし、今度もしも模擬戦をした場合に過去のデータから君達のバインド構成を勉強していたんだよ。後者については━━━」

「ん?ああ、何となくっというか黒いのが視線で『お願いだから時間を稼いで!』なんて乙女的な視線を向けてきたからな」

「誰が乙女か」

その台詞は猫姉妹含めて周りの全員が驚いた。会って間もないと言ってもいいのか解らないが、つまり、彼らはただ視線だけでお互いの役割を一瞬で決め、行動したのだ。余程相手の考えを読み取れるような仲でないと無理だと思う。

なのに彼らは不可能を可能にし、言葉ではなく行動でお互いの役割を示した。何て子供達だと全員が思った。片や管理局の執務官。将来を有望とされ、実際実力、頭ともレベルが高い少年。

片や今は何処にでもいるような少年。性格とかはともかくそれ以外は特徴的なモノがない少年。それがこんなにも盤面を狂わせる。成程、この無表情の少年は確かに災厄の類だ。少なくとも敵方には。

「……さて、一見有利の立場になった気がするが」

「まぁ、実際に見れば君のせいで不利と言えば不利かな。君は魔力がなく、身体能力も僕と同等か以下だ。それに比べてロッテとアリアは僕が知っている限り、使い魔最強の称号を受けてもいいくらいの実力者だ。僕が圧倒的に弱いというわけでもないけど、それでも彼女達に勝てるのは五分五分といったところかな。正直に言えば敗北の可能性は120%だね」

「勝利の可能性は?」

「120%」

「ほう?黒いのの分際で良く吠えたな。誰かの影響か?」

「君といれば嫌でもこんな性格になってしまうさ。勝ち目のない戦いでも不敵であれ。君から覚えたものさ」

「何?人から奪うというのは無礼な。罰として後でお前の財布を軽くしようか。」

「君に奢るのは許せないが、はやてに奢るのならば奮発するよ」

黒いのは苦笑。俺は無表情。どうやらお互いコンディションは良い方らしく暴れるのにもってこいのテンションだった。そう思っていると少し頭痛がして、思わず手で顔を覆う。そうしていたら視界の端のすずかも似たような感じになっているようだ。少し顔をしかめている。

成程、理解した。何となく解った。きっと、今、手で覆っている所から零れ落ちるように━━━赤色の綺麗な目が輝いているだろう。

何故かなんて知るはずがない。テンションが上がらないと光らない瞳なのにちゃんと光っている。それに理由なんてどうでもいい。これのお蔭でさっきよりも遥かにマシな戦いが出来る準備が出来たという事なのだから。

「じゃ、始めようか。こんな聖夜だ。きっと神様だって血を流すことくらい許してくれるだろうさ」

「残念ながら。僕は血を流させる気は全くないよ」

「……上等だよ、クロスケに生意気な小僧。遠慮なくぶん殴ってやる!」

「……やると決めたからには本気でやるわ」

お互い避ける気のない戦いがようやく始まった。命を以て命を奪う戦い。それは魔法という神秘が混ざっても同じこと。ありとあらゆる神秘も結局は原初のルールで縛られるという事を思ってしまいそうになる戦い。

それはお互いが発する音で始まった。


























そこから先ははっきり言ってレベルの違う戦いだった。最初に攻撃をしたのは慧とロッテさんだった。お互い全速力で走り、間合いに近づき、そして全力の拳を拳で相殺した。

ドン!とまるで堅いものが堅いものに激突したような音が響いた。

ユーノからしたら人の拳がそんな音を出すなんてと驚嘆するような事象であった。しかし、二人の拳はそれだけでは終わらない。すぐさま拳を引き、そしてそれからは殴打の応酬。殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って殴って、捌いて捌いて捌いて捌いて捌いて捌いて捌いて捌いて捌いての繰り返し。

ロッテさんは今まで積み上げてきた戦いの経験と手練から拳を。慧は半吸血鬼としての身体能力とロッテさんには及ばないとはいえ、少なくもない経験から拳を。手加減だなんてお互い考えていないと思われる拳。

しかし、永劫に続く均衡かと思われた拳の応酬は意外とすぐに終わった。慧が放った右ストレートをロッテさんは難なく躱し、さっきまでとは違い、スピードを上げてのキック。さっきまではどうやら手加減をしていたようだ。

いきなりリズムが変わり慧も咄嗟に反応出来ずにそのまま吹っ飛ばされる。為す術もなくダメージを受け、そのまま重力によって地面に落とされて、転がり続ける。多分三、四メートルくらい転がったと思う。

しかし、そこは痛覚遮断か、もしくはダメージを軽減していたのか地面に転がっているのを利用してすぐさま起き上がり、再びロッテさんの方に走ろうとした慧の眼前に━━━クロノが横倒しで突っ込んできた。

「「……がっ!」」

流石の慧も立ち上がって直ぐでは避けることも受け止めることも出来ずに、そのままクロノの体を喰らってしまう。どうやら、そっちは見ていなかったのだが、アリアさんに吹っ飛ばされたらしい。そして再び転がる。周りの皆が思わず悲鳴を上げる。しかし、ロッテさんはそれを気にせずに飛行魔法を利用しての飛び蹴りの姿勢を維持したままの突進。

二人とも避けようとしていたが、お互い体が密着していたので上手く動くことが出来ずに結果。蹴りで二人の体は彼らの身長くらいまで浮かびあげさせられた。痛々しい姿に思わず目を逸らしたくなる。

しかし、その後は二人とも地面に落ちた瞬間に合わせて前転をして受け身を取る。どうやらまだまだ体は大丈夫みたいだったので思わずほっとする。

「ちっ……!何だあの猫は!あいつは○ガ様か!!」

「じゃあ、BGMでもかけて僕達のテンションを上げてみるか!?」

「おうおう、素晴らしいアイディアだなぁ!!何なら歌おうか?愛○さと切なさと心強さと~♪ってな!」

「音痴が黙っ……!」

冗談を言い合っていた二人が直ぐに沈黙してしまう。原因は彼らの周り。周りにはまるで星が地上に落ちてきたのかと思ってしまう輝き。思わず触りたくなるくらい綺麗な光の塊。しかし、実際は触れるものを壊す光のスフィア。

その数、凡そ十と四つ。

その全てが彼ら二人をロックオンしている。瞬間的な判断でクロノは飛ぼうとするが、そこに飛べない慧がいる事を直ぐに思い出して、思い止まる。そして彼に向けて叫ぶクロノ。

「洒落にならない状況だが━━━何なら手を貸してやろうかい!?」

「てめぇの手なんてもらうくらいならばまだバニングスの足技を受けた方がマシだわ!!」

「どういう「そうか!じゃあ、頑張れ!!」うっそぉ!!?」

アリサが慧の冗談に突っ込もうとしていたが、そこをクロノが唐突に本当に遠慮なく空中に自分だけ逃げていった事にアリサは思わず変な声で叫んでしまっている。当然だ、僕も驚いている。まさかあの場面で慧を見捨てるとは思えなかったからだ。

魔導師ならばともかく慧は魔力すらないただの人だ。多少、人ではないような状態にはなっているかもしれないが、それでもどっちかと言えば人だろう。そんな彼があれだけのスフィアを受けて無事で済むとは思えない。それに彼らの目的は慧の命だ。

非殺傷設定など絶対切っているはずだ。だから、どう足掻いても喰らったら━━━死ぬ。

皆して悲鳴をあげたり、彼の名前を読んだり、バインドの解除をしようとしている。しかし、かなりのレベルのバインドであり、補助魔法に関しては自信がある僕やシャマルさんでさえ読み解くのに時間がかかるバインドなのである。

間に合わないと思考し、思わず叫ぼうとした瞬間に彼は動いた。それは速いの一言の動きであった。彼の両手は淀みなく彼が隠して持ち歩いているナイフを素早く取り出す。袖はおろか靴の中や胸ポケット、服の下にも隠していたらしくその数、スフィアと同じく十と四つ。

それを彼は全てスフィア目掛けて投げた。流石に残部一片にというわけではないが、一本ずつしかし、確実に全部を当てた。当たる度にボンボン爆発音が辺りを震えさせる。そして約十五秒で全部を潰した。

この結果に一番驚いているのは潰した本人であった。数個は外すと思っていたのに全部当てることが出来た。自分の投擲技術が一流だったからなんて驕る気はない。勿論、並み以下というつもりもないが。

答えは運と半吸血鬼能力によって得られた力と五感の強化だろう。自分が受けている恩恵に心の奥底でこれをくれた相手に微妙に感謝しているのであった。

そして爆発によって出来上がった爆風によって二人の姿は僕達には見えなくなった。



























戦闘して解った事がある。これはあの無表情少年と戦った人間全員が感じた事であると断言していいかもしれない。いや、絶対そうだろう。思った事はたった一つだ。すなわち━━━強くはない、しかし、恐敵だと。

そう思いながら、アリアの爆発で発生した煙の中、少年達がどこから出るか、後漢に意識を傾けていたら、ぶわっと煙を切り裂くように無表情少年が来た。造ることも出来るその右拳は今はただ打倒するための形に。

レベルは高い。この年でここまで立派に拳を握れるのは素直に凄いと言える。だがと続く。そうだ、確かにその年では十分に強い。多分、同じ年で格闘技を競ったのならば高いクラスまで行けるだろう。

しかし、この場においては最弱。私はそれを難なく躱して、再び足を相手の顎に入れ込む。グキッと嫌な音が響いて、頭は上を強制的に見上げられる。そして相手は暫くの脳震盪。ほんの少し相手の動きはさっきよりも鈍くなる。

そこを見抜いて瞬間的に相手の懐に入り、両の拳を相手の鳩尾に突くように叩き込む。右腕が入る。相手がくの字に曲がる。拳には嫌な手応え。しかし、気にせずに今度は左腕を同じ場所に入れる。少年はただ喰らうだけ。

そして最後のフィニッシュに再び左腕の反動で後ろに思いっきり下げていた腕を再び同じ場所に殴る。そしてそのまま吹っ飛ぶ。ここで本来ならばゲームセット。少なくとも4日くらいは胃に真面に食事が入れないくらいの威力を入れた。

だけど、恐怖はここから。少年は明らかにダメージを負っていた。それは殴っていたあたしだから言える事だ。しかし、事もあろうことに少年は何事もなかったように起き上がり、そのままこっちに突進してくる。

またこれだ。さっきも思ったが、そうなのだ。この勝負。さっきからあたしの方が勝っているのだ。圧勝だ。楽勝とは言わない。相手の拳は本気だ。当たりさえすれば、致命傷とはいかなくても隙は出来る。当たりさえすればだが。

再び突っ込んでくる、相手は体を右に振ってフェイントを仕掛けて本命の左拳を振ってきた。上手い体の使い方だが、技術に体がついて来れてない。スピードとパワーが伴っていないのだ。これではフェイントを仕掛けて相手の隙を狙っても、そのまま躱したり、受け止めたり、捌いたりすることも出来る。

相手の拳に合わせて私はくるりと回る。それは見る人によっては相手の動きに合わせて踊るような動き。しかし、そこに無駄な動き。右足を持ち上げて、回転の勢いを殺さずに右回し蹴り。ヒット。

再び彼は転がる。しかし、彼は唇を切ったのか口から血を流しながらも、しかし、自分の両足で難なく立ち上がり、再びこっちに走ってくる。次は上体をわざと上に向けていて、顔狙いかと思ったら、彼は唐突にしゃがんで両足を折るみたいに足を振った。

フェイントに少し引っ掛かったが、すぐさまジャンプをして避ける。そしたら彼は両手で勢いよく地面を叩いてその反動で立ち上がり、そのまま殴ろうとする。普通ならばそれで良かった。空中は足場がない。避ける事も叶わなければ、防御も中々上手くいかないだろう。

反撃ならば尚更。そうこの上なく良い手段。普通ならば。しかし、こっちは魔導師なのだ。空中適正がない魔導師ならばともかくこちとら英雄の使い魔。空を飛べないはずがない。

空を飛ぶ猫。しかし、当たり前といったら当たり前。猫の使い魔なのだ。空くらい飛べなかったらメルヘンが足りない。後ろに少しスウェーするように飛び、彼の拳は空振りになる。そして私は飛行魔法に指向性を与え、回転。そのまま○巻旋風脚。

と言っても当たったのは一度だが、再び吹っ飛ぶ。

しかし。


彼は立ち上がる。

体が幾ら傷だらけになろうとも、その眼光は一切の衰えがなかった。むしろ、更に鋭くなっている。宝石のような赤は聖夜の月の下。地上の星となって輝く。


それは命の色だと理解し━━━恐怖した。


ぞくっと体が震えあがる。敵対した提督の恐怖を今初めて理解した。彼の戦い方は知っていたはずだった。しかし、百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。これは経験して初めて知る恐怖だ。

何度叩いても立ち上がる亡者の如き執念。何度斬っても立ち上がる死者の如き妄念。何度絶望を見せても問答無用と無言で答えて立ち上がる狂戦士の如き無理解。

この命を砕くのに後何回拳を叩きこめばいいのか全く分からない。こんな戦いは初めてである。そうだ。前の提督との戦いは彼の本来の戦いではないのかもしれない。

彼は途中の一騎打ちの時、提督相手に加速魔法を打ち破ると言った奇跡を成し遂げていた。それでてっきり、彼は頭脳で敵と戦い、相手の知らない弱点を突くのが彼の戦法だと思っていた。

しかし、蓋を開けたらこの様。この前みたいに弱点を探る時間もなく、ただ技術で圧倒されている場合の戦い。そうなると彼の恐怖の本領が発揮される。つまり、どれだけダメージを受けても何度でも立ち上がり続けるという幽鬼のような戦い方。

言葉にすれば当たり前のように思えるだろう。だが、実際に対峙してこれ程恐怖することはない。何度叩いても立ち上がって攻めてくる。終わりがあるのかどうか怪しくなってしまう。拳を握って殴っているこっちの方が痛くなってしまう。

自分がちゃんと相手に攻撃を出来ているのが解らなくなってしまう。今までやって来たことを信じられなくなってしまう。殴り続けることによって疲労が押し寄せてきてしまう。

そして末期はこうだろう。


あたしが戦っているのは本当に人間なんだろうかと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


重傷だ。自分でも解っているのに止めれない。相手と向かい合うのがこんなに怖い事だなんてことは初めて知った。あと、何回すればこれが終わるのか。そもそも終わりがあるのかと。

私は終わりがあるのか解らないレースに無理矢理参戦させられたことにようやく気付いてしまった。




























「……!ロッテ!!?」

ロッテが恐怖している。それが如実に伝わってくる。見たところロッテの方が優勢に戦っているのは解っている。そもそも、年齢には似合わない実力と頭があるとはいえ、私達のレベルには来ていないのだ。どう足掻いても正攻法ではロッテや私の方があの少年に勝っているのだ。

でも、少年からしたらそんな事はどうでもいいのだろう。相手が自分よりも強いというのが当たり前の彼からしたら、彼が昔対峙した人と私達は等価の存在なのだろう。だからこそ、立ち止まる理由がない。

絶望的な戦況など何時もの事である彼は絶望なんて慣れ親しんだもの。故に痛みや状況で絶望なんてする事がない。それが敵対している私達からしたら恐怖そのものだ。

戦いなんて好きであるはずがない。こうして技術を学んでかなりの高みの境地に辿り着いたと自覚している私達だが、別に争いさえなければこんな事をするはずがなかった。憎しみや悲しみがなければお父様も管理局に所属なんてしなかっただろう。

こんな復讐なんてやっているけど、そもそもあの悲劇が無かったらこんな事をするはずがなかった。この手を血の染めるなんて……誰が好きでやるモノかと私は思う。だから今回の復讐だって、私達はあの無表情少年を無駄に苦しめることなく殺して、八つ当たりともいえる闇の書への復讐をするのが目的であった。

それなのに。

それなのに無表情の少年はもっと戦えと要求してくる。自分はまだ終わっていない。故に最後まで苦しめと。これではどっちが苦しめているのか解らなくなってくる。それをロッテは直に受けていた。

使い魔だからか。私とロッテの精神リンクはお父様程ではないけど、薄く繋がっている。その薄さからでも彼女が感じている恐怖が繋がってくる。思わず手助けに行こうとすると。

「何処に行こうとするんだ、アリア?」

その言葉と共に飛んできた青い光。クロノの得意魔法の一つのスティンガーレイが飛んできた。マルチタスクによる一瞬の思考。防御は駄目だ。威力自体は低いけど、貫通精度が高いのでバリアは突破される。それにスピードも高い。正しく対魔道視戦にはもってこいの魔法である。

だから私は無理矢理ロッテの方に向かおうとしていた飛行魔法で後ろに無理矢理バックした。余りにも無茶な動きに強烈なGが体に来た。思わず込み上げてきた吐き気を堪える。そう思っていたら体が青い光で捕縛された。

「これは……ディレイドバインド……!何時の間に!」

「君はロッテの心配をし過ぎなんだよ……悪い事じゃないけど、お蔭で隙が出来まくりだよ!!」

バインドブレイクをしようとバインドの構成を一瞬で計算しようとする。

「遅い!!」

『Blaze Cannon』

無機質な声と共に発生するのは熱量を伴った砲撃。当たったら不味いと考えるまでもなく解る。だから慌てずにバインドブレイクに集中。

一秒

砲撃は発射される。

二秒

着弾まで後四秒と判断。

三秒

バインドに亀裂が走る。それと同時に汗がタラリと流れる。

四秒

砲撃が着実に迫ってくる。それに思わず叫びそうになるが、自制してこの時だけ全能力をバインドの破壊に努める。

五秒

「……私の方が速いわ、クロノ!」

バインドブレイク成功。このまま横に避ける。そうすれば仕切り直━━━

「……え?」

避けた先で爆発。そこまで威力はなかった。ただ少しの痛みと爆発による威力で元来た場所に戻るだけである。そう。ブレイズキャノンが迫っている場所に。何が爆発したか。それは避ける0.5秒前に見た。それはただのスフィア。

ダメージで計算すれば魔導師を倒すには圧倒的に火力が足りていない。出来る事とすれば相手を少し動かす事だけ。その少しが現実を少し動かしたのである。

「……君達との訓練はぼくの血肉となっている」

「そんな中、クロノが独り言みたいに語りかけている。事実、独り言なのかもしれない。雰囲気でわかる。彼の雰囲気は今、返事をしてもらわなくてもいいと物語っている。

「一番かはどうかは知らないけど、君達の凄さはよく解っているつもりだ。ある意味憧れだった。グレアム提督と一緒で尊敬していた。今、こんな状況になってもその感情が恥だとは思わない」

素直じゃないクロノからの告白。それは何時もならば本当にうれしいと思われる言葉の数々。だけど、今、この場、この状況で言われたらただ苦しいだけ。こっちは貴方を裏切ったのに。それなのに尊敬されているなどと言われても罪悪感で苦しいだけなのに。

「そんな君が。僕をここまで強くしてくれた君がこの場面で僕のバインドを━━━解除できないはずがない」

つまりはそういう事だと。僕は自分の強さや戦術を信じたのではなく、私達の強さを信じたからこそ、そこにスフィアを置いたという事だと。私がバインドを解除してまだ動けるという事を信じたのだ。

思わず苦笑して呟いてしまった。

「━━━最低」

そして着弾。聖夜の下で季節外れの花火が開いた。




























「!!アリア!!?」

少し離れたところに黒いのが落とした猫が落ちてきた。どうやら結構なダメージを受けてたようだが、まだ倒れてはいないようだ。あれだけ決めておいてそれはどうよと思うが、まぁ、別にどうでも良い事。

今は目の前の出来事が大事。ようやくのチャンス到来。今まで殴られ続けていた俺は長年とは言えないかもしれないが、それでも積み上げてきた経験がそう告げてきた。ここが勝利のチャンスだと。ここを逃したら後がないと。

ほら、目の前には隙だらけの猫さんがいる。ならば、ここで積年の恨み(この数分間の恨みともいう)。晴らさずにいられないというのが人の心情。もとい、とりあえず殴ろうという善意である。

「おい!目の前に蠅が飛んでるから俺が殴ってやるぜ!!」

「……!」

ドガァ!!とようやく殴られ続けていた恨みを一発返した。それも顎。直接、脳にダメージが行く場所である。ぐらぐらと相手の体は脳震盪で揺れている。そこで柔道の背負い投げを彼女に思いっきり食らわせる。正し、ちゃんとした背負い投げではなくて、地面に叩きつけずに本当に後ろに投げただけの背負い投げである。

「どっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

「う、うわぁお……!」

相手も脳震盪のせいで為す術もなく吹っ飛ばされる。そのまま脳震盪から回復して飛行魔法なり、防御魔法なり何でも使えばその状態から何とかなって、このチャンスは無に帰すだろう。

そう、そのままならば。

「!ク、クロスケ……!」

上空からの急降下をしてくる黒いの。その進行先は俺が吹っ飛ばした猫の方に一直線。丁度、俺の横を通り過ぎる所から来る。最初から俺が決定打を撃てるだなんて勘違いはしていない。

あの老兵を除いたら魔導師を倒すことが出来るのは同じ魔導師だけだ。例外である御神流でない限り。何の力もない俺では不可能だ。故にこちらの攻撃は全て黒いのに頼る事になる。非常に胸糞が悪いが。

「ロッテ!」

「……っく!大丈夫!攻撃が来るという事が解ってるんなら……!」

防ぎようは幾らでもあると叫んでから腕を交差して、そして彼女の正面には光り輝く結界が張られる。まぁ、どれだけ凄いのか解らないが、解らないモノは現実を厳しく見るべきである。

それにやるのは黒いのだし。まぁ、だから厳しく見て、突破できないと思った方が良いだろう。それならば、この特攻は無意味なものとなって、勝利の可能性は無くなるというのがパターンだろう。

だけど、それにしてもだ。


視野狭角を起こし過ぎではないでしょうか、猫共?


そして黒いのが俺の横を通り過ぎようとした瞬間に俺が腕を伸ばして、黒いのの腕を掴む。それに関しては黒いのは驚くこともせずに、ただ俺に無駄な負担がかからない様に体から力を抜いた。

「「……!?」」

二人が何をするのかという顔になっている。それを俺は声だけで、嘲笑い、黒いのは獰猛な笑顔で迎える。そして俺がとった行動は至ってシンプルであった。

俺は黒いのが乗っているスピードを殺さずに、腕を支点に思いっきり、黒いのをくるりと軌道修正する。キキキーーーーーーーー!!と嫌な音が足の方が聞こえる。少し焦げ臭いにおいがするから、もしかしたら靴底が摩擦で擦り切れたかもしれない。

後でそれは女狐艦長にでも請求しよう。そしてそのまま黒いの事、自分も反転。そして俺達の視線の先にいるのは━━━確かアリアとか言われている猫である。

「━━━」

いきなり標的とされた猫は息を呑むだけで反応は出来なかった。そして、俺はそのまま黒いのを━━━投げ飛ばした。

ビュンと風を切るどころか、貫くような音を出しながら、アリアとかいう猫の方に黒いのは大砲の砲弾の様に爆ぜた。余りのスピードかどうかは魔法世界では知らないが、意表をついたという点ではまぁまぁの点だろう。

「……!あんた達!最初からアリアを……!」

「気づかなかったのか?だって、そうだろう?あそこにいる俺の知り合いを縛っているのはこっちなんだろう?」

「……ならば、僕達がするのは人質の解放と戦力の増加。その両方を狙ってアリアを狙うのは当たり前の魂胆だ!」

「だけど、あからさまに狙って逃げに徹してもらったら困る。だからこそ」

「僕達は一見、各個撃破のような戦い方をしていたんだよ」

「つまるところお前達は」

「結局のところ、君達は」


「「俺(僕)と正々堂々と決闘をしようとした時に負けていたんだよ」」


見事なコンビネーションなどと他人は言うかもしれないが、俺は別に黒いのに合わせたつもりは全くない。黒いのも恐らくそうだろう。そもそも、まったく接した覚えがない人間とどうやって息を合わせれるというのだ。

こんな事が出来たのは簡単な事だ。つまり、お互い、息を合わせようとすることを諦めたのだ・・・・・・・・・・・・・・・・・

息を合わせようなどと思っていたら絶対失敗する。それは目に見えている事だ。恭也さんみたいに長年付き合ってきた相手とかならばともかく数か月は付き合っているとはいえ、こうしてちゃんと生身で話したことは両手の指で数えられるくらいなのだ。そんなのでコンビネーションなど出来る筈がない。

故に息を合わせようという試みは捨てた。そしたらどうなる?そう、自分達だけの意思で戦う事になる、そうすると考えられるのは共闘している相手の事ではない。今、この状況をどうやって解決するかという事になる。

そしたら馬鹿でも思いつく。一人では絶対に勝てない。二人でも勝てない。ならば、人数を増やせばいい。戦えるメンバーは直ぐ傍にいる。だけど、彼らは捕まっている。そして結論。

ならば、捕まえている術者を倒せばいい。

そして作戦がさっきも話したようになる。至って合理的な思考から出る作戦なのである。勝利の為の思考が出来る人間ならば誰でも出来る事なのである。

結局、難しい事を言っているかもしれないが、要は負けず嫌いがどんなことをしてくるか読み切れなかった相手が悪いという事だ。つまり、ざまぁみやがれ・・・・・・・という事だ。

そして黒いのは一直線で猫の方に飛んでいく。既に杖の先には魔力光が光っている。相手は反射的な動きで防御をしようとしているが、いきなりの奇襲に反応できていない。

終わりだと思った。


思った瞬間であった。






黒いのの腕を掴んで止める初老の男性が現れたのは。





























あとがき
更新が遅くなって申し訳ありません。
テスト前で書く暇がなくって……
今回はロッテ&アリア戦ですが、少し改造している点があります。
それは彼女達が復讐を第一としている所です。
原作ではどちらかと言うと闇の書の被害を失くす為と言う大義名分で戦っていたと思いますが、これでは私情に走って戦ってもらってます。
半吸血鬼の力を使ったのはご都合主義だと言われるかもしれませんが、結局はご都合主義が起きても、我らが暴論遣いはロッテにぼろぼろにされているのですが。
作者的な言い方だとすずかの身体能力がトップクラスならば、慧はハイクラスと言ったところでしょう。それにすずかは吸血鬼としての力をそんなに使っていないのに、それなので実際の運動神経はすずかの方が上と言う設定です。
そして最後に現れたのは言わなくても解ると思う人です。これは敵側のご都合主義が起きたと言った感じでしょうか。
次がどうなるか。それを楽しみにしてもらえたら光栄です。
感想、お待ちしてます。


前を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026559114456177