突然、自分の眼がパチクリと開く。自分でも何故いきなり目が開いたのか解らない。そう思っていたら、何故か自分の顔の前にも目が二つパチクリと開いているではないですか。
はて?何で俺の目の前に目が二つあるのでしょうか?ややや?そういえば目の周りには顔や鼻や眉毛もあるぞ。それに髪の毛や耳や口までもあるではありませんか。これは一体全体どういう事ですか?
そう、これではまるで目の前に顔があるような描写ではないじゃないか。おかしいな。それじゃあ、理論的に目の前に他人が一人いるという事になるという事だ。うむ、自分の頭はちゃんと正常みたいだ。重畳重畳。
では、誰が目の前にいるのだろうと思い、少し視界を広くしてみた。そしてその顔の形や輪郭、髪の長さを見て、記憶の中の人物と照合してみた。
すると、あらびっくり。月村すずかでした。
「……」
「……」
俺達の間に言葉はなかった。とりあえず、今の状況を整理してみようと思った。今の状況。どうやら、ここは医務室みたいな場所らしくて、周りにはそれらしい器具が大量にあったし、腕には点滴が付けられていた。
そして目の前の月村すずかはと。俺は今まで寝ていたので勿論、ベッドの上でお利口さんみたいに寝ていた。そしてすずかはその上を覆い被さるように膝立ちをしていた。俗にいう━━━押し倒したような体勢という事だ。
「……」
「……」
ここは医務室だという事に思い出した。となるとあれがあるはず……と思い、右腕を動かそうと布団から手を出した瞬間。その手を電光石火の如き動きで捕まえられた。犯人は勿論、すずかである。速い。フェイトやあの老兵並ではないかと思うようなスピードである。
「ねぇねぇ、慧君。この手は一体何かな?」
「はははは、決まっているだろう?風雷慧という素晴らしい存在の右腕だとも。偶に暴走して相手の胸を揉んだり、スカートを下したりすることがあるのがチャームポイントなのだよ。」
「ふぅん?その事については後で拷問するとして。で、その素晴らしい右腕で何をしようとしたのかな?」
「ふむ。俺の想像が正しければここは医務室だ。ならば、医務室ならばかなりの確率で付いているものがあるよな?」
「うんうん、それは何?」
「ふむ、本当ならば誰が教えてやるか、この愚民がと言いたいところだが、今は特別だ。特別に教えてやろうではないか。感謝しろよ。そして答えは━━━ナースコールだよ」
「へぇ?うん、答えは解ったよ。でも、そのナースコールを使って何をしたいのかな?もしかして、看護婦さんといけないことをしようだなんて考えていないよね?」
「ははははは、その言葉はそっくりそのまま返させてもらうよ。俺はすずかみたいに年中発情期ではないのでな。それに、最近は看護師と言わないと諸団体が煩いらしいぞ」
「そんな微妙にリアルな事を言われても反応が返しづらいだけだよ……で?それじゃあ、そのナースコールを何に使うつもりなのかな?」
「なに。ただ、俺は目の前の痴女を何処かに連れて行って欲しいだけさ。」
「━━━落ち着こう」
「な、何を言うかね。俺はかなり落ち着いているとも。というか、そのセリフは俺が言うべきだと思うがね」
「いい、慧君?これは別に押し倒そうとか、襲おうとかそう言う行為ではないの」
「それはまた新しい見解だね。」
「うんうん。まずね。大前提として慧君は実はというか再び3日くらい寝込んでいたの」
「ふむふむ」
「それでね。今日も見舞いに来たけどさっきまでやっぱり起きてこなかったの」
「ふむふむ」
「それで心配になってね。そして思いついたの。これは━━━目覚めのキスが必要だと」
「何でさ!!」
「待って!」
言葉と共に俺の右腕を押さえている腕とは逆の腕で俺の顔の目の前に突き出す。何だか、何時も通りとはいえ今日のすずかはかなり面白いギャグキャラになっているようだ。
「いい、今からその理由に至った理由を教えるよ。まず目覚めのキスとは何だという事を説明するけど。目覚めのキスというのは簡単に言えば主人公、もしくはメインヒロインに来るある種のイベントという事。そして効果は相手が死にかけていたり、傷ついて気絶している相手を起こすことが出来るというある種の魔法なんだよ。色んな物語でこれをして起きたという事例があるから眉唾物ではないの」
「……生まれてから早9年。まさか目覚めのキスという事についての講釈を聞くことになるとは思わなかった……」
こんな講釈を聞いたのは人類の中で俺だけではないのだろうか。そんなつまらない称号は本当に要らなかった。何故俺はこんな目に合わなければいけないのだろうか。
「そんな奇跡を起こす魔法があるのだから━━━使わない手はないと思うの」
「……」
無言で今度は左手でナースコールをこっそりと探そうとする。今度は布団の上から押さえつけられた。これならば、別に俺は老兵がこいつを結界に閉じ込めようとした時、慌てなくても良かったかもしれない。むしろ、すずかの方が楽に勝てたかもしれない。
何だったんだ今回の疲労はと冷静に考える。まぁ、とは言ってもそれもまた人生。人の生涯とは山あり谷あり、難ありの連続だと改めて噛み締める。世界は何と困難の連続なのだと。
「だから!ここでキスをしようとする事はむしろ善意な行い……!そう、これは人命救助と愛を両立させた素晴らしき行い……!先達に死ぬほど感謝するよ!」
「頭のねじが緩んでいるなんて典型的なセリフは言わないさ━━━お前はむしろ締めるねじがない人間だ……」
暫くマウントポジションから抜け出る戦いになった。その内容を伝えるには老兵との戦いの何倍もの密度の戦いがあったので、流石に省略をさせてもらう所存である。全くもって傑作だ。
「それにしても三日か……今回はあんまり寝てない気がするな」
「普通ならばそれはかなり長いんだろうけどね」
結局、乱闘もその辺にして普通に話すことにした。寝ていたから当然、時間感覚はおかしくなっているが、今更どうでも良い事だし、慣れてしまった事だ。取り乱すような事はしない。強いて言うならば体の節々が少し痛みを発するが仕方がない事だろう。
痛みで思い出した。すずかの話通りならば、三日前に受けた傷はどうなっているのだろうかと思い、自分で受けた傷の所を軽く触診したり、動かしてみたりする。
……うん。ちゃんと動く。体のどこにも動かないという所もなければ、逆に何の感触も感じないという所もない。重畳重畳。俺の予想だったら左腕はもしかしたら切断かなぁとか思っていたし。
魔法による回復手段が体に聞いたのか。否、多分だが、一番自分の再生に役立ったのは……
「吸血鬼としての再生能力か……」
「……」
今の俺の体は正直に言えば人間だとも言えないし、吸血鬼だ……とも言えない体らしい。言葉にするならば今、流行の半妖という奴かもしれない。よく解らない存在だ。そもそもがだ。夜の一族の血を人間に分け与える……それもかなり適応率が高い人間に与えるだなんて試みは夜の一族史上で初の試みらしい。
そんな実験みたいなことをして出来上がったのが、中途半端な生き物という事だ。これならば、いっそどっちかにちゃんとしてほしいとか思うかもしれないが、そこは許してほしいものだ。
すずか達みたいに常時身体能力が高くなるというわけでもなければ、回復力も同じだ。月村姉曰く、多分かなり集中、もしくは興奮していないと発動しないんじゃないかしらとの事で。微妙に制限がかかっている力だ。
まぁ、お蔭で戦っている時に少し血が上ったせいか、身体能力が少し上がり、傷を回復することは出来なかったが血を止めることはしてくれたので、これ以上望むのは少し言い過ぎだろう。
そして問題の吸血だが。それについては何故だか知らないが、そんな衝動はあんまりなく、強いて言うならばすずかの血を呑むことが出来るくらいだ。それのお蔭か、すずかの血を呑むと回復力が高まる。それのお蔭で今、生きているのだろう。有り難い事だ。
「……後悔している?」
「あん?」
「だから……その……吸血鬼みたいにな━━━」
「しつこい」
ぴしゃりとすずかの世迷言を断ち切る。別に今更自分が人間だとか、バケモノだとか。吸血鬼とか知ったことではないのだ。そもそも、すずかに昔言ったようにバケモノというのは確かに人間離れした力を持つ者にも言われるが、他にも精神的な意味で人間から乖離した存在もバケモノと言われるのだ。
つまり、既にバケモノとなっているんだ。今更、体が吸血鬼化したからと言ってどうという事はない。むしろ、魂にようやく肉体が追いついてきたという思いがある。つまり━━━別にどうでもいいと言う事だ。
「……はぁ、やっぱり、筋金入りの偽悪者だね、慧君。それも少しナルシストが入っているなんて……ある意味一番厄介だよ」
「誰が偽悪者で、ナルシストだ。いや、まぁ、後半は認めてもいいが、偽悪者って言うのは認められんな」
「はいはい」
全然認めていないようだ。俺の周りのメンバーはこの二年間で少しひねくれすぎだと思う。まだ小学三年生なのだから、もう少し元気に素直に純粋に人を信じる者だろう、普通。嘆かわしい世の中だね。
「……で?他の連中は?」
「ん。今日は私が速くに来ただけ。さっき、皆にも連絡したから、きっとすぐに━━━」
ドタバタドタバタドタバタドタバタ!!
「━━━来たみたいだよ」
「そのようで」
ドタバタと物凄い音を立てながらこっちに向かって走ってくるのが解った。やれやれ。もう少し静かに動くという事が出来ないのかね。一応ここは病室なのだから。もし、俺が二度寝とかしていたらどうするつもりなんだ。
すずかは苦笑。俺は嘆息して、その煩い足音を聞いていた。結局、まだあの煩い連中と付き合わなきゃいけないようだ。生きているという事はそれだけで苦労だ。別にどうでもいい事だけど。
そんな事を考えているうちに音が扉の前にまで来ていた。そしてそれに反応して自動ドアだったらしいドアが流れるように開いて、そこには何時ものメンバーがいて、俺が起き上がっている姿を見て馬鹿みたいな笑顔を作って中に入ろうとして━━━ドアが人で詰まった。
「あ、あれ!?か、体が動かないの!」
「ちょ!お、おかしいでしょう!?何でそんな上手いタイミングでドアに皆で入ろうとすることが出来たのよ!!ってイタ!は、はやて!!車椅子が痛いわ!」
「そ、そんな事を言われても私にはどうすることも出来ひんねん!」
「あ、主!今、何とか……!くっ、う、動かない!!」
「う、上手い事体に力が入らない体勢で入ってしまったわね……」
「……それもあるかもしれねぇけど……一番の原因はシグナムとシャマルのその無駄にでかい胸の脂肪じゃなくね?」
「何やて!!何て失敬なおっぱいや……!そんな失敬なモンは主が没収してやるで……!」
「あ、や、止めてください、主!どうしてこんな動きにくい体勢でいるのにそんな事だけ動くことが出来るのですか……!」
「血や!関西人としての血が私をこうさせるんや!この熱いパトスは誰にも止められない……!」
「は、はやてちゃん!落ち着いてー!」
「……なぁ、シャマル。今、お前の体に押し付けられてるから思ったんだけどよ……お前のお腹、ぽよぽよだよな……」
「何て事を言うの、ヴィータちゃん!!今、貴方は人の言葉の中で一番酷い事を言ったわ!!そ、それを言うならヴィータちゃんだってあんだけお菓子とか食っているんだからお腹が……嘘」
「いや、だって、アタシはちゃんと運動しているし。シャマルはあんまり動いてなかったよなぁ」
「!!ち、違うわ!!そもそも私達は闇の書のプログラムよ!!私生活を怠けたって体が変わるなんて非科学的よ!!」
「み、皆、落ち着いて……バルディッシュ。何とかできない?」
『OH……It'difficult.』
余りにも奇怪なおしくらまんじゅうなので不覚にもリアクションが取れなかった。それはすずかも同じらしく、苦笑の笑みのまま顔の動きが止まっている。その表情のまま俺達は視線を合わせた。それだけで以心伝心で来た。次に俺達が何をするかをだ。
「すずか。お茶ないか?出来れば欲しいんだが」
「うん、解った」
つまり、このギャグを傍観すると。他人の不幸を見れば心落ち着くのは誰だってそうだろう。それは悪魔でも吸血鬼でも同じこと。これはある種の一体感というものかもしれない。人間の潜在能力と言うのは素晴らしいものだと頷く。
「こ、こら!そこのバカップル!!いいから助けなさい!!」
「ははは、真ん中の台詞は斬り捨てて言うが、俺は空気を読める子。だから、俺は風の流れに身を任せるのさ……」
「人間や世界に存在しているだけで抗っている慧君に言われたくないの……!」
「ほう?そんな事を言える余裕があるのかね?では、高町には特別にこれを塗ってやろう」
「それは……唐辛子……!や、止めて!!それを一体どうする気なの……!」
「決まっている。これはその可愛い鼻に塗ってやろうと思っているのだよ」
「何て拷問なんや……!人が動けない時に苦痛を与える……拷問吏になるのにこんなに相応しい性格他にいいひんで……」
「待って、慧君。そういえば、まだその唇、奪っていない」
「ケ、ケイ?一体すずかと何をしようとしていたの……?」
「落ち着け、フェイト。そんな涙目でぷるぷるしてこっちを見るな。すずかの言う事は全く聞かない方が良い。こいつは締めるねじが一本もない妄想痴女だからな。」
「妄想痴女……何だか逆ジャンルが合成された犯罪みたいな響きだけど……それはつまり、襲っても仕方がないという理論武装が出来た証……!」
嫌だ、この子。もう人間とか吸血鬼のレベルじゃないわ。変態度だけならば、俺を超えていると本気で思った。そう思いながら、貰ったお茶をずずずーと飲み干した。そういえば、このお茶は地球製だろうか?
「全く……ようやくお目覚めか……人を心配させた罰として3日分の宿泊代と医療費を払ってもらおうか。君はどうやら罰というものを与えないとつけあがるタイプみたいだからね」
「何だとこのクソチビ真っ黒が。それがお前の仕事を少しでも減らしといてやった恩人に言う言葉か。恥を知れ恥を」
「「……」」
「……二人とも、止めなさい。ほら、クロノ。艦長のいう事を聞きなさい」
「……了解しました」
女狐艦長のいう事を聞いて渋々と言った感じでこっちを睨むのをやめた黒いの。どうやら、まだまだお母さんに甘えたいお年頃みたいだ。見た目通りの精神年齢のようだね。若いとはいいものだな。
「……無性に君を殴りたくなってきたのだが……」
「それが最近のキレる若者という奴だね」
話が進まない。お互いそう思ったのか、同時に嘆息する。何故だか知らないがこいつとはあんまり気が合わない。いや、他のメンバーとも勿論、気なんてものは合わないのだが、こいつは格別だ。本能的に合わない。
「さて……何はともあれおはようと言うべきかね?」
「ああ、そうだな。こっちとしてもようやく話が出来ると同時に君が起きたことによって士気が戻りそうだよ」
「……何?後半は無視するが、まだ話をしていなかったのか?」
周りをチラリと見まわす。そこには俺の知り合いが大抵いる。店をやっている高町父や高町母や高町姉は流石に家を全員で空けるわけにはいかないらしい月村姉やメイドさんはここには来ていない。それでも話を進めるには十分の役者は揃っている。
「馬鹿か、お前。三日も仕事もせずにいたらニートに堕ちるぞ。別にお前がどうなってもどうでもいいけど」
「怒りたくなるようなセリフは無視させてもらうが、僕のせいではない」
「はぁ?」
「彼女達が話を聞くならば君がいないといけないって言ったんだよ」
そう言いながら、顎でその彼女達の方向を示す。否定する理由がないので俺もそっちの方を見てみる。途中で首がこきゃと嫌な音が鳴ってしまったが、それは運動不足で起こる事だと自分に言い聞かせる。
そこにいるのはヴォルケンリッターと八神。何やらよくありがちな沈痛の表情というのをしている。つまりは面倒臭い顔をしているという事だ。これはまた面白くなさそうな話題に入りそうだ。そう思い、頷き、そして黒いのの方に向いた。
「━━━さて、話をしようか」
「……待ってくれ」
無視は許されなかった。面倒だから無視をしたというのに空気を読んでほしいものだと思い、再びシグナム達の方向に振り返る。
「……で?何かね?つまらない事を言ったら爪楊枝を鼻に刺すよ」
「……すまなかった!!」
皮肉を言った瞬間、四人が一斉に土下座をしてきた。ここまで素早い土下座は一度も見たことがないと驚いている場合ではないと空気が告げている。現に高町やバニングス、黒いのが視線でこう訴えている。何とかしろと。
「やれやれ。別に俺はお前たちに謝られるような事をされた覚えはないのだがね」
「……幾らでもあるじゃねぇか!」
「……その傷……俺達がお前に頼まなければ、否、あの時、主への注意を怠っていなかったのならばそんな事にはならなかったはずだ……!」
「そもそも……私達が主の為とはいえ、たくさんの人を殺していなかったのならば……」
「今回の事件は全て……私達のせいだ。本当にすまない……」
ふぅと溜息をつく。頭が固い人間はこれだから嫌だ。別に傷とかそういうのはどうでもいいのに。なぁ、女狐艦長?
「……そこの無表情少年は何ともないようにしているけど、まだ傷が完璧に言えていないから、まだ痛みはあるわよね?」
「「「「……!」」」」
余計な事をと思う。確かに痛みはあるが、別段それがどうしたという事なのに。老兵にも言ったように痛みって言うのは耐えるものではなく、受けいれるもの。周りにその考えを押し付ける事はしないけど、俺はその考えで動いているのだから、気にしなくてもいいのにと思う。
「だから気にしなくてもいいと言っているのに。大体、俺が予想していたよりもかなり軽傷で助かったくらいだ。良い状態で左腕切断。最悪な状態で死亡すると思っていたからな。どちらかと言うとこれはまさしく最善の結果だ」
「そんわけないだ━━━待て。予想しただと」
流石は烈火の将。それとも剣の騎士かな。戦闘以外にも頭は回るようだ。というか最低でも俺よりは頭が回るだろう。別段、俺の頭はスパコン並みの並列処理が出来るというわけでもないのだから。別にスパコンのスペックとかは全く知らないのだが。
「どういう事だ。予測と言うのは……怪我だけの事か?」
「んにゃ。襲撃の事だね」
ずずずーと再びお茶を飲む。言い忘れていたが、ここはさっきの医務室だ。あの後、ドアに詰まっていた奴らを思いっきり蹴って、外してやって、その後に乱闘騒ぎになったら、黒いの達が来たのだ。まるで、計ったようなタイミングだった。
「おい、ちょっと待った、暴論遣い」
「何だ口が悪い執務官」
そんな話をしていたら黒いのが割り込んできた。美女と語らっているのに邪魔とは……少しは空気というものを読んでほしいものだね。これだから、堅物はいけない。
「リンディさん?その砂糖が入ったリンディ茶を貸してくれませんか?慧君に呑ませたいので」
「すずかさん?それは人の飲み物ではありませんのですよ。それは舌がレベルアップした結果、人の食べ物や飲み物を受け付けなくなった人の終わりとしての果ての飲み物ですのよ?」
直ぐ傍で女狐艦長が崩れ落ちて、泣き真似をしていたが無視した。だって、俺は嘘を言ったつもりはなかったのだから。全て、本心から出た言葉だ。お嬢様言葉になったのは、断じてすずかに屈したわけではない。そう、ただ、お笑いを取ろうとしていただけなんだ……。皆、信じてくれ……。俺は決して権力に屈したわけではないんだ……!
「あれー?こんな所に札束がある~。これで慧君を殴ったらどんな反応が返ってくるんだろうね?」
「何を言う、お嬢様。私、お金を払ってくれる人間の味方です。お金を払ってくれるのならば、例え、火の中、水の中、草の中、森の中(○ケモンのOP風に)。何処でも貴方を守る剣にも盾にもなりましょう」
「結婚式会場でも?」
「それは無理」
「おいこら。僕の話を聞け」
ち、違うよ?俺は権力に屈したわけではないんですよ……!俺はただお金に屈しただけなんだ!!否、俺は貧乏に屈しただけなんだ……!そこのところを間違えないでほしい。
「で、何だ?黒いの」
「質問したい。当たり前だが、何故君が襲撃を予想できたというんだ。」
「うむ。まぁ、誤解がないように言っておくが、どんな襲撃が来るかは予想していないぞ。俺が予想したのは精々襲撃が来るという事だけだ」
「……だからそれはどうしてだ?」
「簡単だ。もしも、お前たちと完璧にコンタクトが取れて、連携を組んだら、それこそ襲撃のチャンスは完全に潰れてしまうだろうに。そしたら、出来る事とすれば暗殺だが、それもまた難しいな。何せこっちには有り得ないくらい気配感知に優れた剣士が三名もいるのだからな」
「……君もそこに含めてもいいと思うがな」
「褒めたってつけあがるだけだぜ、恭也さん」
「確か二度ネタじゃなかったかしら……?」
無視無視。バニングスの事は放っといて先に進もう。何だか周りの人達もこっちに注目し出したようだしね。こういう注目の現場の真ん中に座るというのもまたぞくぞくするね?
「となるとすれば、やる時期はお前達と組む前だろうね。だから、襲撃には一応お前と会談してからずっと気を付けていたけど、意外と遅かったようだね」
「……待て。確かに聞いていたら成程と思ってしまうけど、そもそもだ。まず、その予想は相手が闇の書が復活したことを知っていなければいけないじゃないか。なのに、どうして、そんな事が解った。」
「ああ。だから予想なんだよ。つまりだ。俺とお前の会談内容がばれていたら、きっと誰かが情報をリークするだろうと踏んでの事だったからね。まぁ、普通ならば気づかれないと思うが。例えば、常時こっちを監視している人間がいたとすればどうだろうね?」
「……!まさか……!」
「お蔭で証拠が出たしね」
証拠の内容はこうだ。あの時、何の用かと尋ねた時。復讐のメンバーはこう答えた。自分はそこにいる闇の書の主を封印しに来たと。俺は会談で一度も八神の事を漏らしていないというのに。シグナムや恭也さん達もそうだ。
そして証拠はもう一つある。それは恭也さん達の動きを止める為の人数がぴったしであった事と、そして恭也さんや美由希さん、士郎さんも警戒していたという事だ。あの人達は門外不出の剣士であり、例えそれを知っていたとしても相手は魔力もないただの剣士なのだ。魔導師達が警戒するとは思えないのだ。何せ今回の戦いでも解った通り、高町と八神を例外と除く、俺達地球人は魔法に抗う事はほぼ不可能なのだ。
ほんの初歩的な魔法にさえ抗うことは出来ないのだ。そう━━━御神の剣士と言う例外でない限りだ。
「そういう事か……君は自分どころか周りの人間さえ囮に使って、彼女の家に結界を張っていた人物が今も尚、見ているという証拠をつかんだという事か……」
「そゆこと。とは言っても、そのまんま、俺の所に来る可能性もあったのだがね。まぁ、証拠をつかめる確率は五分五分と言ったところかな?」
彼女の家に結界を張ったの下りで八神は???の顔になった。当然だ。まだ、そういう事は話していないのだから。まぁ、詳しい事は後にしておこう。面倒臭いしな。
「……ちなみに、君のところに来る確率はどういう確率だったんだ。」
「ん……実際には俺に来る確率が七割、残りが今回みたいになると言ったところかな」
「ちょっと待て……じゃあ、ほとんど君の方に来ると思っていたのか?」
「そりゃそうだ。もしも、相手が復讐しか考えていない人間だったのならば、考えるなんて行為を破棄して俺の方に来ていただろうに。」
「……その場合どうしていたんだ。君の事だから何か考えていたんだろ?」
「いや。死んでたね」
さらりとどうでも良い事を言って再びお茶を飲む。うんうん、やっぱりお茶と言うのは最高だね。お茶を生み出した人間はきっと今頃神様として奉られているだろう。この神様だけは信じていいかもしれない。
そうやって感慨に更けてるといきなり椅子を派手に転がして、立ち上がる黒い執務官や恭也さんなどがいた。
「馬鹿か、君は!!自分が七割で死ぬような策を使ったというのか!!」
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが……ここまで馬鹿とは思っていなかったぞ!!」
「何を怒っているんですだよ。別に俺が死んでもそっちには関係ないでしょうに。」
「大有りだ(よ)ーーー!!!」
最後の一言は全員で合唱された。全くもって理解できない。別に俺みたいな生意気でクソで最低最悪。じゃなくて、最悪にして災厄が死んでも困らないだろうに。逆にうれしく笑うべき場面だろうに。
「前から思っていたけど……慧君は自分の命の価値を低く見積もりすぎなの!!」
「では、問題。俺<恭也さん。○か×か?」
「ギャグ的な意味ならば恭也さんの方で、シリアス的な意味ならばどっちも間違いであんたも恭也さんも大事でしょうが!!」
「とりあえず、ギャグ的な意味の方はかなりむかつくが返答で、シリアス的な意味ならばまだまだ子供の発想だなが返答だ、バニングス」
「そうだよ、慧。僕は君を凄いと思っているけど、その点についてだけは少し言いたいことがあるよ」
「ユーノ。お前は少し買い被りって言葉を知っておけ」
「ケイ……そんなに私達の事、信じられない?」
「フェイト。上目づかいで涙目は禁止。そして答えは別にの一言で」
「大体だ……君には前々から言いたいことが大量にあったんだ……!」
「……」
「そうだ、慧君。俺も今回の件で人を勝手に戦線離脱させたことには文句が大量に━━━」
ダン!!と恭也さんの台詞を途中に断ち切る音が部屋の中に響く。皆もその音に物凄く驚く。中には音だけを聞いて臨戦態勢になる人間もいる。まぁ、それはヴォルケンリッターと黒いのと恭也さんだけなのだが。ユーノは少し遅いな。
原因は俺の足。余りにも煩いので少し黙らそうとして、震脚を放っただけである。中国武術を極めたなんて口が裂けても言わないが、少し自首訓練で発頚を覚えたら出来る。とは言っても誰かに教えてもらったとかではなく、やっていたら、自然とできたという感じだから、詳しい理屈は全くわからんのだが、それにこんな曲芸みたいな事でしか使えない。
これを覚えるのにかなりの練習を一応したのだが。本来ならば床くらいへこませるらしいし。俺が出来るのは精々大きく音を鳴らすことと、少し揺らすぐらい。俺程度じゃあどんなに頑張っても天地と合一する圏境などは到底至る事などできないだろう。
「……慧君。君は中国拳法にも手を出していたのか……」
「齧った程度ですよ。この程度ならば、恭也さんぐらいならば、一か月もあれば出来るんじゃないですか?」
「今のって……地球の魔法?」
「暇があったら、ユーノにも知識を教えてやるよ」
そんな暇はないと思うけど。
「さて、何処まで話したっけ?ああ、証拠が出たって話だったな。とは言っても、それで犯人が以前出た人とは限らない。ここまで来たら有り得ないと思うけど━━━」
「いや……僕が少しあの人に問い詰めようと思った矢先にあの人達は姿を眩ました。確定だよ……きっと、犯人はあの人達だ」
「……少し焦っていないか?」
「……そうだろうな。すまない。軽率だった。もしかしたら、それで僕が殺されていたのかもしれなかったな」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
そうやって黒いのと話し合っていたら突然の大声。声の主は八神はやて。その顔に張り付いている表情は困惑。何が何だかわからないと言った感じの表情だ。それもそうだ。実際、何もわかっていないのだから。
「さっきから……何でそんなに慧君が死ぬとか、えっと……クロノさんが死ぬとか。そういう話が出てくるんですか?だって、私が頼んだのはそんな物騒な話じゃなくて、ヴォルケンリッターの皆の罪を出来るだけ軽くしてほしいっていう事だけで……」
言葉を吐き出しながらも困惑の表情は晴れない。それどころか泣きそうな顔になってきている。それにヴォルケンリッター達はどうしたもんだという顔のをして、友人’s+恭也さんもあわあわした表情になり、管理局組はうっとした顔になり、そして。
「……何故最後にこっちを見る?」
嫌な役回り……というよりは損な役回りだ。まぁ、確かにそう言うのは自分の役回りだと自覚しているが、大の大人たちが子供に頼るというのは如何なものだろうと少し思ってしまうのは間違いだろうか?
「……そんな……」
八神はやてはかなり驚いていた。今の自分の状況もそうやけど、その自分に対してどれだけの人が動いて、そして危ない目に合っているのかと。
クロノ・ハラオウンさんは自分の為に色んなところを駆け巡って、情報収集は勿論、フェイトちゃんの裁判の為にも頑張って行動しているらしい。良く見たら、目に隈が出来ているのが解った。
ユーノ君はその情報収集の手伝いの為に無限書庫とかいうかなりほんの量が多い所でかなりの時間を闇の書を調べる為だけに使っていたらしい。その目はやはり、クロノさんと一緒やった。
そして風雷慧君。
私達も囮にしていたらしいけど、一番危ない所にいた少年。そして結局、一番酷い目に合った少年。今ではこうして普通に喋っているが、私達は知っている。3日前の時は危篤状態だったのだ。むしろ、この回復能力は異常との事だ。
それについてはすずかちゃんに聞いたから解っている。半吸血鬼。人間でもなければ、吸血鬼でもない存在。それが今の慧君の状態を言うらしい。そしてすずかちゃんは本物の吸血鬼らしい。
別にそんな事は良かった。相手が吸血鬼でも友達と思える人ならば気にすることなんて何もあらへんと思っていたからや。それはなのはちゃん達も一緒で、直ぐにそんなの関係ないの一言ですずかちゃんと友情を深めることが出来た。
だから別に慧君の事も大丈夫。でも、一番の問題は彼はもしかしたら、そん体質を利用して更に危険な事をすることに躊躇いを失くしてしまったのではないのだろうか?それならば、逆効果だと言うしかなかった。
結局は命の危険。それが答えだ。
他にもいろんな人が私を助けるために動いているらしいというのが何となく解った。三人の少年は当然でこのアースラとかいう戦艦?の人達も皆手伝っている様子である。でも、それは同時に危ない橋を渡っているという事にもなると思う。
これではまるで━━━周りに被害を広げる台風と同じやんか。それも無自覚に。自分の為だけに貴方の命を使わせてくださいって言ったのとほとんど同じ。いや、同義やろう。
これならば。
これならば自分で、
これならば自分で何とかした方が━━━
「はい、そこ」
「イタァッ!」
思索にふけった瞬間、強烈なデコピンを受けた。余程うまい事は言ったらしく、結構痛い。思わず涙目になってデコピンをしてきた人物、慧君の方を睨んでしまう。
「い、いきなり何すんのや!!結構痛いで!?」
「何と!それは嬉しい……OK。ヴォルケンリッター。落ち着こう。俺は別に八神を虐める事だけに喜びを感じているわけではない。俺は虐め甲斐がある人間を弄るだけで……待て!来客用のスリッパを投げるな……!ああ!か、花瓶はらめぇーー!!」
閑話休題。
「……さて、話の続きだが」
「……生傷ばかりでしまらんなぁ……」
「煩い、黙れ。話を戻すぞ━━━まぁ、お前が何を考えているかは大体は解る」
「まさか……これが噂の以心伝心━━━すずかちゃん、あかん。私の首はそこまでしまらへん……!」
「……すずか、止めとけ。こんな所で世界の一部に手を出しても、大した変動は起きないぞ」
この世界には余裕が無さ過ぎると改めて思った。少しギャグを言うだけで命の危険を感じるというのはやはり駄目やと思う。人間や世界に一番必要なのは余裕やと実感する。
そして慧君と同時に嘆息する。そう━━━ボケキャラは何時の時代も苦労する。
「……話を戻すぞ」
「……YES,SIR」
とりあえず、無理にでもシリアスな雰囲気に戻すことにした。このままでは話が全く進まないし、ボケキャラの血が勝手に暴走してしまいそうになってしまう。そうなると一生混沌としたコントになってしまうのである。
「話の続きだが。どうせまた無駄な罪悪感に浸って、『私がこんなことをしなければこんな事になっていなかったのにーー!!』みたいな事を考えているんだろうけど、はっきり言って無駄だし、どうでもいいから捨てろ」
「そ、そんな簡単に捨てられるわけないやろう!?そんな簡単に捨てられるんなら━━━」
「どうせ、今さら罪悪感を感じても、もう遅いぞ」
「な、何でや?」
「そりゃそうだ。ここまで堂々と動いたし、戦ったんだ。今頃、闇の書が復活したというのは情報が速い奴はもう手に入れているだろうし、それが闇の書に因縁を持っている相手ならば尚更だ。少なくとも高町家と月村家とバニングス家はどうか微妙だが、あと、アースラ組と俺はもう関わっているという事ははっきりされているだろうね」
「……!」
当たり前の事実を伝えてられるとこれまた、解りやすいくらい動揺する私。何せ何時もつるんでいる連中は当たり前だが、アースラ組はクロノ君が途中で慧君と恭也さんとの戦いに簡単に参戦しようとして来たことから答えは明白だろう。少なくとも今言った連中は既に巻き込まれていると慧君は簡潔に伝えた。
「解ったか?ありきたりなセリフだけど、もう引き返すなんて言葉を使うのは無理なんだよ」
「そんな……」
「というわけで」
「……?」
「お前に必要なものは罪悪感ではなく━━━更に進む傲慢さだ」
「……どういう事や?」
言葉通りの思いやった。傲慢さなんかが一体何に使われるんやろうかという思いで一杯やった。むしろ、そんなものはあんまり持ったらあかんのちゃうんかと思う。傲慢何て単語からはいいイメージは全くしないし。
そう思っていると慧君は再び嘆息しながら言葉をつなげる。
「なに、難しい事ではない。要は一度決めた事なんだ。途中で投げ出すのは後味が悪いから、投げ出すのは終わらせてからにしろという事だ」
それと同時にパチンと少々演出気味に指を鳴らす。そこで空気を読んだのかユーノ君が立ち上がってきた。まるで、今から何かが始まるという感じだ。実際何かを始めるのだろうけど。
「で、でも……これ以上皆に迷惑なんて……」
「いいんじゃないか?何せお前の周りにいる人間は━━━全員お人好しだ。俺を除いて」
彼の視線が周りを視ろと促す。それに何の気なしに応えて周りを視る。するとそこには
皆、笑顔で私を見ていて━━━
「━━━あ」
そこには曇りなんて一つもない笑顔。それは友達はおろか、今日、知り合ったフェイトちゃんやユーノ君。クロノさんやリンディさんやエイミィさんも同じだった。誰一人として嫌な顔をしていなかった(慧君を除く)。
「言い訳封じとして聞いとくけど、他のクルーの様子は?」
「愉快な事にアースラのクルー達もやる気満点だよ。━━━理由が薄幸美少女を救うためにとか叫んでいる人間もいたが」
「あっはっはっ。まぁ、アースラのメンバーは皆そんなものだよ、クロノ君」
「そうねぇ……頼もしいでしょう?」
更にはここにはいないが、この船の人達も自分を救うためにやる気を出しているという。どういう事やと思う。だってその━━━私は他人から見たらとっても危ないものを所持しているだけの危険物みたいなものやろうに。そう尋ねてみたら
「君の疑念はもっともだが……では、それじゃあ、僕たちは包丁を買う人間でさえ捕まえなきゃいけない。君が言っていることは簡単に言えば以前この包丁で殺人犯が出たので同じ包丁を持っている貴方も逮捕ですと言っているみたいなものだよ」
と苦笑付きでクロノさんに簡単に答えられた。自分はそんな捕まるような事はしてへんのやと。君は幸せに生きるべき普通の一般人だと。そう言外に伝えられた。その言葉に嘘は見つけられなかった。
「で、でも……私のせいで恭也さんや慧君が━━━」
「はやてちゃん。俺達は家族なんだ。そんな事を気にしなくていい」
「俺に関しては治療費だけでも━━━」
慧君が色んな人たちにタコ殴りにされていたけど無視した。今はどうやらすずかちゃんに舐められているようだが(比喩ではない)、気にしないことが吉だ。事実誰も気にしていない。
「こ、今回は良かったけど、これからもそうなるって━━━!」
「主」
危うく激昂しかけたところをシグナム達が歩み寄って声をかけてくれた。その顔には私を安心させるための笑顔と━━━今回の件で何もできなかった自らへの怒りが込められていた。
「申し訳ありません。私達が貴方の所に来てしまったせいで、主にご迷惑を……」
「ち、違うねん!私は皆を迷惑なんて思ってへん!!ただ、私は……」
自分のせいで他の人たちに迷惑をかけるのが嫌で……と思った瞬間。車椅子を蹴っ飛ばされてこかされた。いきなりの攻撃で受け身なんて当然出来ひん私はそのまま無様に頭からぶつけた。その痛みで涙目になってしまう
「っ!~!」
「あ~、もう一々煩い」
やったのは案の定と言っていいかもしれない。慧君だった。相変わらずの無表情で私みたいな美少女を攻撃したことに何の罪悪感も持っていないようだ。女の子相手にこの仕打ちは如何なものやろうかと思う。
「一々ネガティブな事をねちねちと言いやがって……貧相なのはその胸だけにしてくれ」
「な!!何ていう暴言を……!今、慧君は私とアリサちゃんとなのはちゃんを敵に回したで!!?」
「……ん?それはまるで私達の胸も貧相って言ってるように聞こえるけど。はやて?」
「うん、私もそれについては『お話し』したいなの」
「さて、話を続けよう。いいか、八神。お前みたいな馬鹿であほで愚かで間抜けで狸でいいところといえば料理の腕が高いと言うだけのお前をここにいるお人好しの馬鹿集団は何と助けようとしているのだ。なら、それを利用しない点はあるまい?というかしろ。これ以上監視が付くのは面倒だ」
「……絶対後半が本音やろう」
「隠す理由もないし。大体何だ?お前は?自分から頼んだくせにこうやって被害が出たら後悔か?それならば、お前は何をすることも出来ないぞ。何せ人が動くときは誰かを蹴落としたり傷つけたりすることは必要条件なんだから。現にそうなっただろう?━━━俺は俺が生き残るためにあの老人を倒したのだから」
生きるという事は誰かを傷つける事。当然と言えば当然の心理。極論だけで言えば私達が呼吸するだけで地球は汚れ、私達が何かを食べるだけで誰かが飢え死にしていて、私達が遊んでいるという事は誰かが遊べるような環境にいないという事なのだから。
「誰もが笑って、誰もが幸せな世界。そんな馬鹿みたいに夢みたいな世界を望みたいというのがお前達みたいな幸せ者だろうけど……望むという行為がある限り無理だ。望みは人を狂わす。それが例え良い願いだろうが悪い願いだろうが。良くも悪くも願いと言うのは他人との衝突を作る原因だよ。」
望むという行為は他人と触れ合い、もしくは衝突する原因である。それが例え良い願いでも、悪い願いでも。それが普通の人の営みだと。彼はただ述べた。そこには何の感慨もなかった。あるのは事実の確認のみ。
「結局、何をしてもそれが何かを傷つける。お前らは怒るかもしれないが、それは仕方がない事だ。人間は未来を見ることも出来なければ、運命を決定することも出来ない。何をどう足掻いても人を傷つける。」
「そ、それじゃあ━━━」
「だから。俺達みたいなちんけな人間が出来る事は一つだ。自分が納得できるか、もしくは最後まで意地を貫くかだ」
私の言葉を遮って言葉をつなげる彼。自分が納得するか、最後まで意地を貫く?どういう事や?
「前者は簡単だ。そういった世の中を悲観して諦め、何もかもを投げ出してただ生きる事だけを目的にすること。悪いように言ってるように聞こえるかもしれないけど、別に悪い事ではない。大抵の人間がこの道を選んでるし、それが一番頭がいい方ではあるだろう」
「……じゃあ、後者は?」
「後者もこれは簡単。例え誰かを傷つけてでも、自分には叶えたい願いがあるというそんな意地を以て最後まで抗って苦しみ、もがき、成功するとは限らないようなチャレンジを繰り返す事さ。誰かを傷つけるかもしれない。でも、それ以上に自分にはやらなければいけないことがある。こんな所では終われない。そういった情けない思いで馬鹿みたいに馬鹿な事をすることだ。で、だ。お前はどっちなんだろうなぁ、八神?」
「……」
話は結局最初に戻る。止まるか進むか。そこまで考えて少し深呼吸する。そうや。少しさっきから焦っていると思う。少し悩んでから答えを出してもいいと思う。感情論だけで結論を出した結果。最悪な事態になるなんてことは避けたい。
そう思い、そして考える。まず、このまま続ければと言う未来に行けばどうなるかを。当然、まず管理局の人には迷惑がかかる。ただでさえ、自分たちはまだ何もしていないとはいえ、闇の書というのはかなりえげつないものあったらしい。犯罪者予備軍呼ばわりされても否定できひんらしい。
そうなるとアースラの人達の風評が悪くなるのは確実やと思う。それに加え、仕方がないとはいえ復讐をしようとする人たちもまた来るかもしれない。その場合は今回みたいに戦闘になる確率はかなり高いと思う。そうなった場合矢面に立つのは今回みたいな場合、周りの皆や。
嫌な言い方やけど、それが魔力を持っているなのはちゃんやフェイトちゃんならば、自衛できるかもしれへんけどこれが魔力を持っていないアリサちゃんや月村家、なのはちゃんを除く高町家、そして慧君になった場合は危ないの一言やと思う。
現に目の前の少年は命を失くす危険の二、三歩前やった。逆にこんなに無頓着の少年がおかしいのだ。そう思い、少し睨むと慧君は何を勘違いしたのか、サムズアップした。そしてまた皆に殴られていた。無視した。
そして今度の止まった場合やけど、この場合やと━━━
「慧君、決めたわ」
「うん?」
「私は進む。どうやら私は後者の馬鹿やったみたい」
「……へぇ?お早い決断で。もう少し悩むか愚痴ると思っていたけど?」
「……慧君の事やからどうせ解っていたくせに」
苦笑して彼を見る。そう、彼の事だからきっとわかっていたはずだ。だって、この問題は立ち止まっても、立ち止まらなくても周りに被害が出るのか前提条件なのだから。
当然の帰結やった。例えばこのまま誰にも援助を求めずに生きても、結局は復讐を求める人達による戦いが起こってしまうのは自明の理。そうなると結局矢面に立つのは同じ人。結論は変わらない。強いて言うならば、被害に遭う人が減るかどうかやと思う。
だったら━━━前に進むしかあらへん。
止まっても同じ、進んでも同じ。結論が同じならば選ぶ選択肢はそれしかない。ネガティブに行っても同じ結果ならばせめてポジティブな結果を。でも、出来れば勿論、誰にも傷ついて欲しくなんてない。自分の為に誰かが傷つけられる。それは仕方がない事かもしれへん。でも、私は嫌や。
解っている。これは子供の駄々や。子供がこれもしたい、あれもしたいって駄々を言っているのと変わらへん。でも━━━望むことは自由やと思う。それがどんなに傲慢であっても、望むことだけはどんな人間にでも許された自由やと思う。それが叶うかどうかはさておきやけど。
「馬鹿でもいい。阿呆でもいい。愚かでもいい。間抜けでもいい。狸なのは……許せへんけど。」
「許せないのかよ」
「でも!私かて人間や!私だって死にたくない!!それに……それ以上に……私はまだ……」
皆と一緒にいたい
そう小さな声で呟いた。それこそ子供の駄々だった。何処にでもいる子供の駄々であった。そして八神はやての幸運な事はそのような駄々を見逃すような人間が周りにいなかったことであろう。
「……ん。じゃあ、闇の書対策を練ろう、はやて」
「……え?」
立ち上がっていたユーノ君がこっちにいきなり声をかけてくる。それに反応出来ず少し間抜けな返事をしてしまう私。そして、ついでとばかりに周りが動き出す。
「おう、流石ユーノ。ちゃんと出たのか」
「うん。僕と言うよりは流石無限書庫と言った方が正しいかもね。あそこは前から情報量が凄いって聞いていたけど……噂以上だったよ、慧」
「ご苦労様だ、フェレットもどき。後でコーヒーくらいならば奢ってやる」
「……コーヒーはいらないから君に天罰を送りたいね」
「ユ、ユーノ。落ち着いてよ。クロノも」
「にゃはは……やっぱり男の子は男の子同士の方が仲良くなるのかな?」
「さぁ?どっちにしろ仲が良い事は良い事じゃないかしら」
「うんうん。慧君と一番仲がいいのは私だけどね」
「わ、私も、負けないよっ」
「……ぐふっ!?」
「すずかちゃーーーーーーーーーーん!!?」
「……何やってんだか」
「こら、ヴィータちゃん。口が悪いわよ」
「まぁ、そう言うな、シャマル。あれはヴィータの照れ隠しみたいなものだ。私達のようなプログラム体のような存在を何も気にせず受け入れてくれるなのは達に素直に嬉しいとは言えずああやって口を悪くしているのだろう」
「なっ!そ、そんなわけねぇだろうが!!勝手に決めつけんな、シグナム!」
「……ふっ」
「あーーー!今、ザフィーラ!笑っただろうがーーー!」
「ふふふ……いい子たちばかりですね、恭也さん」
「……ええ。自慢の家族と友人です」
「うんうん。クロノ君もあんなに楽しそうだしねー。」
そこにあるのはある意味何時もの光景。皆で馬鹿をやって楽しむという光景。余りにも当たり前やった日常の風景。それが私の覚悟の後にもされている。その光景が言外にもこう告げられていた。
別に自分を助ける事なんて日常の続きの出来事だと。
もう止まらなかった。瞳から透明な雫がきらきらと溢れてくる。その事に気づいて、慧君を除く皆が私の周りに寄ってきて言葉をかけてくれたり、頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたり、手を握ってくれた。
もう十分だった。二年前に友達が出来ただけでさえ幸福の絶頂だったのに、こんな素敵なプレゼントもくれた。もうこれ以上の幸せ何て何もないと断言できる。生きていてよかったという言葉を臆面なく言うことが出来る。幸せの三乗くらいの幸せだった。
そうして顔を両手で隠して泣き叫ぶ。それは勿論、嬉しいと付く涙を。そんな彼女を周りはどうしようという顔をしているものと優しそうな顔になっている人達は見ていた。
そして最後の無表情の少年はその光景を見て何を想ったか。それだけはやっぱり謎だった。
そして八神が泣き止んだ後にユーノからの事情説明。その内容は主に闇の書についての事。どうやら、闇の書の正式名称は夜天の書という事らしく、古代ベルカ?とかそんな時代に創られたモノらしいが、最初らへんは今みたいな大量虐殺の為の物ではなかったらしいが、どうやら歴代の主が何やらキナ臭い改変とかをした結果とかいうらしい。
何とも傍迷惑な改変だ。そして調べた結果がこれまたよくある話。蒐集して666ページ集めれば主の体は良くなるのではと言うヴォルケンリッターのネガは虚しく、闇の書の最悪と言われる所以。それは周りだけではなく最終的に主さえも取り殺すと言われているという事であった。そして蒐集しなくても同じ。蒐集しなかったら、今度はリンカーンコアを侵食して死に至らしめる。どっちを取っても結果は同じ。最悪の皮肉だ。
「そんな……」
周りの皆がその最悪な報告に落ち込んだ顔をしていたが、そんなつまらない事をしても現実は変わりはせん。だからユーノに話の続きを促した。
「おい、ユーノ。どうでもいいけど速く続きを言えば?このままだとお前がつまらない悪役になってしまうぞ」
「あれ?よく解ったね?」
「わからいでか。お前みたいな奴がその結果しかないのならば、さっきの御感動シーンで闇の書対策をしようとか言うはずがないだろうが?お前が悪役をするにはちょっとキャラと合っていなかったな」
「……残念。少しは慧の物真似でもしてみようと思ったのに」
俺の物真似なんかしていたらろくでもないどころか犯罪者予備軍の様に人間になってしまうというのに。何時かその歪んだ憧れを何とかしてやらんと少し検討する。別に俺には関係ない事なのだけど。
「……という事は……何か策があるという事なの、ユーノ君?」
「うん、なのは。とは言ってもそれも策と言っていいか怪しい所なんだけど」
「何でもいい、ユーノ。我が主を助けられる可能性があるというならば是非とも教えてくれ」
ピュウと下手な口笛を鳴らす俺。流石は騎士様。狼とはいえ主の為になる事ならば本当に真剣だな。俺ならばそんな他人と為に何とかするとかそういう場合でそこまで真剣になろうとかは思わない。他人の為に何かをするとかそう言うのは御免の人間なのだ。
「うん。皆そう言うと思ったから遠慮なく言うよ。簡潔に言えば大人のいう事を聞かない駄々っ子を叩いて言い聞かせればいいんだ」
「??どういう意味や?」
「うん。デバイスとかにはね。危険防止と化の為に管理者権限。要は持ち主の意思でデバイスの暴走とかを止める権限があるんだ。それを使って暴走を止める。多分だけど、それしかないと思う」
「……待ってくれ、ユーノ。歴代の主とかだって馬鹿ではない人間がいたはずだ。そう言う方法があるならば昔の闇の書……いや、夜天の書の主も同じことをして止めたはずだ」
「はい。そこが一番の困難……というよりはそこだけが困難なんです、恭也さん。推測ですけど夜天の書に何らかの不具合が生じてしまって管理者権限が使えない状態にあると思います。原因は不明ですが、恐らくは無理な改変で」
「……ちょっと待てよ。じゃあ、どうするって言うんだよ!!使えないモノをどうやって使えって言うんだよ!!」
「落ち着きや、ヴィータ……じゃあ、もしかしてユーノ君」
「……うん。そういう事だね。作戦内容は簡単だ。わざと666ページ魔力を蒐集して君を闇の書として覚醒させ、その後にはやてが何とかして管理者権限を使う。それしかない。そして多分だけどその間はヴォルケンリッターの皆さんと僕たちは戦わないといけないと思う。何せヴォルケンリッターは意思はどうあれ闇の書の防衛機能みたいなものだからね」
「何とかって……それじゃあ、作戦なんて━━━」
「当然言えないね。こんな作戦、博打と何ら変わりがない事は解っているよ、なのは。でもね、それしか方法がなかったんだよ。それ以外の一番安全な方法とすればそれこそ復讐をしようとしていた人達と同じ方法に頼るしかないみたいなんだ」
苦渋と言う表現が一番似合う表情をするユーノ。その様子だとかなり調べたようだ。となるとそれしか方法がないというのは正しい事だろう。何せ見落としがあるならば黒いの達が何か言ってもいいしな。
結局はまた二択。今度はやらなくてもやっても結局は八神の命を危険に晒すことになる。成功すればそれこそハッピーエンドでめでたしめでたしで終わるだろうけど、失敗すれば八神はおろか地球すら滅ぶかもしれない。
何ともエキセントリックな二択にしかし、八神は目を逸らさない事で答えを出した。
「……提案した僕が言うのも何だけど本当にこの作戦を実行する気?正直に言えば成功する可能性は限りなく零に近いよ?」
「……だって、しゃあないやんか……さっきも進むって決めたし、何もせずに死ぬよりは足掻いて〇に近い可能性で生きていたいし、それに━━━」
そしてチラリとこちらを見る、はて?ようやく俺の魅力に気付いたのか知らん?もう一度サムズアップしようとして周りが指の骨を鳴らし始めたのでやめた。二度ネタは許さんと態度が語っていた。
で、結局答えはなんだなんだと思っていたら
「それに私達のリーダーの信条は━━━やると決めたならば手加減なく、遠慮なく、容赦なく、無慈悲に、無意味に残酷なぐらいに残虐に戦うなんやもん」
無表情にしていたけど周りは何を勘違いしたのかクスクス笑いだしている。全くもって面白くない。からかうのは慣れていてもからかわれるのは性に合わない。非常に面白くない心持ちで周りの視線を無視する。
「……ぷ。あははははははは!うん、うん。そうだったね。うん、そうだ。じゃあ、僕たちも手加減悪、遠慮なく、容赦なく、無慈悲に、無意味に残酷なぐらいに残虐に戦わなくっちゃね」
無視した。こういう空気の場合、ここでは話に乗ったら終わりだ。例え周りが穏やかな笑顔でこっちを見ていても完全無視だ。後で八神は尻に指を入れてやる。そして新しい世界に目覚めさせている。
「ふふふ。慧君、どうしたの?可愛い顔の眉間に皺が寄っているよ?」
「……ほっとけ。そして可愛いなんて言われて喜ぶ男はいない」
「……クス。ケイ、子供みたいだね」
「……一応肉体年齢は子供ですー」
拗ねない拗ねないといった感じで左右のフェイトとすずかが頭を撫でてこようとするのを避けながら溜息をつく。この雰囲気は俺の苦手分野だ。こう、まるで他人を無条件に信頼できるような人間と視られるのは好きじゃない。これから手を引くというのに。
「じゃあ、具体的と言えるわけでもないけど、細かい作戦でも━━━」
「あ~。その前に俺からひとこと言わせてもらってもいいか?」
「何だ、リーダー」
「うっさい、ゴキブリ野郎。後で海鳴の海に重り付けて沈めるぞ」
「「……!」」
「二人ともデバイスと隠し持っていたナイフで斬り合わない。で、何だい?慧」
ちっとお互い舌打ちをしながら武器を戻す。恭也さんが何時の間にまだ薄い医療服のままでいる俺が武器を隠し持っていたのかと思っていたようだが無視する。友人とはいえ自分の手口は隠すに限る。
そうして俺に視線が集まる。散々目立ちたがりみたいな行動をする俺だがここまで注目しなくてもいいのに。別にこれから言うのは特に重要な発表と言うわけでもないのに。
「で、何だ?下らない事を言えば後でなのはに撃たれてもらおうか」
「そいつは怖いな。ま、言う事は簡単で━━━この後、どんな作戦になろうと俺はこれで戦線離脱な」
反応は二種類。想像したとおりの驚き顔になる人間と━━━どちらかと言うとホッとした顔になる人間の二種類。ここまで違うとある意味笑けてくるね。別にどうでもいいけど。
「な、何でよ!あんた!はやてにさっき言った事を全く逆な事を言ってんじゃないわよ!やるのならば最後まで━━━」
「あのなぁ。今回はギリギリで何とかなったが、多分、いや次辺りは絶対に死ぬし、それに今度は完璧な足手纏いになるぞ」
バニングスの感情論を完璧に封じ込める。お前らみたいな人間の感情論でいうならばそうなるのだろうけど、お生憎様残念。現実と言うのは実力主義なのだ。弱肉強食。どこぞの包帯男の言い分風に言えば強ければ生き、弱ければ死ぬだ。全くもってその通り。
「大体だ。これ以降の場面で俺が必要になる部分はないさ」
「……どういう事?」
「簡単だ、フェイト。これから行う事を順にたどっていけば、まずは蒐集活動だろうけど、その時はまず相手は魔力を持っている生物からの蒐集だろう?協力するとはいえ流石に人身御供にするわけはいけないだろう?」
「その通りだな」
「となるとまさかだが俺はそんなドラ○エみたいに魔物退治を出来る力なんて全くない。故にその事で出来る事なんてない。次はまぁ、情報収集なんだけど俺みたいな地球人では魔法の事情を調べるなんてことは到底できないし、する気もない。というかやる気もない」
「……やっぱり後半が本音なんちゃうか?」
「そして最後にまさか俺がお前らみたいな何でもありの魔法バトルに参加できるはずがない。今回なんて本当に偶然の勝利だ。そしてまぁ、仮定で最後の八神が『地球の皆よーー!私に力を貸してくれんかーー!!』作戦に参加したときまぁ、相性で言えばシグナムとしか戦えないわけだが」
「……当然私の方が勝つな」
「え?どうして?」
「すずか。今回の戦いは出来るかどうかは別としてみれば魔力持ちでもない慧でもぎりぎるで勝てるようなバトルではあったんだ」
「「「「「???」」」」」
五人娘が解らないと解りやすい表情で問いかけていた。それに何人かの人間が苦笑していた。俺は呆れで溜息をついている派だったが。バニングスとかすずかとか八神ならともかく、高町やフェイトは気づけよ。
そして律儀にシグナムは説明する。
「今回の相手は総合的な実力はともかく、魔法だけの能力と言う意味では決して強力ではなかったのです」
「え……で、でも……」
「主。確かにあの加速魔法は脅威ではありましたが……正直に言えば魔法ありならばヴォルケンリッターはおろか、なのはやテスタロッサでも反応は可能です。勿論、魔法を持っていない慧にはかなりの脅威ではありますが」
「そ、そうなんか?でも、それじゃあ……」
「ええ。でも、非魔導師が最も恐れるのはそんな解りやすい能力の加速魔法ではなく、もっと普通のモノ。砲撃魔法や補助魔法。結界魔法なんかのほうが脅威なのです」
「???どうしてよ?砲撃魔法は解るけど、何で補助魔法とか防御の為の結界魔法とかの方が脅威なのよ?」
「簡単だ━━━リンカーンコアを持っていない人間はそれを感知することも解除することも出来ないからだ」
バニングスの質問は俺が答えた。それでようやくバニングスとすずかとフェイトは納得したという感じに受け入れた。だが、まだ高町と八神は?顔だ。だから、八神はともかく何で高町まで解ってないんだよ……
「いいか、高町と八神。例えばさっき……って三日前か。あの老人に俺は殴りにかかっていただろう」
「「うん」」
「じゃあさ━━━その時にお前やユーノが張る防御魔法を使われたら俺の攻撃は届くか?」
「そりゃあ━━━」
「━━━届かないよね」
「では、結論。俺はどうやって攻撃を届かせればいいんだ?」
「「……ああ!」」
ようやく気付いたようだ。俺では魔法で構成された防御魔法は決して突破することなんてできない。何せ俺の攻撃手段は拳か蹴りか頭突きか、もしくは袖に隠された武器くらいしか存在しないのだ。そのどれにも属さない魔法を突破する手段なんてない。
防御魔法だけならばまだマシだ。これでバインドとかに引っ掛かったらその瞬間、終わりだ。以下同文で俺は魔法を解除できないのだから。今回は偶々。補助、防御魔法の苦手な相手と戦っただけ。こんな偶然は二度は起きない。
「それに今回に関しては魔力量が相手はそこまで高くはなかったのです」
「あれ?魔力量って皆、同じとちゃうんか?」
「ええ。人によって量や使える魔法は違います。あの老兵の場合、魔力量だけで言うならばCぐらいだったと思います。最も魔力量=強さというわけではないのですが」
同感同感。Cがどういうランク付けかは知らないが、あの老兵ならば多少の敵ならば突破できる力があると思う。現に劣るとはいえ身体能力で恭也さんに何とか喰らい付いてはいたのだ。肉体がこれで全盛期だったら今頃、俺は死んでいるな。
「ちなみに暴論遣い」
「何だ、ゴキブリの同類」
「あの人━━━レリオ・マルク提督は総合で言えばAランクの実力者だ」
「へぇ~。それって凄いのか?」
「凄いなんてものじゃないな。非魔導師が魔導師のそれもAランクの人間を倒したなんて噂が流れたら、とりあえず魔導師の面目は丸潰れだな」
「マジで?じゃあ、俺は三日前に高町やお前の面目を潰せたのか。最高の気分だな」
「君と僕ならば百%、僕が勝つけどな」
「……ちっ、格闘技の分野ならば負けんぞ」
「ふっ、僕を甘く見ているようだな。今の時代に必要とされるのは文武両道だ。僕が魔法しか出来ないと思うのは大間違いだ」
「成程。大事な成長期の時期に無理に体を痛めつけたからそんな風に背が伸びなくなったのか。正に等価交換だな。はははははは!見事じゃないか!!その小ささこそがお前の強さの証だという事ってか!?」
「はっ。何だ三日前までぼろぼろの襤褸雑巾みたいな姿で運び込まれた癖に。最初の方はともかく後半のほぼ格闘技だけの戦闘だったというのにその結果じゃあ、僕には勝つことどころか触れる事さえできないね、この大言壮語男」
「「……!」」
「二人とも。情熱的なクロスカウンターをするのは見ているこっちとしては熱くなるのだがいい加減話を戻そう」
恭也さんの説得に渋々と腕を引く。このまま続けていたらこっちが勝つ可能性はあったのに。だが、確かに侮っていたようだな。まさか俺の拳に反応できるとは……何時か絶対ぶっ倒す。
とまぁ、別にどうでもいい思考はそこらに捨てて。別に相手のランクが高いとか言われたからって自惚れる気なんて毛頭ない。今回は逆に上手く行き過ぎただけなのだ。
細かい事を省けば相手の能力は加速魔法と自分の戦闘技術だけ。前者さえなんとかすれば勝てない事もないという相手だった。魔導師組。しかも、ここにいるメンバーなら勝とうと思えば勝てると思う。最も高町とフェイトと赤犬は確実に負けていただろう。技術的にも精神的にも。能力的には負けていないだろうけど。
Aランクという所まで上り詰めたというならばかなりの実力者だったらしいが、それも加速魔法あっての強さだろう。一般魔導師の強さを知らないから、断言はできないが、あの魔法は本当に単純に脅威だ。それこそ恭也さんが単独で戦って少しでも相手の癖を覚えることが出来なかったのならば、同じことをして反撃することは出来なかっただろう。
結局は偶然。何もかもが運で決まったといっても過言ではない。あの場で恭也さんがいなかったのならば死んでいたし、相手があの老兵以外ならばほぼ死んでいただろうし、相手のもうちょっと魔力量があったのならば射撃魔法のよって死んでいた。
実力で生き残ったわけではない。ただの偶然で生き残っただけ。その事は良く噛み締める。風雷慧は最悪にして災厄であっても、最強や無敵という存在からは遠く離れているのだから。慢心だけはしてはならない。それは本当に肝に銘じておく。
「というわけだ。別に卑怯者とか弱虫とか言ってもいいけど、どっちにしろ俺はリタイアするからな。」
そう言って立ち上がる。すずかとフェイトが体を支えようと立ち上がろうとするが手をひらひら振って別にいらんという意思を示す。これぐらいの怪我で動けなくなっているのならば、とうの昔に死んでいる。
「……おい、君はまだ安静にしておけ。二重の意味でも。リタイアの方は言うのは何だが逆にほっとしている。」
「そりゃどうも、黒いの。安心しろよ。別にリタイアと見せかけて別行動して何かをするとか、そう言うのは決してしないから。雑魚は雑魚らしく、安全地帯で縮こまっておくよ━━━ああ、そうそう。もう一つの意味での安静はいらないからな」
余計なお世話はいらない。そう彼らに言い聞かせておく。誰かの手を借りて生きるなんて真っ平ごめんが俺の生き方なもので。別にその生き方を否定するとかそう言うのではないのだけれど。……そうだ。
「ああ、そうだ」
「???」
「捕まったあの復讐者どもは今、どうなっているんだ?」
「……ああ。今はアースラの牢に捕えているよ。どう足掻いても一度はフェイトの裁判の為にもう一度戻らなきゃいけないからね。その時に本局の方に渡すよ。」
「ふぅん?あっそう」
「……興味があったから聞いたんじゃないのか?」
「まさか。そんな事を言いだしたら俺は別に今の状況にも状態にも興味はないよ」
八神が死ぬかもしれない状況も。俺が体の状態も。別にどうでもいい。至言だ。そしてそれこそ別にどうでもいい事だ。命がとられそうになったからといって性格が変わるとかそんなロマンティックな事をする気なんてこれっぽっちもないのだ。
そう思い、そのまま部屋から歩いて出て行った。
「……やれやれ」
結局、そのまま流れ解散。あの暴論遣いが出て行ったら皆、急いで彼の後を追って行ったのだ。まるで親鳥について行く雛鳥みたいな光景だった。そう思ったら、かなりシュールな光景だけど。
それにしても……やっぱり、彼の真意がわからない。彼は友人?である八神はやてが死ぬのも自分が死ぬのもどうでもいいと言った。そして自分を殺していたかもしれない相手に対しても。
少なくとも僕にはそれが嘘には聞こえなかった。あれだけを聞いていたらかなりという言葉では足りないくらい薄情な人間のように思える。否、思う。だけど━━━八神はやてと月村すずかを助けた時のあの必死さ。それも嘘には思えなかった。
多分、ついて行った彼らは後者の彼を信じているのだと思う。だけどクロノ・ハラオウンはそんな無条件に彼を全面的に信頼できるような時間を彼と一緒に過ごしていない。判断する基準を持っていないのだ。
僕にはどっちが彼の本当かを判断する根拠はない。だけど、信じてみたいとは思う。幾らなんでもこんなに身を挺して戦ったのに、それを何もかもがどうでもいいとか、そういう思いで戦っているとは思いたくないのだ。
個人的な意見だが、人が何かと戦うには理由がないといけないと思う。それが信念と言う人がいれば友人の為、生きる為、仕事の為、愛の為、夢の為と人それぞれの理由が必要だと思う。そうでなくては命を失うかもしれない戦いで立って戦おうとは思わないと思う。
そうでなけらば誰が命を失うかもしれない恐怖の場所に立っていられるか。僕や母さんにも無理だろう。だから、彼みたいに別にどうでもいいとか言って戦えるはずがないんだ。
何か理由があるはずだと思う。彼が形振り構わず戦う理由が。じゃなきゃ━━━余りにも惨たらしいじゃないか。彼に負けた被害者も。彼も。そうだ。あの時、あの負傷で提督の首を掴んで殺す気なのではないかと思うくらい締めていた時のあの執念。あの執念がそんな別にどうでもいいとかそう言う理由で生まれるはずがないと思う。
そこまで思い、少し驚いた。
何だ。僕もなのは達と同類か。あんなに彼を信頼できないとか言いつつ、それを信頼する根拠を探している。全くもって馬鹿らしい。どうやら僕もまだまだ精進が足りないようだ。
「……さて」
そう思い、闇の書……いや、夜天の書の解放の為の計画を立てるためにもう一度ユーノが集めてくれた資料を読み直そう。万が一でも見忘れていたところとかあって失敗なんかしたら洒落にもならない。
それに魔力がないあいつがAランクの人間に悪知恵と素手だけで勝てたのだ。魔力や組織としての力。経験、技術。全てで勝っている自分が彼に負けるというのは少々どころではなくむかつく。他の誰かに負けるのはいいが、あいつに負けるのは我慢ならない。
だからそうだ。この件を無事に終わらせ、あいつに嫌らしいくらいの笑顔と声で結果を伝えてやろう。どうだ、事件は無事に終わらせてやったぞと。そう思ったら微笑が出てきた。
勝てるなと自然に思った。負ける道理がない。あの腐れ暴君使いに勝てるのだ。闇の書如きに負けるはずがないと、そう、クロノ・ハラオウンは笑った。その笑顔は今までの彼の笑顔とは違って嫌に清々しい笑顔だった。年相応の━━━当たり前の友人にゲームで勝ったといッた感じの。当たり前の笑顔。
「そういえば慧君」
「ん?何だ、高町?つまらんことを言えばその分だけ八神の髪の毛を纏めて引っこ抜くぞ」
「乙女の命に何て事を……!」
八神が何か言っていたが無視した。俺の台詞で周りの人間も全員頭を守る体勢に入っていた。中々の反応だったと思う。何故その反応を三日前の時に発揮してくれなかったのだろうか。別にどうでもいいけど。
「そんなフェイトにおぶられながら言われてもねぇ……」
「うっさい、バニングス。そしてフェイト。やっぱり下せ」
「駄目だよ~。ケイは動けるとは言っても重傷者なんだよ?それなのに動いたら治るものも治らないよ?」
正論だったので言い返せない。フェイトはこのメンバー一の純粋な人間だが、頭だけで言えば誰にも負けていないのである。そう、確かに正論だ。だが、何が悲しくて自分より少し小さい女の子に背負われなくてはいけないのだろうか?お蔭で背後に立っているであろう、すずかの視線が怖くて話題がふれない。俺だって離れたいのだが如何せん。何故か俺の両手や両足にはカラフルなバインドが……。
「解った。百億歩譲って背負われるのはいいだろう。だが、別にフェイトがしなくてもいいではないか?それならば、恭也さんにでも頼む」
「……ケイは私の運ばれるのが嫌?」
偶にこの少女はわざとやっているのではないかと疑う時があるがそれはやっぱり俺が疑心暗鬼に囚われているからだろうか?それとも俺の心が汚れているだけだろうか?多分どっちもだ。俺はフェイトの質問は華麗にスルーした。
「……それにしてもケイ。物凄く軽いね……少し複雑」
「諦めなさい、フェイト。そいつ男の癖に私達よりも軽いもの。細かい体重は聞かない方が良いわ━━━殴りたくなるから」
「おいおい。それは理不尽というものではないだろうか。別に俺だって軽くしようとしているわけではないんだぞ」
単純に修行と言う名の運動をしているだけだ。それにしてもむぅ……そこまで軽いだろうか。別に重くなりたいというわけではないが、軽過ぎたら拳に乗せる体重が……。これでもちゃんとご飯は三食食べているのだがなぁ。筋トレもしているし。もっと増やすべきだろうか?というかそれでも俺を背負えるフェイトの筋力がおかしいのではないのだろうか?それともやっぱり、魔法を使っているのだろうか?
「くすっ」
「何だよ、すずか。いきなり笑い出して。毒婦っぽいぞ」
「褒められて……ない?」
「褒めてるつもりはないな」
「私が毒婦なら慧君は毒夫?」
「日本語を増やすなよ。ただでさえ日本語は一種の言葉の魔術と言われているんだから。それで?」
「ふふふ。だって、慧君。まるで背が伸び悩んでいる子供みたいな顔になっているんだもの」
「……俺は無表情ですよー」
「こんだけ長く付き合っていたら誰でも解るよ」
いらない読心術を覚えられたみたいだ。長く付き合うというのは良い事だけではないと実感。他の奴らもえっへんというようなどや顔をしているのがむかつく。とりあえず、高町は殴る。
「……今、不穏な考えを感じたけどとりあえず聞いて良い?」
「……」
「な、何で両手をわきわきしながら私の髪の毛を見るんや!?」
恨むならば友を恨むがよい。きっと高町の事だからつまらない事を言うはずだ。そう。決して今回の治療費どうしてくれるのかな~とかは一切思ってはいないさ!!そして高町はそれについては無視しているようだ。ふふふ、流石は高町。魔王の様に冷たい心だね?
「うん。で、聞きたいことって言うのは三日前のあの最後のお爺さんの爆発の事だったんだけど……よく生き残れたよね?」
「……ああ。何だ、その事か?」
ちっ。高町にしては真面な質問だったので手を下す。八神がホッとして頭を押さえている。命拾いしやがったな。
「別に特別な事はしていない」
「じゃあ、何をしたの?」
「ああ。あの老人、デバイスじゃなくて刀身が爆発するとか言っていただろう?」
「うん」
「だから、爆発する前に殴っていた腕を使って刀身を地面に思いっきり埋めた」
一瞬の判断だった。殴って伸ばしていた腕をそのままの勢いのまま剣の柄尻に触れ、そのまま押し込めた。幸い、魔力を使った剣だったお蔭か。思いの外簡単に埋めることが出来た。そうなると爆発は足元から上に行く。だけど、大抵は地中で衝撃を吸収してくれるはずだ。
「う~ん……」
「何だよ。疑問があるなら早めに聞いておいた方が良いぞ、バニングス」
「じゃあ、遠慮なく。あの爆発。それだけで防げるものだったの?例えばあんたの言った通りにやってまぁ、結構な衝撃は地中で吸収されるでしょうけど、そんだけじゃあ、やっぱり上に向かう爆発力を吸収するのは不可能だと思うわ。運良く、あんたが後ろに少しでも下がれたとしてもそれだけの傷で生き残れるとは思わないのだけど」
「流石。良い所突く」
本音であった。何時もは手しか出ない奴だが頭脳と言う意味でならば同年代の少年少女を遥かに超える知力を持っているはずだ。ある意味賢者とかになれそうである。
「ま、運が良くて両足が吹っ飛ぶ。順当に行けば下半身は全部持ってかれて、運が悪かったら無駄な足掻きをしていたという事になっていただろうな」
「……じゃあ、何で今、ぴんぴんしているのよ?」
「おやおや、まるでぴんぴんしているのが悪いみたいな言い方だね。まぁ、答えはユーノに聞きな」
「ユーノ?」
フェイトが疑問を声に表してからユーノの方に振り向く。それと同時にほかの連中もユーノの方に視線を向ける。当のユーノは苦笑して俺の方を見ている。俺は男色の毛はないぞ。
「何だか嫌な妄想を抱かれた気がするけど無視するね。それに別に僕は大したことはやってないよ」
「でも、慧君が……」
「ん。まぁ、種明かしをすると、あの時、爆発する直前に結界を崩すことに成功していたんだ」
「あれ?爆発した後やったんちゃうんか?」
「本当に直前だったんだよ。大体三~四秒くらい前だったんだよ」
「ふんふん。それで?どういう事なのよ?」
「うん。爆発することは直前の会話や雰囲気でわかっていたからね。だから爆発する前に慧に防御魔法をかけたんだ」
「「「「「……あ!」」」」」
そゆこと。とは言っても爆発の衝撃で結界自体は砕けて吹っ飛ばされたのだが、まぁ、仕方がないといったところだろう。むしろ、運が良かったと喜ぶべきだ。防御のスペシャリストであるユーノが張った結界でこれなのだ。ユーノ以外が張った結界だったならばやっぱり死んでいたかもしれない。
だから今回の勝利は自分のではない。一番の努力賞は結界の破壊を終始し続けてくれたユーノの隠れた動きだろう。結局、俺一人では誰一人として勝てなかったという事だ。
自分の無能さに呆れて嘆息する。結局そうだ。風雷慧が一人で何かを成し遂げられたことは今のところ一度もない。これが普通の子供の結果なのだろうけど、それに満足してしまう程、俺は頭が良くなかった。
それならば高町はどうなる?つい最近までそれこそ俺以上にに何もできなかったのに蓋を返せば魔法戦でならばトップクラスの魔力だしい。嫉妬など無意味と言うのは解っている。だから別に何かを言うつもりもないし、世を嘆くつもりもない。
こんな事を考えてもどうせ荒事が起こればそんな事は気にしない。元より風雷慧は力の有る無しで行動を決めるような事をする気はないのだ。別に正義感とかそういうのではないが。
「解ったか?じゃあ、とっとと帰ろうぜ。いい加減この状態から脱したいし」
速く帰って寝たいのだ。さっきまで寝て異端ジャンとかそういう平凡な質問は止せよ。学生ならばこの気持ちは誰にでも解るはずだ。解らないのならばそれは真性の勉強好きだ。
そう思って皆を促そうとしたらその内の一人。高町が何故だか知らないが決意を秘めたような瞳になっているではありませんか?他のメンバーと顔を合わせると他の奴らも疑問顔で理解していない様子。別に高町がどうあれどうでも良い事なんだけど。
そう思って無視しようとした矢先に高町が何故かこっちを見て
「慧君……お願い!戦い方を教えて!!」
「…………WHAT?」
物凄い事を言いだしたのである。
あとがき
老人との勝負が終わり少し一休み。
慧の体の半吸血鬼化はやっぱり、流石に後遺症がないというのは少しおかしいかなと思っての事です。
彼にとっては好都合この上ない事だったと思いますが。
……まぁ、若干都合が良すぎると自分でも思いますがそれを言ったら夜の一族の能力も吸血鬼としては都合がいい能力だよなぁと思いまして。吸血鬼なのに弱点無しですし
まさか自分でも目覚めのキスについての講釈を書くことになるとは思わなかった……
ギャグについてはその場で思いついたことを書いてますから。
まぁ、主人公つえーとかいうような勝負の終わり方だったと思いますが、そんな事はないと彼自身が否定。
事実、今回は完全に相性と言う時点で運が良かったという風に書きました。
主人公のまさかの戦線離脱と思いますが、これは仕方がない事です。
元々、魔法と戦闘するなんて能力はないのです。今回なんて偶然中の偶然。
実力だけで言えば今のところ出てきている全メンバーに負けると思います。
勝てるとすれば今のはやてとすずかは運動神経では負けているけど技術では少し勝り、バニングスには勝てるかな?ギャグシーンを除く。
最もこれは普通の結果なんですけどね。
小学三年生がどんなに足掻いてもこれが当たり前でしょう。
だから、頭やら肉体を犠牲にして戦うんですけどね。
そして彼の戦う理由はあるのか、ないのか。
それはお楽しみに。
……何かクリスマス特別編とか正月編とか書くべきなのでしょうか?
そして闇の書の設定。
これで良かったでしょうか?