「本当にびっくりしたよ、フェイトちゃん!」
「うん。私も来れるなんてびっくりだったよ」
「あっはっはっは。あたしゃあフェイトが喜んでくれて幸せだよ」
「うん。僕は僕でびっくりだけどね」
「そうやな~。まさかこんな形で初めましてになるなんて思わんかったな~」
「そうね。てっきりもっと後になると思ってたわね」
「そう。裁判をやっていたんじゃないの、フェイトちゃん?」
あの後
皆でいきなり来たフェイトちゃんに驚き、そして皆でワイワイ騒ぎになったんや。名前はフルネームで確か……フェイト・テスタロッサちゃん。何をやったのかは詳しくは知らないけど何かやって今は裁判中らしい
最もそんな非道なことをやったわけやないらしいからそんな酷い刑になるというわけやないらしい。更にはそこにいるユーノ君やクロノ君とかいう人も協力をしているから大丈夫らしい
それを聞いて内心ほっとする
慧君に何とか頼み、何とかしてもらった身で言うのも何やけど、言い方悪く言えば実例と言うのを見れば少し安心する。この調子であればヴォルケンリッターのみんなの方も何とかなるやろうと楽観できるってもんや
とりあえず、すずかちゃんが今、こんな驚きの状況にあるフェイトちゃんの出現。その理由を聞こうとしている
「うん、ええとすずかでいいんだよね……?」
「うん。私はフェイトちゃんって呼ぶね」
「私はフェイトで」
「私もフェイトちゃんで」
「うん。すずかにアリサにはやて。うん、覚えた」
そこで本当に嬉しそうにフェイトちゃんが笑った
うわっ。物凄い反則臭い笑顔やな~。並みの男やったら一発やで。というか大人ならともかく同年齢なら……ああ、例外がいたな~。それこそ我らが暴論遣い。風雷慧君こそ正しくその例がやな~
何せ美少女と名高いすずかちゃんのおねだりを今までずっと無視したり耐えたりしているからな~。正直、私がされたら光速で陥落するのにな~。ある意味慧君はそういう意味でもバケモノかもしれない
「えっとね。何で私が来れたかと言うとクロノがね」
『幸い君達は僕たちが保護観察をしているという立場なんだ。だから僕たちから離れるわけにはいかないだろう?勿論、少しは無理したけどこれであの無表情暴論最低最悪性悪少年の顔を少しでも歪めることが出来ると思えば安いものだ』
「って言ってたの」
「「「「……」」」」
全員思わず溜息と苦笑を同時にしてしまう
何というかまぁ
「その言い方。風雷にそっくりね」
「そうだね。そのやり方も慧君そっくり」
「にゃはは。クロノ君は慧君とは喧嘩ばっかりしているけど、実は気が合ってたりして」
「喧嘩するほど仲が良いってやつの見本やな」
「うん。私もそれを言ったらクロノが何だか嫌そうに止めてくれとか言ってたよ」
「そうだね。あの真っ黒執務官は素直じゃないからね。ところで。その肝心の慧はどうしたの?」
最後のユーノ君の純粋な疑問
思わず視線を逸らす私達
素直に答えていいのか駄目なのか微妙な所やな~
ああ、三人が疑問顔で首を傾げて……可愛いやんか!
視線会議で素直に答えることにした
「どうやら、慧は今、先生に追われているらしいわ」
「何故に!?」
「風林火山、風の陣が出たから間違いないなの」
「風林火山!?」
「逃げるスピード風の如しっていうことからこの作戦名よ」
「作戦!?」
「ちなみにアリサちゃんの時は風林火山、火の陣で由来は暴虐すること地獄の業火の如しだったよね」
「暴虐!?地獄の業火!?」
「それを言うならすずかは動かざること(愛が)山の如しで風林火山、山の陣じゃない」
「何故に!?じゃ、じゃあ、なのはやはやてにも……?」
「ええ━━━二人は突っ立っている事林の如しって呼ばれているから一度もそういった警報は鳴らされていないわ」
「……なんでやろうなぁ。鳴らされない方が良いとはわかっているんやけどかなり負けて気がするのは……」
「……何でだろうね?」
気にしてはいけないとはわかってもつい思ってしまうのは人間の性やろうか?何と言うか損をした気分と言うか、得をした気分と言うか。どっちつかずでもどかしい気分やな。でも、私がお笑いでキャラを出せていないというのは頂けない。その内返り咲かなくてはいけないと決心する
。この場の関西人代表として
「た、大変!助けなきゃ!」
「ちょい待ちぃぃぃぃぃ!!」
何という純粋リアクション……!慧君から聞いたことは正しかった。見ればアリサちゃんやすずかちゃんも驚きに目を限界まで開けている。というか瞳孔が……
これが噂の天然……その能力は私達みたいにギャグを戦闘力に変えている人間に対してはまさしく天敵。特にアリサちゃんとすずかちゃんに対しては最強と言っても過言ではない能力であろう
聞いた話によれば一度は慧君の暴論でさえ引かせたらしい
何という恐ろしい才能……!我らが束になっても倒せなかった慧君の暴論を打倒するとは……ただ者ではない!!
「え、えと。じゃあ、ケイは遅れるの?」
「う、うん。そうなの」
「……そっか」
「……残念」
遅れるという言葉を聞いてフェイトちゃんとユーノ君が少し落ち込む
???フェイトちゃんが落ち込むのは解るけどユーノ君は何でやろう?はっ!まさか……これなのかな?
そう思っているとなのはちゃんが少し小声で教えてくれた
「ユーノ君その……慧君を何だか尊敬しているみたいで」
「なん……やて……」
「ユーノ。悪い事は言わないわ。アレを尊敬するのは止めておきなさい。きっと人生を狂わされるでしょうし、何よりアレには見習う点はないわ。習って覚えるとしたら暴論のえげつなさと容赦のなさと最低さだけよ」
「ぼろ糞に言っているね」
「そんな事はないと思うよ。暴論って言うけどその暴論で相手の注目をこっちに注目させたりして、囮になってくれたり。アドバイスをしてくれたりして、意外と優しいと思うよ」
「う、うん。そうだよ、アリサ。ケイは良い人でその━━━格好いい人だよ」
「……」
ガギャと物が壊れる音がした
そ~っと音のした方に振り向くとそこには拳大の堅そうな石を握りつぶしているすずかちゃんがいた。その光景を見て思わず背筋が寒くなってしまうのは恥ずかしい事やろうか?いや、そうではない
目の前にいるのは人の姿をした鬼神や……
「そうだった……フェイトちゃんとは決着をつけなくちゃいけないことがあったね」
「え、え?な、何をかな?」
「━━━慧君の事が好きなの!?」
「「「ド直球!!?」」」
余りのド直球さに思わず唾を吐いてしまう。しかし私達の汚れたリアクションと違って当の本人は一瞬どういう意味で言われたのかわからず首を傾げ、そして数秒してようやく気付き顔を可愛らしく赤らめる
な、何ていう可愛らしい反応……ああ、すずかちゃんが敗北の感触に血反吐を吐き散らしている……ああ、アリサちゃんが余りの哀れさに肩を叩いて慰めている。正直私も余りの綺麗さに正視出来ない
そして止めの一言
フェイトちゃんは指をもじもじし、はにかみながら
「━━━うん。多分、その、初恋」
等とのたまった
「……ふっ、フェイトちゃん最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ(ぶしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ)!!!」
「はやてちゃんが鼻血を出しながら最高の笑顔で感激している!!?」
「くっ、クソ!!風雷なんかには勿体無さ過ぎるわ!!私が男ならば私が貰っているわ!!というか今、奪っていい!!?」
「ああ!ああ!ああ!さっすが私のご主人様!!存在そのものがキュートだよ!!」
「……収拾がつかないな~」
狂喜乱舞
一体、この子は慧君のどこを好きになったのやら?慧君の良い所ねぇ……………………口が上手い事?でも、それは悪い方に。駄目やんか
それはそれとしてすずかちゃんが女としての格(純粋さ)の違いを見せつけられ、かなりの大ダメージを受けている御様子やった。無理もない。もしも、私がすずかちゃんと同じ立場やったら、同じリアクションを取っていたやろう
「あ、すずかもケイの事が好きなんだよね?」
「え、あ、う……」
「よかった!一緒に頑張ろう!こういうのをライバルって言うんだよね?」
「ああ、あうぅぅ。こ、心の闇が光に照らされていくぅ~」
「すずかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
惨劇や
余りにも残酷な惨劇や。こんなものを見せられたら、泣いてしまうで。ああ、なのはちゃんが既に泣いている。そんなん先に泣かれたら私が泣けへんようにになるやんか。上手い事ハンカチを用意しているし
「……話の腰を折って申し訳ないがテスタロッサでいいか?」
「あ、はい」
そうやって和やかに話をしていたらシグナムが話に割り込んできた
「私達としたら主達と楽しんでくれるのは良いのだが━━━今回の問題の話はどうなっている?それともテスタロッサ。お前が話をしてくれるのか?」
そういえばそうや。私達は今回は遊ぶために集まったわけではなく、シグナム達、ヴォルケンリッターの裁判の話をしに来たのであった。本来ならば、高町家とヴォルケンリッターだけの会談に慧君はしたがっていたようだが、なんだかんだで月村家とアリサちゃんも来てしまった。ほんま、友人思いの友達を持って私は幸せもんやなぁ
それによって慧君の意思は無視されたけど
全員を助けるのは難しいもんやなぁ……
とと、今はそんな事を考えている場合やなかった。今はシグナム達の話やった
「そうやで。確か……クロノ君っていう人が話をつけに来てくれるんちゃうん?私は慧君にそう聞いたんやったんけど、もしかしたら、土壇場で話が変わった?」
「ううん、そうじゃないの。ただ━━━」
「ただ?」
「何だか少し頭を冷やしたいから先に行ってくれって」
???どういう事なんやろうか
疑問に集中していたせいか、私は気づかなかった。それを聞いたヴォルケンリッターの皆が悲しい顔になっていた事を
「……ふぅ」
フェイト達を先に行かせて十分ぐらい経ったか
僕と母さんはまだアースラに残っている。本当ならば既に高町家にお邪魔して、会談の話をさぁ始めようという事になっているかもしれない時間帯だ。建前では丁度あっちにはあの暴論遣いがいないという事で何とかなるかもしれないが、それも時間の問題いだろう
「……あの暴論遣い。時間を指定しておきながら遅れるなんて……」
悪態にも力が入っていないことが何となく解る。そしてその原因も解っている
闇の書。そしてヴォルケンリッター
僕の━━━父さんが死んだ原因
解っているんだ。頭では彼女達だけのせいではないという事を。既にそれも納得して話をした、画面越しだが話し合いもした。そして彼女たちはその罪を償いたいと思っている。良い事だらけだ
しかし感情だけは別の問題だ。感情はこう訴えている
彼女達は父さんの敵だ。だから━━━
そこまで考えて頭を振る。違わないけど違う。彼女達は確かにたくさんの罪を重ねたが、さっきも言った通り彼女達だけのせいではない。歴代の闇の書の主。そして管理局にも問題があったはずだ
歴代の闇の書の何人かが犯罪をしようとした。これはその主のせいだ。しかしだ。多分だが闇の書とだけで彼らを狙った人間もいるだろう。彼らが間違いとは言えない。危ない物を何とかしたいとか思うのは誰でも思う事だ。その危機感は誰にでもある
それ故にそれが暴走をして何の罪もその時はない闇の書を攻撃したことがあるのは一度や二度ではないはずだ。ただでさえ悪名高いのだから。
その結果が過剰攻撃というのもあったはずだ
そこで思った
どっちが最初の引き金を引いたのだろうと
考えても詮無きことだった
「クロノ」
そう思い悩んでいたら声が聞こえた
一生忘れはしないであろう、母の声だ
「母さ……艦長」
「今は母でいいわ。貴方もそうでしょうけど私もそういう気分ですし」
そう言って笑い、傍に来てくれた
本当は一番葛藤しているのは母さんなのに。幾ら父さんが死んだとしてもその当時は僕はまだまだ子供で現に自分にはあんまり父さんの記憶がない。ほとんどが朧気だし、知っている事は他人の評価や他人の思い出話とかだ
しかし、母さんは違う。どういう出会い方をしたのかは知らないが、母さんは父さんと出会い、話し合い、一緒に仕事をし、食事をし、恋をしたはずだ。それらは今も母さんの中で生きているはずだ、でなければ今頃新しい人と新しい人生をやり直しても不思議ではない
現にそういう話を貰ったという事を聞いたことがある。それの結果は母さんの苦笑だった。それだけで十分だった
そういう意味では闇の書は僕たち家族を完璧に壊した原因の一つだろう。父さんは死に、母さんは泣き、僕は彷徨った
ふと思った。もしも、父さんが死ななかったらのIFの話を。そうなっていたらどうなっていただろう?僕は管理局に入らずにただの子供だっ
たかもしれない。それこそ今の歳ならなのはみたいに学校の友達と遊んでいるかもしれない
そして父さんは仕事をし、母さんはそうだな家の仕事に専念していたかもしれない。それで僕は家に帰って母さんに出迎えられ、父さんが帰ってくるのを待ち望んで、帰ってきたら一緒に遊んでくれと願う
誰もが望むような生活が待っていたかもしれない。誰もが目指す幸福を手に入れていたかもしれない
そう思って苦笑した
夢見がちな話だ。こんなことを考えても無駄というのはとっくの昔に理解していた。世界はこんなはずじゃなかったばっかりだ。そんな事は痛いほど理解している。
それにだ。それを望んだら今まで僕がしてきたことはどうなる?父さんの墓標でっていうのは少し美化しすぎかもしれない。だけど母さんが泣いている時に誓ったはずだ。
世界はこんなはずじゃなかったばっかりだ。ならば、そのこんなはずじゃなかったばっかりだを少しでも減らそう、と
その結果が現在
楽な道ではなかった。むしろ困難な道だった。何度挫折しかけたか。魔力量が低いとか言われた。まだ子供だとか言われた。それらを跳ね除けてでも前に進んだ。
そして得たものは━━━小さな笑顔だ
たったそれだけと周りは言うかもしれないが僕にはそれだけで十分だった。それだけで僕は誰かを守れたと勘違いかもしれないが思えた。それを幸福と言わず何というんだろう。だからそんなIFは僕には無駄な話だ。父さんが生きていたらそれはそれで幸福だろうけど━━━今の僕も違う形で幸福だ。
ならば迷う道理はない。何せ話を聞いてみると今回の闇の書の主もそんなこんなはずじゃなかったの被害者だ。僕が動く理由は充分にあるし、
何よりも因縁は断ち切らないといけない
ようやく迷いは吹っ切れた。そう思い、ふとあの無表情少年の事を思い出した。アイツならば僕がこんな風に迷っていることについて何ていうだろうか?
女々しい奴とか言うだろうか?多分だがそんな事は言わない気がする。通信をしていて解ったがアイツはそういう事は馬鹿にしない性格だ。むしろどちらかと言うとそういうのは重要視する人間だと思う
あれだけ他人なんかどうでもいい態度を取っているのに、その癖、相手のプライドとか尊厳とか大切なものとかは馬鹿にはしないのだ
どっちつかずの蝙蝠みたいな奴だ
そう考えていると母さんが笑ってこっちを見ているのを知った
「何か僕の顔に付いてますか?」
「いーえ。ただ、慧君の事を考えていたでしょう?」
「……どうしてそう思ったんですか?」
「だって何だかやれやれ顔で苦笑しているんだもの」
「……」
やれやれ顔
確かにアイツの事を考えているとそうなるかもしれない。何せアイツはかなりの大嘘吐きなのだから。呆れもする。ああいう人間にはなりたくないものだ
そう思い、出発しようと腰を上げる
今は過去との決着を
そう、思っていた
「……!艦長!クロノ君!!」
さっきまで黙っていたエイミィがいきなり叫んだ。その顔には何時もの能天気な顔とは違って声と同様の緊迫な雰囲気が張り付いている。エイミィがこんな顔をするのは━━━非常事態の時だ
「どうしたんだ!?何が起こった!!」
「簡潔に答えるよ!なのはちゃんの家から魔力反応!!」
「それはなのはちゃん達のとは違うの!?」
「違います!誰とも一致しません!!第三者の人物たちです!!」
第三者の人物
その言葉を聞いた瞬間、思わず舌打ちをしてしまった。
第三者?決まっている。こんな状況であそこに集まっているのは闇の書の主とその守護騎士達。どんな理由であそこにいるのかもおおよそだが簡単に見当が付く
やられた……!先制を取られた!!
自分たちが想定していた中で最悪な事態だ。そうならないためにこうして行動したのにこの様。迷いがこんな時に仇になるなんて。まさしく世界はこんなはずじゃなかったばっかりだ。
「くそ!あの暴論遣いは一体何をやっているんだ……!」
思わず八つ当たりをしてしまうがこれはどっちかと言うと僕たちが悪い。それにあの場にいてもあの暴論遣いが役に立てるのか。なんだかんだ
言ってもただの一般人の少年に
一瞬の出来事だった
何だか大量の魔方陣が出てきたと思ったら、シグナム達が一気に張りつめて動こうと思ったら大量の人が出てきて、私達に持っているデバイス?やったっけ?それを突き付けてきていた
本当に一瞬の出来事だった。何せあのヴォルケンリッターの皆でも止めることが出来なかったんやから
「……貴様ら……!何者だ……!」
ザフィーラが声を荒げて問い質しているようだった。あんな声は一度も聞いたことがなかった。でも、今は目の前に突き付けられているデバイスが怖くて何も言えない
ザフィーラの問いに私達に突き付けてきた人の一人のおじさんが答えた
「……何者?そうだな、強いて言うなら━━━ただの復讐者だ」
その答えに皆が息をのんだ。
復讐者
つまり、この場合、それを意味するのは闇の書の被害者という事。闇の書に蹂躙され、ヴォルケンリッターに暴虐されてしまった過去の犠牲者。それによって生み出されたモノ。それが復讐者
「待ってください!確かに闇の書もヴォルケンリッターの皆さんも悪い事をしてしまったけど……でも、今からその罪を償おうと決心したんです!!」
「そうよ!許せなんて言わないけど、ちゃんとした裁判を受けて判決をこいつらが受け入れるからそれを受け入れなさいよ!!」
なのはちゃんとアリサちゃんがそれに反対して騒いでくれる。余りの頼もしさに涙が流れるかと思った。見れば他に人達もおんなじ意見みたいや。本当に素晴らしい人と友達や家族になったんやなと改めて実感
しかしそんな言葉を聞いて帰ってきた反応はただの失笑やった
「罪を償う?裁判?判決?ああ、確かにそれで罪を償えると勘違いで思えるだろうな。しかしだ━━━それならば我々はどうなる?」
「っ!そ、それは……」
「そうだ。確かにそっちは償って気分になって満足かもしれないが私達はどうなる?そっちの都合で友人を失った私達は、家族を失った私達は、最愛の人を失った私達はどうなる?君達の謝罪を受け入れて許せばいいのか?━━━笑わせないでくれ」
余りにも冷たい反応。いや違う。これが当たり前の反応。他人の大切なものを奪ったり、壊してしまった時の反応。受け入れなけれ微けない事をどうしても受けいれいない時の反応
昔、私も体験したことがある反応
私の場合はそれは爆発して━━━どこぞの無表情少年にぶつけた
それを今、私がぶつけられている。ある意味皮肉と言うか、因果と言うのか。どっちにしろ今、私は知った。あの二年前のあの時、彼がどういう風な思いを受け取っていたのか。それをどう思ったのかはまた別だが
「で、でも!それはやっぱり━━━」
「悪い事?その通りだとも。そんな事は百も承知だ。だがな━━━理屈ではないんだ。その理屈を押しのけるほどの感情が我々にそうさせるんだ。許してはいけないと。」
そこに立っている誰もが冷たい表情でヴォルケンリッターの皆を見ていた。見られている彼らはそれらをただ受け止めるしかなかった。自分たちが彼らに何かを言うのはお門違いだと言わんばかりだった
「だが、復讐とはいえ罪は罪だ。だからこれが終わったら我らは自首をしよう━━━我らで闇の書の因縁を少しでも断ち切れるよう」
「待って下さい!そもそも闇の書には転生機能が付いているんです!!ここで例えヴォルケンリッターをどうにかしても……」
「第二、第三の闇の書が現れるか……知っているとも」
「だったら━━━」
「ああ、だから闇の書は主共々永久封印をすることにしようではないか」
そう言って彼らは私の方に振り向いた
……え?
永久封印?
「待ってくれ!!あたしたちはどうなってもいい!!でも、はやてだけは……!」
「そうです!!はやてちゃんは何も悪い事はしていません!!」
「……運が悪かったと思ってくれ」
ヴォルケンリッターの皆が焦った声で現れた人達に訴えている
それに対しての返答はさっきとは違い、少し迷いが込められているような返答。それはこの人達の良心の表れなのかもしれない。しかし、例えそれが良心なんだとしてもそれが行動に繋がらなくては意味がない
私にデバイスを向けている人が私にこう言った
「……君は確かに全くの部外者であり、ただの被害者だろう。だけど君は闇の書の主となってしまった。だから、私たちは君に復讐をする。恨むななどとは言わない。正義は我にありなんて思わない」
ああ、これが私の人生の終わりなんかと働かない頭でそう思う。何時もそうだ。何時も私が関わらないところで勝手に私の運命が決まってしまう。そんな物語を望んでいないのに。そんな終わりなんか望んでいないのに
涙が勝手に溢れてしまう。結局はそう。どこぞの無表情少年の言うとおり。
奇跡など━━━
「……敢えて言うならば━━━」
「復讐と言う正義で死んでくれか?つまんないセリフだね。正義なんてゴミ箱にもありそうなのに」
起きた
この場にいなかったはずの声が辺りに響いた
その声に反応して皆が振り向かされた
そこには
こんな緊迫とした雰囲気の中でも相変わらずな無表情でしかもリンゴを片手に立っている
風雷慧君が立っていた
「何が目的だ……って言うのはどうでも良い事か。丁度いいや━━━まだ決め台詞は終わっていなかったしな」
相変わらずの無表情━━━ではない
些細な違い
それは普通見落とすような違い。しかし私達は付き合いの長さで理解してしまった
何時もは何もかもを濁らしているその瞳には
確かな嘲りがあった
悪魔的なタイミングでの奇跡は果たされた
そう思ったこの場にいて、この場にいないナニカは確かにこの光景を笑った。しかし、その形は嬉しさや幸福さを表すような笑みではなく
嘲笑であった
奇しくも無表情の少年の瞳に込められているような嘲りと全く同一の感情であった。何を思って嘲っているかは別だが
あとがき
ようやくここまで来ましたか……
こっからは本当に完璧なオリジナル展開です
これからどうなるか
出来ればお楽しみを
追記
色々この話を予測している人もいますけどぶっちゃけルート関連ではまだ決めていません!!
すずかか、フェイトか
将又は別の誰かかと思っているでしょうけど少し誰に行って欲しいと思っているのか知りたいですね
暇があればお知らせてください
ちなみに主人公が大嘘吐きというのは結構重要です