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No.27393の一覧
[0] 悪魔との契約(なのはオリ主) 【チラ裏から】[悪役](2011/10/23 23:19)
[3] 第一話[悪役](2011/12/16 00:27)
[4] 第二話[悪役](2011/10/23 23:20)
[5] 第三話[悪役](2011/10/23 23:20)
[6] 第四話[悪役](2011/10/23 23:20)
[7] 第五話[悪役](2011/10/23 23:21)
[8] 第六話[悪役](2011/10/23 23:21)
[9] 第七話[悪役](2011/10/23 23:21)
[10] 第八話[悪役](2011/10/23 23:21)
[11] 第九話[悪役](2011/10/23 23:22)
[12] 第十話[悪役](2011/10/23 23:22)
[13] 第十一話[悪役](2011/10/23 23:22)
[14] 第十二話 <修正>[悪役](2011/10/23 23:22)
[15] 第十三話[悪役](2011/10/23 23:23)
[16] 第十四話  <無印編スタート>[悪役](2011/10/23 23:23)
[17] 第十五話[悪役](2012/01/05 16:09)
[18] 第十六話    <微グロ注意>[悪役](2011/10/23 23:24)
[19] 第十七話[悪役](2011/10/23 23:24)
[20] 第十八話[悪役](2012/01/09 23:30)
[21] 第十九話[悪役](2011/10/23 23:24)
[22] 第二十話[悪役](2011/10/23 23:25)
[23] 第二十一話[悪役](2011/10/23 23:25)
[24] 第二十二話[悪役](2011/10/23 23:25)
[25] 第二十三話[悪役](2011/10/23 23:25)
[26] 第二十四話[悪役](2011/10/23 23:26)
[27] 第二十五話  <無印完結>[悪役](2011/10/23 23:26)
[28] 第二十六話  【A’S開始】[悪役](2011/10/23 23:26)
[29] 第二十七話[悪役](2011/10/23 23:27)
[30] 第二十八話[悪役](2011/10/23 23:27)
[31] 第二十九話[悪役](2011/10/23 23:27)
[32] 第三十話[悪役](2011/10/23 23:27)
[33] 第三十一話[悪役](2011/10/23 23:28)
[34] 第三十二話[悪役](2011/10/23 23:28)
[35] 第三十三話[悪役](2011/10/23 23:28)
[36] 第三十四話[悪役](2011/10/23 23:28)
[37] 第三十五話[悪役](2011/10/23 23:29)
[38] 第三十六話  【修正】[悪役](2011/11/06 22:45)
[39] 第三十七話[悪役](2011/11/23 21:35)
[40] 第三十八話[悪役](2011/12/01 19:54)
[41] 第三十九話[悪役](2011/12/17 12:06)
[42] 第四十話[悪役](2012/01/09 12:20)
[43] 第四十一話[悪役](2012/02/05 11:56)
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[27393] 第十三話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/23 23:23

結局
八神は願いには応えなかった
ただ煮え切らない態度で

「…………………考えさせてくれます?」

と答えただけ
別にどうでもいいことだ
だって、俺には全く関係ない
他人事だ


決めるのは八神であって
俺ではない


なら、いちいち気にするのは間違いだろう
桃子さんも気にせず

「うん。わかったわ。何時でも待ってるわね」

と流石大人なだけあってその振る舞いには余裕がある
高町のごり押しの頼みじゃないところが物凄い大人だ

「今、誰かに貶された気がする…………………」

無視した
とりあえず、もう結構な時間なので帰ることになった
何時の間にか日は落ちている
時の流れとは早いものだ
お蔭で拉致られてここに来たのを忘れてしまいそうになる
月村ファミリーとバニングスは車に乗って帰る
俺は徒歩
すずかとバニングスからは乗ってもいいと言われているが、そんな事をしたら逃げ場がないので謹んで毎回遠慮してもらっている
本来ならここに八神も乗せてもらって帰るのだが
今日は違った
八神は何を思ったのか

「…………………………なぁ、慧君。…………………………送ってってくれへん?」

などと、なかなかおかしな頼みを放ってきた
思わず眉をひそめる
何時もとは違う事をしようとする八神
こういう時に自分の勘が一番頼りになる
その自分の勘が俺にこう告げている



混ぜるな、危険ーーー



間違えた今日の俺の勘は少し反抗期らしい
きっと、高町症候群が俺の脳内に直接、毒を注入しているからだろう
こいつは危険だ
今度、解毒剤を飲まなければと心のスケジュールにチェックを入れる
今度こそ本当の俺の勘が告げる


こいつは危険だと



ならば、俺は素直に返すのがせめてもの八神に対しての敬意だと思い
素直に答える

「すまないな、八神。俺、帰り道こぶあっ」

「あらあら。慧君。はやてちゃんを送ってあげるなんて紳士ねぇ」

ま、まさか躊躇なく延髄をやるとは…………………………
当たり所が悪かったら死んでるぞ高町母
というか冗談ではない
このままでは八神を送ってしまうではないか
これはいかん
早急に訂正を

「八神、違うぞ。俺が断じて送るあぁ!」

「ああ、まるで男の鏡だな」

き、恭也さん
お前もか
ええい、まだ終われんよ!

「違うぞ!俺はらぁ!」

「もう、慧君ってかっこつけだねぇ」

「だから、おべ!」

「そう言うな。美由希。男の子とは恰好をつけたくなるのだよ」

「貴様ら、俺を怒らセーブル!」

「そうよね~。そこらへんは恭也と似ているわね~」

大人組の波状攻撃
その内三人は超最強クラスの武闘家
本能か
習性か
またはわざとかは知らんが見事に人体急所を攻めてくる
少しは躊躇ってほしい

ああ、いかん
頭がクラクラしてきた
これがーーーーー死?
こ、こんな馬鹿げた攻撃で死ぬなんて、死んでも死にきれんっ

『その願い、叶えてあげましょうか?』

馬鹿野郎!
お前みたいな明らか伏線だらけのキャラがこんなギャグシーンに出てくるんじゃない!

『私は願い(出番)が欲しいのよ』

やめぃ!
せっかくのお前の意味深キャラが台無しだ!
さっきまでのシリアスシーンの空気を返せ!!

『また来るわー』

二度と来るな!!

「慧君!しっかりして!どんな悪夢を見ているの!?」

「こいつ…………………ダメージの余り倒れたかと思ったら、いきなり虚空に殴りに行くものね。」

「慧君…………………遂に脳が…………………!」

「すずか。貴方の初期のキャラがもう原形が残って居ないというのが今の発言でわかったわ」

「そういう意味じゃあ、キャラ崩壊していないのはアリサちゃんとはやてちゃんだけだよ…………………」

「止めなさい、なのは。それ以上のそういう発言は危険よ」

はっ!
俺は今まで何を…………………
そう、確か

「じゃあ、はやてちゃんを送るの、よろしくね」

そう
つまり八神のお届の断りを失敗したという事だ











「…………………ごめんなぁ。こんな遠回りさせて」

「別にもうどうでもいいよ」

結局
高町家&月村姉の策謀で八神を送ることになった
まぁ、面倒臭いのは本音だが、別にどうでもいいのも事実だ
それに結構、夜の散歩も好きなのだ
特に今日は風も丁度いい具合に吹いているし
何より月が綺麗だ
まぁ、気が利いてないことに疾風には程遠いのが少し空気を読んでいないところかもしれない
そう気障な考えをしながら、八神の車椅子を押す
さっきから八神はそこまで話さない
何時もの八神を知っていたら、誰でも奇妙に思うだろう
普段のあの元気の八神から今の姿はあまり想像できない
初対面でもわかるぐらい落ち込んでいる
何が原因なのか…………………等と言うのは無粋だし、丸解りだ
原因は桃子さんが出した紙
養子届だろう
どういった経緯でああいう話になったのかは詳細は不明だが、大体は想像できる
何せ、あのお人好し家族の事だ
『つい』家族がいなくて、足が悪く、学校も行けてない少女を助けたくなるかもしれない
まぁ別に俺には関係ないことだが
他人は他人
俺は俺である
そして前にもすずかに言った通り

決めるのは八神だ

「…………………はぁ。私、どうすればいいんやろぅ」

「何がだ?」

「わかってるくせに」

「それでも聞くのが俺の信条」

「そんな信条。ドブに捨てた方がいいで。この性悪少年」

「とても胸を揉まれて快感の叫びを上げていた少女の口から出る言葉じゃないな」

「耳を舐められて女の子みたいな悲鳴を上げていた少年からそんな事は言われたくないわ」

「「……………………………………………………」」

お互いがお互いの心の傷を抉ったせいで沈黙が漂った

「…………………………この話はなしや」

「…………………………同感だ」

一致団結
俺達のトラウマは思い出すものではない

「ていうか、真面目な話をしてるんやけど」

「ふむ、それは失礼。マドモワゼル」

「似合わへんなぁ」

そこでようやく八神は苦笑する
そこで思い出す
高町母から養子の話を聞いた時の八神の表情を
俺にはないものを
あの時
八神が出した表情は驚きではなかった
いや、勿論
驚きも含まれていた
しかし、それ以外の感情の方がもっと強く出ていた
あれはそう


困惑、もしくは動揺
そして
恐怖だ…………………


よくわからない
最初の困惑と動揺はまだ理解できる
しかし、恐怖とはどういうことだ
彼女は俺と同じで孤独主義だったか?

それはありえない
彼女の顔は、瞳は、声は
初めて会った時と比べて遥かに幸福そうに見え、聞こえる
彼女は俺とは違い、誰かを求めるタイプだ

まぁ、高町とは違って健全なタイプか…………………

高町は高町で誰かとの繋がりを強く求めるが、少しそれが強過ぎではないだろうか
そう、まるで、誰かの役に立ちたいと思っている感じである
脅迫観念とまでは言わないが、それの四歩手前ぐらいには行っていると思う

誰かの為になりたい
誰かを助けたい

そんな考えを持っている感じである
誰かの為にならなければいけないと言った方がいいかもしれない
自分に強制しているといった感じだ
高町が俺と未だ話し続けているのはそこらへんだろう

まぁ、同情とはまた違うからどうでもいいけど

助けられる気もないが
話が脱線してしまった
ええと、確か八神が他人を求める理由だったか
そんなの簡単だろう



八神は孤独が嫌だったのだろう
友達、もしくは家族が欲しかった
ただーーーーそれだけ




当たり前だ
ただの小学一年生の少女が一人を好きになるなんて、それこそ俺ぐらい壊れてなければいけない
八神はどこを見ても『普通』の少女だ


当たり前の事で喜び


当たり前の事で怒り


当たり前の事で哀しみ


当たり前の事で楽しむ


そんな普通のどこにでもいる当たり前で足が悪い女の子だ
悪いことではない
むしろ一番良い事だ
この世の中で生きていくのに一番良い事は普通に生きることだ
異常など邪魔どころか有害だ
異常は世界から排斥され続ける
逃れようなく
堪えようなく
例外なく
俺もその一人だろう
ま、今は俺の事は関係ない
だから八神はまだましな方だろう
彼女には幸せになる権利がある
だからこそ
わからないのだ
他人からも
本人も
幸せを望んでいる八神
それがどうして


幸せになることを恐れる?



疑問は解消されないと気持ち悪い
だから、率直に聞こう

「で、お前どうするんだ?」

「…………………んー?私はそうやなーー。…………………どうしたいんやろなーー」

車椅子を襲ているから八神の顔は見えない
だから、どんな表情をしているのかもわからない
構わず続ける

「別に断る理由はないと思うが」

「何で?」

「メリットの方が多い」

「例えば?」

「資金援助、家族増加、学校も行けるかもしれない、少なくとも今よりも生活の不安は取り除けるなど」

「そうやなーー」

「逆に断る理由としたらーーーーー相手の家族が嫌いとか」

「有り得へんな」

「そうか。もしくはーーーーまだ未練があるかだ」

「…………………………何の?」

「…………………………家、もしくは」



家族の




返事はなかった
それとも沈黙が返事なのか
判別はつかなかった
判別するつもりもなかった
どう考えてもそれはただの決めつけだからだ
暫く沈黙が続く
どういうことか
今日は気持ち悪いくらい静かで、澄み切っている
音といえば八神の車椅子から出る音ぐらいだ
この無音という音の中で素晴らしいくらい響いている
空は面白いくらい澄み切っている
夜天の名に相応しい美しさだ
星は光り
月は輝く
まるで何かを照らすかのように
そこで益体もないことを思いついてしまう


そう
まるで
この場の全てが八神の為の舞台みたいだなんて


正直クサすぎる
今日のあの遊びか
もしくはこの場の雰囲気に当てられ過ぎたのだろう
そうじゃなきゃおかしい
そこまで考えていると八神がようやく話し出す
無音と夜天の加護を受けている少女が

「…………………そうやなぁ。多分私が躊躇している一番の理由はお父さんとお母さんの事があるんやろうなぁ。いや、やろうなぁじゃないわ。きっとそうなんや」

さっきの沈黙は考えを纏めるものだったのか
すらすら言葉を放つ八神
それに籠っている感情を読み取ることは出来なかった

「ふぅん。それは愛着?」

「それもある」

「じゃあ、執着」

「それもあるなぁ」

「じゃあ、義理」

「それもあるなぁ」

愛着
執着
義理
それがあるのは結構
他人の事を言うつもりもないし
他人の事を言える立場ではないので
だが、さっきから八神はこう言っている
『それもあるなぁ』と
つまり
本質ではないという事だ
一番大事な根幹ではないという事
では、彼女が一番躊躇っている理由は果たして何だろうか
俺は俺で躊躇せず聞いた

「じゃあ、お前は結局何がつっかえているんだ」

「…………………………慧君ならわかると思ってるんやけど」

「は?俺が?何で?」

「…………………慧君と私は似てないけど似ているから」

俺と八神が似てる
それは最高級の冗談だ
どこをどう見ても俺達は似ていない
顔も性格も経歴も違う
そのはずだ

「確かに顔と性格は全然ちゃうけどーーーー経歴は似てへんかな」

「どこが」

「例えばーーーー両親が死んだこととか」

「………………………………………」

確かにそれだけなら似ているだろう
共に似たような時期に両親を亡くしたもの同士
そこだけならば
しかし
それでも俺と八神は全然違うとしか言えない
選んだ道が
選んだ場所が
選んだ始まりが
選んだ終わりが
何もかもが違い過ぎる
強いて言うなら
八神はハッピーエンド(普通)を選び
俺はバッドエンド(異常)を選んだといったところだ
だから、違う
それは八神
誤解なんだ
俺なんかと似ていてはいけないのだ

「…………………まぁ、多少は違うと思うけど」

「いや、全然だね。俺とお前が似ているだなんて…………………背筋が寒くなるぞ」

「乙女に言うセリフじゃないで!?」

「雌に言うには丁度だ」

「ええい!まだ私の事を獣として見てるんか!」

「勿論だとも」

「この分からず屋!!」

無視した
これで会話の流れは途絶えた
素晴らしいね
この俺の状況判断
神すら凌駕するね
八神が白い目で見てくるが更に無視
すると
おやおや、溜息を吐いたよ八神
幸せが逃げるよ?

「どの口が言うか…………………」

何だかご機嫌斜めだな
別にどうでもいいけど

「…………………慧君。この話題を真面目に話したくないやろ」

「…………………………何のことやら?」

「…………………わかりやすいなぁ」

ちっ
数分ももたせられなかったか

「…………………そんなに私と似ているって言われるのが嫌?」

「…………………………俺に似ている人なんていないよ」

いるとしたらそいつは犯罪者か何かだろう
少なくとも異常者に違いない

「そうかなぁ。私は慧君がそこまで異常者に見えへんけど」

「OK。眼科だな」

「(無視)だって、慧君ーーーーかなりのお人好しやんか」

「は?」

ちょっと待った
聞き捨てならない
そのセリフは見逃せない

「八神。訂正しろ。俺はお人好しではない。ただの人でなしだ」

「…………………………卑屈言うんか、偽悪言うんか。どちらかわからへんけど、まぁ、別にいいで。」

完璧に八神は話を聞いていない
ふざけてもらっては困る
お人好しーーーー善人と言うのは俺に与えられるような称号ではない
それこそ。そういうのは高町家の人間に相応しい
まるでお人好しという言葉に似合う為の性格を持っているんだから


だってそうだろう?

もし俺が本当に善人なら

あの地獄で

オレハ

オレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハオレハ



アノトキナニカデキタハズナノダカラーーーー



「け、慧君?ど、どうしたんや?急に黙ってしまって…………………」

八神の言葉で現実に戻ってくる
嫌な思考に浸っていたようだ
自分が今まで何をしていたのか
一瞬の忘我を味わう
そこまで経って、ようやく八神が俺を見ていることに気づいた
その瞳には
隠しようもない


恐怖が映っていた


どうやら自分の顔は余程怖い顔をしているらしい
少し気を引き締める
いつもの無表情になるように意識的に更に心がける
ようやく、自分の表情が元に戻った感じがする
やれやれ、まだまだ精神修行が足りないらしい
これでは、その内何かに化かされるかもしれない
八神もようやくホッとした顔になる

「ごめんな…………………何か悪い事を言ったみたいで…………………」

「別に…………………俺の事情なんだから、八神は全く関係ない」

「…………………………それでもごめんな」

はぁ
ぶっちゃけるといちいち謝られるとうざい
まるで、相手の事も自分の事情とでも言いたいのかな、このおちびさんは
あーーー
駄目だ駄目だ
少しやさぐれている感じがする
俺はもう少しお人形さんキャラのはずだ

「で、だ。八神。結局ーーーーお前は何を恐れているんだ」

話を逸らす意味も含めて桃子さんの話を聞いた時の八神の反応について聞く
少々いきなりだったが

「へっ…………………………」

いきなりの事で八神は少し間抜けな声を出したが、こう見えても八神は聡い
直ぐに俺が何を聞いたのかを理解して黙る
その反応からすると、どうやら俺が思った推測は間違いではなかったらしい
やはり、あの時
八神は確かにーーーーー恐怖を抱いたのだ
一体何に恐怖したかは
八神が答えるかによってわかる

再び沈黙
何時の間にか俺達の足は止まっていた
どこにでもある道路で俺達は話をする
今、俺達を見ているとしたらそれこそ、月と星ぐらいだろう
そんなくだらないことを考えてると
八神がこちらを見た


泣きそうな顔で


「…………………………あんなぁ、私」

「ああ」

俺はただ返事するだけだった
今の俺がすることはそれだけだろう

「お父さんとお母さん。両方死んだんや」

「ああ」

「それもいきなり」

「ああ」

「それも私の知らないところで」

「ああ」

「だからな」

「ああ」

「だからな私」

「ああ」



「失くすのがーーーーー怖い…………………………!」




遂に彼女の瞳から雫が零れてくる
透明な綺麗な軌跡が
八神の整った顔を輝かす
俺は黙ることしかできなかった

「だってそうやろ!いきなりやで!それも私の知らへんところでいきなり!!二人共や!!二人とも!!別にその日は別に何も特別な事はなかったはずや!!そしてお父さんとお母さんも別に死んでしまうような悪い事をする親やなかったし、危険な仕事をしているわけでもなかった!!」

「……………………………………………………」

「でも死んだ!!特に悪い事もしてへんのに死んでしもうた!!何でや!?お父さんとお母さんは悪い事をしてへんで!!?でも、何の因果も関係なく!呆気なく死んでもうた!!」

「……………………………………………………」

「運が悪かったから?確かにそうやろうな!でも、そんなつまらない理由で死んでしまうなんていおかしいやろ!?たった運が悪かっただけで人が死んでいいはずがあらへん!!そんなの間違っている!!おかし過ぎる!!」

「……………………………………………………」

「それに何や!この足は!!自分で言うのも何やけど私かって別に何も悪い事はしてへん!!礼儀もルールも法律も今のところ破った覚えはない!!なのに何で私の足はこんな風に動かんのや!!ねぇ、何でや!!」

「……………………………………………………」

いつもの八神からは考えられないくらいの強い叫び
強い慟哭
強い嘆き
それだけ彼女は我慢していたのだろう
何でこの世界はこんなにも理不尽なのだと涙を流しながら訴える
それを俺は黙って聞いた
彼女の言うとおりだ
この世は何の因果も関係なく誰かもが死ぬ
何も悪いことなどしていない人も呆気なく死ぬ
運が悪かったから?
そんなのどこにでもある普通の原因だ
残念な事に神様というクソヤロウは世界は運が悪い人や失敗したもの、異常者には残酷だというルールを作ったらしい
ふざけた話だ
失敗した者や異常者には残酷というのはまだわかる
でも、ただ運が悪い人にも残酷と言うのはおかしいというものだ
それを彼女は嘆いている


親の事とーーーー自分の事と


それも当たり前だろう
一見、気にしていないような態度をとる八神だが
気にしていないわけない
まだ6歳なのだ
いくら少し精神年齢が同年齢の子供よりも高いといえどもそれでも子供だ
むしろ今までよく我慢したものだ
親を失い
追い打ちをかけるかのように両足の異常
世を悲観するなと言う方が無茶だ
もし、高町達に会わなければこの少女はもっと孤独を味わっていたかもしれない
孤独は間違いなく彼女を侵していたはずだ
なのに何故養子の話を恐怖する?
何故?



そこまで思い
そしてーーーー話は繋がった
ああ、そういうことか



理由に至った
一瞬で成程と思ってしまう
答えの回答は直ぐに八神が言う



「だからーーーー私は怖い。桃子さん達と家族になるのは嬉しい。心の底から嬉しいんや。でもーーーーーその分失ってしまったら私は」



耐えられへん



つまりこの少女は家族になるのが嫌なのではなく
ただ、もしかしたら得たものを失うのが怖いのだ


はぁ、やれやれ
本気で俺は呆れた
成程、まぁ、両親が死んでしまったから、そういう思いは人一倍だと思うが、それでも呆れてしまう
もう少し年を取った八神なら大丈夫かもしれないが、それはそれ
そんなIFの話をする気もない
だから遠慮なく言った


「馬鹿らしい」


罵倒を


「なん…………………やて?」

八神が驚愕と怒りの表情をごちゃ混ぜにした表情でこちらを見る
そん事はどうでもいい

「耳が悪いのか?じゃあ、サーヴィスにもう一度言ってやろうーーーーー馬鹿らし過ぎる」

二度言う
八神を徹底的に罵倒する
ぶちっという音が聞こえた気がした
多分それはーーーー八神の堪忍袋の緒が千切れる音だろうと他人事のように考えていた
そして


「慧君は…………………………わからへんのか?私の気持ち」

「ああーーーーまったく全然わからないねーーーーーまるで自分がこの世で一番不幸ですと不幸自慢している子供の事なんて」

完全な売り言葉
それを黙って聞いているほど
八神は温厚ではなかった


バシッ!と音が鳴る

それは八神が俺を殴ろうとした音で

俺がその手を止めた音だ


「いきなり何をする八神ーーーー危ないぞ?」

「うるさい!!慧君なら!慧君ならわかってくれると思っていたのに!!」

「おやおや、八神は傷の舐めあいをご所望かな。ははははははーーーー願い下げだ」

「何でや!!慧君かて怖いはずやろ!?得たものを失うのは!!だって慧君かってーーー」

「確かに俺も両親を目の前で亡くしたね。ああ、その気持ちは少しは理解できるとも」

「だったらーーー」

「だが、俺は一度も新しいものを得るのに恐怖を抱いたことなどない」

「…………………!!」

そう一度だってない
この孤独も
この生活も
この生き方も
あのときにした『契約』も
俺は自分で選んだのだ
その全てが自分にとって新しいものだった
しかし、俺は恐怖もしてないし、後悔もしていない
これからもする気などない
否、してはならない
それはあの時
あの場で死んでいった人たちへの冒涜だ
恐怖など以ての外だ

「で、でも、それでもーーー」

「それにだ。八神」

相手の言葉を遮って俺は言う

「お前は認めているではないかーーーー失うかもしれない。しかしーーーーー得れるものはあると」

「…………………!!」

「そうだ。確かにこの世には絶対はない。どんなものでもいつかは無くなるかもしれない。壊れるかもしれない。だが、それを言うなら逆もあるんだ。無くならないかもしれないし、壊れないかもしれない。永遠には続かないかもしれないし、永遠に続くかもしれない。ほら、絶対なんてどこにもないのだから。」

そう
この世には絶対などない
残酷な意味でも
優しい意味でも
俺達は残酷な方を味わったけど
八神はもう良い筈だ
もうそろそろ優しさを貰ってもいいころだ
俺と違ってこの子には何の罪もない
まだやり直せる


だってこの子には
立派な心がある


だからか
俺の言葉はいつもと違う気がする
いつもなら見捨てるはずなのに
まぁ、月と星に狂わせられたという事にしてもらおう


「だからーーーー八神」

「っう…………………」

「一つ問うーーーーお前は結局何が望みなんだ?」

「…………………………私の…………………望み」

「そうだ。もうごちゃごちゃと何かを言いあうのは止めよう。はっきり言って不毛だ。大体この話は元々はシンプルだ。結局ーーーー決めるのは俺でもなければ高町家でもない。決めるのはーーーーお前だ」

「……………………………………………………」

「怖いとか何とかそんなのはどうでもいいだろう?もうそんな段階はとっくの昔に過ぎているし、どうでもいい。もうここまで来たら一つだ。つまりーーーーお前がどうしたいかだ」

「私の…………………………したいこと」

「そうだ。願えよ(叫べ)」

「……………………………………………………」

「我儘でもいい。エゴでもいい。願えよ(叫べ)。」

「……………………………………………………」

「もうそろそろーーーー許されてもいい頃だ」

「……………………………………………………」

そこで話を断ち切る
もう俺から話すことはない
話す気もない
後はーーーー八神の仕事だ

「わ、私は…………………………」

葛藤している
自分がそんな我儘を言っていいのか
恐怖に打ち勝てるのか
彼女にとっては辛い葛藤かもしれない

「私は…………………………」

しかしだ
いづれは乗り越えなければいけない壁だ
彼女がこれからを生きていくのに避けては通れない儀式

「私は…………………………」

彼女も理解しているだろう
彼女は無駄なくらい聡いのだから
というか俺の知り合い全員無駄に聡いが
だから大丈夫のはずだ
馬鹿の俺と違って
八神は立派な

「私は…………………………!」


立派な心を持っているのだから



「私はみんなと一緒にいたい!!」



願った(叫んだ)
彼女は打ち勝ったのだ
未練を
執着を
愛着を
恐怖を
彼女は打ち勝ったのだ
失うのが怖くても、その先に得れるものがあるという事を信じたのだ

「私はみんなと一緒にいたい!なのはちゃんやアリサちゃん、すずかちゃん。士郎さんや桃子さんや美由希さんや恭也さん。忍さんやノエルさん、ファリンさんと一緒にいたい!!」

八神はまだ続ける
まるで、自身の願いを世界に刻み付けているみたいだ
それでいい
それでいいんだ
お前は俺じゃないんだ

「それにーーーー慧君とも」

「止めとけ八神」

「嫌や」

「…………………………抜くぞ」

「何を!?」

「それは…………………(ふっ)」

「何やーー!その無表情の声だけ笑いはーーー!!?」

「いや、禿げた八神を想像するとつい」

「か、髪は女の子の命やで!!」

「それは良い事を聞いたーーーーその儚き命散らそうか」

「散らすぐらい千切るきなん!!?」

「風に乗ると綺麗だぞ?」

「その分私の頭が涼しくなるわ!!」

ようやく俺達らしい会話に戻る
それに気づいたのか
八神はようやくいつもの表情に戻り苦笑した

「そうやな。何や、私が悩んでいたことなんてこんなちっぽけな事やったんやな」

「八神の存在と一緒でな」

「やかましい」

「……………………………………………………悲しいよ?」

「無表情でそんな風に言われても説得力ないで」

「その分を溢れんばかりの言葉で補っているのだよ」

アハハと彼女は笑う
無表情で俺は答える

「うん決めた。私、明日桃子さんに言ってくるわ」

「そうか」

「…………………………普通頑張れとか言うんちゃうか」

「言う必要があるのか?」

「アハハ。そうやなぁー」

「そうだろ」

「うんーーーーありがとうな」

「お礼を言うくらいなら土地を寄越せ」

「要求高いな!!」

それから俺達はつまらない事を言いながら歩き出した
彼らを見るのは星と月の夜天だけである



それからどうなったかを口に出すのは無粋というものだろう
まぁ、強いて言うなら
高町家の人口密度と
聖祥学校の人口密度が増えたという事ぐらいだ











これは桃子さんに話に言った時の事や
誰にも言ってない事
私が疑問に思ったことを聞きたかったのだ
多分、これを逃したら聞けなくなるかもしれへんから

「なぁ、桃子さん」

「なぁに?はやてちゃん。ちなみにお義母さんと呼んでくれてもいいわよ」

「あ、アハハ。それはもうちょっと後に」

「あら残念。で、何かしら?」

「あ、はい。えと、そのーーーーこの話(養子縁組)慧君には提案しなかったんですか?」

「……………………………………………………」

そう
それが疑問やった
こんなに優しい人達がまさか私だ養子の話をするとは思えへん
つまりや
慧君はもしかしたら

「…………………………ええ。慧君にも勿論提案したわ。」

「…………………………やっぱり、断ったんですか?」

「ええ。でもね、何て断ったと思う?」

「え?ええと…………………………わかりません」

「ふふふ。そうよね。慧君ね。こう言ったのよ。『ありがとうございます。でも、すいません。確かに俺の両親は死にました、肉体的にも精神的にも。でも、『ここに』いるんですよ。心の中にいるだなんてクサい事は言いません。でも、『ここに』まだいるんですよ。だからーーーー俺にとっての家族はあの人達だけなんです。この仮面(無表情)を突き通すと決めた時から』

「……………………………………………………」

「私、尊敬したわ。あの子にそんな風に思ってもらえるようなーーーー素敵なご両親だったのね」

でも、それは
その返答やと
彼は未だにーーーー過去に囚われていると解釈することも出来るんちゃうか?

「そうね。そう解釈することも出来るわ。でもーーーーそれを何とかするのも私達の仕事よ。はやてちゃん」

「あ…………………………そうですね」

そうや
彼が未だに過去に囚われているんやったら私達で戻らせればいいんや
私を過去から解き放った彼を
自分で言ってるくせに自分の事は棚に上げている彼を
あの無表情という仮面で隠されている彼の本当を
私達が
何とかするんや






あとがき
今回はちょっと急すぎたかもしれませんし、説教もちょっと無理矢理感があるかもしれません
やはり、まだまだ未熟者です
ええと、感想の返事の一部についてお答えを
ギャグになっている
ええ、仰る通りです
自分でも何でこうなったのかさっぱりです
いつ、原作に入るか
お答えしましょう
次からです
少々いきなりで無理矢理感がありますが、ぶっちゃけて言うと
原作前にやっとくべきと思ったイベントはこれで終了したのです
最低でも主人公の過去の一部始終と月村編とはやて編
これが原作前に出来たらよかったのです
そして皆さんに言っときたいことが
作者、原作のセリフなどそういったものを全て覚えていません
だから、そういったものはオリジナルになると思います(日付なども)
まぁ、闇の書が起きた日付ぐらいは守りますが
だから、そこらへんはご了承を
ちなみに主人公が魔法に関わりだすのはAS編からと決めてあるので
無印ではチョイ役だと思います


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