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No.27393の一覧
[0] 悪魔との契約(なのはオリ主) 【チラ裏から】[悪役](2011/10/23 23:19)
[3] 第一話[悪役](2011/12/16 00:27)
[4] 第二話[悪役](2011/10/23 23:20)
[5] 第三話[悪役](2011/10/23 23:20)
[6] 第四話[悪役](2011/10/23 23:20)
[7] 第五話[悪役](2011/10/23 23:21)
[8] 第六話[悪役](2011/10/23 23:21)
[9] 第七話[悪役](2011/10/23 23:21)
[10] 第八話[悪役](2011/10/23 23:21)
[11] 第九話[悪役](2011/10/23 23:22)
[12] 第十話[悪役](2011/10/23 23:22)
[13] 第十一話[悪役](2011/10/23 23:22)
[14] 第十二話 <修正>[悪役](2011/10/23 23:22)
[15] 第十三話[悪役](2011/10/23 23:23)
[16] 第十四話  <無印編スタート>[悪役](2011/10/23 23:23)
[17] 第十五話[悪役](2012/01/05 16:09)
[18] 第十六話    <微グロ注意>[悪役](2011/10/23 23:24)
[19] 第十七話[悪役](2011/10/23 23:24)
[20] 第十八話[悪役](2012/01/09 23:30)
[21] 第十九話[悪役](2011/10/23 23:24)
[22] 第二十話[悪役](2011/10/23 23:25)
[23] 第二十一話[悪役](2011/10/23 23:25)
[24] 第二十二話[悪役](2011/10/23 23:25)
[25] 第二十三話[悪役](2011/10/23 23:25)
[26] 第二十四話[悪役](2011/10/23 23:26)
[27] 第二十五話  <無印完結>[悪役](2011/10/23 23:26)
[28] 第二十六話  【A’S開始】[悪役](2011/10/23 23:26)
[29] 第二十七話[悪役](2011/10/23 23:27)
[30] 第二十八話[悪役](2011/10/23 23:27)
[31] 第二十九話[悪役](2011/10/23 23:27)
[32] 第三十話[悪役](2011/10/23 23:27)
[33] 第三十一話[悪役](2011/10/23 23:28)
[34] 第三十二話[悪役](2011/10/23 23:28)
[35] 第三十三話[悪役](2011/10/23 23:28)
[36] 第三十四話[悪役](2011/10/23 23:28)
[37] 第三十五話[悪役](2011/10/23 23:29)
[38] 第三十六話  【修正】[悪役](2011/11/06 22:45)
[39] 第三十七話[悪役](2011/11/23 21:35)
[40] 第三十八話[悪役](2011/12/01 19:54)
[41] 第三十九話[悪役](2011/12/17 12:06)
[42] 第四十話[悪役](2012/01/09 12:20)
[43] 第四十一話[悪役](2012/02/05 11:56)
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[27393] 第九話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/23 23:22

時間は草木も眠る逢魔が時

場所は月村邸

そんななか私達は動いていた
周りを見ると皆似たり寄ったりの恰好をしており、その手には物騒な鉄色の物、武器がある
形や性能は違ってもこれの使い方は至って単純だ
つまり敵を殺すという
そんなものを握っていると自然と溜息をつく
随分と自分はこういうものを握るのに慣れたものだと
別に自分の人生は特別何かがあったという事はない
ただ生きていたらこうなった
それだけだ
別に自分の仕事に不満はない
どんな世界でも生きていくには金がいる
ただ自分の仕事がこういうのだった
最低で屑みたいな仕事だがそれでも金は手に入る
とどのつまり人間とはこうやって争い続ける業が深い生き物なのだろう

とまぁ、無駄な考えを保留し即座に頭を切り替える
今回の仕事は何だかマンガにでも出てきそうな内容だ
何でもここにいるご令嬢を生きて捕えなくてはいけないらしい
多少の怪我はいいらしいが、命だけは取るなというのが条件だ
何故と思うが追及は避けた方がいいのがこの業界の常識だ
好奇心が強い奴は大抵ろくでもないことになる
だから生きるには中途半端な関心が丁度いいのだ
依頼を受け、成功し、金を貰う
これが最上の関係だ

またもや話がそれてしまった
さっきのトラップのせいで疲れたのだろうか
トラップの内容の詳細はあんまり思い出したくないので言いたくないが、一言言えることがあるとしたら、製作者の性格はかなり陰険だろうというところだろう
おかげで何人か脱落した
それでもこの屋敷を包囲するには十分なぐらいだが
今はチームを分けている
まず、俺達
ターゲットを探し出し、見つけたら有無を言わさずに連れてくる探索隊
次は正面玄関にいるチーム
こいつらは正面を警戒するとともに俺達が使っている無線の中継場所みたいなものだ
最後に裏口のチーム
こちらは完全に逃走を警戒するためのメンバーだ
人数配分は俺達が一番多い
普通なら連携をするための正面玄関チームに人数を分けたいところだが、何でも依頼人の情報だとターゲットについている恋人とメイド達の実力が人外級のレベルの強さらしい。冗談に聞こえるが、まさかそんな子供でも言わないような冗談をこんな場面で言うはずがない
というわけで探索隊の俺達が一番多いのだが

バン!とまた扉を開く
最大限の警戒をしながら辺りを見回すが人影はない
念のため人が隠れられそうな場所も探してみるが人はいない
またもやはずれ
どうやらやっこさんは上手く隠れているようだ
まぁ、命とかを狙われているのなら当然の反応だろう

『こちらα、β、γ、応答しろ』

そんなこんな考えているうちに定時連絡の時間
どういうわけかこのチームでは俺がリーダーという事になってるので俺が応答しなくてはいけない
面倒だがこれも仕事だ
無線機のスイッチを押し、返事をする
ちなみにαは玄関チーム
βは俺達
γは裏口チーム
別に名前に凝る必要はなかったので素っ気ない名前にしたのだ

「こちらβ、異常なし。ターゲットは未だ確認できず」

『こちらγ、異常ない。ターゲットは未だ確認できず』

どうやらまだどこにも出てきてないようだ
困ったもんだ
こういう膠着状態は大抵長いこと続く
こういう状態では嫌でもお互い敏感になるのでお互い逃げ、追いを続けてしまうのだ
そんなことをしていると集中が切れる

まぁ、長期戦ではこちらに分があるだろう………………

さっき出た三人はともかく他の人間はこういう荒事には慣れていない、つまり足手纏いだ
さっきから守勢に回っているのもそれが原因の一つだろう
こっちも仕事
まさか武士道に乗っ取って一対一で勝負とか卑怯な事はしない、何て綺麗事を言うつもりは微塵もない
足手纏いがいたら即座にそこをつく
これもこの世界の常識だ

何はともあれまずはターゲットを見つけなくては話にならない
とりあえず再び違う部屋に行こうと思った瞬間

『あーーテステス。マイクテストー、マイクテストー。今日は晴天なりーー』

などとふざけた言葉が屋敷内に流れた
どうやら放送機材でもあるようで屋敷内全体に流れているようだ
ほんの少しの緊張が走るが、そこは経験から無視する
まずはこの行動の意味を理解しようと思考を走らせる
答えを出す前にあちらが先に答えを言う

『えーーー、この屋敷に来ている物騒な皆さん。どうか哀れで可哀想で個性が薄い俺の頼みを聞いてくれないでしょうかーーー』

戯言と判断するべきかと思考したが今は情報が欲しい
これから聞く言葉を全て頭に刻むために耳に集中する
そして次に来た言葉は私達にとって予想外の言葉だった

『俺、風雷慧は降伏するのでどうか助けてくれないでしょうか。ちなみに人質として、ここの一番の末っ子、月村すずかを捕えていますが』




どうやら作戦が始まったようだ
そう思い俺は体を隠し、気配を消しながら合図を待つ
今回の作戦は奇策というか無謀ともいえる作戦だ
誰かが、特に俺と慧君が失敗したら命を落とす
しかし、この作戦以外皆が生きて帰れるという作戦が出なかったのだ
何とか準備は間に合ったが、それでも不安要素が有りすぎる
作戦を考えられなかった自分が言う資格はないが
俺は自分が装備している武器を見る
人を殺すだけの武器
しかし、俺達御神不破流はこの殺す武器で人を守ろうとするのが真髄
作戦の事を頭の中で繰り返し、そして作戦の事を聞く前の会話を思い出す

『今回の作戦で貴方はこういう立場になります。貴方が俺達すべての命を守る立場に』

無表情の彼は宣言通りに俺のプライドをこういうセリフで突いてきた
事実、高町恭也に対してこれほど効果的なセリフはないだろう
御神流の教えというのもあるが何よりも自分の信念としていることなのだ
そこを突かれたら動くしかない
彼の言葉を利用されたと捉える考えもあるかもしれない
しかし

『その信念を貫けますか』

彼は一度くじけた俺をこの重要な役割にした
ノエルさんやファリンさんが戦えることを知った後でもだ
普通なら弱音を吐いた男よりもそっちに任せるだろう
でも、彼は俺に任せた
勿論、打算的な事もあるのかもしれない
でもだ
俺がそう思いたいだけかもしれない
でも俺はこう思う

『OK。それでいいです。頼みますよ、御神の剣士。貴方の剣で俺達の障害を薙ぎ払ってください』

俺を信用してくれたからここを俺に任せてくれたのではないのかと
過大評価かもしれない
都合のいい解釈をしてるだけかもしれない
でも、俺が知る限り一番年下で、複雑怪奇な性格で、手加減などせず、容赦もしない彼が弱気な俺をここに任せるのだろうか
そこで思い出す
彼が今のところ名前で呼ぶのは俺とすずかちゃんだけだという事を
推測だがというかこじつけで自分がそう取りたいと思っているのだろうけど

彼は認めた相手にだけ名前で呼ぶのではないか

わかっている
さっきも考えたように都合のいい解釈だというのは
しかし、俺は馬鹿だ
その誤解を勝手に信じることが出来る馬鹿だ
信用されていると勝手に解釈し、信じる
ならば
ここでその信用に応えなくては御神の剣士として
男として
人間として屑になる
その考えを胸の内に秘める
研ぎ澄まされていくという感覚がある
まるで剣を研いでいるみたいな感じだ
そうだ
この身は御神の剣士
是、一本の刀也
ただの殺人の刀ではない
人を守る守護の刀だ
ならば守れ
己が存在意義に懸けて
己が信念に懸けて
皆から託された想いの為に

こうして高町恭也は研ぎ澄まされていく
本人は気づいていないが普段の数倍は
だが彼はまだ動かない
刀は納刀したまま
ただ今宵限りの主の抜刀(合図)を待つ





「一体どういうつもりだ……………」

答えを期待したわけではない
相手は屋敷のどこかで放送しているのだから
そう思っていたら

『別に、他意はないですよ。普通ならこんな命のやり取りをしている現場にいたら怖くなるに決まっているでしょう』

返事が返ってきた
そこで更に緊張が高まる
どうやら相手は屋敷中に声を拾う機材をセットしているらしい
つまりこちらの会話は筒抜けのようだ
しかもよく聞くと声は若い
多分、今回巻き込まれたターゲットの友達の男の子だろう
だがその言葉を単純に信じることも出来ない
こちらの言葉が聞こえるのならば、逆にそれを利用して情報を入手しようという判断をする

「残念ながら君の言葉を簡単に信用するわけにはいかないな」

返事がすぐ返ってきた

『ふむ、それはそちらの立場から考えたら当然だと思うけどこっちからしたらそれを証明する術がないのですが』

「………………いくつか質問をさせてもらおう」

『いいですよ。幾らでも』

これは意外な答えだった
こちらはもしかしたら他の人間に脅されてこんな囮みたいなことをしているのかと思ったが、どうやら外れらしい
とりあえず、今は情報が最優先だ

「まず、他の人間は?」

『ええ、月村すずかを人質にした時に俺は逃げ出したから知りませんよ』

「そちらの戦力は?」

『さぁ、聞いたところでは男性一人と女性二人。その女性はメイドなんですが、これは洒落なのでしょうかね』

「何故こんなことをした」

『さっきも言った通り生きたいからですよ』

「君達は友達だったのでは?」

『残念ながらこちらは友達なんて微塵たりとも思っていません』

「だが君は夕方、こちらからの相手を撃退していると聞いたが」

『それはすいませんと言っておきましょう。一応クラスメイトですから痴漢に襲われているから助けようという正義感が動いたのですよ。今になって後悔していますが。後悔先に立たずという言葉は真理ですね』

「信用できない」

『こっちとしては信用してもらうしかないのですが』

「…………………………では直接話をしたい」

ここで切り出す
もしこれが嘘なら十中八九断るはずだ
何故なら場所が見つかったら、そこでゲームオーバーなのだから
だが

『ええ、いいですよ』

答えは二つ返事だった
少し眉をひそめるが警戒は怠らない

「……………では場所は?」

『ええ。場所は二階の広い部屋があるでしょう?食堂みたいですね。そこでお待ちしています』

そこまで言うと
ブツと相手からのコンタクトが切られた
まだ油断はできない
もしかしたらトラップがあるだけで本人はいないかもしれない
とりあえず他のメンバーに報告だけはしとかなくてはと思い無線のスイッチを入れる

『こちらα、状況は理解している』

『こちらγ、同じく』

「こちらβ、判断を仰ぐ」

暫く沈黙する
しかし答えはすぐだった

『こちらα、指定された場所に行け。油断はするな』

やはりそうなるだろう
確かにまだ証拠などはなく、怪しいところばかりだが逆を言うと事実の可能性もある
もしターゲットの内、一人を本当に人質にしていたら大変なことになる
相手は子供だ
もし錯乱して手にかけたら一大事だ
ならば必然的にそうなるだろう

「β、了解しました。これより通信は少しの間閉じます」

簡潔に言い、仲間に目配せをして、指定した場所に行く
しかし、彼らは知らない
彼が相手するのはただの子供ではない
この世で唯一といってもいいかもしれない
人間なのに悪魔の名を冠することを許された子供であるという事を

『あ、後、夕方にやられたキムチ鍋の弁償もしてもらうんで』

「……………………………………………………」

やはりただの子供だろうか



ふぅ、と電源を切って溜息をこぼす
とりあえず第一段階はクリアした
後は次の第二段階と第三段階をクリアしたら勝ちだ
だがこの二つが綱渡りみたいな作戦だ
タイミングがほんの少しでもずれたらそこで終わりだ

……………まぁ、保険はとってあるからいいけど

そう、この作戦は最低死ぬのは『一人』なのだ
誰も気づいてないようだからよかったが、誰かが気づいていたら止められていただろうなぁ
あの人達、馬鹿みたいにお人好しだし
かたかたかたと足音が極限まで消された震動が聞こえた
どうやらもう二階に来たらしい
気を再び引き締める
第二段階の内容は舌戦だ
とりあえず遠慮なく騙させてもらおう





指定された部屋に到着した
ここに来るまでにトラップはなかった
だがそれでも油断はしない
中に伏兵とかその他のトラップがないとは限らない
疑心暗鬼になるのは職業病だ
故に気配を読むテクニックは少しはあると思ったのだが、部屋の中にはそれらしい気配がない
騙されたかと思うが承知の上だ
目配せをする
各々武器を構えたり、奇襲対策をしたりなど色々な反応をする
ならば後はドアを開けるだけだ
一つ深呼吸

バン!!とドアを開ける

だが予想に反してそこは廊下よりも真っ暗だ
明かりがついてないのも原因の一つだが一番の原因はカーテンを閉じているのがあるのだろう
月の光さえ届かない
そういえばターゲットの姓には月が含まれていたなと余計な事を考える
しかし、思考とはよそに経験が体を動かせる
銃についているライトをつけようとした瞬間

「すいません。光は点けないでくれませんか」

唐突に聞こえた声に体が勝手に反応して声がした方向に銃をつきつける
勿論、他のメンバーも
さっきと同じ声
顔は見えないがシルエットから小学生くらいだとわかる
そのシルエットが二つ
その内一つは少年らしきシルエットの腕が首にまわっていた
規則正しい寝息も微かに聞こえる

………………嘘では……………なかったか

どうやら本当にターゲットの一人を人質にしたらしい
もっともそれも作戦の内かもしれないが

「すいません。それ以上近づかないでください。安全を求めているとはいえまだ完璧な交渉もしていないのに近づいてもらったら困るんで」

要求が再びくる
私は返答した

「もし、それを破ったらどうする?」

「簡単です。この人質の命を断ちます。偶然なことに俺の手にはナイフが握られているのですよ」

後ろの何人かが少し呻き声を出したのがわかる
多分だが力ずくで抑えようと思っていたのだろう
いくら銃弾のスピードが音速レベルとはいえ、流石に彼のナイフがターゲットの首を掻っ切るよりも早くには無理だ
銃が音速でも、それを撃つ私達の指は音速ではないのだ
ある意味厄介な構図だ

「では、こちらはどうすればいい」

「簡単です。俺はこれから月村邸から逃げるので、それを見逃して下さい。途中でこいつを解放するので後はご自由に」

「不可能だ。信頼できない」

「こちらも不可能です。信用できない」

お互いがお互いを疑いあう
緊張感は否応なしに高まる

「大体繰り返すが君達は友達ではなくとも学友ではあったんだろう?そんな相手をそんな簡単に見捨てるのかい」

「ええ。逆に聞きますが貴方、自分の命と学友の命、どちらが大切ですか?」

「……………なるほどな。非常に合理的だ」

「そりゃ、どうも。お褒めいただき光栄です」

「だがーーーーわかるだろう?」

「ええーーーーわかりますとも」

「「全然信じられない」」

話は平行線だ
このままでは時間だけが流れる
もう一人の方を捕まえられたらこっちは用済みなのだが、今のところの様子では難しいだろう
護衛の方が全部あちらに付いているかもしれない
そうなるとこちらの子供を何とかした方がまだ楽だ
見た目に反してかなり頭が回るようだから気は抜けない
ここからは力を使う戦いではなく、頭を使った舌戦だ

「もう一度復唱しよう。君の要求は自分の安全確保。それが済み次第、人質を解放。それだけかい」

「ええ。強いて言うならこれからも俺に手を出さない事もですかね。ついでにキムチ鍋の弁償も」

「後半無視するが、勿論、私達は君の言葉に偽りがあるのではないかと疑う」

「勿論、俺は貴方達が約束を守ってもらえるかどうかを疑う」

「どうしようかな」

「どうするべきですかね」

「はっきり言おう。実は君達二人の話を聞いているのは実は情報を知るためであって、君達の命はどうでもいいんだよ」

「嘘ですね。それならば昼間の時、何故二人を生け捕りで誘拐しようとしていたんですか?殺すだけなら事故に見せかけて暗殺することも出来ないことはないでしょう」

「依頼人の要求だ」

「ほう?では、どのように殺せと?」

「近くの廃棄ビルに誘拐してーーー」

「ダウト。減点だよ。そんなもの発見が遅くなるのと犯人の詳細がわかりにくなるだけで同じですよ。そんなことで見つかるようなヘマをしないという事は証拠隠滅能力があるということ。ならば事故でも同じですよ」

…………………………鋭い

どうやら生半可のブラフでは突破できないらしい
舐めてかかったらこちらの負けだ

「しかし、どうする?こっちとしてはわざわざその取引に応じる必要はないのだよ」

「だから人質がいるのですよ」

「だがこっちに保証する術がない。血判書でも押すかい?」

「いい線言ってますが、貴方達に武士道とかはなさそうですしねぇ」

「君にもな」

「違いない」

そこで一端息を吐く
熱い
一体この部屋に入って何分ぐらい経っただろうか
三分くらいだろうかと思って時計の方をチラリと見るともう十分ぐらい経っている
余り長い時間消費するのは得策ではない
速めにケリをつけなくては
ほんの少し銃を下す
長い間銃を同じ体制で持つと冗談じゃないぐらい疲れるのだ
その時、偶然無線のスイッチを入れてしまう
その時

『誰か!!誰か応答を!!頼む!早く救助を……………ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

一瞬でみんなの動きが止まる
今の悲鳴は何だ?
頭の回転が誤作動をしている
思考が空転する
自分が今、何をしていたのかわからなくなる
だがそこらへんは皆プロ
ほんの三秒ぐらいで現実に戻ってくる
どういうことかをほんの少しの時間で計算する
まず、他のメンバーが襲撃されている
襲撃しているのはあの銭湯可能の三人のだれか、もしくは全員
何故それを知ることが出来なかった
答えは簡単
俺達のメンバーは定時連絡から外れたから
何故
それはこれから行く場所がトラップがあるかもしれないから無線の使用を控えたからだ
何故この場所に来た
この少年に指定されたからだ
つまり結論

最初から最後まで騙されていた………………!?

即座に銃を構え少年を撃とうとしたら

ボン!と煙が発生し

ボッ!と火が点いた

いきなりの事で何もできなかったがそれでも少年を撃とうという行動は止まらなかった
引き金は即座に引かれた

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!

総勢三十余りの銃口が火を噴く
パリンっ!!と窓ガラスが割れる音が聞こえる
当たっていたなら肉片しか残らない理不尽な掃射
撃っている間に火に反応したのかスプリンクラーが動いた
多分だは主電力とは違う予備電力で動いたのだろう
しかし、今はそんな事を気にしている時ではない
一端掃射を止める
煙はまだ晴れない
動くものはなさそうだ
スプリンクラーの人工の雨が私達を濡らす
暫くしてようやく煙が晴れる
そこには誰もいなかった
だがそこには服があった
女の子物の制服
多分ターゲットの少女が通っている学校の制服だ
だが肝心の本人はいなく、服だけだ
よく見たら周りにゴムがある
なるほど
どうやら風船で人に仕立て上げていたようだ
解った瞬間、誑かされたというよりは呆れてしまう

よくもまぁ、こんな無茶な真似を………………

ほんの少しでもカーテンから光が漏れたら一瞬でばれる
どうやら少年は窓から飛び降りたのだろう
二階からだから無理ではないが、無茶ではある
ターゲットの学友ならまだ小学一年生
骨や筋肉などいくら鍛えていたとしても未発達だろう
余程うまく衝撃を殺さなければ骨が砕けているだろう
そして多分だが少年は上手く殺せてないだろう
銃弾のせいでカーテンに穴が開いたおかげで光が漏れてきた
少年がいたと思われる場所には

赤い血が

銃弾のいくつかにかすったのだろう
見たところ致命傷というわけではなさそうだが軽いというわけではないだろう
これで上手く着地できるかは五分五分だろう
しかし、まんまと騙されたものだ
とりあえず今することはここから撤収するしかないだろう
他のメンバーはやられていると思うべきだ
すぐさま撤退して任務の失敗を伝えるしかないだろう
気が重いが仕方ない
捕まるよりましだと思い、スプリンクラーで垂れてきた水を舌で舐める
そこで違和感を感じる

待て。何故火を点ける意味がある

火は事前に灯油でも周りに撒いていたのであろう
例えば自分達を傷つける為なら火の威力が弱すぎるし、スプリンクラーがあるのだ
私達にダメージを与えれるはずがない
まさかスプリンクラーの存在を知らなかったというわけではないだろう
これほどの作戦を考えてのにそんな些細な事を見落とすとは思えない
ということは
まさか
そう思った瞬間足から力が抜けた
それは私だけではなく他のメンバーもだ
強烈な脱力感が体を支配する

……………睡眠………………薬か……………

こういうことか
つまりだ
スプリンクラーの水の中に睡眠薬を混ぜたのだ
そのための火か
ただ火を投げただけならみんな違和感から逃げられるかもしれない
だが、この状況
騙されたとわかり、他のメンバーの敗北を知った後
そんな中で違和感を感じる暇がない
しかも、相手が子供だったのもある
いくら油断は出来る限りしないようにしていたとしても心理的に完璧に緊張を保つのは難しい
そんな中をこのトラップ
見くびっていた
嘗めていた
相手はただの子供ではなかったのだ

何て…………えげつない……………子供…………だ

バタリとみんなが倒れる
誰も動くことはなかった





「はぁ、二度とこんなことしたくないぜ」

思わずため息をつく
幸せがいっぱい逃げていく
何とか着地をした後、近くの木に背をもたれさせ、脇腹に受けた傷を服を破ってガサツな応急処置をしたところだ
ギリギリなんてもんじゃない
完璧な失敗だ
本当ならもうちょっと舌戦をするはずなのに偶然にやられた
咄嗟に作戦を早めに決行したが、この様
傑作としか言えない

「大丈夫か!?慧君!?」

ようやく恭也さんがやって来た
結構返り血に濡れているし、彼自身の血も流れてるがかすり傷みたいだ
羨ましい
ちなみに恭也さんが本格的に動いたのは俺が館内放送の後でキムチ鍋の事を聞いた直後だ
相手は油断したのか無線を切るというのを拾ったのだ
まぁ、作戦通りだ
キムチ鍋の事が作戦の合図だったのだ

「遅いですよ。恭也さん。出来ればもう少し速く来てくれてもよかったですよ」

「ああ、すまない。すぐ治療を……………!」

「そうですね」

苦痛はもうどうでもいいけどこのまま血が流れ続けたら失血死をしてしまう
流石にそんな間抜けな死に方はしたくない
何とか立とうとする

「よっこら…………せ」

「馬鹿!無茶をするな!俺が運ぶ!」

「馬鹿はそっちですよ。もしその状況で敵に奇襲されたらそれこそどうするんですか」

「くっ、だが…………しかし」

「大丈夫ですよ。まだ動けなくなるほど血は失っていません」

そうして彼の顔を真っ直ぐ見る
それでようやく観念したのか
わかったと呟いて早歩きでここから去ろうとする
俺もそれについて行こうとする

はぁ、疲れた。今日は早く…………寝たい

そう思ったのがいけないのだろうか
唐突に背中から

「なんだい?もう帰るのかい」

と知らない声が聞こえた

すぐさま振り返る
俺はともかく恭也さんでさえ気づかない気配の消し方
一瞬で判断
相手はプロ中のプロと認定、否、断定

そこに立っていたのはビシッと黒いスーツを決めた男と
何だか変な服を着て刃で武装した女

変な女の方のは知らないが男の方はヤバイというのがぴんぴんする
立っている姿は重心が揺れておらず、自然とそこに立っている
隙なんてものは全然ない
完璧な武を修めている人の立ち振る舞いだ

「なるほど、君達が俺達を撃退したのか」

相手はこちらを値踏みするような目でこちらを見てくる
いけない
沈黙しているのは駄目だ
弱気を見抜かれるかもしれない

「何ですか?こちらを舐めるような目つきで見てきて。もしかしてそっち系の人ですか?」

よし
いつもの戯言が出てくる
いきなりのショックを何とか耐える

「残念ながらそんなもんじゃないさ。ただ君達がよくあれだけの人数から生き残れたねと感心したのさ」

「それならこちらも残念ながらと言いましょう。何せ相手はこちらが少人数だからか。もしくは、足手纏いがいると思っていたからか。あんまり本気ではなかったと思いますよ。」

「それを突いたのは君達の力量だ。謙遜することではないと思うけどね」

ちくしょう…………
侮ってくれないか
こちらを侮ってくれたらもう少し隙が見えてくるのだが相手は油断など欠片もない
不味い状況だ
こちらは怪我人一名に疲労一名
明らかこちらの不利だ
何せ相手は今まで何もしていないのだから
と思ってたら今まで沈黙を保っていた恭也さんが会話に加わった

「…………何故、貴様らがここにいる?」

「奇妙なことを聞く。俺達の仕事はそちらの吸血鬼の確保だ。ならここにいるのはおかしくないだろう?」

「それにしても速過ぎる!応援ならもう少しかかるはずだ!」

「ああ、そういうことか。それはそこの少年に聞けばどうだ?どうやらわかっているようだし?」

「何を言いますか。俺はどこにでもいる小学生です」

「君みたいな薄気味悪い子供がどこにでもいる小学生なら教育を変えなくてはいけないね」

「………………貴様!」

恭也さんが怒って突っかかろうとするがギリギリ止める
こういう相手に感情で戦っても結果は敗北だろう
感情だけで決まる勝負なんて皆無なんだから
それに薄気味悪いと言われても反論は出来ないことは自覚している

「で、答えは?」

「簡単だ。俺達はいざという時の保険でね。失敗したときの為の駒だよ」

そう言った瞬間
さっきまでまるで人形みたいだった女が急に動き出した

「イレイン。君の相手はそこの黒尽くめの剣士だ。----存分に戦え」

瞬間
恭也さんと女の姿が消えた
否、消えたのではない
俺の動体視力では追えないスピードで遠ざかったのだ
多分だが先に攻撃したのはイレインとかいう女の方だろう
証拠に
俺の斜め五歩ぐらいの位置に大地に強烈な足跡が残っている

恭也さんの同類か
もしくは、メイドの同類か………………

多分だが後者だろう
それならさっきまでの人形みたいな状態に納得できる
ようするに電源が入っていなかったのだ
電源(命令)が
まぁ、恭也さんなら勝つのはわからないが直ぐに負けるという事はないだろう
問題は俺だ

「さて、こちらも始めようかな」

そんな事を言いながら彼は何の構えも取らない
まさしく泰然自若
なのにまったくの隙なし

「おいおい、俺なんか相手してもメリットはまったくないぞ」

「そうでもないな。こんな奇策を考え付いた頭は完全な障害だ」

「いつ、俺が考えたと」

「時間稼ぎもそこまでにしときな。ターゲットの情報は既に頭の中に入っている。そしてこんな考えを思いつくような人間がいないこともな。そこの高町恭也を含め、自動人形もな」

「そのターゲットを探したほうが得策ではないのか」

「それは同感だがーーーーもうこの屋敷内にはいないだろう?」

「何故そう思いますか?実は秘密の部屋に隠れているかもしれませんよ?バシリスクと一緒に」

「映画の話もいいけど。まだまだ子供だな。答えるのが早いよ」

「……………………………………………………」

「まぁ、だから君を倒すという事になるのだ」

「何故?」

「簡単だ。君のズボンの左ポケットーーーー携帯が入っているだろ」

「いえ、これはーーー」

「別に答えは聞いていない。それを奪わせてもらうだけだ」

「まさかこれですずか達と連絡をとるとでも。残念ながらそういう為の暗号も作っています。速攻で俺じゃないとばれますよ」

これはブラフだ
まさかこんな局面になるとは思っていなかったし、携帯を使われるとは完璧に計算外だ(ちなみにすずかに壊されたのはダミーの玩具の携帯だ。何故そんなものを持っているかだって?野暮なことは聞きなさんな)。
少しでも攪乱になればいいのだが
だが現実は更に残酷だった

「いや、それはどうでもいいんだ」

「なに?」

「簡単だよ。君は違うかもしれないけど。もしも仲良くなくてもクラスメイトの子供が例えば人質になったとしたら、『普通』はどうする?」

「……………………………………………………」

「それも、もしも自分のせいで人質になったとしたら?」

「……………………………………………………」

「そうなって、こう言ったらどうなるかな?『この少年を返してほしくば、降伏しろと』」

もはや言葉はいらなかった

ダン!!と思い切り地を蹴る
自身の怪我の事などは構わない走り
ただ敵を打倒するために




あとがき
すいません、機器については独自の解釈をしてますし、多少ご都合的に進んでいるところがありますが
そこらへんは作者の力不足なのでどうかご了承頂きたい
次ですずか嬢編の終わりになると思います
本編に入るのはいつになるやら


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