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No.27272の一覧
[0] 【習作・ネタ】宇宙生物インキュベータ(マップス×まどかマギカ+独自解釈)[温泉街](2011/04/18 18:57)
[1] 『歩みの始まり』[温泉街](2011/04/18 18:59)
[2] 『辛き道を』[温泉街](2011/04/20 11:03)
[3] 『またここから』[温泉街](2011/04/22 17:27)
[4] 『奇跡の対価』[温泉街](2011/04/25 23:39)
[5] 『変える者』[温泉街](2011/04/30 00:44)
[6] 『青き円卓と魔法少女』[温泉街](2011/05/03 16:24)
[7] 『舞台装置の演劇役者』[温泉街](2011/05/07 22:42)
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[27272] 『舞台装置の演劇役者』
Name: 温泉街◆a77021ce ID:11184927 前を表示する
Date: 2011/05/07 22:42
 圧倒的。

 四対一と言う戦いにも関わらず少女達はまったく勝てない。
 それまでに圧倒的な魔女としてワルプルギスは立ちふさがる。


 青い光・美樹=さやかがワルプルギスから放たれた火球の直撃によって倒れふす。


 魔法少女はソウルジェムが無事ならば戦い続ける事が可能であり、さやかはもう一度立ち上がろうとした。
 だが心の何処かで『勝てない』と言う絶望がその動作を鈍らせ追撃を避ける力を与えなかった。
 ビルの鉄骨がその腹を貫きその勢いは殺される事なく、鉄骨はさやかを地面に縫い付ける柱となる。


 赤い光・佐倉=杏子はその槍で飛来する歯車を破壊し戦っていた。


 だが無数の瓦礫による物量によって押し潰され倒壊したビルの残骸によって身動きを封じられる。
 手の槍を支え柱に瓦礫による圧殺を回避するも瓦礫によって足が完全に潰されており動けない。
 また肝心の腕も右は瓦礫によって引き抜く事が出来ず、左は槍と一緒に瓦礫を支える為に使えない。



 黄色い光・巴=マミは飛来する全てを撃ち落していた。



 仲間である二人に迫る攻撃を防ぎ歯車を撃つ事で軌道を逸らすもあまりにも豆鉄砲な火力。
 必殺であるティロフィナーレを持ってしても出来るのは巨大な歯車を半壊させ飛来するビルを粉砕する事。
 防ぐ為にしか力を使えず息切れを起こしてしまい、ワルプルギスの衝撃波によって地面に叩きつけられ意識を朦朧とさせる。


 最後の黒い光・暁美=ほむらは他の面々が倒れてからも孤軍奮闘し”努力”した。


 巨大なビルが体当たりしてくるのを避け、逃げた先に飛んでくる火球を紙一重でなんとか凌ぐ。
 不安定な足場をなんとかやり繰りし現代兵器でも特に火力のある武器で応戦し叩き込み続けたが結果は無残。
 それは『戦艦の装甲に子供が石を投げつける』程度の力しかなく、圧倒的な地力差に追い詰められていく。
 そして衝撃波によって宙を漂う大木に叩きつけられた所で『居て欲しくない二人』の存在に気づいた。


「ひどいよ……こんなのってないよ……」

「そうだね、彼女達じゃ荷が重すぎた……あの魔女はそれほどに強かったんだ」


 ほむらの霞む視界に映る誰よりも優先されるべき大切な親友と倒すべき存在が悠然と佇む姿。

 それは彼女にとってなによりも見覚えのある光景であり、そうさせない為に戦い続けてきたのだ。

 なのに肝心な時に身体が動かない。

 身体を縫い付けるように太い枝が身体を貫いており、ほむらはなんとか折ろうとするも出来ない。

 時間を稼ごうにも時間を止める能力はこれまでの戦いで過剰な使用に耐えられず限界を迎えてしまっている為に使えない。


「でもね……まどかにはこんな現実を覆す力があるんだ。君にしか出来ない、君だからこそ出来る奇跡の力が
 彼女達や僕には出来ないまどかにしか出来ない事。僕にはその奇跡を起こす事が出来るけどそれは君の意思がいる」


 青い影の使い魔達が二人に迫るがそれを鎧を纏ったゲンが光線銃で瞬く間に全て撃ち抜く。
 そこからまた飛来するビルに向けて背負っている巨大な大砲の銃口を向けて引き金を引き絞る。
 宇宙戦艦の主砲に用いられるプロミネンス砲の光線は地球の貧弱な建築物を簡単に貫いてワルプルギスの右腕を吹き飛ばす。

「ゲン!」

「ダイナックさん!?」

「おい! ここは危険だ! 早く逃げるんだ!」

 右腕を吹き飛ばされたワルプルギスは怒りを露にするかのように自身の周囲を浮かぶ歯車を差し向ける。
 まどかに対して怒鳴るように言うとゲンは大砲を背負ったまま二人を巻き込まないように別の場所へと跳んでいく。
 最初は十数機あった十数階立てのビルほどもある車輪も既に半分を切っていたがそれでも半分残っている巨大な歯車がゲンを潰そうと迫る。  
 だが引き金と共に放たれる光の柱によって簡単に消し飛ばされ、それどころかワルプルギスは左腕を失う。

 鹿目=まどかもほむらも生き残っている全員が『勝てるかも』と希望を抱いた。


 されど黒幕がそんな事をする訳がない。


 だからわざと弱くなる。


 ワルプルギスの本気とも言える神速の体当たり、全長三十メートルを超える巨体は空気の壁を越えて突撃してきた。
 幾ら常人を超えた能力も限界はあり避けきれずに切り札であるプロミネンス砲を破壊され一気に形勢逆転となる。
 ソニックブームで地面に叩きつけられたゲンは素早く立て直すが追撃は火球となって容赦なく続く。
 降り注ぐ火球を避けながら隙を見てビルの破片を全力投球、とんでもない速度で放たれる投球はワルプルギスの身体にめり込む。


「……まだいけるぞ!!」


 だがその希望も降り注ぐ火球の一つがマミの下へと飛来した事で潰える。

 ゲンはまだ動けていない、あるいはソレを避けられるまで回復していないマミを庇ったのだ。

 吹き飛ばされる鎧と攻撃の直撃よって出来る痛みから叫ぶゲン。

 容赦ない追撃の巻き添えを避けさせる為にゲンはマミを突き飛ばし、マミの視界は直後に無数の火球に飲まれるゲンの姿を見る。



「……やめて……やめて……やめて」



 怒りをぶつけるかのように降り注ぐ火球によってゲンは執拗な攻撃によって消し炭となってしまった。
 マミは朦朧とした意識の中で消し炭となったゲンのもとへと歩き何度もか弱い声でゲンを呼びながら身体を揺らす。
 されど返答はなくマミはそのかつて形があった黒い物を抱き寄せて自分の非力さを嘆き涙を流してしまう。


 そしてまどかの視界にはそんな二人の姿以外に倒れた親友や友達の姿があり、未だ君臨する魔女の姿がある。


 その眼は強い意思があり、それは明確な願いの形とエネルギーを増幅させる役目を担う。
 変わらぬ表情のキュウべぇはソレを見て無表情の仮面の下に懸命に計画の成就を喜ぶ。


「お願い……私に力を貸して。こんな結末を変える力を!」


「まどかーーー! ソイツの言葉に騙されないでーーー!!」


 ほむらは叫んだ。

 繰り返さない為に。

 生まれてはいけない魔女を産ませない為に。

 自分の努力が砕け散らぬように。



「私が”皆”を助けるから、私も皆と戦うから」



 それはほむらに向けたとびっきりの笑顔であり、何も知らないからこそ出来る笑顔であった。
 大切な友達を助ける為に選び取る勇気を手に入れたまどかはキュウべぇの契約の下に魔法少女となる。

 さやかの素質を十とするならば、まどかの素質は億単位に等しい。

 それに更に強い感情の力が上乗せされた素質は契約と共に開花を向かえ比類ない力を与える。

 皮肉にもワルプルギスと良く似たデザインのドレスは桃色を基調としてあり、その手には矢のない弓が握られている。



「力の使い方は身体が理解してくれてる! あとは君の意思の強さでワルプルギスの夜を倒すんだ!!」



 その光にワルプルギスの顔は何処か悲しげな表情をしながら、身体の周りに火球を作り出すとそれを一つの巨大な塊へと変えた。

 対するまどかが弓の光の弦を引くと輝かしい光の矢が形成される。

 皆を守ると言う強い意志の眼はワルプルギスを見据え、光の矢は弓の大きさを遥かに超えた巨大な矢と化す。
 本当ならば怯えて良いのにまどかはまったく怯えなず覚悟と決意に満ちた威風がより矢を鍛え上げていく。
 自分のソウルジェムが矢の大きさに比例して凄まじい勢いで輝きを失っていくのも気づかずに。

 先手を取ったのはワルプルギス……巨大な火球をまどかへと放つとそれに追従するようにあの体当たりを行う。

 一つの巨大な火球と化したワルプルギスに対してまどかは『全身全霊』の最初で最後の一撃を放つ。


 競り勝ったのは命を賭けた矢だった。


 均衡すら生まれない圧倒的な一撃によってワルプルギスの夜と言う魔女は消滅した。



『……と』




「……えっ?」



 ワルプルギスが消滅する直前にまどかは誰かの掠れた声を聞いた……何と言ったのかは聞き取れなかったが。
 それでもワルプルギスの夜は消滅しグリーフシードを産むこともなく消えてしまったが勝利を喜ぶ筈であった。

 だが緻密に作られた計画はついに成就される。

 真っ黒になったソウルジェムが意味するのは倒してきた魔女と同じ魔女となる結末。

 そんな事など知らないまどかは自分の全身を襲う激痛の意味も判らずにただ声をあげながらもがき苦しむ。
 やがてその身体は聞くに堪えない音をあげながら変貌していき、周囲にある”物体”を取り込みながら急成長していく。
 親友・先輩・仲間を取り込みなお満たされぬ腹は更に物体を取り込もうと成長を続ける。
 その感触はただの人間である少女に異様な感覚と絶望を与え、その感情の力を爆発的に高めた。

 死ぬ筈だったまどかの仲間を助けたのはこの時の為。

 されど仲間を取り込む感覚は度し難い感触を本人に与え、そのエネルギーとしての価値をより高める。
 膨大なエネルギーを吐き出しながらもほむらは魔女として姿を変えていき、天を貫くような巨体を持つ魔女と化した。


「よくもまぁ……やっぱり素質は侮れないね」



 キュウべぇが見上げるのは一つ前の世界にて産まれた最強の一角となった魔女。
 『皆を助ける・不幸な結末を変える』と言う願いから産まれ『この世の不幸を無くす為に皆を殺す』為に生きる救済の魔女。
 地球クラスの惑星を十日で滅ぼすだけの強さと惑星を覆いつくす巨大な結界を生み出すだけの力を兼ね備えた優しい少女の成れの果て。

 優しい願い故に奇跡の対価は残酷なまでに厳しさを与える。

 そう遠くない内に世界は結界で覆われ、地球の文明は十日も持たずに彼女の純粋な善意によって滅びるだろう。
 この世から不幸を無くす為に不幸となりうる全てを滅ぼす事で彼女は『幸せ』だと誤解するのだから。



「……また、助けられなかった」



 ほむらはワルプルギスの衝撃によって突き刺さっていた木ごと吹き飛ばされ、幸運にも魔女化に巻き込まれずに済んだ。
 されどその身体は精神的に既に死んでおり悠然と佇むもっとも助けたかった相手の成れの果てを見ているだけ。
 持ち合わせた数多もの武器はまったく通じず結果として戦いに敗北し目的を果たせずに終わってしまう。
 過去へ戻ろうとするも既に砂時計は過去へと戻るだけの力は残されておらず、それもほむらを死なせている要因。
 予備のグリフシードもなくその心は『いっそまどかに取り込まれたい・まどかに殺されたい』と願ってすらいる。

 僅かに残弾の残っているカトラスと言う拳銃の銃口を自分のソウルジェムに向ける。

 だが引き金が引かれるよりも早くゲンの手が銃を奪い取った。


「……まだ生きてるか?」


 元々魔法使いでもないゲン(ガフリオン)はその超能力で自分の身体を原子分解させ別の場所で再生させて生き延びていた。
 消し炭になったのは纏っていた鎧だが生き延びてたゲンは右腕は肘先からなく・顔も左半分で黒ずみ・両足が崩れ落ちる。 
 いかにも奇跡的に生き延びた手の込んだ演出も今のほむらにはあまり効果がない。

 それでもゲンは倒壊しているビルの瓦礫になんとか背中を預けるように這いずり魔女の巨体を見上げる。

 胸元のソウルジェムに似せた鉱石には亀裂が走っており、それによって身体を再生出来ないと言う演出も欠かさない。
 またほむらがまだ生きている事に安堵するように大きく息を吐き出し諦めを示すかのようにほむらに話しかける。


「あの子が守りたかった子なのか?」


 ほむらは頷く。


「凄いよな……俺達が束になっても勝てないのを一人で倒すんだからさ。でもどうしてこうなるのを知ってたんだ?」

「私は過去に戻れる力がある……でももう過去に戻る力はない。私のも黒いからそう遠くない内に魔女になる」


 助けられなかった後悔・勝てるかも知れなかったが負けた悔しさ・助ける筈の相手にまた救われた現実。
 ほむらの眼は溜め込んでいた涙を流し始め、ほむらは声を押し殺しながら泣きだす。


「……ソウルジェムが浄化出来れば過去に戻れるのか」


 またほむらは小さく頷く。
 それに対してゲンは歯を食いしばりながらポケットから蛇の魔女を倒した時に手に入れた空のグリフシードを取り出す。
 取り出した所でゲンの残っていた腕も肩から千切れ落ち、グリフシードがコロコロと音を立てながらほむらの下に転がる。

 ほむらの眼にそれは希望にもまた戦えと言うようにつきつけられる残酷な現実にも見えた。

 だが動かせる腕はそれを使い自身のソウルジェムを浄化し砂時計の残量も元へと戻していた。
 未だ心の奥底では戦えう勇気を持っている事に気づかされたほむらは唖然し、ゲンは頼もしいと笑う。

「俺はもう無理だけど……そっちは変えたんだよな?」

「変える、変えて見せる」

「なら魔法の言葉を教えてやるよ」

 ソウルジェムに更に亀裂が走る……ソウルジェムは魂そのものであり砕けるのが意味するのは死だ。
 直す術はなくゲンの命が風前の灯である事はほむらにも理解出来ているからこそ何も言わない。


「キュウべぇは……合理主義者だ……『一万の価値のある意思』と『二万を稼ぐ人間』なら……どちらを選ぶかは判るな?」


 ゲンはそれを伝え、小さく『頑張れ』と言いながらソウルジェムの崩壊と共に地面に横たわった。
 ほむらは何も言わずに横たわった身体を丁寧に瓦礫に背を預けて体勢を整える。
 言い残してくれた魔法の言葉の意味を考えながら……まだ見開いたままの眼を優しく閉じる。


「まどか……次は絶対に助けるから」


 つい先ほどまで死に掛けていたとは思えない強い意志の宿った言葉を言い放つと奇跡の力によって姿が消え、ほむらの意思は全ての始まりの日の時間へと逆行する。

 そして無人と化した結界の中で黒幕のキュウべぇがゲンの下に現れ、ゲンの身体は瞬く間に元の姿へと戻る。

 ボロボロだった身体など影もなくキュウべぇがその頭に器用に上ると気に入ったのかそこにまた器用に立つ。


「ご苦労様、いやぁより純度を増す為とは言え苦労したよ。でもいらない事を教えたのかな?」

「まさか? 過去に戻れる能力者を好き勝手振り回せる仲間に引き入れられたらこっちはこっちの奇跡が使えると思わないか?」

「……そうだね。僕は君を過去へと送り出して君は延命に成功するけど誰にも理解されない、だから資源危機を理解されない」


 だからガフリオンは『魔法の言葉』をほむらに教えた。
 過去への逆行などで奇跡の対価支払いによって使える切り札が一つなくなっているが、ほむらを引き込めば大きく変わる。
 時間操作能力を利用する事で使える奇跡を増やせる……あとはそれをどう使うかでガフリオン達の戦いは大きく変わっていく。
 数千億年の月日を生きる二人の策略は既に今回得れた材料から次回への明確な道筋を描き出す。


「あとはアレの後始末だね……もし奇跡の対価なんてなかったら、まどかもワプルもあんな苦しみを背負わなくて良かったのにさ」

「それと希望の方が価値があればな。絶望なんてものに縋る必要がなければこんな事をしなくても済んだのにな」


 救済の魔女が悠然と佇んでいる姿は二人には神々しさよりもその弱弱しさが気になってしまう。
 使い魔もなくただ一人世界を見ながら幸せを求めるその姿は純粋な優しさが過ぎたものの化身。


「ワプルもまどかもさ……皆を助けるって言う子は決まってさ『その皆の中に自分がいないんだよね』
 僕には理解出来ないよ。皆ってのは全てに相当する筈なのにさ、ああした子はどれもこれも自分を含まないんだ
 不思議だよね……どうして自分も助かるのに入れられないんだろう? そうすればもっと違うだろうにさ」


 ガフリオンの頭の上でキュウべぇは心底理解出来ないと言いたげに吐露する。


「まっ後始末はするよ……あんな魔女がいたら良質な資源地の地球が滅びちゃうからさ」

「その後始末は私だろ?」

「まぁ僕等は弱い仕方ないよ、そういう訳だからよろしくね」


 キュウべぇはそう言うとさっさと頭から下り結界の外へと抜け、ガフリオンは懐から小さくした生贄砲を取り出しその銃口を救済の魔女へと向ける。
 本来ならば適当な生命体を殺さなければ弾薬が存在しないのだがガフリオンの周りには倒された筈のワルプルギスの使い魔達が存在していた。

 青い影達は全員がガフリオンを見ている。

 そしてその影の口は思い思いの言葉を伝える為にに動く。


『あの子を助けてあげて』


『私達のような苦しみを与えないで』


『あの子にただ一言伝えたいの』


 影が消えていく度に生贄砲に少しずつだがエネルギーが充填されていく。
 絶望に沈み敗れてただ暴れまわるだけだったかつての魔法使いや少女達のたった一言の想いが。
 皆の幸せを願い戦い、幸せを願いながらもまったく逆の事をしている少女であった者に伝える言葉。


 充填された生贄砲は引き金と共にその集められた願いを吐き出す。


 それは救済の魔女の作り出す盾を容易に貫いたソレは彼女に大きな風穴を開けた。



『もういいの……ありがとう』



 数え切れない先達達の最後に残された自我から集められた言葉と想いは救済の魔女に届いたのだろう。
 身体は再生せず風穴の開いた部分からゆっくりと壊れていく。
 雲で隠れている顔には確かな一筋の涙が流れているのが確認出来る。 


 確かな幸せを知った救済の魔女は、幾多もの先達の感謝の言葉に見送られながら崩れ去った。


 たった一回……されど一回で多くの人を助けた彼女は残された、かすかな心でソレを感じ取り死んだ。
 自壊していく、消え行く結界と共に救済の魔女は多くの人々の感謝の念を送られながら救済されたのだった。



「……後始末はしたぞ、あの子は救われたんだから、今度は君が救われる番だ」



 満点の夜空に燦然と輝く星の光を見上げながら宇宙を救う者は過去へと跳んだ少女に届かない言葉を呟く。

 たとえどれほど外道で非道な事をしているとしても、今のガフリオンは確かに本心からソレを願う。

 感謝と希望の想いを撃ち出した生贄砲の奇跡を見届けたからか。

 あるいは自分と同じように大切な仲間の為に戦っているから少しだけ共感したからか。



「魔法の言葉をちゃんと使えば……だがな」



 伝承族にはあるまじき優しさを持ちガフリオン。

 親友を得て”後始末”をするまでに到ったキュウべぇ。

 バクは確かな勢いで世界を変えつつあった。

 宇宙から見れば豆粒にもみたない小さな世界を。





 補足説明

 救済の魔女
 鹿目=まどかが辿りつく成れの果ての一つ
 キュウべぇ曰く『地球くらいなら十日で滅ぼせる』くらいの強さを持つ
 原作を見たら判るがとにかくデカイ……竜巻が人の形を成しているような感じでもはや”天災”
 魔法少女の素質に恵まれている天才だけにまさに天災
 この世から不幸を無くす為に結界に取り込んだ人々を殺してしまう
 ある偉人曰く『死は全てを解決する』を地でいくのに加えて根っこは純粋な善意だから性質が悪い
 今作では生贄砲+ワルプルギスの夜の感謝によって『幸運』を知って自壊する
 と言うか作者的に「救済の魔女が救済されないのはダメだろ」とこんな形での救済をした
 むしろあのまどかが救済の魔女になったのはバトル漫画によくあるテレパシーみたいなので真実を知ったからだと思ってます
 キュウべぇを拒絶するように地球を覆う結界とか終わりが悲惨なだけに幸せを願ったりしてますから


 魔法少女達
 キュウべぇがよりまどかに絶望を与える為に生かした者達
 まどかが魔女化する際に巻き込み、その計りがたい苦痛と絶望を与える為に生かした
 まさにその一瞬の為に生かされただけ、善意など微塵も存在しない
 そしてまったく記号に等しいのはキュウべぇ達から見た感を強くしたいからです
 おそらく原作でも連中から見たさやか達はこの程度だと思うんですよ
 実物を確認されない程度の書類一枚で済むような薄っぺらさって感じで


 生贄砲の言い訳
 伝承族の超技術の一つ
 生命体の持つ感情(原作では死の感情)をエネルギーに変換して撃ち出す兵器
 なお本来は砲身なきものであり、マップス原作ではソレを強引に機械化している
 思念兵器でもあり、マップス設定で使いたかったモノの筆頭格
 威力は低くとも感謝の念を救済の魔女に撃ち出し伝える事で、願いに満たされながら死ぬ
 コレをぜひとも使いたかった……当初の予定は生き残った面々の生きる意志をワルプルギスに撃ち出す予定でした



 キュウべぇらくしないかも知れませんが、強すぎるアレを消せるなら消していたでしょう
 それに実際キュウべぇが良質な資源地である地球を見捨てたのは結構非効率だと思ってます
 だからガフリオンと生贄砲によって消してもらいました……あの地球はどう進んでいくのでしょうね
 まぁキュウべぇに採掘されて滅びるしかないんですけど


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