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No.27272の一覧
[0] 【習作・ネタ】宇宙生物インキュベータ(マップス×まどかマギカ+独自解釈)[温泉街](2011/04/18 18:57)
[1] 『歩みの始まり』[温泉街](2011/04/18 18:59)
[2] 『辛き道を』[温泉街](2011/04/20 11:03)
[3] 『またここから』[温泉街](2011/04/22 17:27)
[4] 『奇跡の対価』[温泉街](2011/04/25 23:39)
[5] 『変える者』[温泉街](2011/04/30 00:44)
[6] 『青き円卓と魔法少女』[温泉街](2011/05/03 16:24)
[7] 『舞台装置の演劇役者』[温泉街](2011/05/07 22:42)
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[27272] 『青き円卓と魔法少女』
Name: 温泉街◆a77021ce ID:11184927 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/03 16:24
 時間は少しだけ遡る。
 また戻ってきたガフリオンは宇宙の真っ只中をまた浮かんでいた。
 眠りながら成功した研究と前回について整理しながら。
 だが次なる問題として現れたのは延命した分、生き残ってしまった文明の進歩に伴うエネルギーの枯渇。


「判っていた問題としても……辛いな」


 宇宙の技術は凄まじく、地球の傍にある太陽と言う恒星と同規模の恒星のエネルギーを”一時間程度”で使い切ってしまう文明がゴロゴロしているのが宇宙である。
 ましてやそんな文明が日夜覇権争いなどでそんな消費量を誇る兵器を量産してしまうのだから宇宙が持つ筈がない。
 無論宇宙の何処かにはまったく発達していない文明もあれば、新エネルギー開発に着手している文明もある。
 また炭素生命体を資源として採掘する種族や逆に珪素生命体を資源として採掘し、そういった関係から全面戦争へと発展する文明は星の数ほどあった。

 戦争の激化は兵器の歴史……より強大な力の為に更に多くのエネルギーが貪り喰われていった。


「……奇跡か」


 確かにそれは奇跡としか言いようのない事だ。
 伝承族数十兆の宇宙の旅路で『宇宙の延命』に成功したのはガフリオンが初めてであり、それは快挙と言える功績だ。

 またインキュベータ達が過去へと時間跳躍する技術を確立させたのも奇跡の御技に他ならない。

 感情をエネルギーに変えられる技術を持っているのも伝承族であり、インキュベータはそれを改良して更にエネルギーとなる対象を増やした。
 更にソウルジェムと呼ばれる存在として物質化させておくなどその技術力はおそらく早々ない奇跡の技術開発である。


「馬鹿げた話だ」


 宇宙崩壊を阻止するべく奔走した二人を待っていたのは、壮大な自作自演に対するしっぺ返し。
 何せ宇宙崩壊を延命させている限り他の種族に理解される日はない。
 判らせる為に宇宙崩落を招けばそれでその時間軸での人生は幕を下ろす。

 なりふりかまわずエネルギーを集めた結果として、宇宙を救う奇跡の対価として『理解されず宇宙の敵になる』結末。

 それは自分達がどこまでも残酷な皮肉でしかない。
 全宇宙からエネルギーを集めなければ宇宙を充分な時間延命させられないのに、それが原因で敵となってしまう。


「でもまだ希望はあるよ、宇宙にエネルギーを与えれば僕等は資源枯渇を救う救世主だ」


 漂っていたガフリオンの前にまた彼が白く小さな身体を持ってきている。
 広大な宇宙の中から良く探し出していると褒め称えるべきだろう。


「それで解決になるのか? そもそも私は既に一族の役目を果たしている……この宇宙に義理立ている理由はない」


 既に過去に飛ぶ奇跡によって『救った存在に理解されない』対価を背負っている二人。
 特に伝承族であり『宇宙延命の方法』を見つけ出したガフリオンにとって既に自分が生まれた目的は果たしている。
 この情報を手土産に各宇宙に散った仲間の下に移動すると言う選択肢が自分にはあるのだ。
 彼等のようにこの宇宙に固執する理由など何処にも存在しない……ガフリオンの中に”この”宇宙の為と言う考えはない。
 父ブゥアーが復活するか、あるいは後継者が生まれればガフリオンは忠実な部下としてその一生を終える役目がある。
 既に伝承族としての使命感がガフリオンを変えつつあり、おそらくこのままなら彼等を見捨てるだろう。


「そうだろうね。元々最初の僕のわがままが君をここに縛り付けているんだ……僕等は既に君から有意義な情報を貰ってるんだ
 君を縛り付ける理由もないし、それを僕等は君がここを旅立つのを選ぶのなら止めはしない。あとはひたすらに作業しかないんだし
 魔法少女を増やして魔女を増やしてソレでエネルギーを回収して後は枯渇に対して備えるだけの機械のような日々しか待ってない」


 だが意外にも彼等はガフリオンを止めない。

 それはたった四・五回の旅路の中に宿った彼等なりの考えから来るものである。
 確かに四・五回程度だがその一回は”数百億年”と言う普通の種族ならば到底達し得ない長い長い道筋だから。
 周った回数は少なくとも共に過ごしてきた長過ぎる旅路は彼等の思考の中に例外を生むには充分だった。

 それはバクと呼ぶものだとしても、彼等は確かにその思考の奥底に打ち付けられた確かな認識である。


「僕等はこれからより素質ある種族が住む星を行く」

「何処に?」

「世界に小さな警告を与えるように小さく活動しながらあの星を僕等は待つ。君はあのに行ってないから判らないだろうけど
 あの青い星には他の星の生命体なんて凌駕するような感情とエネルギーを生み出す知的生命体が六十億も住む事になる辺地の惑星」


 その星の名前をガフリオンは良く知っている。

 その星の勇者と呼ばれる者を知っている。

 その星が起こした奇跡の意味を知っている。


「地球か?」

「知ってるのかい?」

「私の記憶の映像で見ただろうに……我々を打ち破り銀河に奇跡を起こした辺地の惑星の事を」


 その宇宙の銀河の一つに予言が存在していた。

 要約すれば


 『一つの種族が銀河を巻き込む大戦争を引き起こす
  されど怯えるなかれ、銀河に住む種族の全ての諍いを取り除く勇者が現れる
  かの故郷”青き円卓”にて彼の勇者は全ての種族を率い戦う
  そしてそれによって銀河は統一され永劫の平穏を約束するだろう』


 そんな予言だが、それは銀河規模で絶望を生む為の情報操作で生まれた偽りの予言。
 予言を信じ伝承族に立ち向かってきた者達を全て打ち破り、その絶望を火種に生贄砲を使い腹を満たす。

 伝承族五十億年にわたる大計画の中心となったのが”青き円卓”こと地球である。

 外宇宙に来てまさか地球に出会えるなどガフリオンは考えても居なかったが、それも宇宙の面白さと言えた。

「へぇ……まっあそこに生まれる人間って種族は文明は低いけど感情の力は間違いなくこの宇宙一と言えるものだ
 そしてそこで僕等は絶望が生むエネルギーの強さを今一度理解したからこそその星の人間達を利用する事にしたんだ
 前の君は生贄砲なんかの調整に忙しかったみたいだから声を掛けなかったけど今回はどうする? 仇の地に行くのかい?」

「敵討ちなど興味はないさ。滅びるべくして滅びたなら、負けたなら受け入れるだけで良い
 ましてやあのダイナック=ゲンのいない地球を滅ぼした所で何の憂さ晴らしにもならん
 だが外宇宙の我々(伝承族)が干渉しなかった地球がどんな形になるのか……見てみたいからな」

 それは純粋な興味である。
 伝承族のガフリオンが与えられた記憶の中でこんな事例はただの一度たりとも存在し得ない出来事だ。 
 数十兆の宇宙の歴史の中でただ一つの自然的に同一の文明と種族が繁栄する星が存在すると言う出来事。

 おそらくガフリオンでなくとも興味を示すだろう。


「あれ、別の宇宙に行かないのかい?」


「感情があるとこういった事もあるものだ」


 ガフリオンは渡る気をすっかり無くし、彼等はそんなガフリオンを理解出来ないと言いたげに溜息を吐き出す。
 インキュベータは個体差がほとんどない群であり、全てが同一の為に他者と言う存在の理解に苦しむ生命体である。
 だがそんな彼等も何故かガフリオンに限ってはそんな事をする理由もなんとなくだが判るような気がした。
 どうしてガフリオンと言う異星人があんなに嬉しそうな顔をするのか。

「しばらく地球の観察に行ってくる」

「他を手伝って欲しいんだけど」

「地球の件が住んだら手伝うさ」

 そう言いながらガフリオンはその場所からテレポートし姿を消す。
 次に姿を現したのは太陽の光によってその周囲に強く青く光を放つ惑星としては小さな分類に入る星。
 全体の七割が水によって埋め尽くされ、僅かな大陸に進んでいない文明の生命体達がひしめく事になる星。
 銀河から青き円卓と呼ばれ、辺地でめぼしい資源もないので他の宇宙文明から捨て置かれたちっぽけな存在。
 その近くにある月の地表だった。

「やれやれいきなり飛ぶからここに来るのも一苦労だよ、次からは何処に出るのか教えてくれると助かるんだけど」

「すまないすまない、どうしても見たくてな……しかし相変わらず辺地で文明発達の遅い星だな
 ところで変な異星人とかが流れ着いた痕跡はあったか? 地球の生命体はそういうのの末裔だ」

「君が考え事に夢中にならなかったら地球生誕の瞬間にも立ち会えて監視も出来たのに僕等にそれを聞くの?
 まっ確かにこの星に地球人や虫の元になった異星人は確かに流れ込んだよ、それを覚えているのは居ないけどね
 ”次”からはしっかり自分で見張ってくれると僕等も楽になるから頼むよ……見張りの数増やすの面倒だし」

 彼等のそんな愚痴にガフリオンは盛大に笑わされ、また彼等は溜息を吐き出す。
 地球の生命体は宇宙を彷徨う故郷を無くした種族の集まり『彷徨える星人』の末裔達である。
 伝承族を倒す原動力となったダイナック=ゲンも、そんな彼等の血筋の一人であった。
 この地球もどうやら似たような運命を辿っているようであった。 


「あっそれと君にお願いがあるんだ」

「お願い?」

「前回手に入れたエネルギーの中に途方もないのが混じってたけどあったんだけどそれはこの地球の少女達から採取したものなんだ
 成長過程にある少女達に君の力を与えて僕等は奇跡を起こし、希望に満ちたその子達を絶望のどん底に叩き落してあげる
 それによって生まれるエネルギーは凄まじい限り……だが絶望を与える前に死なれたら凄く困るんだよ、熟す前に取られるのは面倒
 だから君は『いざとなったら颯爽と助ける英雄』になって欲しいんだ。少女達の異性の希望として……最後の絶望を彩る為に」

「……くだらない演劇をしろと言うのか?」

「宇宙を助ける為なら安いものじゃないか、僕等だって悪意がある訳じゃない。全てはいつか来る終焉に立ち向かう為の通過儀礼なんだ
 それにこのままのペースなら地球文明が他の宇宙文明と接触した頃には枯渇と絶望へと向かう宇宙しか待ち受けていない
 彼女達の子孫が少しでも笑顔である為に僕等は価値ある物を価値がある内に残そうとしている……それは決して悪い事じゃない筈だろう?
 でないと誰がこんな戦う力もない姿になるものか……次があるとしてもやり方を選ぶような余裕は僕等にはない”今”は二度と来ないんだ」


 長い長い時間を生きていてるからこそ、終わりを知るからこそ他者を気にしていられない。
 彼等には次はあるが今はもう二度とやって来ないのだ。
 それを焦りと取るか責任感と取るかはインキューベータ達の思想や行動理念に対する考え方次第だろう。
 小さな星の小さな命の犠牲で宇宙の命と言う奇跡を起こせるならば、その犠牲は致し方ないものとして始末出来るのだから。

 だから彼等は決して手を抜かない。

 自分達の行いが宇宙の寿命を延ばす奇跡を担っているだけにその考えは真剣なものなのだ。
 そんな頼みにガフリオンも了承を意味するように小さく頷く。


「それとどうやら僕達の邪魔をする子が一人いるから気をつけて……仮にも君の遺伝子を組む子だけに油断は禁物だよ
 後は君の頭の中に『この時代の資源』について流し込んでおくから、邪魔をする子の目的を探りながら上手く立ち回ってね。僕等も最大限援護するからさ」


「良い友を持ったな。じゃあちょっと仕事に出てくる」


 頭の中にその情報を受け取ったガフリオンは月面から地球の国の一つ『日本』の『見滝原市』にとテレポートする。

 外見はかつて自分達を打ち倒した地球人の18歳の少年である『十鬼島=ゲン(宇宙共用語でダイナック=ゲン)』へとその外見を変えていた。

 背丈はほどほどにあり茶色の髪の毛は風にそよぐほどはあり、銀河中を旅し戦った肉体は同年代のソレとは中身の出来を遥かに上回る。

 服装は適当な地球人の男性の格好を真似ており、着ているジャージも原子や分子操作で全てその場で作り出し纏っている。


「良く似合ってるじゃないか」


 路地裏の人気のない場所に下りたガフリオンの足元には既にインキュベータが前回より得たその姿で待っていた。

「……で?」

「まず”僕”はこの星ではキュウべぇって名乗ってる。誰かがつけてくれたんだろうけど……どうでも良いや、とにかくここでそう呼んでくれるかな
 あとは最大の資源になる鹿目=まどかって子が最高の資源になるには周りの友達に生きて最後の敵にぶつかって貰わないと困るんだ
 そう遠くない内にまず巴=マミが前回通りなら死ぬ。彼女は孤独を恐れて無意識に仲間を求めてる、だからまどかの友達の美樹=さやかを引き込む
 性質が似てる者達は惹かれ合う、僕等の計画が歪まないなら何の障害もなく僕等は宇宙を億単位で救う希望の力を手に入れられるんだ……よろしくね」

 言いたい事を言うだけ言うとキュウべぇは路地裏の暗闇の中に消えて見えなくなってしまう。
 そしてお菓子の魔女とマミの戦いに介入をして倒し信頼を手に入れ、同時に自分達の邪魔をするほむらの存在に気づく。
 だから適当に人気のない場所へと誘導しているところで蛇の魔女に巻き込まれ、なし崩し的に共闘し退けた。


 そしてほむらのお眼鏡に適った事によってゲン(ガフリオン)は路地裏で話をする事に。


 内容は『この街の未来にとても重要な事』であり、ガフリオンとしても親友であるキュウべぇと自分の計画の障害になりうる存在は知っておきたい。
 たとえたった百年程度で一生を終えるような存在でも小石によってこけてしまうのは珍しくはない。
 何せ自分の父であり先達であった伝承族は馬鹿にしていた地球人や様々な宇宙人の連合軍に敗れたのが良い例として教訓となっている。


「二週間後……この街にワルプルギスの夜が来る。それは私一人でも巴=マミ一人でも倒せるような相手じゃない」

「……共闘か? 確かにキュウべぇからも異様な強さを持つ奴だとは聞いてるぞ、今まで何人もの魔法少女が返り討ちにあったくらいだからな」


 これに関してはキュウべぇが事前に情報を流し込んでいたから吐き出せる嘘である。
 確かにワルプルギスの夜と思わしき魔女の強さを知っているがガフリオンから言わせればとるに足らない相手であった。
 強いが伝承族としての超能力を使えば……それこそ宇宙船の一つでも作り出しぶつけてやれば事足りる程度の認識でしかない。
 別にこの街がどうなろうと知った事ではないが必要なのは『資源の回収』であり、強すぎる魔女は不要な存在と言えた。

 疾風に勁草を知るのにも限度がある。

 必要な果実まで摘み取るような存在はまさに壮大な自作自演には不要すぎる存在としか言えない。
 だからガフリオンはゲンと言う一人の魔法使いとしてほむらが共闘を望むならそれに付き合う心積もりである。

「そうね、アレの強さはどうしようもない位で勝てる見込みは少ない……でも勝てない訳じゃない」

「魔女化する覚悟があれば……か?」

 その言葉にほむらは顔色を変えたがすぐに元の無表情を持ち直す。
 少なくとも知っている事への驚きを意味しているのは間違いない。
 だからかほむらの表情は無表情だがどこか不安や恐怖を持った不思議な顔をした。


「……どうなるのか知っててアレに協力するの、その終わりがアレが守るはずもない約束をしたのを知ってて?」


「でもそれが無かったら今の俺はここにいない。終わりは残酷でもキュウべぇと契約した事で確かな幸せがある
 誰かの為に戦いたい・力が欲しいから・まっ挙げだせば色んな願いを持って契約した奴等を見てきた
 終わりがどれだけ惨めでもその道のりは確かに幸せだったのを知ってる……むしろ化け物になるのは当然なんだろう
 魂を賭けた願いで楽しい日々を幸せの素晴らしさを失いながら知るんだ。この命の絶望を確かに振り払ったのはアイツなんだ」


「そんなの違う、アレはそんな優しい願いなんて持ってない。あるのは自分達の目的の為に私達を利用するだけよ
 魔女を生み出して本当の事を継げずに嘘で塗り固められた奇跡なんて餌で私達を食い物にしていく最低最悪の敵
 アレがいるからどうしようもない苦しみばかり広がって、今日もその餌食になったのが二人いたのは真実だから」


 ほむらの物言いに思わずガフリオンは笑ってしまった。
 確かに自分達の行いは絶対に良い事ではないのは承知しているがそれでもここまで言われれば清清しい。
 助ける気持ちもあるがそれ以上に宇宙の為に死ねと言っているだけに最低最悪な奴と言うレッテルはこの上なく似合う。


「……じゃあ君の願いは何なんだ?」


 ほむらはその問いに背を向けて決別の意を示しながら歩き出す。



「私には大切な友達がいる……この世の誰よりも大切で助けたい親友が」



 そう言い残して姿を消してしまう。
 両腕を組み溜息を吐き出すガフリオンの肩に今まで物陰で監視していたキュウべぇが着地し器用に止まる。
 少なくとも感じ取れる範囲からほむらがいなくなってしまったのを確認したからだ。


「覚えてないのか?」

「じゃあ君はあの子の言った嘘の奇跡で魔女化した子達を全員覚えているかい?」

「ないな……覚えててワプルくらいだな」

「僕等を見習って欲しいな。ちゃんと素質の良いのは覚えてるからね」


 伝承族の寿命から言わせれば地球人の一生など本来は瞬きの間に等しい。
 そんな僅かな時間で覚えられる訳がなくキュウべぇも何の悪気も無くそう答える。
 二人にとって必要なのは『宇宙を救う資源』でありそれ以外は本当にどうでも良いのだ。


「でもいつ話した? 口を滑らすとは思えないが」

「……たぶん時間操作系統だろうね。それで僕等と同じように干渉しているなら辻褄も合うし」


 ガフリオンを覗き込む赤い眼は『消す?』と尋ねているがガフリオンは首を横に振る。
 キュウべぇにとって障害となりうる存在であるほむらを消したい所だがガフリオンが賛同しない。
 その顔は嗤っており悪巧みをしていると言っているような笑顔でキュウべぇも何故か顔がニヤケタ。


「見てみようじゃないか、あの子の大切な友達をとやらを。あとは計画の遂行の為に」


 それは他者を弄ぶ悪人。
 他人の努力を嘲笑う笑顔。
 統一思考による他者を理解出来ない種族と目的の為ならばあらゆる者達を利用する種族。

 二つの種族の笑みがその日の暗闇に消えた。


 それから二週間の間をガフリオンは来る演劇の道具の支度に費やす。


 かつてダイナック=ゲンが身に纏った鎧をちゃんとした物として作り出し、地球の文明では到底作り出せない兵器を製造した。
 その中には拳銃サイズの大きさにまでダウンサイズした生贄砲が存在している。
 キュウべぇの描いた演劇の終わりをするのにもっとも適した兵器としてそれはこの世に作り出された。
 なによりガフリオン自身もまたその演劇でもっとも重要な役所でありミスは許されない。
 でも 難しいこともない面倒なこともない、ただほんの少しだけ手を加えるだけの簡単な仕事なのだから。


 二週間の時間を持って作り上げられた演劇の舞台はそうして開幕した。


 魔女の影響か街は大規模災害に見舞われ市民は避難し、ただ突然の来訪に怯えるしかない。
 されどそんな一般人にはそうとしか見えない存在の正体を知り立ち向かう四人の少女が既に結界の中にいる。


 崩壊した街。


 中に浮かぶ無数の物。


 錆び付いた歯車は何を舞わすのかを忘れ。

 かつて願った願いに破れ希望を失い絶望に飲まれ。

 道化役者達は何を願い伝えたいかも忘れて愚かさと共に踊り狂う。

 逆さの巨人は回らない歯車にその身を吊るし動かない時に生きる。

 あらゆる願いの終わりを意味し、あらゆる努力と希望を無力へと帰す魔女。

 かつて誰よりも誰かの為に戦い続けた少女の成れの果てから始まった物語。

 本能とも呼べるモノから起因する自分と同じ敗者達を救い(取り込み)辿りついた最強の魔女。


 『ワルプルギスの夜』


 壮大な目的の犠牲となった者達は真実の果てに無力を知りてたどり着いた姿の果て。

 苦しみからの救済を願いながらも無力を知る。

 他者を救う願いながらも無力に敗れる。 

 希望を願いながらも無力に屈する。

 幾多もの願いと絶望の果てに無力を知った死者のソレは新たな無力を積み上げんと今ここに幕を開けた。



「流石に最強の魔女だけあって中々だな……ワプルの願いが産んだ対価か」



 既に始まった戦いをガフリオンはただ自分の登場する時間を待ちながら見ている。
 キュウべぇは既に目的の為に行動を始めており今この戦いの場にはいない。

 黄と赤と青と黒の光があまりにも残酷な力の差にも屈せず戦いを続けてる風景。

 それは観衆に『頑張れ』と言う希望を抱かせる一方で時間経過に合わせて『無理』と理解させていく。
 元々制限のある側と制限のない側の戦いではどちらが有利か? など言うまでもない。
 なにより無力を意味するワルプルギスの魔女が相手なのだから無力しか存在し得ないのだ。


「奇跡の対価……本当の願いを奪う、どうしてそうなったのかは誰にも判らないんだ。悪いのは私達だとしても何処から悪かったのか」


 ポツリと呟くゲンの姿をしているガフリオンの隣には真っ青な人型の影が佇んでいる。
 再会を懐かしんでいるのか、あるいは自分をこんな眼に合わせた事への怒りを意味しているのかも判らない。
 でもその使い魔は戦いを眺めるガフリオンに対して何もせず、ただその独白を聞くように佇む。
 おそらく本能とも呼べる部分で姿形は違えど理解しているからなのだろう。


「希望で夢を見た子達がいた。魔女にならずその生涯を終えた子や絶望に負けなかった子もいた……立ち向かえた子もいた
 ワプル……君が宇宙で見てきたのは本当に無力な奴等だけか? 今のように希望を持って立ち向かっているようなのもいた筈だ
 使い魔は自分の行いを保身の為か? もしワプルならきっと違うだろう。なにせ『皆を救おうとした』皆の英雄なんだから」


 ガフリオンの呟きは……吐露はまた続く。


「誇っていいんだ。君達の命はたった数百億年で滅びてしまうこの宇宙を救えるこの世の何よりも力強い光として生きる
 無力じゃない……私達は宇宙には理解されないが君達を理解してやる事もその無力を無力でないと言ってやれる力がある
 だからここで私達の計画にもう一度だけ協力して欲しいんだ……そして君達の舞台に上がるのを許して欲しい
 宇宙に生きる無数の命を向こう数千億年の未来を作り出す為に、この壮大な自作自演の目的を成し遂げる為に」


 使い魔の影の口が少しだけ笑い、それから消えてしまう。
 彼女は理解出来たのだろう。 


 『自分がしてきた事は無駄でも無力ではなかった』と


 それは自分達の命に価値を求めた者が素直な言葉がもたらした奇跡なのかも知れない。



(準備出来たよ)



 だが舞台はまだ幕を下ろさない。

 元凶たる二人はまだ果たしていないから。


「馬鹿な子だ……私達が口に関しては誰にも負けないのを知っていたのに」


 そして役者が揃い行動を始める。


 

 補足説明

 ワルプルギスの夜
 原作では『無数の残骸の集合体』だそうです
 魔女本体は『無力』・使い魔は『道化役者』
 願いに敗れた無力とキュウべぇに踊られた道化と言ったところでしょうね
 本気になれば地上の文明を滅ぼせる強さらしいですが……強すぎるだろう
 この作品だと生贄砲やプロミネンス砲で一撃確殺出来るとして


 奇跡の対価
 キュウべぇが絶望に叩き落す為にしたのかも知れないし、キュウべぇですら干渉出来ない領域なのかも知れない
 今作の場合『皆の住む宇宙を守る為に助けている皆にその功績や努力を理解されない』と言う感じ
 そうなるとほむらの『出会いを変えまどかを助ける』は『出会いは変えられるが最後はまどかが苦しむ』になる
 マミの『助けて』は『助けたいのに助けられる・助けられる立場になると死ぬ』と言った感じか
 『皆が父の話を理解するように』が『父親が自分を理解してくれない』だったりと本当に救われない残酷な現実である
 願いの逆を突きつけられる残酷な法則


 青き円卓
 伝承族の作り上げた銀河を統一する勇者の予言にある地球の事
 銀河の様々な種族がここで集結し生き残りを賭けて結託する場所
 マップスでは遠い昔、外宇宙から来た宇宙人達と人間が交わっている為に宇宙屈指の混血人の巣食う星でもある 
 十鬼島=ゲンはこの星出身でありその一族の末裔であり後に伝承族を倒す
 マップスでは宇宙人の襲来によって統一政府が設立されており、地球人同士の諍いをする余裕がないと言う事になっている
 しかし伝承族に生贄砲の火種にされかけたり、まどかマギカではキュウべぇに眼をつけられたりと不運極まりない



 ワルプルギスの説得については言い訳しません
 ただその戦いの意味を知り始まりを知り、そしてソレを覚えてくれているキャラがいたらああなるのではないかと
 『無力』を知り自分達は『道化役者』でしかないと知ってああなったのにああ言ってやったら
 きっとそれはとても幸せで『無力』である事を否定してやれると思ったからです
 ガフリオンと言う長寿キャラの存在も少しソレを考えたから生まれてきました
 もっと描写を書ける実力があればよかったんですが、自分の実力ではこんなもののようです


 あとチラシ裏からその他板への移動ですが……これって移動したら

 『チラシ裏から』ってタイトルに書くんでしょうか?

 感想が三十越えれたら移動しようかな~とは思ってるのですが


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