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No.27272の一覧
[0] 【習作・ネタ】宇宙生物インキュベータ(マップス×まどかマギカ+独自解釈)[温泉街](2011/04/18 18:57)
[1] 『歩みの始まり』[温泉街](2011/04/18 18:59)
[2] 『辛き道を』[温泉街](2011/04/20 11:03)
[3] 『またここから』[温泉街](2011/04/22 17:27)
[4] 『奇跡の対価』[温泉街](2011/04/25 23:39)
[5] 『変える者』[温泉街](2011/04/30 00:44)
[6] 『青き円卓と魔法少女』[温泉街](2011/05/03 16:24)
[7] 『舞台装置の演劇役者』[温泉街](2011/05/07 22:42)
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[27272] 『辛き道を』
Name: 温泉街◆a77021ce ID:11184927 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/20 11:03
 宇宙崩壊を回避する為にガフリオンとインキュベータは早速研究を始めた。

 ガフリオンが持つ伝承族の記憶の映像をインキュベータ達はそれこそ無数と呼ぶべき数で見る事に専念する。

 インキュベータ達は全員がある種の繋がった思考を持ち、これによって全員が一人の見たものや感じた考えを理解出来る。

 それを最大限に生かして数兆の宇宙が辿った……数えるのも面倒な歴史を見届けひたすらに論理を組み立て続けていく。


「この宇宙は生命体同士の戦争によって滅んでしまった」

「これは宇宙全体が突然冷たくなり凍り付いてしまった」

「一つの惑星の爆発が連鎖的に全てを吹き飛ばした」

「小さなブラックホールの出現と肥大化によって飲み込まれてしまった」

「宇宙の中を生命体が埋め尽くして破裂してしまった」

「小さくなって全てが押しつぶされてしまった」

「突然膨張を始めて全てが何処かに飛んでいってしまった」


 滅びの理由はそれこそ無数だった。

 だが全てにおいてある共通点が存在している事が判明した。



「だが確かなのは全て吹き飛んでしまう事だ」



 宇宙の寿命と言うべきだろう。

 かつてブゥアーを生み出した『最初の文明』のようにいつか宇宙は必ず跡形もなく吹き飛んでしまう。

 どうやっても避けることの出来ない全ての宇宙が辿った最後にインキュベータ達は恐怖するしかない。

 この結論に至るまでで既に数百億年の月日を夕に費やししまっただけに、彼等は時間の浪費を極端に恐れだした。



「早いもので宇宙誕生から数千億年だ……この宇宙がいつ生まれて今がいつになるのかなんて到底知りえない」



 『自分達にあとどれだけの時間があるのか?』

 それが判らない恐怖に彼等はとにかく震え、どうすれば良いのか悩みだした。


「残された時間を計測するのか?」

「いやそれよりも早く延命方法を模索するべきだ」


 そんな恐怖から始まる統一思考の論理は泥沼へと陥っていく。


 どうすればいい?


 何をすればいい?


 誰を頼るのか?


 個体差が僅かしかない彼等の論議は誰もが似たような答えしか見出せない。

 だからどんなに頑張っても時間ばかりが過ぎ去っていく。

 他の惑星の技術や文明を持つ者達の様子を除いても宇宙が崩壊するなど考えている者達は少ない。

 それにそんな事を定理してもそれらは『ありえない』と嘲笑され、誰にも見向きされない絵空事へと消えていく。


「どうする、その研究者達を仲間に引き入れるのか?」


「思考が違えば言い争いになるだけだ……我々だけで遂行するんだ」


 ガフリオンの言葉に彼等はあくまでも統一思考に基づく自分達の考えを優先し仲間を作ることを拒否した。

 下手な仲間を増やし内乱となるのを危惧した彼等は自分達以外をあまり信用せず、その思考に対しても否定的になった。

 無論ガフリオンに対しては別だがそれでも宇宙崩壊を知らない他文明への関心そのものをしないようになっていく。


 それからまた数百億年が過ぎ去るが答えは一向に見出せない。


 誰かに頼ることも出来ず、同じような思考を持ち信頼できる技術力を持つ文明も現れない日々。

 あるのはとにかく延命させる為の手段への模索であり、その考えに固執していくようになった。


 そして時間は無慈悲に追いつく。


「……反応が消えた」

「何のだ?」

「宇宙の端っこで監視していた我々が……一斉に消えた」


 宇宙全体の収縮。

 ビックバンに向けてこの宇宙が縮退を始めた兆しを感知してしまった。

 それはより大きな焦りを生み出す。

 あまりにも明確すぎる終わりの兆しに何故か彼等の思考は焦燥に支配さなかった。


「時間がもうない……一緒に別の宇宙に逃げよう、そこでまた探せば良い」


 ガフリオンは彼等にそう提案した。

 ここで駄目でも別の宇宙へと逃げてそこでまた方法を模索すれば良いと言った。

 次の宇宙への脱出は伝承族であるガフリオンから言わせれば何の問題もない簡単な事でインキュベータ達を引き連れるのも簡単だった。

 同じ目的を持つ仲間としてガフリオンが差し出した手を意外にもインキュベータ達は取らなかった。


「我々はこの宇宙が好きだ……そしてここは我々の故郷なんだ……研究を妥協したくない」


「そんな余裕はない! もう終わりが来る、今なら逃げ切れるんだぞ!?」


 彷徨い別の宇宙へと旅立つのが当たり前の伝承族にとってその思考はまったく理解出来ないものでしかない。

 逃げられる可能性とそこから始められる未来があるのに、敗北した今にこだわる必要性を理解出来ないのだ。

 数百億年も共に進まなかったとはいえ研究を続けてきた仲間をガフリオンは見捨てたいと思わない。


「……良く聞いて欲しい、我々には実は特別な力があるんだ。そしてそれを使えば君を過去の世界へと飛ばす事が出来る」


「タイムマシンがあるとでも言うのか!? そんな都合の良い装置がこの宇宙で完成していたのか!?」


 宇宙は広い。

 だからタイムマシンの製造に着手した文明は多いがその多くが失敗し成功したとしてもそれが歴史を変えるには至らない。

 それに対してインキュベータ達の代表とも言える個体が首を横に振る。

 そして何処からともなく光り輝く鉱石をくわえた個体がガフリオンにそれを手渡す。



「我々は力を得れた……君達伝承族の記憶を覗いて研究した力だ。そしてそれはその一番目で唯一間に合った装置だ」



 ガフリオンの手にある鉱石が淡く桃色の光を放ち、それはやがてより強くなってガフリオンを飲み込むまでになる。



「この奇跡の力を使って君の意識を私達が出会ったあの日へと記憶などを持ちえた状態で逆行させる……それが今回の成果だ
 そしてその鉱石には我々の今回のこの研究といつこの終わりが始まったのかを記録させてある、その中身を過去の我々に渡してくれ」



 ガフリオンの頭の中に数百億年掛けて築きあげられた『奇跡の力』に関する情報が流れ込む。

 数兆の宇宙の歴史を記憶出来る伝承族のガフリオンにとってそれは取るに足らない量の情報だ。

 既に眩い光に飲まれ彼等の姿を確認出来ないガフリオンは見えない眼で彼等を探し手を伸ばす。



「故郷は故郷で我々はここに居たい、失いたくない……だから延命への模索を諦めたくないんだ。彷徨う君には判らないかも知れない
 判って貰わなくていい、だがそれでもどうか過去の我々にそれを届けてくれ。我侭だとしてもこの宇宙を守り抜く為に君を利用させてくれ」



 ガフリオンの身体から力が一気に抜けてしまい意識が朦朧としだす。



「さよなら……我々の友達」



 意識を手放した直後……その宇宙は一瞬にして全てを吹き飛ばした。

 だがそれも大きな次元から見ればちっぽけな光であり数十兆を超える中の一つの光でしかない。

 そこに生きた多くの者達の願いや生活・未来に馳せた希望など知る由もなく。


 その宇宙は消え去った。


 ただ一つの希望を遥か前の時間に託して。


 そしてガフリオンの意識は数百億年前のこの宇宙にたどり着いたばかりに戻ってきていた。

 インキュベータ達の宇宙延命に託した研究の一つは確かに身を結んだのだ。

 たった一人の友と呼んだ異星人を過去の世界へと送り出し、その奇跡を信じて。



「……記憶がある。彼等の託した情報もある」



 宇宙空間の真っ只中。

 普通ならば到底生きられない空間の中をガフリオンは放心状態で漂っている。

 過去の世界に送り出す研究が完成している事への驚き以上に彼等の行為に対して何か思っているからだ。


 彼等はもういない。


 数百億年を映像を見て、宇宙を救う為に共に費やした仲間達はもういない。

 これから出会うのは彼等に良く似たまったく違う存在でしかないのだ。



「……一人くらい居てくれれば良いのに」



 それは一人取り残された事への小さな呟きだった。

 このまま彼等との記憶を胸にこの宇宙を見捨てる事も出来る。

 これから出会う彼等にあって最初にあった彼等の記憶を歪められるのは、ガフリオンには認めがたい現実でしかない。

 だが……託された。



『我々はここが好きなんだ……研究を妥協させないでくれ』



 たった一人の友としてガフリオンには託された物がある。

 彼等がその命と思考で作り上げた宇宙延命の為の切り札である『奇跡を起こす』能力。

 それは思念の力を持って生み出す能力で、現に時間逆行を成功させてみせた。

 代わりに宇宙規模で強い思考や思念を持つ生命体の命を貪ってようやく完成しえた技術だとしても……だ。



「伝えないと……この奇跡を」



 ガフリオンは突き動かされた。

 それは彼が始めて生まれて出会った友と呼べる相手からの頼みだから。

 自分と同じ目的を持った仲間の願いだから。

 もしガフリオンが失うことに慣れていたならば、この技術を持ち逃げしていただろう。


「行かないと、彼等に伝えないと」


 放心状態だったガフリオンの眼に強い意思が宿り、その身体がテレポートによって消える。

 数光年先のあのインキュベータ達が住む惑星へと超能力で跳んだのだ。

 伝承族の超能力を持ってすればその位のワープなど朝飯前である。

 何せ強大になればその能力で宇宙に存在する物質から宇宙船や銀河系すら作り出せるのだから。



「見ない種族だな?」



「遠い未来からこの宇宙崩壊を阻止する為にやってきた君達の仲間さ」



 地獄がここから始まる。

 宇宙全土を巻き込んだ壮絶な地獄が。








 補足説明

 時間逆行
 マップスの世界では精度の良し悪しは二の次だとしてもタイムマシンが実在する
 インキュベータの『奇跡の力』はまどか原作中に一人の少女に過去への逆行能力を与えている


 インキュベータ
 ほむらがキュウべぇの事をそう呼んだ(孵卵器と言う意味で人工孵化装置の事・一応自称もしている)
 ソウルジェムの劣化から生まれたグリフシードから卵から孵るように出てくるのでピッタリと言える
 何故なら魔女はキュウべぇ達と契約して魔法少女にならねば生まれないのだから、奴等は文字通り『孵す者』なのでしょうね
 全員で一人であり一人で全員であり、無数のキュウべぇが存在するがその全てが繋がった思考を持つ
 統一思考は今ならバジュラやBETAと言えば判って貰えるだろう
 『宇宙全体の資源(エネルギー)枯渇を阻止し宇宙の寿命を延ばす事』を目的としており、その為に活動している異星人
 二話時点ではあくまで『宇宙の寿命による崩壊を阻止する為に』活動している


 外宇宙への脱出
 ブゥアーを生み出した文明は『民族全てを逃がすようなワームホールは作れない』と発言している
 つまり極少数ならば別の宇宙への脱出は可能であったが彼等はあえてそれをしなかった


 まどか達が出るのはいつになるか……だってマップスから見たQB達の話だから


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