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No.27174の一覧
[0] 爺様たち、乱入(IS+ガンダムW)【微アンチ】[伝説の超浪人](2012/03/04 01:23)
[1] ブラッドの決意[伝説の超浪人](2011/04/30 12:50)
[2] 戦乱の予感[伝説の超浪人](2011/08/03 00:31)
[3] エレガントな交渉と交渉[伝説の超浪人](2011/04/30 12:49)
[4] デートと刺客[伝説の超浪人](2011/05/24 00:14)
[5] 逃亡と黒い影[伝説の超浪人](2011/06/05 21:52)
[6] 動く時代[伝説の超浪人](2011/08/03 00:32)
[7] 学園と砂男[伝説の超浪人](2011/08/07 15:45)
[8] VS銀の福音[伝説の超浪人](2011/08/07 15:43)
[9] 龍と重腕の力[伝説の超浪人](2011/08/28 17:45)
[10] 彼女の分岐点[伝説の超浪人](2011/09/19 23:33)
[11] ドキドキ☆学園探検![伝説の超浪人](2011/10/01 23:04)
[12] 番外のお話(本編とは全く関係ありませんよ!)[伝説の超浪人](2011/12/12 00:00)
[13] 無人機の驚異[伝説の超浪人](2012/03/04 01:22)
[14] ゼロの幻惑[伝説の超浪人](2012/03/31 15:33)
[15] 欲望と照れる黒ウサギ[伝説の超浪人](2012/09/09 13:45)
[16] 飲み込まれる男[伝説の超浪人](2012/11/08 23:53)
[17] 初の共同作戦[伝説の超浪人](2013/04/07 23:37)
[18] 進撃のガンダム[伝説の超浪人](2013/05/11 23:31)
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[27174] 戦乱の予感
Name: 伝説の超浪人◆37b417bc ID:5424a8a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/03 00:31
アメリカは震撼した。理由は男性のISが出現した、それだけのことだがそれは今の世の中を変えうる事態だった。

民間の多く、特に男性は男性用IS(正確には男性でも扱える、であるが)トールギスを支持し量産してほしいと言う声が連日ネットやTVや雑誌などで多く取り上げられ、アメリカ政府への要求は日に日に増していった。またパイロットであるブラッド・ゴーレンがファンである30歳を超える男性たちを多く引きつけているというのもあっただろう。

アメリカ政府は会議を繰り返した。新型ISは女尊男卑の世の中を破壊しうる意味を持つだけに男性からは驚異的な支持を、女性からは否定の意見を集め1回の会議では纏まるはずもなかった。

しかし女尊男卑の世であろうと政府中枢はやはりほとんどは男性中心だ。たかだが10年で政権を全て女性優先にさせるなどという愚かなことをするほど、政治家たちは甘くはない。

それのおかげかアメリカ政府は軍事企業ユーコンにISコアを数機渡すことが決定した。全てのISコアをユーコンに送ることはさすがに無理な理由がいくつかあった。

1つはユーコンに全ての戦力を集中させるのはいかがなものか、というものだ。アメリカの軍事企業はユーコン1つではない。財団直結なのはユーコン1つだが、何人かの議員と繋がりをもつ他企業もあるのだ、そうそう認められるものでない。

2つ目は第三世代型ISの製造だ。アメリカでは第三世代型ISが2タイプ進められる予定がたっている。

その内の一機はイスラエルとの合同開発を既に決定しており、今のタイミングで開発中止した場合外交問題が発生するため、中止は非常に難しい。(その機体に使われるISコアはアメリカからの物)

またトールギスの基本部分を政府に発表した際、非常に問題であると一部の者たちが騒ぐ部分があった。そう、トールギスはISの防御の要とも言うべき「シールドバリアー」と「絶対防御」が無いことが、大きな原因だった。

ISはその2つの機能によりパイロットを高確率で保護できるという部分の評価が非常に高い。

一昔前の戦闘機同士の戦いの際、撃墜された時のパイロットの生存率はお世辞にも高いとは言えなかった。特に熟練パイロットやエースパイロットを失うことは機体以上に損失が大きい。

当然だ。戦闘機の新人パイロットは初出撃で生き残ることは難しい。例え生き残ったとしても出撃すればするほど生存率は下がっていく。故に熟練パイロットは数が少なく、腕の良いパイロットが貴重なのは当たり前だった。

今までのISにはパイロット保護を充実させた機能を搭載させていたがトールギスにはそれがなく、この10年でISの安全性に慣れ切った者たち―特にISで地位を上昇させた女性や美味い汁を啜った者たち―には前時代の兵器に見えたのだ。

加えてトールギスが非常にパイロットを選ぶ機体であったことも原因だった。もしトールギスでなく普通の高性能な機体だったならアメリカの第三世代型として生産されていたのかもしれないが、それは所詮可能性の話であり、現実は異なるのだから意味はない。

しかしそれを差し引いても、男性が使えるISというのは非常に魅力がある。

またトールギスの装甲に使われているガンダニュウム合金の防御力も注目が集まり、ユーコンから(正確にはドクターJたちからだが)ガンダニュウム合金の生成は無重力空間でしか行えないことがエス・チャイルド財団と、財団と繋がりの深い一部の政治家に情報がもたらされた。

このことからアメリカ政府(正確に言えばエス・チャイルド財団だが)は宇宙開発に乗り出すことを決定した。ガンダニュウム装甲でISを作りだせば例えシールドエネルギーがなくとも十分すぎるほどの防御力を誇る代物は、ほぼ確実に多大な利益を財団にもたらしてくれるだろうと確信していた。

IS開発は途方もない資金を消費する。しかしISが出現してから大きな戦争が無くなった分新型を製造しても、それに見合うだけの利益が生み出せない。

戦争は多くの兵器を消費し、それを補うために多くの兵器を製造する。それの繰り返しが多くの利益を生み、財団は富を築いてきた。だがISのおかげで大規模な戦争がなくなり、大きな利益を生むことが無くなっていたところでトールギスの出現だった。

つまりトールギス、いや開発者の老人たちは財団そしてアメリカ政府にとっての金の卵なのだ。

「人類は宇宙、そして月面開発を行うべきである」という建前で議員と国民に説明し、ガンダニュウム合金製造のため月面に行くことを決定させた。

「……ということか。それでその4つのISコアで新型を作れ、ということじゃな?」
「はい。できればトールギスのようにごく限られた人間しか扱えないような機体ではなく、それでいて高性能の機体を財団は要求しています。その4体の機体を元に量産機を作りだすので、それぞれ特徴がバラバラであった欲しいそうです。もっとも量産機とはいってもISコア自体ないので数は揃えられませんが」
「ま、コアの生成の目処はたっておらんからな。仕方あるまい」

かつて大国と呼ばれた国でもISコアの数は20も持っていない。ISコアは現在篠ノ之束博士しか作れない以上各国のコアの数は増えるはずがない。

では新しい兵器を開発してはどうだ?と民間人は言うのかもしれない。

だが新兵器とはそんなすぐにできるものではない。ましてやドクターJたちの兵器―MS<モビルスーツ>―を作るとしたら、余計に不可能だ。

モビルスーツは16m前後であり、核融合炉を動力として動く人型機動兵器だ。

まずこの世界では核融合炉は未だ実験レベルであり、またできたとしてもモビルスーツに搭載するほどの大きさを作りだすことは技術的に不足している。できるのはそれこそ数年、いや10年以上先になるであろう。リーブラ内部にあるビルゴのものを使わない限りは。

またコンピューターや各部品に用いる精密部品がない、と言うのも問題だ。ISコア自体は高性能だが、国家レベルでも開発できない以上それは部品があるということにはならない。

ISとMSとのサイズ差は実に10m以上。サイズが違い過ぎてパーツを共有できず、又すぐにISの技術をMSに応用させることも難しい。もしその2つのサイズが同じくらいならば話は別だが。

もし最初にMSを作ったのなら、開発もそちらに移行していただろう。だが最初に作ったがISだったことが人々、いや男たちの魂に火をつけてしまいIS以外の兵器のことを考えられなくしてまったのだ。

例えて言うなら、ある人と素手のみの喧嘩をしたが長い間負け続けた。それから負け続けた方が別の物を用いて勝つよりも、やはり同じ条件で戦い勝った時の方が何倍も嬉しいものだ。そしてその喜びは屈辱を味わった時間が長ければ長いほど大きくなっていく。

つまりISにはISで戦い、勝った方がよい。酷い言い方ではあるが、こう言えば分ってもらえるだろうか?

それもトールギスはただの勝利ではなく、圧倒的な勝利を収めたのだ。その喜びは余計に大きくなり、トールギスに期待を集め、アメリカではブラッド・ゴーレンは今誰よりも知られる男となった。

「それで4機の新型のほうのプランのアイデアをもらいたいのですが……」
「それなら既に決定している。おそらく話が来るじゃろうと思って、先に決めておいた」
「は……話が早くて助かります。で、どのような機体なのでしょうか?」
「そこら辺は皆を呼んで話そう。2度手間は避けたいのでな」

ニヤリと笑ったドクターJは、妙に自信ありげだった。

その後研究チーム+ドクターJたち5人の話し合いが行われていた。

「話を纏めると、隠密性と接近戦に特化しているガンダムデスサイズヘル、対多数戦を想定した高火力のガンダムヘビーアームズ、白兵戦用装甲強化型にして指揮能力に優れているガンダムサンドロック、白兵戦に特化したアルトロンガンダムの4機にしたいのだが、よろしいか?」
「異論はありません」

研究チームのリーダーである男の言葉に皆は頷いた。

ドクターJたちは以前似たような状況で防御特化のメリクリウスと攻撃特化のヴァイエイトを製造し、その2機の特徴を備えたコスト度外視の量産機<ビルゴ>を作りだす原因を生みだしてしまった過去を持つ。

もしあの2機をまた製造した時、同じ結果になる可能性を懸念したドクターJたちは敢えてガンダムを4機製造することにした。

そして今回ウイングガンダムを見送ったのはわけがあるが、それは後に語ろう。

今回の4機もトールギス同様にISコアを書き換えた上での製造だ。

書き換えた部分はブラックボックス部分の開発者による特別権限と遺伝子登録を。現在判明している部分は学習機能とデータ領域と擬似人格と形態移行とシールドエネルギー(絶対防御)、コアネットワークにワンオフ・アビリティー、そして装飾品になる待機形態といった多くの部分を削除した。

本来の機能で残っているのはハイパーセンサーと直接戦闘に関係するシステムぐらいなものだ。

そしてその削除部分を機体の反応性の向上、ハイパーセンサーと通信・索敵・分析処理機能の強化といった直接戦闘に関係する機能のみを大幅に強化したのだ。

ブラックボックス部分は当然として、他の部分はなぜここまで削る必要があったかといえば、いくつか理由がある。

判明している部分の多くは無人機としての活動を行うことを可能とするもので、無人機を認めないドクターJたちはこれを酷く嫌い、削除した。

またデータ領域は別の場所から武器を転送させるもので、戦闘の際選択肢は増えるが整備が非常に面倒であるし武器庫が破壊された時ろくに闘えなくなりました、なんてふざけた結果になるのならば排除してしまえという考えからだ。

パイロットの装飾品に変化する待機形態はたしかに便利だ。パイロットが自身の機体を守るという考え方は間違っていないし、例え襲撃されたとしてもISの性能ならば蹴散らすことができるだろう。だがISは国の力そのものにも関わらず、一個人に所有させるのは多大な問題があった。

もしIS所有者が悪用した場合止めるまでに甚大な被害を被ることとなる。また敵国に寝返る、などと言ったことも考えられる。

それに10代半ばという若い年齢でISを所有している代表候補生が、許可なく民間の施設や民間人を巻き込んで私用(喧嘩など)に使うなどといった報告も存在している。

そんな精神が未熟な者たちに兵器を与えることは本来あってはならないのだが、女性にしか扱えないISという兵器がそうさせる、いやそうせざるをえなかったのだ。

故にトールギスに待機機能は搭載されなかった。ドクターJたちはそんな物をつけるぐらいなら性能の向上をと言い、アメリカ政府はトールギスという男の希望を一個人に所有させるのを避けたのだ。

ブラッドを信用してないなどといった次元の話ではない。トールギスは一個人に兵器を持たせる(しかも通常のISなどとは比べ物にならないほど貴重な代物)物ではないからだった。

また擬似人格による形態変化は、確かに戦闘中性能が向上する可能性があるだろう。だが形態変化、特に第二形態のほとんどは兵器の運用が変化し酷く不安定で使い勝手が悪くなる可能性が高いという報告も入っている。

想像してほしい。戦闘中突然武器が変化し性能が上がった。しかし使い方が変わり、機能が増えたので新しく覚えて戦ってほしい。それで戦えなどというのは、所詮戦いを知らない者の言い分でしかない。

戦士のための機体。そのためにISコアの機能を戦闘に特化させたのだ。パイロットを死から安全に守り、戦闘によって進化した機体と擬似人格のデータを開発者である我がものとし、そして人を必要としない無人機を生みだす。

そんな本来のISから純粋に闘うための兵器としてトールギス、そしてガンダムを彼らは作りだそうとしていた。

「何か質問はあるか?」
「はい」

一通り各ガンダムの特徴の詳細を話した後、1人の男が手を上げた。

「もしやその4機にも自爆装置をつけるのですか……?私はあまり気が進みません」
「無論付けるつもりだ。あのトールギスのようにな」

財団にも報告していない武装がトールギスにはあった。パイロットの任意で作動することができる武器、自爆装置だ。

ドクターJたちはその装置をブラッドに話した。その時の言葉は、こういったものだった。

『自爆装置?……機密保持のためでしょうか?』
『それももちろんある。が本来の目的は違う。力を持った者が背負わなければならない覚悟のためだ』
『背負わなければいけない覚悟……ですか?』
『そうだ。そして自爆装置もお前が必要と思った時使いたいときに使えばいい』

H教授はこの言葉をかつてオペレーションメテオに出撃する前にカトルに送ったものだ。その言葉は短いながら、深く考えさせられるものでブラッドは少し押し黙った。

『どうした?怖くなったか?』
『……まさか。私はISが出てきてから死んでいたも同然でした。そしてそんな私を生き返らせてくれたのが貴方がたであり、トールギスなのです。ありがたく使わせていただきます』
『お主も中々狂っておるのぅ』
『人間狂って結構!それが戦いというものだ』

その会話を手を上げた科学者に聞かせると、彼は絞り出すように呟いた。

「私には、わかりません……覚悟なんてものは……」
「分からなくて結構。戦士には戦士の覚悟があり、ワシ等にはワシ等の覚悟がある。それは大きく違うようで、似ているのじゃがな」
「それは……一体?」
「自分で考えろ」

場に沈黙が流れる。が、研究チームのリーダーが手を打った。パンッという音が良く響く。

「ドクターがた、もう始めましょう。時間は有限ですから」
「全くだな。だがパイロットのことも忘れるなよ?いくらできたとしてもパイロットがいないのでは意味が無い」
「もう目星は大体付いております。おまかせください」

そう言って、場は慌ただしく動き出す。多くの男たちの思いを、その肩に乗せながら。

●  ●  ●

アメリカにトールギスの名が広まっていくらか時が経つと、ある事態がユーコンを襲った。

そう、スパイの侵入である。

全く見知らぬ人物がユーコンに侵入しようとするが、あっけなく数人捕まる。それと並行してユーコンにハッキングしてくる。

だがドクターJたちは動じない。

「こんなこともあろうかと、あらかじめトールギスのデータを入れたコンピューターは回線を切っておいたわ。いくらハッキングしても無駄じゃ」

元々情報を隠すことに関して5人は非常に上手い。OZが5人を確保しようとした時もガンダムの情報は一切与えなかった。

しかも5人がいる所はユーコンの社員でも限られた者しか知らない地下十数階下である。そうそうばれることはないし、侵入経路も非常に限定されるので迎撃に有利な場所なのだ。

またユーコンはアメリカでも有数の巨大な企業であり政府との繋がりも強い。現在はトールギスも保管されているため警備は企業としては異常なほど厳重であり、突破するのはほぼ不可能に近かった。

そう、ISを用いての正面突破でない限りは。

ここ連日、所属不明機のISが何体かユーコンに襲撃をかけてきたのだ。

元々ユーコンにあったISはISコアを抜かれ、今はドクターJたちに預けられているため碌な戦力がない。

そのためユーコンがISに対抗する方法は非常に限られている。

対IS用ミサイルにビーム砲、そして最大の戦力……トールギスだ。

最初は1機のみで攻めてきたのだが、日が経つにつれて同時に3機襲撃してきたりしたのだが。

しかし敵パイロットはブラッドに劣る者が多かった。

ISが出現して以来各国は大規模な戦争を行わなかった。世界は平和になりISは力の象徴と扱われたが、実際使われることは少なかった。

それの弊害かパイロットたちの実戦経験は非常に少なく、またISの特性上人を殺し、またパイロット自身が死の恐怖に晒されることがほとんどなかった。

ISパイロットは特殊な訓練を積んでおり、生身でも並の軍人なら倒せるほどだ。

だがそれでも実戦を経験していない者が実戦の恐怖をそうそう克服できるはずがないのだ。

トールギスの全身装甲とその性能は敵パイロットに恐怖を与え、恐怖は動きを鈍らせた。

恐怖は動きを鈍らせ、判断を遅くし、選択ミスを引き起こす。一方トールギスのパイロットであるブラッドは戦闘機のパイロットとして、いくつもの死線を乗り越えてきた経験がある。

敵パイロットの殺気を装甲越しに感じ取り、敵を討ち取る。それは言葉にすれば簡単だが、実際はとても難しいものだ。

敵の中には某国の最新鋭機である第3世代型ISも混じっていたが、それもトールギスの前では力不足であった。兵器はその性能だけで決まるものではない、パイロットで性能の差などいくらでも埋められるのだ。

元々トールギスの性能の方が上にも関わらず、敵ISはパイロットが原因でその性能を引き出すことのないまま敗北していった。

「パイロットが性能を引き出せなければ!」とどこかのパイロットが戦闘中口にしていたが、まさにその通りである。そんなことでは勝てるはずが無いのだ。

絶対防御のおかげで生きていた敵パイロットの尋問は政府が行っているが、有力な情報は得られていない。襲撃されて良かった点と言えば、破壊したISからISコアを得たこととブラッドのトールギスによる実戦経験を重ねられたことだ。

「しかしこうも襲撃が多いのでは、家には帰れませんな」
「新型ができるまでには、まだ時間がかかる。しばらくはお前に頑張ってもらうしかないな」
「簡単に言いますな」

ブラッドは飲み物を飲みながら、ドクトルSの言葉に苦笑いした。この老人たちは言葉をオブラートに包む、なんてことをはしない。むしろここまでスバッと言われると呆れではなく好感に変わりそうだ、とくだらないことをブラッドは内心呟いた。

そこで頭に響くような警戒音がユーコン社全体に響いた。この警戒音が教える事は1つ、敵機が襲来してきたのだ。

『ユーコン社にIS3機接近中、直ちにトールギス発進せよ!』
「やれやれ、しつこい奴らだ」
「早く片付けてこい。ガンダム製造の邪魔になる」
「フッ、了解した。トールギス、ブラッド・ゴーレン出撃<でる>ぞ!」

上空にトールギスを待機させる。そこに今までに見なかった外見のISが3機トールギスの前に現れた。

形からして異形なISだった。深い灰色で黒に近いそのISは手が異常に長くつま先より下まで伸びている。首がなく肩と頭が一体化したようなその機体は、トールギスのように全身装甲であった。

普通のISより大型なそれはゴリラの様な姿勢をしており、その姿勢を支えるためなのか全身にスラスターを搭載しているのが外からでも確認でき、両腕には4つのビーム砲を搭載している。剥き出しのセンサーレンズが不規則に並んだその姿は、不気味の一言であった。

「念のため警告する。貴様たちがここで投降すれば、こちらは受け入れる準備がある。直ちに投降しろ、でなければ撃墜させてもらう」

だが敵機の反応は皆無だった。それはまるで無機物を相手にしているかのようだった。

3機の敵機のセンサーレンズが不気味に動き光輝いた次の瞬間、腕のビーム砲をトールギスに向け、ビームを一斉に放った。

「やはり受け入れるわけはないかっ!」

量産ISの出力を超えるビームがトールギスを襲う。その射撃は正確であったが、トールギスはその機動性をもって回避する。

3機が固まってビームを打ち出していく。その悉くを回避するトールギスは3機にD・B・G<ドーバーガン>を放つが、3機は四方に回避した。

「機動性は第2世代型より上か…ッ!」

その機動性は今までブラッドが戦ってきた第2世代型よりも高く感じる。だがその動きと正確な射撃は、ブラッドの中で疑問を生みだした。

「(不気味だ……妙に機械じみているような……)ぐおお!」

強力なビームであろうが、当たらなければ意味はない。トールギスはビームを回避しながら、D・B・Gを放つ。その射撃はこの短い間で敵機を捉え始めていた。

「奴はトールギスを乗りこなし始めたようじゃな」
「思ったよりも優秀なパイロットだったようだ。それよりも、あの敵ISの動きは…」
「おそらくは、お前さんの考え通りじゃろう。全く忌々しいことじゃ」

トールギスの戦況をモニターで見守るドクターJたちは、揃って眉を顰めていた。その理由は、同じくモニターを見ていた者たちではわからなかった。

敵ISは長い腕をブンブン振り回しビームを打ちながら接近戦を仕掛けてくるが、技術も何もない攻撃はトールギスを捉えられずビールサーベルでシールドバリアーと共に片腕を切り落とす。

がその隙を狙ってもう1機が背後からトールギスにしがみ付いた。

「なにっ!」

それに乗じて腕を1本失った敵ISが正面から抱き付いてきた。そして最後の1機は両腕のビーム砲をトールギスに向けている。味方ごと撃つつもりなのだ。

「良い覚悟だ!だが私のトールギスは負けーんッッ!!」

ブラッドは2体に挟まれたトールギスの背部バーニアを全開にすると、抱き付かれた状態のまま宙を駆けた。

放たれたビームは空を切り、トールギスの機動に振り落とされた2体をトールギスはビームサーベルで切り裂き、爆発を起こした。

 そのままビームサーベルを出しながら、残りの1機に迫る。ビームを撃ちだしてくるが、トールギスはそれを回避し続ける。懐に飛び込んだトールギスのビームサーベルを避けようとする敵ISだが。

「遅いな!」

機動性で上回るトールギスのサーベルの方が早く、最後の1機を戦闘不能に追い込んだ。

煙が噴き出す敵の傍で佇むトールギスの中のブラッドは、顰めた表情を浮かべていた。

「妙だ……なんだったのだ、この敵は……」

不気味な敵に違和感を感じていたブラッドの口元が血で濡れていないことに、本人は気づいていなかった。

●  ●  ●

トールギスが倒した敵ISは世界を驚愕させた。なぜなら、そのISは無人だったのだ。

ISは人が乗らなければ動かせないという前提を覆し、しかもそのISは未登録のISコアを搭載していたのだ。

世界初の無人機に、未登録のIS コア。これだけのものを作り出せる者といえば、1人しかいない。

篠ノ之束博士。今までにも数々の大事件を起こし、世界を変えた彼女が今回の襲撃犯であろうと、世界会議に参加した各国上層部は決めつけた。

この事は某国で会見の時口を滑らせた議員により、民間でも急速に広まった。

第2世代型を超える無人機。そしてその無人機3機を同時に撃破したトールギスとそのパイロットであるブラッド・ゴーレンは世界中で大々的に宣伝され、知らない者はほとんどいなくなっていったのだった。

数日後日本でISを起動させた少年が現れた報告があったが、日本以外ではそれほど大きな話題にならなかった。

タイミングが悪かったのだろう。容姿端麗なブラッド・ゴーレンとトールギス、無人IS、そしてアメリカの宇宙開発といった情報のほうが世界の注目を集めたのだ。

かといって全く彼のことが無視されたわけではなく、その少年は無駄な問題を避けるためにIS学園に送られることが決定した。そこは国の法律が及ばない場所であり、一時的な保護をするには便利な場所であった。

その少年の名は、織斑一夏といった。

おまけ

「閣下、こちらが調査結果となります」
「ごくろう」

部下の女性に調査結果のレポートを受け取った閣下と呼ばれた男は、かなりの速度でページをめくっていく。

そこにはアメリカの宇宙開発の詳細、アメリカ内陸にある巨大建造物、そしてトールギスのことなど様々だった。

見終わったレポートを部下に返し、男は窓を開ける。すると小さな小鳥が手袋をつけた男の手に止まる。それを男は愛おしそうに眺めた。

「無人機か……例え世界が変わっても、人は変わらないということか……」

少し表情を暗くした男は、背を向けたまま部下の女性に声をかける。

「すまないが、そこに表示されている技術者たちを至急召集してくれたまえ。それとそこに表示されている資金もだ」
「こ、これほどを……ですか?」

その資金額はヨーロッパ貴族出身で多く構成されているロームフェラ財団に所属している彼女でも驚く数値だった。

「今までのままなら傍観しているつもりだったのだが……無人機が出てきた以上そうもいかなくなった。それはそのために必要なものだよ」

男が手を動かすと小鳥は窓を出て、空を駆けて行く。その光景を見て男は薄く微笑んだ。

「歴史は無人機で生みだすものではない、人が紡いでいくものなのだ。そのための資金であり、技術者たちであり、機体なのだ。わかってほしい」
「はい。トレーズ閣下の御心のままに」

ロームフェラ財団幹部であり、財団の顔でもあるトレーズ・クシュリナーダは部下の言葉に微笑んだ。

そしてその視線はモニターに表示された、ある機体を見つめていた。

「さて、これから忙しくなるな……」







あとがき
ファース党、セカン党、オルコッ党、シャルロッ党、ブラックラビッ党……様々な党があるのは諸君らも知っている通りだ。

だがここであえて私は新たな党を結成する。そう、それは「エレガン党」だ!

トレーズ閣下は別に党の結成を望まれたわけではない。だが我々はトレーズ閣下の忠実なる兵として、他の党に負けるわけにはいかないのだ!

兵士たちよ、今こそ立ち上がるのだ!我々の手で閣下を頂点へ導くのだ!!

党員になりたい者は「D・B・G<ドーバーガン>!D・B・G!」と書き込みをするのだ!1人でも多くの同士が集まることを期待する!

セリフを使わせてもらったy.h.さん、巣作りBETAさんには感謝の言葉を送ろう。

以上、OZのレディ・アンからだ。



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