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No.27174の一覧
[0] 爺様たち、乱入(IS+ガンダムW)【微アンチ】[伝説の超浪人](2012/03/04 01:23)
[1] ブラッドの決意[伝説の超浪人](2011/04/30 12:50)
[2] 戦乱の予感[伝説の超浪人](2011/08/03 00:31)
[3] エレガントな交渉と交渉[伝説の超浪人](2011/04/30 12:49)
[4] デートと刺客[伝説の超浪人](2011/05/24 00:14)
[5] 逃亡と黒い影[伝説の超浪人](2011/06/05 21:52)
[6] 動く時代[伝説の超浪人](2011/08/03 00:32)
[7] 学園と砂男[伝説の超浪人](2011/08/07 15:45)
[8] VS銀の福音[伝説の超浪人](2011/08/07 15:43)
[9] 龍と重腕の力[伝説の超浪人](2011/08/28 17:45)
[10] 彼女の分岐点[伝説の超浪人](2011/09/19 23:33)
[11] ドキドキ☆学園探検![伝説の超浪人](2011/10/01 23:04)
[12] 番外のお話(本編とは全く関係ありませんよ!)[伝説の超浪人](2011/12/12 00:00)
[13] 無人機の驚異[伝説の超浪人](2012/03/04 01:22)
[14] ゼロの幻惑[伝説の超浪人](2012/03/31 15:33)
[15] 欲望と照れる黒ウサギ[伝説の超浪人](2012/09/09 13:45)
[16] 飲み込まれる男[伝説の超浪人](2012/11/08 23:53)
[17] 初の共同作戦[伝説の超浪人](2013/04/07 23:37)
[18] 進撃のガンダム[伝説の超浪人](2013/05/11 23:31)
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[27174] 欲望と照れる黒ウサギ
Name: 伝説の超浪人◆ccba877d ID:b0c450af 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/09 13:45
フランス国内最大の軍事企業デュノア社。都市部から少し離れた場所に本社があり、工場・研究所などもまとめてあるため間違いなくフランスでは最大規模の軍事企業である。

デュノア社は10年前に突如出現した機動兵器ISにおける産業により大きく拡大を果たした軍事企業である。ある意味で成り上がりに近い企業ではあったので、色々と黒い噂も絶えないことでも有名であった。

――――が、噂は噂のままで、表沙汰にはなってはいない。

しかしながら肝心のISの方は第2世代型IS以降の開発が滞っており、米国で開発されている新世代ともいえるISはもちろん、第3世代型すら開発の目処が立っていないのが現状であった。

これをなんとか打開するためにあらゆる手段・開発が行われた。秘密裏にだが社長の隠し子をも利用しての策だったのだが、結局主だった成果を上げることがないまま時が過ぎていく……そう思われた矢先、デュノア社は思わぬ拾い物を手に入れることとなる。

そしてそれは本社でもほとんど知る者のない地下の格納庫に運び込まれ、徹底した統制を行い「拾い物」を解析していた。

その地下格納庫に2人の男女が入ってくる。よほど地位の高い人間なのだろう、地下格納庫で作業をしていた作業服の者たちとは違い、見るからに高級品と分かるスーツ姿で地下格納庫を悠然と歩いている。

そして2人は解析していた拾い物の前で一旦止まる。拾い物は10mほどの大きさで、見るものを威圧するかのような特徴的な外観であった。まるで物語の中に出てくるロボットの外観そのままなそれは、その筋の者が見たら興奮するようなデザインである。

「……やはりこうして見ると、とてもISには見えんな」
「はい、社長。ですがISに間違いないようです」

社長と言われた男の一見冷静そうな声は興奮を隠しきれないのか、注意して聞くとどこか上擦っているようである。

その男は硬そうな癖っ毛の薄い金髪が首の後ろ辺りまで伸ばされており、ゴムで1本に纏めている。20代で通りそうな容姿の男だが、実際の年齢は40代手前である。

彼の名はヴァン・デュノア。彼こそデュノア社の現社長であり、シャルロット・デュノアの実父であり、技術者でもある男だ。

彼の容姿はIS学園に所属している生徒ならこう思うだろう。

『シャルロット・デュノアにそっくりだ!』と。まるでシャルロットの男装姿をそのまま成長させたような容姿を持つ男、それがヴァン・デュノアである。

選ばれた数人のスタッフが解析したデータを、秘書らしき女性が手持ちのコンピューターを操作し隣に立っているヴァンに見せる。

「形式番号XXXG-00W0 名称はウイングガンダムゼロ 装甲はガンダニュウム合金と言われるもので間違いないと思われます。全長10.2m 重量4.88tで、出力は今までのISとは比べられないほど高く、段違いです」
「動力はISコアだけではないんだな?」
「はい、恐らく……核と思われます。しかも核分裂よりも上の出力であるようです」
「ということは……核融合か」

核融合は未だ実験室レベルでしか成功しておらず、実用化には程遠い代物である……というのが常識であるはずなのだ。

しかしデータを見るとどう考えても核分裂ではなく核融合でしか得られない数値を示している。

10mほどの機動兵器に搭載できるほどのサイズの核融合炉を完成させたという事実だけでも動力をISコアにほとんどを頼り切っている現状を覆しうる技術である。

ISコアのみの動力の出力を競技用に設定しているとはいえ、シールドバリアーと大出力ビーム兵器を併用すると長時間戦闘できないのが今のISの現状である。これらの燃費の悪さは技術者たちにしてみれば非常に頭の痛い問題である。燃費の悪さでもっとも顕著な機体といえば織斑一夏の<白式>であろう。

「………」

ヴァンは秘書から受け取ったデータを険しい表情で操作し続ける。操作している指先はどこか粗さがあるように秘書には感じられた。

その原因は秘書にもなんとなく理解できる。今まで自分たちが開発に後れをとっていた
次世代機のデータの数値よりも遥かに高ければそうもなろう。実際秘書自身ウイングゼロのデータを見たときは研究班に何度も確認してしまったほどである。

「……基本性能がデタラメだな。このツイン・バスターライフルに目が奪われがちになってしまうが、それ抜きでも現状のISを破壊するにはお釣りがくる性能だ」

ここでドクターJたちと篠ノ之束の違いが表れたといえる。もしこのウイングゼロを造ったのが束ならば数日でヴァンたちに解析されることはありえないであろう。彼女は身内以外には超が付くほどの秘密主義だからだ。

しかしドクターJたちは機体自体に解析できぬようロックをかけるということはあまりしていなかった。

A.C.ではヒイロを始めたガンダムパイロットたち自身に整備をやらせるためにもロックはかけていなかったし、奪われようとした際はパイロット自身に自爆するよう訓練させ、実際にやらせていたからだ(とはいえ自爆して10m以上の高さから地面に叩きつけられても死ななかったり、自爆前に機体から降りたり、姉の様な存在に拳で殴られ思いとどまったり、自爆すらできなかったり、そもそも自爆する気なんてなかったりする5人だったが)

また敵側もガンダムを悪しき象徴として解析するどころか射撃の的にした後ほったらかしにしたり、海に沈んでいるにも関わらず無視したりと散々な扱いであった。

しかしこの世界でのガンダムの重要性はかつての比ではない。機密性で言えば、束の方がドクターJたちよりも優れていると言えよう。

「同感です。ですが私はこの数値が信じられません。武装に関してはほとんど全てが一撃で絶対防御を貫いてパイロットごと消滅させることができます。これでは競技では使用ができませ……」
「何を言っているんだ、お前は?」

ヴァンは心底呆れているような視線を秘書に向ける。秘書はその視線にビクリと体を震わせて、言葉を切ってしまった。

少しおびえた様子の秘書からデータへと目を移したヴァンはそのまま言葉を紡ぐ。

「これはそういう機体ではない。明らかに……戦闘用、いや『戦争用』というべき代物であることは間違いないだろう。しかし……このコックピット部分のデータはなんだ?ISコアの自己進化ではないようだが?」
「……あ、はい。それは未だ解析中ですが、今までに判明しているISの機能とは全く別物のようです。もしかしたら何らかの演算機能ではないか、という意見もある程度しか現状では……」
「演算機能か……」

ISコアは自己進化・最適化が備わっているのは常識であるが、これが量産に向いていない機能でもある。ISコアの絶対数が少ない故にあまり問題になってはいないが、パイロットに最適化し、かつ勝手に自己進化する機体など安定した供給と性能を必要とされる量産機には不要なものであるからだ。

しかしウイングゼロにはそれがないらしく、代わりに何らかの演算機能があるのだが、まだそれが何かはわかっていない。

ISコアの容量を演算機能はかなり取っており、これが無くなっている2つの代わり……という考え方もできなくはないが、恐らく違うだろうとヴァンは考える。

わざわざ無くした2つの機能の代わりを新たに造るのは効率の面を考えれば有り得ないだろう。ならばそれ以上の機能を備えていると考えるのが普通だ。

「(現段階でわからないとなると、戦闘時に何らかの作用が働く可能性があるか……?)」

ヴァンの中ではウイングゼロ時間をかけて解析するという選択肢はあまり考えていない。

ヴァンとてウイングゼロほどの性能を造れる国など1国しかないことくらいはわかっている。回収される前にできる限り調べ上げるつもりでいた。

「それでパイロットはどうしている?何か吐いたか?」
「いえ、まだです。ひたすら黙秘を貫いています。自白剤を使用しますか?」
「いや、やめておけ。彼は非常に優れたパイロットだ……自白剤などで壊してしまうのはこちらとしても避けたい。いくらでも利用価値はある」
「畏まりました」

ウイングゼロと共に回収したパイロットは地下に閉じ込め情報を吐かそうとしているのだが、中々に強情で一向に口を閉ざしたままだ。

自白剤など薬物を使えば一発で吐くのだが、後遺症が出る可能性がある。やることはやっているのだが、徹底的にやろうとしないヴァンのやり方に秘書は少し生温いと感じていた。

「まだ戦闘時……実際に稼働した際の戦闘データは取っていないな?」
「はい。データを回収する際のパイロットは如何致しますか?いくつか候補はこちらに……」

秘書が見せようとしたデータをヴァンは手で押し留める。

「いや、女はいらん。男でなければダメだ……候補は私が決めておく。」

もし量産が成功すればパイロットは女だけには限らなくなる。そういった理由でデータ採取には男を使うつもりでいた。

――――ヴァンの建前は、であるが。

「それにデータを取るための手配などもしなくてはならんから数日はかかるだろう。それまでに決定しておく。時間稼ぎに役人どもの目を逸らさなければならんからな……では諸君、引き続き解析を頼む!」
「「「「は!」」」」

打った鐘が響くようにヴァンに返答する研究者たち。ウイングゼロがどういうものか、どういう経由で入手したか知っている上で協力している彼らだが半ば嬉々としてやっているように見える。世間一般の人としての感性は疑われるが、研究者としては正しい反応かもしれない。

ヴァンは研究者たちの反応に薄く笑みを浮かべ、それと同時に役人を騙す算段を立てながら秘書を伴い地上に戻っていった。

●  ●  ●

ブーツの踵が廊下を打ち、甲高い音が響く。どこか薄暗い、黒を基調とした施設は子供なら少し怖がってしまうだろう……悪の組織みたいな場所に見えなくもない。

そんな場所を歩いているのは、場所に似つかわしくない小柄な銀髪の少女だ。着る服が年相応の物ならば非常の際立つであろう整った顔立ちをしている少女だが、物々しい黒の眼帯と硬い表情、そして身に纏っている黒い軍服のせいで威圧感があり違和感が拭えなかった。

少女は廊下の奥にある大きな黒の扉を勢いよく両手で開ける。すると広い部屋が眼前に広がり、そこには10人近くの女性たちが2列に整列していた。

『おかえりなさいませ、ボーデヴィッヒ隊長!』

少女――ラウラ・ボーデヴィッヒ――が入室すると10人近くの女性たちは一斉に敬礼を返す。それにラウラは同じく敬礼で返す。

「今帰った。皆、よく留守を守ってくれた」
『はっ!』

<黒ウサギ部隊> ドイツ軍のIS専門部隊であり、平均年齢が10代後半という低年齢部隊である。ISのドイツ代表は別にいるが、それは競技用であり<黒ウサギ部隊>こそ本命の部隊である。

しかし実はこの<黒ウサギ部隊>の名前の由来がわかっていない。一説ではラウラのウサギっぽさから取ったのでは?という意見もあるのだが、その名を付けたのが高官の軍人――しかもおっさん――だったらドン引きである。

クシュン、と可愛らしいくしゃみが目の部分を機械で改造しているのが特徴の非常に厳しい顔つきの軍人から発せられた。

「どこかの女性が噂してるのか……?だがこのシュトロハイムはうろたえないッ、ドイツ軍人はうろたえないッ!」

フッフッフ、と厳つい軍人が笑う姿は不気味そのものだった。

ところ変わってラウラたちのいる部屋。隊員の者たちは皆、隊長との話に花を咲かせていた。

「クラリッサ、あちらでも世話になったな。礼を言う」
「礼には及びませんボーデヴィッヒ隊長!隊長と隊長の嫁がくっつくのならば安いものです」

そう答えたのは副隊長のクラリッサ。隊長のラウラと隊長の嫁である織斑一夏をくっつけるために様々な(間違った)知識を駆使しラウラを(混乱に)導く良き副隊長である。

「クラリッサのアドバイス通り、やはり水着は買って正解だった……嫁が褒めてくれたんだ!」
「ど、どんな風にですか!教えてください!」
「私も私も!隊長、お願いします!!」

ラウラの言葉に反応するように隊員たちがラウラにすり寄ってくる。集まった隊員たちはラウラの次の言葉を待つように目を輝かせている。

「そ、その……かわいいって、似合ってるって言ってくれたんだ……」
『キタ――――――――!!!!』

大騒ぎである。しかも非常に感情に乏しく他者に排他的だったラウラが、ほんのり赤く染めた表情で一夏のことを語る姿に皆やられていた。

――――これが副隊長の語っていた『萌え』なのだと!!

歓喜の声を上げながら悶える者や、叫ぶ者、ネタが出来た!と興奮する者など反応も様々だ。ついでにクラリッサは鼻血を出しながらシタリ顔で頷いている。

ラウラも皆の反応に気を良くしたのか、一夏との触れ合いの日々を若干脚色して皆に語ると、さらに場は荒れた。

ちなみにこの部隊、ラウラがIS学園に行く前までラウラと隊員との間には非常溝があり、和気藹々としたのはラウラが一夏と仲良くし始めてからである。

そういった意味で一夏は彼女らの仲を取り持ったとも言える。

興奮し切って静かになり始めた頃、真面目な顔つきになったラウラが隊員を見渡す。

「さて、真面目な話に戻すぞ。私が戻ってきたのは新型装備の関係で間違いないな?」
「は!開発部の方から新型ビーム兵器各種の試験を行うように言われています。本来ならば私の機体が武装関係を担当するのですが、状況が少々複雑になっておりますので……」
「……ガンダムと無人機のせいか?」
「どちらかと言えば無人機を警戒していると思われます。無人機は数・規模共に不明なままで、今までの襲撃からもガンダムらを目の敵にしていることくらいにしかわかっていませんが、IS学園にも攻め込んだこともあっていつどの国が襲われても不思議ではありません」

特徴的な外見をもつガンダムらの所属は分かり切っているし、あれほどの機体を造り出すのは他では難しい故に、常にアメリカの動向を警戒しておけばガンダムへの対応策は一応取れる。

しかし一体一体の戦闘力はガンダムらに劣るとはいえ、通常のISの戦闘力を上回る無人機は数も不明であるし、どの組織が動かしているかも全く掴めていない。故に新型装備又は機体性能向上を早急に図る必要があったのだが、具体的に動き始めたのは少し遅れてからのことだった。

軍の上層部というのは楽観的であることが多い、と言うのはよくある話だが今回も例に漏れなかった。元々ISコアは限られているし、機体を生みだすのにも時間も金もかかるので国レベルの組織でなければ満足な数は揃えられない……といった考えからである。

ドイツの世界一の科学力で潰すべきだッ!と主張した者もいたが、人は楽観的な意見に流れやすいという例にもれずそのまま決定することとなる。

――――しかしそれは先日までの話である。とある事件のせいで、ドイツ軍は貴重な戦力であるラウラを緊急で呼び戻す必要があった。

「それで呑気に武装試験というわけか?私のシュヴァルツェア・レーゲンの特殊兵装の改良を施した方がよほど有意義だと思うがな」
「隊長のシュヴァルツェア・レーゲンの停止結界は今のところあれが限界のようです。しかもパイロットの資質と極度の集中力が必要ですから、隊長以外に扱える者は今の我が軍には……」
「仕方ないとは言え、歯痒いな」

シュヴァルツェア・レーゲンの停止結界は極度の集中力を用いて手をかざし、自機の前方の数mしか発動できない代物だ。使い方によっては非常に強力な能力だが、範囲が狭いのでブルーティアーズのようなオールレンジ攻撃などは防ぎきれないところや、集中できない状況に追い込まれると使用できなくなるという欠点もあった。

そこで停止結界の改良は難しいが、新型武装を搭載することで戦闘力の向上を図ろうという狙いだ。

「ですが隊長、新型武装に関しては早急に行うようにと通達されています」
「何?それは何故だ?」
「まだ確証はないのですが、アメリカの各所に無人機が襲撃したという情報を先日入手しまして……アメリカの被害状況はわかっていないのですが、無人機は全て破壊したとのことです。ですが……」

ラウラの預かり知らぬ情報に眉をしかめ、クラリッサの言い淀む様子に違和感を覚える。

「何かまずいことでもあったのか?」
「いえ……その、ユーコン社でも大規模な戦闘が行われたようですが……一瞬で山が一つ吹き飛んだという報告がありまして……」
「……それは本当か?いったいどんな兵器でそうなる?」
「何かまでは……黄色い閃光を見たという話が噂されている程度で……」

一瞬で山を吹き飛ばすことができる兵器はあるにはあるが、核だとしたら自国で使う国はどこもないだろう。それにISが運用され始めてからは、IS以外の兵器はさほど重要視されておらず、旧来のまま発展していない状況であった。

「……まさかとは思うが、上層部はISでやったなどと考えているのか?有り得ん」
「ですが今のアメリカを恐れている考えが多く、一刻も早く対抗できる新型兵器を、とのことで……」
「だからこんな学校がある中途半端な時期に私を戻した、というわけか……それでどんな武装なんだ?」

シュヴァルツェア・レーゲンの射撃武装は大型レールカノンしかなく、銀の福音での戦闘ではその取り回しの悪さからほぼ命中しなかった

プラズマ収束ビーム砲。増設したジェネレーターとISコアのエネルギーから強力なビームを発射する代物で、本来なら両肩に展開される装備であるが急遽製造されたので大型レールカノンと同様に右肩のみに搭載されることとなる。

他にも脚部にミサイルポッドなども取りつけるつもりであるが、あまり武装を過多に搭載してしまうと機体バランスが損なわれてしまうので、実際に運用してから搭載するかの有無を決定する予定である。

「他にもいくつか装備があるので、時間はかかりますが……」
「嫁のところに戻るのが遅れてしまうな……」

ラウラははぁ、と溜息をつく。その仕草は敬愛する織斑千冬そっくりであった。

世界は変わろうとしている―――――決して良い方向とは限らないが。

●  ●  ●

「ウイングゼロのパイロットは私がやろう」
「しゃ、社長……本気ですか!?」
「冗談でこんなことは言わん。これほどのものを下の者にまかせっきりというのは少しな」

数日後、秘書を連れて地下へやってきたヴァンの言い分は技術者たちを驚かせた。確かにヴァンも技術者としてISに関わってきたが専属の者たちと比べれば遥かに短い時間であったし、貴重なパイロットをワガママで決められてしまうことに、反発心を抱かざるをえなかった。

しかし彼らは所詮ヴァンの部下に過ぎず、彼の決定に逆らうことはなかった。それにヴァンにテストパイロットをやらせなかったとしても、他に誰を乗せるのか?と聞かれれば直ぐに返答出来る者はいない。

男で技術的に理解でき体力的にも乗りこなせる者が適任なのだが、勤めている技術者たちでは体力的に不足している。そう言った意味ではヴァンの方が体力があるといえた。

ウイングゼロは専用のISスーツはなく、極端な話で言えば薄着にすれば搭乗はOKである。搭乗のためパンツ一丁になったヴァンがウイングゼロのコックピットに入り込む。

ウイングゼロのコックピット内は足をつける下部分が平らなこと以外は球体となっている。手や足に様々なセンサーや機械類を接続させているが、一番の特徴はフルフェイスの頭部センサーをつけることだろう。

「こうも通常のISと何もかも違うと、なんだか不安になるな」

ヴァンの呟いた言葉にセッティングしていた技術者はハハハ、と軽く笑い返す。

「危険であれば直ぐに中断するようお願いします。まだ解析しきれてはおりませんので……」
「言われんでもわかっている。解析するためにやるのだからな」

ヴァンはそう言いながらコックピットを閉め、技術者たちに退避するように指示を飛ばす。すばやく機材などを片づけ技術者たちが退避していくのを確認すると、管制室にいた者たちは外界からの視線をシャットダウンしているアリーナを起動させウイングゼロのために用意したターゲットをセッティングする。

今回の試験は実際に機体を動かした際のデータを取るもので、いくつかのプログラムをこなした後、最終的に1機のISと戦闘を行うことになっている。

闘う際武装にあまりにも差があると一撃で勝負がつくので、ウイングゼロの武装は通常ISよりも少し上程度の出力に設定していた。無論パイロットの方で出力調整こそできるものの、ISにおける戦闘が今回初めてのヴァンにそこまでやることを強いるのは酷というものである。

シールドの裏にツイン・バスターライフルを取りつけて、アリーナ方向へ機体を向け少し屈ませる。

「よし、ウイングガンダムゼロ。ヴァン・デュノア出る!」

IS用のカタパルトは使えないのでそのままブースターを吹かせアリーナへ飛ぶ。いや、ヴァンの感覚からしたら、飛ぶというより『吹っ飛ぶ』ようであった。

「ぬおぉぉ!」

慌ててスラスターを吹かせて旋回し壁に激突するのを避け、中央に滞空するウイングゼロ。その様子を管制室にいた者たちはほっとすると同時に、かなりの不安を覚えるが止められないのでそのまま続行するしかない。

『社長、準備はよろしいですか?』
「ああ」
『では、開始してください』

開始の言葉と共に空中に現れたホログラムの球体。その球体の中央には数字が記されており、それらは複雑にアリーナ内に配置されていた。数字の順番に通過する機動テストだ。

「いくぞ!」

ヴァンはウイングゼロのブースターを吹かせて、1の数字の球体を通過する。瞬時にスラスターをほんの少し吹かせ正確に2の数字を通過する。

次々と数字を通過するその姿は国家代表レベルのISパイロットからすれば無駄があるように見えるかも知れないが、初めて操縦した者には決して見えないだろう。

「反応が早すぎる……!?」

ほんの少し動かしただけで敏感すぎるほど動くウイングゼロであったが、何故か動き方がヴァンの頭の中で理解出来ることができる。

しかも時間が経つごとに段々と動きに鋭さが増していくのが目に見える。もはや素人どころではなく、熟練者に迫る勢いだ。

『状況終了。次のテストを行います』
「凄い機動性だな。あっという間に終わらせたぞ」
「やはり桁違いだな。大幅に記録を縮めたぞ」
「だがヴァン社長の操縦技術、高すぎないか?」

ウイングゼロから蓄積されたデータを見て次々に呟く技術者たち。しかし彼らはここで見逃している部分があった。元々のISコアにあった機能に近いもののためである。

そうとは知らずテストを続けるウイングゼロは武装のビームサーベル(超弱)とマシンキャノンでダミー風船を破壊していく。

ヴァンの目には目標のダミー風船だけでなく、あらゆる情報が記されている。本来なら混乱しそうなほどであるが、何故か冷静に処理できていた。

マシンキャノンの威力が強すぎてアリーナを穴だらけにしているが、シールド部分にはぶつけていないので破壊するまでには至っていない。

「これで最後!」

ほとんど無駄弾を使わず、ダミー風船を破壊し、最後の1つはビームサーベルで切り裂いた。

『状況終了。次は模擬選を行います。敵機はラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡです』
「了解した」

ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡはデュノア社の最新鋭機であり、代表候補生のシャルロット・デュノアの専用機でもある機体である。もちろんISコアはデュノア社に預けられている物の1つである。

パイロットは少し訳ありの者で、特に口の堅い者を選んでいる。というより口外しようとした場合、処理するだけであるが。

開始のブザーが鳴り響くと同時に両手に出現させたアサルトライフルをウイングゼロにばら撒く。

ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの優れているところは搭載量の多さであり、20以上の装備を呼び出すことができる。つまり状況に応じて武器を使い分けることができ、弾切れを起こすことが少ないことを示している。

しかしウイングゼロに当たるどころか、追尾するように飛行しながらでも後をついて行くのが精いっぱいのようだ。

「振り切れんか!」

マシンキャノンをばら撒くが、掠りあたりで落とすまでには至らない。ウイングゼロとラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの性能はかけ離れているのも関わらず、普通に戦えてしまっている現状が示す答えは、パイロットの原因があることは誰の目にも明らかである。

ミサイルランチャーで叩き落とそうとするが、避けつつ避けきれない分はシールドで防ぐ。さすがに傷一つないが、未だに普通に戦ってしまっている事実にヴァンは苛立ちを感じていた。

「違う違う!ウイングゼロ、お前の力はこんなものではないだろう!見せてみろぉ!!」

―――――そのときであった。彼の周りの空間が黄色い閃光で覆われたのは。

バズーカを発射したラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの攻撃を避け切れず、吸い込まれるようにコックピットに直撃し、彼の身を焼いた。

「はッ!?」

いや、そうではない。槍の一撃でコックピットごと突き刺された筈だ。いや、アサルトライフルでハチの巣にされた?

痛みも確かにある、殺された感覚も確かにある。ただ多くの経験が、どれが現実か判別できないほどリアルだった。

「あああ!!!」

このままでは殺される未来しかない。ビームサーベルの出力を通常時に戻し、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡに突貫する。

突然動きの変わったウイングゼロに弾幕を張るが、まるでミサイルの動きをすべて読んでいるかのように最小限の動きで避ける。避け終わったと同時に懐に入っていたウイングゼロは、回避行動をとらせる前に右腕を切り落とした。

「ぐあああ!!!」

ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡのパイロットの絶叫がアリーナ中に響く。それでも回避行動を怠っていないのはさすがである。だがその回避場所にウイングゼロはツイン・バスターライフルを向けていた。

彼女が見た最後の光景は、黄色い閃光だった。






あとがき
非常に御待たせしました!!!!
いろいろ学校やら何やらでいろいろありまして……しかも超が付くほど今回の話は難産でした。
しかも原作は続きが絶望的だからこちらで考えるしかないっていう……ほとんど伏線回収してないから、勝手に考えるしかないっていう。
それと感想でウイングゼロの大きさを間違えている方がいましたが、設定集とか作るべきなんでしょうか?個人的には作る必要はないと思っているのですが、どうでしょうか?

正確にはラウラの停止結界の名称はAICですが、会話的にこちらにさせてもらいました。


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