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No.27174の一覧
[0] 爺様たち、乱入(IS+ガンダムW)【微アンチ】[伝説の超浪人](2012/03/04 01:23)
[1] ブラッドの決意[伝説の超浪人](2011/04/30 12:50)
[2] 戦乱の予感[伝説の超浪人](2011/08/03 00:31)
[3] エレガントな交渉と交渉[伝説の超浪人](2011/04/30 12:49)
[4] デートと刺客[伝説の超浪人](2011/05/24 00:14)
[5] 逃亡と黒い影[伝説の超浪人](2011/06/05 21:52)
[6] 動く時代[伝説の超浪人](2011/08/03 00:32)
[7] 学園と砂男[伝説の超浪人](2011/08/07 15:45)
[8] VS銀の福音[伝説の超浪人](2011/08/07 15:43)
[9] 龍と重腕の力[伝説の超浪人](2011/08/28 17:45)
[10] 彼女の分岐点[伝説の超浪人](2011/09/19 23:33)
[11] ドキドキ☆学園探検![伝説の超浪人](2011/10/01 23:04)
[12] 番外のお話(本編とは全く関係ありませんよ!)[伝説の超浪人](2011/12/12 00:00)
[13] 無人機の驚異[伝説の超浪人](2012/03/04 01:22)
[14] ゼロの幻惑[伝説の超浪人](2012/03/31 15:33)
[15] 欲望と照れる黒ウサギ[伝説の超浪人](2012/09/09 13:45)
[16] 飲み込まれる男[伝説の超浪人](2012/11/08 23:53)
[17] 初の共同作戦[伝説の超浪人](2013/04/07 23:37)
[18] 進撃のガンダム[伝説の超浪人](2013/05/11 23:31)
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[27174] ドキドキ☆学園探検!
Name: 伝説の超浪人◆37b417bc ID:5424a8a7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/01 23:04
※今回の話は突っ込みどころ満載ですし、一部キャラクターがおかしいですがこれはフィクションです。小説を見るときは適度な距離に離れて、部屋を明るくして見てね!


日本時間にして深夜。ほとんどの人が眠りに就いているその時間に、IS学園にほど近い海から人影が現れた。月明りしかない海岸では、その人物は良く見えない。だがお下げをしている、黒い服を着た人物のようだ。

濡れた体をそのままに、その人物はそこから歩いて離れていった。見るからに怪しかったが、誰もいないその場所で、その人物を咎める人はいなかった。

●  ●  ●

「あー、またハメ技かよ!?卑怯だぞ弾!」
「ばーか、勝てばいいんだよ!」

場所は五反田食堂2階、五反田弾の自室。その部屋の主である赤髪とバンダナが特徴の五反田弾と共に一夏は格闘ゲームで仲良く遊んでいた。

一夏も普通の高校生と同様に夏休みを満喫していた。もっとも姉や幼馴染が政府から色々と制限を受けている中、こうして自分は遊んでいていいのだろうか?と思っている。しかし千冬が悩んでいた一夏に「思いっきり遊んで来い」と言ったため、彼はそれを律儀に守っている。

一夏が浮かない顔をしているのは弾も分かっていたが、一夏が言わない以上突っ込むべきではないのだろう。そう彼は考えて、触れずにただ遊んでいた。

「お、あれってトールギスのプラモか?」

一夏が見つけた机の上に飾られたケースの中にあるプラモデルは、一夏が臨海学校で出会ったトールギスだった。あの事件のことは今も心に引っかかっている一夏にとって、トールギスの姿を見ると少し複雑な気持ちになる。

「どうだ、すげーだろ!?あまりの売れ行きで再販してもすぐに売り切れるから、今ネットオークションだと大体3~4倍の値が付くんだぜ?」

日本の玩具業界はトールギスの人気に目をつけ、1/30サイズのトールギスを発売した。精巧な作りで組み立て後は様々なアクションが可能であり、ちっちゃいブラッドも付いて御値段5000円。子供にも手が出せる値段は、様々な年齢層に受けが良く凄まじい売れ行きで大人気商品だ。

「おお、本物のトールギスに似ているな、これ!」
「だろ!……ん?その言い方だと、お前トールギスに会ったことがあるみたいじゃないか」
「あー……、一応会ったことはあるぞ?」
「マジか、お前ブラッド・ゴーレンに会ったのかよ!?サインとか持ってねぇの!?」
「あああああ~、ゆ、揺らすな~!」

弾は興奮したまま一夏の肩を掴んで揺さぶった。あまりの揺さぶりに、一夏の頭は激しく揺れまくった。

「おお、悪い悪い。……で、どうなんだ?」
「実はな……そのときは軍の機密とかで、話せないんだ。話すとお前に監視が付くんだけど……」
「話すな!監視なんかつきたくねぇ!……てかお前、そんなやばいもんに関わってんのかよ」
「まぁそういう学校らしいしな。他の子が戦うぐらいだったら、俺が戦うさ。皆を守るためにな」
「……そうか。頑張れよ」
「おう」

弾は一夏の言葉に腑に落ちなかったが、そのまま口に出すことはなかった。一夏がそのまま弾の言葉を疑いなく呑み込んだために、そこで話は終わった。

「(軍の任務つったら死ぬことも有り得るはずなのに……なんでこんな平然としてんだ、こいつ?)」

弾から見た一夏は、まるで戦いを怖れていないような口ぶりだ。死の危険性があるはずなのに、何か軽い頼みごとを頼まれたかのような気やすさを感じた。

少なくとも弾には、それが不自然に感じた。

「……まぁ、良い時間だし飯でも食おうぜ。今の時間なら下で喰っても迷惑じゃないだろ」
「そうだな。久しぶりに厳さんの料理も食べたいしな!」

しかし弾は自分の考えすぎかと思い話題を変え、一夏と共に下の階にある食堂へと足を運んだ。

五反田食堂はいうなれば昔ながらの食堂でありながら、少々変わったメニューがある人気店だ。調理はもっぱら弾の祖父である厳が担当し、店員は弾・母の蓮・妹の蘭である。一夏も中学時代から何度も世話になっており、常連の1人でもあった。

厳と蓮に挨拶した一夏は食堂を見渡す。御昼時には少し早い時間だったためか、客はまばらであり大きな席も空いていた。

「ここでいいか。お前何食べる?」
「そうだな……あれ?」

メニューを決めようとしたその時、戸が開いた。

「すいませーん……ってああ、お姉さん、俺の席はあいつらと同席でいいかな?」
「あら、あなた弾の御友達?どうぞどうぞ」

入ってきた男は人懐っこい笑みを浮かべて蓮に話しかけると、蓮は嬉しそうに弾の席に案内した。

「なぁ、あの人知り合いか?」
「……いや、全然知らない人だ」
「席、隣いいか?いやー、有名人に会えるなんてついてるな俺!」

弾も一夏も知らないその人物は、にこやかに笑みを浮かべながら弾の隣に座った。2人ともお互いの顔を見合って、不思議そうな表情を見せる。

「有名人?それってこいつのことですよね?」
「織斑一夏っていったら、外国でも相当有名だぜ?なんせ史上2人目の男性ISパイロットなんだからな。少し話してみたかったんだよな……ああ、俺はデュオってんだ、よろしく」

弾が一夏を指さすのを見て頷いたその男は自身をデュオと名乗った。茶髪のお下げを黒い帽子から垂れ流し、服は全身黒で統一されていた。どこか修道服にも見える服だ。

「は、はぁ……よろしく……」

一夏はデュオが席に着いた時、実はかなり警戒していた。自分は狙われる立場なのだと千冬に何度か言われていたため、急にやってきたこの男はそうなのではないかと思っていた。しかしこの明るさは、一夏が抱いていた刺客像と何か違うのだ。毒気を抜かれた……とも言えたが。

「IS学園に男1人でいるって聞いたけどよ……やっぱり女がいっぱい言い寄ってくんのか?」
「ああ、いや……そんなことはないですよ?言い寄ってくるというか皆男が珍しいってだけで面白がっているだけだし、マッサージとか直ぐ頼んでくるんですよ?玩具みたいなもんです」

一夏の横で弾が怪しげに眉を顰めているのを見てディオという男は「本当か?」と弾にアイコンタクトをすると、弾は「多分違うでしょう」と送った。

「でもよ、仲の良い女もいるんだろ?彼女とかいねぇのか?」
「いないですよ。寝ぼけて俺のベットに入ってくる子もいますけど、その子はちょっと世間知らずだし……俺にISの操縦を何人かが教えてくれる子もいますけど、それは親切心だと思いますし。実際スパルタなんですよ、その子たち」

その言葉を聞いたデュオは隣の弾の肩に手を回し、顔を寄せて一夏に聞こえないよう小声で話しかける。

「おい、これマジで言ってんのか?どう考えても言い寄られてんじゃねぇか」
「ダメっすよ、こいつ中学時代からこんな感じですから。明らかに告白どころかプロポーズに近いことを言われてもスルーしたやつですから……しかもその子のことは仲の良い女友達と思ってるらしいっす」
「そりゃあ重症だな……」
「俺の妹もあいつに惚れてるんですけど全然気づいてもらえなくて、妹だけが空回りしてるのを見てると悲しくなってくるっす……」
「元気出せ……」

デュオがポンポンと弾の肩を叩き、何か泣きそうな表情をしている弾の様子を一夏は不思議そうに見ていた。

今の話で何か言っちゃいけない所でもあったのだろうかと一夏は考える。まぁ一緒に風呂に入ったり、キスされたりもしたがそんなことは言わなくてもいいだろうと思っていた……あれは事情があるし、男は俺しかいないからああいうことが起こったのだろうぐらいにしか、一夏は考えていなかった。

その後弾はデュオに何か惹かれるもの(貧乏くじ)を感じたのか、急激に仲良くなり、その席は盛り上がった。一夏もその様子を見て警戒する必要もないと判断したのか、しばらく経つと友達の様な感覚で接していた。

「やっぱり訓練は大変か?」
「そうですね……やることがいっぱいあって大変です。まぁ俺の周りは代表候補生が多いので色々教えてもらえるから、そこが救いですね」
「良かった、俺入学しなくて」

ははは、と3人の笑い声が響く。

「(まぁ、コイツの話は本当だろうな。動きが完全に素人だしな……正直初見だとコイツがパイロットだとは思わないだろ)」

デュオ……否、ガンダムデスサイズヘルのパイロットであるディルムッド・フォーラーはそう内心呟いた。一夏の動作は彼から見たら隙だらけだし、拳銃も所持しているようには見えない。殺そうと思えばいつでも殺せる人間だ。

今回ディルムッドが一夏と接触できたのは、本当に偶然だった。そもそもディルムッドが日本に来た目的は、一夏とは全く関係ない。大体、貴重な人材である一夏がこんな普通の食堂にいるとは誰も思わないだろう。

「(まぁ何カ月か前までは普通の学生だったらしいし、仕方ないか)」

まぁそもそも学生だった一夏と、幼少のころから戦い続けてきたディルムッドでは差があって当たり前だ。比べる方が間違っているのだ。

「(ブラッドの旦那も腕はともかく、度胸は良いって言ってたしな……)さて、俺はそもそも御暇させてもらうぜ。少し用事があるんでな」

ブラッドは一夏の度胸の良さを買っていた。接近戦用の武器しかないにも関わらず、躊躇なく銀の福音に向かっていったのは中々出来る事じゃないということでだ。

「え?もう言っちゃうんですか?」
「ああ、ちょいと仕事でな。人使いが荒いんだ、ひでぇとこだよ」

ディルムッドの哀愁を感じさせる表情に、2人は苦笑いするしかなかった。

「た、大変なんですね……」
「ああ……じゃあな2人とも。またいつか会おうぜ」
「はい、また!」

背を向けながら手をひらひらと振り、ディルムッドは五反田食堂を出て行った。無論代金は払っていってだが。

「あれ?でもあの人働いてるってことはいくつだ?」
「………大学生くらいにしか見えないけどなぁ」

気さくで良い人物ではあるのだろうが、ほとんど同い年にしか見えないというのが、2人の共通意見だった。

●  ●  ●

「ぐぁ!」
「がは……」

作業服の男2人が倒れていく。いや倒されたというのが正しい、この目の前の男によって。

「悪ぃな、服も借りるぜ?」

倒した男……ディルムッドは片方の男の作業服を奪い取って着ると男たちを縛り上げて放置した。そのまま男たちが乗る予定だった運搬用のトラックを始動させ、目的地へ向かう。

ディルムッドが一夏たちと出会ってから3日が経った。この3日間何をやっていたかといえば、上の方から依頼された“IS学園侵入及び調査”のための下調べをしていたのだ。

IS学園は中立であるし、またその印象を保つためにも極力政府などの意向を受けないようにしている。

今回の銀の福音の件でIS学園を調査しようという話も出たのだが、上記の理由によりそれは撤回された。がそれに納得できない国もある……そう、アメリカだ。

自国でコアを含む量産型ISを製造できるアメリカにとって、好き勝手にやる篠ノ之束はもう抹殺したい存在なのだ。世界中いくら探しても彼女の姿は見つからないことから(もっとも見つけた国が彼女を独占したいがために、他の国に伝えないということも考えられるが)、彼女がIS学園にいる可能性があるのでは?と考えたのだ。

銀の福音の件といい、以前学園が無人機が襲撃された件といい、いずれの件も襲撃のタイミングが良すぎていた。まるで最初から仕組まれていたかのように。

また以前からIS学園の責任者や3年生でロシア代表である更識楯無が得体の知れない動きをしているという報告もあるし、織斑千冬が篠ノ之束と親友同士であるというのも調査の一因であった。

何も無ければ無いでいいし、もし何かあったのならば十分に叩く要因となりうる。だがこの作戦は非公式の物であるため正規の軍人は使えないし、やたらな傭兵では捕まってしまうのがオチだ。

そこで非常に腕の良い傭兵でもあり、隠密に長けたガンダムを使えるディルムッドに白羽の矢がたったのだ。

「あーあ、俺だけいっつもこんな役回りだよな……別に英雄にはなりたかないけどよ」

もちろん報酬の支払いはかなりのものだが、正直世界でも有数の警備を誇る学園に生身で潜入するなんて依頼は普通の傭兵は受けないだろう。今まで潜入した者たちはいたが、いずれもIS有りだった。

2日に一度、学園内へ食材を運搬するトラックが正門を通る。もちろん門を通る際はIDカードと証明写真を照らし合わせて必要がある。それをしない場合、即座に拘束されしかるべき処置を施される。

溜息を浮きながら、しばらく運転しているとIS学園の正門に辿り着いた。

「止まってください。IDカードと証明写真の提示をお願いします……ってあれ?見たこと無い顔だね、新人さん?」
「へへ、そうなんですよ。日本での就職は中々外人には厳しくてね……」
「そう言う話、よく聞きますよ……確認できました。どうぞ、頑張ってください」
「ありがとう、頑張ってくるさ」

門の警備員が窓から身を乗り出して、ディルムッドを見ると不思議そうな表情を浮かべる。そんな警備員と2~3会話を交わして、IDカードと証明写真が正規のものと確認されるとトラックは無事通過した。

「……しかし、随分簡単に入れたな」

ディルムッドにはこの警備は些か拍子抜けだった。もっと厳しくチェックするのかと思ったが、こうも緩いとは思わなかった。

もちろんIDカードや証明写真はこの3日でハッキングなどを応用して作ったバリバリの偽造である。彼はこういったことを昔からやっていたため、得意分野であった。

「さてと、行くか」

トラックを停めて、荷物の運搬をすることなくディルムッドは作業着のまま荷物袋を担いで校舎内に侵入した。

人の気配は校舎内にほとんどなく、織斑一夏に聞いた通りほとんどの生徒が帰省しているらしい。帰ってないのは家に居たくないか、訳有りの生徒だけだろう。

人気のない廊下を、全く足音を立てずに駆け足で抜けていく。学園内の地図は各国に公表されているため、アメリカで全て記憶してある。しかし今回調査するところは“地図に無い場所”なのだ。

故に最初に向かう場所は学園内にある指令室である。そこならば“地図に無い場所”の詳細もあるだろう。

「でね~、あそこのケーキ屋のチーズケーキ超おいしいの!」
「嘘!?それ知らなかった!」

ディルムッドから見えない方向から女性の声が聞こえる。そのまま彼女たちはディルムッドがいた場所を通っていった。

「……ん?」
「どうしたの?」
「……いや、気のせいだと思う」
「そっか……じゃ行こ!」

片方の女性はなんとなく変な感じがして左右を見たが、特に何もなかったのでそのまま2人は歩き去っていった。

それを確認すると、廊下の天井の窪んでいて普通では見えないところからディルムッドが落ちてきた。

「ちょっとビックリしちまったぜ。そこそこ勘は良いみたいだな……ここのやつら」

そう言いながらディルムッドは廊下を駆けていくと、指令室に辿り着いた。そのドアはロックナンバーの入力が必要なのだが、ディルムッドは荷物袋から四角い物体を取り出して入力部分に貼り付けた。

数秒後、四角い物体は小さな音ともに爆発し、扉が開かれた。中に入ったディルムッドはそのまま指令室のコンピューターを操作し始める。

「学園が所持しているISはここでロックを外せる許可が出せるのか……お、あったあった!……地下室か!」

目的の物を見つけたディルムッドは、そのまま部屋を出ようとして、咄嗟に足をとめた。

「おっと、忘れるところだった。プレゼントもおいていかないとな?」

荷物袋からまたも四角い箱を取り出し、机の下に取り付ける。それを済ますとさっさと部屋を抜けて、地下室へと向かった。

地下室に行くまでに色々あるかな……と思っていたディルムッドだが、少し行く道が普通の人にはわかりにくかっただけで彼にとっては余裕だった。

「お、ここだな?……ってさっきと同じセキュリティかよ……ズボラだな、おい」

そう言いながら先ほどの指令室と同じ方法で、侵入できた。あまりに簡単にいくことに逆に警戒心を強めながら、そのまま調査を始める。

「コイツは……無人機の残骸か?確か政府の報告書には全機撃破だったはず……しかも、コア付きとはな」

傍にあったコンピューターでコアや機体情報を抽出する。睨んだ通りコアは今までの無人機と同じ未登録のものであった。が、その中で気になるデータがあった。

「暮桜……?新型……じゃないな、確かコイツは織斑千冬の機体だったはずだ。……こっちか」

以前織斑千冬が使っていたIS<暮桜>のデータが何故かここに入っていた。勘で隣の扉を開くとそこにはISコアと作成途中の装甲と武装があり、明らかにそれは新たなISをここで製造している証拠だった。

「ビンゴ!しかし無断でIS製造なんて正気か?……けど、ここは隠すにはうってつけの場所だしな」

以前の織斑千冬の機体を製造しているということは、これは織斑千冬の機体と見ていいだろう。

教師陣など多くの者たちからは慕われている織斑千冬にとってIS学園は、政府の調査は入らず整備も世界で有数であるため、秘密裏に製造するにはまたとない土地である。

その後念入りに調査したが他の物は見つからなかったため、ディルムッドは無人機と暮桜ISコアを2つ懐に入れた。

「さて、後はデータを全部消して、破壊するか」

コンピューター内のデータを全て消した後、ディルムッドは荷物袋から今までよりも大きい物体を取り出す。

「超リモコン爆弾~~!……なんちゃってな。よっと……ここでいいか……ん?」
「あれ、これって……」
「やば」

扉の向こうから人の声が聞こえた瞬間、ディルムッドは天井の隅に張り付いた。部屋の異常に気がついた女性は走って部屋に入り、驚愕した。さらにもう1人いたらしく、その女性も驚愕していた。

「どういうこと!ここにあったコアがなくなってる!?真耶、他に何か異常なところはない!?」
「こっちも、データが消えてます!しかも暮桜のほうのコアまで!」
「嘘!それっ……」

真耶に振り返ろうとした女性の声は続かなかった。後ろに降りてきたディルムッドが彼女の後頭部を強打し、気絶させたからだ。

「どうしたんで……!?」

振りかえった真耶の腹部を強打し、彼女の意識を断った。

「やれやれ、このままだと爆発に巻き込んじまうな……それじゃ後味悪りぃか」

別に助ける必要はないのだが意味もなく殺す必要もないと思ったディルムッドは、2人を爆発範囲の外に連れ出して、そっと壁に置いた……その瞬間だった。

「あなた!そこで何やってるの!?」
「言う訳……ねぇだろ!!」
「きゃあ!」

見つかった瞬間ディルムッドは倒した女教師が持っていた物を投げつけ、縮こまった女性に近寄り蹴飛ばした。蹴飛ばした彼女に目もくれず、ディルムッドは階段を駆け上る。

「くぅ……『侵入者発見!作業服を着た男が教師2人を暴行し、地下室から逃亡!至急応援を!』」
「……ちっ、変に親切心なんか出すんじゃなかったぜ!」

あの2人を助けていたから、こんな無様に見つかってしまったのだ。自分の甘さに少し苛立ちながらも、彼は駆ける。

「見つけた!撃てぇ!」
「おいおい、いきなりかよ!」

数人の女教師はディルムッドを見つけた途端、マシンガンと拳銃を一斉掃射した。ディルムッドは懐から44マグナムを取り出し壁に隠れながら応戦するが、如何せん数が違いすぎる。

仕方が無いので、ディルムッドはポケットから手榴弾を取り出しながら、ピンを外して投げた。

「そらよ!」

起こる爆発。悲鳴と煙が巻き起こっている間に、急いで廊下を駆ける。少し廊下を駆けていると、彼は背中に冷たいものを感じた瞬間、咄嗟に後ろに飛んだ。

「侵入者め、ここまでだ」
「てめぇは……織斑千冬か!?」
「はぁ!」

日本刀を持ったスーツの女性――織斑千冬――の手がブレた。少なくとも普通の人間の目にはそうとしか見えないだろう。その証拠に、歴戦のディルムッドの目に映ったのは一筋の線だった。

「うぉ!」

避けれたのは普段書文と戦ったからだろう。そうでなければ腕の1本位は持っていかれた一撃だった。

「やるな……だが!」

しかし千冬はそれを気にするどころか、喜喜として連続して斬りつけてくる。反撃するどころか、避けることも難しいそれをディルムッドはなんとか避け続ける。

「コイツ!」

咄嗟に後ろに飛んだディルムッドは、急所に向けて数発弾丸を撃ち込んだ。

「効かんぞ!」

だが千冬は日本刀を激しく回転させることで、弾丸を全て叩き落とした。その証拠に、切り裂かれた弾丸が千冬の前に転がっている。

「……あんた、ホントに人間?」

童帝が良く用いるその技を、千冬は完全に使いこなしている。さすがに、ISの武器を生身で使えるだけはある。というかISに乗る必要があるのか、という疑問はあるが。

「ふ……女性に失礼な男だ」

油断なく千冬は構える。が、彼女はディルムッドの次の一言で動揺した。

「おっと……俺を殺してもいいが、あんたの弟も死ぬぜ?」
「な!」
「なんてな!」

動揺した千冬に荷物袋をぶつけた瞬間、閃光が弾ける。眼が眩んだ千冬の目が元に戻ったその時には、既にディルムッドの姿は無かった。

「あの男……!ISは出せんのかぁ!!」

その叫び声を遠くで聞いたディルムッドは、ポケットからスイッチを取り出す。

「それは防がせてもらうぜ、千冬ちゃん」

スイッチを押した瞬間、校舎に爆発音が響いた。それにより噴煙が廊下まで浸食し、学園側はさらに混乱した。

「どこが爆破された!?」
「し、指令室と地下の方で爆破が起こったらしく、今詳細を調べているところで……」
「指令室だと!それではISが出せん!」

千冬は近くにいた教師の肩を捕まえて問いただすと、その事実に歯軋りをする。

指令室はISのロックを外すことができる。兵器であるISは普段倉庫にしまってあるが、触るだけで直ぐに使えるなんてことは兵器としてはあってはならない。そこで指令室からロックを解除することで、初めて使用が可能となる。そのために一般生徒はISを使う際、かなりの量の書類を出さなければならないのだが。

逆に言えば指令室を破壊されると、手動でロックを外すしかなくなるのだが、それにはかなり時間がかかる。ディルムッドはこれを狙って爆弾を仕掛けたのだ。

「後はずらかるだけだぜ!」

乗ってきたトラックに乗り込み、アクセル全開で門まで突っ切る。守衛は学園の異変に気付き門の守りを固め弾丸の雨を質量のあるトラックに向けるが、それに構うことなくトラックは門を突き破った。

「出せるISはないのか!」
「修理中の量産機があったので、それならば他のものよりも早く出られますが……」
「ならそれで出ろ!私は出れんが、奴をこのまま逃がすわけにはいかん!」

千冬は普段見せない怒りの感情を露わにしていた。地下の秘密を見られたのもそうだが一夏を人質に取られたと思い、まんまと騙された自分に腹が立っているのだ。その怒りを発散するように、壁に拳を叩き付けた。

その頃ディルムッドは、アクセル全開で公道を走っていた。暴走車であるそれは無論警察に見つかっており、只今デッドヒート中だった。

「俺のテクは半端じゃないぜぇー!」

それにしてもこのディルムッド、ノリノリである。もう少し走れば、目的の海岸に着く。だがそこでサイドミラーに何かが映った。

「そこのトラック、止まれぇ!」

サイドミラーに映った物、それは学園から量産機であるラファール・リヴァイヴが追跡してきたものだった。

「止まれって言って止まる馬鹿がいるか」

そう言うとディルムッドは更にスピードを上げる。それを確認したラファール・リヴァイヴのパイロットはアサルトライフルを構えた。

「止まれぇ!止まらんと撃つ!」

しかしパイロットは撃つことを躊躇っていた。犯人は捕まえなければならないし、IS同士の戦闘は今まで何度もこなしてきたが、『生身の人間』を撃ったことはないからだ。もし直撃したら結果など目に見えている……それが引き金を引けない理由だった。

だがそうしている間にもトラックは海岸へ近付いていく。

「ええい、ままよ!」

彼女はトラックの後ろのタイヤを狙った。そこならば直接人を殺すことなく犯人を確保できるからと考えての攻撃なのだが、蛇行運転したトラックに何度か避けられた。

「当たれぇ!」

そう叫んだライフルの弾は確かにトラックに当たった。トラックの後部に火がついたが、そのまま止まることなくガードレールを突き破り、海に落下した。

海に落ちたトラックは数秒後爆発が起こり、海から噴煙が巻き起こった。

「え……わ、私……!?」

捕えるはずが、殺してしまった。その事実に、彼女は震えていた。だが警察はそれ以上に驚いていた……パイロットの後ろに現れた、黒い霞の様なものに。

「きゃあああ!!」

パイロットの背中に突然衝撃が走った。各種センサーが正常に働いている中、完全なる不意打ち。絶対防御が発動したその一撃は彼女を死に至らしめることはなかったが、気絶させるには十分すぎるものだった。

「(こっちは死にそうになったんだ、殺さないだけでもラッキーだったと思ってくれや)」

黒い霞の正体……海の中に隠していたデスサイズヘルの中で人を喰った様な笑みを浮かべたディルムッドは、ジャマーを発動させたまま空の彼方に消えていった。

この襲撃事件によって幸いにも死者は出なかったが、怪我人は少なからず出た。しかし爆破以外の被害を報告しては重罪であるISコアの不法所持が世間に明るみになってしまう。

それを怖れたIS学園は日本政府と協力し、事件自体を闇に葬ることにした。日本はIS学園の失態は自国のイメージダウンになるから、ということで協力した。先の紅椿の件が尾を引いているとも言えており、無論IS学園は日本政府にはISコアを所持していたことを伝えることはなかった。

●  ●  ●

IS学園が襲撃される1日前、一夏が自宅にいる時にインターホンが鳴り響いた。

「はーい……って、セシリアじゃないか?どうしたんだ?」
「……御機嫌よう一夏さん。お時間、ありますか?」
「……ああ、今暇だったんだ。入ってくれ」

突然訪れたセシリアの表情は暗いものであり、さすがの一夏の何かあると感じて彼女を家に招き入れた。

紅茶と菓子を出しテーブルに着いた2人だが、セシリアは俯いたままだった。

「どうしたんだよセシリア、何かあったのか?」
「………もし、ですよ?」

小さな声だったが、セシリアは言葉を発した。何か思い詰めたような、そんな雰囲気だ。

「もし私が学園からいなくなるとしたら、一夏さんはどう思いますか?」
「は!?学園を辞めるのか!?」
「い、いえ、例えばの話しです。それで……どうですか?」

セシリアのひとまずほっとした一夏だが、セシリアの表情を見てはいい加減に答える事はできないだろうと強く感じた。

「やっぱり辞めて欲しくねぇよ、友達には傍にいてほしいからな。セシリアだけじゃなくて箒も鈴もシャルロットもラウラも、皆一緒に仲良くやっていきたいよ」
「………………………そう、ですか」

一夏は自分の素直な気持ちを話したつもりだった。もちろんセシリアが喜んでくれると思っていたのだが、より暗い表情になってしまったことに一夏は不思議そうな表情を見せた。

「……今日はありがとうございました、今日は御暇させていただきます」
「え?まだ来たばっかりじゃないか?」
「……この後用事がありますので、それではごきげんよう」
「ああ……またな、セシリア」

よくわからないといった表情を見せる一夏を残し、セシリアは玄関を出て行った。それから少し歩いて、一夏の家の方向に振り返る。

「………本当に、あなたらしい返事でしたわ」

頬を伝う滴が地面に落ちると、彼女はもう二度と振り返ることはなかった。






後書き
次回番外編やるかもしれないですけど、ありですかトレーズ様?



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