第8話
LS-01 スサノオ
サイズは20m程だが、本家ジンシリーズよりも重武装化している。
兵装は胸部Gブラスト×1、Dフィールド、8連装多目的ミサイルランチャー×2、大型レールガン×2、対艦ミサイル×6、要重力場ビーム発生器となっている。
兵装の増加により、外観は人型兵器のそれに近くなった。
腕にあたる部分は大型レールガンで、脚部はランディングギアと長大なブースターユニット、ミサイルランチャーで構成される。
対艦ミサイルは脇の下に3発ずつ設置されている。
その外観は本家本元のジンシリーズとは大きく異なっており
ぶっちゃけると、原画版XG-70
解る人には解るだろう。
見た目よりも機動性は良いし馬力と出力は戦艦クラスであるため、マク○スアタック染みた格闘→ゼロ距離砲撃のコンボもできる。
基本的に活動時間の短いLM-02との連携を前提とし、要重力場ビームによるかつド時間の延長と高火力による支援を目的とする。
その性質故にどうしても高コストで操縦者もメイン・火器管制・レーダー管制と3人も必要とする。
しかもそのお値段、なんとLM-02一個中隊と同じ。
現用の戦闘用LMに比べ、コストパフォーマンスは劣悪と言ってもいい。
だがしかし、そのコストに見合った性能を持つ空中要塞な代物である。
今後はPREシリーズ・PLS-01・LS-01のノウハウを生かして、小型化と低コストを視野に入れたLS-02が開発される事となる。
「で、作ったは良いけど、デモンストレーションの場所に欠ける、と?」
『みたいだねー。』
「まぁ、LSを実戦運用する様な場面なんて早々来ないと思いますが…。」
RE本社会議室
いつもの重役会議である。
「これに関しては何れ大々的なデモンストレーションをするとして…。」
『だね。』
「試作機の開発ノウハウはPREシリーズで元は取れていますが…。」
「こちらはこちらで売りたい所ですな。」
元々PREに使用する相転移エンジンのノウハウを得るために作ったという側面もあるため、技術的フィードバックは比較的容易だった。
ただ、これ以上生産しようにも必要なドックを用意できていない。
PREシリーズは予備パーツからでっち上げで建造したPRE-02が竣工した後もまた更に戦術母艦であるPRE-03を建造している。
現在全米に支社を持ち、海外展開も行っているRE社であるが、ドックそのものの建造は時間が掛かってしまう。
現在保有するドッグは2つだけで、片方は稼働中のPREシリーズの整備・補給用で月面への物資集積所でもある。
もう片方は整備・補給以上に建造用で、こちらは現在PRE-03の建造をしているため、空いていなかった。
そのため、注文も来ていない現在、PREシリーズの方が優先となっている。
「で、次のLM-02Cへの改修作業ですが……。」
「あー、滞ってるんだっけ?」
『まぁ、コストがねー。』
LM-02C、ご存知LM-02の改修機である。
高効率要重力場アンテナと大容量バッテリーを標準装備、LM-02よりも倍近い活動時間と出力を持つ。
強化された出力を生かし、LM-02では不可能だったレールガンが装備可能、Dフィールドも強化されている。
コクピット周辺は装甲が分厚くされただけでなく、3基の小型Dフィールド発生器を備え、搭載されたCPUが状況に応じて個別・必要によっては2基、3基が一斉に発動、パイロットの生存性を向上させている。
また、重力場推進機が小型化、出力はそのままに軽量化に成功している。
そこに高機動ユニット・近接戦ユニット・砲撃戦ユニットの三種のユニットを装備し、あらゆる戦況に対応する事ができる。
しかし、当然ながらデメリットもある。
大量配備するにはコストが高いのだ。
一時は正式採用にまで行ったのだが、LM-02の最大の売りである整備性・低コスト・操縦性が悪化してしまうため、どうしても少数配備になってしまうのだ。
そのため、カラーリングを暗色して排熱を抑えた特殊部隊仕様なんてものが売れているのが現状だった。
こうした事情を踏まえて、換装ユニットそのものの再設計や改修が検討されている。
『ってな訳で、現在は簡略化したLM-02C2を開発中だよ。』
「開発とは言いますが、C型への改修の中からユニット換装システムをオミットして、一部兵装を固定化するだけですが。」
「まぁ、それで売れるなら良しとしとこうか?」
LM-02C2 エステバリスカスタムⅡ
C型の簡易型とも言うべき機体であり、より生産性・コスト・整備性・操縦性を重視した機体となっている。
コクピット周辺の装甲強化に小型Dフィールド発生器4基の設置・高効率要重力場アンテナと大容量バッテリーの採用による活動時間・出力の倍化・重力推進器のサイズダウンはそのままだが、C型一番の換装システムがオミットされている。
その分、機体の一部に固定兵装や装備が追加された。
左右の前腕部に本家エステバリスにもあったワイヤードフィストのナックルガードに小型Dフィールドを備えた腕部打撃装甲を追加、近接戦闘での攻撃力上昇と防御力の向上を図った。
他にも左即頭部に複合センサーの追加・レールガンの使用・搭載ミサイルの弾数増加等、様々な面で強化されている。
ちなみにこれの稼働試験をした教導隊からは「扱い易くて基礎能力の高い良い機体」であり、反面「素直過ぎて面白くない」との評価を頂いている。
…じゃじゃ馬な試作機にばっかり乗っていた弊害だろうか、既に普通の機体では満足できないらしい。
「で、PRE-03の進捗状況は?」
『凡そ3割かな。』
「基本的な構造は従来型と同じです。ただ、戦闘用LMの母艦としての機能を持たせますから、どうしても時間が…。」
「凡そ来年の初夏といった所でしょうか。その頃には竣工します。」
PRE-03、PREシリーズの最新艦である。
その外観はPRE-02エンタープライズを踏襲してコンテナ船に近いが、列記とした戦闘空母であり、性能は従来のPREシリーズと比べても遜色ない。
左右両舷にミサイル発射管をそれぞれ6基の計12基、各所に対空レーザー砲16基を備え、現存する全ての戦艦よりも高い火力を持つ。
LM-02を始めとする戦闘用LMの運用母艦であり、甲板の重力カタパルトを利用し、素早く艦載LMを出撃・展開させる事ができる。
また、艦橋付近にはLM-02G8機を半ば固定化した状態で配置、対空砲台としても運用できる。
搭載機体数は30機、予備に8機、パーツにばらせば更に6機搭載する事ができる。
他にもある程度搭載数を5機程制限する代わりにLS-01を一機搭載する事もできる。
LM搭載数のみを見ればRE本社防衛隊よりも上であり、即ち一国家の首都を陥落させる事も十分可能な戦力を運用できるという事でもある。
また、戦艦としては初のオモイカネ級AIを搭載、専門のオペレーター4名が付き、電子戦もこなす。
また、少ないブリッジクルーで運用可能であり、艦長と副長、通信士に操舵手、オペレーター4人もいれば運用できる。
そこにLMパイロットと整備班、生活班、医療班、歩兵部隊などを足した約500名程の人員で運用される予定だ。
「とんでもなく高性能ですね、これ。」
「…しかし、建造理由を考えますと、凄まじくコストパフォーマンスは悪いですな。」
『仕方ないよ。次来られたら危ないし。』
「それでも、出来れば技術的な面で決着をつけたかったよ。」
その場の人間は誰しも深刻そうな表情を浮かべた。
この艦が建造された最大の理由、それは誰あろう篠ノ之束の撃滅だった。
RE社に、否、アメリカ合衆国に、世界中の男性にとっての敵である彼女の存在を、RE社は本気で殺したいと考えていた。
そりゃ本社サーバーへの大規模ハッキング、多大な損害と少ないものの死者すら出したあの襲撃事件を忘れる者はいない。
もし彼女が世界の何処かで確認されたらそのまま殲滅できる戦力を即座に派遣するための手段こそが、このPRE-03の建造理由だった。
「次は無い。皆も、そう判断したでしょ?」
『僕らとしても異論は無いよ。』
「ですな。」
RE社
世界で初めてISに対抗できる兵器を開発・生産している軍事企業にして、アメリカの「金の卵を産む鶏」。
彼らは本気で自らの手で怨敵の殲滅を願っていた。
IS~漢達の空~
ホワイトハウス
大統領官邸にして、合衆国の中枢。
そこには現在、現政権の重鎮達が密かに集まっていた。
「やはりRE社一極集中は問題があると、そう言いたいのだな?」
先程までの部下と腹心達からの報告を受け、この国で最も権力を持つ者、即ち大統領が口を開いた。
「はい。軍需が元々寡占市場だったとは言え、現状に対し各メーカーは相当鬱憤が溜まっているようです。」
「ライセンス生産で十分だと思ったが?」
「それはLMの開発ノウハウを養うためのものでして。IS費用の削減もあって連中随分と焦っている様です。」
「態々中東の連中と組んでまで、かね?」
RE社のLMが入り、米国には活気が戻った。
空は全ての人々に開放され、ISによる女尊男卑の風潮はほぼ完全に消え去った。
世界の半分を占める生産力は月面開発によりフル稼働、経済は活発化して不景気は彼方へ消えた。
現在は月面方面の防衛を空軍に委ねるか宇宙軍を創設するかで揉めているが、それも直に解決する事だろう。
米国は順調に世界第一の超大国の座を直走っていた。
だが、ISにより今まで大きな利権を得ていた者達は違う。
LMの登場によりISは相対的に駆逐されていき、その勢いを失っていった。
現在はLM導入に反対している諸処の勢力が手を結び、最新の第3世代ISの開発に望みをつないでいるのが現状だ。
それでも喰いついていくためにRE社からLMのライセンス生産をしているのだから流石は米国企業、抜け目が無いと言うべきだろう。
その連中が何を考えたのか、同盟国のイスラエルと合同開発を行う事を決定したのだった。
「ISは一瞬で展開可能という特性から、今後は諜報活動に使用されるのではなかったのか?」
「所が連中、普通に高性能な機体を作って巻き返しを図るつもりのようでして。」
どう考えても無理である。
数に限りがあるISと量産可能なLM。
例えどんなに高性能だろうとも、数に限りがあるのでは物量に抗し切る事はできない。
戦争は数、質を突き詰めても勝てない事は歴史が証明している。
「…陸軍で開発中の潜入工作用ISはどうだ?」
「順調に開発中です。一部にLMのパーツを利用し、ある程度のコストダウンもできているとの事です。」
そして、今後の米国のIS活用法はアクセサリーサイズで格納でき、即座に展開できるという特性から不正規工作や非公式作戦への投入を前提としたISの開発が陸軍主導で進んでいる。
幾つかのIS関連企業が参加しているが、少しでも良い結果を残してISの生き残りを図りたいのだろうか、開発はかなり力が入っている。
「まぁいい。やりたい様にさせておけ。既に趨勢は決まっている。」
大統領の言葉の後に、議題はまた次に進んでいった。
「ふむ……経過は順調だな。」
ロシア大統領府
そこはアメリカと世界を二分する超大国の中枢であり、世界で最も広大な国土を有する国の中枢でもある。
現在、そこの主たるロシア大統領は腹心から報告を受けていた。
「LMか……少々疑問もあったが、成程。アメリカが主力にするのも頷ける性能だな。」
「えぇ、廉価版と言えど輸入できた事は幸いでした。」
そこでは現在、ロシアで運用・開発が開始されたLMの事についての報告がなされていた。
「国産型の開発は順調です。ISとの共有パーツをロシア産に切り替え、局地戦闘能力を向上、目視識別も可能なように頭部に複合センサーを内蔵させた上で形状を変更しました。」
「性能の方も劇的な向上は無いが、良い機体だ。今回の担当者は優秀だな。」
既に1度、IS関連技術の担当者がLM開発に携わったのだが、その人物は結果を出せずに更迭されてしまった。
対し、2人目の担当者は優秀であったため、国産機開発を大幅に前進させた。
上手くいけば、数年以内には純国産機が開発開始される事だろう。
「これからはISからLM、か…。時代の移り変わりは早いな。あの異常な兵器が既に過去のものになり始めているとは…。」
「IS自体はこれからも要人警護や潜入工作で生かされる事になるでしょうな。あの隠密性は有用です。」
ロシア連邦
この国は未だに超大国としての活動を止めてはいなかった。
世界の超大国が蠢き出す中、日本では最近変化が起こっていた。
RE社日本支社が公式にLM輸入開始にあたり、今一つLMが知られていない先進国の一つである日本でPRを始めたのだ。
とは言ってもやる事は簡単なものでしかない。
LM-02の動画や画像をネットにUPしたり、ゲームセンター等でLMのアクション・戦略シミュレーターゲームの発売、特集雑誌への掲載に作業LMの宣伝CMなどである。
軍需が冷え込んでいるのなら、民需を更に強化してしまえ。
普段仕事があまりないRE社広告部の面々が珍しく奮起した結果だった。
とは言え、画像も動画も機密や詳細スペックが知られるようなものでは無く、単なる火力演習や歩行訓練だったりする。
ゲームは当初店頭にあるシミュレーター型大型筐体とP○3の戦略シミュレーターのみだったが。
雑誌も軍事系のものだけで、当初は余り売れ行きが良くなかった。
しかし、ジワジワと民需が出てきていた所にこの宣伝だったため、効果は間をおかずに高まった。
これにより、IS先進国日本で漸くLMはその知名度を上げる事ができた。
そして、その直後に否定される事となった。
女尊男卑が進んでいる日本では、ISに対抗可能な兵器という謳い文句だけで眉唾物扱いされた。
RE社日本支社にも連日クレームが届いた。
中には担当者が本気で殺意を抱く様な代物もあったが、それでもRE社は販売を止めなかった。
だって、売れてるし。
今の今まで鬱屈として男性陣を中心に、LMは確かに広まり、そして確実に支持を集めていった。
ジワリジワリとだが、確実に日本にもLMは周知されていった。
各国、各勢力が次なる動きを出す前に、世界にある一つの知らせが入った。
IS適正を持つ少年の発見
世界は俄かにその情報を疑い、真実だと知れると、途端に動きを見せた。
日本政府は急遽その少年の保護を名目にIS学園への進学を決定。
少年の唯一の身内兼保護者の意向の元、専用ISを開発する事となる。
他、IS先進国であるイギリス・フランス・ドイツ、LMを満足に運用できるパイロットがいない中国がIS学園へ自国の代表候補生の転入を決定、件の少年とほぼ同時期に転入する事を決定した。
アメリカ・ロシアの2大超大国はそれを静観した。
LM主兵に切り替えた両者には、寧ろ男性IS操縦者を自国側に抱え込むのは邪魔にしかならない。
それに、もし男性が搭乗できる理由を解析できてもアラスカ条約で各国のISコア数は一定で、物量を生かす事は絶対にできない。
毒にも薬にもならないとして、二国はその少年への行動は緩い監視に留めた。
そして、たった一人の大天災はそれを実に楽しそうに眺めていた。
「うっふっふー♪いっくんったらおもしろー♪」
何処とも知れぬ秘密の場所で、大天災は笑う嘲笑う微笑う爆笑う。
「でもでも、これじゃまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ足りないよ。もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと楽しく愉快しく痛快しく悦楽しくしなくちゃ!」
「世界をもっと楽(おか)しくしよう。」
誰も知らない秘密の空間
童女の様な幼い笑い声が、女の喉から空間一杯に響き渡った。
ついに原作スタート
でも早々にブレイクの予感