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No.26699の一覧
[0] 【ネタ】迷惑な鋼のおっさん【IS 〈インフィニット・ストラトス〉オリ主 】[無人](2011/03/25 01:20)
[1] 第02話[無人](2011/03/27 01:21)
[2] 第03話[無人](2011/03/31 23:39)
[3] 第04話[無人](2011/04/04 19:31)
[4] 第05話[無人](2011/04/15 23:27)
[5] 第06話[無人](2011/04/16 16:10)
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[26699] 【ネタ】迷惑な鋼のおっさん【IS 〈インフィニット・ストラトス〉オリ主 】
Name: 無人◆8f577150 ID:0a7daea4 次を表示する
Date: 2011/03/25 01:20












 目覚めると深い深い暗闇を落ち続ける感覚が全身を支配していた。
 半強制的に入らされた職場や地元の活動などに追われる日々に疲れていた俺は、余裕というものを失っている状態が続いた。何をなすにも機械的・事務的な日々に終止符が打たれるのはもっと先だと思っていた。それがまさかこのような異常事態によるとは思わなかった。

『我は問う。汝は、強き者か?』

 そんな声が暗闇に響き、得もいえぬ強制力により自然と口が動かされる。

「……否。私はいままで自分と比較して“弱い”と思うような人間を見たことがない。ゆえに否……私は、人間として最弱の部類だ」

 彼我を比べられるようになった頃から俺は自分が他者より優れている部分というものを発見できなかった。あらゆる分野で俺は敗北しか知らない。誰にも勝てないし、相手にもならない。多くの分野で“慣れる”ということは技術の向上に繋がるが、俺の場合はある一定の段階まで修得するとそれ以上に技術が伸びることはなかった。皆が言う感覚というものが見聞きする限りで一切、参考にならなかったことも要因の一つだ。皆と同じようにすれば同じことができる、なんてことは同じような感覚を持っている者同士にしか当て嵌まらない。

『我は問う。汝は、力求む者か?』

 どこまでも深い闇に落下しながら俺に語りかける声は人間のものとは思えなかった。個人的な印象を言えば、合成された機械音声のような感じだ。

「……否。力があろうとなかろうと私には何の意味もない。私の価値観において力は何の利益も私には齎さない」

 どんな勝負事でも勝利したところで喜びを感じられない。どんな敗北でも悔しさを感じない。何を奪われても、失っても何も感じない。
 感謝されると気持ち悪い。ありがとうという言葉が聞きたくない。俺がどう思っているかわからないとどうアドバイスすればいいか分からない。少しでも理解してやりたいと言って無理やり俺の価値観を説明したときに使った言い回し。これが完璧に自分を説明できているとは思わなかったが、最低限のオブラートに包んだらこれ以上の言葉が出せなかった。
 俺は人に理解されたいと思わない。むしろ、理解されたくないと思っている。

『我は問う。汝は、人であることを望むか?』

 愚問だった。この声の主は、人間じゃない。そして、今の俺が置かれている状態は、夢幻の類だ。だから、夢現のぼやけた思考で自分の真実を口にできる。

「否! 私は、人である必要がない。欲しい者がいて、与えることが可能であるならば、誰にだって私の命を譲る」

 生きていることは恐怖でしかない。環境、人脈、自己に恐怖する。壊れることを許さないすべてに恐怖する。

『汝、魂足りえる格者。空ろな我が器を満たすことを望むか――、否か?』

「私が欲しい? 心臓だとかが欲しいと言うなら捥ぎ取ればいい。欲しいならいくらでも譲ってもいい」

『否。我が器を満たすは、人足りえぬ人でなければならない。我が器を満たせ、欠落者』

「欠落、か」

 そんなことをはっきりと言われたのは初めてだ。変なヤツとは言われ続けたし、思われていただろうが、欠落というはっきりとした評価を下されることになろうとはな。しかも、その評価はどことなく嬉しいと感じた。いままで言われたどんな感謝の言葉より、どんな褒め言葉よりも胸に響いた。理解されることも評価されることも好きではなかった俺にも他者からかけられた言葉で嬉しいと思える心があったのだな。

「……いいな。アナタが何者であろうと私はアナタが気に入った。アナタだったら悪魔だろうと怪物だろうと私のすべてを譲ってもいい」

『格者の承認を確認。格者を用いてのコア修復を開始』

 その声と共に俺の身体を襲っていた落下する感覚が消失した。その代わりに俺を襲ったのは、いままで感じたこともないような墜落という名の衝撃だった。








  † † †






 再び意識が覚醒し始めると全身を襲う衝撃の感覚が徐々に現実の痛覚を俺に与える。
 視界はまだ開けていないが、どうやら俺は現在進行形で攻撃を受けているようだ。しかも、機械的なサウンドが鳴り響いていることを鑑みるに完全武装した奴らが襲撃者であるようだ。それにも関わらず、俺の身体が感じる痛覚はゴムボールを当てられている程度にしか感じない。
 攻撃音の合間に僅かなにだが人の声が聞こえたように思った。その声は、年若い男女のもの。俺を攻撃しているのは少年少女だとでもいうのだろうか。確かに少年兵だとか女性兵というものは存在するし、その存在を否定することもしない。けれど彼らが使用している武器は、どうにも個人携帯できる武装としては見合わぬ破砕音や爆音が響いているように感じる。
 俺が暮らしていた環境からでは考えられない状況に陥っていることは間違いない。ならばこの状況は、さきほどの声の主が陥っている状況ということなのだろうか?
 殺されることは恐怖を感じるが、嫌ではない。俺を殺したいなら殺せばいい。
 しかし、俺はただ殺されることを望まない。恐怖からは逃れたい。まして、今の俺は誰かの身体を使っている状況にあるはずだ。逃げることができるのならば逃げ出したい。逃げられないのならば死に物狂いで反撃する。

「キュウソ、ネコ、ヲカム……カナ」

「「ッッ!?」」

 意識して声を出すと対峙する存在たちから驚愕の気配が感じられた。俺が出した声は、先ほどまで俺に語りかけていた声と同じ機械による合成音のような声だった。どうやら俺が満たした器は正真正銘の機械であるらしく、喋らないと思っていた機械が喋れば誰でも驚くだろう。そう思いながらも声を出したと同時に視界が徐々に色を取り込み始めた。まだまだ明瞭ではない視界に移るのは二つの人型。光の剣を操る白い鎧と見えない砲撃を放つ赤黒い鎧。俺が知り得る限り、こんな兵器が実用化されているという話は耳にしない。まるでゲームや漫画の類だ。

「うおおおおおおおおお!」

 間断なく撃ち込まれる不可視の砲撃を回避し続けるもその幾つかは当たってしまう。それによって動きが鈍ったところに雄叫びと共に白い鎧が光の剣を携えて襲ってくる。

「一夏、馬鹿! ちゃんと狙いなさいよ。これで四回目じゃない!」

「狙ってるつーの!」

 少女の大声に少年の大声が反論する。
 剣による攻撃に狙うもなにもないだろう。近接格闘武器による攻撃は、その武器自体の間合いと持ち主の技量による間合い、その両方を併せた上での間合いに相手を取り込むことができれば必ずあたる。それでも俺が回避できているということは、白い鎧の主は自分自身の総合的な間合いを理解できていないということになる。
 俺に攻撃を回避された白い鎧が距離を取り、それを赤黒い鎧が砲撃で援護する。あたれば痛いが、行動に支障が出るほどの威力は込められていないことはわかったのでこちらからも迎撃を試みる。すると両肩や両腕が自然と鎧たちのいる辺りに何某かの光を撃ち出す。

「どうすんのよぉ! 何か作戦がなくちゃ、こいつには勝てないわよ!」

「逃げたきゃ逃げてもいいぜ?」

「誰が逃げるっていうのよ! 私はこれでも代表候補生よ」

「そうか。じゃあ俺も、お前の背中くらいは守ってみせる」

 俺の攻撃に対して声を張り上げる少女の声に少年の声が臭い台詞を放つ。

「ふぁっ!?」

「集中しろ!」

 あまりにも恥ずかしい台詞だったの反射的に攻撃してしまった。
 再び距離を取る二機に追加の攻撃を仕掛けるが、一定以上はなれた二機がなにやら会話を始めたので一時攻撃を中断する。外界を認識する機能が完全ではない状況でこのまま争いを続けるのは得策ではない。こちらの様子を伺うような素振りが感じられるので状況は俺の方が有利である可能性もある。二機の会話の中から現状を打破する情報を得られれば自分がどのような状態にあるのか、どのような事態に陥ってしまっているのかが分かるかもしれない。

「あれって、本当に人が乗ってるのか?」

「はあ? 人が乗ってなきゃISは動かな――そういえばアレ、私たちが会話しているときってあんまり攻撃してこないわね。まるで興味があるみたいに聞いてるような」

 人が乗って動かす“アイエス”、か。その言葉に聞き覚えはないし、軍事用語とかだったらなおさら理解できない。少なくとも二つの鎧たちには、俺の姿が人が搭乗するタイプの機械に見えているということか。

「でも、無人機なんて有り得ない。ISは人が乗らないと絶対に動かない。そういうモノだもの」

 無人機ではありえない“アイエス”ね。しかも、無人機が存在したらいけないかのような物言いだ。
 確かに今の俺がその“アイエス”という機械になっているのだとしたら自立行動できる戦闘可能な兵器という極めて危険な代物だろう。遠隔操作ならまだしも自己で判断する戦闘機械があったとしたら暴走したときの脅威は計り知れない。人工知能が自我に目覚め、人類に襲い掛かるなんてかなり昔からあるネタだ。

「仮に、アレが無人機だったらどうだ?」

「何? 無人機なら勝てるっていうの?」

「ああ。人が乗ってないなら容赦なく全力で攻撃しても大丈夫だしな」

 すごい分かりやすい答えだった。どうやら俺を攻撃している二機は人間、あるいは人間の味方であるらしい。人命を気にして本気を出せていなかったというなら俺の側が有利であるという状況はありえないということか。しかも、なにやら“れいらくびゃくや”とかいう必殺技のような攻撃をこれから仕掛けてくるらしい。というか、彼らは俺の耳が聞こえていないと思っているのだろうか? これから何をするかという会話を声も潜めず行っている。

「一夏ッ!」

 それは突然の声だった。
 今にも必殺の攻撃を仕掛けようとしていた二人以外の少女の声。“イチカ”というのは名前なのだろう。

「男ならそれくらいの敵に勝てなくてなんとする!」

 なんという強烈な叱咤激励であろうか。しかも、言葉からするに“イチカ”というのは男性の名前らしい。俺を攻撃してくる二機のうちの片方が男の声を出していたのでその人物のことなのだろう。そして、この声の主も確実に始めの二機の仲間であろうことも容易に想像できる。位置的に挟撃される可能性があるため、1人でいる方に牽制目的の弾幕を放とうと両腕を向けた。

「うおおおおおぉ!」

 当てるつもりはなかったが仲間に危険が迫った状況でそこまで分析している暇もなかったのだろう。男性の声の方が雄叫びを上げて突っ込んできた。
 見ると先ほどよりも僅かに大きくなったように見える刀身の剣を振り被り、俺を両断しようと向かってくる。

「以外ニ、遅イナ」

「何っ!?」

 エネルギー兵器による攻撃の無効化、シールドバリアーを斬り裂いてシールドエネルギーに直接ダメージを与えることが可能な最高クラスの攻撃能力。そのような情報が頭の中に羅列されていた。その情報が理解できれば刀身を避けて刀の柄を押さえる。難しいことのはずだが、相手の動きが手に取るように“見えた”ので楽々と行えた。

「「一夏っ!」」

 イチカという少年が俺に捕まったことで仲間の少女たちが叫ぶ。
 それなのにイチカという少年の顔には余裕の表情があった。

「狙いは?」

『完璧ですわ』

 少年の言葉と少年の鎧に備え付けられていると思われるスピーカーから俺の耳が拾ったまたしても少女の声。ふたつの言葉で瞬時に防御体勢を取った。
 それと同時に上空からいくつもの衝撃が降り注いだ。言葉通り、狙いは完璧。俺が捕まえていた少年には絶対にあたらない射角からの攻撃だ。その衝撃で捕まえていた少年に逃れられた。

「セシリア、決めろ!」

「了解ですわ!」

 その掛け合いと同時にさらなる大威力の砲撃が顔面を襲った。
 鋼が弾ける音がやけに響いた。仰向けに倒れ、空を見上げることなった。
 
「間一髪でしたわ」

「セシリアならやれると思っていたさ」

「と、当然ですわね!」

 少年の言葉に俺の顔面を撃ち抜いた少女がお嬢様風に喜びを表しているのが耳に届いた。
 この“イチカ”という少年は一体何者だ?
 たった数分の攻防の中で3名もの少女達から好意を寄せられているような雰囲気じゃないか。これではまるでゲームや漫画の主人公そのままじゃないか。
 そう思ったら何故か全身に力が漲ってきた。

「ミ、ミナギッテ、キ、キ、キ――」

 うまく声が出せないが、このまま負けてやるのは納得できないと感じた。
 これまでどんな勝負事で負けても気にしたことなどなかった。俺は弱いし、要領も悪いから大抵のことで負けるのは当たり前、そう思っていた。だから何も感じないはずなんだが、今の状況は何故か納得できないという気持ちが沸き起こった。現実的ではない主人公タイプの少年とそのお付の少女達に敗北する。これでは俺が少年少女たちの絆を深めるために登場するただのやられ役みたいじゃないか。
 俺がはじめからやられ役なら構わない。それが運命だと受け入れられるし、やられ役らしく無様に散るのも悪くないだろう。
 しかし、いま俺が置かれている状況は現実的ではない。まず間違いなく有り得ない状況が目の前にはある。さらに言えば、俺が現実の中で唯一望んでいたことを可能とする環境が整備されていそうな雰囲気がある。周囲を気にすることなく、暴力を行使できる戦場。暴力を揮い、暴力を振るわれる。それが罪ではなく、正当な権利としてある世界。殺し、殺されるという交流が可能な世界が目の前にあるのかもしれない。

「ソレナラ……楽シイ、カモ知レナイナ」

 強さなんていらない。力なんていらない。人でありたいなど思うことさえできない。
 ただ戦いを、終わらぬ闘争を、弛まぬ命の緊張を――俺に与えて欲しい。

「一夏! あいつまだ動いてる!」

「くっ、往生際の悪いやつだぜ!」

 少女の声に白い鎧の少年が再び光の剣を振り被っている。
 その姿は格好良い、のだろうな。素晴らしい主人公の輝きだ。子供の頃は俺も憧れていた姿だ。自我が成長するとその姿はとても恥ずかしい姿に思えていた。
 しかし、それと同時に“若さ”というものを徹底的に叩きのめしたいという願望が生まれていた。何を馬鹿なことをと十分に若い年だった俺はすぐにそれを忘れた覚えがある。そんな“若い自分”がまだ残っていたのか、いや、この場合“若返った”と言えば良いのかな。少なくとも青年の域をでない年数しか重ねていない俺の老衰しきった心が潤ったように感じる。

「おおおおぉぉ……っでぇえ!?」

「何ヲ、驚イテイルンダ?」

 今にも俺の頭に剣を振り下ろそうとしていた少年があと一足の距離に接近したところでその表情に驚愕の色を表した。
 あまりにも呆けた表情に直球ど真ん中のストレートパンチを叩き込んでやった。

「「「一夏(さん)!!」」」

 それほど力を込めたつもりはなかったが、メートル単位で吹き飛んだ鎧の少年。それを心配するように駆け寄る鎧姿の少女達。
 今の今まで戦いというものを繰り広げていたであろう少年少女たちの姿。それがようやく鮮明に俺の視界に映し出されていた。心なしか解放感を感じる。
 赤黒い鎧の少女が倒れた少年に張り付き、空から砲撃してきたであろう青い鎧の少女が見たこともない大砲のような武器を構えるが、少年と同じように呆けた驚愕の表情を俺に披露している。

「あ、貴方、人間ですの!?」

 何を当たり前のことで驚いているんだ。君らも鎧を着込んでいるんだ。見た目が無人機械のような姿でもその中に人間が入っていないとは言い切れないはずだ。

「状況ハ理解デキタ。私ハ、君タチノ敵ナノダナ?」

 それなら戦おう。俺は強さも力も勝利も望まない。
 ただ戦いを、終わらぬ闘争を、弛まぬ命の緊張を――俺に経験させて欲しい。

「何ガ原因デ始マッタカ知ラナイガ、私ハ戦ッテ良インダロウ?」

 倒れる少年とそれを気遣う少女達が俺を見ている。俺の存在は彼らにとって異質らしい。それはとても素晴らしい。

「サア、第二らうんどヲ始メヨウ!」

 再び攻撃態勢に入った俺の姿に少女達が武器を構える。
 その姿はとても美しい。現実的ではないゆえに俺は“人間”であることを強要されていない。
 ここでなら俺は、生きたいと思える。“人間”と戦う“機械”として戦場という名のパラダイスを得ることができる。
 強くなくて良い、力などなくて良い、勝利などいらない。
 ただ戦いを、終わらぬ闘争を、弛まぬ命の緊張を、

「イマ此処ニ――ッ!!」

 背中で爆発するスラスターの炎を推進力に武器を取る若者達に俺は鋼の拳を振り上げた。


















 つ、づく……?




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