蛮・玄人の試合だが、
「25%だ! 25%の実力で戦ってやろう」
そう言って出してきている霊力は、昨日の約2倍以上に感じられる。
1次の霊力測定の時は何%であるのか言ってなかったらしいが、かなりの霊力はでていたらしい。
ゆっくり見ていると確かに昨日の相手よりは、今の相手の方が霊力は強そうだ。
それなりに霊力を見定めて、霊力の調整をしているようだな。
これは、ユリ子ちゃんや雪之丞でも結構油断ができないかもしれない。
動きに癖が無いか見ようと思ったが、上半身はゴーグルをかけている以外は何もつけていないので、筋肉をピクピクさせているのが気持ち悪い。
これで、勘九郎と同じくオネエ言葉なら見たくも無いが、そうでないところが救いだ。
相手は風の精霊を使うタイプの術者で、言霊を発していて、
「風のあるところ神あり!! 神のあるところ力あり!!」
とまわりの風の精霊の力を借りているようだが、蛮・玄人はその言霊によっておこった風の中を影響もうけたような様子もなく、
「弱いな!!」
と言って、体格が大きいわりには早い速度で相手に走りこむ。
霊力による風の精霊の力を借りているのに、その中を強引に入ってきただけあって、対戦相手へ次の手をださせずにワンパンチで沈めた。
「動きは単調なんだけど強いな」
ひとりごとのように言ってたら六道夫人が、
「あの蛮・玄人って選手かしら~」
「ええ。今みている限り動きは単調なんですが、それをおぎなってあまりある霊力がありますね」
「そうね~。霊力の強さだけで~、特に防御もしていないのに~、風の精霊が届いていなかったのね~」
「それ以外、特にわかったところってないんですけど」
「試合開始直後に相手の様子を見てから~、霊力をきめているようよ~」
「そこが対策のポイントになるんですか?」
「今のところ底を見せていないから~、よくわからないのよね~。横島君のようにね~」
まさか六道夫人って、文珠のことに気がついているんじゃないだろうな。
「何を言ってるんですか。冥子ちゃんと一緒での除霊の時の力が最大ですよ」
「うーん。それならそれでもいいわよ~。冥子との協同除霊これからもよろしくね~」
「ええ。今まで通りにお願いしますね」
こういっておけば無茶は言ってこないよな。
「あら~、この前、院雅さんと話をしたら~、加賀美さんがGS試験受かったら~、協同除霊を受けられる回数は増やせるって言ってたわよ~」
俺はまわりにいるメンバーを見ると知らなさそうだ。
院雅さん、また俺たちにだまっていたな。
「うーん。院雅さんに聞いていないのと、高校生が多いからそこまで仕事は、お受けしていないはずなのですが……」
「あら~、そういえば、院雅さんに横島君たちに内緒にしておいてね、って頼まれていたのよね~。おばさん、困っちゃう~」
六道夫人に裏はないだろうから、
「冥子ちゃんとの協同除霊のこともありますけど、院雅除霊事務所内のことなのに、なんで六道夫人が困るんですか?」
「ここまで話しちゃったから言うけれど~、加賀美さんがGS試験受かったら~、新しくGS助手を雇うって話があったのよ~。だから、六道女学院の1年生を推薦しておいたのよね~」
院雅さん、せめてひとこと伝えておいてくれよな。
多分、六道女学院からGS助手をアルバイトとして雇うことによって、六道夫人が生徒の危険性を下げるのを考慮しているんだろうな。
そういうところでは俺達への負荷が少なくなるように、ある程度は考えてそうしているんだろうけど、やっぱりひとこと話しておいてほしいよな。
「そうでしたか。とりあえず、院雅さんから話を聞くまで聞かなかったことにしますよ。みんなもそれでいいよね?」
事務所の皆も、院雅さんが突発的に何かおこなうのにはなれてきているのか、黙って頷く。
「よかったわ~」
しかし、1年生というとまさか弓さんか、それとも一文字さんが来るのか?
蛮・玄人以外にめぼしい試合は、ここでは見当たらないので、あたりさわりのない話を冥子ちゃんとしていると、ひのめちゃんの。構ってよ視線も感じるが、
「若い人ばかりで話して誰も相手してくれないのね~。おばさん、すねちゃうんだから~!!」
「ああっ、お母さま~すねないで~~!!」
冥子ちゃんのフォローもむなしく六道夫人が離れて行ったが、逆に離れて行ってくれたのは助かる。
六道夫人も自分のところの生徒の試合をみるのが、今回の仕事じゃなかったのか?
しかしっというか、GS関係者からの視線が痛いぞ。
そばに居れば居たで嫉妬っぽい視線がくるは、すねて離れて行ったら、六道家に何をやったんだという目でみられるし。
幸いなのはここに冥子ちゃんがいるから、そこまで強い視線ではないけれど。
六道夫人がいなくなると一時視線は集まったが、いまだぷっつん娘の悪名がぬぐいきれていない冥子ちゃんがいるおかげか、視線が減ってきた。
さて次の8試合での注目はおしりとふとももが魅力的な九能市氷河と、個人的にはおしりがむずむずしてくるので嫌だけど鎌田勘九郎か。
試合が始まると秒殺していたのは、勘九郎で、相手は黒焦げでぶっ倒れていた。
「ぶっといのはお嫌いかしら?」
って、勘九郎が言うと、別な意味に聞こえてきて『いや~』。
勘九郎の霊波砲なんだけどなぁ。
九能市氷河は「生きた人間を斬るのって、なんて快感ですの~」って、まだ、斬ることだけで、人の命まで奪おうとするレベルでないのだけが救いか。
対戦相手の状態は語らぬが花であろう。
冥子ちゃんは、こういうのではプッツンしない。
のんびりとした口調で
「だいじょうぶかしら~~」
なんて言っているぐらいだ。
冥子ちゃんと俺のまわりからは、ますます、人が減っていっているけど……
あとの残り6試合は特に見た感じでは、注意する相手は今のところいないようだな。
2回戦最後の残り8試合での注目は、雪之丞の相手が、俺と去年あたったワン・スーミンであることだ。
チャイナドレス風の霊衣のチラリズムがいいなぁ。
雪之丞とワン・スーミンの戦いは、雪之丞の霊波砲を、ワン・スーミンが神通棍でそらして、ワン・スーミンが逆に神通棍の間合いで戦おうとする。
雪之丞は、その神通棍より内側に入りたいのだろうが、入れないでいる。
ワン・スーミンの棍術の技量は高いな。
ただ、雪之丞が魔装術を発動させると、パワーアップした霊波砲をそらしきれず、かすったところを、雪之丞がチャンスとみて、連続霊波砲でしとめにかかった。
あとにはのびているワン・スーミンがいた。
倒れたことが幸いしたのだろう。霊波砲は1発ぐらいしかまともにあたっていないようだ。
もしかして、ワン・スーミンって、実力はあるのに運が悪くて、合格できないだけか? タイガーみたいに。
GS試験合格者32名の確定はしたが、力がありそうなのは、雪之丞とユリ子ちゃんはおいといて、鎌田勘九郎、蛮・玄人、九能市氷河に、意外にも銀ちゃんか。
才能はあったんだろうけど、習い初めてから多分、2,3ケ月程度の時間しかなかったはずだぞ?
聞いたことのない除霊事務所で習っていたようだけど、よっぽど相性がよかったのか?
3回戦は先のメンバー以外に目立つものもいなくて、優勝候補は雪之丞で、組み合わせからいってベスト4に入るのは鎌田勘九郎、蛮・玄人にユリ子ちゃんといったところか。
その合間に俺の影にいる地竜の里目から合図がきた。
近くに蛇髪もといメドーサが近づいてきている。
「あれ? 蛇髪さん、どうしてGS試験会場のようなところに来ているんですか?」
「私たちの企業がスポンサーになる番組の主役が、このGS試験に出ると聞いて、見に来ることになってね」
「へっ? それは、なんという番組でございましょうか!?」
われながら、素っ頓狂な声で聞いていたかもしれない。
「『踊るゴーストスイーパー』っていうテレビ番組よ」
ニタリと笑いながら答えるメドーサをみて、俺は『何を狙っている?』と考えるが、ここで直接聞く訳にはいかない。
まさか、魔装術を銀ちゃんにさずけたのか?
そのわりには、まだ魔装術を使っていないし、神通棍で戦っているから、そっちの線では無いと思うのだが……
メドーサのことだ。根拠なく、近づいてきて、知らせるわけはないだろうから、
「蛇髪さん、もしよろしければ、仕事のことで少しお時間をいただくことはできますか?」
メドーサはニヤッとしながら
「あとで、よろしいかしら。これでも、今回のGS試験の内容を会社に報告するので」
「なんで、法務部所属の蛇髪さんが?」
「なんてことは無いけれど、公の場では話すわけにいかなくてね。仕事の話があるというのなら、あとで事務所によりましょう」
今はここまでか。あとで話がきけるというなら、それでよいかもしれない。
そうなると、気にかかるのは銀ちゃんの試合だが、メドーサと話しているうちに終わってしまった。コンチクショー。
メドーサか、そのうえのアシュタロスに踊らされているようで癪にさわるが、ユリ子ちゃんへ助言しにいこう。
「冥子ちゃん。ちょっと、ユリ子ちゃんのところに行ってくるけど一緒に行かない?」
今の立場のメドーサが手を出すとは思えないが、一応保険だ。
「え~、この~、試合が終わったら~、昼食の時間よ~」
「あっ、そっか。ちょっとしたおちゃめということで、許して、冥子ちゃん」
「これくらい、いいのよ~。だって、お友達でしょ~」
まさか、冥子ちゃんに昼食の時間帯であることを指摘されるとはなぁ。
どこかあせっていたか。
けれど、よく考えると『踊るゴーストスイーパー』はダミーで、霊力の強さからいうと、蛮・玄人に魔装術でも教えたか?
それともメドーサはまわりくどい方法を好むから、そうと思わせて、また、鎌田勘九郎に魔装術を授けたか?
だとしても、アシュタロスやメドーサのメリットがわからないんだが。
このあたりは、院雅さんにでも相談してみるか。
さすがに昼食か、事務所には顔をだすだろう。
昼の休憩時間にあたるとき、冥子ちゃんやメドーサとはわかれて、今回のGS試験参加者や、見学にきているひのめちゃんやおキヌちゃんと近くの公園で食事をすることになった。
銀ちゃんの声援を見て、院雅さんは、お弁当だけ預けて事務所にもどったとのことだ。
あとでPHSによって連絡をとったのだろうか。
どっちにしても、雪之丞とユリ子ちゃんの順位決定の報告にはついて行くけどな。
肝心なことだがまわりにいる事務所のメンバーに、
「近畿銀一だけど、もしかするとメドーサがかかわっているかもしれない」
「なんでそんなことを思うんですか?」
とは、次の対戦相手になるユリ子ちゃん。
「さっき、蛇髪に変装したメドーサと横にいたのだけど、観客席にいたメンバーは知っているよな?」
ひのめちゃんや、おキヌちゃんは、黙って首を縦にふる。
雪之丞はぶぜんとしているが、メドーサが超加速を使えることは知っているので、まともに戦えばあっさりと逆にやられることはわかっているので、今は手をだしていない。
しかも、院雅除霊事務所分室の売り上げトップのお客様だしな。
院雅さんが作ってくれたお弁当をパクつきながら、
「『踊るゴーストスイーパー』のスポンサーとして南部ホールディングスがついているそうだ。多分、そのためだけにわざわざGS試験場まで見にくる必要はないはずだから、またGS試験で、手下になりそうな物を送り込もうとしているのかもしれない」
「メドーサがそんなわかりやすい手でくるのか?」
とは雪之丞だが、俺は、
「あいつらはまわりくどい手を好むから、銀ちゃんもとい近畿銀一ではなくて、他の受験者かもしれない。はっきり言えばわからないってことだな。『踊るゴーストスイーパー』っということ自体がフェイクかもしれないけれど、近畿銀一は要注意かもしれないから気を付けるようにな」
「えー、そうします」
「俺のにらんだ通りできると思ったら、メドーサがからんでいるのか」
「おーい。どこまで、話をきいていたんだ。雪之丞」
「冗談だ」
「おい。人生真面目に生きているんじゃなかったのではないか?」
「真面目に生きていたら、馬鹿をみるってのが、妙神山で経験したからな」
うーん。小竜姫様の生活ぶりをみて、なっとくしたのか。
それとも、老師のゲーマーっぷりのせいか?
どっちでもいいのだが。
「とりあえず、俺はユリ子ちゃんの試合場の近くで待機しているから、皆も蛮・玄人、鎌田勘九郎と念のために、九能市氷河の試合状況を確認してくれ」
「妥当な線だな」
そして、昼食後の4回戦。
16名8試合が一度に対戦する。
その中で、ユリ子ちゃんと近畿銀一が対峙するのを俺は、試合場のすぐそばで見守っていた。
ユリ子ちゃんと銀ちゃんが対峙するのを俺は、試合場のすぐそばで見守っている。
銀ちゃんの武器は神通棍に対して、ユリ子ちゃんの持っている霊刀は、令子の神通棍をあっさり斬ったと聞いている、あの妖刀シメサバ丸が元だもんな。
おキヌちゃんの包丁として使ってもよく切れていたしなって、それは別か。
普通に考えたら、一瞬でけりはつきそうだが、雪之丞が銀ちゃんと「戦ってみたい」と言ってたのが妙に気にかかる。
審判の「試合開始!」を合図に、ユリ子ちゃんが間合いをつめて、袈裟斬りだが、本人自身を狙うよりは、神通棍で守らせる。
その神通棍をそのまま叩き斬るというのが基本で、第一手は大概これできまるんだよなとみていたら、銀ちゃんの神通棍はきれいに受け止めていた。
神通棍にそれほど高い霊力を感じないのに受け止めている?
俺の疑問とは別に試合場では動きがあり、銀ちゃんが攻撃に移った。
その速度は、それなりに速いが、演技としての美しさを求められる殺陣の呼吸がまじっていて、実用的ではない。
簡単に言えば、予備動作があって、ボクシングでいうテレフォンパンチのようなものだ。
普通のGS相手とならこれでもかわせないかもしれないが、そこは、古武道出身のユリ子ちゃんはしっかり見切って、剣の引き際に応じて歩法を駆使して、自分の間合いに銀ちゃんをとらえている。
しかも、視覚的にも、霊力的にも死角の位置への移動をして、これは、寸止めで決まりだ。
のはずだったが、銀ちゃんはこの霊的死角からの攻撃に対しても防御した!?
一般的には知られていない霊的死角に入られたら、事前に知らなければせいぜい間合いを取って逃げるぐらいしか手がないはずだが、銀ちゃんは神通棍で対応している。
これは何だ?
ユリ子ちゃんの霊刀と、銀ちゃんの神通棍では、リーチ差から、どうしても、ユリ子ちゃんが一歩はいらなければいけない。
実際何度も入っているのだが、いざ、霊刀を当てようとすると、神通棍で防がれる。
しかも、攻撃より、防御の動きの方が、神通棍の動きは速い。
ユリ子ちゃんが近接戦では拉致があかないとみたのやら、霊刀を両手から片手に持ち方を変えて、霊波砲も含めた攻撃に移るが、銀ちゃんの防御は神通棍ですべて防がれていく。
銀ちゃんはまるで、すべての攻撃を読んでいるかのような防御だ。
「やはり、続いていたか」
そんなところに、すでに試合が終わったのであろう、雪之丞が声をかけてきた。
「ああ」
「さすが、俺が見込んだ奴…!!」
この戦闘狂に見込まれた銀ちゃんが、決勝にいかない方がいいなと思いつつも、この試合このままだとユリ子ちゃんが負けるか。
銀ちゃんが持つ神通棍の霊力は高いように見えないのに、トップクラスのGSの神通棍も叩き斬ることも可能なユリ子ちゃんの霊刀に対しての防御方法があるとみるのが妥当だろう。
あまり知られたくはないのだが、ここは決心をするべきだな。
俺はユリ子ちゃんに声を投げかける。
「ユリ子ちゃん、五行の札を5種類とも使って、様子を見ろ!!」
ユリ子ちゃんは、こちらを見ずに袖から5枚の札をだす。
五行とは、水火金木土の5種類だが、一斉に5枚の札を銀ちゃんに投げつける。
5枚とも、銀ちゃんに受け止められたが、それがこちらの狙い。
投げつけた札は、木と水の札が短い時間で消滅して、火金土の札はそれよりも数瞬あまり長い時間で消えていく。
相手の特性を知るのに攻撃として使うならば『五行相剋』を単純に考えて、金は木に勝ち、土は水に勝つであるが、金と土の霊能力をもっているとも解釈はできる。
しかし通常は、霊能力の特性は1種類であり、本来ならば、攻撃に相性の良い霊能力でも、霊力に差があれば、あっという間に負けてしまうことがある。
つまりは、木の札が早めに消えたということは、木は土に勝ちであるはずが、銀ちゃんの土属性が強力であったために、負けがはやまったのであろう。
「ユリ子ちゃん、木行を中心に戦うんだ」
「はい」
今度は、ユリ子ちゃんから返事がくる。
さっきよりは、余裕がでてきた感じだな。
平安の五行の術は、現在ではすたれているから、知っているものも少ない。まだ風水の四神の法なら一般的なんだけどな。
ユリ子ちゃんは、木行の札を五芒星の位置へ霊力で配置して、試合場を木行の場に変化させる。
このあたりは、木行であるサイキック五行青竜陣と同じだが、ユリ子ちゃんが自身で木行の札を書いているため、相性が抜群によい。
それにたいして、さすがに五枚の札による五芒星の中では、目に見えて銀ちゃんの動きに衰えがでだしてきた。
だが、それでも、銀ちゃんの神通棍の防御の動きは、若干しか落ちていない。
あの神通棍は通常のものでないな。
メドーサが何か関係してるっぽいから、あとで、つっこんでやろう。
院雅さん経由でだけど。
それでも、神通棍の動きが遅くなったところでユリ子ちゃんは、霊波砲をダミーにして、霊刀を銀ちゃんの首筋にあてていた。
「私としてはこれ以上、刃先を押したくはないのですけど……」
「俺の負けや」
そうして、銀ちゃんはおとなしく、神通棍を手放してそのままの体制でいたので、ユリ子ちゃんが刃を返して霊力のこもっていない峰うちで軽くふれたところで、銀ちゃんが倒れる。
審判が、それを確認して、
「TKOにつき勝者、加賀美ユリ子選手」
まわりからは、女性のブーイングやら、悲鳴やら聞こえてくるが、気にしちゃやっていけない。
俺は、ユリ子ちゃんに、
「やったな。銀ちゃんの神通棍は手ごわかったけど、よくやったな」
ユリ子ちゃんが、反応するよりも早く、
「銀ちゃんっていうからには、やっぱり横ッチか?」
「ああ。やっぱり小学校時代の銀ちゃんか」
「こんなかわいい娘の師匠をやっているってやっぱりオイシイやっちゃな」
いや、別にオイシイ思いをしていないぞと思いながらもスルーすることにして、
「TVで見ていて似ているとは思ったのだけど、まさかGS試験で会うとは思っていなかった」
「ひさびさなのにすまんけど、ちょっと、あとで話をさせてもらってもええか?」
「ええけど」
「それじゃ、選手待合室でいいかぁ?」
「決勝がおわったらな」
「それでいいわ」
そういいつつ、試合会場をさっていったけど、しっかりと
「今度、踊るゴーストスイーパでるから、よろしく」
ってしっかり宣伝して退場していった。
これで、会場の女性はぞろぞろと減っていくのがなぁ。
それはともかく、
「ユリ子ちゃん、苦戦したけどよくやったな」
「いえ、まだまだ、修行をしなきゃいけないって痛感しました」
「あれは、多分、神通棍に特殊な仕掛けがあるんだろう。今の試合は参考にならないから、次の相手はともかく、あの蛮・玄人に注意することだな」
「ええ。期待にそえるようにがんばります」
「いい返事だ」
うん? 次の相手をなめているかって?
*****
さてさて、メドーサの目的は何でしょう。
2012.02.28:初出