除霊依頼元は、南部グループの持株会社である、南部ホールディングスの法律部門担当者『芦優太郎』からだが、分室に直接依頼がきている。
一般には宣伝は、そんなにしていないんだがな。
しかし、芦優太郎から直接依頼がくるとは……
ただ、これって芦優太郎に近づいて、観察できるチャンスでもあるわけだよな。
院雅さんに相談してみるか。
「さすがに一流企業相手に、高校生が交渉に行くわけにいかないわね。私がついていくから学生服でも着れるようにしておいてね。アポも私から入れておくから、PHSでいつでもつかまるようにしておいてよ」
そうなんだよな。
スーツ類は用意していないんだよな。
仕方が無いから、院雅さんの言う通りに学生服で行くか。
知らない人間から見れば、就職活動中の高校生に見えるかもしれないしな。
そう思っていると院雅さんから連絡が入り、
「横島さん。分室で芦優太郎と会うことになったわ。私も、向かうから普通の交渉はともかく、もしアシュタロスだったら、相手はよろしくね」
「そうですね。ただアシュタロスだったとしても、相手がその気ならこっちは瞬殺されます。理由はわかりませんが、何か話し合う余地はあるのでしょう」
「私は、自ら入り込んでいく気はないからね。そこだけはしっかりとよろしくね」
「ええ」
ヒャクメに連絡をして、おキヌちゃんには急遽神魔族出張所で、ヒャクメ相手に霊視の訓練をしてもらうことにする。
服の中でも、比較的新しいジーンズとジージャンに着替える。
この服装には対霊対魔対策をしているのだが、アシュタロス相手なら無理だろうな。
そうして待つこと、まずは院雅さんがきた。
「どう、準備はととのっている?」
「ええ、おキヌちゃんには霊視の訓練の名目で、神魔族出張所のヒャクメの元へ行かせてます。ヒャクメはおキヌちゃん相手をしながら、こっちでも覗いているでしょう」
「あとは約束の時間である18時にくるかどうかね」
18時までは残り少ないが、重苦しい雰囲気の中でも院雅さんは台所でコーヒーセットを持ってきていて、その準備をしている。
待っていると18時の3分前にインターホンの電子音がなり、
「はい。院雅除霊事務所分室です。どちらさまでしょうか」
こんなことなら監視カメラ付きのものにしておけばよかったなと思ったが、
「本日の18時に院雅様とお会いさせていただくことになっております、南部ホールディングスの芦優太郎と申します」
「お待ちしておりました。今玄関をあけますのでしばらくお待ち下さい」
そうすると、事前情報では39歳と聞いていたが30台前半とも見える、アシュタロスにそっくりな人物がたっていた。
「狭いところですが、どうぞお入りください」
「まずは、入らせてもらいます。それからそんなに緊張しなくてもいいですよ」
物腰もやわらかく、大手企業の部長とは思えない。
同じ部長といっても親父とは違うな。
俺は院雅さんが用意したコーヒーを、カップに入れて応接室に持っていく。
話は本格的ではなく、初対面の挨拶と雑談をしていたようだ。
「さて、現在最年少GSである横島忠夫君だったね。君に用事があったのできたのだが……」
さも、院雅さんが邪魔だとでも言いたげにしているな。
「俺ですか? もしかするとお嬢さんの関係ですか? 火多流さんとは同じクラスなのでよく話はしますし、同じ学校でGSということで鳥子さんや八洋さんとも話はしますが?」
狙いはなんだろうか。
「娘たちの話では無いのだけどね。そちらのお嬢さんも、私の正体をうすうすと感づいているようだから、このまま、話すのもかまわないがね」
「正体?」
「アシュタロスと気がついているのだろう? およそ1000年ぶりぐらいだが、君のことはよく覚えているよ」
話さなければこちらは、はっきりとはわかっていないのに、いきなり自分から正体をばらしてくる。
一体どういうつもりだ?
「アシュタロス? 全く魔族の気配がしないのですが」
「こうすればどうかね」
わずかに漏れ出す魔族独特の魔力と、強力な霊格が覗きだす。
「分霊ではなさそうですね……それじゃアシュタロス。魔族のお前がなぜ俺に?」
「私は抜けてもいいかい?」
「院雅さーん!」
「私がアシュタロスだという事を、現在の娘達に、もらさなければそれでかまわない」
「横島さん。事情はわかっているみたいだし、私は邪魔みたいだからお暇するわね。それでは失礼させていただきます。芦優太郎様」
おーい、所長だろう。確かに院雅さんには情報収集の方をたのんだけど、あからさまに避けるというよりは、逃げなくてもいいだろう。
しかもアシュタロスとしてではなく、芦優太郎として処理するつもりだし。
「さて、話しをつづけてもよいかね?」
「ああ」
「君もとたんに態度がかわるね」
「魔族とまともに交渉するなら、GSがどういう対応をするかわかるだろう?」
「今回は魔族のアシュタロスとしてではなく、南部ホールディングスの芦優太郎としてきているんだけどね」
「そうしたら、アシュタロスだって最初になぜ自分から名乗った?」
「そうしなければ君たちの信頼を得ることはできないだろう。前の世界で、私の野望をつぶした君ならば」
どこでもれた?
情報漏えいがどこからあったんだ?
「ああ。その顔だと私が、なぜ君が私を倒したのを知っているか、疑問に思っているようだね」
魔族のペースにひきこまれるのはまずいが、
「残念ながら、なぜ知られたかわからない」
「簡単なことだよ。院雅所霊事務所に盗聴器をつけさせてもらった。人間の技術は進歩しているね。これなら神魔族とも気がつかない」
まさか、魔族がそんなことをしてくるって。
そういえば前は、アシュタロスも人間の技術の一部を採用していたな。
盗聴器対策もしないといけないか。盲点だったな。
そうすると文珠が作れることも知られているのか。
あとは霊波をずらした文珠のことを気がつかれているかだが、聞けないしな。
だとするとアシュタロスにする質問は、
「復讐したいという態度にも見えないし、今回の目的も滅びが望みか?」
「滅ぼせる者がいれば滅びたいが、残念ながら地球上を荒らして、神魔族の最高指導者たちから許可されただけでは、宇宙意思は滅ぼさせてくれないらしい」
「じゃあ、俺に用事というのは?」
「本題はだね、このままだと、南部グループの南部重工業と南部リゾート開発社とが、暴走しそうでね。妖怪の戦力化と人造魔族を、秘密裏に対処してもらいたいのだよ」
「アシュタロスが直接処理するわけにはいかないのか?」
「そうすれば、魔族内部で対立してしまうことになるのでね。これでもデタント派なので、過激派とは直接ことを構えたく無いのだが、私の働いている会社の近辺で堂々とされるとはね」
「魔界ではアシュタロスが、こっちにいるって知っているのか?」
「知らないからこそ、この南部グループの技術を踏み台にしようとしたのだろう。以前の私と同じように」
「他にも有力なGSがいるだろう。例えば美神令子とか」
「前の世界での私の作品だったね。彼女のところには火多流がいる。私が魔族だということには、気がついていないのでこのまま育てたいのだよ」
本当の目的はわからないが、芦三姉妹には知られたくないのか。
ただこうやって言ってくるということは、そこまで強力な札ではないのだろう。
「それで、それを受けるこちらのメリットは?」
「受けてくれるのかね?」
「芦家の三姉妹が敵にまわらないで、GSとして働いてくれるなら、GSの力はアップするからね。ただ事務所としても、それなりの報酬は必要になってくれけれど」
「折角、君がいる時期にあわせて娘達をつくったのだから、もう少し仲良くなってもらってもよかったのだがね」
「はい?」
「ルシオラだよ。君にとっても寝覚めが悪かったのじゃないのかね?」
くっ、ここで魔族の誘惑をかけてくる気かよ。
「ルシオラはいないだろう?」
「コスモ・プロセッサーで、ルシオラの魂を呼び寄せて赤ん坊として人間にかえさせている。ペスパもパピリオも同様だ。ただ思ったように育ってくれなくてね」
すでにコスモ・プロセッサーは完成しているのか。ひのめちゃんの中の魂のエネルギー結晶は不要なのか?
しかしその笑いって、初めから自分に逆らうってわかっているような感じじゃないか。
「コスモ・プロセッサーが完成しているというと、それで情勢を変えようとは思わないのか?」
「また同じことの繰り返しだ。いまいましい宇宙意思め」
「エネルギー源はどうしているんだよ」
「未完成のコスモ・プロセッサーだが、パラメータの調整はわかってきたのでエネルギー結晶だけは入手はできる。しかし……これ以上、この件で話すこともないだろう」
そっちは、それ以上話はする気がないのか。
アシュタロスがコスモ・プロセッサーを本格的に使用しないとしたら気にかかるのは、
「ルシオラだけど、今の話だと俺の知っていたルシオラだったとしても、彼女にとっては幼いころの思い出じゃないのか?」
「家でそれぞれ、君の話題がでている娘達は、それぞれおもしろいのだがね」
「まさか、俺の意識なり知識なりを、この世界にもってきたのはアシュタロスか?」
「君が、そのような知識をもっているとわかっていたなら、わざわざ娘達を育てはしなかったよ」
「そうか。ただし残念だったな。ルシオラのことはもうふっきれている。仕事の具体的な内容を聞きたいのだが」
ルシオラのことはふっきれているつもりだが、ルシオラがいるとしたら火多流だろう。
少し距離をとられている気がしていたのは、火多流が気にしていたのか。
「そうだね。南部グループの霊的不良物件の所霊依頼先の優先順位を、社内でのトップに院雅除霊事務所をもってこよう」
「それって、会社の私物化じゃないのか? 部長権限でそこまでできるのか?」
「ああ。私の失敗を狙っているやからが大勢いるから、まだ評判の高くない院雅所霊事務所が失敗したら、私は失脚だろうね。それゆえ簡単に、内部での優先順位をあげることは可能だよ」
そういうからくりか。
「ところで宇宙意思に俺が選ばれたかもしれないという話しをしてたが、まだ強力な魔族ってアシュタロスとせいぜいメドーサぐらいしか見ないのだけど?」
「それなら今度の件を引き受けてくれれば、自動的に入手できるだろう」
「あくまで能動的に話してくれる気は無しか?」
「ああ。そこは自分達でがんばってくれたまえ。私の望みを一度はかなえてくれた君には期待しているよ」
「わかった。事務所として依頼は受けるが、GS協会やオカルトGメンに、もれなければいいんだな?」
「できれば美神ひのめから、オカルトGメンへもれないように注意してくれたまえ」
「そこまで調べているのか」
「これも前の経験が役にたっていてね」
「わかった。民間GSにはこういう仕事もあるというのは、現在の美神令子もおこなっていることだから、ひのめも説得はできる」
「じゃあ、あとは私の秘書である蛇髪君と連絡をとってくれたまえ」
「蛇髪?」
「メドーサと言った方がわかりやすいだろう」
なんで、芦優太郎をさぐっていてメドーサを発見できないんだよ。
まったく、ヒャクメといいジークといい。
『魔族に擬態されると、長距離からではわからないのよ!』
そう神魔族出張所でさけんでいるヒャクメがいたりするのだが、ここに聞こえるわけではない。
「もう少し内部情報を知りたいのだが」
「それはメドーサにでも聞いてくれ。他には?」
「いや、特に無い」
「じゃあ、このあと別な仕事もあるので、ここで帰らせてもらうよ。また会う機会が、あると楽しみなのだがね」
「男に楽しみにされてもいらんわい」
「娘達ならば?」
「それはもう……って、最後まで言わすな」
「これに失敗しても会社はつぶれないが、私が失脚すれば、娘達の未来にも影響を与えるだろうから期待しているよ」
「ふん。まずは情報をまっているよ」
芦優太郎ことアシュタロスを見送り、早速にでもと院雅さんの携帯に連絡したが、メドーサが南部グループで働いているのは知らなかったとのことだ。
とりあえずこの件は情報が命だ。こっちに盗聴器をしかけているのも話して早速対策をとる。
しかし、今現在の院雅所霊事務所で、ガルーダと互角にいけるのは雪之丞ぐらいだよな。
翌日、南部ホールディングスの蛇髪ことメドーサと打ち合わせをすることになって院雅除霊事務所による。
顔こそ異なるがあのチチのでかさとサイズはまさしくメドーサだ。
いつものように飛び掛ると、あれっ?
素直にその胸元にとびつけてしまった。
いかん、人違いか? まずいぞ!!
「すみません。いつもの人とそっくりで飛びついてしまいました。すみません」
「蛇髪さん、誠に申し訳ございません。許してください。横島君もいつもの人と、そっくりだからといって勝手にとびかからない!!」
「いえ。妹からも噂には聞いておりましたので、お気にならせずに」
メドーサに姉なんていなかったよな?
それに昨日アシュタロスがメドーサのことを蛇髪と言ってとのを覚えているが、ここはすなおに、
「本当にすみませんでした」
とりあえず、あやまり倒すことを選んだ。
そうすると院雅さんは、
「本当にすみませんね。蛇髪さん」
そう言いつつ俺の耳元にささやくように小声で、
「見張られている」
見張られいるということはこの事務所か?
メドーサ本人かどうか不明だが蛇髪か?
「蛇髪さんも許してくださるようなので、横島君もきちんと素直に話を聞くのよ」
そう言われて、納得できない部分もありながら席につくことにした。
「今日は仕事の依頼で参りました。こちらをまずはお読みいただけますか」
そうして渡されたのは、除霊依頼書に付属となる事前詳細調査書だ。
こういうきちんとしたのは、普通はあまりかかれることは無いが、大手の企業だけあってきちんと書いてきている。
時間が無かったからなのか、そんなに厚くはないので読んでみると、最後の方に『別紙』がさらについていて、
『蛇髪(メドーサ)がベルゼブルに見張られている。ただしベルゼブルは日本語が読めないので問題ない』
ベルゼブルって、日本語が読めなかったのか。
うーん。さすがはハエの王だ。
自分がコンタクトに使う文字以外は、覚えていないのか。
多少あきれてはいたが都合は良い。
院雅さんもおなじ頃に読み終えたのか、
「除霊依頼書の通りに、南部リゾート開発社が所有している旧華族の屋敷跡を除霊ですね。横島君、この依頼書を見て何か疑問点とかあるかしら」
「そうですね。他のGSと協同除霊とさせていただいてもかまいませんか?」
「そこは公式な文章として残せないのですが、私どもの部長である芦の娘さん達のところをさけていただければ、問題ないとのことです」
「そうですか、俺からはこれだけです」
「私の方からは特にありませんが、内容が内容ですので、返答は明日までお待ちいただいてもよろしいですか」
「ええ。私どもとしてはあまり時間がかかるようならば、別なGSに除霊依頼をいたしますので、明日中の返答をおまちしております」
「そのあたりにつきましては、明日夕刻17:00までに連絡をさしあげます」
「よい返答を期待しております」
「ええ。それでは連絡をいれさせていただきますので、それまでお待ち下さい」
蛇髪と紹介されたメドーサが外にでていくと、
「監視がいなくなったようだわね」
「ベルゼブルが、いるかいないかなんかわかるんですか?」
「あら、私じゃないわよ。メドーサが帰り際に監視がついてきているって、簡単なサインを送ってきてたからよ」
うーむ。一体いつの間に。
「それよりも、協同除霊のことを聞いていたけれど、あてはあるの?」
「それなんですよね。芦三姉妹以外のGS事務所となると、冥子ちゃんかエミさんのところになるんですが、さすがに冥子ちゃんは、今回は無理ですよね」
「そうね。下手をすると南部グループと六道財閥のぶつかりあいになるわね」
「今回は秘密裏に、ってことですから残りはエミさんになるんですが、エミさんってこういう話にのるかどうかって、よくわからないんですよね」
「それなら大丈夫じゃないかしら。この前、美神令子さんに2連敗して助手もいなくなったみたいなのよ。だから、横島さんが妙神山修行場への紹介状を書くって言えば、のってくるんじゃないかしら」
「そっちも調べていたんですか。じゃあ、エミさんにお願いしますか。えーと、連絡先は……」
「それは私が連絡するから、さっきの事前詳細調査書も読んで、フォーメーションを考えておいてね。それから行くメンバーから、私とキヌは抜いておいたほうがよさそうよ」
そう言われて俺はあらためて除霊依頼書と、事前詳細調査書を読み直す。
南部リゾート開発社が所有している旧華族の屋敷跡で、ここで改装工事をしようとすると霊的不良物件であることが判明。
通常ならば霊的不良物件は南部ホールディングスに依頼することが多いのだが、今回は南部リゾート開発社が独自にGSをやとって除霊をしようとして死亡している。
それでこれ以上の被害をださないために、抜打ち監査という形で除霊に入っていくのが、今回の除霊依頼書だ。
ここまでは表の話で、事前詳細調査書には裏の話が書かれている。
霊的インクで書かれていて、時間がたてば消えるようになっているし、カメラなどにも映らないように細工がされている。
こちらには、その屋敷はおなじ南部グループの南部重工業が新兵器の開発をしている。
これぐらいは兵器開発をしているところなのでありえることだが、オカルト技術を使ったモンスター開発を行っている。
このあたりまでならばまだ犯罪にならない。しかし、GSをやとって死亡させるというのが問題だった。
これが表面化すると、南部重工業と南部リゾート開発社はおしまいになる。
また、その持株会社である南部ホールディングスにも多大な影響がでるので、表立って処理ができないということになっている。
令子も事前情報があって、金次第では目をつぶって参加してくれるだろうが、今回は芦火多流がいるから除外なんだよな。
そのあたりはしかたがないとして、メンバーは雪之丞、ひのめちゃん、ユリ子ちゃんに俺と、うまくいけばエミさんか。
エミさんを中央にして前を雪之丞とユリ子ちゃんで、後方はひのめちゃんと俺かな。
これだったら、落とし穴にひっかかった場合にエミさんがどちらになるかは不明だが、前の通りなら心配ないんだけどな。
けれど、今回ベルゼブルがメドーサを監視していたということは、多少は頭のまわる奴がついていそうだな。
あと前は茂流田(もるだ)が開発責任者だったが、香港の元始風水盤の時にキョンシーにされてから魔族化されていたから、今回は違うのが責任者なんだよな。
この2点で、中がどうなっているのか先行きが読めないよなぁ。
フォーメーションで悩んでいる時に院雅さんが、
「小笠原エミさんは、裏があることも理解して参加してくれるって。あと報酬は妙神山修行場の紹介状も含むので、依頼料が安くすむわね」
院雅さんの機嫌はよさそうだ。今回は大幅に収支がよさそうだもんなぁ。
「よかったですね」
「何よ、その乗り気のなさ」
「いえ、乗り気がというよりは、こんなフォーメーションかなって、思っているんですけどね」
院雅さんが俺の書いた2種類のフォーメーションのうち1種類をもって考えている。
やっぱり、ちょっとおかしかっただろうか。
「これも悪くは無いけれど、ユリ子を小笠原エミさんの防御にまわした方が、バランスは良いわね。それにユリ子が前衛だと伊達の足をひっぱることになるでしょう?」
「そうですね。うーん、やっぱりこの手の種類を考えるのは苦手だな」
「以前から美神令子にそういう部分を頼りすぎていたからでしょう。こういうのを覚えないと独立してもうまくいかないわよ」
「そうですね。あと2年あまり、そのあたりはぼちぼちといきます」
「ぼちぼちと言わないで、きちんと分室の収支計算しておきなさいよ。今回は分室への依頼で、事務所の方はそれのフォローって形になるんだからね」
通常兵器の効果はほとんどないが、対人戦も考慮にいけないからな。
ひのめちゃんとユリ子ちゃんは大丈夫かな?
「ほれ、また考え込んでいる。今度は何を考えているのかな? 横島さん」
「えーと、ひのめちゃんとユリ子ちゃんが対人戦に巻き込まれる可能性を、改めて思ったんですけど、大丈夫かなって」
「そのあたりも大丈夫じゃない? それ用の武器も持たせるつもりだし」
「武器? 発火マシンガンですか?」
「ううん、ちがうわね。準備するから見ておいてね」
これね。
まあ、これでもいいわな。
事前のひのめちゃんとユリ子ちゃんへの意思確認は院雅さんが行うという。
それで、明日事務所にくるようにと連絡をひのめちゃんとユリ子ちゃんに連絡を入れている。
俺は明日いない方がいいらしい。
男性にいられると女性同士の本音がきけないって、仕事にそれってあまり関係ないだろう。
「まだ、彼女達は高校1年生なのよ。そこまで真剣に考えられるかわからないから、最後まできちんと話しておきたいのよね」
「そんなものですか」
「そうよ。けれど二人とも参加すると言うとは思うから、心配しないで待っていなさいよ」
「へーい」
なんか、俺っていいところ無しだな。
*****
予測はついていたでしょうが、あっさりと芦家の正体はばらしてみました。
さてこの先はどうなるでしょう。
2012.02.11:初出