最初はネコをつれてくるだけでよかったが、奥へ行けば行くほど面倒なんだろうなと思いつつも、行かないわけにはいかない。
令子が、
「ここから霊気がもれているようね」
そう言って、地下室でさらに下へ降りていく通路を見つけた。
最初に地下へ入っていくのは令子だが、強化セラミックのボディー・アーマーって本当に色気が無いなぁ。
このメンバーで唯一、俺の今の霊力の一番エネルギー源となる煩悩を刺激しそうなのは、この中では令子のみなのに。
次は地下を降りて少し広まったところで地面に死体がころがっていたが、こいつらが起きあがってきた。
「ここは俺にまかせて、先にいって下さい」
「横島さん、左手を負傷しているのに大丈夫ですか?」
「これくらいなんともないさ」
ネコはもう放して背中にせおっていた破魔札マシンガンを右手に持ち、それでのきなみ倒しながら左手からはサイキック小太刀を出す。
左腕はちょっと痛いが、
「ほらね、だからここはまかせて。はやく次に行ってくれ」
ぐずぐずしていたのは、ひのめちゃんとおキヌちゃんだけで、あとの4人は奥へ向かっている。
破魔札マシンガンで倒せるだけのゾンビを倒していたら、まだひのめちゃんが奥へむかっている様子が見えた。
おキヌちゃんは俺と一緒に残っているけれど、もともと一緒にいる予定だし、ゾンビたちからの狙われる対象に入っていないようだ。
今回の破魔札マシンガンには、予備のマガジンをもってきていなかったので捨てる。
右手には通常の霊波刀をだし、左手のサイキック小太刀をサイキックソーサーの色を黄色っぽくしていく。
これも妙神山での修行の成果なんだろうが、妙神山へ行く前よりも、黄色への色が強くなっている。
多少左腕が痛いのは我慢しながら、次々と同じ5枚のサイキックソーサーを造りだし、五角星の場所へと配置し『サイキック五行黄竜陣』を形成する。
幸いまだ元始風水晩が稼動していないおかげで、こちらでも地脈を操れる。
地脈をあやつって浄化するが、抵抗力の強い何体かと、この陣の外にいるゾンビがいる。
ただし、こいつらは考えないのか、勝手に俺にむかってくるので、サイキック五行黄竜陣の中で戦っているために入ってくると自滅する。
耐えきるものもいるが3割ぐらいだ。
こいつらを倒していくと、ひのめちゃんをおくりだしてから3分ぐらいか。
ちょっとしたタイムロスだ。
サイキックソーサーを回収して、サイキックソーサーの霊気を自分の中にもどしつつ奥へとすすむと、強化型のゾンビを相手に雪之丞がひとりで戦かっている。
メンバー的にしかたが無い部分もあるかもしれないが、ここは全員であたった方がよさそうなものだ。
こうなってしまったものはしかたがない。
俺と同じく、破魔札マシンガンは捨てていたが、
「雪之丞、だいじょうぶか?」
「なに、これぐらいなら。まだまだいけるさ」
わりと余裕がありそうだな。
魔装術で4対の強化型ゾンビと、既存のゾンビが何体かまじって戦かっているので、俺も加わる。
「奥にこっちの強化型ゾンビが2体入って行ったぜ」
「なに、時間はかけられないな」
「そうだ。おまえには、勘九郎を苦しめた技があるそうだな。それはできないか?」
「サイキック五行吸収陣だな。ゾンビよりも魔装術をつかっている雪之丞の方へ、より響くから無理だな」
俺は右手には護手付き霊波刀、左手は短い霊波刀にして攻撃優先タイプで戦っていく。
時間がないのでサイキック五行黄竜陣を使いたいところだが、この技をいつも一緒にいるおキヌちゃんに見られるのはともかく、他人に見せるのはまだ早いだろう。
雪之丞は手当たり次第に近くのゾンビを退治していっているようだが、俺は霊力の消費をおさえるために、強化型タイプのゾンビから叩いていくことにする。
強化型タイプのゾンビを叩き終わったところで、残りのゾンビの統率が崩れる。
これなら俺ひとりでもなんとかなりそうだというか、雪之丞はいない方が良い。
「先に行って、強化型ゾンビの相手をしてくれ、雪之丞」
「だいじょうぶか? 横島」
「もともと、こういう役割分担が俺だろう?」
「じゃ、ザコはまかせたぜ」
雪之丞は奥へ行くところで魔装術を解除しているが、魔装術には時間の制約があるから奴なりに考えがあるのだろう。
雪之丞がザコよばわりしているゾンビは、まだ十体以上いる。
これなら霊力の消費と時間の関係から、サイキック五行重圧陣で充分だろう。
サイキック五行重圧陣を展開すると、これも入ってくるのは自由なのだが、この陣に入った霊体を持つものには霊圧がかかる。
おキヌちゃんはちゃっかり陣の外に待機している。まあ、毎晩のようにみていたらわかるだろう。
俺自身は毎日の瞑想で使っているからなれているが、はじめて入ってくるゾンビどもには効果てきめんだ。
あまりはやくない動きがさらに遅くなっているので、立ち木をあいているようなものだ。
全部動けないようにして、ここにきてから7,8分っていったところか。
先行している部隊から10分よりは短いだろうが、6,7分ぐらいは遅れている感じだろう。
奥にはいりながら途中別の普通のトラップもみつけるが、物理的にこわされている。
マリアでも使ってつぶしたのだろう。
普通のGSじゃ、できない方法だよな。
さらに奥にすすんでいくと先行していた皆が円陣を組んでいる。
「どうしたんですか?」
「それが、元始風水盤のまわりが、予想以上にやっかいなことになっていた」
「そうね。まさか、あんなものがあるなんて、完全に予想外だわ」
雪之丞はともかく、令子の予想以上って。
「地獄炉がある。くそー、わしが造ろうと思ってついにつくれなかったものを」
カオスのおっさんの思考はいいとして、地獄炉ってことはヌルが関係しているのか?
とぼけたふりをして、
「地獄炉ってなんですか?」
「地獄からパイプラインをひいて、直接魔力の源にしている。文字通り、ここには地獄へ通じる穴が開いているのですよ」
「そんなところでパイパーやハーピーを相手にして、よくみな無事でいましたね」
「パイパーは魔族というよりも、大ネズミという実体をもった妖怪に近いから、金の針でどうってことはなかったわ。だけど問題はハーピーと茂流田(もるだ)ね」
皆から色々と様子を聞いたが、地獄炉があるわりにはヌルの名前はでてこない。直接は関係ないと見て良いだろう。
気になっていた茂流田(もるだ)が、何かのキーなのか。
「ハーピーは空中からの攻撃が得意だから、ここでは役にたたないと思っていたけれど、比較的高く空間がつくられているからそこからの攻撃が厄介ね。そして茂流田(もるだ)は生きたままキョンシーにされて、その上、魔装術まで習得させられているので、理性をもったまま魔族になっているわ」
生きたままキョンシーかよ。
さらに魔装術からの魔族。魔力は地獄炉から供給されている。
普段の地上での魔族を相手にするのではなく、相手の有利な環境で戦うということか。
今はまだ5時にもなっていないから、元始風水盤がゆっくり稼動しだすのも、もう少し時間が必要だろう。
後続部隊を待つのか? けれど、動きだす時間って皆にはわからないよな。
「それで、今後の方針は?」
「オカルトGメンからの武器もあらかた使ったし、あとはあいつらを相手にしている隙にだれかが、元始風水盤から針をとってくるのね」
「相手の追い打ちは気にしなくていいのか?」
「ここは地脈のかたまりで、地獄炉からのエネルギー供給もあの空間内で手一杯らしいところが、今のところの救いね」
地獄炉の逆操作は、邪魔が入るから今はできそうにないな。
それに今のカオスにできるかどうかだ。
「そうすると、セオリー通りに各個撃破をしていきますか?」
「それができたら、ここで今さら円陣を組んでいないわ」
「どういうことですか?」
「あの茂流田(もるだ)っていう奴が、こちらの動きをよんでハーピーに伝達しているのよ。茂流田(もるだ)をねらえばハーピーが補助をする。ハーピーを狙撃しようとしても早いし、茂流田(もるだ)がちょっかいをかけてくるのよね」
ハーピーとパイパーが組んでいると思ったら、茂流田(もるだ)がキーだったのか。
茂流田(もるだ)がキーなのはわかったが、
「その茂流田(もるだ)ってどれくらいの強さですか?」
「ハーピーよりは強いけれど、ここの全員がかかれれば、多分問題ないレベルよ」
そう答えられたので、あとはどうやって、それを実現するかだな。
「この中で空を飛べるのは、横島クンとマリアだけど、マリアの燃料はあとどれくらいもちそう?」
「今のマリア・空をとべません。燃料がありません、ミス・美神」
「カオス、いれておきなさいよ」
「いや、家賃を滞納しておってのぉ」
「じゃあ、ひのめが横島クンのサポートをして! その間に茂流田(もるだ)をなんとかするわ。そうしたら、全員でハーピーを退治か、ここから追い出すのね」
かなり大雑把な作戦だが雪之丞の霊波砲やカオスの怪光線よりより、ひのめちゃんの発火の方がハーピーにとってはやりづらいかもな。
ひのめちゃんの見えるところで直接発火するから、その瞬間でにげないと焼かれるし、発火する場所までの霊的ラインってすばやいんだよな。
「じゃあ、さっそく各自フォーメーションをとって、準備ができたら行くわよ」
俺はひのめちゃんと一緒になって、今の作戦をベースにこちら側のプランを伝える。
おキヌちゃんには、さすがにこの出入り口付近にのこってもらうことにした。
ひのめちゃんの弱点は、GSとしては動きが遅いことだ。
それで、俺が持っている院雅さん作成の結界札を全て渡す。
これでフェザーブレッドや、茂流田(もるだ)からのちょっかいという霊波砲を、くらうことも無いだろう。
「それで、私は岩陰に隠れながらこの結界札を張った後に、横島さんのフォローの為に、ハーピーに発火をかければいいんですね?」
「そう。岩陰までは一緒に行くから、そこまでは心配しないでくれ。あとは、その結界札の特性は外部から霊的攻撃からまもってくれるし、内部からの霊的攻撃は素通しにしてくれるところだな」
ひのめちゃんが、ちょっと不満そうだから、もうひとこと付け加えておくか。
「ここで、これ以上の活躍したかったら、肉体的にも鍛えておかないといけないよ。今後は、そっちの訓練もしていこうね」
「はい」
ひのめちゃんが、ちょっとしょげた感じだから
「対ハーピーのフォローは期待しているよ」
「ええ、まかせてください」
こっちはこれでいいから、あちらの4人組の話を聞くと、こっちの作戦とうまくまぜるとよさそうなところがある。
それでその作戦で行くことにした。
「じゃあ、皆も準備いいわね」
誰も否定はしない。
「それじゃ、地獄にあいつらを送ってやるわ!」
マリアは煙幕を張って、それに乗じて令子と雪之丞が、茂流田(もるだ)の相手をする。
「俺も茂流田(もるだ)との戦いに参加した方がいいんじゃない?」
「マリアの煙幕の張れる時間が短いらしいので却下ね」
やっぱり、各個撃破作戦は無理なのか。できたら楽なんだけどな。
ひのめちゃんもその煙幕を張っているあいだに、岩陰へ移動する。
俺は入り口をでた瞬間に、サイキック炎の狐へ上空に飛んで、ハーピーを強襲だ。
そしてマリアとカオスが元始風水盤から針を取るのだが、地獄炉から離れれば、ハーピーも茂流田(もるだ)もここで戦うよりは弱くなるはずだ。
ハーピーに見つからないようにするためにするのも俺の役割だ。
カオスが攻撃からはずされたのは、胸の怪光線は魔族から聞かないって、言ってたような気がするしな。
マリアの煙幕発射を合図に、入り口をでて上空に上った瞬間に「やられた」っと思った。
こちらの入り口と元始風水盤との間にいるのが茂流田(もるだ)だろう。
元始風水盤の針を取るのは無理じゃないのか?
とはいっても、すでに作戦は始まっている。
サイキック炎の狐にのりながら、サイキックソーサーも攻撃用5枚に防御用3枚の合計8枚と、右手に護手付きの霊波刀だ。
ハーピーはさっそく、こちらに攻撃をしかけてくるが、俺はそれを避ける動作と同時に、サイキックソーサーを防御にまわす。
こちらからのサイキックソーサーは、ハーピーのフェザー・ブレッドで攻撃できる瞬間を限定させるためだ。
だが、この全体状況はまずい。
攻撃用にだしていたサイキックソーサーを2枚、茂流田(もるだ)へ向けてあてた。
ダメージは食らって傷ついているが、けろっとしてやがる。
ゾンビベースだから痛みを感じないんだろうが、やはりやっかいだな。
その隙をつかれて、俺はまた左腕にハーピーからのフェザー・ブレッドがかすめた。
「空中戦を挑んでくるからやるのかと思ったが、たいしたことないじゃん!!」
言ってろ、このトリ女め。
なおりかかっていた、左腕をいためた。めちゃくちゃ痛いぞ。
昔韋駄天の八兵衛がぬけたのにくらべれば軽いけれど、昔の雪之丞の霊波砲をくらった時よりはきつい。
もうこれで、この戦いの間で左腕からの霊力を出すのは無理だろう。
右腕の霊波刀をいったん、ひっこめてサイキックソーサーを2枚攻撃用につくりなおして、また、護手付きの霊波刀をだす。
それを地獄炉で魔力がまして速度のあがっているハーピー相手に、残りのサイキックソーサーで攻撃をしかける。
または護りながらと、場所も移動しつつ転戦をしかける。
「遅いくせに…!!」
ハーピーがひのめちゃんの発火をさけているのも大きな影響で、なんとか対処できている。
ただ、茂流田(もるだ)との戦いは不利な戦いを強いられているのが見て取れる。
これは、完全に戦力不足だ。単純な裏技でなんとかできる相手じゃない。
一度ひきあげどきだな。
どうやってひきあげたいと思うと令子が、
「戦略的撤退よ――っ!!」
その声で、皆が入り口に戻っていく。
俺はサイキックソーサーでしんがりの役割をしつつ、もとの出入り口にもどった。
やっぱり1回は香港が、魔界に飲み込まれる必要があるのか。
小さな歴史の変更は可能だが、大きな歴史は難しいか、別な事象が発生する。
俺が、令子の解毒の為に、過去へ戻ったあとに得た再度の結論だが、ここでも同じことが発生している。
多分ここでうまくいっていたとしても、近い将来に香港かどこか他の地域で、一時的にでも魔界に沈む地域がでていたのだろう。
そう考えれば、少しはこの撤退にも意味を見出せる。
「しかたがないけれど、応援を待つしか無いわね」
「敵の増援が無ければいいんですけどね」
「そうなったら、さすがに終わりね」
「それは、ともかく、体調が悪いんじゃないんですか? あまり得意じゃないですけど、ヒーリングぐらいならできますよ」
「横島クンこそ、左手のヒーリングが必要でしょう」
「ええ、もうはじめていますよ。霊力を左腕に循環させて回復をはかっています。さすがに30分や1時間じゃなおりきらないですが、サイキックソーサーをだせるぐらいまでならなんとか」
「じゃあ、そっちを優先してて。私も同じようにするから」
やっぱり、怪我か何か、おっていたんだな。
しかし、俺としては、令子の肌にでもさわって煩悩エネルギーの補充にやくだてようと思っていたが、無理か。
肉体はともかく、霊力の残りが少ないから、霊力を増加させるために、瞑想にはいっておく。
そして、待ちに待った応援隊がきた。
エミさん、冥子ちゃん、ピートに唐巣神父だ。
エミさん、その呪術姿ナイスです。俺の煩悩エネルギーがたまるっす。
唐巣神父は、
「遅くなって。すまないね」
唐巣神父が言うようなことじゃないんだけど、元はといえば、神族があたっていれば、とっとと終わっている事件だったはず。
魔族がメドーサじゃなくて、ハーピーとか、パイパーとか、魔族としては程度の低いのがメンバーだったから人間だけで充分と判断してしまったのだろう。
そう思っていると、元始風水盤の方から衝撃音がきた。
元始風水盤が動き出して、魔界の影響がひろがりだしてきたのであろう。
しかし、前回とことなるのは、すでに地獄炉があるので、魔界が広がろうが敵の能力アップは、ほとんど無いということだ。
こちらの、霊力が枯渇したら死亡という状況の部分は、さきほどまでより悪化している。
唐巣神父が、
「この状況では、私では足手まといだろう。せめてヒーリングだけでもさせてくれないか」
「唐巣神父が足手まといになる?」
「私の場合、神や自然から力をわけてもらっているが、魔界では純粋に自分自身だけの力でたたかわなければならない。その場合、私では魔族に対して無力なのだよ」
「わかりました。俺よりも先に令子さんをお願いします。彼女の方が俺よりも重症だと思いますから」
「何、わかったように言ってるのよ」
「さっきから霊波が、乱れっぱなしです。多分、次が本当のラストチャンスなので、治せるものは治してください」
「くー、言うわね。新人GSのくせにして」
「俺より強い人に、早く完調してほしいだけですよ」
「じゃあ~、横島くんのヒーリングは~、ショウトラにさせるわね~」
冥子ちゃんが、のほほんと話に割り込んでくるがこの場合はラッキーだ。
全体の作戦は霊能力が発揮できないといっても、こういう時の知識もある唐巣神父の助言で、対ハーピーには、冥子ちゃんの式神であるシンダラで対抗する。
シンダラに乗るのは最初俺の予定だったが、ハイラの魔装術もどきである霊張術は、妙神山で禁止されていたので、雪之丞がのることになった。
雪之丞の魔装術なら顔以外なら、さっき見た感じではフェザー・ブレッドもはじき返していたしな。
最悪霊張術を使うことと、それにともなって文珠も使うつもりだが。
元始風水盤はカオスとエミさんに頼むっていうことだが、さすがにエミさんもこれには自信はなさそうだ。
唐巣神父自身で信じているかはともかく、複雑な陣を解析できそうなのは、この2人ぐらいだからな。
あとの残り全員で茂流田(もるだ)を相手にする。
そして先陣をきるのは、シンダラに乗った雪之丞で、ハーピーに攻撃をしかける。
「こりずにまたくるじゃん」
ハーピーの声にあわせるかのように、こちらは雪之丞への援護もかねて茂流田(もるだ)への攻撃をしかける。
ピートが霊波砲で、ひのめちゃんが火竜を放ち、冥子ちゃんの式神も各種遠隔攻撃をしている。
そうしてその隙に令子と俺は、茂流田(もるだ)へつっこんで行く。
令子はいつもの神通棍、俺は右手に護手付き霊波刀と左手にサイキック小太刀で攻撃重視型だ。
さすがに、茂流田(もるだ)もこの波状攻撃にたえきれそうにないのか
「先ほどまでの連携不足が嘘のようだね」
と言って場所を移動する。
それを俺の奥の手である、護手付き霊波刀から栄光の手に変えて避けかけた茂流田(もるだ)を横から掴んで放さない。
「なに!」
茂流田(もるだ)が引っ張って、俺を近づけようとすれば、その力に便乗してサイキック小太刀で傷つける。
本来、護手付き霊波刀や栄光の手の方が霊力も高く凝縮されているのに、魔装術をベースにした相手には、サイキックソーサー系で相手をする方がダメージを与えられる。
俺が離れれば、令子とピートの連携攻撃を行う。
合間にひのめちゃんの発火や、冥子ちゃんの式神でダメージを蓄積させている。
この合間に本格的に元始風水盤が稼動しだしたが、元始風水盤の解析をカオスとエミさんで、その護衛にマリアがついている。
唐巣神父は全体をみているのか、出入り口のところからアドバイスをおくってくれる。
「ハーピー、入り口の頭髪の薄い男を狙え!」
「させるか」
茂流田(もるだ)のハーピーへの指示も、雪之丞とシンダラの活躍によってうまく動かない。
たいして、こっちで一番最初に決着がついたのは、空中戦でのハーピーと対戦していたシンダラに乗った雪之丞だ。
さすがに、ハーピーも自分より早い相手をしたことがなかったのだろう。
何回か霊波砲をくらって、地面に落ちたところを雪之丞にとどめをさされた。
「これですんだとおもうんじゃないよ…!! きっとあのお方が……」
ハーピーがあのお方?って、アシュタロスか? 今ひとつ確証がもてない。
ただ、ハーピーが倒れたことによって雪之丞が茂流田(もるだ)との接近戦に入ってきて、一気にバランスが崩れだした。
単純な単独での攻撃力なら雪之丞が一番だから、茂流田(もるだ)はタコ殴りにされてとどめをさされた。
「やってやったぜ」
「お疲れ様ね。雪之丞」
「神父が全体をみててくれたおかげさ」
へぇ、雪之丞もよくわかっているじゃないか。
最後は後始末だ。
元始風水盤だが、カオスが操作をして、何回か変な状況にはなったが通常状態にもどった。
途中で三途の川とか見えてきたのは、さすがにびっくりしたけどな。
一応、こうして無事に元始風水盤の状態を一度元にもどして、針をとってから元始風水盤の図を消していく。
こんな物騒なものをのこしておけるかって。
地獄炉はカオスのじいさんがゆっくり操作しているが、動作を止めることができた。
子どもにされた西条たちはこの地下の奥に別な広間があって、その風船を金の針で割っていくことができたので元に戻っていったはずだ。
実際西条から電話がきて無事を確認できたので、それでいいのだろう。
しかし元始風水盤でこれだと、やはり死津喪比女の時も東京で霊障がおこることを覚悟しないといけないんだろうなぁ。
やっかいだな。
*****
ハーピーとパイパーの組み合わせでは、ちょっと弱いので茂流田(もるだ)をここでのラスボスにしています。
元始風水盤編はこれで劇終です。原作番外であった映画編はありません。
2011.04.14:初出