・第一回戦 御門 千早 VS シャルル・デュノア・第二回戦 セシリア・オルコット VS ラウラ・ボーデヴィッヒ 「インフィニットストラトス」とほぼ同程度の実力差があったためか、セシリアVSラウラは一方的な蹂躙劇となり、描写の必要がなかった。 セシリアにとっては幸いな事に、ラウラにとって彼女を必要以上に痛めつける動機は無く、単純にシールドエネルギーを削り切られての敗北となった為、損傷は自己修復だけでも翌日には問題なくなる程度の軽度のものだった。「わ、わたくしともあろうものが……」「そーは言うがな、正直お前のブルーティアーズは実験機的要素が強すぎる。 同格かそれ以上を相手にするのは辛いぞ。」「……ハッキリ言いますわね織斑先生。」 一方で、その前に行われた千早VSシャルルは白熱した内容となった。===============(……御門さんは僕の正体に気付いている。 それに……) 彼女、シャルル・デュノアはある使命を帯びている。(銀華/白式のデータを奪取する事、か…… その持ち主の2人に近づく為に男の子に偽装させられたけど、こうもあっさり見破られたら近寄りようが無いよね。) シャルルはため息をつくと、気持ちを切り替えた。 千早はあんな事を言ってはいたが、時速900Kmというとんでもないスピードを物にしている強敵なのだ。 他の事に気を取られていて勝てる相手ではなかった。=============== 一方、千早もシャルル攻略法を考え中だった。 代表候補生と多少の武術の心得がある素人。 マトモにやっては勝ち目が無い。千早はそう考えていた。「向こうは標準的なIS。本物の足を大きな脚部ユニットに接続し、腕に接続する腕部ユニットもそれなりに大きい。 こちらは僕と一夏だけの小型IS。篭手状の腕パーツとレガース状の足パーツからなり、生身の人間と変わらないスタイル。 ……何とかして懐なり足元なりに入れば……腕の差はある程度カバーできるかな。」 もっとも、元より彼には接近戦しかない。 やるしかなかった。=============== アリーナの中央で向き合う銀華とラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。 ISなのでごつい手足を少女に取り付けた外見をしているラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡに対して、銀華はプリンセスドレスのように優美な外見をしており、中身が可憐な少女と言う通常のIS以上に戦場には場違いな外見をしていた。 しかしその優美さの中に、運動性と言う名の凶悪極まりない力が秘められている事を、シャルルは事前に知らされている。 油断など出来ようはずがない。 その間合いは15m。 ISにとってはあまり大きな間合いとは言えず、まして銀華にとっては無きに等しい距離だった。 装着者は千早の方が長身だったが、何しろ銀華や白式とそれ以外のISでは大きさが違いすぎる。 銀華の場合、背中のアンロックユニットの翼のみが、ISのパーツとして相応しい大きさを維持し、それ以外が千早本人の身体の大きさに合わせて小さくなっている。 その為、今は、長身の筈の千早の方がシャルルを見上げるような感じになっていた。 当の2人には、それがそのまま自分達の力量差のようにも感じられた。 2人は何も話さない。 今日であったばかりである上に、こんな場所でなければ話せないような話題もなかったからだ。 そして試合開始の瞬間。 ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは一瞬で出現したアサルトライフル2丁を発砲し、銀華の姿が一瞬で消え去った。 と、次の瞬間にラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの手元にあったのはIS用の接近戦用ブレードであり、それがまた次の瞬間にはショットガンに化け、更に次の瞬間にはミサイルランチャーに化けて異常なスピードで飛び回る銀華にミサイルを発射する。 その後もラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの武装は目まぐるしく変化し、しかしその攻撃が中断される事は無かった。 攻撃しつつ、武装がいつの間にか変更されているのだ。 それがシャルル・デュノアの高難度技、ラピット・スイッチだ。「っ!!? な、何? 今、何が起こったの!?」 多くの生徒が一瞬の攻防を理解しきれず混乱する。 辛うじて「ふん、何がずぶの素人だ。 あんな代物をあそこまで使いこなしておいてよくも言う。」「あ、あんな機動で動けたり、対応できたりする奴が……代表候補生なのか!?」「あー、でもちーちゃんは代表候補生じゃないよ。」 代表候補生と本音、そしてかろうじて箒。 生徒達の中で、彼女達だけが一瞬で何が起こったのかを把握できていた。 模擬戦開始直後、静止状態からイグニッションブーストを使って瞬間的にとんでもない速度まで加速した銀華は、姿勢を低くし、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡの足元に潜り込もうとする。 最初はアサルトライフルを使用していたラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは、足元に迫る銀華をカウンターで迎撃しようとブレードを展開して足元を切り払う。 ブレードの展開に気付いた銀華は、その斬撃から逃れる為に軌道を曲げ、足元への侵入に失敗する。 なおも背後に回り込もうとする銀華に対し、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは銀華に合わせて旋回しながらショトガンを発砲し、銀華を引き剥がす事に成功。 その結果、距離が開いた所へラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡが様々な武器を叩き込む。 それがあの一瞬の攻防だった。 その一方で、戦況は目まぐるしく変わる。(御門さんの銀華、運動性特化型とは聞いていたけど……なんなの、このわけの分からない鋭角機動!!)(時速900Kmオーバーでこれだけ動き回っているのに、こんなにも当てて来るなんて……さすが人間兵器、代表候補生……っ!! さっきのブレードの速さから考えても、関節の稼動速度なんかも人間やめてる領域みたいだし……僕や一夏みたいな民間人とは違いすぎるっ!!) 戦っている本人達は、2人して相手の強さに舌を巻く。 しかし、今のままでは銀華のシールドエネルギーが底を尽いて、シャルルの勝利となる。 嵐のように襲い掛かってくる弾丸やミサイルが、少しずつではあるが銀華に命中してシールドエネルギーを削っているからだ。 千早としてはこのままではジリ貧である。(だから……そろそろ動く筈!!) 千早の始めてのISでの戦闘は、白式を纏った一夏を関節技で葬り去ったというものだった、とシャルルは聞いている。 ならば、千早は人体の構造をISの戦闘に反映させてくるはず。 いくらISが360度の視界を持とうと、やはり正面の方が背面よりも攻撃し易いのだ。 なので、シャルルは千早が自分に接近するのであれば、背後、頭上、足元といった腕の稼動範囲の死角になりやすい方向からの突撃と辺りをつけていた。 そして……(来た!! ドンピシャ!!) ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは斜め後方から襲ってくる銀華に急旋回して対応し、銀華の移動する先に自身の最強の武器、シールド付きパイルバンカー「グレースケール」の先を用意する。(これでカウンター!!) だが、いくら代表候補生といっても、運動性特化の銀華にパイルバンカーを打ち込もうというのは、虫が良すぎる話だったらしい。 千早は差し出されたパイルバンカーに沿うようにして、その先にいるシャルルに接近していく。 ISの装備は非常に大きな物が多く、ショートレンジに対応できる敵ISが懐に入ってきた時にはその多くが役に立たなくなってしまう。 しかも銀華は、現在稼動が確認されている全てのISの中で最速。 とても対応しきれる相手ではない。 そして、シャルルが最後に目にしたのは、千早の美しい顔だった。=============== ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡのシールドエネルギーはまだ全然残っている。 当たり前だ。 銀華の攻撃は1発しか命中していないのだから。 それでも、勝利したのは千早だった。 理由は簡単。 彼が衝撃砲を叩き込んだ箇所が、シャルルの顎だったからだ。 ISは絶対的な防御力を持ってはいるものの、受けた攻撃の衝撃はある程度装着者に与えるようになっている。 かくして千早の攻撃の衝撃はシャルルの顎にピンポイントで打ち込まれ、彼女を脳を揺さぶってその意識を刈り取ったのだ。 銀華がショートレンジ戦闘に対応しているISだったからこその芸当だった。「なんとか、勝てた……か。」 千早はシャルルを助け起こして、彼女に敗北を宣告したのだった。「あの、御門さん、僕は……」 千早はプライベートチャンネルでシャルルに応える。『貴女の正体については、後にしましょう。』『……やっぱり、気付いていたんですか?』『ちょっとした種があるんですけどね……それが無かったとしても、バレバレでしたよ。』 そこでシャルルとの会話を打ち切った千早は、アリーナをセシリアとラウラに明け渡したのだった。=============== セシリアVSラウラが終わった後、翌日の試合が組まれた。 最も損傷の激しい銀華は除外し、代わりに一夏の白式を補充する形だ。 勿論、一夏は打鉄を身につけてランニング中であり、この試合組みには関与しない所か、試合の存在自体を知らない。 一夏の代わりに千早が代表候補生達とグーとチーで分かれましょを行い・第一回戦 セシリア VS 一夏・第二回戦 ラウラ VS シャルルという組み合わせが決定したのだった。==FIN== 戦闘描写でした。 まー、あんな高速機動出来る奴が弱い筈が無く、まして千早ならなおの事という事で。 本当はこんな時期に、ここまで代表候補生、しかもシャルル相手に戦えちゃいけないはずなんですがね……チート乙とか言われそう。 でもおとボク主人公なんだから、チートは許して!! ……ダメ?※ISの腕部パーツの設定を少し大きめにしすぎていたので、修正。この世界のISは大体TVアニメ版に近いデザインで、白式・銀華は上半身のみ小説挿絵版に近く脚部パーツが上半身同様本物の足にフィットする感じになってます。 ちなみに束さんは小説挿絵版・TVアニメ版・漫画版でそれぞれデザインの違うISを見て、他にも色々見て、色々漲っています。