日曜日。 簪と束は調整を終えた打鉄弐式のお披露目をしていた。「ほう、これが完成した打鉄弐式か。」「うん。 『インフィニットストラトス』だと精密手動誘導が可能なミサイルを同時に複数操作するのが持ち味だったんだけど、そのカーボンコピーだと芸が無いからミサイルの代わりにマニュピレーターを飛ばしてみましたっ!! これで沢山の手に色んな種類の武器を持ってオールレンジ攻撃が」 束がそこまで言うや否や、千冬のネックハングツリーが彼女に炸裂する。「お、お前は、ピーキーな方向に走るなとあれほど言っただろうがああああっ!!!」「い、いやでも、彼女は代表候補生だから、ちょっと位無理したって……」「オールレンジ攻撃がちょっとの無理で済む代物かっ!!!」「って、いうか、ちーちゃん、ギブギブっ!!」 束にそう言われた千冬は、彼女を下ろす。「けほっ、な、なんかちーちゃん怒りっぽくなってない?」「おかげさまで最近お前のせいで散々追い詰められているからな。 だいたい何なんだ、あの『魔法少女プリティ☆ベル』というのは。少女でもなければプリティでもないじゃないか!」「あう……」 とはいうものの、千冬の心配を余所に当の簪からは意外にも好評であり、彼女の打鉄弐式はこの仕様で行く事と相成った。「それにしてもギリギリ間に合ったな。」「? ちーちゃん、どういう事?」 束が小首をかしげていると、千冬は彼女に答える。「いや何、この打鉄弐式を使うタッグマッチトーナメントなんだがな、明後日開始なんだ。 それを知らんとは、私の知らん間に情報を山ほど仕入れてくるお前にしては、珍しい話だな。」「そりゃ、だって私、ずっとちはちゃん家に居たんだよ? 物理的に別の世界に居るのに、こっちの世界の事情に詳しくなれるはずないじゃない。」「確かにそう言われればそうなんだろうがな。 だが別段隠していた情報ではないんだぞ? お前ほどの事情通がソレを知らんというのは、やはり違和感があるな。」「まあ、やる事っていうかやりたい研究が沢山あったからねえ。 私の分かっている事しか研究しないこっちの世界の情報なんて、集める気も起きなかったし。」「ふむ。 まあ確かにお前の本職は研究者や技術者であって、工作員や情報屋ではないからな。 こういう事もあるか。」 千冬は、そう言って自分が口にした疑問に対して納得した。「所でちーちゃん、話は変わるんだけど。」「何だ?」「ちょっとちーちゃんに渡しておきたい物があって…………」=============== そして、とうとうやって来たタッグマッチトーナメント初日。 「初日」というのは、流石に全試合を一日で消化する事は無理であるためだ。「『初日』か……」「ん? どうしたんだ千早?」 感慨深げに呟く千早に、一夏が声をかける。「いや何、『インフィニットストラトス』だとこの手のイベントはマトモに進行しないらしい、って話を聞いてるものでね。」 千早がそう話すと、千早の言葉に応じるようにして、箒が話に加わってきた。 彼女は千早と違い、実際に『インフィニットストラトス』を読んだ事がある為、具体例を挙げて話をする事が出来た。「ああ、確かに千早さんの言う通り、1巻のクラス代表戦と2巻のタッグマッチトーナメントは、どちらも最初の試合でぶち壊しにされて終わっていたな。」「……おいおい、大丈夫なのかよ…………」 一夏が心配そうに言う。 その彼に、箒はこう答えた。「そう心配するな。少なくとも今回のタッグマッチトーナメントでは、『インフィニットストラトス』と同じ状況になる事は無い。 2巻で起きたトラブルは、もう済んでしまったVTシステムの暴走だったからな。」「へ? そうなのか? それじゃあ、同じ事は起きないってことか。」「……それで恙無くトーナメントが進行するとも限らないけれどね。」 千早はそう言って、束が送り込んだ覚えが無いと言っていた無人ISの事を思い浮かべる。「それにしても、今回のトーナメントって、試合直前までトーナメント表に誰と誰のタッグなのか出さないんだな。」「何らかの配慮があってやっていることなんだろう。」「箒さん、少なくとも『次はどこの誰が出てくるんだろう』って思わせる効果はありますよ。 ショーマンシップ的な観点から見れば、そう悪くは無い手法だと思います。」 一夏、箒、千早がそんな事を言っている間に、一年生の部第一試合がまさに始まろうとしていたのだった。=============== 所変わって、織斑家。 ここでは、束がIS学園をハッキングして得たタッグマッチトーナメントのリアルタイム映像を束や妙子、史といった御門家の人々が固唾を呑んで見守っていた。「……あれ? 第一試合はいっくん達の試合じゃないんだ?」 束が拍子抜けした調子でそう言う。 必ずといって良いほど最初の試合に『織斑 一夏』が出ている『インフィニットストラトス』を読んでいた束には、この展開は少々意外だった。「ま、いっか。トーナメントにエントリーしている以上、どーせいつかはいっくん達が出てくるわけだし。」「……それにしましても…………」「ん? どーしたのふーちゃん。」 史はやや辛そうな顔をして呟く。「IS学園というのは、やはり軍学校なのですね。 皆様、お互いにご友人の筈ですのに、いくらシールドバリアに守られているとはいえ、そのご友人に向かって高い殺傷力を持った実銃を発砲してしまえるなんて……」「むー、そこなんだよねえ。 昔は職業軍人の人が生徒としてやってきてたから、その辺の事も軍事訓練だってちーちゃん納得してたけど、今の女子高化しちゃったIS学園でだと、ちーちゃんにも思う所があるみたい。」「そうなのですか……」 『IS学園とは、戦闘技術を身につけるための学校だ』と頭で分かっていても、やはりこのように代表候補生ではない普通の少女に見える一般生徒達が戦闘行為を行っている様子を見るのは、彼女達が少年兵……というより少女兵に仕立て上げられている様子を見るようで、あまり気分の良い物ではない。 勿論、彼女達が兵士になると言う強固な意志の下、IS学園への進学を決めたと言うならば妙子や史にも文句は無いのだが、そう考えるにはIS学園生は余りにも普通の女子高生過ぎている。 世界最高のエリート校という餌で釣り上げた少女達を兵士に仕立てている、その訓練風景を見ているようで、ISがステータスシンボルではない世界の住人である妙子や史にはいたたまれない光景のように見えてしまっていた。 そんな学校に千早を放り込んだ束にも思う所は無いでもないが、それ以上にIS学園で兵士へと変貌してしまい、その事に全く疑問を感じていないであろう少女達の事が気の毒でならなかった。 そして……結局一夏と千早が出てきたのは、トーナメントの最後の最後であった。=============== 一夏と千早の試合……の直前に、箒達の試合があった。 そのカードは「箒+簪 VS 鈴音+セシリア」。 結果は……箒達の勝利であった。 単純に簪が4人の中で最強だった事に加え、逆に最弱の箒が分をわきまえてサポートに徹したのが上手くはまった形だった。 逆にお互いの技量が近い鈴音とセシリアは互いに我が強すぎ、機体特性が見事に前衛向きと後衛向きとに分かれていたにもかかわらず、上手い具合に連携する事が出来ずに敗北してしまったのである。 もっとも、打鉄弐型のマニュピレータによるオールレンジ攻撃がブルーティアーズのソレの上位互換であったり、紅椿の性能が他の機体を圧倒していた点も敗因ではあるのだが。「くうっ、わたくしがBT兵器を使いこなし、レーザーを屈折させる事ができてさえいれば……っ!!」「そんな面倒な演算しながらあのオールレンジ攻撃を避けるつもりか、お前は。」「はぅ……」 とはいえ、光の速さのレーザーによる曲射が可能になれば回避は事実上不可能だろう。 そう考えれば確かにブルーティアーズは強いのだが……如何せん、標準的な火力のレーザーライフルを一々複雑な演算をしながら発砲していては、打鉄弐型相手ではどうしても手数で押し潰されてしまう。 機体同士の相性は最悪に近かった。「まあ技量的には、お前達の方が篠ノ之よりも圧倒的に上なんだ。 いち早く篠ノ之を倒して2対1に持ち込めれば、お前達から見て格上の更識が相手でも勝ち目はあった。 お前達がもう少し連携できていれば、出来ない話ではなかった筈だぞ。 もう少し協調性という奴を身につけておくんだったな。」「「はい……」」 鈴音とセシリアは同時に頷いた。「さて、次が1回戦最終試合か……」 カードは「一夏+千早 VS ラウラ+シャルロット」「単純に力量差を考えれば、ボーデヴィッヒ達の勝ちだが……」「いや、一夏達のあの高機動で連携なんかされたら、彼女達でもどうしようもなくないですか?」「まあ、そうとも考えられるか。」 どう転ぶか分からないと言う意味では、好カードと言って良かった。===============『さて、いきなり面倒な連中にぶつかったものだな。』『1対1なら確かに僕達の方が強いと思うけど、タッグマッチだからねぇ。』 無論、準軍人である代表候補生のシャルロットとベテラン軍人であるラウラは、連携の為に必要な訓練を充分以上に受けている。 だが、IS戦闘を前提として、特定の相手との連携に特化したかのような訓練を日夜繰り返している一夏達を相手に、IS戦闘で連携能力を競うというのであれば、相手の土俵で戦う事になると認識せざるを得ない。『分かっていると思うが、連中の高機動を連携と組み合わされては、こちらのアドバンテージである技量差が埋められてしまいかねん。 間違っても奴等を格下などとは思うな。』『思わない思わない。』 そう話しているラウラとシャルロットの前に、一夏と千早が出てくる。 体格的には一夏達の方が大柄なはずなのだが、ISのサイズが違いすぎる為、ラウラやシャルロットの方が大きく見える。 これは、以前のクラス代表選考戦でも同様だった。 一方の一夏+千早組も、対戦相手であるラウラ達を警戒している。 マトモに技量を見比べれば、代表候補生として訓練と言う名の生き地獄を年単位で味わっているであろう彼女達と、ほんの数ヶ月までは一般人であった自分達の差は、比較するのも馬鹿らしいほど大きい筈だからだ。 実際、2人ともクラス代表選考戦でその実力差の片鱗を味わっている。『まったく、2人とも他の一年生達よりずっと強いのに良くやるよ……』『そういう事言っても仕方が無いだろ。 それにラウラの奴なんて、いつでもどこでもガチで勝ちに行く気質だろうし、それなら強いパートナーを誘って磐石の戦力を整えようとするだろうよ。』『まあ、そうだろうね。 で、どうするんだい、一夏。』『そりゃ各個撃破しかねーだろ? マトモに2対2で戦ったりしたら、俺達なんてなす術なく惨敗するしかなくなるぞ。』『だよねえ……問題は、向こうもソレを十二分に分かってるって事だけど……』『こないだみたいな作戦は、即興じゃ無理だぞ。』『……大体、二度も引っかかってくれないって。 これはなるようにしかならないかもね。』 千早は息を整えてラウラ達と対峙し、一夏もそれに習う。 そうして、試合が始まった。 その瞬間、ラウラとシャルロットは一夏達目掛けて弾幕を張る。 ラウラはシャルロットから貸し出されたらしいアサルトライフルをレールガンとともに発砲し、シャルロットも広い範囲をカバーするべく誘導式ミサイルランチャーを使用している。 勿論、2人ともこれで一夏達が被弾するとは思っていない。 この弾幕は、一夏対ラウラ戦の時のように、一夏達に待ちをさせないための物だ。『冗談じゃねえ。 どんなに複雑怪奇に機動して見せても、あいつ等2人とも俺達2人の動きを完全に把握してやがる。 やっぱり俺達みたいな常人と、シャルロット達代表候補生やラウラみたいな生物兵器じゃモノが違うみたいだな。』『分かってたつもりだったけど、やっぱり高機動によるかく乱は不可能って事か……』 防戦一方の一夏達は、機動力によるかく乱が全く通用しないラウラ達相手に攻めあぐねる。 一方で、攻勢に出ているラウラ達にも焦りはある。『こいつ等、前より速くなったとは聞いていたがここまでとはな。』『2人ともこっちが撃ってる弾丸より速く動いてるから、偏差射撃しているつもりなのにロクに当たらないよ。』『それより連中に接近された時のカウンターが、僅かだが難しくなっている方が厄介だな。 それだけで向こうの勝ち筋が大分大きくなっているぞ。』『出来れば早いうちに各個撃破したいよね。 今はまだ向こうの動きを何とか把握できているけど、こんなのずっと続けてたら、こっちの神経が持たないよ。』『そうだな……』 恐らく一夏達の攻撃は、2人同時に自分達のうち片方に襲いかかり、ほんの僅かにタイミングをずらして命中率を上げる時間差攻撃だろう。 ラウラ達はそうあたりをつける。 ならば、その時にAICで片方の動きを止めて、その瞬間にしとめてしまうのが良いだろう。 その場合、狙うべきは……『雪片弐型が厄介な織斑一夏を仕留めるぞ。って普通に考えればそうなるよな。』『そこで更に裏をかいて僕を狙うんじゃないか、っていうのかい?』『ああ。何だかんだ言って、俺には前にAICを見切られちまった事があるからな。 勿論、シャルロットのサポートやら何やらがあれば、俺をAICにひっかけるなんざラウラにとっちゃ朝飯前なんだろうけどよ。』『とはいえ、片方をAICで止めた瞬間に、もう片方からの攻撃は必ず受ける。 そう考えるなら、甘んじて攻撃を受けても一撃必殺で倒れてしまわない僕の方を残すんじゃないか?』『んじゃあ、やっぱり狙われるのは俺の方か?』『可能性が高いのはね。』 一夏達はラウラ達の偏差射撃の嵐をなんとか掻い潜りながら、彼女達の戦術を予測し、その攻略法について話しあう。 距離をとっている現状はラウラ達に圧倒的に有利な状況だが、被弾率の低下を考えれば一夏達にとってもそう悲観すべき状況ではない。 いくら一夏達には接近戦しか出来ないとはいえ、その接近戦においてラウラやシャルロットの方が一夏達より圧倒的に強いのだ。 よほどしっかりした戦術を組み立てた上でなければ、迂闊に接近するのは自殺行為だった。 そしてそれはラウラ側も承知の上である。『自分達が凄く弱いって思い込んでるからだろうけど、一夏達の戦い方って随分慎重だね。』『ああ。その分打って出た時には、必ずその裏に必勝の策を潜ませている筈だ。 対応を誤れば、即敗北に繋がるだろうな。』 ラウラはかつての敗北を思い浮かべてシャルロットに応じる。『まったく面倒な奴だ。 弱いくせに自信過剰な『織斑 一夏』とは、ここだけは似ても似つかないな。』『うんうん。で、どうするの?』『こちらからは打って出ようが無いだろう。連中のスピードで逃げられたらソレまでだ。』 その為、ラウラ達は常に迎撃を強いられる。 技量差では埋める事が出来ない、超高機動型ISを使用している一夏側の大きなアドバンテージだ。 とはいえ、打って出た瞬間に迎撃されてはソレまでである。 一夏達はラウラ達が充分過ぎるほどの迎撃の用意を整えていると考えているのか、一方的に撃たれる遠距離から距離を縮めようとしていない。『だが近いうちに連中の方から仕掛けてくるな。』『どうして? 僕、もう2人同時に動きを把握するのが大分辛くなってきてるんだけど……』『連中はそう考えないだろう。 おそらく、平然と自分達の動きを把握されていると思っているはずだ。 連中は代表候補生というものを、私のような生物兵器か強靭な超人兵士だと考えているようだからな。』『だから消耗狙いは無いってこと?』『ああ。スタミナ勝負に持ち込まれたら自分達の方が不利だと考えている筈だ。』 この辺りのラウラの読みは、完全に正解である。 だが、一夏達はラウラの読みに薄々気付いた上で、代表候補生への過大評価ゆえに動かざるを得なかった。 それは刹那の交錯だった。実時間にして1秒にも満たない間の攻防。 一夏と千早は、一夏の方が先行する形で時間差攻撃をラウラに対して仕掛けると見せかけておいてから、先に千早がラウラに仕掛ける。 とっさにラウラは対一夏用に準備しておいたAICで千早を拘束、その瞬間を狙ってシャルロットが千早に向かってバズーカ砲を発砲。 それよりほんの僅か前にAICで静止させられた筈の千早からの衝撃拳がラウラに炸裂、虚を衝かれたラウラは体勢を崩し、後からやって来た一夏にその隙を衝かれてしまう。 絶対防御強制発動により一気にシールドエネルギーを削がれてしまったラウラは、体勢を立て直す間もなく畳み込まれて戦線離脱。 後には2対1という構図だけが残されたのだった。 結局、シャルロット一人では一夏達相手には分が悪く、そのまま彼女達は敗北し、一夏達の二回戦進出が決まったのだった。=============== 試合後、戦っていた4人は顔をつき合わせて反省会を開いていた。「すまん、私の判断ミスだ。」「いや、そっちにショットガン渡してなかった僕の方にも非があるよ。」 終わってみて改めてあの攻防を思い返すと、千早は明らかに「AICで拘束される」という状況を狙っていた。 AICで動きを拘束している間は、拘束された側にとってもラウラは止まっている。 四肢を動かさずに攻撃する方法があるのなら、むしろラウラを狙い撃ちにし易い状況であるとも言える。 もっとも、『インフィニットストラトス』においては、『ラウラ』がAICで拘束された『甲龍』の衝撃砲を未然に防いでいた。 しかし、それは『甲龍』の衝撃砲があまり速射性に優れていない為だ。 高機動戦闘に使用される銀華の衝撃拳が、速射性に優れた代物である事は、考えるまでも無かった。 だが、前回千早と戦った時には充分な距離を置いてAICで拘束できた事と、銀華にアンロックブレード・銀氷が追加装備された事もあって、ラウラの意識内での衝撃拳の影が薄くなり、警戒心が弱くなってしまっていた。 それでも対戦相手が千早一人であれば前回同様に充分な距離を置いた上での拘束ができたのであろうが、今回は千早にばかり神経を向ける訳にも行かず衝撃拳の射程内に入ってしまったタイミングで千早をAICで止める事になってしまったのだ。「いやあ、でも賭けだったんだぜ? もう少し離れた場所で千早を拘束されちまったら、シャルロットじゃなくて俺の方が数的不利を抱えて戦う羽目になってただろうからな。」「シャルロットさんのバズーカだって、凄く早かったじゃないですか。 もう少しで、衝撃拳を放つ暇も無くやられてましたよ。」 一夏と千早は勝ってなお、ラウラ達の方が自分達より強いと実感して、そう言った。 ちなみにシャルロットのバズーカは千早に直撃しており、千早のシールドエネルギーの大半を削り取っていた。 その為、先ほどのタッグマッチでは、千早もまた撃墜判定を受けている。 もっとも、千早は撃墜判定と引き換えに一夏がシャルロットに付け入るチャンスを作り、それが勝負の決め手になっていたのだが。「それにしても……」「? どうしたんだ、ラウラ。」「いや、何も起きんな、とな。」「『インフィニットストラトス』の事か?」「ああ。『インフィニットストラトス』では、この手のイベントは必ずといって良いほど緒戦で潰されると聞いていたからな。」「じゃあ、やっぱり何も起きないのかな?」「……だと良いんだがな。」 そう呟くラウラの脳裏には、タッグマッチトーナメント開始直前の千早同様、束が作った覚えが無いと言っていたらしい無人ISの姿があったのだった。==FIN== ええと、長らくお待たせしてすいませんでした。 いよいよタッグマッチトーナメントの開始です……もう一回戦が全部消化されちゃいましたが。 ちなみに専用機持ちが最後の方で戦っていたのは、専用機持ちの出番を遅らせる事で一般生徒が実力差の前に萎縮してしまう時間を少しでも短くする為の処置です。 対戦相手カードをギリギリまで秘密にするのも同様の理由から。まー、ちーちゃんが言っていた理由もないわけじゃないんですが。 また、専用機持ちをトーナメント表の端っこに纏めて潰し合わせる事で、一般生徒達が専用気持ちに瞬殺されてしまう頻度を抑える目的もあります。 ちなみに、今回は一夏+千早の方が、ラウラ+シャルロットに勝ってますが、この4人の実力差は 一夏<千早<<<<シャルロット<ラウラ ってな具合で、ラウラやシャルロットの方が大分強い筈です。 一夏と千早は毎日タッグマッチ用の訓練をしているようなものでしたので、連携能力の差で技量差を埋めた形での勝利でした。 次回は2回戦になります。