「上條くん、すっかり馴染んだようだね」
「はい!
先生のおかげですっかり動けるようになりました!」
とある病室では、ほんの数十分も前には自力ではほとんど動けなかった少年がベッドから降り、ストレッチなどをして身体を元気よく動かしていた。
「本当によかった。
効果には自信はあったが、なにせ症例が少ないから少し不安もあったからね」
医師は微笑み、自分の研究が間違えていなかったことを悟る。
あのとき、至朗田という男に出会っていなければ私はこの患者を救うことができなかった。
ありがとう至朗田。
キミのおかげで一人の少年の笑顔を取り戻すことができた。
今キミがどうなっているかわからないけど、また会ってお礼を言いたいよ。
医師は過去に思いを馳せて一人の男を思い、感極まったことで瞳から涙が一筋こぼしていた。
「先生……、本当にありがとうございます」
上條は先生に大きく頭を下げ、心よりお礼を言う。
「先生のおかげでこんなに立派な身体になれて、また日常生活に戻ることもできるようになれます。
音楽もできるようになりました。
本当に、本当にありがとうございます」
上條の瞳からも涙が溢れ出し、何度も何度も礼をのべた。
「お礼はもう十分もらったよ。
それよりもキミは早く元気な姿を見せてあげるといい。
さやかちゃんと言ったかな。
いつもキミを見舞ってくれていたあの女の子にその元気になった姿を見せてあげるんだ!」
医師はにこりと笑って上條を促した。
「はい!
早速、さやかに僕が元気になったところを見せに行ってきます!」
上條は病室を出て元気に走り出した。
久しぶりに自分の足で走れる。
それがどんなにすばらしいことなんだろうか。
しかも、以前とは比べ物にならない身体能力。
すばらしい。
すばらしすぎるぞ僕の肉体!
さやかもきっと喜んでくれるはずだ!
胸を弾ませて走る恭介。
微妙に悦が入ってるあたりがとても気持ちが悪かった。
引き寄せられるように街中を走り、見つけたものは惨状であった。
「争いはやめるんだ!」
戦いの惨状を見た恭介は大きな声を上げる。
本来ならば手を出す気はなかったが、そこにはさやかがいて今にも巻き込まれそうであったのだ。
ここで助けなかったら男じゃないと意気込んでいた。
ちなみに、恭介の目ではまどかがあのまどかであることを認識できていない。
さすがに50%解放以上では顔は変わらなくても体格の差異が激しすぎるのだろう。
「その声は恭介?!」
聞き覚えのある声にさやかが声のほうへと振り向く。
「さやか!
助けに来たぞ!」
ありがとう恭介。
本当にありがとう恭介!
けど、どうして恭介がここにいるんだろうと、感謝すると同時に思い……。
「ムキムキだーーーーーーーーーー!!!」
絶叫した。
「しかも、上半身太っ!!
下半身細っ!!」
突っ込みどころはそこではないといいたいところだが、今のさやかにそんな余裕はない。
ちなみに、本来のドーピングコンソメスープならば顔が膨張し、目が血走ってしまうのが難点であったが、それは医師の研究の成果で解消されているため、めっちゃムキムキでも顔だけは上條恭介そのままである。
アンバランスすぎて気持ち悪さは限界突破であった。
「ははは……、まだ筋肉が馴染んでなくてね。
恥ずかしいところ見せちゃったかな」
照れくさそうに頬をかくが、問題はそれじゃないし、そんなものはどうでもいい。
そもそもなんで動けるの?
しかもその筋肉何よ。
まどか?
まどかなの?
嘘よ。
嘘といってよバーニィ。
今回だけは完全にまどかは関係ないのだが、今までの状況から考えると無理もなかった。
「あ、ああ……」
ふるふると震えながら恭介を指差すさやか。
「どうしたんだいさやか……って、ああそうだよね。
まだどうして動けるかを教えてないもんね。
実は、僕の主治医の先生が研究していた薬があって、そのおかげでこんなに健康な肉体を手に入れることができたんだ!
かっこいいだろ?」
実に嬉しそうに笑う恭介の姿にさやかは己の恋心が音を立てて崩れていくのを感じていた。
「詳しいことはあとにしよう。
今はここから逃げよう。
今の僕じゃあのマッスル力にはちょっと対抗できそうにない」
悔しそうにうつむく恭介。
さやかは思う。
マッスル力って何さ。
理解しちゃってるの?
そもそも今の僕じゃってことはもっと進化しちゃうの?
あんな風になっちゃうの?
この場における唯一の普通の人間であるさやかはあまりの意味不明な現実についに気絶してしまった。
きっと精神の防衛反応だろうが、目覚めたときに再び始まる悪夢を思うと不憫で仕方がなかった。
「くそ!
さやか!
しっかりするんだ!さやか!!」
怒りで筋力が膨張する。
さやかの気絶による怒りによって筋力が最大限まで解放される。
これならやつらを倒せると、待っていてくれさやかと恭介はさやかを安全なところに下ろしてまどかたちに向き合う。
「ちくしょう!
よくも!
よくも僕のさやかをやってくれたな!
お前ら絶対に許さない!」
突っ込みどころ満載である。
誰のせいで気絶したのかをまったく自覚していないあたりがかなり性質が悪かった。
「お前らが争いを止めずに、みんなを傷つけてでも戦うってんなら!
それが正しいことだって言うなら!
その幻想(筋肉)をぶち壊す!!」
ここでキャラが違うと突っ込める人は誰もいない。
おかげでさらに舞台は混迷を極めることになる。
もとい、加速した。
そう、偶然にもその場にそろった三人のマッスル。
天然。
魔法。
薬物。
それぞれが違う方法で手に入れたマッスル力は一体何を生み出すのか。
今はまだ誰にもわからなかった。
『そんなのわかりたくないよ』
宇宙契約淫獣はいつもどおり誰からも相手をされていなかったが、マミは優雅にお茶を飲みながら実はキュウベエは最後の良心なのかもしれないと認識を新たにするのであった。
余談ではあるが、ほむらはとっくの昔に逃げ出して現実逃避をしている。
地鳴りが止んだらまた来ようと、一人喫茶店でアフタヌーンティーを楽しんでいるあたりがさすがであり、とても賢い選択だった。
あとがき
これを神回だというんだったら、その幻想をぶちk(ry
正直白状すれば、この回を早く公開したくて仕方がなかったwwww
戦隊モノまであと二人w
天然、魔法、薬物ときたらあと二つは・・・。
地震すごかったですね。
自分のところは震度5強~6弱くらいあってマジで死ぬかと思いました。
ですが、東北のほうはもっとひどかったと思うとこの程度で嘆くのは失礼なのかもしれませんね。
今回、震災に遭われた方の無事を心からお祈りいたします。
そして、無事に難を逃れた方はご無事で本当によかったです。
つらつらと書かせていただきましたが、私にできるのは募金程度かもしれませんが、皆様も復興のためわずかでもいいのでご協力できるようにがんばりましょう。
お目汚し、失礼いたしました。