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No.26322の一覧
[0] 【ネタ&習作】FF5 クルルルート(R15)[哀歌](2011/03/04 00:02)
[1] 第一話[哀歌](2011/03/04 02:09)
[2] 第二話[哀歌](2011/03/15 22:03)
[3] 第三話[哀歌](2011/03/22 22:24)
[4] 第四話・前編[哀歌](2012/04/03 08:35)
[5] 第零話(現在封印中)[哀歌](2012/04/02 00:11)
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[26322] 第三話
Name: 哀歌◆2870d1eb ID:b5093353 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/22 22:24


 誰も足を踏み入れる事が出来なかった孤島の神殿。そこは世界が一つになった事により、本来の形を取り戻していた。
 名の如く、その全容を現していたビックブリッジ。その中心に神殿が出現していた。まるでビッグブリッジが、今まで誰の侵入も許さなかった神殿への道を造るかのように。頑強な橋脚が険しい山脈を砕き、神殿までの道を造り上げていた。
 その、常識を覆すような威容を見て驚きながらも俺達は神殿の中に入り、そこが石版を守護する聖域だと確信する。
 入口を護るガーゴイル。強力な武器を護る赤装束の守護者。行く手を阻む様々な仕掛け。明らかに侵入者を奥に進ませない為の配置であり。その熾烈さは、砂漠のピラミッドで味わった苦難と同一のものだった。
 そして、その奥に在った石版の元に辿り着いた俺達に襲い掛かったのは、エクスデスの放った一体の刺客。
 此方を女子供ばかりの集団と侮るそいつに対して、一切の緩みも無く戦闘を開始した俺達――だが。


 戦局は思いもよらない方向へ進む。


 ――俺達は危機に陥っていた。





「はぁぁぁぁぁぁぁあッ!!」

 エクスカリバーを構えたレナが、一気呵成に敵――蒼白い光を放つ魔物、ストーカーに接近する。
 前傾姿勢のまま、虎のように素早く、それでいて強烈な勢いの踏み込み。敵に反撃させる隙も見せぬまま、その体を横凪に薙ぎ払って――ストーカーの体は同時に霧散する。まるで、幻であったかのように。

「……っ! また分身!? いい加減にしなさい!!」

 舌打ちをするレナの前で、霧散したストーカーが再び体を構築する。その数は四体。
 先程からずっとこの流れだ。四体に分身し、こちらの攻撃を回避し続けるストーカー。どうやら随時、分身と本体を入れ替えているようで、一向に打撃を与えられていない。こちらの攻撃は回避され、相手の攻撃だけ受け続ける現状。結果、疲弊していくのは俺達だけという事になり、時間が経つにつれて不利になる。
 そして長時間戦い続ければ、どうしたって隙は生まれる。その隙を突くように、敵は、ストーカーは。

「――避けろレナ! 来るぞ!!」
「っ――あ、あぁぁぁぁぁぁあっ!?」

 風乱(ハリケーン)。魔導の知識経験が俺にも解る、高密度の小型竜巻をぶつけられたレナが、吹き飛ばされて神殿の壁に激突する。直撃したせいか、単純に威力が高すぎたせいか、伏せたまま起き上がる様子は無い。
 くそっ。レナまで一撃かよ。このままじゃ本気で不味い。全滅するぞ!?

「クルル! レナを頼む!! ゴーレムを召喚して、魔力障壁(シェル)――いや、魔法反射(リフレク)張って護っててくれ!」
「い、いいけど……バッツは!? ファリスだってやられちゃってるし、このままじゃどうにもならないよ!?」

 クルルの悲痛な叫びは、今の苦境を明確に現している。
 そう。敵の攻撃によって倒れたのはレナだけではない。ファリスもまた、レナ同様、敵のハリケーンにより重傷を負って倒れている。我等のパーティーで前衛を張ってる二人が倒されたのだ。残っているのはサポート役の俺と、魔法担当のクルルのみ。既に大勢は決していると言っても過言ではない。

「回復魔法(ケアル)でレナ達癒したって、今のままじゃ同じ事の繰り返しだ! 回復と同時に強化する薬を調合する! それまでの間、クルルは二人を頼んだぞ!!」
「だ、だからぁ!! その間、バッツはどうするのって聞いてるんだよぉ!! 前衛二人が倒れてるのに、どうやって薬の調合なんて――」
「――両方やるんだよ。薬の調合と、囮役。こういう時、両方やらなくちゃいけないのがサポート役の辛いところだけどな」
「――ちょっ!?」

 何やらクルルが目を白黒させて泡食ってるけど、もう相手にしている余裕は無い。
 既に右手にすりこぎ、左手にすり鉢抱えて、ごーりごりと薬を調合中である。回復薬と強化薬。この二つを同時に作り、二人分用意できるのは、不本意ながらも薬師を極めた俺以外にはいない。
 そしてこの体勢で敵の、分身含めて計四体のストーカーの攻撃を防ぎきる必要がある。
 まったく。レナやファリスを一撃で倒すような敵を相手に立ち回るなんて、どんな無茶振りだ。
 実際、目の前で敵さんが笑っていやがるし。

「ハッハッハッ! 女子供の後ろに隠れていた奴が、このストーカー様の相手をするだと? 笑わせてくれるな。しかも両手が塞がったその状況で……戯れも大概にして貰おうか!!」

 ああ本当に、お前の言葉はいちいちごもっともだよ。俺はレナやファリスより弱いし、今までの旅でも、俺はあの二人の後ろで補助に回っていた場合が殆どだ。その所為で、随分サポートが板について吟遊詩人やら薬師としての腕前ばっかり上がっちゃったんだから。
 だけど、な。

「これで終わりだ! 貴様達の首、エクスデス様への手土産にさせてもらおう!!」

 四体のストーカーが同時に襲い掛かってくる。それぞれが棍棒を掲げて殴りかかろうとする。
 本当に容赦がない。防御を固めてレナとファリスを護っているクルルには見向きもせず、俺だけを狙っている。ま、確かにすり鉢抱えてごりごりやってる今の俺は絶好の的だろうけど。
 両手は塞がって、四対一で囲まれて、奇跡的な助けは期待できない。
 絶体絶命、ってやつなんだろうな。傍から見れば。
 でも。

「――ふっ!」

 呼気と共に、体を捻る。瞬間、通り過ぎる風圧。ストーカーの棍棒が俺の体のすぐ横を通過。
 次いで、身を屈める。上空――刹那の前まで頭部があった空間を棍棒が薙ぐ。きっと一瞬でも遅れていたら、今頃俺の頭はトマトみたいに潰れていた。
 汗が吹き出る。緊張が走る。反応が遅れれば一瞬で終わる。
 でもまだだ。こんな程度で――。

「はあっ!」

 すり鉢抱えながら、滑り抜けるようにストーカーの横を通る。包囲されたままでは直にやられてしまう。
 対応できる状態に――四体全てを視認できる位置に動き続けろ!

「小賢しい男め! これで――!」

 襲い掛かる風の渦。レナとファリスを一撃で倒したハリケーン。直撃すれば俺も同じように倒れる。そうなれば、残るはクルル一人―ー全滅が確かなものになる。
 防ぐ? 耐える? どちらも無理だ。レナでさえ耐え切れない攻撃を俺が耐えられる筈がない。
 ならば――避けるのみ。

 跳躍。横に跳び、紙一重でハリケーンの流れから逃れる。

 連続して放たれる二撃目のハリケーン。それも避ける。足を捻り方向転換――無茶な回避動作で足が痛むが無視。

 更に襲い掛かる三体目。棍棒の一撃。頭を砕く軌跡で上段から。

 下がって避けれるタイミングじゃない。横に避けれる状態じゃない。

 煩悶は一瞬――俺は、“前に出て”攻撃を避けた。

「――何っ!?」

 驚愕に満ちたストーカーの声が聴こえる。それもそうだろう。前に踏み込んで距離をずらし当たる筈の攻撃を避けるなんて――咄嗟に出来る反応じゃない。反射行動を全部抑え付けなければ、攻撃に対して前進するような無茶無謀な真似は出来ない。
 でも、な。俺は、俺達は、そういう無茶無謀を乗り越えて今此処に居るんだぜ。
 次元の狭間の魔物だか何だか知らないが、俺達を見くびるな。こんな苦境、今までだって何度もあった。
 それに言っておいてやる。お前は今の俺を、薬を調合しながら囮を務める俺を戯れと言ったが――


「最初(ハナ)から俺は――――本気だよ!」


 ストーカー達の包囲を抜け、俺は障壁を張り続けているクルルの元に舞い戻る。
 完成した薬を糖衣に包んで、障壁の内で倒れているレナとファリスの――口の中に突っ込んだ。
 むせ返る二人だが、今は構っている暇はない。さっさと回復してくれ。俺じゃ囮が精一杯なんだ。両手が空いたって、俺じゃあの敵を倒せやしない。
 腐っても薬師極めた俺の薬だ。効果は今までの、これまでの戦いで嫌ってほど承知しているだろう?

「……けほけほ……よくも無理矢理飲ませてくれたわねバッツ。後で覚えておきなさい」
「まったくレナの言うとおりだ――覚悟しておけよバッツ」

 そう言いつつ俺を睨みながら――二人は不敵な笑みと共に立ち上がる。
 怪我は至高回復薬(エクスポーション)が癒し、竜闘力(ドラゴンパワー)が二人の力を倍増させている。
 エクスカリバーを構えたレナと、アサシンダガーを逆手に持ったファリスが、ストーカーを見据える。
 流石。薬の効きも早い。常人なら強すぎる薬に拒絶反応起こしかねないっていうのに……俺の調合の腕前だけじゃない。二人が鍛え上げられた戦士だから、こんな無茶がまかり通る。
 準備は出来た。俺の役割は此処までだ。後は、我等が誇るタイクーンの姉妹に任せよう。


「さあ、見せ場だぜ。二人共」
「言われるまでも――」
「――ないぜ!!」


 同時に駆ける二人。聖剣を構え、暗殺刃を持ち、四体のストーカーの元に踏み込む。
 電光石火の接近。慌てたように四体のストーカーが棍棒を振り上げて迎撃しようとするが――レナ達はその“殆ど”を無視した。

「!?」

 ストーカー達の驚きに満ちた顔が、離れた位置に居る俺にもよく分かる。同時に棍棒を振り上げたストーカー。その内三体を無視して、レナとファリスの二人は“残りの一体”に狙いを定めている。
 正直、俺にも何がなんだか分からない。おそらくは、あの一体が本物で、残りが偽者なのだろうが……。

「遅いのよ!! 本物の動作に比べて、分身の方がね!!」

 聖剣を振るいながらストーカーを追い詰めるレナが叫ぶ。
 僅かな動作の違い。僅かな行動の遅れ。本物と分身の間にある、僅かな違いを、棍棒を振り上げるあの一瞬の動作で見切っていた。
 ……そりゃドラゴンパワー飲ませたんだから、レナの身体能力は上昇してるだろうけどさ……相変わらず人間離れしてるなぁ。我等が特攻隊長様の眼力は。

「馬鹿な……人間の、こんな女如きが、このストーカー様の動きを見切るだと!?」
「分身なんかに頼って戦っているからよ!! だから――私ばかりに気を取られる!」
「――な!?」

 瞬間、ストーカーの体が震える。そのストーカーの背後にはファリスの、アサシンダガーで背を切り裂いた姿があった。
 苦痛と怒りに歪むストーカーが背後のファリスを見やる。されど、それに対する反応は静かなもので――小さく嘲笑するだけのファリス。

「こっちは二人掛りなんだぜ。レナ一人に気を取られてるんじゃねぇよ馬鹿野郎」
「き、貴様――――!」

 棍棒を振り上げ、手にハリケーンの渦を纏わせて襲い掛かろうとするストーカー。
 瞬間的に感じ取れた魔力と、その威圧感は、流石は次元の魔物といった様相だった。間違いなく人間の力を超える、人外の存在の力。
 けど――そんなだから駄目なんだよ。分身を見破られたくらいで、ファリスに斬られたくらいで、我を忘れやがって。
 その隙を、レナが見逃す筈が無いだろうが。


「終わりよ――次元の狭間と言わず、地獄の底にまで堕ちなさい」


 冷たく宣告し、ストーカーの首を聖剣で容赦無く断つレナ。
 首が落ち、体が崩れ、霧散していく。三体の分身もまた、同じように消えていく。風に吹かれて消える煙のように。
 大きな安堵の溜息が聴こえる。見れば、レナとファリスの二人が同時に息を吐いていた。二人にしても危うい戦いだったのだろう。実際、今の闘いは辛勝だった。今後も、このような敵が現れるかと思うと気が滅入る。次も勝てるなんて保障、何処にも無い。
 それでも今は――この勝利に浸ろう。

「レナ、ファリス」

 呼びかけて近寄る。二人は顔を上げ、疲弊した顔で、それでも小さく笑い返す。
 俺も笑い返して――ふと思い出す。そういえばさっき、無理矢理薬飲ませたから、今近付いたら何言われるか解ったもんじゃない。緊急事態とはいえ、口開かせて粉薬詰め込んだのだから。うーむ、ちょっと後悔。今更だけど。
 でも――二人の顔に怒りの色は無い。二人は軽く手を挙げながら近寄って――了解。

 ぱぁん!

 俺とレナとファリスの掌が重なり、宙で乾いた音を立てる。
 勝利のハイタッチ――そうだよな。小言は後回し。今は、勝利の余韻以外何も必要無いのだから。






「わ、私もするよぉー!?」


 ……まあ、約一名、ポニーテールの小柄な少女が届かぬ手を必死に伸ばしていたけれど。










「――と、言う訳で、前に言った約束通りあげるわよ。はい。バッツに大地のベル」
「…………どうも」

 場所は変わって封印城の外。入手した二つ目の石版を使用し、俺達は新たな武器の封印を解いていた。
 今回解いた武器は、ホーリーランス、ルーンアクス――そして楽器、じゃなくてチリンチリン、じゃなくて大地のベル。
 前回の約束通り、レナは真っ先にベルの封印解いて俺に渡してくれた。問答無用で。止める間も無く。有無も言わさず。
 ……いや、まあ、嬉しいよ? 俺にも伝説の武器渡してくれるその心遣いは嬉しいですよ?
 でも、あの……これをどうしろと。

「お、おいレナ……お前、前回言ってた台詞本気だったんだな?」
「当たり前じゃない? おかしな事聞くのね、姉さんは。私は王族よ? 一度言った言葉は護るわ。タイクーンの誇りに掛けて」
「お姉ちゃん……別にそれは王族とか関係無いと思うよ?」
「あるわよ。こういう小さいところから厳守していかないと、部下に示しがつかないじゃない」
「…………」

 そうですね。その通りです。ええ文句は無いですよ。もう本当に。こんなリンゴーン、リンゴーン鳴るだけの楽器だって封印された十二の武器に違いない訳ですから。私のような下賎な者に渡すだけでも感涙ものですよ。
 ……ええ感涙です。この涙は歓喜の涙です。決して悔し涙ではありません。男の子は、そう簡単に泣かないんですよぉ。

「バ、バッツ……だ、大丈夫だよー。バッツが他の職になった時は、ちゃんとエクスカリバーとか貸してくれるって!」
「……いいよ……どうせ俺は薬師と踊り子と吟遊詩人をマスターした荷物持ち。『光の戦士(笑)』だよ……歌って踊れる薬剤師にはベルがお似合いだよ……」
「……おいレナ。ちょっとやりすぎなんじゃないか? 見ろよバッツのあの顔。オールド食らってヘイスト掛かった時みたいな感じだぞ。急速に老化中の、見るも無惨な有様だぞ?」
「な、何よ? 私が悪いって言うの姉さん?」

 ああ、ちりんちりんとベルの音が美しい。心を和ませてくれる。五臓六腑に染み渡ると言うか、腹の奥に響くと言うか。

「あ、ああああ! バッツの顔が悟りを開いた仙人みたいな顔になってるよぉ!?」
「……何よ。少し苛めたくらいでだらしないわね。まるで私が悪人みたいじゃないの」
「いや、今回に限って言えば相当キッツイものがあるぞレナ」

 うふふ。うふふ。ベルの音が奇麗だなぁ。空に響き、まるで小鳥さんが歌ってるみたいじゃないか。
 流石は伝説の十二の武器。この奇麗な音色はまるで自然に語りかけるみたいな――――。

「…………」
「あ。今度は動き止った。バ、バッツ? ねぇねぇ……バッツってばー?」

 隣でクルルが何か言ってる。でも今の俺にはそれがよく聴こえてこない。だって意識が――全部手元のベルに向いているから。
 ……うん、そうだよ。何でこんな楽器が十二の武器なのか……そこをもっとよく考えるべきだった。
 ベル。クリスタルに眠る勇者の心の一つ「風水士」が扱う武器。どういう訳だか、風水士はベルを獲物にして戦う。刃物でも鈍器でもなく、楽器にしか見えないベルを使って。
 それはベルに魔力を纏わせて音色に威力を持たせる事ができる、唯一の勇者だから。風水士も極めた俺には、その極意が既に身に着いている。この大地のベルも、いままで使用したベルと同じように攻撃武器として使用する事が可能だろう。
 だけど――それはきっと、このベルの“本来の使い方”なんかじゃない。

「……三人とも、ちょっと下がっていてくれないか」

 三人に言い、俺はベルを片手に周囲に広がる平地を眺める。
 不審げな三人の気配と視線を感じるが、今は無視。他者に意識を向けている余裕は無い。
 向けるべきは、この世界。込めるべきは、この魔力。奏でる矛先は――果てしなく広がる、この大地。


 音が、奏でられる。


「……っ!? ちょ、ちょっと!? な、何これ!?」
「わ、わわわわわわぁ!?」
「な、何だぁ!? 地震かよ、おい!?」

 背後で、三人が慌てふためく。それも当然だろう。俺が大地のベルを鳴らした途端――大地が大きく揺れ始めたのだから。
 揺れる。ベルの音に呼応するように、世界が振動して、大地が割れる。亀裂が広がり、地を壊す。
 大地のベル。思ったとおり。これは敵に対して使用する武器じゃない。大地に呼び掛ける為の道具だ。
 意識を集中させて、魔力を伴った音色を、自然を読み取る風水士の手によって大地に届かせれば――このような天災を引き起こす事ができる、凶悪な武装。
 冷や汗が流れる。今の今になって、この武器が封印されていた理由が解った。厳重な封印を施していた理由が解った。
 十二の武器。その力を完全に引き出し操ることができれば――世界を壊せる。ベル一つで地震を起こせるような代物だ。これ以外の武器に秘められている力が何なのか、想像するだけで背筋が凍る。
 ……使い所を誤ってはいけない。もし用途を違えば……エクスデスの前に、俺達が世界を滅ぼしかねないのだから。

「……気をつけて使わないとな。こんなの、もう武器というより兵器に近い」
「……お、おーいバッツ……何やら深刻な顔で悩んでるところ申し訳ないんだが……」

 ファリスの怯えの混じった声が聴こえる。
 って、よく考えればある程度予想していた俺と違って、ファリス達は突然だったもんな。いきなり地震が起きれば、そりゃ驚く。怯えたっておかしくない。俺だっていきなり地震起きたらガタガタ震えるだろうし。
 謝ろうと思って後ろを振り向けば、想像通り怯えた顔のファリスとクルルと――――何故か怖い笑顔のレナ殿下。
 ………………解せぬ。

「……あ、あのレナさん? なしてそのような素敵に怖い笑顔を……そして何故、先程手に入れたばかりのホーリーランスを携えていらっしゃるのかしら?」
「ねぇバッツ♪ あっち向いて♪」

 やけに陽気な、歌声のようなレナの指示に従い言われた先に視線を向ける。
 視界に映るのは広大な地平。所々に散在する樹木。そして俺達の移動手段として重宝されている飛空挺。


 ……まあ、それだけなら異常はない。ただ、先程、俺は地震を起こしたばかりで。亀裂とか地面に入れちゃったばかりで。

 つまりどういう事かと言うと――地割れに呑まれかかってますね。我等の大事な飛空挺が。

 うん。解した。



「……この大事な時期に、何で飛空挺壊そうとしてるのよ、この馬鹿ッツ――――!!」



 そうして、凄まじい勢いで、ホーリーランスの石突きの部分を、俺の腹部に叩き込むレナ。

 げふぅ。流石は伝説の武器ホーリーランス。穂先じゃない石突きの部分だけで、この破壊力か。

 やれやれ。まったく、とんだ聖槍も、ある、もんだ。



 ばたり。



「バ、バッツ――――!? し、しっかりしてぇ! しっかりしてよぉ!?」
「起きろバッツ! 目を覚ませ!! 落ち着け! 傷は浅い……くはないけど、とにかく気を確かに持て!!」
「……ちょ、ちょっとやりすぎちゃったかしら?」
「おねーちゃん!! 幾らなんでもやりすぎだよぉ!! バッツが死んじゃったらどうするのぉ!?」
「う!? だ、大丈夫よ……バッツ防具着てるし、ちゃんと急所は外したし……」
「そういう問題じゃないよぉ!! もしもバッツに何かあったら私……わたしぃ……」
「ご、ごめんなさいクルル! 本当に私が軽率だったわ……だからお願い、もう泣かないでよ」
「……もう、バッツ苛めたりしない?」
「う、うん努力するわ。だからクルル。私の事許して――」
「ってお前等!! いいから早くバッツの容態を――は!? ま、不味い! 脈が! 息が! バッツ死ぬな! ケアルガ! レイズ! フェニックスの尾、エリクサー!!」









 第三話・完





















 孤島の神殿攻略前に購入したアイテム ()内は詳細



 ポーション(30個)

 ハイポーション(30個)

 エーテル(10個)

 フェニックスの尾(4個)

 乙女のキッス(12個)

 目薬(12個)

 毒消し(12個)

 聖水(8個)

 保存食(一週間分)

 調理道具(一式)

 コテージ(4個)

 ブラジャー(F)

 ブラジャー(D)

 ブラジャー(寄せて上げる)

 ショーツ(高級ランジェリー)

 ショーツ(スポーツタイプ)

 ショーツ(縞)

 トランクス(ワゴンセール)

 YESNOまくら(1個)

 ファミリープロジェクト(1ダース)




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