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No.26163の一覧
[0] 【習作】学園黙示録*僕にできること*[センター](2011/04/18 21:23)
[1] プロローグ[センター](2011/04/18 21:11)
[2] 第1話[センター](2011/03/09 20:12)
[3] 第2話[センター](2011/02/27 20:07)
[4] 第3話[センター](2011/04/18 21:31)
[5] 第4話[センター](2011/03/24 10:56)
[6] 第5話[センター](2011/03/24 10:57)
[7] 第6話[センター](2011/03/09 20:19)
[8] 第7話[センター](2011/03/16 00:34)
[9] 第8話[センター](2011/03/17 16:31)
[10] 第9話[センター](2011/03/25 10:45)
[11] 第10話[センター](2011/03/30 21:16)
[12] 第11話[センター](2011/04/08 16:51)
[13] 第12話[センター](2011/04/09 22:59)
[14] 第13話[センター](2011/04/15 23:22)
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[26163] プロローグ
Name: センター◆49eeeab1 ID:2665a539 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/18 21:11
中学2年のある日。

一般的に、ごろごろしたり、父が家族サービスに頑張ったりする、一週間に1度やってくる日曜日というものだ。

それは、神谷家にも変わらずやってきた。

「また遊園地かよ」

さすがに今月入って3回目の遊園地に、優は呆れる。

「あれ?優は遊園地が好きだと思ったんだがなぁ」

「いや、もう子供じゃないし」

いくらジェットコースター好きの優も、さすがに飽きる。

「じゃあ、どこがいい?」

そう、父に聞かれて考える優。

その頭に思いついたのは、レジャーだった。

「釣りとかいいんじゃない?山とかさ!」

反抗期など、全く関係ない神谷家では、休みの日に家族三人で出かけるのが常だった。

「山か……いいな」

見るからに厳しそうな父は、性格は温厚。

殆ど叱られる事はなく、どちらかというと諭して相手に罪悪感を呼び起こすプロだった。

「じゃあ、お弁当作らないとね」

にこにこしながら言う母に、優の顔が綻ぶ。

今時珍しいぐらい、仲のいい家族だった。

それが――――

「あなたっっ!前!!」

「くそっ!!」

どうしてこうなったのか。

最期に聞いた両親の声は、切羽詰まっていた。

次に目を開いて見えたのが、白い天井。

薬の匂いが充満した、病院のベッドの上だった。

何がなにやらわからない。

そして、唐突に思い出す。

悲鳴、怒号、―――衝撃

「ぐっ!?」

思い出した。

両親と山にレジャーに行って、帰りの道で反対から大型のトラックが突っ込んできたのだ。

「ああああああ!?」

絶叫する。

もし、自分が、山へ行こうなどと言わなければ。

もし、もし、もし――――

事故は起こらなかったかもしれない。

両親は死なずに済んだかもしれない。

声を聞きつけ、看護士と医者が飛び込んできた。

押さえつけられ、薬が打たれる。

そして、優の意識が遠のいた。







事故から数ヶ月。

親戚もほとんどいなかった神谷家では、優の面倒を見る人がいなかった。

お金がない、場所がない、そんな大人の押し付け合いを見かねたのか、一人の女性が優を引き取ると申し出た。

神谷唯香、優の従姉であり、ついこの間就職したばかりだった。

もちろん、優を養えるほどの財力があるわけなど無く、優は年齢を隠してバイトを始めた。

初めは塞いでいた優だが、次第に心を開いていった。

そして、もうすぐ中学も卒業だというある日。

仕事が終わって帰ってくる唯香と待ち合わせして、晩ご飯の買い物を買って帰る予定だった。

唯香と合流して、帰宅途中に二人は暴漢に襲われた。

優は奮闘するが、特に身体を鍛えていたわけではなく、呆気なく殴り倒された。

その時は目撃者の通報で、なんとかなったが、優は願った。

力が、大切な人を守れる力がほしいと。

そこから、入学した藤美学園で、優は剣道部に入った。

槍術部などもあったが、剣道部に入部する。

ある人物に会ったからだ。

毒島冴子。入学した頃はまだ部長にはなっていなかった。

見学のあったその日、優は委員会の仕事を押しつけられ、長く引き留められていた。

(今日の見学はもうダメだろうな……)

辺りは暗くなり、生徒も殆ど下校している。

ダメもとで、剣道場を除いてみると一人の女性が、竹刀を振っていた。

胴衣は外した状態で、白い服を身にまとっていた。

「はっ」

気合いの入った声と共に、空気を切り裂いて竹刀が下ろされる。

凛とした空気に、横顔を流れる汗がとても綺麗だった。

練習が終わったのだろう。

下ろしていた竹刀を静かに引き、女性はほうっと息を吐いた。

そして、優に気づく。

「入部希望者か?あいにくと、今日の練習は終わっているのだが……」

怪訝そうな表情を浮かべ、女性は近寄ってきた。

思わず見とれていた優も、我に気づき顔を赤くする。

「えっと、あの……」

「??」

慌てている優に、どうしたのかと不思議そうな顔をする女性。

その優の視線が下へと降りていく。

「し……失礼しましたぁ!」

そういうなり、優は一目散に道場を出て行った。

後には何が何だか分からない女性だけが残されていた。

女性は気づかない。

優が慌てていた原因が、汗で透けた服だということを。



これが、優と毒島冴子との初めての出会いだった。








「剣道部に入ることにしたの?」

平野コータが優に訪ねてくる。

「うん。力つけたいし……」

コータと仲良くなったのは何がきっかけだったのかと。

思い出した。

入学してすぐ、なかなか友達が出来なくて、一人で昼食をとっていた。

元々、誰かとはしゃいだりするような性格でもなかった優は、来るもの拒まず去る者追わずだった。

ある日そんな優に、話しかけてきた奴がいた。

それがコータである。

お互いに一人で、一緒に話す相手もいなかったからか、二人はすぐに打ち解けた。

銃が好きだということだったが、優は何も知らず、ただただコータの知識に感心するだけである。

話の内容は、分からないことも多かったが、それでも優は、適当な返事をせずにちゃんと話を聞いていた。

「コータは部活に入らないのか?」

優の問いに、コータは頬をかいて応える。

「やりたいことって、あんまりないんだよね。それにほら、僕こんなだし」

そう言って自分の胸を叩いた。

確かにコータはオタクだと敬遠されている。

しかし、頭の回転は速く、話すのに退屈しない相手だった。

「優はあれ?あの毒島先輩に憧れて……のタイプ?」

にやにやしながら優に問いかける。

「いや、それもあるかもしれないけど、やっぱり力つけたいのが一番だな」

少し照れて、しかし真面目に優は返した。

「ふぅん」

おもしろくないとコータはむくれる。

そして、二人で笑い合った。








入部してから数ヶ月。

もちろん剣道初心者である優は、型などから入っていた。

目的は強くなること一点だったため、残って練習も続けていた。

人は努力すれば、強くなれると言った人は誰だっただろうか。

優はその人を殴りたくて仕方がなかった。

秋にもなると、三年はすでに引退して、一年の初心者でさえ戦力に数えられる。

優も例外ではなく、他の初心者と共に試合に出るようになった。

しかし、全く勝てない。

他の部員は、いくらか勝ちもあげているのに、優だけは一勝もしたことがなかった。

藤美学園剣道部は全国の中で、強豪中の強豪だと言われている。

部長は全国優勝。団体戦でも優勝するほどだ。

しかし、その中で一勝もできない優は、完全に足手まといと見られていた。

辞めようと思ったことはある。

悔しくて泣いたこともあった。

それでも、強くなりたいの一点で、優は一日も部活を休まなかった。

どれだけ見下されようと、諦めなかった。

しかし結果はどうしてもついてこない。

(主将はあれだけ強いのに……)

焦りが強くなる。

心身ともに限界が近づきつつあった。

コータの慰めも、唯香の励ましも、応えられなくなりそうになっていた、高二の春。




それまでの日常は、たった一日で崩れ去ることになった。




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