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No.26037の一覧
[0] 【ネタ】トリップしてデュエルして(遊戯王シリーズ)[イメージ](2011/11/13 21:23)
[1] リメンバーわくわくさん編[イメージ](2014/09/29 00:35)
[2] デュエルを一本書こうと思ったらいつの間にか二本書いていた。な…なにを(ry[イメージ](2011/11/13 21:24)
[3] 太陽神「俺は太陽の破片 真っ赤に燃えるマグマ 永遠のために君のために生まれ変わる~」 生まれ変わった結果がヲーである[イメージ](2011/03/28 21:40)
[4] 主人公がデュエルしない件について[イメージ](2012/02/21 21:35)
[5] 交差する絆[イメージ](2011/04/20 13:41)
[6] ワシの波動竜騎士は百八式まであるぞ[イメージ](2011/05/04 23:22)
[7] らぶ&くらいしす! キミのことを想うとはーとがばーすと![イメージ](2014/09/30 20:53)
[8] 復活! 万丈目ライダー!![イメージ](2011/11/13 21:41)
[9] 古代の機械心[イメージ](2011/05/26 14:22)
[10] セイヴァードラゴンがシンクロチューナーになると思っていた時期が私にもありました[イメージ](2011/06/26 14:51)
[12] 主人公のキャラの迷走っぷりがアクセルシンクロ[イメージ](2011/08/10 23:55)
[13] スーパー墓地からのトラップ!? タイム[イメージ](2011/11/13 21:12)
[14] 恐れぬほど強く[イメージ](2012/02/26 01:04)
[15] 風が吹く刻[イメージ](2012/07/19 04:20)
[16] 追う者、追われる者―追い越し、その先へ―[イメージ](2014/09/28 19:47)
[17] この回を書き始めたのは一体いつだったか・・・[イメージ](2014/09/28 19:49)
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[26037] 太陽神「俺は太陽の破片 真っ赤に燃えるマグマ 永遠のために君のために生まれ変わる~」 生まれ変わった結果がヲーである
Name: イメージ◆294db6ee ID:659e7939 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/28 21:40
「泣けるぜ……」

「何言ってんだ?」



十代に突っ込まれる。いや、別に泣かないけど、とりあえず言っておきたかっただけだ。

特に意味はない。

数匹のめざしと味噌汁、それにちょっとした付け合わせだけだったとして、まあそれはそれで全然いいのだ。

食えるんだから死にはしない。特に今はあれだし。



「ああ、そうそう。ところでさ、昼間は何処行ってたんだ?」



めざしを頭からガブリ。マミった。めざしさんがマミった。

めざし「もう何も怖くない」

無茶しやがって……いや、何でもない。やっぱりボケにキレが足らないな。

いつもの俺ならば、……さして変わらないグダグダだったか。

どうやら俺はいつも通りらしい。



「いや、別に大したことじゃないさ」

「ふーん」



もぐもぐと。十代の口の中でから飛び出た尾びれがぷらぷらする。

やめて、もうマミさんのライフは0よ。いや、そいつはマミさんじゃなかったか。

ふぅ、さす蟹こうも立て続けに緊張感溢れるデュエルが続くと、精神力が持たないわ。

ボケる余裕はあるけど。

余裕のあるなしと言うかむしろボケは俺の生態なので比較するのは間違っているのかもしれない。



ずずずと味噌汁を啜る。うん、何とも言い難い。

不味くはないし、美味しいと諸手を上げてYATTAしたくなるほどでもない。

十代は実に美味しそうに食っているのだが。

うらやま。

うらしま。

うらたろす。

JOIN!



はいはい。

自分のボケに呆れる時がこようとは。人とは難儀なものである。

たくあんを箸で摘まんで口の中へ、ポリポリ。

ふぅ……不味いな。キレのあるボケが浮かんでこない。

たくあんを見ているとベガ星の兵士の事が思い浮かぶ件。



「……はぁ」

「他の寮は、凄い御馳走だってよ…」

「なんで俺はこんな…」



周囲で自分の飯をつついている奴らは、異様なまでにテンションが低い。

そんなに嫌かね。オシリスレッド。まぁ、嫌なんだろうなぁ。

要するに第1志望、第2志望に落ちて、滑り止めのギリギリ合格みたいなものなのだから。

つっても、まだ上がれる可能性が残っている分マシだろう。浪人せずに済んだだけ、よかったと思えと。



「そんなに嫌かねぇ」

「そりゃそうだよ」



自分の料理を一応食っていた翔は、微かに自分も落胆しています。

みたいな顔で俺の独り言に答えた。



「オシリスレッドのレッドはレッドゾーンの赤、なんて言われて素直に喜べるのなんて……

 アニキくらいなもんさ」



むしろドジっこ属性のカラーみたいなもんだろ。

燃える情熱の赤ならぬ、萌える情熱の赤である。

俺は好きだぞ、ってか早くOCG化しろ。ちゃんと効果調整して。ラーの悲劇を繰り返してはならない……



「オレは好きだぜ、赤」

「アニキの好きな色はこの際関係ないよ」



いい突っ込みだ。

味噌汁の中の豆腐をいじりながら、俺はその二人の会話に耳を傾ける。

トゥーフと言うと地獄兄弟を思い出すな。正確には矢車さんだが。

汚してやる…太陽なんて…! とは弟さんの弁である。

三期ですね分かります。



「はぁ……何でボクってばこんな」



どうやら兄の出来がいいと出来の悪い弟としては辛いものがあるらしい。

いやビークロイドいいじゃん。コネクションゾーンとチェンマテは相性いいぞ。D-ENDくらい。

まあロイドの何が一番いいかと言われると勇☆者☆王レックスユニオンなわけだが。ださかっこいいよな。

異論は認める。



何せ俺は最近ディケイドコンプリって実はカッコいいんじゃないか、などと思えてならないからな。

フィギュアーツで最初に出た最強フォームだったし。

激情態はイケメンだし。オマケのカードは飾りづらい事この上ないが。



「気にすんなよ翔、どうしてもここじゃないのがいいなら上がればいいじゃん」

「アニキはクロノス先生を倒せるほどに強くて、すぐにオベリスクブルーに行っちゃえそうだもん……

 ボクにはとてもそんな事……」



めざしの尻尾が口の中に消え、味噌汁で流されていく。

さようならー



「そんな弱気じゃ勝てるもんも勝てなくなっちゃうぜ。…ちょっとおかわり行ってくる」



十代は自分の皿と御椀を持って厨房に。

そしてその場に残される俺と翔。何という気不味い空気。

俺にどうしろと。



「翔……」

「え、なに?」

「どうだ、学校は楽しいか…? いじめとか、ないか?」

「いや分からないよ。まだ初日だもの」

「久しぶりにあった父親のように話しかけたんだからちゃんと役作りしろよ」

「そんなの無理だよ」



突っ込みにキレが戻ってくる。主に俺の心を切り裂く刃としてのキレが。

しかし何故無理だし。



「そうか、釣りしながらってシチュエーションを忘れていた」

「そこじゃないよ。もっと根本的だよ」

「父親じゃなくて兄って事か」

「え? いや、そうじゃ…なくて…」

「まあ、あのパーフェクト兄だとへこむだろうな。

 兄よりすぐれた弟なぞそんざいしねぇと言う考えに至るのも無理はない」



そんな貴方はインダストリアルイリュージョン社で天馬兄弟の顛末を聞いてくるがいい。大体あってるから。

カイザーと月光どっちが強いんだろう。やっぱ現時点では月光かな。

デュエルアカデミアのカイザーと言ってもまだ限界は割と上にあるし…と言うか下にあるのか。

軽く色々と悟ってるだろう月光の方が精神的に上な気がする。

まあジャギ様と比べれば雑魚なのは間違いない。流石ですジャギ様。



「別にそんな事は…」

「ふーん、まあいいけど。本人同士の問題だもんな」

「お、どうしたんだ翔。さっきより暗くなってるぞ?」



山盛りの飯を持ってきた十代が帰ってくる。よく食えるな。

俺はストレスで胃がもたれているから無理だ。

きりきり舞いである。



十代は席に座るとまた美味そうに料理をパクつき始めた。

再びマミるめざしさん。さようならー











物置、つまり物置に中に運び込んだホープ・トゥ・エントラスト。

そこから声がする。



『はい。その端子をディスクへ接続してください』

「ここ?」



聞いておきながらそのまま勝手に接続。

特に問題はないようだが、Xから無言の抗議らしきものがヒシヒシと。

ぴぴっ、とディスクのライフカウンターが赤く点滅。

無言かつ直接的な抗議である。



「ここか、ここがええのんか」

『轢きますよ』



ぶぉんとエンジンが一鳴き。当然そんな事されたら死ぬわけだが。

とりあえず夜も更けて来た今、エンジンを鳴らすのは止めなさい。

明らかに性格が変わっている。

それは今、こいつが搭乗者の人格に合わせたナビゲーションを行えるように合わせているのが原因だそうだ。

つまり俺に合わせた結果、こいつは『ツッコミ』属性を手に入れたという事だ。※ただし轢き逃げアタック的な意味で。



そして、その人格は当然の事ながらデュエルを通じて情報を収集するらしい。

つまりデュエルをするたびにこいつが俺に合わせた成長をする。

今のところこっちに来てから4戦やらかしたが、そのうちこいつで戦ったのが2回。

あとコイツ自身がモニターしていたのが1回。

その情報を統合して今の状態だそうな。



一刻も早いツッコミ役確保のためには、早急なこいつの成長が望まれるわけである。

そしてそれは勿論こいつを使って行わなければならない。

と言っても、アカデミア内でこいつを普通に使えるわけがないのだから、どうしたものか。

そんな話になり、最終的にデュエルディスクにこいつの分身を送り込み、ディスクでデュエルしても情報が集まるようにした。

そんな感じである。



つまり今のデュエルディスクはXの影分身なんだってばよ。



用の済んだコネクタを外し、バイクの方へと巻き戻す。

すると、ディスクの方がぺかぺかと光り、音声を発してきた。



『発音テスト―――クリア』



続いてデッキにセットされたカードが勝手にシャッフルされる。



『オートシャッフル―――クリア』



それ明らかにソフトじゃなくてハードの領分だよな?

とは思ったが、まあいいや。便利に越したことはない。

次はライフカウンター、数値がとんでもない速度で上下する。



『ライフカウンター―――クリア。

 ハードウェアのコントロール領域を全て獲得。テストデュエルを要請します』

「えー、もう夜だし明日にしようよう」



駄々を捏ねてベッドに向かう。

するとびーびーと警告音。俺がどうせ先延ばしにしてやらないとでも思っているのだろうか。

失敬な奴だな。そのうちやるとも。そのうち。



『先程のデュエルでチャージした分も残量は転移一回分程度。

 時間経過で消費される分を考えても、明日まで何もしなければこのまま底を尽きます』

「燃費わりぃなオイ!」

『燃費が悪いのではありません。

 遊城十代とのデュエルでチャージした分を、先程の往復転移で使い切ったのは貴方です』



そうでした。普通のディスク使ったから遊戯とのデュエルでは貯まらなかったんだった。

つってももう夜だしな。

あー、そう言えば今頃青い非サンダーと十代がデュエルやってるんだろうな。



ところで、原作のデュエルって描写した方がいいんだろうか。

明らかにOCGでは無理な手がちらほらあるけど、その辺り書いてる奴がOCG効果で書きなおした方がいいのか?

今、GX2話だけど、次の風呂覗きイベントの十代VS明日香とか。

心配しなくても俺はデュエルしないから。流石に3話4連続デュエルは疲れたからちょっと休憩したい。



「夜間下手に出歩いて勝手にデュエルなんてしたら退学しかねないし……

 しゃあない、お前でデュエルし易い5D’s時代で1、2回」

『了解』



デュエルディスクで光っていたのが大人しくなり、勝手にバイクに起動する。

ぱっ、とヘッドライトが点灯する。のを見ながら、軽く溜め息。

乗りこみ、ライディングデュエル用にデッキを選ぶ。

スピードスペルは持ってないから、魔法カード縛りになっちゃうんだよな。

ウリアでも使ってみるか。いっそアーミタイル……ってだからハモンが役に立たない。

ああ、宝玉獣がいれば何とかなるか。



そんなこんなで悩んでいると、Xがライトを点けたり消したり。

うるさい。お前は散歩待ちの犬か。



「うっさい、少し待ってろよ」

『いやです。早くして下さい』



ぷっぷーとクラクション。

だからお前は夜の学生寮で何を…!

仕方ない。デッキは後だ。とりあえずサテライトまでかっとビングするっきゃない。

左右に付いたハンドルを手に取り、少し前に出す。

扉の前で一度降りて、ドアを開ける。



開けながら手でくい、とXに合図。勝手に動くDホイールが俺の合図で外に出る。

戸締りはしっかりと。ちゃんと指差し確認した後に、バイクにライド。

ヘルメットを被り、言うまでもなくロム兄現象が発生する。



「さてと、じゃあ……最初の時と同じくらいで」

『了解。転移先をマークしました。助走距離を取り、速度を上げて下さい』

「あいさ」



ハンドルを握り込み、アクセルを踏み込む。

徐々に加速していくホイールの回転が一定を越えた時、何か赤い光のようなものが放たれ始めた。

それが合図。その瞬間、一気にアクセルを踏み切った。

ゴウ、と加速する車体が限界に迫り、一気に弾け飛んだ。











「で、ここどこよ」

『不明。時間軸を見ると恐らく―――マスターの言う、DM時代より前にあたるかと思われます』

「よーしそこに正座しろ。お前はマークしたと言ったよな? 5D’s時代をマークしたと」

『5D’s時代をマークしたと言ったな? あれは嘘だ』

「黙れ! ボケの方面まで頭を突っ込んでくるんじゃねぇ! 誰が収拾をつけるんだ」



しょぼーんとXがライトを下向きにして傷心をアピールしてくる。

なんという奴だ。俺が立派なツッコミに育てようとしているというのに、ボケに流れてくるとは。

それにしても失敗しても一回は一回。これで転移用のエネルギーは枯渇。



その上、ここはまるで無人。

無人どころか、バイクのライトが無ければ一寸先も見えやしない暗闇の中。

夜とかそういう空気じゃない。この淀み、沈殿した悪い空気は長い事密閉されていた空間。

Xにライトを点けさせたまま、降りる。



足許からはじゃりじゃりとした砂…と言うより、風化した石の踏み心地が伝わってきた。

とりあえずライトを背に、その光に照らされている壁へと歩を進める。



「……石板…?」



風化していて殆ど痕跡しかないが、これは多分…そうなんじゃないか、と思った。

遊戯王世界だし、そんな事もあるのかもしれない。

と、なるとここはエジプトの地下遺跡とかか。最悪だな。死ねるレベル。

いしのなかにいる、ってならなかっただけマシか。



「…どうした、もんか…っと!」



俺が触れていた石板が少しずつひび割れていく。

崩れてきたら堪ったものではない。俺はすぐにDホイールに向け引き返そうとして―――



『離脱をっ!! マスター!!』

「はっ?」



Xの悲鳴を聞いた。



突然足首を何かに掴まれた。びっくぅ! と背筋に衝撃が奔り抜ける。

な、な、と口を金魚のように開閉しながら脚を引っ張り、すぐさまDホイールへ向けて一歩。

暗闇で俺の脚を掴み、そこからライトの中に引きずり出されてきたのは、そのまま腕だった。



「ひっ……ぃッ!?」



ただし骨。骨格だけで出来た腕。

オカルトではあったが、それでもただの白骨でよかったのかもしれない。

ただの、現実味がない光景だったから驚愕と混乱で済んだ。

この骨に腐肉や呻き声などが追加された日には、ショック死しててもおかしくなかった。



必死に振り払おうと脚を振り回すが、逆に変な体勢になり、こける。

直後、上からDホイールが降ってきた。

俺の脚を掴んでいた腕を、地面に敷き詰められたブロックごと粉砕して。

ブロックの破片や貯まりに貯まっていた埃が凄まじい勢いで巻き上げられ、視界を覆う。



『搭乗を。迅速な行動を』

「あ、ああ!」



先程の悲鳴をは比べられないほど、平坦な声。

しかしそれはどうやら、X自身も焦っているからこその声なように思える。

恐怖で竦む、しかし離され自由に動く脚を必死に動かし、Dホイールを目掛け―――



ぐいん、とDホイールが持ち上がった。

浮遊とか飛行じゃない。揚力が持ち上げたわけではないのはすぐ分かった。

それはただ、腕力と言う名の力で強引に引き上げられた鉄の塊。

それが今のDホイールの現状。



「なっ……」



茫然自失。流石にそこまで来ると、もう思考の放棄しか道がなかった。

持ちあげた腕は先程俺の脚を掴んだ白骨の腕。

筋力など存在し得ないというのに、何故そんな事が出来るのか。

オカルトにもほどがある。まだポルターガイストで浮いてくれた方がマシだ。



ドッガッン! と、爆音が響く。狭い遺跡内にはその音が反響して何度も頭の中で暴れる。

耳を塞いでいる暇はなかった。

その音源はDホイール。それが白骨の力で地面に叩き付けられ、横転したものだった。

かちかちと点滅するライトを見て、俺は漸く我を取り戻す。



「X! こっちに、」

『逃亡を推奨。こちらはまだ抑えられています』



この密閉空間でお前なしに逃げられない。

情けない事にお前を助けるでもなく、お前を置いて行けるかですらなく、自身の逃亡のためである。

だが、まだ抑えられていると言うのは不可解。

ライトが照らすのは白骨の腕のみ。それ以外のものは見当たらない。



ボゥッ



「あ?」



ボゥッ、ボゥッ、ボゥッ。

連続して周囲にあった燭台が炎を灯し、辺りを照らし始めた。

そうして漸く、俺は目の前の存在の全身を捉える。



薄れた身体は骨一身。筋肉など何処にもないのだろうから、当然立つ事すらできない筈。

だが、纏う衣装は荘厳な金色の鎧。超重の装甲を纏った身体は揺るぎない。

大きく膨れた肩の鎧。同じく白骨の頭部、頭蓋骨には左右二つに分かれて盛り上がる二重の兜。

胴体を覆う部分はネイビーの胴当てで、金色の装飾が模様を描くように。

襟の辺りからは水晶が幾つもぶら下がっている。

丁度腹の辺りには翠色の宝玉が埋め込まれており、肩の鎧の紅玉とともに煌々とした光を放つ。

腰から下はボロボロの布が巻いてあり、よく見れば鎧の方も既に大分損傷しているように見える。



だが、そんな事はどうでもよくて、これは、見た事が……



「魔神……!?」

『オ、』



バキンとその脚でDホイールを踏みにじり、奴が紅の双眸から光を放った。



『オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!』



死霊の咆哮が巻き起こり、それに触発されたかの如く、Xのボディから黒い光が溢れだした。

その光は大口を開けた頭蓋の口の中へと吸い込まれ、たちまち魔神の身体の薄らいでいた部分を塗り潰していく。

同時、掲げられた白骨の腕の中に、勝手にカードが集まっていく。

それはDホイールに収納していた俺のカードたち。



「お、まえ……!」



それを邪魔しようとも、抵抗しようとも思ったが恐怖で竦む。

前に踏み出すどころか一歩後退。

一歩目を踏み出すと後はずるずると。脚を引きずるように壁際まで下がっていく身体。

勢いよく壁に背中をぶつけ、咳き込んでからようやっと身体が止まった。



『ウゥ…ウグゴゴゴォゥ………!!!

 グ、ガガ、グ、グクク………! モドッタ…! ワタシノチカラガ……!!!』




咽喉ではないナニカ。深淵から染み出してきたような暗い声。

それに当てられ、俺は更に竦み上がる。



『ククク、コゾウ……! コレハキサマノカードカ……

 ダトスレバ、礼ヲクレテヤラネバナ…

 ヨロコベ、今カラキサマハ、カードノ神デアルワタシノコレクションノ一枚トナルノダ……!!』




紅の眼光が俺を捉え、俺の魂を射抜く。

ひっ、と恐怖から息を漏らす俺を見た奴が、変わる筈のない表情を変えた気がした。

即ち喜悦の色。



駄目だ。これは。どうしようもない。あんな化物から逃げれっこない。

まして出口のない閉鎖空間でなどと。

ずる、と壁を背中で擦りながら地面に尻餅を着いた。



ゆっくりと向けられる白骨の腕を引き攣った顔で迎え―――

ドゥンッ! という何かの発射音に気を取られた瞬間、魔神が揺らいだ。

そして手の中に落ちてくるカードの束を中に入れたデッキケース。



『ヌゥッ…!』

『立って下さいマスター』

「えっ…くす…?」



地面に半ば埋まっていたDホイールから声がする。



『言った筈です。私は登録された搭乗者に合わせ、より効率的な状態に“性格”がフォーマットされると』



言葉の音自体、いつも通りに淡々としたものだった。

でも、ほんの一日。24時間に満たない時間付き合っていただけの俺にも分かる、何かが違った。



『貴方が消えれば、私は次のマスターに合わせるために消えます。

 いやです。やです。絶対に。私は貴方がいなくては私であり続けられません……

 貴方が消えたら、私は誰も乗せられません。それもやです。

 貴方が、マスターが乗り続けて下さい。それ以外の状態は、何が何でも拒否します』

「それは…俺が心配なの? 消えたくないの?」

『どっちもです。でも、貴方が消えたら誰に乗られなくても消えます。

 貴方をナビゲートするのが私の…』



ガァンッ! と。喋り続けていたXのボディが更に地面に沈み込む。

魔神が蹴り抜いたのだ。



『耳障リナヤツダ……!!』

「お、まえっ…!!」



デッキケースを解放し、ディスクのホルダーにセットする。

待機状態にあったディスクがそれに連動し、デュエルモードに展開される。

点灯するライフカウンターは4000を示し、次なる進行を待つ。



「神様だっていうのならカード勝負から逃げないよなぁッ!

 俺とデュエルだ! 俺に負けたら、冥界にまで落ちやがれぇッ!!」



魔神が手にしていたカードを放り投げる。

ぱぁっ、と輝いたカードは黒い光を放ちながら消えゆく。

代わりに天井にぽっかりと空いた黒い孔から、石板が五枚落ちてくる。



『イイダロウ…!

 チョウドイイ、アノファラオノ魂ヲ砕キニ行ク前ニコノカラダ、キサマデ慣ラシテオコウ!!』


デュエル



カードを5枚ドローする。

相手が特殊な為、先攻、後攻の選択権はディスクに委ねる事はできない。

ただ、今の怒りを失えば確実に折れてしまうのは俺。

とにかく我武者羅でもいい。攻め込む。



「俺の先攻、ドロー! 熟練の黒魔術師を召喚!!」



先のデュエル。遊戯が使っていた、白魔導師によく似た外見。

黒いローブを纏った魔術師の顔は、目深に被られた帽子によって覗けない。

ローブの上からは微かに青みがかる黒のプロテクターを装着し、両肩と胸、三つの魔力石が据え付けられている。

魔法使いの杖、と言うよりは奇術師のステッキのような杖を手にし、彼は俺の前に降り立った。



「そして、魔法マジックカード、調律を発動!

 デッキからシンクロンと名のついたチューナー、クイック・シンクロンを手札に加える!!」



相手に選び取ったカードを見せる。

奴は骸骨の顔を能面の如き変わらぬ表情で、しかしその双眸に灯る紅光だけで俺を威圧する。



デッキをホルダーに戻すと、オートシャッフルが行われる。

Xが行ってくれたものは十全と発揮されている。あとは、あいつを助けて何とか逃げ出したい。

だがそんな事は無理だ。あいつを、倒さなければ。



「調律の効果! チューナーを手札に加えた後、デッキをシャッフルし、デッキトップから一枚墓地へ送る!

 俺はデッキトップの……ダンディライオンを墓地へ!!

 この瞬間、ダンディライオンの効果が発動!!」



俺のフィールドにたんぽぽのように黄色い花弁のような鬣に頭を包まれた獣が現れる。

いや、確かに顔はライオンのように見えなくもないが、手は葉っぱ、脚は根となっているため、

どちらかと言えば、植物のたんぽぽそのままのそれに近しい。

そのダンディライオンは頭をぶんぶんと二度振るい、光となって消えていく。



「ダンディライオンが墓地へ送られたこの時、綿毛トークンが二体特殊召喚される!」



ダンディライオンが振るった頭から飛び出た種子が、ぴょこんと顔を出す。

それは地面に種を下ろし、ゆらゆらと揺らめいている。



「そして、魔法マジックカードの使用により、黒魔術師に魔力カウンターがチャージ!」



黒魔術師が杖を振るい、右肩に今使われた魔法マジックの残留魔力を回収する。

外見が瓜二つであれば、その能力もまた似通っている。

白魔導師は竜破壊の剣士を呼び出す召喚師であり、また黒魔術師は同族であり上位である黒き魔術師を呼び出す者。



「そして、手札のモンスター、E・HEROエレメンタルヒーロー ネオスを墓地へ送る!

 そのコストを捧げる事によって、手札のクイック・シンクロンは特殊召喚する事が出来る!!」



手札のネオスをセメタリーゾーンに送る。

そうして召喚の権利を得たモンスターを、また手札から呼び出す。

カウボーイハットのツバをマニピュレーターで一度弾き、青いボディを覆うマントを翻した。

ハットの下から覗く一対の瞳が、正面に位置する敵を睨む。



「まだまだぁッ! 手札の魔法マジックカード、ワン・フォー・ワンを発動!

 発動コストとして手札のボルト・ヘッジホッグを墓地へ送る事で、効果を発揮!!

 デッキからレベル1モンスター、ターボ・シンクロンを特殊召喚!!」



オートサーチによって、デッキの中から1枚。

カードが飛び出てくる。それを指で挟み、抜き取る。

フィールドゾーンにカードが置かれると同時、ターボ・シンクロンが姿を現す。



レーシングカーをモデルにしているだろう、肩にホイールがついた胴体が車体になっているモンスター。

肩のホイールをぎゅいぃんと一度回し、クイック・シンクロンと並び立つ。



「更なる魔法マジックの使用で、魔術師のカウンターがアップ!」



熟練の黒魔術師が纏うプロテクターの左肩が点灯。

最大三つまでのカウンターのうち、二つまでがこれでチャージされた事となる。



「そして、レベル1、綿毛トークンに、レベル5、クイック・シンクロンをチューニング!」



クイック・シンクロンが左手でカウボーイハットを押さえ、右腕でマントを払った。

青い胴体の下部、信号機のように並ぶ三色のシグナルライトが点灯し、前方に数枚のカードが映るルーレットを投影する。

それはクイック・シンクロンの能力により、名をコピーする事の出来るシンクロンたち。

ルーレットが高速で回り始めて数秒、一瞬、クイック・シンクロンの腕がかき消える。

それと同時に打ち抜かれたのは―――



ドリル・シンクロン。



肩手でホルスターから引き抜いた銃を構えたまま、彼は再び帽子を押さえた。

その次の瞬間、ぱん、と弾けて五つの光の星と化したクイック・シンクロンが舞う。

綿毛もそれを追い、風によってふわふわと舞いあげられていた。

風に乗せられて舞う綿毛を囲う五つの星が、光のリングとなった。



「シンクロ召喚!」



光の輪に包まれた綿毛も、同じように光の星と化す。

そして、光のリングが並ぶ事で出来た道に、一つ星が放つ光が満ちた。



「ドリル・ウォリアー!!」



光を螺旋が引き裂く。

中から出現したのは、微かにオレンジがかったブラウンの装甲に鎧われる戦士。

その特徴は言うまでもなく、その名から察する事が出来る。

右腕のドリルが轟々と唸り続け、光の粒子を散らかしていく。

肩から左右に一本ずつ、ドリルが突き立っている。

黄色いマフラーをドリルが起こす旋風になびかせて、そいつは俺の許に降り立つ。



勿論、こいつが優秀なモンスターだと言う事は知っている。

だが今この場は、俺の全力として出し切るには不相応なのも、事実だろう。

ドリル・ウォリアーに眼を向け、視線を交す。

微かに首だけで肯いてくれたのを確認し、次なる一手に繋げる。



「更にレベル1の綿毛トークンに、レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!」



ターボ・シンクロンがその腕を肩のホイールに収納し、ヘルメットのバイザーを下ろす。

脚部も同様に格納された事で、そのボディに秘められた加速性能を十分に発揮できる状態。

高く舞い上がる車体は星となり、円を描いて円環となる。

やはり風に舞う綿毛はふわふわと。

その円環の中心に入り、己の身体も星へと変える。

二つの光が交わり、新たな一つの力へ。



「シンクロ召喚! フォーミュラ・シンクロン!!」



光を突き破るのはターボ・シンクロンを一回り大きくしたようなボディ。

フォーミュラカーを胴体に、車体の下から腰と続く脚、力強い両腕に、鋭くなった眼で相手を睨み据える頭部。

身体の背部に付いているホイールがギャリギャリと音を立てて回転し、火花を撒き散らす。



「フォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時、カードを1枚ドローする! ドロー!!

 そして、自分フィールドにチューナーがいる時、墓地のボルト・ヘッジホッグは特殊召喚出来る!

 守備表示で特殊召喚!」



フォーミュラ・シンクロンはシンクロチューナー。

よってセメタリーに置かれているモンスターの召喚条件を満たし、そのモンスターを呼び寄せる。

選択されたカードが墓地からスライドして出てくるのを引っ掴み、ディスクへ。

黄色の毛に包まれたネズミが丸まった姿で現れる。

背中に突き立つボルトで身を守るように。



「行くぞ! レベル6、ドリル・ウォリアーに、レベル2のシンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!!」



フォーミュラ・シンクロンのボディが唸りを上げた。

巻き起こる赤い閃光の渦が二体のモンスターを包み込み、更に眩き光を生み出す。

合計のレベルは8。つまりは、



「シンクロ召喚! 翔けろ、スターダスト・ドラゴン!!!」



新しき星が降誕する。

微かに青みがかった白銀の身体。スマートなフォルムから彷彿させるのは疾風。

羽搏くたび、銀色の粒子を零す翼を大きく広げ、銀竜は俺の目の前に姿を現した。

不動遊星のエースにして、5D’sを象徴するモンスター。

スターダスト・ドラゴン。



「続けて魔法マジックカード、オー-オーバーソウル!!

 墓地のE・HEROエレメンタルヒーローと名のつく通常モンスターを一体、特殊召喚する。

 選択するのは、クイック・シンクロンの効果で墓地に送ったE・HEROエレメンタルヒーロー ネオス!!」



墓地から光が溢れ、共にカードを吐き出す。

それを取り出し、相手に見せつけてからフィールドへ。

銀色の身体に差し色は紺。そして赤いラインで彩るネオスペースからやってきた戦士。

胸部の中心には透き通る空色の宝珠。それを取り囲む三つの紺色のトライアングル。

彼はマッシヴな肉体を強調するように、一度力を込めて腕を振るい、その後すぐに腕を開いて構えてみせた。

遊城十代のエースにして、GXを象徴するモンスター。

E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス。



「そしてこの瞬間、三枚目の魔法マジック使用により、魔術師の蓄える魔力カウンターが三つとなった!」



熟練の黒魔術師のプロテクターに付いていた最後の魔石。

胸部のそれが光を帯び、その瞬間を待ちわびていたかのように三つの魔石は輝きを増していく。

互いに反応しあい、その光を徐々に大きくし、炸裂した。



「魔力カウンターを三つチャージした熟練の黒魔術師をリリースする事で、デッキよりブラック・マジシャンを特殊召喚!!」



光の中から現れたのは黒。黒の魔力を纏いし魔術師。

紫黒の導衣に身を包み、上に伸びる先端の尖った帽子を被った姿は見間違う事など無い。

頂点にして伝説。最強無敵の神話の称号、初代デュエルキングのエース。

武藤遊戯のエースにして、遊戯王を象徴するモンスターを代表する二体のうちの一体。

その名を、ブラック・マジシャン。



「カードを1枚セット!

 ―――これが俺の、出し得る全ての力! この世界に来て学んだ全て! 行くぞ、カード魔神!!」

『ク、ククク…ナラバソノ全テヲ、神タルワタシガ否定スル―――! ワタシノターン』



天井の闇から、石板が1枚落下してきた。

ズシン、と地面に突き刺さったそれは足場を揺らし、俺もそれに揺すられてたたらを踏んだ。

奴が我が物顔で振り回すあの石板たちも、元は俺のカード。

あの野郎、必ずハッ倒して取り戻す!



「っ…!」

『フン…マジック・“強欲ナ壺”ノ効果ニヨリ、2枚ドロー。

 ソシテ、フィールドマホウ“フュージョン・ゲート”ヲ発動』




フィールド魔法はフィールド全体に効果を及ぼす。

その効果故、ソリッドヴィジョンで使えば周囲の風景すら塗り潰すが、このカードではその現象は起きなかった。

それはこのフィールドの効果が特殊な条件下でのみ発生する、次元の歪みだからだ。

本来墓地に送られるカードを、ゲームから除外する事で、融合の効果を自在に扱えるようにする超次元空間。

奴が出すモンスターは、つまり融合モンスター。

だが融合モンスターは手札の消費が激しく、また除外する事で回収も難しくなる。

一気呵成の攻撃を凌げば、次には攻撃のチャンスが訪れる。



そう、考えていた。

まるでその考えを見透かしたかのように嗤う、恐怖を誘発するような骸骨を見るまでは。



ぅっ……駄目だ、呑まれたらそこで負ける―――!



『手札ノ“青眼ノ白龍ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン”ヲ三体。

 ソシテ、“真紅眼ノ黒竜レッドアイズ・ブラックドラゴン”ト“メテオ・ドラゴン”ヲ除外…!』


「なっ……!?」



石板が合わせて五枚、地面の中に沈み込んでいく。

空間が捩じれ狂う。異空間に沈んだ五枚の石板に宿るモンスターたちは、その歪みに囚われたのだろう。

それらを供物とし、歪曲した空間が新たなモンスターを生み出す。



バチン、と雷電が弾ける音。それと同時、たわんでいた空気が焼き切れた。

歪みの奥から溶岩の如き肉体の竜。そして、白き巨竜が姿を現す。



白き身体、青き眼光、それはまさしくブラック・マジシャンと同じく遊戯王を象徴する二体の片割れ。

そして、その龍の究極進化形態。

三つの首はそれぞれ全く同じモンスターのモノ。

刃にも似た鋭さを持つ二枚の翼を狭い室内に大きく広げ、三つの顎が同時に開き咆哮を上げた。

それは、神をも越えし究極の白龍の姿。



それと並ぶように現れたもう一体は地面に脚を下ろし、自身が纏う熱量で床を溶かす。

腹と首、そして間接は橙色の肉に、赤い紋様。腕や胸、そして頭部は紫色の岩の如く硬質化した甲殻。

赤い血管のようなものが体中に浮かび上がり、脈打っている。

闇色の瞳の中に虚ろな白光が灯り、その大口を開いて咆哮。



『“青眼ノ究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン”、“メテオ・ブラック・ドラゴン”。

 二体ノモンスターヲ融合召喚……ソシテ更ニ、マジック・“天ヨリノ宝札”ヲ発動…!』


「く…俺は持ってないってのに…どっから持ってきやがった…!!」

『……互イノ手札ヲ6枚ニ』



答えはない。神様だからってふざけやがって。

連続して降ってくる6枚の石板が地面に突き刺さり、俺は咄嗟に壁に寄りかかり、転倒を防いだ。

それが収まった後に、俺自身もカードを補充する。



『サァ、コレガ始マリダ……! “青眼ノ究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン”ヨ…

 神ニ刃向カウ愚者ニ、ソノ威光ヲ示スガイイ―――――! アルティメット・バースト!!!』




白き、青き瞳の竜がその顎を開き、口腔に光を集束させていく。

溢れ出す威光は余波のみで瓦礫を消し飛ばし、天井を溶解させている。

食らうまでもない。これは実際の威力を伴った実体衝撃波。

まともに直撃すれば、LPなど関係なく俺の身体が消し飛ぶだろう。



かちかちと、噛み合わない歯の音が聞こえて来た。

くっ、ビビってんな…! 大丈夫だ、やれる。

ビビって逃げれば生き残れるんだったらそうするさ。でも、そうじゃない。

俺と、Xが生き残るためにはあいつをぶちのめさなくちゃいけないんだ。

こんなんで負けたら、俺とのデュエルで色々な事を教えてくれたデュエリストたちにだって申し訳が立たない。



トラップ発動! スーパージュニア対決!

 お前のフィールドの攻撃力が最も低いモンスターと、こちらのフィールドの守備力が最も低いモンスターを強制戦闘!

 その後、バトルフェイズを終了させる!」



究極竜アルティメットドラゴンの口腔に蓄えられていた光が急速に萎む。

身体を丸めていたボルト・ヘッジホッグが、きゅいと一鳴きして三体のモンスターを庇うように、最前線で立ちはだかる。

究極竜アルティメットドラゴンが停止する代わりに動き始めたメテオ・ブラックが、猛り狂って翼を広げた。

一度の羽搏きで、低空に跳び上がった溶岩竜が、その巨体をヘッジホッグの前へと着陸させた。

きゅー、という鳴き声を塗り潰す咆哮とともに、振り下ろされる剛腕。



圧砕。

纏めて床を粉砕したメテオ・ブラックは、やり足りないとでもいうかのように大地へと幾度も拳を振り落とす。

吹き飛ばされる瓦礫が壁や天井に跳ね、その被害を拡大させていく。

ひとしきり暴れたメテオ・ブラックは、こちらへ迫った時と同じように跳び、魔神の許へと帰還する。

奴が拳を打ち付けていた床から、岩の焼ける臭いが瓦礫と砂塵に交じってやってくる。

けほ、と一度咳き込んで、相手を見据えた。



『フン……リバース5枚ヲセットシ、ターンエンド』



石板が思い切り倒れ込み、やはり大きな震動を巻き起こす。

しかしもうもうと砂塵の立ち込める床に膝を着こうものなら、それは呼吸すら許されなくなる。

壁も溶けた岩のせいか熱気を帯び、触りようがない。



「っ、俺の、タァーンッ!!」

『コノ瞬間、永続トラップ・“融合禁止エリア”ヲ発動』



倒れ込んだ石板が起き上がる。全く、忙しいこって。

それはモンスターの融合召喚を不可能とするトラップ

フュージョン・ゲートはフィールド魔法であるがため、コントローラー以外にも効果の使用が可能。

相手がこれ以上の融合モンスターを出す気がなく、同時に俺の融合召喚を防ぐのなら、そうするだろう。



「だが、ネオスの前に融合封じなんて通じない! 俺はフィールド魔法、ネオスペースを発動!!」



今まで使っていたディスクのゾーンとは別、モンスター、魔法マジックトラップ

それらとは違う、専用のゾーンが展開される。即座にカードを設置すると、駆動部が火花を散らしながら閉まった。

フィールド魔法は互いのフィールドを合わせ、1枚しか存在できない。

モンスターを融合させる時空の歪みは後から発動された広大な宇宙空間によって上書きされる。

互いの中心から極彩色の空が広がっていく。

今までの閉鎖空間故滞留していた砂塵、熱量、息苦しささえも吹き飛ばし、ネオスの独壇場が展開された。



リアルに影響を及ぼすデュエルのため、これは幻想なんかじゃない。

今ここは、ネオスペースそのもの。



「そして、ネオスペーシアン・フレア・スカラベを通常召喚!!」



ネオスの隣に炎が噴き出した。

炎が取り巻くのは黒い甲殻、頭部から大きく突き出た角、背面の甲殻に仕舞われた翅。

それらを持ち合わせる、炎の属性が昆虫に宿るネオスペーシアン、フレア・スカラベ。

フレア・スカラベ自身は高い能力を持ち合わせてはいない。

だがその力は、ネオスペーシアンとコンタクトするネオスによって限界を越えて引き出される。



「ネオスとネオスペーシアンがフィールドに揃った時、融合は新たな次元に踏み込む。

 それが――――コンタクト融合だ!!

 ネオス! フレア・スカラベ! コンタクト融合!!」



ネオスが大地を踏み砕き、舞い上がる。

フレア・スカラベが背面の殻を開き、翅を高速で羽搏かせて、それを追う。

空中で二体のモンスターの身体が重なる時、ネオスペースの波動に包まれた戦士たちは新たな姿を得る。

融合を必要としない融合。それこそ、コンタクト融合。



「燃え盛れ、E・HEROエレメンタルヒーロー フレア・ネオス!!!」



フレア・スカラベの一本角は二本角となり受け継がれ、甲殻と翅が一体化した翼が広がる。

マッシヴな肉体は黒い甲殻の鎧に包まれ、先程遥かに細くなっていた。

単純な腕力などは削がれてるように見えるが、しかし。

両の拳を握り込み、胸を突き出すような体勢を取る。

その身体が炎に包まれ、燃え盛った。



「ネオスペースの効果! ネオス及びネオスを融合素材としたモンスターは、攻撃力が500ポイントアップする!!」

 更にフレア・ネオスの効果!

 フィールドの魔法マジックトラップカード1枚につき攻撃力を400ポイントアップ!!」



炎に包まれたフレア・ネオスの攻撃力が上がり続ける。

更なる追加。



「カードを4枚セットする事で、フィールドの魔法マジックトラップは11枚!

 これで攻撃力4400ポイントアップ! 最終的な攻撃力は7400!!」

『ヌ…』



取り巻く火炎はさながら太陽のよう。

圧倒的な熱の奔流は地面に立つ俺たちにすら届き、燃え尽きそうなほどの陽射しを浴びせる。

止まらない汗にも、この際構っていられない。



「燃え尽きろ、究極竜アルティメットドラゴン!! バーン・ツー・アッシュッ!!!」



フレア・ネオスが腕を翳す。

前方に集まっていく熱量の塊が、フレア・ネオス自身の身長を追い越し、巨大な炎弾となった。

ぐいと押し込まれた腕に押され、その火炎の大砲は白竜に向かい殺到する。

迫る太陽が周囲一体焼き払いかねない熱を撒き散らしながら、空を制する白竜の目前まで迫った瞬間。

しかし、それを許さぬ魔神のくぐもった声が響いた。



『トラップ・“ドレイン・シールド”ヲ発動…!

 ソノ攻撃ヲ無効ニシ、ワタシノライフトシテ吸収スル……!!』




火炎弾は竜の前に現れた膜に遮られ、その威力を魔神の命と変えられる。

熱量がさっぱりと消え去った後、火の粉のようなものが魔神に降り注ぐ。

それは魔神の身体を焼く事なく、ただその鎧われた骸骨の身体に染み込んでいった。



「くっ…! そう簡単には通らないか…」



大きく跳ね上がる魔人のライフはこれで残り、11400。

そして究極竜アルティメットドラゴンとメテオ・ブラックを上回る攻撃力は俺の場にはもうない。



「エンドフェイズ、フレア・ネオスの帰還効果をネオスペースにより無効にし、ターンエンド!」

『ワタシノターン!』



落下してくる石板。砕ける地面。

フィールドがネオスペースに塗り潰されてはいても、大地を揺らすそれは止まらない。



『“天使ノ施シ”ヲ発動…ソノ効果ニヨリ、3枚ドローノ後、2枚ヲ墓地ヘ…』



更に2枚、石板が落ちてくる。

流石に体勢を崩し、膝を着く。ネオスペースの効果により開けていた空間とは言え、足元にはまだ粉塵がある。

舞い上がったそれを口を手で押さえて防ぎ、すぐさま立ちあがった。

粉塵自体はすぐに宇宙空間へと流されていく。



「くそっ…ドカドカ足場揺らしやがって…!」

『更ニトラップ・“リビングデッドノ呼ビ声”ヲ発動…!

 ソノ効果ニヨリ、“天使ノ施シ”デ墓地ヘ送ッタ、“太陽ノ神官”ヲ特殊召喚!』




足場に孔が開き、その中より手が這いずり出てくる。

ずぅっと顔を出したのは、胸に太陽が描かれたどこかの民族衣装を着こんだ、黒い肌の男。

羽飾りのついた帽子の下、真紅の瞳が怪しい光を放つ。



「太陽の神官……!?」

『墓地ヨリモンスターガ蘇生シタコトニヨリ、次ナルトラップ・“死神ノ呼ビ声”ガ連動…!

 フタタビ、“天使ノ施シ”ノ効果デ墓地ヘ送ラレタ、“赤蟻アスカトル”ヲ特殊召喚!』



太陽の神官が通ってきた冥界の続く孔を同じく通り、蟻が姿を現した。

その名の通り、赤い体色をした蟻。

この二体のモンスターが揃ったという事は、透けて見える相手の一手。



「まさか……!」

『太陽ノ力ヲ宿セシカードヨ……! ソノ力ヲ持チテ、神タルワタシノ威光ヲ示スガイイ―――!

 レベル5ノ“太陽ノ神官”ニ、レベル3ノ“赤蟻アスカトル”ヲチューニング!』




冥界より出でた二体が交わっていく。

俺や遊星が行っていた時のように輝く星ではない。

二体のモンスターが溶け合い、混ざり合い、蠢く黒い泥のようになり、断末魔が響く。

それが停止うるまで数秒。その後、八つの星が動きを止めた泥から吐き出された。

それと同時に崩れ去る泥の塊。



「お、まえ……!!」

『シンクロ召喚―――照ラセ、“太陽龍インティ”!!!』



八つの星が重なり、新たな身体を作り上げていく。

胴体は球体の周囲を円に囲うように角が生え、黄金色に輝く顔。

それはまさしく太陽の象徴であり、神聖なる絶対存在。

太陽から伸びる四つの赤い首は、燃える炎のような鬣を生やした、その名の通り太陽そのものから力を得る龍。



「ぐっ…!」



眩いばかりの陽光が突き刺さってくる。

目の前に腕を翳し、それを防ごうとしても焼け石に水。



『破壊以外ノ方法デフィールドカラ離レタガタメ、“リビングデッドノ呼ビ声”ハ残ルガ…

 “死神ノ呼ビ声”分ノスペースガ確保デキタ……ヨッテ、コノマジックヲ使用スルトシヨウ……

 “アドバンス・ドロー”ノ効果デ、“太陽龍インティ”ヲリリース!』


「!?」



天上から鎖が降ってきて、インティの身体を捕縛した。

虚空に発生した鎖はインティを捕まえたまま、引きずられて再び虚空へと消え失せる。

直後、降ってくる2枚の石板。

レベル8以上のモンスターをリリースすることで、2枚のドローを可能とする魔法マジック

それは手間をかけ、召喚したモンスターを易々と葬り去る行為。

普通ならばそれは自身を不利にする行為に他ならない。

だが葬ったのは太陽。太陽が闇に沈む事、それは月が昇る事を意味する。



『トラップ・“リミット・リバース”ヲ発動! 墓地ヨリ、“太陽ノ神官”ヲ特殊召喚!

 ソシテ、手札ヨリ“スーパイ”ヲ通常召喚!!』




突き立っていた石板が裏返り、そこから悪魔の首が現れた。

黒い二本の角と、外に反るように伸びる二本の巨大な牙。

青い眼が邪悪に光る顔が、にたりと歪んで見える。

ミノタウルスの頭部を連想させる首が、再び冥界より引きずり出された太陽の神官と交わる。



『レベル5ノ“太陽ノ神官”ニ、レベル1ノ“スーパイ”ヲチューニング!

 太陽ノ威光消エシ刻、闇ヘト沈ミシ世界ヲ見下ロス月ガ目醒メル……!』




悪魔の首と交わる神官の身体が、先程のように黒い泥と化し、その中から星を吐き出す。

その数は6。それらが新たなシンクロモンスターを作り上げる。

インティと同じように球体の胴体に顔が浮かび、そこから四つの首が出現する。

燃え盛る太陽の化身、インティとは真逆の青い光と、氷のような鬣に包まれた四頭の龍。



『シンクロ召喚―――鎖セ、“月影龍クイラ”!!!』

「くっ!」



ネオスペースの極彩色すら塗り替える、青い月光の混じる闇色の空が広がっていく。

太陽が沈み、現れた月は、破壊された時対となるモンスター、インティを空へ上げる効果を持つ。

モンスター一対で完成されるループコンボ。



『ク、ハハハ……! 更ニ――――!!

 “リビングデッドノ呼ビ声”“リミット・リバース”デ蘇ッタモンスターガ破壊以外ノ方法デフィールドカラ消エタ…

 ヨッテ、コノ2枚ハフィールドニ残リ続ケル……!

 “融合禁止エリア”ヲ合ワセタ3枚ノ永続トラップヲ捧ゲル……』


「なん…だと…! 3枚の永続トラップ…!?」



突き立っていた3枚の石板が罅割れ、がらがらと崩れていく。

大地が割れる。裂けた地面から溶岩が溢れ、その中で金色の光が二つ、瞬いた。

ゆっくりと溶岩の中から真紅の身体が姿を現した。

東洋の龍のように大蛇をイメージするフォルム。

爪と一体化した翼を広げ、顎が開かれる。口腔の中から溶岩が滴り落ち、咆哮とともに撒き散らされる。

飛び散ってくる溶岩の欠片に、思わず跳び退る。



「げ、幻魔……?」

『“神炎皇ウリア”――――!

 コノモンスターノ攻撃力ハ、墓地ノ永続トラップノ数×1000トナル…! ヨッテ3000!!

 更ニソノ効果ニヨリ、セットサレタカードヲ破壊スル!!!』




ウリアが開いた口の中に炎を溜め込む。

それは攻撃で無く、俺の場の魔法マジックトラップを破壊するモンスター効果。

迸る炎の濁流は問答無用でそれを押し流すトラップの力を得る魔龍の放つ究極の一撃。



『ト、言イタイガ―――マズハ眼触リナソイツカラダ!』

「だがっ……!」



スターダストの効果ならば、それすらも防ぎ、かつウリアを破壊する事が出来る。

故に、奴はスターダストを破壊してから、その効果を使う必要がある。

つまりはまず、奴はスターダストの戦闘破壊を狙ってくる―――!



「だったら! バトルフェイズ前にこいつを発動させてもらおうか!

 トラップ発動、エンジェル・リフト!!

 その効果によりレベル2以下のモンスターを墓地より特殊召喚する! フォーミュラ・シンクロンを特殊召喚!」



車体に取り付けられたホイールを回転させながら、フォーミュラ・シンクロンが再度現れた。

スターダストが唸りを上げ、翼を大きく羽搏かせる。

並び立つ二体のモンスターが導くのは、限界を越えた境地。



「行くぞ、スターダスト!」



雄叫びとともに飛翔する。

赤光に包まれたフォーミュラ・シンクロンが、ネオスペースの宇宙そらに舞い上がった。



「フォーミュラ・シンクロンの効果! このカードをシンクロ素材として、相手のメインフェイズにシンクロ召喚を行うことができる!

 レベル8、シンクロモンスター、スターダスト・ドラゴンに、レベル2、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!!

 ―――アクセルシンクロォオオオオオオオッ!!!」



月影龍の放つ闇を切り裂きながら、並列に翔けるドラゴンとチューナー。

二体は光すら置き去りにする速度で、新たな次元へと突き抜ける。

閃光に包まれた身体が消失し、一瞬の静寂が訪れる。



その、次の瞬間。

俺の背後に光が溢れ、その中から二体のモンスターを束ねた新たな力が生来する。



「闇を切り裂き翔けろ、流星――――シューティング・スター・ドラゴン!!!」



機械的な意匠が透けて見え身体、首ごと覆うような兜を被っているかのような白き龍。

細身の身体は筋肉の鎧に包まれ、羽搏くための翼は、切り拓くための刃に。

速度の極致、進化の証、アクセルシンクロモンスター。

舞い降りた流星は、他のブラック・マジシャン、フレア・ネオスと並び、吼えた。



『フン……ナラバ、“青眼ノ究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン”ノ攻撃……!

 “シューティング・スター・ドラゴン”ヲ消シ飛バセ―――!!』


「させるかぁ! 速攻魔法、コンタクト・アウトッ!

 フレア・ネオスをエクストラデッキに戻し、コンタクト融合時にデッキへ戻したネオスとフレア・スカラベを特殊召喚する!!」



フレア・ネオスが光を放ち、消え去る。

ディスクのフレア・ネオスをエクストラデッキのスペースに戻すと、デッキからオートで2枚のカードが飛び出した。

それらを挟み取り、抜き放つ。



「来い! E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス! ネオスペーシアン・フレア・スカラベ!」



二体のモンスターをディスクに並べる。

それは高攻撃力のフレア・ネオスを究極竜アルティメットドラゴンには及ばぬ攻撃力のモンスター二体に変える行為。

微かに魔人の雰囲気に疑念が混じった事を感じ、安心する。

大丈夫だ、神様だろうが相手は全知でも全能でもない。それならば、倒す事ができる。

俺の場のモンスター数が変わったこの瞬間、究極竜アルティメットドラゴンは一時の待機状態になる。

その隙を逃がさない。



「更に速攻魔法―――! ディメンション・マジック!!

 黒き魔術師の力によって、フィールドのモンスターの魂を捧げ、手札の魔術師を新たに呼び出す…

 フレア・スカラベをリリース! そしてブラック・マジシャン・ガールを攻撃表示で特殊召喚!!」



炎の力を持つネオスペースの民と、黒き魔術師が眼を交差させる。

うん、と肯いて見せるフレア・スカラベがその命を燃やし、全てを魔力に変換していく。

地面から人型の棺がせり出し、燃えるフレア・スカラベの身体をその中に包み込んだ。

ブラック・マジシャンはそれを自らの魔杖で一度叩くと、指を鳴らす。



再びその棺が開かれた時、その中にいたのはフレア・スカラベではなかった。

ブラック・マジシャンの魔導衣をベースに、ピンクとブルーのカラーで女性用に仕立てた衣装。

師と同じデザインの先端の尖った帽子を被った見習い黒魔術師。

ブラック・マジシャン・ガール。



「ディメンション・マジックの追撃効果発動!

 特殊召喚した魔術師による攻撃で、相手モンスターに不可避の破壊効果を叩き込む!!

 黒魔術の師弟による合体魔術――――標的は、青眼の究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン



ブラック・マジシャンとガールが杖を合わせる。

紫黒と桜色の魔力が互いの杖の先に集束していく。それを察知した究極竜アルティメットドラゴンが、三つの顎を開いた。

破壊神すら凌駕する絶対の攻撃、それは如何なモンスターであろうと避けられぬ破壊の結末。

まさしく究極の一撃アルティメット・バースト

だが今俺が繰るしもべたちは、それすらも乗り越えて来た者たち。

真似事だったとしても、それを可能とするポテンシャルを秘めている事には変わりない。

あとは俺次第―――!!!



黒・爆・裂・波・魔・導ブラック・バーニング・マジック!!!」

『ヌゥウウウ……!』



究極竜アルティメットドラゴンの口腔で氾濫する光が吐き出された。

全てを薙ぎ払う究極の一撃は、下級モンスター程度ならば余波のみで壊滅させる事の出来てしまいそうな暴虐の嵐。

だがそれも、魔術師の師弟がフィールドに降臨した今ならば、一度だけ打ち破る一撃を放つ事を許される。

二人の魔術師が合わせた魔力の波動が、それを真正面から迎え撃つ。



杖から放たれた魔力球は直進し、アルティメット・バーストと衝突する。

究極竜アルティメットドラゴンがブレスの勢いを強め、更なる威力を上乗せした。

対する魔術師は二人揃って掌を翳し、その魔力球を支え続けている

威力は拮抗。互いに退かぬ一撃は大地を震撼させ、宇宙そらを揺るがす。



「ぶっち、抜けぇえええええッ!!」



炸裂する。爆発の威力で粉塵とブレスと魔力の残光が巻き散らかされ、数秒視界を失う。

そしてそれは相手も同じこと。

自身を脅かす魔術師の姿を見失った究極竜アルティメットドラゴンの威嚇が轟く中で。



数秒後、煙幕が晴れかかった場で、

チッチッ、とブラック・マジシャンが魔神の目前で指を振り、舌を鳴らして見せていた。



『ヌッ、グッ…神官風情ガ……!!』



怯む魔神の許に対象を見つけた究極竜アルティメットドラゴンが、そちらに注視する。

その瞬間、究極竜アルティメットドラゴンの頭上から、桜色の魔力が降り注いだ。

竜の悲鳴が上がる。本来なら傷付け得ない攻撃力は、師との魔力の交差により限界を越えて高まっている。

三つの首がどちらを狙うべきか、一瞬の躊躇。

その一瞬で十分であった。



魔神の目前で振り向きざまに振り抜かれる杖から、限界以上に高まる弟子の魔力を越える魔力波が放たれる。

同時に両手で杖を振り上げた少女も追撃の魔力弾を放つ。

二人の魔力は究極竜アルティメットドラゴンの胸へと突き刺さり、混ざり合い、更なる威力を発揮する。

徐々に消滅していく竜の身体は、一際高い断末魔とともに消え去った。



俺の許へと降り立った二人の魔術師が互いの杖を合わせ、互いの健闘を讃え合う。

喜び勇む少女と、威風堂々の黒魔術師。

確かに単騎では究極竜アルティメットドラゴンには敵わない。だがそれは、結束の力によって、覆す事ができるのだ。



最強の竜を失くした魔神はその双眸により強い怒りの光を漲らせ、俺を睨み据える。



『調子ニ乗ルナ人間ガァッ―――!

 ワタシノフィールドニハソレニ続クモンスターナド、幾ラデモ用意サレテイルッ!!

 “月影龍クイラ”ノコウゲキッ! ソノ忌々シイ神官ヲ葬リサレェッ!!!」




青い光を纏う月が動く。それはゆっくりとブラック・マジシャンの許へ向かってくる。

互いの攻撃力は2500。結果は相討ちに他ならない。

だが、クイラには破壊された時、墓地のインティを蘇生する効果が備わっている。

インティの攻撃力は3000。更なる追撃で、ネオスまで道連れにされ、インティの効果でクイラが帰還する。

そこれそが太陽と月のデザインする、無限のループコンボ。

ブラック・マジシャンを破壊された揚句、更なる追撃をされたのではこちらは持たない。



トラップ発動! ヒーローバリア!!

 フィールドにE・HEROエレメンタルヒーローと名のつくモンスターが存在する時、相手の攻撃を一度だけ無効にする!

 俺の場にはE・HEROエレメンタルヒーロー ネオスがいる! その攻撃は無効だ!」



ブラック・マジシャンの前に、青と白の光が渦を巻く盾が出現した。

それでも接近を止めぬクイラはその盾にぶつかり、まるで毬のように弾き返されて、魔神の目前へと失墜する。

墜落で発生した突風と粉塵の止まぬうちに、魔神は次なる命令を下す。



『ナラバ“メテオ・ブラック・ドラゴン”ヨ……“E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス”ヲ消シ飛バセェイッ!!』



溶岩の塊のような身体が動く。

竜という以上に、悪魔に近い容貌の竜は岩石を削り出したかのような翼を広げ、僅かに飛んだ。

僅かに浮いた程度であったが、その瞬間、岩の焼ける臭いと熱気が周囲に散乱する。

オォオオオウ、と火山の噴火の如き咆哮。

瞬間、奴は隕石と化した。

身体を丸め、熱の殻を被り、それは高速でネオスの目掛けて殺到する。



ここでは、使えない。続くウリアを止めるためには、シューティング・スターを温存する必要がある。

最も攻撃力の低いブラック・マジシャン・ガールを攻撃されれば、俺のライフは大きく削られる。

奴が唯一ネオスの攻撃力を越えるメテオ・ブラック・ドラゴンで、

ブラック・マジシャン・ガールを攻撃してくるのを誘った小細工は、まるで意味をなさない。

すまない、ネオス…! お前の力はまだ必要だ、だけど今は眠って待ってていてくれ。



ネオスに向けた視線。彼はそれを汲んでくれたようで、一度肯き両腕を前に翳した。

隕石がネオスを目掛け、直線に突っ込んできた。

それを両腕で、足場を踏み締め、真正面から受け止めるネオス。

熱波が背後にいる俺に届かぬようにと、その全身を駆使して溶岩の塊を決死で受け止める。



「くっ……ネオス……!」



身体が融解していく。

歯を食い縛ってみても、全身全霊をかける彼を助ける事など出来ない。

もう一度心中で謝り、その戦闘を眼に焼き付ける。



隕石の勢いが消える。

突進力を全てその身をもって受けてみせたネオスから、メテオ・ブラック・ドラゴンが退避する。

それと同時、全てを使い果たしたネオスが消え去った。

ドン、と再び溶岩巨竜は魔神の傍に降り立つ。

ネオスペースの地に立つネオスの攻撃力は青眼ブルーアイズに及ぶ攻撃力3000。

しかし、メテオ・ブラック・ドラゴンは攻撃力3500を誇る魔竜。

俺のライフは3500まで削り取られた。



「くそっ…!」

『次ノ“神炎皇ウリア”ノ攻撃ガソノ魔術師ノ小娘ヲ葬リサル―――!!

 消エサレ、ハイパーブレイズ!!!』




ウリアが炎の濁流を閉じた口の端から零す。

その口が開かれた時が、その濁流が解き放たれる時だろう。

少女はその攻撃に身構え、杖を目前に翳す。

だが、ウリアの攻撃力は3000。僅か攻撃力2000しか持たない魔術師では対抗する術はない。



「だが、その攻撃が通るかどうかは別の話だ! シューティング・スターがそれを通さないッ!!」



顎が開かれ、炎の奔流が放たれると同時、ブラック・マジシャン・ガールの目前に流星龍が割り込む。

速度を極めし光速の龍に、攻撃という行為は通用しない。

あらゆるモンスターは異次元すらも翔けるこの龍に追い付く事が出来ず、攻撃自体を断念せざるを得ない。



直前に割り込んだ流星龍に気を取られ、その炎を解放するタイミングが一瞬ずれた。

ガールはその間に素早く離脱し、熱波の射線から退避する。

獲物を逃した怒りからか、ウリアの攻撃はシューティング・スターを目掛けて放たれた。

手足を格納し、翼を横に広げた光速形態へ迫る、炎の奔流。



しかし、それが流星龍の思惑。熱量の塊が自身を呑み込もうとした瞬間、その姿が掻き消えた。

炎は虚しく空を焼き、戦果を上げられぬままに霧散する。

目標を失い、その動きを停止し、周囲を見回すウリア。



「相手モンスターの攻撃宣言時、シューティング・スターを除外し、その攻撃を無効にする!」



ネオスを守る事もできた。

が、ネオスを再召喚するためのギミックは豊富。かつ、ライフダメージは最小限に抑えたかった。

すまない、ネオス。だが、お前が稼いでくれたディスアドバンテージで、俺の勝利が見えて来た―――!



『チッ……カードヲ1枚セットシ、ターンエンド』



俺はこのバトルフェイズでセットされていたカードを全てさらけだした。

故に、ウリアが持つ最強のアンチリバース能力は、発揮されない。



「エンドフェイズ、除外されていたシューティング・スター・ドラゴンは帰還!

 俺のターン!!」



光の欠片が集束し、流星龍が俺の許に帰還した。



俺が勝利するために繋ぐべき道筋。

そのために、このターン、俺が組み上げた戦術を最大限活かすためのフィールドを築き上げるより他にない。

手札は0枚。この状況を打開してくれるのはたった1枚。

そのカードを引き当て、かつその効果で更なる2枚を引き当てる。

馬鹿みたいに遠い夢の出来事みたいだ。

だけど、



「信じるまでもない……一秒だって、疑った事なんてない! ドロー!!」



ドローしたカードは、俺の過去と未来を繋ぐ。



魔法マジックカード、貪欲な壺!

 墓地のダンディライオン、クイック・シンクロン、ターボ・シンクロン、熟練の黒魔術師、フォーミュラ・シンクロンをデッキへ。

 その後、シャッフルしたデッキから2枚のカードをドロー!!」



墓地のカードを合わせたデッキがオートシャッフルされるのを見届け、カードを引く。

その2枚が、更なる力として俺を導く。



「続けて魔法マジック発動、二重魔法ダブルマジック!!

 手札のアール-ライトジャスティスをコストに、お前の墓地の魔法マジックの効果を使用する!

 選択するのは天よりの宝札! 互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにドローする!!」



俺が手札を補充すると、奴のフィールドにも6枚の石板が降ってくる。

腰に力を入れて、何とかその衝撃に耐えつつ、デュエルを続行していく。

よし、これでいける……!



魔法マジックカード、イー-エマージェンシーコール!

 デッキからE・HEROエレメンタルヒーローと名のつくモンスター一体を手札に加える。

 俺が選択するのは、E・HEROエレメンタルヒーロー プリズマ―!」



デッキから選択されたカードを抜き取り、手札に加える。



「更に魔法マジックカード、高等儀式術を発動!」



俺の目前に現れる儀式を執り行う為の魔法陣。

この魔法はデッキに眠るモンスターを直接供物として捧げる事で行える、代替術。

捧げる事の出来るモンスターは特殊能力を持たないモンスターに限られるが、その効果は強力無比。



「俺はデッキからレベル4の通常モンスター。

 E・HEROエレメンタルヒーロー スパークマン及びクレイマンを墓地に送る!

 その効果により、手札のレベル8儀式モンスター、カオス・ソルジャーを儀式召喚!!」



魔法陣の中に、青い体色に鎧を着込んだ光の戦士と、粘土で作られたような身体の地の戦士が現れる。

デッキからそれらのモンスターが直接呼び出され、新たな戦士の糧して捧げられる。

立ち上る翠色の光に呑まれた二体の身体が徐々に解け、消えていく。



儀式に用いられた魔力はやがて霧散し、魔法陣の中心に一人の戦士を呼び出していた。

役目を終えた魔法陣も消えていく中、紫紺の鎧を纏った戦士が、右手に構えた剣を構える。

紫紺色の鎧は金色の縁取りで装飾され、僅かな光さえ照り返すその輝きには一点の曇りもない。

兜からは三本の角が伸び、赤い髪が生やされている。

左腕に持つ盾も鎧のそれに似て、煌びやかな装飾が施されている。が、対し剣である。

鎧の装飾の美しさに比べ、特段何らかの飾りがされているわけではない剣。

それで全てを切り拓くという、剣士の質実な印象を見るものに与えるのだ。



『フン……! ソノ程度ノモンスターナド』

「シューティング・スターで、神炎皇ウリアへ攻撃! スターダスト・ミラージュッ!!!」



シューティング・スターが腕を折り、脚を格納し、翼を広げ、首を伸ばす。

光速の突撃形態へと変形した竜が、上空へと向かい加速する。

限りのない宇宙の彼方まで、流星はその翼で飛んでいく。

捉え切れぬ敵の速度に、幻魔であるウリアと言えど反応しきれず、その口腔に炎を蓄えたまま待機するより他はない。



宇宙を自在に奔る姿はまさしく流星。

その光速の一撃が今、ウリアへと向け解放される。

視界にすら映らぬ彼方から、白い光に包まれた閃光がウリアを目掛け、殺到した。

彼方に煌めく流星が見えた次の瞬間には、既にそれを見た相手は貫かれている。

だが、その一瞬があれば、ウリアの感覚であれば反応は返せる。

顎を開き、その炎を解き放つ――――!



瞬間、一閃。

ウリアの頭部が根こそぎ抉り取られ、破裂していた。

光速の突撃には反応以上の行動は許されない。

飛行形態を解除したシューティング・スターは、ウリアと魔神の間に滞空し、魔神を見据える。

堕ちていくウリアの身体が、炎をぶち撒けながら崩れ落ちていく。

憎悪の籠った魔神の視線を跳ね返し、シューティング・スターが俺の許へと帰還する。

ウリアの攻撃力は3000。対してシューティング・スターは3300。

奴のライフは11100。焼け石に水、と言ったところか。



「さあ、次はカオス・ソルジャーの攻撃だ! 月影龍クイラを攻撃!」



剣士がその無骨な剣を振り翳す。狙うは天に浮く月の化身。

四頭の龍がカオス・ソルジャーに対し、威嚇するように咆哮をあげる。

しかし、その程度で臆する事などありはしない。

剣士が地盤を打ち抜くような鋭い蹴りで大地を蹴り、跳躍する。

自らに接近してきた剣士に対し、龍たちは本能のままに牙を剥く。



一閃、月の上から生えていた龍の頸が跳ぶ。

左右の龍たちがそれも構わず突撃を仕掛け、左の龍の頸が跳び、右の龍の口の中に盾が突き込まれる。

しかし無防備は下方。下より迫りくる龍の牙には、剣士に逆らう術がない。

それがただの剣士なのであれば。

右の龍の口に突っ込まれた盾を持つ手に力が籠る。

そこを支点に、カオス・ソルジャーの身体が上へと向け、持ち上がる。

距離を誤った攻撃は、ガキン、と言う音と共に、牙の空振りをいう結果を知らしめた。



空中で盾にかけていた手を離す。

両腕は共に剣の柄へあて、ゆっくりとその刃を振り被る。

変わる事ない月の顔が、微かな恐怖に歪んだように見えた瞬間、振り下ろされる刃。



「カオス・ブレード!!!」



縦一閃による両断。胴の中心から、下に付いていた龍も巻き込み。

ざっくりと斬り捨てられた身に残る、最後の一頭が断末魔を発した。

直後に横薙ぎの一閃。最期に残った龍をも容赦なく両断。



トン、と重さを感じぬ綺麗な着地を決めて見せ、龍の口から吐き出された盾を掴み取る。

クイラが大地へと落ちる。砂塵を巻き上げ、墜落した身体が消えていく。

だがそれを見て、魔神はその双眸に不気味な光を湛えるまま。



『ダガ“月影龍クイラ”ノ効果ニヨリ、ソノ攻撃ハ意味ヲナサナイ……!』

「クイラの攻撃力は2500。カオス・ソルジャーは3000……その差、500ポイントのダメージだ」

『“月影龍クイラ”ノ効果ハ、攻撃対象トサレタ瞬間二発動シテイル。

 攻撃モンスターノ攻撃力ノ半分、1500ノライフヲ回復シテイタ』




よって奴のライフは12100。減るどころか、増えている。

しかしそれも知らずに仕掛けたわけではない。



『更ニ、“月”ノ沈ミシ刻、ソノ対トナル“太陽”ガ天ヘト昇ル……!

 墓地ヨリ、“太陽龍インティ”ヲ特殊召喚―――!』




クイラの落下跡より、炎が立ち上る。

月が齎していた闇は晴れ、次は燃え尽きそうな日光が戻ってきた。

炎の鬣の四頭の龍を生やした黄金の太陽が、冥界の壁を焼き切り、天へと。

じりじりと肌を焼く熱気が戻ってきた事に一つ舌打ちし、文句も言ってられず、続行する。



「……カード2枚セット、ターンエンド」

『ワタシノターン!』



ガッン、と新たな石板が落ちてくる。

それが起こした突風に乗って、呼吸すら辛くなる熱風が咽喉に侵食してきた。

くそっ、頭が回らない。ぼうっとしてきた……ヤバい、かも、しれない…



『トラップ発動、“死霊ゾーマ”!

 ソノ効果ニヨリ、トラップモンスター“ゾーマ”ヲ特殊召喚スル……

 ソシテ更ニ、マジック・“デビルズ・サンクチュアリ”ヲ発動…メタルデビル・トークンヲ特殊召喚』




起き上がった石板に描かれていた、黒い骸骨龍が闇と共に這い出た。

頭蓋に空いた眼の空洞に、虚ろな闇色の光が揺らめいている。

それは破壊された時、その身を怨霊と変えてプレイヤーの咽喉を食い破る邪龍。



そして、メタルという名の通り、金属そのもののような浮遊する物体。

頭部らしき球体には俺の顔が映っており、その頭から生える胴体と腕は縄か紐のようにぶらりと垂れ下がっている。

それは対する相手の命を写し取り、こちらの攻撃の壁とする呪いの人形。



だがこの場、この状況で呼び出されたと言う事は、それらの目的はそれではない。



「シンクロ、いやアドバンス召喚か…!」

『闇ノ魔力ヲ孕ミシ呪ワレシ者ドモヨ……ソノ身、闇ノ太陽ノ降誕ニ捧ゲヨ!!』

「闇の、太陽……!」



漆黒の球体が奴の頭上に出現した。

呑み込まれていくゾーマとメタルデビルの身体が、煙を放ちながら溶かされていく。

二体のモンスターを供物とするアドバンス召喚。しかし、この情景は―――あえて、生贄召喚と呼ぶべきか。

ドクンと脈打つ漆黒の球体にヒビが奔る。



太陽の生誕。

自然に剥がれていくように、漆黒の殻ははらはらと散っていく。

その中心にいたものが、瞳を開く。

漆黒と黄金の多層鎧に守られた血色の肌を持つ神が、血涙を流しているかのような眼で俺を見降ろした。

胴体の中心に燦然と輝く光がゆらゆらと光の強さを揺らめかせている。

死と再生を繰り返す絶対神。それこそが、太陽。



『“The supremacy SUNザ・スプレマシー・サン”』



大地を蹂躙する溶岩竜を従えた灼熱の太陽龍と、漆黒の太陽神。

焦熱に晒される大地は水分を枯渇し、急速に枯れ果てていく。

その太陽らは命の恵みを他者に与えるものではなく、自身の糧に全てを搾取するもの。



「はぁっ……はぁっ、ッ!」



汗を拭う。全身がべたべたするのはどうしようもない。

むしろ恐怖から来る冷や汗を押し流してくれた事に感謝しよう。

そうして+にでもしないと、今にも倒れそうだ。



『我ガ化身ラヨ、眼前ノ敵ヲ灼キ払エ―――――!!!

 “メテオ・ブラック・ドラゴン”デ、“シューティング・スター・ドラゴン”ヲ攻撃!!!』


「だ、だがっ、そいつじゃあシューティング・スターには追い付けないな……!」



溶岩竜がその身体を重々しく動かし、空気を焦がす。

対する流星龍は軽やかに、翼を繰ってその相手へと対峙する。

パワーは200ポイント、溶岩竜が上回る。

光速の突撃を持ってしてもその溶岩石の身体を貫く事は出来ず、逆にその白の肉体を焦がされ、灰にされるだろう。

このまま戦闘が続行すれば当然の結果。



巌の翼が一度羽搏く。

巨竜が熱波を撒き散らしながら飛翔し、流星を目掛けた隕石と化した。

互いに持ち得る最強の攻撃手段は、その肉体を活かした最速の突撃。

だがそれに応じれば、破壊されるのは言うまでもなくシューティング・スター。



「シューティング・スター・ドラゴンを除外し、その攻撃を無効にする…!」



手足が折り畳まれ、翼が広がる。

一対の瞳が一際大きな光を放ち、光の残照を撒き散らしながらその突撃を真正面から受けて立つ。

速度は流星が遥かに上回り、隕石は最高速に達そうとも、先手は争う事すら許されない。

互いが直線の軌道を描き、お互いを目掛けた突撃を放つ。

半秒待たずに交差する突撃。



それはどちらが破壊されるでもなく、衝突以外の結末。

交差する瞬間に光の粒子のみを残して消え失せた流星には、触れる事はできない。

衝突に身構えていた隕石はそのまま、肩透かし。

俺の頭上高くを通り過ぎた溶岩竜は、その力のぶつけどころを失って、魔神の許へと帰還する。



『フン、続ケ“太陽龍インティ”! “カオス・ソルジャー”ヲ喰イ千切レ!!』



黄金の光を纏う太陽が、胴体の顔の眼だけをぎょろりと動かし、眼下の剣士を見下ろす。

四頭の龍は片割れたる月影龍を斬って捨てた剣士へ対し、呪恨の念を吐き出すように吼えた。

速くもなく遅くもなく、少しずつ侵食するように空から地上へと落ちてくる太陽。

放たれる熱気は大地を焦がし、こちらの体力を抉っていく。



「っ……む、迎え撃て、カオス・ソルジャー!」



攻撃力は互いに3000の互角数値。

牙を剥く龍四頭は、月の龍のそれとは比較にならぬほど強力な龍。

クイラを苦も無く屠った剣士の実力を持ってしても、それは―――



太陽龍がその炎の如き鬣を燃やし、その顎から炎弾を連続して吐き出す。

即座に盾を構える戦士の許に、狙いを定めず乱雑に吐き出された炎の塊が着弾し、炸裂する。

それは剣士のみを狙ったものでなく、周囲の大地、そして俺をも巻き込む破壊の嵐。

爆風と火炎に巻き込まれ、息に詰まる。咳き込むと粉塵が咽喉を侵す悪循環。

膝をつき、咳と荒い呼吸を繰り返す。



「げほっ! ぇほっ…! く、そっ……!?」



爆風と爆炎が一瞬止んだ。

涙ぐみながら、視線を上へ。

その破壊の嵐の静止は、自らと同等の力を持つ龍に恐れなく挑む剣士の剣が導いた結果。



跳躍し、太陽龍より高位置へと躍り出た剣士に待つのは集中砲火。

四つの砲口から放たれ続ける火炎弾を盾一つで防ぐ事は出来ず、やがて罅が奔り、数秒持たずに粉砕される。

止む事無く続く砲撃。それを一身に浴びながら、剣士は怯まず、臆さず、両手で剣を振り上げた。

光と闇の集束、束ねた力が混沌の色を帯び、極光と化して剣に纏われる。

カオス・ブレード―――混沌の戦士が振るう剣技の境地。



一閃、振り抜かれた刃は光と闇のエナジーを合わせた斬撃を放つ。

それは動きの鈍い太陽龍に逃れ得る速度でなく、回避の暇を与えず呑み込んで見せた。

熱量の塊であった黄金の太陽は、しかし光と闇の波動を浴びて蒸発する。

跡形残さず消え失せたインティを見届けたカオス・ソルジャーもまた、その身を硝子のように砕いて消えていく。



「カオス・ソルジャー……!」



負ける事のできない理由が増えたなんて、言ってくれる必要はない。

最初っから抱えてる。俺のデッキ、カードの全てをとっくに背負ってる。

荒い息のまま立ち上がり、魔神を見据えた。



『更ニ続クノハ“The supremacy SUNザ・スプレマシー・サン”!

 “ブラック・マジシャン・ガール”ヲ焼キ尽クセ、SOLAR FLAREソーラーフレア!!!』




黄金に彩られた漆黒の太陽が動く。

鎧の中央で輝く光の球体が一層輝きを増し、その閃光で周囲を照らす。

血色の瞳はその中に何一つ感情を交えず、自らの下に位置する魔術師を見下している。

日光と、そう称する以外他にはない。しかしその語感から察するには余りに膨大な熱量の放熱。



インティの自爆特攻は通す必要があった。

だけど、こいつを通す理由はない。



トラップ発動! くず鉄のかかし!!」



リバースする伏せられた1枚。

それは、1ターンに一度、相手の攻撃を無効にする守りの要。

魔術師の少女を対象に放たれた眩い閃光を、ジャンクで作り上げられたかかしで防ぐ。

少女を背後に隠したかかしが、灼熱の陽光にさらされる。

頭部のヘルメットとゴーグルが変形し、フレームがぐにゃりと拉げ、それでも地に生える支柱は揺るがない。



The SUNの胸の光が徐々に薄れていく。

焦熱地獄が終わりを迎え、ブラック・マジシャン・ガールはその背後から姿を現す。

無論、無事であろう。

くず鉄のかかしは、如何なるモンスターであろうとその攻撃が一度きりならば、完封してみせる。

熱によって変形したくず鉄のかかしは、再びフィールドにセットカードとして配置される。



『……“魔法石ノ採掘”ヲ発動。手札ヲ2枚墓地ヘ送リ、“天ヨリノ宝札”ヲ手札ヘ加エル…

 2枚ヲセットシ、“天ヨリノ宝札”ヲ発動……!』




揺さぶられる前に膝を落とす。強がっていられない、転倒するよりはマシだ。

石板が墜落してくる震動を脚に、肌に感じながら息を少し落ち着ける。

手札を補充し、魔神の次の手を待つ。

手札によるアドバンテージはこのデュエルで意味をなさない。

相手より強く、相手より早く、自らの分身たるしもべを繰り、フィールドを席巻したものが勝利。

このデュエルは、後出しなどという悠長を構えている暇はないのだ。



『永続魔法“生還ノ宝札”ヲ発動、更ニ1枚ヲセットシ、ターンエンド』

「エンドフェイズにシューティング・スターは帰還……

 次は、俺の、ターンだ…!」

『コノ瞬間、前ノターンニ破壊サレタ“太陽龍インティ”ノ効果ガ発動!

 “インティ”ガ破壊サレタ次ノターンノスタンバイフェイズ、墓地ヨリ、“月影龍クイラ”ガ蘇ル。

 フン…キサマノターン故、守備表示トシテオコウ。

 “生還ノ宝札”ノ効果ニヨリ、墓地ノモンスターガ蘇生シタ時、手札ヲ1枚追加』




太陽が沈み、そして月が昇る。

青い光を帯びた月の顔が、再び空へと上がった。四頭の龍が雄叫び、ざわめきだす。

カオス・ソルジャーの命を賭した攻撃は、二体の太陽と月が繋ぐ円環によって、いとも簡単に無視された。

だが、今のお前の行動。それが、ネオスとカオス・ソルジャーが繋いだ活路への希望を開く―――!



「俺は、E・HEROエレメンタルヒーロー プリズマーを召喚…!」



水晶のパーツを繋ぎ身体とする、光のE・HEROエレメンタルヒーロー

そのボディを構成するパーツを見れば分かる、当然の事ながら角張った身体。

月の闇にも包まれず、闇の太陽の光を反射する輝かしい多面体のボディ。

広がるプリズムの翼に映るのは、二体のモンスターの影。



「プリズマーの効果、エクストラデッキのE・HEROエレメンタルヒーロー エアー・ネオスの融合素材…

 ネオスペーシアン・エア・ハミングバードをデッキから墓地へ送る…」



プリズムの翼に映るのはネオス。

そして、赤い人型の身体に鳥の頭部を持つ風のネオスペーシアン



「プリズマーはこの効果によって墓地へ送ったモンスターの名を得るリフレクト・チェンジの能力を持つ!

 そして魔法マジックカード、黙する死者を発動し、墓地よりネオスを特殊召喚!」



墓地よりスライドしてきたネオスのカードを取り出し、場に出す。

メテオ・ブラック・ドラゴンの攻撃によって葬られたネオス。

だが、最上級でありながらも通常モンスターであるため、その再召喚は他の最上級に比べれば、召喚は容易い。

蘇りしネオスペースの戦士は、その銀色の身体に力を漲らせ、他のモンスターたちと並び立つ。



E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス!

 そして、ネオスペーシアン・エア・ハミングバードの名を得たE・HEROエレメンタルヒーロー プリズマー!

 二体のモンスターをデッキに戻す事で、コンタクト融合!!!」



ネオスの胸の中心、青い宝玉が光を放つ。

照らされるのはプリズムに映し出された、風のネオスペーシアン

ネオスとプリズマーの身体が重なり、閃光と突風を巻き起こす。

フィールドのカードをデッキに戻す事で、新たなる融合モンスターを召喚する、魂の交差、コンタクト。



「風に導かれた戦士よ、舞い降りろ! E・HEROエレメンタルヒーロー エアー・ネオス!!」



ネオスの身体が赤く染まっていき、頭部が後ろに尖っていく。

腕が鳥獣の如く鋭い爪を生やし、足首からは黒い羽飾りが飛び出す。

胸の宝玉は腹に移り、そのサイズを肥大化させている。

自身を覆い隠すほどに大きな白い翼を一度はためかせ、宝玉から放つ青い光で全身を満たした。



「エアー・ネオスの効果! 自身のライフが相手のライフを下回る時、その差分だけ攻撃力が上昇する!

 俺のライフは3500。対して、お前のライフは12100!

 よって、エアー・ネオスの攻撃力は8600ポイントアップッ!! ネオスペースの効果と合わせ、攻撃力は11600だ!」



青い宝玉は生命の力を宿す。

そこから溢れ出す光を浴びるエアー・ネオスの攻撃力は限界を超越し、次元を揺るがすほどに昂ぶる。

しかし、それでも魔神は揺るぎない。



『ソレガ、ドウシタ…!

 ワタシノフィールドニハ、不死身ノ“The SUN”ト“クイラ”―――“インティ”ガ存在シテイル』




例えエアー・ネオスでモンスターを破壊し、相手のライフを削っても、The SUNとクイラを突破しなくてはならない。

クイラは攻撃すればライフを回復し、破壊すればインティを蘇らせる。

そしてインティは破壊した時に、インティを破壊したモンスターを破壊し、その攻撃力の半分のライフを奪ってくる。

ライフを犠牲にインティを倒しても、次のターンにはクイラが復活する。

The SUNも同じく、破壊した次のターンに再び再生する絶対の太陽。



「だが、お前は不死身じゃない! その上からでも、ライフを削り切る事は可能だ!」

『ヌ……!』

「シューティング・スターの効果! デッキの上からカードを5枚確認し、その中のチューナーの数だけ攻撃出来る!!」



流星龍の瞳が閃光を放つ。

デッキという未来に眠る力を得て、龍は闇を切り裂く流星群と化す。



「1枚目ぇッ! ―――魔法マジックカード、エイチ-ヒートハート。

 っ2枚目ッ! ―――よしっ、チューナーモンスター、クイック・シンクロン!

 3枚目ぇッ! ―――続けて、チューナーモンスター、ターボ・シンクロン!!

 4枚目ぇッ! ―――っ、ネオスペーシアン・グラン・モール。

 これで、最後ぉッ! ―――チューナーモンスター、ジャンク・シンクロン!!!

 その効果により、シューティング・スターは合計3回の攻撃権を獲得!

 行くぞォッ!!!」

『コノ瞬間、トラップ発動“サンダー・ブレイク”!

 手札ノ“キラー・スネーク”ヲコストトシ、効果ヲ発動! “エアー・ネオス”ヲ破壊スル!!』


「っ、だがシューティング・スターの効果はそれを凌駕する! 1ターンに一度、破壊効果を無効にし、破壊する!!」



起き上がる石板から、雷撃が迸る。

それはネオスペースの宇宙を行く翼を目掛けて放たれた破壊の雷。

だがしかし、それはシューティング・スター・ドラゴンの能力によって寄せ付けられる事なく消失する事なる。

エアー・ネオスの眼前に割り込んだ流星龍が翼を折り畳み、自身の盾のように前方へ翳す。

その盾の翼に衝突した雷撃が裂け、霧散していく。



だがこれで、インティを破壊した際に発生する破壊効果を防ぐ手立てが消えた。

小さく歯を軋らせて、だが迷う暇などない。



「エアー・ネオスで、メテオ・ブラック・ドラゴンを攻撃!」



飛行していたエアー・ネオスがその巨大な翼を広げた。

腹の宝玉から放たれる命のエネルギーが、翼に埋め込まれた同様の青い宝玉に集まり、光を纏う。

今のエアー・ネオスの能力はあらゆる最上級モンスターを凌駕して余りある。

それをぶつけられては、如何に溶岩竜とはいえ一撃で消滅し、その余波で魔神を瀕死まで追い詰める事となる。



身構え、その身体に灼熱を纏うメテオ・ブラック・ドラゴン。

悪魔の如き容貌が更なる狂気を帯び、その突撃力を遺憾なく発揮した一撃をエアー・ネオスに対して見舞う。

隕石そのもの。その一撃は遥か上空に聳える戦士までの間合いを一息に詰め、



「スカァアアアアイリップッ・ウイングゥウウウウッ!!!」



振り抜かれた二枚の翼が放つ風の刃に、両断された。

衝突や拮抗、一瞬の停滞すらありはせず、まるで素通りするかの如く魔竜を刻み、そのエネルギーは魔神へと向かう。

砕け散る溶岩石を頭上に眺め、舌打ちする魔神。



『チィッ……! 手札ノ、“アルカナフォースⅩⅠⅤフォーティーンTEMPERANCEテンバランスノ効果…

 コイツヲ墓地ヘ送ル事デ、戦闘ダメージヲ一度ダケ0ニスル事ガデキル』


「テンバランス……!? くっ…」



魔神の前にある石板が動き、奴の身体をその陰に隠す。

スカイリップ・ウイングの衝撃波が襲うのはその直後。8100ポイントに及ぶ超過ダメージ。

それを丸々受け止めた石板が砕け、崩れていく。

奴自身はその効果により無傷。

これで、クイラを破壊したとしてもライフを回復される。

そしてインティを破壊すればこちらのモンスターが破壊され、こちらのライフが削られる。

まして、奴の場にはまだThe SUNもいる。



シューティング・スターは俺の場の要。

勝負所から外された今、易々と攻撃を仕掛けて失う事はできない力。

だが、



「月影龍クイラを、シューティング・スターで攻撃!」

『“クイラ”ノ効果…攻撃対象トサレタ時、攻撃モンスターノ攻撃力ノ半分、ライフヲ回復スル……!』



シューティング・スターの攻撃力は3300。

よって回復するのは1650ポイント。これで奴のライフは、13750……!



突撃形態へと変形したシューティング・スター。

狙うのは、龍の首を中心である月に巻き付かせて防御の姿勢を取るクイラ。

流星龍の眼が一瞬眩く光り、相対する月影龍を目掛け、進撃する。

光速の一撃は視認さえも許さぬ電光石火。



回避する事もないクイラは、その一撃を正面から受け、爆炎と黒煙に包まれた。



『フン…! ダガ“月影龍クイラ”ガ破壊サレタ時、“太陽龍インティ”ガ特殊召喚サレル―――!』

「は、そいつはどうかな?」

『ヌ……!?』



黒煙が周囲に溶けていく。視界を塗り潰していた煙が晴れた時、見えたのは破壊されたクイラではない。

シューティング・スターの突撃の直撃を受けながらも、クイラの身体は崩壊していなかった。

クイラと交差し、その一撃を叩き込んだシューティング・スターは相手の背後へと突き抜けている。

どちらのモンスターも破壊されぬという戦闘の結果。



『“クイラ”ガ破壊サレテイナイ、ダト……?』

「速攻魔法、ハーフ・シャットの効果!

 このターン、クイラは攻撃力を半分にする代わりに、戦闘では破壊されない効果を得る!

 さぁ、シューティング・スターの残る2回の追撃だ! スターダスト・ミラージュッ!!!」



クイラの背後から、急上昇。

光の軌跡を描く飛行はやがて白と赤、二つの光で螺旋を描き始める。

螺旋を描く光が左右に分かれ、瞬間に消失した。



直後、背後からの衝撃に吹き飛ぶクイラ。

赤い光を纏っていたシューティング・スターの分身が、衝突と同時に消えさる。

振り向く暇もない。龍の悲鳴が微かに絞り出され、しかしそれを押し殺す第二撃が正面より。

直撃を防ぐ手段はない。再び吹き飛ばされたクイラが、大地に衝突、埋没する。

唸るような声は、余りの衝撃に悲鳴を上げる事すら出来ないからか。



「お前のライフは更に3300回復! 更に、二体の魔術師による追加攻撃!!」



大地に埋まるクイラはそれでも破壊されていない。

四頭の龍は、周囲の瓦礫を打ち抜きながら、ゆっくりと身体を持ち上げようと蠢く。

しかし、その頭上。二体の魔術師はその杖に、魔力の集束を完了している。



黒・魔・導ブラック・マジック!!」



黒き魔術師が杖を振り下ろす。

闇色の光は月を包み込み、龍を埋没させていた瓦礫ごと奴を更に追い詰める。

月の顔が苦悶の表情を取るように見えるのは、果たしてただの勘違いか。

紫黒の魔力波はクイラの能力によって、更なるライフを魔神に与える。



「これで更に、ブラック・マジシャンの攻撃力2500の半分、1250ポイントのライフが回復!

 そして、ブラック・マジシャン・ガールの攻撃―――黒・魔・導・爆・裂・波ブラック・バーニング!!」



師の魔力には及ばず。しかし、桜色の魔力の波動は確実に月影龍を捉える。

大地の欠片を薙ぎ払い、着弾した瞬間に魔力が爆裂し、光が散らばる。

その攻撃により更に1000。奴はライフを回復した。

よってそのライフポイントは先程までの数値すら遥かに凌駕する19300。



「この瞬間、トラップ発動! 活路への希望!!

 ライフを1000支払い、相手と自分のライフポイントの差2000ポイントにつき1枚、カードをドローする!

 コストを支払った俺のライフは2500。そしてお前は19300! その差は、16800ポイント!

 よって、8枚のカードをドロー!!」



そして、更に俺の場にはその差を力とする戦士がいる。



「俺とお前のライフの差が広がった事により、エアー・ネオスの攻撃力は19800までアップする!」

『ヌ、ゥ……!』



腹にある宝玉の輝きが一層増して、全身から滲み出るオーラの量が先程の倍するものとなる。

太陽の光など今やエアー・ネオスを灼くには役者不足。

大空、ネオスペースという宇宙の化身には、たかが太陽程度の光では届かない。



「バトルフェイズは終了。そして俺は手札から、魔法マジックカード、融合を発動!

 手札のE・HEROエレメンタルヒーロー バーストレディ、E・HEROエレメンタルヒーロー フェザーマン。

 二体のモンスターを融合する事で、E・HEROエレメンタルヒーロー フレイム・ウイングマンを融合召喚!!」



黄金の冠を被り、長い黒髪を揺らす赤い女戦士。そして、緑色の羽毛に包まれた、マスクを被った有翼の戦士。

二人の戦士が俺の目の前に現れ、並び立つ。

その中心に空間の歪みが発生し、その二体のモンスターを呑み込んでいく。

次元の歪みに巻き込まれたモンスターは、その身を融合させて、新たなる身体を形作る。



空間を焼き切る炎と共に出現したのは、赤い竜頭。

赤い鬣の中に混じる黒い鬣は、その竜を構成する一部となった女戦士の名残であろう。

腕の竜から続くのは腰より生やした竜尾。

左肩からはもう片割れの有翼戦士の翼が引き継がれ、頭部を覆う黒いマスクのような顔で敵を睨み据える。



「そして、融合回収フュージョン・リカバリーを発動!

 墓地の融合と、フェザーマンを手札に加え、再び融合を発動!

 ドラゴン族シンクロモンスター、シューティング・スター・ドラゴン、戦士族モンスター、E・HEROエレメンタルヒーロー フレイム・ウイングマン!

 二体のモンスターを融合!!」



二体の羽搏く翼が起こす風が、有翼戦士と流星龍を包み込んでいく。

渦巻く風に乗り、火の粉と星屑の残照が散華する。

赤と銀の光の雨に照らされ、蒼き鎧の竜騎士が降臨した。



細身の身体を鎧で覆い、縦に並ぶ五本角の兜の中で橙色の眼光が煌めく。

大きく広げた二枚の翼を羽搏かせ、右手に持つ槍を構える。



「波動竜騎士 ドラゴエクィテス!!

 この融合騎士、ドラゴエクィテスの効果が、お前のループコンボを断ち切る!!」



槍を振り上げ、投擲の体勢。

バトルフェイズは終了しているが、その槍の狙いはフィールドのモンスターではない。

地面に埋まっているクイラが、漸く這い出してきた瞬間、それは放たれた。

風を穿ちながら突き進むそれは、クイラを狙って放たれたように見えて、しかし。



貫くのはクイラの直下。陥没した大地。

そこへと突き刺さった槍は、周囲の瓦礫を消し飛ばして、そこで眠っていた一枚の石板を狙ったものである。

打ち砕かれる石板を見て、魔神が言葉を詰まらせた。



『ヌ…! “インティ”ガ、消サレル、ダト……!?』

「ドラゴエクィテスは墓地のドラゴン族シンクロモンスターを除外し、除外したモンスターの名と効果を得る…!

 その除外するカードを選択する墓地の範囲は、デュエルに参加しているプレイヤー全ての墓地!!

 お前の墓地のインティは除外した! これでクイラとインティの輪廻転生は打ち砕かれた!!」

『グッ…、ヌゥ…! 人間風情ガァアアアアア……!!』



憎悪の光が奴の瞳をより一層赤く染める。

戦慄く顎を抑え込むため、ギリギリと食い縛った歯を更に強く。



「カードを3枚セット。エンドフェイズ、手札が7枚のため、6枚になるよう1枚を墓地へ送る。

 手札のネクロ・ガードナーを墓地へと送る。ターンエンド」

『ワタシノターン! 貴様ノターンニ使用シタ“サンダー・ブレイク”…!

 ソノコストトシテ墓地ヘ送ッタ、“キラー・スネーク”ハスタンバイフェイズニ手札ヘ戻ル……!!』




天より舞い落ちる石板が1枚。そして、地面から競り出てくるものが1枚。

キラー・スネークは自身のスタンバイフェイズに墓地に存在する場合、手札に加える事が出来る。

手札1枚をコストに蘇生するThe SUNとの相性は最高であろう。



『更ニ永続トラップ“リミット・リバース”ヲ発動シ、“魔法石ノ採掘”デ墓地ヘ送ッタ“ジャイアント・ウィルス”ヲ召喚…!』

「……?」



生還の宝札の効果で、ジャイアント・ウィルスを墓地から特殊召喚した瞬間、あいつにはドロー権が与えられる。

だが、地面の奥底から染み出すように現れた紫色の球体が現れても、奴の手札は追加されない。

……攻撃力1000のモンスターを特殊召喚。

奴の場には、太陽と対になっていた月影龍。そして漆黒の太陽、The SUN。



「っ、太…陽…?」

『“ジャイアント・ウィルス”ノ召喚ニ呼応シ、速攻魔法“地獄ノ暴走召喚”ヲ始動……!!

 “ジャイアント・ウィルス”ヲ更ニ二体、特殊召喚スル…!!』




ジャイアント・ウィルスの身体が分裂する。

ウィルスというだけあって、増殖もお手の物ということか。

これで奴の場には、一瞬で三体。クイラ、The SUNを合わせてモンスターゾーンを埋め尽くす五体。

だが、戦闘の場で役立つのはクイラとThe SUNのみだろう。

クイラにしても、半身たるインティを排除した今となっては、脅威ではない。



そう、こちらの脅威とならないモンスターが四体、並んでいる。

そして奴が今まで扱ってきたモンスターを考えた時、次に来るモンスターの姿がおぼろげにだが、見えてくる―――



「――――ッ、ト、トラップ発動!

 リビングデッドの呼声、そして和睦の使者! 更に速攻魔法、クリボーを呼ぶ笛!

 その効果でシューティング・スターを墓地より特殊召喚、デッキからクリボーを手札に加え、このターン全てのダメージを0にする!!」



デッキの中から1枚のカードが押し出され、墓地から1枚のカードがせりだし、俺の周囲を光が囲った。

クリボーのカードを手札に加えると、墓地のシューティング・スター・ドラゴンをフィールドへ。

ドラゴエクィテスの融合に使用された龍は、再び俺のフィールドに舞い戻ると、翼を大きく広げて嘶いた。



『ソノ様子デハ察シタカ……構ワンゾ、モウナイノカ……?

 ククク…ナイノデアレバ、ワタシノターンヲ続行サセテモラオウカ……!』


「くっ……!」

『三ツノ供物ノ魂ヲ天ヘト捧ゲ、新タナル太陽ヲコノ地ニ降臨セシメン―――!!』



ごぽごぽとウィルスが泡立つ。

蒸発していくのは、自らの魂を供物として開いた天界への路から降り注ぐ極光の雨に耐えられぬからか。

三つの魂は神を呼ぶ礎として捧げられ、そして、神が降臨する。



「―――――ハ、」



太陽。その名を冠するモンスターを見て来た。しかし、別格。

なるほど、これこそ正しく、正しく、――――太陽神。

思い描いていたモノとは違う、相手のモンスターに疑問を挟んでいられるほど、思考回路は余っていやしない。



黄金の太陽がゆっくりと天から降りてくる光景は、正に神の降誕。

ネオスペースの無限に広がる宇宙空間ですら、その存在に圧倒されて歪んで見える。

ゆっくり、ゆっくりと、じわじわと勿体ぶるように降りて来た太陽神は、しかしそのままでは起動しない。



『ククク…“ラーノ翼神竜”ノ召喚時、別ノ効果ガ割リ込ム事ハ不可能…

 ソシテ、ワタシハ“太陽神”ガ持チ得ル、最強ノ効果ノ一端ヲ発動サセテモラウトシヨウ……!!

 我ガ命脈ヲ喰ラワセル事ニヨリ、“ラーノ翼神竜”ノ攻撃力トスル―――!

 捧ゲラレルノハ、残リライフ-100ポイント。ヨッテ、ワタシノライフハ100……ソシテ!』




起動する。

待機スフィア形態から、敵陣全てを焼滅させる戦闘バトル形態へ。

球体はまるでパズルのように複雑に折り畳まれたそれぞれのパーツ。

腕部が伸び、脚部が展開し、胴体を起こし、頭部の瞳が力を宿す。黄金の翼が広がり、その姿を現す。

額には青い宝珠が煌めき、背後に背負う天輪の中に炎が盛る黄金の隼は、その巨大な四肢と翼を揺らし、産声を発した。

全てのモンスターを凌駕する究極の神。

万象を焼き尽くす太陽の炎には、同じく三幻神と称される天空の神オシリス大地の神オベリスクすら及ばない。



その攻撃力――――19200。

同時に、相手のライフが俺のライフを下回った事で、エアー・ネオスの力は失われる。

腹の宝玉は光を失くし、ネオスは通常通りの能力しか発揮できない戦士と化してしまう。



「だが、このターンは和睦の使者の効果がある……! 攻撃は通らない!」



そして攻撃無効効果を持つシューティング・スター。攻撃を一度だけキャンセルするネクロ・ガードナー。

ダメージを0にするクリボー。俺のフィールドの状況は、強力な神だろうと、易々とは破れない―――

だがそれが、複数体による侵略であったとすれば…



『マジック・“生者ノ書-禁断ノ呪術-”ヲ発動!

 墓地ヨリアンデット族モンスターヲ特殊召喚シ、相手ノ墓地ノモンスターヲ一体、除外スル……』


「あ…な、ま、さか……!」

『“魔法石ノ採掘”ニヨリ、“ジャイアント・ウィルス”ト共ニ墓地ヘ埋葬シタ、“ダブルコストン”ヲ特殊召喚!

 ソシテキサマノ墓地ノ、“ネクロ・ガードナー”ヲ除外!』




俺の墓地から、先程送ったネクロ・ガードナーが現れる。

本来、相手の攻撃を防ぐためにそうする筈だったそれを、役目を果たす前にゲームから取り除く。

そして奴の足許からは、黒い粘土のような繋がった二つの顔が現れた。

ぐにゃりぐにゃりと形を変えながら、それは宙で揺れている。

それは、闇属性のモンスターを呼び出すために、二体のリリース要員として扱える魔物。



『“生還ノ宝札”ノ効果ニヨリ、手札ヲ1枚追加――――

 ククク…ソシテ、マジック・“二重召喚デュアルサモンヲ使用……!』


「二回目の、通常召喚……!」

『フン、既ニ役立タズトナッタ“月影龍クイラ”ハモウ必要ナイ……

 “月影龍クイラ”及ビ“ダブルコストン”ノ二体、合計三体分ノ供物ヲ捧ゲ、呼ビ出スノハキサマガ想像シタ通リ―――!!』




青い月に照らされた不死者。

天上から降り注ぐ月の光に濡れていた不死者はボロボロに崩れ、やがて自ら光を帯びた月も崩れていく。

二体、三体分の魂を天へと。ドクン、と鼓動が世界を揺らした。



それはまるで、太陽神の生来の再現。

降り注ぐ威光も、ゆっくりと降りてくる球体も、俺が感じる戦慄も。

全て先程の再現。

ただ違うのは、降臨する球体の色。黄金とは真逆。漆黒の球体。

同じ漆黒の太陽でありながら、The SUNのそれすら上塗りする波動。



『“邪神アバター”――――!!!

 ソノ姿ハ最モ強キ者ヲ写シ出ス……当然、“アバター”ガ写シ出スノハ―――“太陽神ラー”!!!』




漆黒の太陽が渦を巻き、フィールドにおいて最も強きモンスターを写し身となる。

その能力は写したモンスターの攻撃力に100ポイントを加えた数値。

あらゆるモンスターを寄せ付けぬ、最強の戦闘耐性を持ち得ているその身。

それは太陽神ラーに唯一比肩し得る、最上級の邪神。



漆黒の太陽はその色のまま、黄金の太陽神と同じ姿形となった。

攻撃力は19200のラーを写し、かつ100ポイントを加え、19300。

フィールドに並ぶ、二体の太陽神。

それは戦場において全てを照らし、敵対する全てに絶望という名の影を落とす。



その上、邪神アバターには更なる効果がある。



『“アバター”ノ召喚ニ成功シタ時、相手ハ相手ターンデ数エテ2ターン、マジック・トラップヲ使用デキナクナル―――

 ククク……先ニ発動シテオイテ助カッタヨウダナァ……?』


「……っ、このターン、和睦の使者の効果で、俺とモンスターへの戦闘ダメージは0!

 バトルは行えない―――」

『フハハハハハハハハハハハハァッ―――――!!!

 ソレハ、ドウカナァッ! “太陽神ラー”ノ攻撃―――!!』


「なっ……!」



太陽神が背負う天輪に炎を集めていく。

その膨大なエネルギーは、ネオスペースの空をも焦がし、奴の場にいるThe SUNすら怯えさせる。

僅かにこちらへ流れてくる熱波ですら肌が焼かれている。目など開けていられず、思わず瞼を閉じた。



瞬間、



『ゴッド・ブレイズ・キャノン―――――!!!!』



世界が震撼し、俺は自身が吹き飛ばされるのを自覚した。











「――――っ、あ……、」



ゆらゆらと浮遊感。意識が飛んでいたのは何秒か、あるいは何分間か。

倒れているわけではない。まして、立っているわけでもない。

浮遊感を感じている通りに、浮いている。

焼けた瞼を何とかこじ開け、周囲を見回す。

ネオスペースの宇宙空間に漂っている、のだろう。

極彩色の空に瞬く星の光は、先程まで見ていた光景に違いない。

身体が、動かない。何とか腕を動かす程度で精一杯だった。

にも関わらず、手札は放していない。よくやった、と自分を褒めてやりたいところだ。



『ホウ…? 生キテイルカ―――所詮、神トハイエ紛イ物……カ。

 カードノ魔神タルワタシノシモベトスルニハ、些カ力不足ダッタヨウダナ……』


「ッ―――!!」



驚こうにも声が出ない。ただ息を詰まらせ、太陽神の背に乗って現れた魔神の姿を見つめる。

その太陽神と俺の間に割り込む、流星龍、魔術師の師弟、竜騎士、そして風の戦士。

俺のライフは変わらず。矢張り、奴の攻撃は通っていない。



「…一体、な、にが……」

『ククク……ナニ、タダノ遊ビダ……

 神ノ攻撃ハ通ラズトモ、ソノ余波ノミデ人間一人ノ魂ヲ砕ク程度ノ威力ハアル…ト思ッテイタガ。

 キサマノ持ッテイタノハレプリカ。矢張リ直接当テネバ効果ハ薄イヨウダ……

 覚エテイナイ、トイウナラバモウ一度クレテヤロウ。今度ハ、死ヌカモシレンガナ……!!』




太陽神の写し身、邪神アバターが、先程の太陽神と同じく、背後の天輪に炎を集める。

その炎は自身の身体と同じく漆黒のそれ。

同じく、その炎の集束が起こす熱気の奔流も先程の再現。

余波のみで身体を焼いた炎に、身体が竦む。

だが、これを受けたらライフが変わらずとも死を迎える、という恐怖が身体を動かした。



「シュ、シューティング・スターの、効、果……こいつを、除外して、攻撃を、無効に、す、る……!」



流星龍が翼を広げ、四肢を格納する。

破壊力では神には及ぶべくないが、その速度は神に匹敵、いや凌駕する。

その身体は五つの光に分裂し、五つの方向からアバターへと向かう。

漆黒の太陽神の頭部が揺れる。脅威とはならずとも、羽虫の如く飛び交う龍に怒りを誘われたのだろう。

分身の一つが、その右翼を打つ。と、同時に砕け散った。

二つ目の分身は脚を打ち、砕ける。三つ目は左翼を。そして四つ目が腹へと突撃を仕掛けて砕けた。

最後、五つ目である本体が迫るのは自身の頭上から。

即座に反応する太陽神は、その黒い炎を天輪から口腔に移しながら解放した。

瞬間に消失するシューティング・スターの姿。



炎、などというレベルではない。

黒い極光。真正面から見て、十数メートルの太さを持った光の柱がその口から立ち上った。

襲いかかる余波に焼かれ、吹き飛ばされ、俺は再び混濁する意識を必死に繋ぎとめ、荒い呼吸を繰り返す。

あれと同等の力に当てられ、生き延びていた。それだけで渇いた笑いが頬を引くつかせる。



『ドウヤラ神ノ攻撃ガ気ニイッタヨウダナ……ナラバ、キサマハ神ノ裁キデ葬ッテヤロウデハナイカ……

 モウコイツハ攻撃サセルマイ……“The SUN”ヲ守備表示ニ変更シ、ターンエンドダ』


「エ、エンド、フェイズ……シューティング・スターは、帰還する……!」



奴のライフは、僅かに100ポイント。

攻撃力3000のThe SUNを放置する事は、攻撃力3300のシューティング・スターがいる今、自殺行為。

当然の話だろう。神の攻略は、今の俺には……不可能。

ましてアバターの効果により、次の自分のターンの終了まで、魔法マジックトラップは使えない。

頼みの綱、ネクロ・ガードナーは除外されている。

次のターン、確実に一撃は受けねばならない……!



「う、く……あ、に、2枚のカードをセット。全ての、モンスターを、守備表示に変更……ターンエンド…」

『フン、攻撃シテコナイノカ? ワタシノライフハ僅カ100。

 少シ頑張レバ削リ切レルヤモ知レナイゾ? ―――――ク、ククク……!! マァイイ、ワタシノターン』




奴の手札には無限に回収できるキラー・スネーク。

そしてThe SUNと生還の宝札。このコンボにより、破壊したところで奴の手札を増やすだけに終わる。

それを理解した上で、怯え、竦む俺の姿を愉しんでいるのだろう。



『今度ハ“邪太陽神アバター”ノ攻撃ダ!

 ダークネス・ゴッド・ブレイズ・キャノン―――――!!!』




あの、黒い極光。天輪に集まる炎を見た瞬間、理性を振り切って本能で叫んでいた。



「シュ、ティング・スターの、効果ぁっ!」



再び流星龍が躍り出る。

先程の回避を理解していてもなお、邪神にとってその龍は眼触りこの上ないのだろう。

舞い上がったシューティング・スターから視線を外さず、俺から離れた位置で停止した一瞬。

その口から最早ビームとでも称するべき極太の黒炎が放たれた。

しかし、如何に光速で迫る攻撃であろうと、流星は光速を超えて躱す。

光の粒子と化した流星龍を呑み込む事はなく、極光は無限に広がる宇宙の果てへと消えた。



「はぁ、はぁ……はぁッ―――!」

『サァ、次ヲ回避スル手段ハアルノカ―――!?

 太陽神ラーノ攻撃! マズハ、ワタシニ刃向カッタソノカトンボカラダ―――!!

 ゴッド・ブレイズ・キャノン―――――!!!』




狙われているのは、エアー・ネオス。

その効果によって奴を追い詰めた戦士を、奴は初めに狙ってきた。

もう俺には攻撃を無効にするためのカードはない。くず鉄のかかしは、発動できないのだ。



天輪に輝くのは烈火の炎。

黄金の身体を照らす炎は、邪神の禍々しさとは対照的にその神聖さを際立たせる。

天輪の炎が口腔に集い、やがてその砲口がエアー・ネオスに向けられた。

眩いばかりのフラッシュと同時に一瞬遅れて爆音。

その真紅の奔流は放たれた。超広範囲を包み込む炎の氾濫から、一体どうやって逃げればいいと言うのか。



エアー・ネオスが即座に前方へ飛び出し、その両腕を前に翳す。

まるで、俺までは届かせないと言うかのように。



「ぅっ……、くぅッ……!」



二体の魔術師が。竜騎士が俺をかばうように前に立ちはだかった。

熱波を堰き止める魔力の壁と、竜騎士の巨大な身体。

その状態で10秒あったか。やがて、炎の奔流は力を失い、消えていく。

三体のモンスターはいる。が、エアー・ネオスの姿はどこにもない。



「……ッ、!」

『マズハ一匹。眼触リナ蝿ガ消エタ……ターンエンド』



エンドフェイズに、シューティング・スター・ドラゴンが帰還する。

しかし神を相手にしていれば、このままでは一体ずつ、やがて全滅する。

だが、このターンでもまだ俺は手を打てない。



「カードをドローし、ターン、エンド……!」

『“アバター”降臨カラ2ターン。キサマノマジック・トラップ制限モココマデ……

 ソノリバースカードニ神ヲ打倒スルカードガアルカナ……? ワタシノターン』




ない。だが、シューティング・スターの効果と、くず鉄のかかしがある限り、神とは言え二体ならば。

その攻撃を凌ぎ続ける事ができる。



『フン……時間稼ギカ……ソンナツマラン手ハ見テイテ飽キ飽キシテイタトコロダ……

 次ハ、ソノ流星ヲコノ宇宙ノ藻屑ニ変エテヤロウ……

 マジック・“死者ヘノ手向ケ”ヲ“キラー・スネーク”ヲコストニ発動!

 “シューティング・スター・ドラゴン”ヲ破壊シテクレル!!』




奴の目前に現れた石板から、包帯が幾条も放たれ、流星龍を目掛けて奔る。

それは、キラー・スネークによって機能する、実質ノーコストのモンスター破壊魔法。

だがしかし、破壊する効果であれば、それは―――!



「シューティング、スター…! 破壊効果を無効にし、破壊、する……!!!」



シューティング・スターに絡みつく包帯の数々。

結果と仮定の逆転。死者へ送る手向けではなく、手札1枚という手向けを送られたモンスターは、冥府へと引きずり込まれる。

冥府へと引きずり込もうとする死者の意思が、強烈な引力を持って流星を取り込もうとする。

が、その程度。流星には通じない。

二つの瞳がライトイエローの閃光を放ち、絡みつく包帯全てを引き千切る。



あらゆる破壊効果を無効化する絶対破壊防御能力。

しかし、その力は……



『ソノ効果ハ、1ターンに一度キリ―――二枚目以降ノ破壊効果ハ防ゲン!!!』

「……くっ!?」

『トラップ発動“デストラクト・ポーション・・・・・・・・・・・・

「………え?」



それは、シューティング・スターを破壊するための効果ではなかった。

自分のモンスター一体を破壊し、その攻撃力分のライフを回復するトラップ

デストラクト・ポーションによって回復するのは、フィールドにおいてそのモンスターの誇る攻撃力。



バキン、と邪神の身体が罅割れた。

神すらも、自らの命として取り込む不遜を犯す魔神の双眸がより大きな深紅の光を湛えた。

崩れていく邪悪なる太陽神の攻撃力は19300。その力を全て、一切合財、自らの魂で捕食する。

そして、ライフが1000を超えた瞬間、太陽神はその究極の力を解放する権利を得た。



『“太陽神ラー”ノ効果――――ライフヲ4000ポイント支払イ、発動』



それこそが太陽神ラーの真の姿。

自らを従える王が捧げる命の一滴を糧に、敵のモンスターたちを――――

そして、敵対するデュエリストの魂をも一瞬にして焼き払う、炎の鎧を纏った飛翔。

力を写し取る邪神ですら写し取れぬ、太陽神が持つ絶対能力。



―――――不死鳥ゴッド・フェニックス



全身を包む炎の衣は、最早恐怖を通り越して、戦慄すらする暇なく、凄絶なまでの存在感にただ見入る。

嘶きは敵に対する最期を告げるもの。

飛翔した太陽神は、ただ炎の翼を羽搏かせ、俺のフィールドに舞い降りる。


瞬間、世界が赤く染まった。



「ア゛ッあ゛ぁああああああ、ッあ゛ああああああああああああああァァッ!!?」



痛み、苦しみ、それらは全て肉体を超えて魂まで侵食する。

ライフ1000につき、一体。4000のライフを支払って放たれた不死鳥は、俺のフィールドを全て侵す。

シューティング・スター・ドラゴンがその翼を焼かれ、落ちる。

白く輝く肉体は一瞬のうちに赤く、黒く、そして灰すらも残さずに完全な消滅を迎えた。

ブラック・マジシャンは背後の弟子を庇いながら、杖を構える。

しかし抵抗などする手段はあり得ぬ。そう言わんばかりの焦熱地獄の前に、全魔力を持ってしても抵抗は意味を為さない。

ブラック・マジシャン・ガールとて守られるばかりではない。

師の杖に自身の杖を合わせ、最後の。いや、最期の抵抗を試みて、しかし敵わずに師弟纏めて炎に巻かれた。

ドラゴエクィテスはその槍を投擲し、俺の目の前にそれを放り出した。

俺の事を案じ、炎の氾濫に対する防壁とするための槍。自身の武器を失った彼は抵抗すら出来ず、炎に押し流された。







その地獄が如何程に続いたのか。

咽喉が潰れそうなほどに、悲鳴を上げていたように思えた。

いつの間にか終わっていた、その不死鳥の侵略。

自身の役目を果たした太陽神ラーは魔神に許へと帰還し、全身を包む炎を霧散させた。



『マダ生キテイルカ……ム』



バキリと。ドラゴエクィテスの遺した槍が、最期の声を上げて消え去った。

あるいは、これが無ければ既に終わっていたのかもしれない。

いや、どちらにせよもう、動けない。ここで、終わりだ。



彷徨うように流されていく宇宙の中で、眼を閉じる。

走馬灯、というものはどうやら見れないらしい。

少し、名残惜しい。見てみたかった、かもしれない。



ごつんと、背中を何かに打ち付けて宇宙遊泳が止まる。

首を動かす力もないから、何にぶつかったのかは知らない。

ただ、少し懐かしい感触なような気がする。



『フン……! “The SUN”ヲ攻撃表示ヘト変更!!

 “太陽神ラー”ニヨル裁キヲ受ケヨ……ゴッド・ブレイズ・キャノン―――!!!』




最後の一撃。俺の場には、3枚の伏せリバース

くず鉄のかかし。そしてもう一枚、攻撃の無力化も伏せてある。

アバターの効果が消えた今ならば、これで攻撃を防ぐ事が出来る。

が、もうそれを起動するにも、腕が動かない。脚も、首も、眼も、だからこれで、終わりなのだろう。



轟々と唸りを上げる炎の音に混じって、何か別の音がした。

しゅっという何かが風を切る音、そしてカチリと何かがはまる音。

その直後に、迫ってくる熱気。最期の一撃が放たれたのだ。

身体を焼くそれにも、悲鳴一つ上がらない。

だが、それでも。



まだ、終わるなと。



『カウンタートラップ発動、“攻撃の無力化”

 攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させます』



ディスクにセットされたカードが勝手に発動する。

聞こえて来た声に反応し、限界の力を振り絞り、眼を微かに開いた。

眼前の光景は、巨大な光芒がブラックホールの如く宇宙空間に空いた虚空に吸い込まれていく様。

そして、先程の音も、声も。



『チィッ―――1枚セットシ、ターンエンド』

『マスターのターンです。ドローを』

「え、っ……ク、ス」

『はい。私は無重力空間におけるライディングデュエルも想定されています。

 デュエルを行うには問題ありません』



何でだよ、とツッコミを入れたかったが。

もう咽喉から声を絞り出す気力はなかった。

見れば、ディスクにDホイールから伸びた端子が刺さっており、それで勝手に動かしたのだろう。

だがどれだけ存命しても、もう無駄だ。俺はもう、戦えない。

X自身、Dホイールのボディにも幾つか亀裂が奔り、一部は溶解しかけている。

専門的な事は何一つ分からなくとも、まともな状態でないのは分かる。



「は、―――な、んで……そ、こ、ま…で―――」

『言った筈ですが。私は貴方と一緒がいいのです。一緒でなくては嫌なのです』



だから、勝てと。そう無言で圧力をかけてくる。

漂っていた俺の身体を巧みな動きでDホイールに搭乗させたXは、その車体を魔神と対峙させた。

だが、もう動かない。動けない。休ませろと。

そうこめて、俺はXの声がするディスプレイに倒れ込んだ。



『絶対に、やですから』



ぽん、と。何かの音がする。

ディスプレイに映ったものは、近すぎて目で見る事は出来なかったけれど。

その声が、耳を叩いた。











「遊星! 帰ってたんだ」

「ああ」



元々地下鉄が通っていた場所。

ゼロ・リバースによってその機能を停止させ、恐らくこれからも復旧することはない。

そんな場所がオレたちのねぐらであり、このDホイールのガレージだった。

その家に、一人の少年が駆け込んでくる。



赤みがかった癖のある髪を伸ばし、黄色い帽子を被った少年。

オレとジャックが、クロウ、そして鬼柳と分かれてから出会い、共同で生活を営んでいた仲間の一人。



「どうしたんだ、ラリー」

「どうしたもこうしたもないよ! 勝手にDホイールに乗って出てっちゃって…心配したんだよ?」

「それは、すまない。少し、考える事があってな」



先程、大型のDホイールに乗っていた男とのデュエル。

その内容を確認するために映していた、Dホイールに保存されたリプレイ映像を停止させ、動画ファイルを閉じる。

スターダスト・ドラゴンは、恐らくラリーたちには見せない方がいいだろう。

オレ自身、何故奴がスターダストを所有していたかは、分からないのだから。



「それって、ジャックの事…?」

「ああ」

「……やっぱり遊星も、ジャックの事を恨んでる?

 遊星が作ったDホイールと、あのカードを盗んで、シティに行っちゃったジャックの事」



恨んでいるか。と聞かれれば、それは…



「いや。奴も―――自分の可能性を試したかっただけだろう。

 シティという場所でキングという高みに立つ事で、見えるもの。それがジャックが求めていたのであれば、それでいい。

 Dホイールも、そのために必要だったと言うならば。あいつがデュエルで勝ち取った結果だ」

「うん……」

「だが、オレもこのままで終わらない」

「それって―――遊星もシティに行くって事?」



一瞬、戸惑わなかったわけではない。

だがそれを呑み込んで、ラリーと正面から視線を合わせる。



「ああ」

「そっか……そうだよね。遊星だってジャックみたく、みんなの星になれるんだ!

 俺、応援するよ! 遊星の事、シティに行ってもずっとずっと!」

「ああ、そのためにはまず……」



外へと視線を向ける。そこには、今回のデュエルで大分ダメージが残っている。

まずはこいつを、完成させる必要があるだろう。

そのためには、まだまだ調整に時間がかかる。だが、遠くない未来、いつか必ず……



「シティでキングになったジャックのDホイールに負けないように、

 遊星のDホイールもめいっぱい改造して負けないようにしなきゃね! 俺、ちょっと外でパーツ探してくるよ!!」

「え、ああ…」



ラリーは来た道を逆に駆けていく。

彼の顔に付けられた黄色いマークは、マーカーという前科の証として機能している。

それは言うまでもなく、ラリーが過去に犯罪。彼の場合、窃盗を行っている事を指していた。

だが、だからと言って彼を責める気はない。

責められるべきは―――窃盗をせねば生きていけない世界。

彼のような親と一緒に生活しているべき少年を、親と離別させ、サテライトという監獄に閉じ込める原因となった事件。

ゼロ・リバースという名の惨劇を引き起こした男の息子。



「オレ、か……」



眼を閉じて、歯を食い縛る。

ジャックも、クロウも、そして鬼柳も。

あのマーサの家で暮らしていた日々も、チーム・サティスファクションで戦った日々も、そして今も。

全てはオレの親が原因で、元凶。

オレにとって笑い、悩み、苦しみ、しかし仲間たちとの楽しかった日々。

それは多くの人々の命を奪ったゼロ・リバースの発生から始まった日々。



「オレはどうすればいい、ジャック……!」



そしてまた、仲間であり親友であった鬼柳はいなくなった。



「オレに出来る事はただ、お前に全力をぶつける事だけだ……オレの絆を」



デッキホルダーに収納されたデッキを取り出す。

ヘルメットに包まれた顔は見えなかったが、相手の力は伝わってきた。

デュエルの中で見つけ、繋いだ絆が一つ。

そうやって繋ぎ、築き上げていくもの。

遊星粒子が粒子同士を紡ぎあげていくように。

オレはデュエルで、絆を紡ぎあげていく。



「そして、取り戻す。―――見えなくなってしまった、お前との絆も」



そうしてふと、再び動画ファイルを開き、先程のデュエルを見直す。

スターダスト・ドラゴン。俺たちの絆と、夢の結晶。

破壊を包む星、スターダスト。そしてそれを使う、Dホイーラー。



「頑張れ、か。フ―――」



奴の目的が何だったのかは分からない。

だが、それでも、オレは奴に返すべきだったのかもしれない。



「お前こそ、頑張れ。とでもな」











「全く、世話の焼ける人ね…」



むっすーとした顔で翔くんに背中を押されて歩いてくる十代。

夜間に校舎へ不法侵入及びデュエル施設の無断使用。

もし見つかれば退学、というような状況だったにも関わらず、彼はまだ万丈目くんとのデュエルが名残惜しいようだ。

相変わらず拗ねた表情のまま、彼は不満そうにこぼす。



「ちぇー、余計な事を…」

「ありがとう、明日香さん」



翔くんの方も、十代の頑固さ。

そしてデュエル馬鹿ぶりには、少々呆れ気味に見える。

くすり、とその姿を微笑んで眺めてから、一つ意地悪な質問をする。



「どう? オベリスクブルーの洗礼を受けた感想は」



訊かれた十代は拗ねるどころか、軽くふんぞり返って堂々と言い放つ。



「まぁまぁかな、もう少しやるかと思ってたけどね」

「そうかしら? 邪魔が入っていなかったら、アンティルールで大事なカードを失うところじゃなかったの?」



彼にはどうやら少し反省が足りないらしいので、少し追い詰めてみる。

かわいそうだとは思うが、このまま調子に乗っているといつか痛い目を見る。

デュエルアカデミアというのは、そういう場所なのだ。



「いやぁ? あのデュエル、どう転んだなんて分からないぜ」

「――――ぁ」



そう言って彼が見せたのは、“強欲な壺”

どうやら本当に彼のドロー力は天性の力らしい。

彼のデッキに目を向ける。2枚のドローカードを許される強欲な壺。

しかし、それで呼び込んだカードがあの状況で活きるのか。



「おぉっ? 気になるのか。言っただろ、オレの引きは奇跡を呼ぶって」



デッキの上から1枚。彼はカードを引く。

そのカードを見て、私は溜め息を吐いた。E・HEROエレメンタルヒーロー ネクロダークマン。

彼の場には生贄となるモンスターはいなかったし、まして地獄将軍ヘルジェネラル・メフィストの攻撃力は1800。

攻撃力1600のネクロダークマンでは倒せない。



「で、2枚目だ」

「――――!?」



“天使の施し”

カードを3枚引き、2枚を墓地に送る魔法マジックカード。

これでネクロダークマンを墓地に送れば、最上級のHEROを生贄無しで召喚できる。

しかし彼の手札の残りはハネクリボーのみ。続く3枚は――――

食い入るように、十代の手の中にある続くカードを見る。



E・HEROエレメンタルヒーロー エッジマン”

“フレンドッグ”

“ヒーローアライブ”



「これは……!」



墓地にネクロダークマンとフレンドッグを送る。

そしてヒーローアライブの効果でデッキからレベル4以下のE・HEROエレメンタルヒーローを特殊召喚。

更にエッジマンを通常召喚。そうすればメフィスト以外のモンスターがおらず、ライフも1500しかなかった万丈目くんは…

万丈目くんの手札に対応できるカードはなかった、とは言い切れない。

だが、これは。



「オレの勝ち、だろ?」

「………そう、ね」

「オベリスクブルーのエリートっていうからもっと強いのを想像してたけどな。

 あいつよりも、きっとエックスの方が強いぜ。あいつとカードの間にある信頼は、すっげー強いからな」

「…エックス?」

「えっと、オシリスレッドの生徒で、バイクとヘルメットが特徴的なよくわからない人」



翔くんの説明で出て来た、ヘルメットで思い当たる人間が一人。

彼か、と。そう言えば彼は十代とデュエルしたと言っていた。

だが……



「彼は、確かあなたに完敗した。そう言っていたけど」

「とんでもないね、限界ギリギリのデュエルだったさ。あいつは絶対まだまだ強くなる気がするぜ。

 オレももっと強くならなきゃ危ないし……どうだい、アンタ。オレとデュエルしないか?」



ギラギラとライバルを見据える瞳でこちらを見る十代。

全く……大体、こんな時間にデュエルするのが見咎められるからここに居るというのに。

そのデュエルの申込、僅かに勿体ない気もするが……



「夜も遅いし、今日は遠慮しておくわ。また、機会があったらね」

「ああ、楽しみにしてるぜ」

「そう言えば、エックスくんは寮にいなかったっすね。ここに来る前に誘おうとした時」



彼もか……校則を遵守しろとは言わないが、入学式当日からこう破りまくられるとその存在意義を疑う。

しかし、十代はそんな事、理由は分かっていると言わんばかりに大きく肯いた。



「ああ、あいつもきっとデュエルだぜ! 何だか知らないけど、そんな感じがする」

「はぁ……大丈夫かしら」



十代の頭が。



「決まってるだろ、あいつは勝つさ。おおー! エックス、勝てよぉー!」



そうじゃないというのに、彼は思い切り夜の空を目掛けて雄叫びを上げる。

そんな事をすれば、当然ガードマンの眼に付きかねない。

いや、こんなに声を張り上げれば気付かれているかもしれない。

はぁ、と溜め息を一つ。

バレる前に退避する事を始めるのであった。











『相棒……』

「ご、ごめんよ。でも、君とデュエルしたがってる子たちとボクがデュエルしたら悪いでしょ?」



子供たちのおもり、っていうと失礼かもしれないが……

とにかく、あの大会。ヘルメットの人とのデュエルが終わった後、もう一人のボクは子供たちの相手に忙殺された。

流石に城之内くんもあそこに割り込む事は出来ず、二人のデュエルは流れてしまったが。

ところで……



「ねぇ、もう一人のボク」

『どうした?』



彼とのデュエルの後、「また戦って欲しい」という彼に、もう一人のボクは肯定で返した。

でも、その前に一度。この家の事を見た。それは恐らく、飾られた三幻神を見たものであったのだろう。

恐らくは、もう一人のボクは、記憶が戻った後の事を考えていたのだ。



「彼との再戦の約束は、キミが、キミ自身が果たすつもり……なんだよね」

『―――――』



答えは、イエスでもノーでもなかった。

それはまるで、その約束を果たす前に自分が消える事を悟っているかのように―――



『もしも、オレが果たせなかった時は……頼むぜ、相棒』

「―――そんな、そんなのは…!」







あの場にいたデュエリストたち。

最強の名を争い、そしてその名を手に入れた者に与えられる王への挑戦権。

それを獲得したのは、あのヘルメットを被ったデュエリストだった。

だが、あの場に居たデュエリストの最強、というのは間違いだろう。

あそこにいた、オレを除くデュエリストの中で最も強いのは―――



隣にいる相棒を見る。

眼を閉じ、うつむいたままでいる相棒。

まだ発展途上。毎日のようにデュエルについて言葉を交わし、戦術を練り、デッキを作る中でいつも思う。

少しずつ、差がなくなっていく事に気付かされる。

相棒に足りなかったのは、最初の一歩を踏み出す勇気だけ。オレの存在は切っ掛けにすぎない。

オレという存在を呼び寄せ、最初の一歩を踏み出し、もう一人で歩いて行ける強さを得た。



『そんな顔をするなよ、相棒。オレはそうそう消えやしないさ』

「……うん」



オレが消えるのは。オレがお前に追い抜かれた時だ。

その時、お前はあのデュエリストたちの中で、最強を名乗るデュエリストになるんだ。

だから、最強への挑戦はお前が受ける事になる。

オレは待ってるぜ、相棒。お前の成長がいずれ、オレに引導を渡してくれる時を……



だが、その前に彼がまた挑戦してくるならば、



『全力で粉砕する。それが、デュエリストとしての礼義だ』

「――――うん」



優しすぎる相棒には、難しい事なのかもしれないが。

相棒もまたデュエリスト。そこに妥協はいらない。全力で、だ。











盗聴、じゃないのだろうか。これは。全く常識を介さない奴だ。

だけど、それがうちのDホイールのデフォルトなのだろう。

あんな事を聞いて、俺が奮い立つとでも思ったのか。なんて奴だ、こいつは。



これで立てなきゃ―――俺とデュエルして、過剰評価してくれた奴らに、申し訳が立たないだろうに。

腕は動かない、脚もだ。首を僅かに動かすだけで限界。

上等。限界が見えた。後はそれを乗り越えて身体を動かすだけだ。



『立ち上がる力がないのなら、私が貴方の脚になります。

 だから貴方は前を向いて―――託して下さい。貴方の心を、カードたちへ』



掌をディスプレイの縁にかける。歯を食い縛れるほどに顎に力が入らない。

少しだけ持ちあがった頭と、Dホイールのディスプレイの間にディスクの付いた腕を置き、そこで力を抜く。

ディスプレイに散乱した手札が勝手に、整列されていく。

手札を持ったまますら出来ない。だがどうやら、こいつがいればデュエルは出来るらしい。



「ド、ドロー……!」



ドローしたカードもディスプレイに落とす。

そうだ。諦めなければ、デュエルは終わらない。

こうして引いたカードが、新たな道を切り拓く。



「フ、はは……ぇほっ、は、は……!」

『ヌ……? 錯乱デモシタカ…』

『してません。私のマスターをなめないでください白骨標本』



どうやら怒っているらしいXが車体を揺らす。

止めろ、バカ。身体が痛い。



「手札、から……魔法マジック、魔法石の、採掘を、発動し、て……はぁ、ぁっ…

 墓地の、貪欲な壺を、手札に戻し……手札の、ユベルと、ネクロ・ディフェンダーを、墓地へ……」



これで、準備はほぼ整っている。

後は、貪欲な壺で新たにドローするカードに託さねばならない。

それ次第では打つ手なし。だが、成功すれば逆転勝利。



「っ、墓地の、スターダスト、シューティング・スター、ブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガール、ドラゴエクィテス……

 五体のモンスターを、デッキに、戻し……カードを、2枚、ドロー……!!」



そう。だからこそ信じよう。一緒に戦っている仲間たちを。

仲間たちが死力を尽くすんだ、俺が死力を尽くさないでどうするんだ。

身体を起こす。

激痛と重度の倦怠感が襲ってくる。だが襲われたのなら返り討ちにすればいい。

痛いと感じているのなら、眠ってしまえと囁かれるなら、そんな暇があるくらいだ、まだ余裕がある証拠。



Xが動かしてくれていた手札を、自分の手に取る。

それでなくては手札とは言わないだろう。

手を通じて伝わってくるのはカードの声。あとは、俺次第―――!



「更に魔法マジックカード…! おろかな埋葬…!

 そ、の効果で、コンタクト融合時にデッキに戻った、E・HEROエレメンタルヒーロー ネオスを墓地ヘ……!

 続けて、伏せリバースカード発動オープン…!

 正統なる血統、の効果で……墓地の通常モンスター、ネオスを、特殊召喚……!!」



俺のガラ空きのフィールドに、この宇宙の彼方から銀色の戦士が舞い降りた。

ネオスペースの戦士、E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス。

胸の空色の宝珠が光を放ち、その瞳は黄色い光に閃く。



『フン……! 今更ソノ程度ノモンスターナド!!』

「そいつは、どうかなぁ……! ファントム・オブ・カオスを通常召喚……!!」



ネオスの足許に闇の渦が現れる。

それは特定の姿を持たず、墓地に送られたモンスターを冥界から呼び出し吸収する事で力を写し取る混沌の渦。

そのモンスターが、ネオスの身体を徐々に包み込んでいく。



『ヌ……何ダ……?』

「ファントム・オブ・カオスの効果で、コピーするのは、墓地のユベル……!

 そしてフィールドのネオスと、ユベルを墓地に送る事で召喚できるのが……

 来たれ、賢者の名を持つ十二次元の覇者――――ネオス・ワイズマン……!!!」



闇の中に沈み行くネオスの身体が、闇の衣を纏ってその中から再び現れた。

その闇はネオスの身体に肉となり張り付き、強靭な肉体を更なる筋肉で包み込む。

胸の闇の衣の中央が破れ、胸の宝石が現れる。

額から朱い瞳が現れ、側頭部から一対の黒い翼が現れた。



これが俺たちが繋いだ希望。



「そして、ミラクル・フュージョンを発動っ!!

 墓地のネオス、E・HEROエレメンタルヒーローネオスペーシアンをそれぞれ一体以上…

 合計五体のモンスターを融合素材として、最後のE・HEROエレメンタルヒーローを呼び起こす……!

 俺はネオス、フレア・スカラベ、エア・ハミングバード、スパークマン、クレイマンを除外…!」



次元を超越した戦士が今、ここに目覚める。

身を包むのは黄金の鎧。神像の如き姿は、未来を照らす光となる。

頭部を鎧う兜にはネオス・ワイズマンの頭部と似た、しかし黄金の翼飾り。

背面には太陽神の翼の如き、黄金の翼。

神の名を持ち、神に匹敵する力を有する、最強のE・HEROエレメンタルヒーロー



「これが、俺たちの築き上げて来た絆の証―――! E・HEROエレメンタルヒーロー ゴッド・ネオス!!!」



賢者と神。それは外宇宙、ネオスペースにおいて頂点に立つ究極のHEROたちの姿。

並び立つ姿は相対する太陽神にすら引けを取るものではなく、暖かな威光のカーテンで俺を包み込む。

灼熱の太陽の輝きも、もう俺には届かない。



「ゴッド・ネオスの効果発動…! 墓地のE・HEROエレメンタルヒーロー エアー・ネオスを除外!

 攻撃力を500ポイントアップし、その効果を得る……更に、俺とお前のライフ差分の攻撃力がアップ!!」



ゴッド・ネオスの胸の宝石が輝き、その中にエアー・ネオスの姿を写した。

奴のライフは15400。俺のライフは2500。その差分は12900。

エアー・ネオスの風の力を得たゴッド・ネオスは、緑色の光を纏い、その力を増す。

元々の攻撃力2500に加え、ゴッド・ネオス自身の効果の500。そして、エアー・ネオスの12900。

その力は15900まで上昇。



『ダガ、ソノ程度デハ太陽神ラーニハ及バン!!!』

「それは……どうかなっ! 墓地のネクロ・ディフェンダーを除外……!

 このターン、ネオス・ワイズマンに戦闘破壊無効効果と、戦闘ダメージを0にする効果を付与……!」



賢者が冥界より出でる、守護の光を纏う。

魔神が、一瞬怯んだ。



「ネオス・ワイズマンの攻撃……! ラーの翼神竜を攻撃―――!

 太陽すら灼く究極の光、アァアアアアアアルティメットォッ・ノヴァァアアアアアアアアアアッ!!!」



ネオス・ワイズマンの胸の宝玉が巨大な光を湛える。

その光が狙うのは、絶対なる太陽神。

太陽神の攻撃力は19200。対するネオス・ワイズマンは3000。

その攻撃で破壊する事はできず、またネクロ・ディフェンダーの効果でネオス・ワイズマンも破壊されない。

だが、



「ネオス・ワイズマンの効果!

 このカードが戦闘を行った時、ダメージ計算後に相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える……!

 相手が不死鳥とは言え、言った筈だ……お前は不死身じゃない!!」

『ヌ、グゥウウ……!』



ラーの攻撃力19200を下回る15400しかライフを持たない奴には、この攻撃を受け切れない。

ネオス・ワイズマンの胸の光が全身へと広がり、幾条もの光芒が太陽神へと向けて放たれた。

閃光の雨はラーを傷つける事はできない。しかし、それは奴へと止めを刺す一撃。



『オ、ノレェエエエ!! トラップ発動! “デストラクト・ポーション”

 “太陽神ラーヲ破壊スル事デ、ソノ攻撃力19200ヲライフニ加エル!!!』


「……………」



太陽神が悲鳴とともに崩れ落ちていく。

そうだろう。奴のデッキはそういうデッキだ。これまで見せた奴の戦術ならばその予想がついた。

神すら恐れず自身の命へと昇華する戦術。

だがそれは予測していた。だからこその―――神に匹敵する最強のHERO。



「ネオス・ワイズマンの攻撃を続行! The SUNを攻撃!」



漆黒の鎧が閃光に当てられ、溶解していく。

二体の攻撃力は互角だが、ネクロ・ディフェンダーの加護がある賢者は戦闘で破壊されない。

太陽でありながら、自らが焼かれると言う状況にThe SUNの断末魔が響く。



「The SUNは破壊され、その攻撃力3000のダメージをお前に与え、その守備力3000のライフを俺は回復する……!」



突き抜けた閃光が、魔神を侵す。

そのライフは太陽神から奪い去った攻撃力分も含め、33600ものライフを得ている。

絶対量から見れば、僅かなダメージだったろう。

だがその光は魔神の身体を焼き、その身に纏った鎧をも焦がしていく。



『ヌグァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!』



光に撃ち抜かれた魔神の絶叫が轟く。

これで奴のライフは30600。そして、俺のライフは5500。

ライフポイントが変動したことで、命の風の力を得たゴッド・ネオスの攻撃力も変動する。

その差分は25100ポイント。よって、攻撃力は、28100。



「ゴッド・ネオスで、お前にダイレクトアタックだ――――!」



ゴッド・ネオスの周囲に六つの光が灯る。

炎の赤、水の青、風の緑、地の橙、光の白、闇の黒。

胸の前に翳した両腕の掌の中に、その六つの光は集っていく。

全ての属性を束ね、叩き込む究極の一撃――――!



「レジェンダリー・ストライクッ――――!!!」



閃光が奴を塗り潰す。

紡ぎあげて来たこれまでのデュエルが、その一撃に力を与える。

E・HEROエレメンタルヒーローを超え、神すらも超え、その力は留まる事を知らずに膨れ続ける。

奴の悲鳴すら呑み込む光の奔流。

宇宙全てを満たす衝撃波が発生し、俺の身体も、Xごと弾き飛ばされた。



しがみ付いた腕には、いい加減力が入らない。

だが、まだだ。まだあいつのライフは2500残っている。



光の晴れた先、奴は満身創痍の身体で立っていた。

ただでさえ砕けていた鎧は、最早見る影もないほどに損傷している。

破損した冠から覗く頭蓋で、弱々しく光る真紅の双眸。



「エンドフェイズ―――エアー・ネオスの効果を得ていた、ゴッド・ネオスはデッキに戻る」



神の威光を宿す戦士は、ゆっくりとその姿を消失させた。

ゴッド・ネオスはただ除外したモンスターの効果を得るのみ。

E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス”及び“E・HEROエレメンタルヒーロー ネオス”を素材とするモンスター。

明確に素材として指定していないゴッド・ネオスは、それらに加護を与えるネオスペースの後押しを得られない。



『オ、』



骸が呻く。

その双眸が今までにないほどに強く、真紅の閃光を放った。



『オノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレェエエエエエエエッ!!!!

 コゾォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』




再びキラー・スネークの石板が奴の場に浮かび上がり、燃えた。

墓地のThe SUNが蘇る。そして、生還の宝札により更なる手札の追加。



漆黒の鎧に包まれた太陽は、しかしネオス・ワイズマンの攻撃力と互角。

だが、相討ちに持ち込んだとしても賢者の能力。攻撃力分のダメージは発動し、奴のライフを奪い取る。

そして、俺の手札には戦闘ダメージを0にできるクリボー。

効果で破壊できないネオス・ワイズマンを奴が例え、戦闘でネオス・ワイズマンを破壊。

かつ俺のライフを全て奪える攻撃力8500以上のモンスターを出しても凌ぎ、ワイズマンの効果で俺の勝利―――

奴がこのターン何もしなければ、次のターンでネオス・ワイズマンでThe SUNに仕掛ける。



俺の、勝ちだ―――――!!



『ワタシハ“再融合”ヲ発動! 800ポイント支払イ、墓地ノ“青眼ノ究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン”ヲ特殊召喚!!

 ソシテ、1000ポイントノライフコストデ“イタズラ好キナ双子悪魔”ヲ発動!!

 キサマノ手札ハ2枚シカナイ! ソノ手札ヲ全テ墓地ヘ送レ――――!!!』


「………っ、だがこれでお前の残りライフはこれで700だ」



冥府の底から現れたのは、三頭を持つ巨大な白竜。

その召喚に成功した瞬間、生還の宝札によって更なる手札が1枚追加。

ネオス・ワイズマンを攻撃力では上回るが、攻撃すれば魔神の命が尽きる。

クリボーの効果は使えなくなったが、究極竜アルティメットドラゴンの攻撃一度きりでは、俺のライフは残る。



『リバースヲ1枚セット……! ターン、エンド……!!』

「俺のターン…!」



これが最後のターン。奴のライフは700。

ネオス・ワイズマンの攻撃力は3000だが、その効果は戦闘破壊されても発揮される。

究極竜アルティメットドラゴンとネオス・ワイズマンの攻撃力の差は1500。

超過ダメージを受けても、俺のライフは4000残る。



だが、わざわざ攻撃力の高いモンスターを攻撃する必要はない。

再び攻撃するべきは、ネオス・ワイズマンと同等のThe SUN。

ネオス・ワイズマンに眼を向ける。首を縦に振る賢者。



「行くぞッ! ネオス・ワイズマン――――アァアアアルティメットォッ……!」

『コノ瞬間、トラップヲ発動スル――――――ククク、終ワリダ……コゾオォッ!!』



開け放たれる石板に描かれているのは、



宇宙が罅割れた。ネオスペースの空に亀裂が奔り、その光景が漆黒に包まれた。

The SUNの身体が漆黒の渦に巻き込まれ、消滅する。

そして同じように、ネオス・ワイズマンが次元の歪みに引きずり込まれていく。

しかし、その歪みに影響されず、残るモンスターが一体。

青眼の究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴン



「ネオス・ワイズマン……ッ!」

『フ、フハハハハハ!! トラップ・“ラストバトル!”ノ効果ダ!!

 ワタシハ“究極竜アルティメットドラゴン”ヲ指定シフィールドニ残シ、ソレ以外ヲ墓地ヘ送ル―――!

 キサマノフィールド・手札ノカードヲ全テ墓地ヘ送ル。サァ、デッキカラ最期ノモンスターヲ特殊召喚シロ――――

 サァ、サァ、サァ、サァサァサァサァサァサァサァアアア――――――!!!!』


「くっ……」



攻撃力4500のモンスターに敵うモンスターは、俺のデッキにはない。

ラストバトル! の効果はその特殊召喚したモンスターと、自分の場のモンスターを強制戦闘させる。

そして、このターンのエンドフェイズ。モンスターをコントロールしていないプレイヤーの敗北を決定する。

このターン、通常召喚の権利は残っているが、手札は当然0枚。

何の意味もない。



っ、ならばせめて、攻撃力4500の究極竜アルティメットドラゴンには破壊されないモンスター。

ロード・ランナーを召喚し、そのバトルフェイズをやりすごせば、このデュエルは引き分けに終わる。



「お、れは……」

『ククク…』

「俺が召喚するのは―――」

『マスター』



Xの声がする。

そちらに目を向けても、もう何も言わない。

息を吐く。ここまで来て、諦めていいわけがない。



「俺が召喚するのは―――――!」



崩壊する宇宙の中、水が弾けた。

恰幅のいい水色の鎧に、貯水タンクを背負った戦士が現れる。

両耳の辺りから角が伸びる仮面で、その顔を隠した水のE・HEROエレメンタルヒーロー



E・HEROエレメンタルヒーロー バブルマン!

 ラストバトル! の効果によるバトルフェイズは、入る前に特殊召喚時に発動する誘発効果を処理してからだ―――

 バブルマンの召喚時、手札・フィールドにこのカード以外のカードがない時、デッキから2枚ドローする!!」



これが、最後の希望。

デッキに眠る未来の力が、最後に導く俺たちの答え。



「ドロー!!」

『幾ラ足掻コウガ、コレガ最後ノバトルダ―――!

 青眼ノ究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴンノ攻撃――――!!

 アルティメット・バァアアアアアアアストォオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』




三頭の白竜の口腔に集束する閃光の渦。

バブルマンにはそれに逆らう術はなく、ただその破滅を待つ。

彼は最期に俺へと目を向け、拳を握り、笑った。

瞬間、消し飛ばされるバブルマンの身体。

余波が俺たちを吹き飛ばし、俺のフィールドを空にする。



『コレデ、終幕ダ――――!』

「そう。これで、終わりだ」



魔神の双眸の光が揺れる。



「俺のメインフェイズ2! ミスティック・パイパーを通常召喚!」



ワインレッドのコートを纏う笛吹きが現れる。

横笛を吹きながら踊る彼を見た魔神が僅かに呻き、しかしそれでも余裕だけは崩さない。



『互イガエンドフェイズニモンスターヲコントロールシテイル場合、

 “ラストバトル!”ノ効果は引キ分ケトイウデュエルノ結果ヲ齎ス―――歓ベコゾウ……

 ワタシト引キ分ケタキサマハ、我ガカードコレクションノ中デ最モレアリティノ高イ物トシテ扱ッテヤロウ!』


「ごめん、だね……! ミスティック・パイパーの効果! このカードをリリースし、デッキからカードをドローする!」

『ナニ……!?』



ミスティック・パイパーが縦笛を吹き鳴らす。

それは、俺の勝利を導く音色。消えていく身体で最後に俺を見た彼もまた笑う。



「ドロー! ドローカードは、レベル1のロード・ランナー!

 ミスティック・パイパーの効果により、追加でカードを1枚ドローする!

 これが、ラストドロー! ドッ、ロォオオオオオオオオオオッ!!!」



俺の手札、3枚。それらは築き上げて来た過去、そして続いて行く未来。

それらの力を全て集め、最後の、最後の攻撃!



魔法マジックカード、死者蘇生を発動!!!

 蘇生するのは、カァオス・ソルジャァアアアアアアアッ!!!」



蘇らせるため、墓地へと光を注ぐエジプト十字。

その光に当てられ、冥界へと繋がる孔が開く。

そこから現れるのは、混沌の力を宿す最強の剣士。

紫紺の鎧に身を包み、無骨な剣と荘厳な盾を構える者。



『フン……今更幾ラモンスターヲ出ソウガ、最早意味ハナイ―――!!!』

「そいつは、どうかな―――?」

『ヌ……!?』

「これが、最後のカード! 手札のロード・ランナーをコストに捧げる――――

 起動せよ、魔法マジックカード、超融合ォッ!!!」



渦を巻く。

砕けたネオスペースの残照が渦を巻き、十二次元を融合するほどの魔力が放たれる。

その効果は俺の周囲だけに留まらずに暴れ、魔神のフィールドまでも侵食していく。

荒れ狂う魔力の渦が、カオス・ソルジャー、青眼の究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴンを取り込む。



「俺は、自分の場のカオス・ソルジャーと、お前の場の青眼の究極竜ブルーアイズ・アルティメットドラゴンを融合する―――!」

『ナン―――ダト―――!?』

「超究極融合召喚―――――!!!!」



宇宙の底、異次元の彼方から閃光が迸った。

三頭の白竜が雄叫びを上げ、刃の如き鋭い巨大な翼を広げる。

その頸の付け根に紫紺の鎧を纏った剣士が、立ち誇っている。

それこそが究極の姿。

デュエルモンスターズにおいて、最も攻撃力の高いモンスターの一柱。



究極竜騎士マスター・オブ・ドラゴンナイトォオオオオオオオオッ!!!!!」



羽搏く白い翼が次元を切り裂き、俺の許へと舞い降りる。

その姿が背負うのは、俺の、俺たちの全て。

このデュエル。それだけではない、今までのデュエル全てをひっくるめた全てを―――



『バ、馬鹿ナァ……! ワタシノフィールドノモンスターガ……消エタァ―――――!!?』

「お前のラストバトル! の効果だ……エンドフェイズ、モンスターをコントロールしていないプレイヤーの……

 敗北けとなる――――!!!」



三頭の青眼ブルーアイズ全ての口腔に、白い極光が集束する。

そしてカオス・ソルジャーの振り上げた剣に、紫紺の極光が纏わった。



「これがラストバトルだ―――! 究極竜騎士マスター・オブ・ドラゴンナイトのダイレクトアタックゥッ!!!」



究極竜アルティメットドラゴンが三つの顎から同時に極光を解き放つ。

それに乗せ、カオス・ソルジャーが剣を振るう。更に解放される極光。

四条の光は混じり、絡み合い、一条の光芒と化す。

放たれた一撃は周囲に残っていたネオスペースの景色すら消し飛ばしながら、奴の許へと殺到する。

宇宙すら砕く、最後の一撃――――――!!!



「ギャラクシィイイイイイイイイイイイッ・クラッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!!」

『馬鹿ナ……神タルワタシガ……神ガ! 人間ノコゾウ如キニ、二度モォオオオオオオオオオオオオッ!!?』



極光が魔神の姿を呑み込む。

発生した衝撃がネオスペースの残照を残さず削ぎ取り、その光景を闇色に変えていく。

僅かに一瞬で消滅していく魔神の姿が消え去り、周囲の風景が元の、遺跡の中へと移り変わっていく。

漏れ出したギャラクシー・クラッシャーの衝撃で、崩壊していく遺跡内。

完全に遺跡の内部へと戻ってしまえば、そのまま生き埋めが必定。



「は、はぁっ……はぁッ……!」

『このままでは巻き込まれます。衝撃波を利用して加速、のちに転移を行います』



魔神がいた場所まで移動したXが、周囲に散らばっていたカードを吸引していく。

それを見て、一気に安心して、ただ縋りつくようにXの身体を掴む。

俺を振り落とさないように、慎重な、そして最大限の加速を。Xは行い、その機能を発揮した。

限界を越えた、俺の意識はそこまでだった。











『マスター……無事ですか?』

「死ぬほど、痛い」

『死んでいないなら、問題ないでしょう』



レッド寮の前で横倒しになり、転がっている俺とX。

全身の苦痛は未だ経験した事のないレベルで、俺の身体を蝕んでいる。

ため息にも、一苦労する。

部屋に戻るとか、そういうのは無理そうだった。

このまま冷たくて、ひんやりするバイクのボディの上で、夜を明かすより他はないだろう。



『膝枕が出来ればいいんですが』

「黙ってろ」



一喝。ツッコミはかかさない。いつのまにか、望んだのとは逆の配役である。

だがまあ、それもいいのかもしれない。

こいつに助けられた身としては(原因もこいつだが)、一歩引いてやろうと思わないでもないのだ。



「おやすみ」

『―――おやすみなさい、マスター』











ここからオマケ↓





「わーい、今日の最強カードのコーナーだよー。なーにっかな、なーにっかなー今週はーこれっ♪」

『週一で投稿してから言って下さい』



初めてのコーナー最初のツッコミ。それは一撃で俺のライフを0にした。

と言うかそれは主人公の俺で無くて、作者である馬鹿に言えと。

こんなコーナー書いてる暇があれば本編書いて続きを上げろ。

だが悲しいかな、ネタのみで構成されるこっちと、↑のシリアスでは労力が違うのだ。

ここから↓、全部合わせて20分くらいしか使ってないもの。

本編では20行しか進まない時間なんだ。



冴え渡る相棒のツッコミに溜め息を吐きつつ、俺は1枚のカードを取り出す。



「今日の最強カードはこれ!デデーン、“ラーの翼神竜”~テッテレー♪」

『四体纏めてこんがり焼かれてましたね、マスター。ウルトラ上手に焼けました』

「謝れ、みんなに謝れ!」



しかし無視。

強い子に育ち過ぎたらしい。



『ではデジモン風に私が読み上げます。

 ラーの翼神竜

 究極体。GB版遊戯王DM4では、何故か城之内のカードとして扱われていたモンスター。モンスターではない、神だ!

 墓地のモンスターを蘇らせ、相手モンスターのコントロールを得る謎の効果を持っていた。

 これは三幻神全てに言えますがGBA版DM8ではアホみたいに強く、これぞ神!

 と言わんばかりの強さを誇っていたが、ご覧の有様である。

 ちなみにGB版全てに言えますが、手に入れるまではクソかったるいです。

 今のWCSではゲーム性がちょっとずつ改善されてますが……

 TFがいかに優しいゲームかよく分かります。

 GBA版とかやってると、ムカムカは盟友と言いたくなります。基本最初のエースです。

 目指せデュエルキングとかは追放開闢種ショッカーの無限リミ解コンボで楽でしたね。

 詰んだら滅びのバーストストリーム三積みしてしまえ。

 必殺技は背中のリングにエネルギーを集め、それを口から放つ“ゴッド・ブレイズ・キャノン”

 そして、対象とされたモンスターは神であろうと魂ごと焼き払う“ゴッド・フェニックス”

 オベリスクは対象にとれませんが。そしてラーは何故か対象にとれる謎。

 そんなだからくず鉄流星に攻撃できないんです。



 効果モンスター

 レベル10/神属性/幻神獣族/攻 ?/守 ?

 このカードは特殊召喚できない。

 このカードを通常召喚する場合、自分フィールド上のモンスター3体をリリースして召喚しなければならない。

 このカードの召喚は無効化されない。

 このカードが召喚に成功した時、このカード以外の魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。

 このカードが召喚に成功した時、ライフポイントを100ポイントになるように払う事で、

 このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。

 また、1000ライフポイントを払う事でフィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。



 これを見たデュエリストたちは口を揃えて言う、どうしてこうなった。

 そしてこれをボスキャラのエースとして登用しようとしたのは、作者の愛。ラーカッコいいよラー。

 Vジャンプ付属カード人気投票でのコメント「今でもこのカードを使ってます」が嫌味にしか聞こえないよラー。

 クイラはインティの為にいるのではない。ラーのためにいるのだ。

 さあ、ライフストリームもこっちにおいで』



ライフが回復すればいいといいたげである。

それより時械神サディオンがOCG化すれば、もっと簡単にライフ4000に出来るぜ。

GB版懐かしいよな。クリボーで青眼を戦闘破壊できたあの頃が懐かしい。

幻想魔族は数がいないから黒魔族が弱点を突かれる事は殆どない。

その発展がカタストルかと思うと泣きたくなるが。



「明らかに必要のない部分まで語るな。そして俺のボケる暇を残せ」

『やです、せっかくの出番なんですから。私、今回ずっと踏まれてたんですよ。

 あの溶岩筋肉達磨竜が傍にいるのが熱いのなんのと』



ぺかぺかとライトが光る。

溶岩筋肉達磨とか言うな。お前、三体連結を方法は知らないが倒して見せたメテオブラックさんディスるなし。

攻撃力4500で8回攻撃だぞ? そんな化物倒すとかマジパネェ。方法は知らないが。



『海馬瀬人を使ったんですね、分かります。東映版だけに』

「本田にも負ける。って、やかましい。お前キャラ変えすぎだ。

 本田はあれだ、レベル100に進化して殴り倒すんだ」

『それはコブラです。ヴェノミナーガは召喚条件に見合った強さ持ってるのですが。

 あとそれはマスターのせいですけどね。私のキャラが変わっても、私のマスターは貴方以外には変わりません』

「コブラって名前自体で既に強そうだよな、左腕がサイコガンになってそうで。そしてデレるな気持ち悪い」

『ひどい。泣きますよ』

「どうやって」

『目の前が涙で霞んで前方不注意走行します』



唸るエンジン。点灯するヘッドライト。

何故かワイパーも動く。かしゅかしゅ、やめろ…そんなことしちゃいけない。ワイパーゴムが駄目になる。

ぶるるぅんと咆哮を上げたバイクの前に、俺は即座に遁走を開始したのであった。







後☆書☆王



幾つか感想板での質問の答え。

アンデビ様

>>最後のブラックパラディン出す前に遊戯がブラマジガールと混沌魔術師で攻撃宣言してたから、

 それを中止してバトルフェイズ終了メインフェイズ2でブラックパラディン出したんだから攻撃無理じゃね?

A.あれはバトルフェイズではなく、メインフェイズでのディメンションマジックの破壊効果です。

  原作の雰囲気的に「合体魔法攻撃」と言わせたかっただけです。



ガトー様

>>主人公がハイランダーしか組まないのに主人公のカードであるサイバードラゴン、

 キメラティックフォートレスドラゴン、マシンナーズフォートレス等が複数枚投入されている。

 (デッキではなくカードプールごと落とした?

A.主人公が組んでいるのはハイランダーではなく、ファンデッキ。カイザー亮ならば当然サイドラは三積みです。

  ただ今回のはカードプールごとっぽいですね。「機械族」を入れたキャリングケース丸ごと落としたんじゃないですか?

  「(ヘル)カイザー亮」のプールは無事でしょう。

  主人公はキャラ別に分け、余ったのは種族ごとに分けて収納し、あまりそちらを使用していなかったので、

  一緒に転移してきた事にあの時気付いたのでしょう。

  と、いう設定を今考えた。



モンスターカード(26)



遊戯系モンスター(4)

熟練の黒魔術師

ブラックマジシャン

ブラックマジシャンガール

カオスソルジャー



十代系(ユベル含)モンスター(15)

フェザーマン

バーストレディ

クレイマン

スパークマン

バブルマン

プリズマー

ダンディライオン

ネオス

フレアスカラベ

エアハミングバード

グランモール

ネクロガードナー

ユベル

ファントムオブカオス

ネオスワイズマン



遊星系モンスター(7)

ジャンクシンクロン

ボルトヘッジホッグ

ターボシンクロン

クイックシンクロン

ネクロディフェンダー

ミスティックパイパー

ロードランナー



魔法カード(21)

調律

融合

超融合

融合回収

おろかな埋葬

オーバーソウル

ワンフォーワン

ネオスペース

ディメンションマジック

コンタクトアウト

貪欲な壺

二重魔法

ライトジャスティス

ヒートハート

エマージェンシーコール

高等儀式術

ハーフシャット

クリボーを呼ぶ笛

魔法石の採掘

ミラクルフュージョン

死者蘇生



罠カード(9)

和睦の使者

リビングデッドの呼声

ヒーローバリア

スーパージュニア対決!

くず鉄のかかし

エンジェルリフト

活路への希望

攻撃の無力化

正統なる血統



エクストラデッキ(10)

究極竜騎士



フレイムウイングマン

フレアネオス

エアーネオス

ゴッドネオス



フォーミュラシンクロン

ドリルウォリアー

スターダストドラゴン

シューティングスタードラゴン

ドラゴエクィテス





や☆り☆す☆ぎ☆た

50枚とかどういうことなの……ハイランダーってレベルじゃねぇぞ。※修正後は51枚。

光速デュエルにもほどがある。これでたった15ターンとか。遊星はあれで25ターン使ったんだが。

勿論デッキは60枚です。それでも足りないという。むしろ残りの10枚は何だ。

究極竜騎士入ってると言う事は、魔神王とか入ってるのかな。

何で回ってたんだこれは? つーかチューナー3枚しか入ってないのに3回攻撃ってどうよ。運命力だね。

最後のレベル1はセイヴァーとロードランナーで悩みどころだった。

ロードランナーの方が綺麗に纏まってる気がしたので。



エクストラデッキは空きが5つ。

……まあジャンクやセイヴァーでしょうか。シャイニングフレアやエリクシーラーか?

ネオスナイトは入っていそうだ。スカラベモグラがいるからマグマあるのかな。

マグマ入ってるなら出したかったなぁ……

何でこんなに重いかって、HEROとネオスペーシアンが混合だからだよね。

ユベルまで入ってるし。いや、そもそもそれ以前だけど。



そして天よりの宝札便利すぎて泣けてきた。

始まってから6ターンで3回使われてるとか。意味不明すぎる。

主人公なんかそれに加えて活路への希望でアホみたいにブーストかけてるし。デッキ切れで負けるかと思ったわ。

互いにビートダウン。総ターンは15ターン。何故にデッキ切れを起こす?

正直、まだやりたかったがデッキがないからしょうがないね。

三極やらトラゴやらシュノロスやらネオスフィアやらアンドロジュネスやら地縛神やらトゥルースも出したかったが……残念。

それなりに出来たと思うがイマイチ消化不良な結果…



まあこの色んな意味で超融合なデッキはしばらく封印でしょうがね。

次はGX編だし……うーん、DM系のファンデッキがいいな。

究極完全態VSゲートガーディアンとかやってみたくはある。

キモい絵面なんだろうなぁ。



スピリット+シナトとかよくわからないデッキとかも書きたいかもしれない。

それよりはエアトス書きたい。でもDM時代はドーマ編から始まるんだろうしなぁ。そこまで我慢?

536ネクロスとかやってみようか。ネクロス出すより墓地のパーツ回収した方が早いし確実だけど。

いっそストラクチャーデッキ2011をそのまま使ってしまうか。

うーん、まあ基本は漫画HEROでいいか。最終巻に付いてくるだろうマアトを楽しみにしつつ。

漫画丈目だと光と闇以外のエースがシンクロになっちゃってるせいで……



そうそう、あと原作デュエルどうします? 正直メンドク(ry

実際ちょこっと出しただけの「死者蘇生でフレイム・ウイングマンを墓地から召喚!」のシーンですら悩んでましたよ。

どうしたもんかなぁ、と。そのまま書くのは簡単ですが、前回ちゃんと融合HEROは墓地から出ない演出入ってるし。

ミラクルフュージョンでシャイニングフレア出すのが一番手っ取り早いのは秘密。



とりあえずテーマはこれまでの3話分総決算。コンセプトは超融合! 時空を越えた絆。DVD楽しみ!

メインは特に決めず歴代主人公のエース+ボスのエース(太陽?)。キーモンスターは究極竜騎士。

メッセージはなし。今までの主人公ズと闘って受け取ったメッセージに対する主人公なりの答え。



第一部ボス、みたいな立ち位置で出て来た魔神さんマジトラウマ。

なんだが、ぶっちゃけセト3戦目と比べるとまだやり易い、みたいな?

そもそもポケステ使ってれば無理ゲーではないし。真の姿のせいで巨大化が入ってないんですよね。

ゲームシステムのせいだが、単調なイメージしかないので、デュエリストレベルはかなり低めに設定。神(笑)です。

高く設定したら主人公勝てないしね! 主人公(笑)



一応今回の世界は、DM時代の並行世界。封印されし記憶世界の現代編。

フォルスバウントキングダム編とかやってみたいなぁ、オールキャラで。

ユギ+ジュダイ+カニVSセト+ジュン+ジャックってか。

あれだな十代ユベルの前世の話や伝説のシグナーの話と合わせて長編作れるぞこれ。



とりあえず究極嫁とメテオブラックはそっちのイメージから。残りはボスイメージですね。

インティクイラ、ウリア、The SUN、ラー、アバター。何だかいい感じに太陽で統一されてる気がしますけど。

ウリアは知らない。

だとしたらなおさら光のピラミッド使えなかったのがなぁ……多分入ってはいるんじゃないかな。



さて、今回は幾つ間違えたかな(笑)

間違ってるところ指摘募集中!



早速ご指摘! またテキストに書いてあるよ、学べよ俺。

ひふみ様よりのご指摘。
>>自身の効果で蘇生したボルトヘッジホッグは、墓地に送れないので強制終了のコストに使えません

>>ウリアが破壊できるのはセットされたカードのみなので強制終了を破壊できません

修正しました。ご指摘、ありがとうございます。


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