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No.26037の一覧
[0] 【ネタ】トリップしてデュエルして(遊戯王シリーズ)[イメージ](2011/11/13 21:23)
[1] リメンバーわくわくさん編[イメージ](2014/09/29 00:35)
[2] デュエルを一本書こうと思ったらいつの間にか二本書いていた。な…なにを(ry[イメージ](2011/11/13 21:24)
[3] 太陽神「俺は太陽の破片 真っ赤に燃えるマグマ 永遠のために君のために生まれ変わる~」 生まれ変わった結果がヲーである[イメージ](2011/03/28 21:40)
[4] 主人公がデュエルしない件について[イメージ](2012/02/21 21:35)
[5] 交差する絆[イメージ](2011/04/20 13:41)
[6] ワシの波動竜騎士は百八式まであるぞ[イメージ](2011/05/04 23:22)
[7] らぶ&くらいしす! キミのことを想うとはーとがばーすと![イメージ](2014/09/30 20:53)
[8] 復活! 万丈目ライダー!![イメージ](2011/11/13 21:41)
[9] 古代の機械心[イメージ](2011/05/26 14:22)
[10] セイヴァードラゴンがシンクロチューナーになると思っていた時期が私にもありました[イメージ](2011/06/26 14:51)
[12] 主人公のキャラの迷走っぷりがアクセルシンクロ[イメージ](2011/08/10 23:55)
[13] スーパー墓地からのトラップ!? タイム[イメージ](2011/11/13 21:12)
[14] 恐れぬほど強く[イメージ](2012/02/26 01:04)
[15] 風が吹く刻[イメージ](2012/07/19 04:20)
[16] 追う者、追われる者―追い越し、その先へ―[イメージ](2014/09/28 19:47)
[17] この回を書き始めたのは一体いつだったか・・・[イメージ](2014/09/28 19:49)
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[26037] 【ネタ】トリップしてデュエルして(遊戯王シリーズ)
Name: イメージ◆294db6ee ID:bf7f6dc1 次を表示する
Date: 2011/11/13 21:23










「レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンに、

 レベル3のクリエイト・リゾネーターとレベル1のアタック・ゲイナーをダブルチューニング!

 王者と悪魔、今ここに交わる。荒ぶる魂よ天地創造の叫びをあげよ! シンクロ召喚、スカーレッド・ノ」

「強制脱出装置で」



ひどい。せめて攻撃宣言だけでもさせてくれよ。

いそいそとフィールドに出したスカーレッド・ノヴァをエキストラデッキに戻す。

泣きたい。

手札が尽き、フィールドも制圧され、墓地利用出来るカードもない今、俺に為す術はなかった。



「……ターンエンド」

「じゃあ俺のターンな」



言いながらドロー。引いたカードも確認し、きゃつめはふふんと笑った。

どっちにしろ相手の勝ちなのでどうでもいいが、この期に及んで舐めプでもする気なのか。



「ダークバーストでミラージュ回収、で召喚。ネクロマンサーでビートル蘇生。

 ブリュとビートルでレモン、ミラージュでビートル二体蘇生でスカノヴァ召喚ね」



ふざけろこの野郎。



「トリシューラで攻撃」



で、使わねぇとか。せめて折角出したスカノヴァを使えと。

……まあどう足掻こうとどうしようもないので、ここで終わりである。



こんな感じで俺は都合38連敗を記録したのであった。







お前、引きいいのにデッキ構成最悪だよな。それが俺の相手をしていた相手の言である。

それはそうだ。基本的にキャラクターが劇中で使用したカードをピンで挿しているのだから。

これで良デッキとか言われたら意味がわからない。



そんなデッキでさえスカーレッド・ノヴァを呼び出せたように、回転率は何故かいい。何故か。

例えば同じストラクチャーデッキを使ってあいつとデュエルすれば負ける気はしない。

それはデュエルにおける運命力とでも呼ぶべき、稀有な、しかし実生活では何の意味もない才能だった。



むしろ、どうなデッキ構成でさえ一応デュエルのカタチに出来る。

そんな才能に恵まれたからこそこんなデッキしか作らなくなったのかもしれない。

別に嫌だとか、つまらないとか思っているわけではなく。

ここまで負け続けてちょっとへこんでいるだけだから、大したことはない。



前はあいつもファンデッキとかを使っていたから、勝敗は均等にとは言わずとも、分散されていた。

ところが今ではあれだ。ガチデッキが悪いと言いたいわけじゃないが、仲間内でそれしか使わないのはどうか。

もちろん相手の主張は俺の逆。勝ちたければお前もガチデッキを使え、って話だ。

もっともな話なので反論する余地もない。



「……こんなんじゃ、満足できねぇぜ」



ポツリと呟いてテーブルに伏せる。

明日も仕事があると言うにのんべんだらりとおこたでデッキの調整である。

何というか、どうしようもなく、楽しめなくなってきていた。



次の日の仕事も忘れ、その日はそのまま寝付いてしまったのであった。











翌朝、俺は目覚めたばかりで寝ぼけた頭を振りながら、がっつりとやっちまったと後悔していた。

窓から差し込む光を浴びて醒めた意識は、その光がどう見ても黄昏色だと言っているのだ。

昨日の夜から今日の夕方まで、仕事場から電話もあったろうによく寝てられたものだよ、ホント。



そう思い、電話越しに土下座をする覚悟をして、仕事場に連絡を入れようとした時。

異変に気付いた。



「どこだ、ここ……?」



くるりと首を回し、周囲を見回す。

完全に見覚え皆無な空間。どこ、ここ。



「ふむう、目覚めたようじゃな」

「?」



どこからか声がする。首を左右に動かしても姿は見えない。

と言う事は、上から来るぞ、気をつけろって事か。



「こっちじゃよ」



案の定、上からだった。

知らない天井から人が生えてきた。とかじゃない。そもそも屋根がなかった。

何というかここは廃墟だった。俺の癒しであるおこたとカード以外は俺の部屋のものはない。

屋根が無い、壁もボロボロの元住居って感じの様である。



屋根が無いのに上からでなく窓から夕焼け色が入ってくるのは何故か。

それはこの家の直上にある、なんらかの飛行物体が原因だった。

とりあえず俺はこの時点で現状が夢だと断定したのであった。



その飛行物体は空中で形を変え、俺の真横に落ちてきた。

夢断定している俺はその光景をぼけっと見つめ続け、落ちてきたそれが着地し、どっかんと風が巻き起こるに至って。



「うわっは」



と言う感じに驚いた。

着地した代物は、バイクだった。当然だが普通のバイクじゃない、だって空飛んでたもん。

カラーリングは白を基本色にし、トリコロールで飾ってある感じ。

その巨大さは最早バイクと言うより軽自動車みたいなもの。イメージはジェットスライガーだろうか。



その謎のバイクからひょいと、老人が頭を出してきた。

ハゲている。

そのハゲは俺を高みから一瞥すると、顎に手を添えてかかかと笑う。



「成功したか。出てきたのは思ったよりガキじゃが…

 ま、外見で当たり外れは分からんしのう。ひょうっ」



ひょうっと其処から飛び降りてくる爺さん。元気だな。

飛び降りてきた老人は膝を曲げて着地の勢いを殺し、実に華麗な感じで俺の前に降り立った。

その爺さんの外見はどう表現したものか、とりあえず汚らしい恰好であった。

服を着ている、よりはボロを身体に巻いているの方が正しいだろう。

身体は細く、骨と皮の間にちゃんと肉があるのかと心配になってくるレベル。



とはいえ、高所から飛び降り、無事に着地するのだから心配はいらないだろう。



「おい坊主。お前、デュエリストかね」



どうやら遊戯王の夢らしい。割に周囲はかなり荒廃しているのは、あれか。

滅びの未来の話を妄想した夢だからか。探せばアポリアとかいるのかもしれない。



「んー…そう、かな」

「なんじゃ、歯切れの悪い奴。まあいいわ、ほれこれをやる」



ぽいと何かを投げ渡された。取ろう、とは思ったのだが。

手を伸ばしたものの、するっと俺の手をすり抜けて床に落ちる何か。

…だっさ。老人に目を向けず拾う。



「何コレ、カードじゃん」



カードの名前は『ホープ・トゥ・エントラスト』

テキストは何も書かれていない。イラストは暗闇の中にある一筋の光、みたいな感じ。

老人に目を向けると、うむうむと大きく首を縦に振った後、後ろのバイクを指差した。



「ワシが最後の望みとして造り上げた最高のD・ホイールじゃ。お前に託そう。

 例え滅びがワシらの運命だったとして、ワシはそれを変えようとは思わないのだ。

 ま、お前にゃ何を言ってるか分からんのだろが」

「? 何で俺に」

「うん? 別に誰でもよかったよ、ただお前だったってだけじゃ。

 ただ思いついたから造って、どうせだから誰かに託そうとしただけ。ま、貰っとけ」



そうして早く乗れと言わんばかりに俺の背中を蹴飛ばすジジイ。

俺はどうせ夢だし仕方ないと、俺のデッキやらを拾って何故か横に落ちてた鞄に突っ込む。

何というご都合。サービス満点である。



立ち上がり、バイクに乗るためにごてごてした外装に足を乗せてよじのぼる。

運転席に座ってみる、という表現がバイクに正しいのかは知らないが、

っていうかこれをバイクと呼称していいのか。

そんな事を思いつつも、中を見渡してみる。



ハンドル、アクセル、ブレーキ、…見て分かりそうなものはそれくらい。

っていうか俺はバイクの免許持ってないし。

正面のモニターや、カード用のスペースはいいが、それ以外が分からない。

とりあえず渡されたカード、『ホープ・トゥ・エントラスト』をハンドルの近くにあるスリットにいれる。



「多分こうだろ」



正解。中央のモニターが点灯し、何やら凄い勢いで文字が流れていく。

意味は分からない。と言うか英語なので読めない。立ち上げてるってのは分かる。

それから2、3秒、このバイクの名前が表示され、そこで止まった。

多分終わったんだろう。



「ほれ、デッキはそこじゃ」



ジジイが横から口をはさみ手を伸ばし、指差した場所にデッキをセットする。

どういう仕組みか、何故かオートシャッフルされた。いつ見ても不思議なシャッフルだ。

そのままジジイの指示通りエクストラデッキもセット。



「余ったカードもどうせなら入れとけ、パネルのAnother sideじゃ。

 そこを押すとデュエルに使わんカードも仕舞っとける」



後ろの方から右肩の上辺りにカードの投入口が出てくる。

10枚くらいしか一度に入れられなそうだ。鞄に突っ込んだカードボックスには数百枚収納されているのだが。

とは言え、文句を言っても始まらない。

カシュン、カシュン、カシュン、カシュン、カシュン、カシュン、カシュン―――











延々十数分。やっと全部入れ終わった。

驚くべき事に、このバイクは俺が入れたカードを全て判別し、内蔵カードをモニターでリストしてくれている。

このモニターで検索して選択するだけで、そのカードだけ取り出せるそうだ。



「ま、大まかにはこんなとこじゃろ。後はシステムAXDくらいか」

「AXD? 何だそれ」

「お前をこの世界に呼んだ装置じゃよ」



そう言ってこの爺さんはパパッとモニターをタッチし、流れるような操作を見せる。

ニュートラルの状態からデュエル外の設定に入り、安全装置を幾つも解除し、最後に、

<System Advent "X" Duelist.>



「日本語でおk…」

「何をいっとるのかよう分からんな、お前は。

 とにかくお前を見つけた今、そいつは戦いたくてしょうがなかろう。

 だから探しに行くのじゃよ、こんなところではなく。もっと強いデュエリストのいる地へ。

 時空を超え、次元を超えてな」

「は…?」



いつの間にかジジイは飛び降りていた。

声をかけて今の言葉の意味を確かめようとしたが、既に遅かった。

急速発進。俺は何も操作していないというに。

モニターの速度メータがあっと言う間に100km/hを超え、200を超え。



(あ、死んだ)



俺の意識は振り切れた。











そうして再び目が覚めた時、夢は終わって…いなかった。

やっぱり廃墟だったが、大分趣が違うような気がするので同じ場所ではなさそうだ。

はぁ、と溜め息一つ。とりあえずシートの下辺りをまさぐる。

とりあえず風除けにヘルメットの一つや二つないものか。



「お」



あった。

ただ何故かアイシールドが色付きで中が見えない。

ちょろっと覗くと、中からは外がはっきりと見えるので大丈夫だろう。

というわけで被る。



ガシャッと。何か口の部分が閉じた。

まるで貴様らに名乗る名はないっ!と大見得を切ったロム兄さんのマスクの如く。

かなり驚いたが、息はできるし当たる風が減るのでまあ別にいいだろう。



バイクを通常走行モードにし、ハンドルを握る。

そうしてアクセルを踏み込めば、こいつは俺の思うがままに走るのだ。

グイッと踏み込んだアクセルに応じて速く。200km/hで。



爆進、衝突、大破壊。であった。

廃ビルに突っ込んだ俺はもう生きた心地がしなかった。

老朽化、だけではないだろう。なんらかの原因で弱っていたコンクリの柱を2、3纏めて粉砕。

中央にある大階段に真正面から突っ込むものだから上に昇るか、と思ったがぎっちょん。

階段を破壊してまっすぐ突き抜けた。

死ぬ気でハンドルを横に回すと、タイヤが横転する。



「は――?」



前後のタイヤが同時に横転。

そしてそのタイヤが回り続ける事によって、起こされる現象。



「――――!」



その場でバイクはスピンを始めた。

最初見た時ジェットスライガーと例えた。運転席もそうだったが、完全にそうだった。

アクセルを開放し、すぐさまブレーキング。



ガックン、と大震動の後。漸く初めてのドライブは終わったのであった。その間5秒である。



「ヘルメットがなければ即死だった…」



ふぅ、と汗をぬぐう仕草。ヘルメットの上からだが。

……今度は細心の注意を払いつつ、アクセルを踏み込む。

それでもかなりの加速で、壁をぶちぬいて表へと躍り出た。



そしてコンクリートの塊を吹き飛ばしながら突き抜けた先には、人がいた。



「――――」



唖然。そんな感じ。

恐らく轟音を聞きつけて来たのだろうが、流石にこれは予想外だったようだ。

当たり前だろう。



それはそうと、目の前の人間の姿だった。問題は。

赤いヘルメット。服装は青が目立っている。上着は肩に何やらオレンジ色の装飾があり、

そして何故か裾が重力を無視して跳ねていた。



つまり不動遊星である。未知すぎる。



「…デュエリストだな」

「お前は、何者だ…?」



とりあえず俺は遊星を指差し、カッコつける。

人を指差す事が無礼な行為だとは後で気付いた。

フルフェイスのヘルメット、巨大なバイク、邪気眼スタイル。怪しまない方が異常である。

しかし主人公相手に警戒される巨大なバイクに跨った仮面の男。

何となくボスキャラっぽくてカッコイイじゃないか。



「……デュエルだ(キリッ」

「何だと…? どういう事だ、何を考えている」



いや何も。折角だしいいじゃない。

デュエルモードに切り替えて、オートパイロットで走らせる。

これで遊星の方にデュエルの申請が行ってる筈だと思うが、どうなるかは分からない。



俺のバイクがまともに使用されていない、サテライトの道路に躍り出る。

D・ホイールが勝手にコースを設定し、それをなぞる走行を始めた。

ついてくるかどうか分からなかったが、遊星もそれについてきていた。いい奴だ。



「いきなり仕掛けてきてどういうつもりだ」



遊星は静かに俺を問いただす。

ここで答えるのは簡単だが、ここではデュエルで応えるのが正答だろう。



「お前もデュエリストならば、カードで訊き出せ」

「いいだろう。デュエルだ!」



何故OKしたし。普通無視するだろう。何というデュエル脳。

互いが手札を5枚ドロー。そして同時に宣言する。



「「スピードワールドセット! ライディングデュエル、アクセラレーション!」」



…遠慮なく叫べるってのは厨二にはありがたいな。

表示されてる画面には、先攻が遊星である事が示されていた。



「オレのターン、ドロー!

 ロードランナーを守備表示で召喚、カードを1枚セットし、ターンエンド!」



遊星がくわっという感じにカードを引き抜き、シュバっという感じでフィールドに出した。

何故火花が出るのか。いいチャージインだ!

遊星号の前に光が立ち上り、その中から青い鳥の雛みたいなのが出現する。

両の翼で顔を守るような体勢で浮かぶのはロードランナー。

ドローした時遊星が嫌な顔をした事で有名なモンスターだ。

そりゃ攻撃力1900以上のモンスターには戦闘破壊されないとはいえ、貫通ダメージ食らえば意味無いしね。



そういえばここでは裏守備表示で出さなくていいのか。ふむふむ。



「俺のターン、ドロー」



そうなってくるとまた戦い方も変わるような気がするけど。

まあおいおい慣れようと言うかこの夢はいつ終わるのか、起きたら忘れてしまうのだろうか。

残念だな。



モニターのスピードカウンターが0から1に。

…そういえばこれライディングデュエルか。俺のデッキSPもなければ通常の魔法も入ってるんだが。

既に薫るオワタ臭。



「スピード・ウォリアーを攻撃表示で召喚!」



先程のロードランナーと同じく、俺のバイクの前にも光が現れ、

その中からパワードスーツに身を包む戦士が飛び出した。

中に人入ってそうな感じがするけど実際どうなのだろうか、機械族でなく戦士族ではあるが。

でも足はローラーブーツって感じでもないんだよな、踵が丸々タイヤだし。



なんて、考えていたらスピード・ウォリアーがこちらに目線を送り、微かに首を傾げた。

―――なん、だと…? それはプレイを進行しないプレイヤーに対する遠回しな催促か何かか。

いやそんな事はどうでもいい、スピード・ウォリアーちゃんマジ過労天死。



「スピード・ウォリアー…」



遊星が俺の過労天死を見ながら僅かに戸惑う。

だってこのデッキ君のファンデッキだしね。



「バトル! 過ろ、スピード・ウォリアーでロードランナーを攻撃!」



俺に追従して走っていた過労天使、むしろ過労戦死が身体を横に捻りブレーキ。

盛大に火花を散らしながら減速した身体をロードランナーに向け、急加速。

ロードランナーが泡を食って、目を見開き、翼を振り乱している。あれもかわいいな。

過労戦死は相手の目前まで接近すると、転がり込むように身体を前に倒し、両手で身体を支え、脚を振り上げた。

多分今だ。



「ソニック・エッジ!」



回し蹴りを見舞う。その名の通り音速で放たれているのかどうかは知らないが。

その威力にロードランナーは耐え切れず、直撃した次の瞬間にはガラスの如く砕け、散っていた。

遊星がフィールドのロードランナーを墓地に送る。

それを見届けてから、手札からもう1枚。



「伏せリバースカードを1枚セット。ターンエンド」



一度走るバイクの前にカードが浮かび、見えなくなった。

遊星はその直後、俺を一気に抜き去り前に躍り出る。



「オレのターン!」



互いのスピードカウンターが2を刻む。



「ドロー!」



引き抜かれるカード。

遊星はそれを一瞥するとホルダーに固定し、手札の中からカードを選び取った。



「Spスピードスペル‐エンジェル・バトンを発動!

 スピードカウンターが2つ以上ある時、デッキからカードを2枚をドローし、その後手札を1枚墓地へ送る」



遊星号の前に開示されるカードのソリッドヴィジョン。

天使が胸の前で宝石を手で覆っているイラストのカード。

ライディングデュエル用の天使の施し下位だ。



スタンディングでは禁止になるほどのカード。いや立ってデュエルした事無いけど。

とにかくその効果は強力の一言。下位互換とは言え、それは変わらない。

手札交換の手に淀みはなく、何を引こうと墓地に送るカードは決まっていたのだろう。

墓地利用出来るカードは多く、ちょっと絞り切れないか。



墓地は公開情報? 何を言っているのか分からんな。



「カードを一枚セットし、スピード・ウォリアーを召喚!」



なん…だと…!

フィールドに揃った二人のスピード・ウォリアー。過労死が二人揃う事によって労災が下りる。



遊星の過労戦死がバイザーを煌めかせ、肩で風を切り参上する。あらやだカッコイイ。

流石に本家、俺などがやってみせるより遥かにカッコイイじゃないか。



「バトルだ!」



モニターにバトルフェイズ移行が表示される。

過労戦死が身を沈み込ませた。召喚されたターンのみの効果。それは、攻撃力の倍増だ。

既にその力を発揮出来る時間を終わらせている、俺の場の過労戦死では太刀打ちできない。



遊星は高らかに宣言する。



「スピード・ウォリアーでお前の場のスピード・ウォリアーを攻撃!」



ATK値は先述の通り倍の差。これは数値を競うカードゲーム。

気合いと勇気による補正などかかりはしないのだ。例え差が1であろうと、それは絶対の線引きだ。

相手は1800。そしてこちらが900。

無論、真正面からでは勝負になりはしない。



青い光を全身から放つ過労戦死が、一際大きく身体を沈めた。

それに反応して構えるこちらの過労。迎撃の体勢、これに何の意味があるのだろうか。

そんなことはさておき、遊星のスピード・ウォリアーが跳びかかる。



目前まで瞬間に距離を詰め、青い光を纏った脚を振り抜く。

だがこちらのスピード・ウォリアーもそのままではいない。

即座に後方に飛び退り、その一撃を躱してみせる



だから一体その行為に何の意味があるのかと(ry



「罠トラップ発動、くず鉄のかかし!」



すかさず追撃を試みようとした過労戦死の前に、突然くず鉄の寄せ集めで形作られたかかしが立つ。

加速に乗っていた過労戦死は止まれず、そのかかしにがっつんと頭部を衝突させて跳ね返った。



「相手モンスターの攻撃を無効し、再びセットする」



かかしの姿が消える。

くず鉄のかかしは、一度だけモンスターの攻撃を無効にするカード。

その最大の特徴は使用した後、再びセットするという効果だ。

基本的に一度発動したら墓地に送られるカードらとは違い、何度でも再利用する事が出来るのである。

とはいえ、罠トラップカードはセットされたターン発動出来ない。

つまりこのカードの効果は、1ターンに一度相手モンスター一体の攻撃を無効にする。

と言うと分かりやすい。



そしてかかしにごっつんこしたスピードちゃんマジアホカワイイ。



「――――」



そしてそろそろ蟹さんの無言の圧力が怖い。



「フフフ…」



フフフ…デッドエンドシュート

ではなくて、とりあえず笑ってごまかしつつ、俺のターン。

エンド宣言してないけど、モニターで俺のターンって言ってるんだから間違いない。



「俺のターン。ドロー」



スピードカウンターが3をカウント。関係無いけど。



「ジャンク・シンクロンを召喚!」

「やはりか」



何がやはりなのかはスルーする。多分きっと勘違いでござる。偶然でござる。



頭部のヘルメットを頭部に含めるなら、三頭身ほどの大きさ。

隙間から覗く間接は金属の骨格。

胴と四肢を覆う橙色の鎧を鈍く光らせ、純白のマフラーを靡かせながら、ハッ!と叫んではいポーズ。

どう見ても機械族です本当に(ry

何故戦士族なのだろう。ターボやニトロは機械族なのにね。



「レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング」



過労戦死が地につけていた足を離し、空中に舞う。

ジャンクロンが過労戦死の前に飛び出し、腹の左下に付けられたリコイルスタータを引く。

背負ったエンジンが始動する。ドルル、と唸るエンジンから光を放ち、ジャンクロンが弾けた。



弾けたジャンク・シンクロンの姿は三つの星になり、スピード・ウォリアーの周囲を回転する。

周りに星を纏わせたスピード・ウォリアーの輪郭のみを残し薄れていく。

光となった二体のモンスターが溶け合い、新たな光となり、別の輪郭を描き始めた。



で、シンクロ口上なのだが。

流石にそこまで遊星と同じの使うわけにはいかないし、どうしよう。

いいか、言わなくて。



「シンクロ召喚!」



輪郭から実像が浮かび上がる。

青色を基本色にした機械の戦士が、光の中から右腕を掲げ、舞い上がった。

頭部では赤いレンズの瞳が一対輝き、首にはジャンク・シンクロンと同じく白いマフラーが巻かれている。

特に目立つのは左腕と比べ大きく、力強いフォルムの右腕。

そして肩に背負ったブースターと翼である。



何度も言うが、どう見ても機械族(ry

ともかく。



「ジャンク・ウォリアー!」



マフラーを風に靡かせながら、俺の隣に並び飛行する戦士。

何か味気のない召喚だと思うが、仕方ない。



「バトルだ! ジャンク・ウォリアーでスピード・ウォリアーを攻撃!」



マフラーが翻る。カメラアイを一度強く輝かせ、ジャンク戦士は拳を腰溜めに構えた。

どの辺りがジャンクなのかは知らない。

肩のブースターが炎を噴き出し、上空へ向かい、大きく飛び上がった。

俺の頭上へ舞い上がり、一瞬停滞した後にスピード・ウォリアーを見据えて再加速。



「スクラップ・フィスト!」



溜めた右の拳を突き出す。一際ブースターが吐き出す炎が盛った。

スピード・ウォリアーを目掛けたその攻撃は、さながら青い流星。



しかして、スピード・ウォリアー一方的に破壊されるのを待つだけではない。

何故か。意味無いのに。

その速さ、回避は出来ぬとは悟ったのか咄嗟に両腕を胸の前で交差させ、守りの姿勢に。



スピード・ウォリアーの攻撃力は900、対してジャンク・ウォリアーは2300。

その差、1400。これだけの力量差、如何なる手段を持っても覆らない。

わけではない。ライジング・エナジーでもあれば覆る。

だが例え覆せる手段があろうと、実行できなければそれはないも同じ。

デュエルはモンスターだけでは勝てない、魔法マジックだけでも。罠トラップだけでも。

それは一体誰の言葉で、誰に送られた言葉であったか。



正面から二体が激突。防御の姿勢は一秒持たず、両腕が弾け飛んだ。

ジャンク・ウォリアーに比べて細く、小さな体はまるで木の葉の如く吹き飛ばされた。

吹き飛んだ身体は一直線に遊星へ向かう。

攻撃力の差分、1400ポイントのダメージは、モンスターを従えるプレイヤーに向かうのだ。



「罠トラップ発動! ガード・ブロック!」



遊星の目前でスピード・ウォリアーが爆散する。

爆風は遊星を呑み込むように吹き荒れて、しかし一瞬後には何もなかったかのように消し去られた。



「相手ターンに発生した戦闘ダメージを一度だけ0にし、その後カードを1枚ドローする!」



なんて奴だ、スピードちゃんをおとりにしてカードをドローするなんて。

これはもう労働基準法を違反しているとしか思えない。



遊星がカードを1枚ドローする。



「フフフ…カードを1枚セットしてターンエンド」



何となくフフフ…が気にいってしまった俺である。



「オレのターン、ドロー!」



スピードカウンターが4つとなる。

ドローしたカードを横目で一瞥し、手札のカードへと目を向けた。

その状態で約3秒、そして再び視線を前に向ける。



引いたカードを手にしたまま、手札用のホルダーから更に2枚引き抜く。



「ボルト・ヘッジホッグを通常召喚!

 更に手札からモンスターカードを1枚墓地へ送り、クイック・シンクロンを特殊召喚!」



背中からボルトを生やしている丸々とした黄色いネズミが出現。

きゅ、と一鳴きして丸まった。姿が青く染まるのは、守備表示の証だ。



更に光の中で赤いマントが翻る。

ジャンク・シンクロンによく似た姿、青い身体を持つチューナーモンスター。

目深に被ったカウボーイハットのつばを指で弾き、片目をさらす。



そのつばを弾いた指で銃を象り、BAN☆とポージング。

なにあの子かわいいんですけど。



「墓地のレベル・スティーラーの効果を発動!

 フィールドのレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げ、特殊召喚する!」



立ち上る光の中から、テントウムシに似たモンスターが現れる。

クイック・シンクロンの身体が輪郭だけに薄れると、その内部に5つの星があった。

そのモンスターは、薄れたクイック・シンクロンの中の星の1つに衝突し、吸収する。

と、同時に何の模様も描かれていなかった背中に、大きな☆マークが浮かび上がった。



クイック・シンクロンが再び色を取り戻し、マントを靡かせる。



あれは今墓地に送ったカードか、それともエンジェル・バトンの効果で送ったカードか。



「レベル1のレベル・スティーラーに、レべル4となったクイック・シンクロンをチューニング!」



赤いマントを跳ね上げ、腰部にある赤と緑と青、三つのライトを点灯させる。

正面に映し出されるのは光のルーレット。

ジャンクに始まり、ターボ、ニトロ、ハイパー、ロード、チェンジ、ドリル、ブライ…

様々なシンクロンのカード画像が映り、それが高速で回転を始めた。



その高速回転を過たず捉えているガンマンが、瞬時にガンベルトから銃を抜き、撃ち放つ。

渇いた銃声の後に、ゆっくりとルーレットが止まる。

撃ち抜かれていたカードは―――



「集いし星が、新たな力を呼び起こす。光さす道となれ!」



中心に風穴を空けられたジャンク・シンクロンのカードが表を向く。



同時にクイック・シンクロンの身体は四つの星となり、レベル・スティーラーの周囲に取り巻く。

レベル・スティーラーは身体を透けさせ、緑色の光の輪郭のみを残している。

その中で星は溶け合い、新たな姿を形作る。



「出でよ! ジャンク・ウォリアー!」



赤いレンズの瞳。青い身体。巨大な拳に、肩のブースター。

再び、互いのフィールドに同じモンスターが並ぶ。



「ジャンク・ウォリアーの効果発動!

 フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力を、自身の攻撃力に加える!」



ジャンク・ウォリアーが拳を振り上げ、握り込む。

隣に存在する丸まっているボルト・ヘッジホッグから、青い光が溢れ、その拳に宿された。



「フィールドのレベル2以下のモンスターはボルト・ヘッジホッグ。

 その攻撃力分、800ポイントがジャンク・ウォリアーの攻撃力に加算される。

 パワー・オブ・フェローズ!」



効果を発揮していない俺の場のジャンク・ウォリアーの攻撃力は元々通りの2300。

その攻撃力に遊星が宣言したように、ボルト・ヘッジホッグの攻撃力分が加算され、3100となる。



カメラアイが発光し、全身を青いオーラに包まれたジャンク・ウォリアー。

今にもここからいなくなれーと叫んでスイカバーを叩き付けてきそうだ。



「伏せリバースカードを1枚セットし、ターンエンド」

「どうした、攻めてこないのか」



またフフフ…である。

そしてどうした、変身しないのか? もといどうした、合体しないのか? である。



「挑発か、オレがくず鉄のかかしの効果を知らないとでも思っているのか?」

「フフフ…そうだったな」



俺が忘れてた。いや、ソリッドヴィジョンに夢中になってた。

遊星からの視線がきつくなり、俺は逃げるように視線を逸らす。



「俺のターン、ドロー!」



スピード・ワールドに乗せられたカウンターは5つに。



「フフフ…折角のデュエル、このまま同じモンスターを召喚しあっても平行線。

 その流れを俺が変えてやろうじゃないか」

「何?」



ニヤソと笑う。サテライトを一人で走ってるくらいだから、多分時代設定はフォーチュンカップ前だろう。

折角主人公とデュエルするのだから、内容もそうだがシチュエーションにもこだわりたいところ。

そんな状況では、いいモンスターを呼び込んだ。



「ドリル・シンクロンを召喚!」



出現するのは球体。ブラウンのボディには二つの眼と、頭頂部のドリル。

そのボール状のボディから伸びる細いアームドリルが二本に、脚の代わりにキャタピラ。



「ドリル・シンクロン…?

 だが、そのモンスターではジャンク・ウォリアーは倒す事も、新たなモンスターを呼ぶ事も出来ない」

「フフフ…俺の場のモンスターはレベル5のジャンク・ウォリアーと、レベル3のドリル・シンクロン。

 いるじゃないか、一体だけこの二体のモンスターで呼び出せる、レベル8のドラゴンが」

「なん…だと…!」



なん…だと…! いただきましたー。

驚愕の遊星を一瞥し、それを宣言する。



「レベル5のジャンク・ウォリアーに、レベル3のドリル・シンクロンをチューニング!」



ドリル・シンクロンの三つのドリルを高速回転させる。

三つのドリルの回転が限界まで高められた瞬間、その身体が三つの星と化した。

星は光のリングとなり、ジャンク・ウォリアーが駆け抜ける道を構成する。



ブースターを噴かせたジャンク・ウォリアーがリングの中に飛び込む。

三つのリングが並ぶ空間の中心まで到達した所で、輪郭のみを残して薄れていく。



「フフフ…シンクロ召喚」



すごくフフフ…が気にいってしまった件について。

何も言わないよりそれっぽく演出になるので、いいのではないのだろうか。



光が全てを包み込んだ。8つの星が集束し、巨大な光の柱となる。

その溢れる光の中から、白銀が光を切り裂き躍り出た。



「フフフ…スターダスト・ドラゴン」



先鋭なフォルム。白銀の翼を羽ばたかせ、それは降臨した。

白銀と青色染みた銀色の身体。胸と肩の一部に半透明、サファイヤの如き深い青色の輝きが見える。

細身の身体は力強さよりも、その速さを如実に物語っている。



「スターダスト…ドラゴン…! 何故お前がこのカードを…このカードは」

「フフフ…いるじゃないか、一人だけこのカードを持っている、お前の知るデュエリストが」



すごくデジャヴ。直前に全く同じセリフを言ってた予感。

そしてそろそろフフフ…が何か別のものに見えてきた。ゲシュタルト崩壊でござる。



「まさか…ジャックから」

「ハァン…それはどうかな?」



それはどうかな?と言えるデュエル哲学。著:エド・フェニックス。

間違ってるだろうけど気にしない。



手札用のホルダーからカードを1枚引き抜き、セット。

そしてターンエンドの宣言をする。



「言った筈だ、デュエリストならばカードで問え(キリッ、と…」



言ったっけかな、と思いつつ一言。

多分に動揺していた遊星は、その一言で平静をある程度取り戻した様子だった。

例えこの状況がどうだろうと、今自分に出来る事は一つだけ、そう―――



「ならば、このデュエルで問い質す! 俺のターン!」



矢張りデュエル脳。

普通はここで警察に行く。誰だってそうする、俺だってそうする。



スピードカウンターは6。そろそろもういらない感じ。

スピードワールド2の効果があれば盛り上がるんだが、残念な事に今はないのだ。



「きた―――」



遊星の口端が微かに上がった。

これは、脳内BGM♪遊星バトル安定である。



「手札からSpスピードスペル‐サモンクローズを発動!」



―――む。



「スピードカウンターが4つ以上ある時、手札を一枚墓地へ送り、デッキからカードを一枚ドローする」



言葉の通り、カードを一枚墓地に送ってからドローをする遊星。

サモンクローズはルチアーノが使ってたカード、の筈。

確かあれは…



「フフフ…なるほど。スターダストの事はよく知っていると言う事か」

「更にSpスピードスペル‐ハイスピード・クラッシュを発動!」



連続スピードスペル。

このコンボにおける目的は、完全にこちらのエースを封殺する事。

流石に緊急事態にも対応が早い。



「自分のスピードカウンターが2つ以上ある時、自分の場のカード1枚と、

 フィールド上のカード1枚を選択し、破壊する!

 選択するのは俺の場の伏せリバースと、お前の場のカード、くず鉄のかかしだ」

「サモンクローズはこのターン、俺の特殊召喚を封じるカード。

 ハイスピード・クラッシュからカードを守れば帰還出来ず、しかし見過ごせばジャンク・ウォリアーの攻撃に対応出来ない」



遊星号の目前に消えていた伏せリバースが姿を現す。

加速しそのカードを踏み潰した遊星号のホイールが光を纏った。



その効果には割り込まない。

ホイールが回転するごとに大きくなる光が、こちらの伏せリバースに向けて放たれた。

光輪がくず鉄のかかしを踏み潰し、光片を巻き上げて共に砕け散る。



「リミッター・ブレイクが墓地へ送られた時、手札、デッキ、墓地からスピード・ウォリアーを特殊召喚する!」



墓地から出てきたスピード・ウォリアーを遊星が抜き放つ。

モンスターゾーンに火花を伴って置かれたカード。



召喚されたスピード・ウォリアーは両腕を交差さえ、守備の体勢をとる。

スピードかわいいよスピード。



「フフフ…ハイスピード・クラッシュを先に使い、俺にスターダストの効果を使わせた上で、

 サモンクローズを使えば、確実にスターダストを封じる事が出来るだろうに」

「バトルだ! ジャンク・ウォリアーでスターダスト・ドラゴンを攻撃!」



遊星に追走していたジャンク・ウォリアーが急停止し、スターダストに向き直る。

肩のブースターを吹かし、青く光る拳を握り込んだ。

カメラアイが一閃、赤光を放つ。



「スクラップ・フィストォッ!」

「迎え撃てスターダスト!」



迎え撃って一体どうなると言うのか。

銀竜が両翼を身体を覆うように折り畳み、拳撃を受け止めようとする。

スターダストの攻撃力2500。対してジャンクの攻撃力は3100。

何度も言うまでもなく、全く勝負にはならない。



勿論、モンスターの能力だけで比べた場合は、だが。



「罠トラップ発動、奇跡の軌跡ミラクルルーカス!」



身を守るスターダストの翼に、拳が叩き付けられる。

一瞬の拮抗は、しかし仕掛けた側が押し返された事であっさりと崩れ去った。

発動した奇跡の軌跡ミラクルルーカスは翼に光を纏わせ、その能力を飛躍させる。



底上げされた攻撃力はジャンク・ウォリアーのそれを超える3500。

ブースターを噴かせ、吹き飛ばされる勢いを押し止めたジャンク・ウォリアーを、スターダストが追撃する。

迎撃しようと突き出された拳を潜り抜け、片翼が剣の如く閃く。



一閃。薙ぎ払われたジャンク・ウォリアーが爆発し、その姿が消える。



「モンスター一体の攻撃力を1000ポイントアップさせる」

「攻撃力を上げる罠トラップか」

「順番を違えたな」

「フ…それはどうかな?」



それはどうかな?と言える哲学(2回目)

舞い上がる爆風に視線を向けると、内部から大きな腕が突き出されてきた。

ジャンク・ウォリアーの腕である。



爆風を振り払い、再びその姿を現すジャンク・ウォリアー。

滑らかだった装甲に所々ヒビが走っているものの、それでも動くに問題なしと言わんばかり。

そもそもこの演出は必要なのかと小一時間(ry



「オレは墓地のシールド・ウォリアーの効果を発動していた!

 このカードをゲームから除外する事で、モンスターの破壊を無効にする!」



出た、発動していた(事後宣告)

いや、別にいいだけどね。オネスト・カルート「ダメージ計算いいですか?w」よりは遥かにいい。



「シールド・ウォリアーの効果では戦闘ダメージは無効にされない。だが…」

「知っているさ!(ジャック風。奇跡の軌跡ミラクルルーカスの効果で戦闘ダメージは0となる」



くず鉄のかかしという後々まで残る禍根を断つ事を優先し、スターダストは戦闘による排除で対応する。

俺の伏せたカードに対する警戒を含め、墓地利用の出来るカードも充実させた上で。



「お前の奇跡の軌跡ミラクルルーカスの効果で、カードを1枚ドロー。

 ターンエンド」



何と、俺が経験したデュエルでここまで互いの戦術をもっての鬩ぎ合いがあっただろうか。

思えば最近、俺が仲間内で行ってたデュエルはまあ…

俺がデッキの組む時妄想していたカッコイイコンボ集を実現しても、それは一枚のカードで引っくり返る。

例えばちょっと前の強制脱出装置みたいに。



いや悪いわけじゃないけどどうにもそうじゃないような的なあれだから…ねぇ?



「俺のターン、ドロー!」



スピードカウンターが7つ。大体意味がない。



うむ。イマイチむず痒くなるような戦況だ。

言ってもこちらから攻め入れるようなタイミングではないので、行えるのは牽制だけか。



「バトル! スターダスト・ドラゴンでスピード・ウォリアーを攻撃!」



白銀の龍は翼を一度羽ばたかせ、俺に追走する体勢から、攻撃をするための体勢に変わる。

キィン、と鳴り響く息吹の前兆。



「シューティング・ソニック!」



スターダストの両の瞳が爛々と輝き、口腔の中に蓄えた、音波の奔流を解き放った。

周辺一体が、圧縮された音の波動を受けて軋みをあげている。

その威力は2500。スピード・ウォリアーどころか、常ならばジャンク・ウォリアーですら一呑みにする一撃。



しかしそこは我らがスピードさん。

音速の一撃を察知していたのか、即座にクイックターンを繰り、音波の軌道から逃れようとする。



紙一重。

火花を散らしながら切り返した脚は、掠める程度で攻撃を躱してみせた。

が、

スターダストが息吹を放出しながら、首を振るった。

薙ぎ払われるブレスは一文字に地表を削り、紙一重で命を繋いだ筈のスピード・ウォリアーはその軌道に巻き込まれる。

瓦礫と纏めて弾け飛ぶ崩れた道路には、スピード・ウォリアーの姿はない。



さらばスピードさん。



「カードを1枚セットし、ターンエンド」

「オレのターン!」



スピードカウンターは8。今やもうそんな事関係ないとばかりであった。



ドローしたカードを手札にホルダーし、別のカードを引き抜く遊星。

淀みも迷いも当然無い。



「シンクロン・エクスプローラーを召喚!」



赤色の球体である胴体から、その大きさに比して小さな四肢と頭部が生えている。

その特徴は何より、胴体の中心に穴が開いている事か。



「このカードの召喚に成功した時、自分の墓地からシンクロンと名のつくモンスター一体を、

 その効果を無効にして特殊召喚する事ができる! オレはクイック・シンクロンを特殊召喚!」



そう。その特徴たる穴は、墓地へ繋がる通り道。

フィールド行きのチケットを貰えるモンスターには条件があり、一体のみ。

かつ、その能力を大きく制限されるデメリットもある。



だがしかし、このモンスターが墓地より引き上げられるモンスターは大きな特徴を持つ。

それはチューナーである事。

呼び戻されたチューナー、そして呼び出したエクスプローラー。

この二体が揃ったのならば、次の一手は決まっている。



エクスプローラーの胴体から飛び出て来たクイック・シンクロンがマントを跳ね上げた。



「さらに、墓地のレベル・スティーラーの効果を発動!

 クイック・シンクロンのレベルを1つ下げ、特殊召喚する!」



クイック・シンクロンの身体から星が1つ飛び出し、それを光の中から現れた昆虫が吸収する。

背中に星を浮かべた一つ星テントウが、全身を青くして浮遊しはじめた。



シンクロ召喚を行う為のレベル調整。



「流石に攻め手が速いな」

「レベル2のシンクロン・エクスプローラーと、レベル2のボルト・ヘッジホッグに、

 レベル4になったクイック・シンクロンをチューニング!」



クイック・シンクロンの腰のライトが点灯し、映し出されるルーレット。

高速回転するそれを、カウボーイハットの下に顔を隠したまま、ガンベルトの銃を抜き撃ちした。

ゆっくりと停止するルーレット。



風穴が開けられたカードが、今回クイック・シンクロンの効果に選ばれたカード。

そのカードは―――ロード・シンクロン。



「集いし希望が、新たな地平へ誘う。光さす道となれ!」



ガンベルトに銃を納めたクイック・シンクロンの身体が弾け、4つの光の星となった。

短い脚部で精一杯跳躍したエクスプローラーと、きゅ! と一鳴きしてとび跳ねたボルト・ヘッジホッグ。

その二体を包み込むように、4つの星は光のリングと化した。



「シンクロ召喚!」



二体のモンスターも星となり、それがリングの中で一列に並んだ。

光の柱が現れる。合計8つの星はその中で一つとなり、新たな身体を得る。



薄い金色の鎧。鎧の下にはネイビーブルーのボディスーツ。

背中には幅広の剣のようなものを背負い、腕に三本の鋭い爪状の刃が取り付けられた手甲。

マッシブな形態は見かけだけでなく、そのモンスターの圧倒的攻撃力を示威している。

爛々と赤く輝く双眸が一際大きな光を放つと同時に、纏わりつく光を薙ぎ、腕を振るって見せた。



「駆け抜けろ、ロード・ウォリアー!」



オオオ、とエンジンの唸りの如き咆哮が挙がる。

遊星は二体の戦士に挟まれながら、俺の場のカードをDホイールのモニターで確認した。



恐らくは伏せカードの正体を探っているのだろう。

俺の場にはスターダストのみ。

ジャンク・ウォリアーとロード・ウォリアーが揃った今ならば、俺のライフを削り切れる。



ただしそれは、ロード・ウォリアーの効果を用いた場合だ。

ロード・ウォリアーは1ターンに一度、レベル2以下の戦士、機械族のモンスターをデッキから呼び出せる。

二体の攻撃で残る俺のライフは僅か400。

効果で呼び出せる低級モンスターの攻撃でも、止めを刺せるライン。

だがしかし俺の場にある伏せカードでスターダストの攻撃力が上がり、ジャンク、あるいはロードに反撃された場合。

返しのターンでその低レベルモンスターを攻撃力の上昇したスターダストで破壊され、

ライフを全て持っていかれる可能性もある。

こちらの攻撃を止められるカードがないのなら、確実を期してこのターンで性急な攻めを展開する必要はない。



―――デッキにマッシブ・ウォリアーが眠っているとすれば、迷う必要はない、筈だが。

あるいは手札に眠っているのか。



「バトルだ!」



選択するのは堅実な攻撃。有利なフィールドを持つ相手ならば、当然の選択だろう。

決戦を仕掛けてこないならば、同時にこちらも対抗する必要はない。



「来い、不動遊星!」

「行け、ロード・ウォリアー! ライトニング・クロー!」



ロード・ウォリアーの手甲の爪が帯電する。

対象に選ばれるのは、俺の場の唯一のモンスター。スターダスト・ドラゴン。



加速をつけたロード・ウォリアーの身体が、上半身を思い切り90°捩じり上げ、力を蓄えた。

抵抗する必要はなく、また抵抗出来るわけでもない。

雷光の如き速度でスターダストまでの道を詰めたロードが、振り上げた腕を振り下ろした。



即座の防御。翼を身体の前で折り、それを盾とする。

しかしスターダストの攻撃力は2500であり、ロードの攻撃力は3000。

攻撃力の差は明確。故に結果も明確。



翼膜を突き破った爪が、スターダストの身体に突き刺さる。

雷に焼かれたスターダストが墜落し、その姿を光の破片に変えて霧散した。



「スターダストは破壊された。さあ、まだジャンク・ウォリアーの攻撃が残っているぞ」

「――――ジャンク・ウォリアー!」



俺のライフはダウンし4000から3500に。

更に俺を追い詰めるべく、ジャンク・ウォリアーは空中に身を躍らせた。

肩のバーニアを吹かし、俺の目前へと急接近してくるジャンク・ウォリアー。

振り被った右腕は青い光を纏い、振り抜かれる。



「スクラップ・フィストォッ!」



直撃。

巨大なDホイールが大きく傾き、バランスを崩して失速した。ビビった。

同時に俺のライフカウンターは3500からたった400へ。

そしてスピードカウンターは8から5となった。関係無いけど。



「さあ! 俺のライフは風前の灯、更なる追撃を仕掛けないのか!」

「…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」



うむ。何かイメージと違う。

遊星はもっと果敢に攻めてきそうな気がしたんだが。

そんな事言ってたら「お前の勝手なイメージを押し付けるな」って言われちゃうね。

まずはイメージフェイズで惑星クレイに行くか。



ともかく。



「確実性を重視して、全力でぶつかれないか。

 その程度の覚悟で、お前は今のシンクロ召喚を超える、新たな戦術を身につける事が出来るかな?」

「何だと?」



勝手に伏線を張る。俺が張った伏線は下っ端さんが体を張って回収してくれる。

何の問題もない。



シンクロ召喚を超える戦術。それはつまり、シンクロモンスターの融合だ!(キリッ

究極を超えた究極、そのモンスターの名は、波動竜騎士ドラゴエクィテス!テッテレー

俺の前を走りながら、微かに視線を送ってくる遊星に、フフフを返して宣言する。



「俺のターン!」



スピードカウンターが6に。遊星は9だ。

ドローしたカードを含め、手札は3枚。ここからは、と言うより前のターンから完全に運任せだった。

前のターン三度目の攻撃をされていたら、負けこそしなくとも、そこから防戦一方以外の選択肢がなかったのだ。

だが、次の戦術に繋がる布石は打ってある。



「カードを1枚伏せ、スターダスト・ファントムを守備表示で召喚!」



青いマントを纏い、スターダストを模した兜を被り、同じくスターダストを模る杖を手にしている。

その能力は自身と引き換えにスターダストを呼び戻す。

とはいえ、相手によって破壊される必要のある受け身効果のため、確実性は薄い。



「俺のターンはこれで終了だ」



追い詰められているのはこちら。

しかし余裕は崩さない。そうすれば相手は勝手に深読みしてくれる。



「オレのターン!」



俺は7、遊星は10蓄えたスピードカウンター。



「ターボ・シンクロンを召喚!」



胴体はレーシングカーを連想させるフォルム。

両肩から伸び、後ろに突きだしたマフラーから排煙をボウと吹かせてみせる。

腕の付け根にはタイヤが付属しているのが見て取れた。



「ロード・ウォリアーの効果発動!

 1ターンに一度、デッキからレベル2以下の戦士、または機械族モンスターを特殊召喚できる。

 オレはチューニング・サポーターを特殊召喚!」



恐らくモニターに映し出された候補を選択すると、オートでディスクが出してくれるのだろう。

そのカードをフィールドに特殊召喚する遊星。



その選択に呼応してか、ロード・ウォリアーが赤の眼光を滾らせ、背負った大剣のようなものを抜き放つ。

天に向けて振り上げられたそれから、光の道が走り抜けた。

デッキというピットから、フィールドというコースに導く光のロード。



その中から現れたのは、中華鍋のような被りモノをしている、小さな機械人形。

その被りモノと、口許を隠すように巻かれたマフラーで顔を隠したそれは、ターボ・シンクロンと並んで浮遊する。



チューニング・サポーターには二つの特殊効果がある。

一つはシンクロ召喚に素材としてする際、レベルを1とするか、2として扱うか選択できる調整効果。

そしてシンクロ素材として墓地に送られた時、カードを一枚ドローできる効果だ。



この場合使用するのは、まずは前者から。



「合計レベルは3か4。なるほど、スターダスト・ドラゴンの蘇生を行わせた上で、俺を仕留めにくるか」

「チューニング・サポーターの効果。シンクロ召喚の素材にする時、レベル2のモンスターとして扱う事ができる。

 レベル1、レベル・スティーラーとレベル2、チューニング・サポーターに、

 レベル1、ターボ・シンクロンをチューニング!」



チューニング・サポーターがレベル・スティーラーの上に飛び乗り、二体纏めて飛翔する。

ターボ・シンクロンの頭部ヘルメットのバイザーが下り、腕部と脚部が格納され、

小型のレーシングカーそのものとなった。



ブォンとマフラーが一つ嘶き、ターボ・シンクロンの身体は星と化し、光のリングとなった。

二体のモンスターを導く光の道が、一際大きな光を放ち、柱となる。



「シンクロ召喚! 出でよ、アームズ・エイド!」



光の中から現れたのは、巨大な右腕。

緋色に染まった鋭利な爪を五つ生やした手甲。



「チューニング・サポーターの効果発動!

 このカードがシンクロ召喚の素材にされた時、カードを1枚ドローする!」



ドローしたカードを見た遊星の表情が、硬く引き締まった。



「さあ、ロード・ウォリアーにその腕を持たせ、攻めてくるといい」

「ああ、そのつもりだ…いや、だった」



遊星の口端が微かに上がる。そして、俺も微かに笑った。

指芸が冴え渡るカード回し。

Dホイールの魔法・罠ゾーンに差し込まれる、サポーターの効果でドローされたカード。



「Spスピードスペル‐ダッシュ・ピルファーを発動!」

「Spスピードスペルか…俺の場に対象にできるモンスターは一体」

「そうだ、ダッシュ・ピルファーはスピードカウンターが4つ以上ある時に発動できるSpスピードスペル。

 その効果で、エンドフェイズまで相手フィールドに存在する守備表示モンスター一体のコントロールを奪う!」



俺の場に存在するモンスターは一体、スターダスト・ファントムのみ。

そしてファントムの効果は破壊された時に発揮するもの。

コントロールを奪われる事で排除されてしまえば、その効果は発動しない。



「俺の場はガラ空き。このターン、先刻とは違い、来ない理由はないだろう?」

「ああ、全力で仕掛ける! 行くぞ!」



ジャンク・ウォリアー、ロード・ウォリアー、アームズ・エイド。

三体のモンスターが戦闘態勢を整え、俺に対して向き直った。



「アームズ・エイド!」



爪は展開されないまま、爪手甲が俺を目掛けて飛来する。

これに限らず、一撃で吹き飛ぶライフしか残っていない身である。

ここからは掠る事すら許されない戦闘。



「相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札からジャンク・ディフェンダーを特殊召喚する事ができる!」



手札からモンスターゾーンへ、カードを出す。

正面から見れば、頭部と胴が一体となった逆さまの三角形から、本体と同サイズの肩、そして腕が伸びている。

腕には左右それぞれ凹凸型に分けられて、盾が装備されていた。



出現したディフェンダーは両腕を頭の前で交差させ、その凹凸をドッキングさせる。

そうする事によって出来あがった一枚盾から、その身体は青く染まっていく。



「ジャンク・ディフェンダーの守備力は1800。

 その防御力と同じ数値しか持たないアームズ・エイドでは、破壊はできない」

「くっ…アームズ・エイドの攻撃宣言はキャンセル。ロード・ウォリアーでジャンク・ディフェンダーを攻撃!」



俺の前で防御姿勢をとるディフェンダー。

撤退し、遊星の横に並ぶ位置に戻った代わりに、ロードがこちらへと迫りくる。

雷光を纏ったクローを振り上げ、二つの瞳を煌々と輝かせた。



「ライトニング・クロー!」



横一線に薙ぎ払われた刃が、ディフェンダーを切り裂く。

一瞬で砕け散った身体が光の破片となって飛び散る中、追撃の戦士が加速する。



「ジャンク・ウォリアー! スクラップ・フィストォッ!」



言うまでもなく対象は俺。壁を突破された俺は、守るもののない的にすぎない。



「だが、それは通せないな! 罠トラップ発動、スピリット・フォース!」



俺の身体から何故かオーラが噴き出す。

まるでスーパーサイヤ人の如く、それはもうゴウゴウと光が立ち上る。



ジャンク・ウォリアーの拳は直撃。

過たず、俺の身体を撃ち据えた拳からは、しかし一片の衝撃すら伝わってこなかった。

それは何もソリッドヴィジョンだからとか、そんな理由ではない。

俺の放つオーラの壁に阻まれた一撃は、全ての威力を殺されて無力と化したのだ。



「一度だけ戦闘ダメージを0にする。

 そしてその後、墓地から守備力1500以下の戦士族チューナーを手札に加える。

 勿論、手札に加えるのはジャンク・シンクロンだ」

「凌ぎ切られた、か」



僅かに悔しげな遊星は、俺の手札を一瞥し、一瞬迷った様子を見せたが、



「アームズ・エイドの効果発動!

 1ターンに一度、装備カードとしてモンスターに装備するか、またはそれを解除して特殊召喚できる。

 オレはアームズ・エイドをロード・ウォリアーに装備する!」



アームズ・エイドが展開する。

爪が五指と変わらぬように動く為に開かれ、肘まで包み込む手甲がロードの腕を受け入れる為に開放された。

ロード・ウォリアーが右腕をその中に突き込むと、アームズ・エイドはそれを固定。



そう、これでいい。



「この瞬間、罠トラップカード発動! ロスト・スター・ディセント!」



最初期から伏せていた罠トラップを発動する。

ここから遊星はターンを終えるしかない。こちらの戦術に、割り込む事はできないだろう。



「墓地のシンクロモンスター一体のレベルを1つ下げ、守備力0にして守備表示で特殊召喚する。

 召喚するのは…スターダスト・ドラゴン」

「なに…?」



墓地から出てきたスターダストのカードを一度遊星に見せ、フィールドに置く。

銀色の翼を折り畳み、スターダストは青く染まった状態で蘇る。



俺の場にはジャンク・ウォリアーもいる。ファントムがいると言うのに、何故スターダストを呼び出すのか。

と言ったところだろう。今の、遊星の考え方は。

遊星が深読みし、こちらの手を見通そうとするように仕向ける。



これも立派な心理フェイズにおける戦闘である。



「…ターンエンド」

「スターダスト・ファントムのコントロールは返してもらうぞ」



遊星の場に並んでいた、ファントムがスターダストと並ぶ位置に戻ってきた。

普通、並ぶ事のない筈のモンスターを並べる。と言うのは、中々面白い。



「俺のターン、ドロー!」



スピードカウンターは8。遊星は振り切れる一歩手前、11だ。



「伏せリバースカード発動オープン! 罠トラップ発動、捨て身の宝札!

 自分フィールドに存在するモンスター2体以上の攻撃力の合計が、

 相手フィールドで最も攻撃力の低いモンスターを下回る時、デッキからカードを2枚ドローする!

 俺の場にはスターダスト・ドラゴンとスターダスト・ファントム。攻撃力の合計は、2500。

 お前の場の最も攻撃力の低いモンスターは、ジャンク・ウォリアーの3100」



よって2枚のドローが可能となる。

デッキからカードを2枚ドローし、手札のホルダーへ1枚セットし、逆に手札にあるカードを取る。



「捨て身の宝札を発動したターン、モンスターの召喚、反転召喚、特殊召喚、そして表示形式の変更はできない。

 カードを2枚伏せ、ターンエンド。フフフ…アームズ・エイドの効果を発動したのは失敗だったな」

「…こちらの手に全て先回りしてくる。やはりデッキは知られているのか。

 なら、オレはそれを上回る戦略で戦うだけだ。オレのターン!」



スピードカウンターがついにカンスト。遊星のカウンターは12、俺は9となった。



ドローしたカードを見た遊星が、そのカードをモンスターゾーンへと叩きつける。

火花を散らしながらフィールドに置かれたカードは、遊星号の前にモンスターを呼び出す。



「来い、マックス・ウォリアー!」



岩のような面を上げ、首に掛けられた数珠を鳴らしながらマックス・ウォリアーが現れる。

巨大な肩は光を反射するほどに輝かせ、胴の細さに対して力強く太い四肢。

武器とする錫杖を右手に構え、それは錫々とした音と共に遊星の隣へ降り立った。



これで遊星の場には再び三体のモンスター。こちらの二体を打ち破り、止めを刺しにこれる数。

まずはアームズ・エイドの効果が襲い、例えそれを凌いでも三体目の攻撃がくる。

だが、防ぎきれる。



「バトルだ!」

「この瞬間、罠トラップ発動。シンクロ・バリアー!」



明かされる伏せリバースカード。

開放されたカードから光が放たれ、俺の場に存在するスターダストを包み込んだ。



「シンクロ・バリアーのコストにスターダストをリリース。

 その効果によって、次のターンのエンドフェイズまで俺の受けるダメージは全て0となる」

「戦闘ダメージも、効果ダメージも通さない効果か。

 だが、モンスターを破壊する事はできる。行け、マックス・ウォリアー!」



マックス・ウォリアーが錫杖を振り回し、遊環を鳴り響かせる。

その狙いは俺の場のスターダスト・ファントム。

スターダスト・ファントムの守備力は0。

マックス・ウォリアーの攻撃力は、効果によって上昇し、2200。



ファントムは自身の目の前で杖を構え、防御の体勢を取る。

しかしマックス・ウォリアーの前ではそれも無意味。

振り抜かれた錫杖が杖ごとファントムを両断し、吹き飛ばした。



「スターダスト・ファントムが相手によって破壊され、墓地に送られた事により効果発動。

 自分の墓地からスターダスト・ドラゴンを守備表示で特殊召喚できる!」



このターンの初め、墓地に送られたスターダストを再度特殊召喚する。

墓地より光と共に現れたスターダストが、翼を目の前で畳んで防御姿勢を取った。

全身に風を纏った白銀の竜は、青く染まっていく。



同時にモンスターを破壊したマックス・ウォリアーは自身の効果により攻撃力とレベルが半減した。



「だが、スターダストの守備力は2000。オレの場のモンスターならば、破壊できる。

 行くぞ、ジャンク・ウォリアーの攻撃だ!」



ジャンク・ウォリアーが空中で一回転し、肩のブースターを唸らせた。

目標は勿論、スターダストである。

スターダスト・ファントムには墓地から除外し、ドラゴン族のシンクロモンスターに戦闘破壊耐性を与える効果がある。

だがそれは自分ターンのメインフェイズのみに発動する事のできる効果。

今破壊されてしまえば、それどころではない。



その間にもジャンク・ウォリアーはトップスピードに乗り、

スターダストを目掛けて急速に接近してくる。



「やらせはしない! 罠トラップ発動、D2シールド!」



オープンされたカードから放たれた光はスターダストを覆い、翼が強固に固められる。

そのままの勢いで突撃を続行したジャンク・ウォリアーの拳が、スターダストに叩き付けられた。

しかし衝突の瞬間、折り畳まれていた翼が開放され、その衝突の威力は全て跳ね返った。

跳ね返る衝撃は全てジャンク・ウォリアーを襲い、突撃した時と同じ速度で弾け、地面に落下する。



背面から勢いよく落下したジャンク・ウォリアーが先程以上に損傷した。

マフラーは汚れ、全身のヒビは更に大きくなり、装甲に美しい曲面はもう見当たらない。

だが、それでもジャンク・ウォリアーの能力は変わりない。

彼の背中越しに闘気を放つ、遊星の眼光も。



しかしやっぱりこれはどう考えても過剰演出である。



「D2シールドはモンスター一体の守備力を元々の数値の2倍にする。

 スターダストの元々の守備力は2000。よって、この効果を受けたスターダストの守備力は4000だ!」



遊星のライフカウンターがジャンク・ウォリアーの攻撃力3100との差分、

900ポイントのダメージを刻む。これで残りのライフは、3100。



そして、今のスターダストの守備力はアームズ・エイドを装備したロード・ウォリアーと並んだ。

これでこのターンに追撃をかける事はできなくなったろう。



「くっ…カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン。フフフ…」



カードをドローする。

少し気にかかっていた遊星の消極性、その正体は既に大体掴めた。

心理的アドバンテージを握れる以上それを有効に利用しない手はないだろう。



「恐れているのか、自分のカードを」

「…何の事だ?」

「俺が気付いてないとでも思っていたか。いや、先程までは疑い半分だったさ。

 あの伝説のサティスファクションのメンバーであるお前が、ここまで攻めに消極的なのがな」



さすが伝説のサティスファクションのメンバーだ!



「何を、言っている」

「疑問は9ターン目、お前が攻めに二の足を踏んだ時だ。

 確信はお前がジャンク・ウォリアーではなく、アームズ・エイドをロード・ウォリアーに装備した時」



手札のホルダーからカードを選び、それをモンスターゾーンに置く。

置いたカードはジャンク・シンクロン。先のターン、墓地から回収したカードだ。



オレンジ色の装甲を鎧う、チューナーモンスター。

ジャンク・シンクロンが掌を宙に翳すと、光が溢れ、その中からスピード・ウォリアーが姿を現す。

バイザーを煌めかせたスピード・ウォリアーが、その場で決めポーズを極めた。



「意識しているかいないかは知らないが、お前は俺の戦術を予想している。

 お前自身が行おうとしている攻撃を、もし自分がされた時、自分ならばどう対応するかを重ね合わせてな」



手札から更に1枚。

スピード・ウォリアーをリリースし、特殊召喚する。

再登場後、速攻で出戻りされるスピードさんマジパネェっす。



姿を現したのは歩く要塞、ターレット・ウォリアー。

その身体は要塞そのもの。肩は敵を迎撃するための砲塔であり、砲身は鈍く光っている。

このカードは戦士族モンスター一体をリリースする事で、特殊召喚する事ができるのだ。

更にこのカードを特殊召喚するためにリリースしたモンスターの攻撃力を上乗せする。

元々の攻撃力1200に合わせ、スピード・ウォリアーの900。合計は、2100だった。



「その結果、お前の攻め手は鈍りに鈍り、このザマだ」

「………っ」

「レベル5のターレット・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング」



ジャンク・シンクロンがスターターを始動すると、背負ったエンジンが咆哮を上げた。

身体が光の輪郭と化し、解けていく。光は形を変え、星となり、ターレット・ウォリアーを取り巻いた。

要塞が浮遊し俺の頭上まで浮かび上がる。



「フフフ…シンクロ召喚」



閃光が迸る。

視界を塗り潰す光が消えた先、出現するのは圧倒的な巨体。



同じジャンクの名を冠するジャンク・ウォリアーを凌駕する力強さ。

真紅の双眸が輝く頭部には、紅の宝玉が埋め込まれた三又に分かれた黄金の巨角。

両頬からは白く鋭い角が二本。



巨大な胴体を守るのは、ジャンク・ウォリアーの装甲よりも深い青色の鎧。

中心には緑色の宝玉が四つ、それらと比べサイズの大きい紅の宝玉が埋め込まれている。

背面からは銀色の鋼翼が四枚。



そして何よりの特徴は、その腕。

二本の腕の拳を握り込み、肩より伸びるより巨大な腕を僅かに揺らす。

合わせて四本の腕は、破壊者と名付けられたパワーを惜しげなく見せつける。



「ジャンク・デストロイヤー!」



その圧倒的なパワーは大地を震撼させるエナジーとして、巨腕の拳から溢れだす。

拳に青い炎が宿り、その炎を今にも遊星のフィールドに向けて、解き放とうと―――



「お前が恐れていたのは、お前のカード。

 レベル6以上のシンクロモンスターキラーであるターボ・ウォリアーは、ロード・ウォリアーにとって天敵。

 だが、レベル5でありながら攻撃力3100を誇るジャンク・ウォリアーならば、

 例えターボ・ウォリアーを相手にしたとして、後れは取らない。

 お前はアームズ・エイドの、戦闘破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を与えた、

 ロード・ウォリアーに視線を向けさせる事で、リスクを回避していた。

 恃みにしているジャンク・ウォリアーが破壊されるリスクをな…」

「――――」

「そのリスクを回避するために、俺を倒すチャンスを幾度も逃しながらな」



デストロイヤーの拳が、ジャンク・ウォリアーに向けられる。

しかし、そこは放たずに言葉を続けた。



「ジャンク・デストロイヤーはシンクロ召喚時、

 チューナー以外のシンクロ素材の数だけ、フィールドのカードを破壊する事ができる…

 シンクロ素材となったターレット・ウォリアーの分のカードを1枚、破壊させてもらおうか。

 ジャンク・ウォリアーを破壊したいところだが、対応すべきはアームズ・エイドとロード・ウォリアーだ」

「………」



遊星は無言。ノリノリの俺に引いているのかもしれない。

俺が遊星だったら確実にドン引きであるからして、しょうがない。



デストロイヤーが拳のエネルギーをロード・ウォリアーに向けた。



「ジャンク・デストロイヤーの効果発動! 破壊するカードは、」



腰を捻り、拳を振り被ったデストロイヤーの瞳が輝く。



「9ターン目にお前が伏せたカードだ!」

「なに…!?」



タイダル・エナジー。振り抜かれる拳からエネルギー波が放たれ、遊星の前方に現れた伏せリバースを破壊。

粉砕される前に一瞬映るカードの正体は、悲劇の引き金。



「やはり誰よりもスターダストの事を知っている…

 俺がスターダストの能力に恃み、一方的にモンスターを破壊するカードを使ってくると予想していたか。

 モンスターに対する破壊効果を移し替える悲劇の引き金。

 ロード・ウォリアーを狙っていれば、デストロイヤーとスターダストで同士討ちせざるをえなかった」

「思った以上に、読み切ってくる」



微かに悔しさを滲ませた声。悔しそうな声もカッコいい蟹である。

ある程度予想していた以上、破壊する効果を使わなくてもよかったのだが…動きを封じられるのは良くない。

この後、何があるのか分からないのだから破壊しおくに越したことはないか。



「墓地のスターダスト・ファントムの効果発動。

 このカードを除外し、ドラゴン族シンクロモンスター一体に、1ターンに一度の戦闘破壊無効効果を付与する」



墓地からファントムが現れ、スターダストを模した杖を振るった。

スターダストの身体が発光し、青い光を帯びた状態となる。



「更に、モンスターの召喚の成功したこのターン、ワンショット・ブースターを特殊召喚できる!」

「ワンショット・ブースター、ラリーのカードか…」



ジャンク・シンクロンによく似た顔のモンスターが現れる。

ただ、色はジャンク・シンクロンのオレンジとは違い、イエローを主体にしている。

更にワンショット・ブースターは人型ではなく、両腕がカタパルトレールになっていた。

脚は存在せず、宙に浮遊するための装置となっている。



脚なんてただの飾りですよ、偉い人にはそれがわからんのです。

言ってみたかっただけだが。



「バトルだ、ジャンク・デストロイヤー!」



ジャンク・デストロイヤーが双眸に光を湛え、飛び上がった。

その向かう先は遊星のもとでなく、ワンショット・ブースターの上である。

些か以上に小さく見えるカタパルトに脚を下ろしたデストロイヤーが、四つの拳を輝かせた。



ワンショット・ブースターの頭の上に付いている、シグナルが点灯する。

レッドから始まり、イエロー、そしてブルー。

その瞬間、カタパルトからデストロイヤーが高速で射出される。

射出の反動を消すために最大稼働していた胴体下の浮遊装置が機能を停止し、地面に向かい墜落していく。



ワンショット・ブースターの命を賭した行動に、同時に自身の命を捨てて応えるべく、デストロイヤーが飛翔する。

目標は、ロード・ウォリアー。



「くっ、迎え討て、ロード・ウォリアー!」



対する二つの巨体は互いに加速し、空中で正面から衝突しあう。



「デストロイ・ナックル!」

「パワーギア・クロォオオッ!」



肩から伸びる巨腕が、拳に白んだ赤光を纏わせながら、ロードに叩き付けられる。

だがしかし、相手はロードの名を与えられる、戦士たちの支配者。

その単純な戦闘能力は他のウォリアーを圧倒するものであり、破壊者とは言え及ばない。



更に、戦闘力を跳ね上げるギア。アームズ・エイドを装備している今、その差は広がっている。

結果は必然。一撃目、突き出された拳をアームズ・エイドの爪で引き裂き、二撃目を自身の爪で弾き返す。

本来の腕となる二本の腕での追撃が行われるも、三撃目を放った腕ごと、アームズ・エイドに引き千切られた。



アームズ・エイドが炎を発し、同時に雷電を纏い始める。

四撃目を左腕でいなした直後に、腕から放たれる炎雷が一層大きくなった。

胴体の中心、ちょうど紅の宝玉がある場所に、その爪は深々と突き立てられる。

寸前で、両肩の腕がそれを両の横合いから捕まえた。



だがそれでも止まらない。

肩腕を根元からもぎ取りかねない勢いで、その腕は押し込まれ、遂にはデストロイヤーの胴体に達した。

背中から突き出るほどに刺さった爪を、ロード・ウォリアーはそのまま横に引き裂いた。

爆炎が噴き出し、ジャンク・デストロイヤーの双眸から光が消えた。

抉り取られた半身が崩れ、炎の塊となり、ワンショット・ブースターと同じく墜落の最期を迎える。



だが迎撃したロード・ウォリアーは無傷。―――ではなかった。

胴体に残った腕の拳が深々と打ち込まれており、瞳の光は消え、その機能を停止していた。

ジャンク・デストロイヤーの拳を打ち込まれたまま、共に大地に向かい、衝突して爆発、炎上したその姿は見えなくなった。



「ワンショット・ブースターをリリースすることで、このターン自分のモンスターと戦闘を行った相手モンスターを破壊する。

 そして、ジャンク・デストロイヤーがロード・ウォリアーとの戦闘で発生する全てのダメージは、0だ」



それこそが前のターン、発動したシンクロ・バリアーの狙い。

戦闘、効果、全てのダメージを0にし、シャットアウトするこの効果は、発動した次のターンのエンドフェイズまで持続する。



「俺はこれでターンを終了する」

「オレのターン」



遊星はそのまま無言で数十秒、走り続けた。

あれ、ツーリングフェイズのフラグなんて立てたかね?



更に数十秒。遊星は目を瞑り、何かを黙考している様子だったが、遂に目を開けた。

先程までとは、何かが違う視線。

正直、それと目を合わせた瞬間、ああ、これは不味い負けたこれ。

と、思わされた。



「お前のカードは、お前の想いに応えた。

 オレのフィールドにも、手札にも、今のお前のスターダストを倒す事のできるカードはない」

「………」



指を、デッキホルダーの一番上にかける。



「スターダストを持っている理由も、お前の正体も、今のオレには分からない。

 キングとなったジャックが、オレを追って来いとでも焚き付ける為のメッセンジャーかとも思ったが、違う」

「何故違うと言い切れる」



指に力が籠る。遊星の眼は鋭く、力強く俺を見据えて言い放った。



「お前と、お前のカードたちの絆が見えた。ずっと、一緒に闘ってきたカードたちと結ばれる絆が」

「……否定はしない」



まあ細部はちょいちょい変わっているが、数十回のデュエルを共にしたデッキである。



「お前の持つスターダストは、オレたちのスターダスト・ドラゴンではなかった。

 確かにオレとお前の使うカードは同じものだった。ただ、それだけだ。

 お前はオレが全力を尽くして闘うべき―――決闘疾走者Dホイーラー!」



遊星がカードをドローする。

そのカードを見た遊星が、俺の場のスターダストを見据えた。



「自身の効果によって能力が半減していたマックス・ウォリアーは、このスタンバイフェイズで元に戻る。

 マックス・ウォリアーを守備表示に変更し、カードを1枚セット。

 ターンエンドだ」



過剰評価すぎる。

イケメンな蟹は、完全に俺をライバルデュエリストとして扱っているらしく、目が怖いでござる。

と言うか性格が一期じゃなくて二期以降な件について。



セルフ収縮していたマックス・ウォリアーが、その身体を元の岩のように力強いものに戻した。

そして両腕を身体の前で交差させ、身体を青くする。



「俺のターン!」



俺のスピードカウンターが11になる。

既に振り切れている遊星のカウンターは変わらず。



ドローカードをしても手札は1枚。ここからは何処まで行っても運ゲー。

しかし、そこで初めて運命力が問われてくるのだ。



「カードを1枚伏せ、ターンエンド」



膠着状態は続き、どのタイミングで解けるかは分からない。

だが、今の不動遊星ならば、



「オレのターン!」



互いのカウンターが12。実に無駄無駄しい。

カードをドローすると同時に、メインフェイズをすっ飛ばしてバトルフェイズへ突入する。



「罠トラップ発動、シンクロ・ストライク!

 シンクロモンスター一体の攻撃力を、エンドフェイズまでシンクロ素材の数×500ポイントアップする!」



遊星と並び飛行していたジャンク・ウォリアーが、加速し飛翔する。

召喚された時に見せた青く滑らかな装甲は激しく損傷しているが、しかし。

その動きに鈍りは見れない。



ツインアイが赤く輝き、ブースターが唸りを上げた。

青い光を帯びた右の拳を握り込む。溢れる波動がジャンク・ウォリアーの攻撃力を上昇させる。



「ジャンク・ウォリアーで、スターダストを攻撃!」



ブースターが一気呵成に炎を吐き出し、静止状態から一瞬でトップへ。

ジャンク・ウォリアーの攻撃力は4100。スターダストの守備力を上回る、圧倒的なパワー。

スターダストが一度はばたき、前方で翼を交差させる。



放たれた青い彗星は翼を撃ち抜き、その身体を断ち切るほどの勢いでの衝突。

衝撃はスターダストの全身を蹂躙する。

翼膜に数箇所亀裂が走り抜けて、防御力を削ぎ取っていく。



打ち付けられた拳は、そのままスターダストを撃ち抜いていくかと思われた。

が、そうとはならず、翼を一息に広げ、ジャンク・ウォリアーの拳を弾き返した。



「スターダスト・ファントムの効果により、

 スターダスト・ドラゴンは1ターンに一度、攻撃力及び守備力を800ポイント下げ、戦闘破壊を無効にする」



翼に傷を残し、しかしスターダストは倒れずに咆哮を上げた。

ジャンク・ウォリアーはブースターの動作を止め、遊星の元へと一旦下がる。



これでもスターダストの攻撃力は1700で、守備力は3200。

ジャンク・ウォリアーの攻撃力3100を超えている。

次のターンにも、相手は攻撃力を上げる効果を使用して攻撃しない限り、負ける事はない。

だが、逆にもう一度削られれば、ジャンク・ウォリアーの攻撃力を下回る。



「カードを1枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー」



引いたカードを見て、遊星の過大評価もあながち間違ってないかも、と調子に乗る。



「ミスティック・パイパーを召喚!」



フードのついているワインレッドのコートを着た、笛吹きの男を召喚する。

長く伸びた青い髪を振り回しながら横笛を吹き鳴らす男は、正直このデッキにあっているように思えないが。

まあ、効果は優秀なのでいいとしよう。



「ミスティック・パイパーの効果発動! このカードをリリースし、カードを1枚ドローする」



笛吹きは光となり消滅し、俺のデッキトップが同時に光る。

そのカードを引き抜き、目で確かめる。



「ドローカードは速攻のかかし! レベル1モンスターをドローした場合、更にもう一枚ドロー!」



ドローしたカードを遊星に見せ、更にデッキからカードをドロー。

遊星に言わせるのであれば、カードたちが応えてくれていると言ったところか。

だとするのであれば、やるべき事は一つ。信じる事である。



「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」



これで伏せリバースは2枚。

ここからどこまで繋がるか、疑問ではあるが楽しみでもある。遊星が言うとおりなら、きっと応えてくれるだろう。



「オレのターンだ!」



カードをドローした勢いのままに、バトルフェイズへ突入。

ジャンク・ウォリアーが再度拳を握り込んだ。



「伏せリバースカード発動オープン! スキル・サクセサー!

 ジャンク・ウォリアーの攻撃力を400ポイントアップする!」

 

拳に灯る青い炎。心配した予想をあっさりと叶え、遊星はジャンク・ウォリアーをパワーアップさせた。

その攻撃力はスターダストの低下した守備力を凌駕し、再びその翼を削るだろう。

そうなれば後は時間の問題である。



「行け、スクラップ・フィスト!」



青い彗星の発光は先程より弱いが、それでも星屑を呑み込むのに支障はない。

このまま、放置してしまえば。



「罠トラップ発動、パワー・フレーム!」



閃光が奔り抜ける。

光のフレームで四角形が、ジャンク・ウォリアーの前に現れる。

速度を緩めずに突撃したウォリアーは、光のフレームの中をくぐる事になり、直後に異変が起きた。



「相手モンスターの攻撃を無効にする」



加速していた筈のジャンク・ウォリアーはその速さを全て失い、スターダストの目前で停止した。

その相手をスターダストは翼で打ち据え、遊星の元まで弾き返す。



パワー・フレームの光は一度解け、スターダストを取り囲む立方体となった。

ジャンク・ウォリアーの力を奪った光は、溶け込むようにスターダストの身体の中に消えた。



「そして、攻撃してきたモンスターとの攻撃力の差分だけ、攻撃力を上げる装備カードとなる。

 今のジャンク・ウォリアーの攻撃力は3500。よって、スターダストの攻撃力は1800ポイントアップ」



逆襲の力を手に入れた星屑龍が、猛るように咆えた。

遊星は驚きなく、その結果を受け入れると、微かに微笑んだ。



「オレはターンエンドだ」



まるでかかって来いと言わんばかりである。

流石に風格が違う。



「俺のターン! スターダスト・ドラゴンの表示形式を変更し、バトルだ!」



今まで何度も攻められる側として対応していたスターダストが、攻勢に出る。

守備表示の証である青く染まった身体を、白銀に戻した姿で、一度大きく羽ばたいた。

翼からこぼれおちる星屑の残照が、俺の上から降りかかってくる。



その眼は何も宣言する前から、相対するべくジャンク・ウォリアーを見据えている。

ならば、俺に出来る事は一つ。



「スターダスト・ドラゴンの攻撃! シューティング・ソニック!」



先のターン見せた破壊力とはまるで桁違い。

相手を薙ぎ払う光線状のブレスでなく、まさしく流星。

津波のように押し寄せる圧縮された音波の波動に、ジャンク・ウォリアーは離脱する間もなく巻き込まれた。

損傷してなお、闘気を漲らせていたボディは、しかしこの攻撃の前では跡形すら残らない。



「ぐ、うぅ……!」



遊星号の車体が揺らぐ。

俺はこれより大きいダメージを受けてもあそこまで揺れなかったが、それはDホイールの巨大さのせいか。



LPが2700となる遊星は、僅か400ポイントのライフが削られただけだと言うのに、大きく怯んでいた。

が、体勢を立て直した時の顔は不敵に笑っている。

ああ、そんな顔を見せられればよく分かる。強すぎワロタ。



「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

「次は、オレのターンだ!」



ここからは私のターンだ! 内藤くんカッコいいよ内藤くん。

と、ふざけている暇はないのだろう。



「カードたちよ、力を貸してくれ…!」

「――――」



ちなみに俺は力を貸してくれより、

力は借りたり与えたりするものじゃない、力は合わせるものだ!

というサンダーグレイモンのセリフの方が好きだ。

なので、偉そうにふんぞり返りつつ、先達デュエリストの名言を後輩デュエリストに授けてやろう。



「不動遊星、それは違う」

「なに…?」



ドローフェイズの集中を乱すプレイである。フォレッセドロー涙目。

本田くんに真のデュエリストではないと言われてしまうね。



「お前はこのデュエル、カードたちの力を借り、一人で闘っているのではない」

「………」

「カードたちと力を合わせ、共に闘っているんだ!」

「!」



!である。流石サンダー(の中の人のキャラ)が残した名言。

蟹の目から鱗が落ちるとは。甲殻類なのに。



その言葉に瞠目した遊星は、デッキから指を離し、そのデッキを見つめた。

数秒か、数十秒か、やがて眼を閉じた遊星は更に強くなっていた。

オーラがビリビリくるぜぇ~!(牛尾風



今の奴はただの遊星ではない。

鬼柳京介を結果的に裏切り、バラバラになった仲間に悩む男ではなかった。

少なくとも今は、後にデュエルキングとなり、世界を救う伝説のデュエリスト、不動遊星。

誰よりも心が熱く、絆に篤い、皆の中心となり絆を繋ぐ男。



分かりやすく言うのであれば、

見よ! 称えよ! ひざまづけ! 荒蟹グレート降臨!である。

もっと分かり易くすれば、カニキング・ザ・グレートである。

ガイキングとライキングとバルキングのデルタアクセルである。

もといカニキングとモトキングとインチキングのデルタアクセルである。



無理ゲーハジマタ。



「勝ってみせる、お前とのデュエル。そして証明してみせる。

 お前が気付かせてくれた、オレたちの、絆を!」



カードが引き抜かれる。

絆の証明。その言葉に応えるかの如く、奴は遊星の手に舞いこんだ。



「行くぞ、ジャンク・シンクロン!」



オレンジ色の装甲が光を放つ。

三頭身ほどの身体を大きく揺り動かし、光のリングを生み出す。

それは墓地から希望を呼び出す力。



「来い、ターボ・シンクロン!」



光の道をレーシングカーが走り抜け、再び姿を現してきた。

レーシングカーの車体を模した胴体から脚部が現れ、肩のホイールから腕部が現れる。

頭部のバイザーが展開し、その姿を完全に現したターボ・シンクロン。

肩部のホイールが回転して火花を散らす。



「二体のチューナー…!」

「相手フィールド上にシンクロモンスターが存在し、自分のフィールドにシンクロモンスターが存在しない場合、

 手札からリード・バタフライを特殊召喚できる!」



浅葱色の模様が描かれた黒い翅をぱたぱたとはばたかせる蝶々が出現する。



「更に伏せリバースカード、ロスト・スター・ディセント!

 墓地から特殊召喚するのは、ジャンク・ウォリアーだ!」



先程スターダストの攻撃で葬られた戦士が、再びフィールドに舞い戻る。

まるでイタチごっこである。

ロスト・スター・ディセントの効果で、ジャンク・ウォリアーは守備力0。

その状態で守備表示に固定され召喚されたのだ。



一際大きな右の腕を前に出し、それを盾のように構えて身体を青くする。



「レベル4となったジャンク・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」



ジャンク・シンクロンがエンジンを始動させて星となり、その星が光の道を描き上げる。

守備表示で封じられたジャンク・ウォリアーをシンクロ素材にする事で、新たなモンスターを召喚する。

例え予防線を突破され、破壊されたとしても即座に対応してみせた。



それを成し遂げる事が出来た理由は、ただの圧倒的なデュエルセンスだけではない。

カードとデュエリストを繋ぐ絆。それが、全ての戦術を凌駕する力となる。



「集いし叫びが、木霊の矢となり空を裂く。光さす道となれ!」



新たなモンスターを呼び出すための光の道が一瞬、一際大きくなり、直後に消失した。

残されたのは新たなる力を宿したモンスター。



「シンクロ召喚! 出でよ、ジャンク・アーチャー!」



現れる濃厚な橙の鎧を纏った戦士。

今までの二体のジャンクの名を冠するモンスターとは違い、スマートなフォルム。



身体を包むジャンク・シンクロンのそれより強い橙色と、手足を包む深い藍色。

頭部は縦に長く、他の戦士らとは違い、モノアイが特徴となっている。

最も特徴的なのは、その名を象徴する左腕の手首に装備されている、ピーコックグリーンのアーチ。

その名の通り、アーチャーとしての武器。



「スターダストの天敵を出してくるか。それも…」

「更にレベル4のマックス・ウォリアーとレベル1のリード・バタフライに、

 レベル1のターボ・シンクロンをチューニング!」



守備の体勢を取っていたマックス・ウォリアーが、その体勢を解いて跳び上がる。

小さな体で翅をせわしなく動かし、その後を追うリード・バタフライ。

二体のモンスターを背後から追いかけるターボ・シンクロンの身体が、光の星となる。

光をリングがマックス・ウォリアーとリード・バタフライを覆い、光へと変えた。



「集いし絆が、更なる力を紡ぎ出す。光さす道となれ! シンクロ召喚!」



閃光と共に姿を現す真紅の戦士。

胴体がトラック模した造りになっており、胸部ではヘッドライトが点灯している。

腰部にはホイール、背中にはマフラーを背負っており、そこからはエンジンの雄叫びが響く。

スラリと伸びるスマートな下半身と、大型トラックの如き力強い上半身。

両腕に鋭い爪の五指が並ぶ、速攻の戦士。



「轟け、ターボ・ウォリアー!」

「二体連続で…!」



二体の戦士がフィールドに並ぶ。

身構えているジャンク・アーチャーと、腕を組んでそびえ立つターボ・ウォリアー。

どちらもスターダスト・ドラゴンの天敵となりえるモンスター。



「さぁ、来るか!?」

「あぁ…行くぞ!」



遊星のDホイールが加速し、俺を追い越し、遥かに先を行く。

俺もそれに追従しようとアクセルを吹かそうとした瞬間、奴が最早横方向へのスライド移動と言うべき、ドリフト走行に入る。

え、いやちょっとあれはないって。見てる方が怖いわ。

半秒の後に切り返す。俺と正面から見合い、すれ違うような軌道を描き向かってくる車体。



「ターボ・ウォリアー! スターダスト・ドラゴンへ攻撃!!」



真紅のボディが加速に乗り、こちらのスターダストを目掛けて迫りくる。

ターボ・ウォリアーの効果は、レベル6以上のシンクロモンスターの攻撃力を半減させること。

攻撃力3500のスターダストの攻撃力は、いまや1750。

スターダスト自身には攻撃力を下げ、破壊を免れる効果が備わっているが、俺のライフは僅か400。

この一撃を受ければ、その僅かばかりの命運も尽きる。



しかし闘いは止まる事など知りはしない。

ターボ・ウォリアーが放つエグゾーストノートと、スターダストが放つ龍の咆哮。

轟音が前後から炸裂し、重なる。一瞬の交錯。

振り抜かれた戦士の腕は、しかし龍が跳ね上げた翼で受け流されていた。



「―――っ!」

「先程のお前と同じ罠トラップ、ガードブロックだ。

 戦闘ダメージを0にして、カードを1枚ドローする。

 ただしスターダストにはファントムの効果が付与されているが故、攻守を800下げる代わり、戦闘破壊はされないがな」



これでスターダストの攻撃力は2700。そして、守備力が2400。

下がったとはいえ、それでも返しのターンにターボ・ウォリアーを戦闘破壊できる攻撃力。

しかしそれは、装備カードとなったパワー・フレームあってこそ。

同時に、スターダスト・ファントムによって付加された戦闘破壊耐性も持ち合わせているからこそのこの強靭さ。



ならば、それを失ってしまえば、その強く磨かれた強靭さを発揮する事はできなくなる。

そしてそれを奪い去る手段は、既に遊星の掌中に収められている。

バイクの車体を更に反転させ、俺と並走する形に戻る遊星。



「バトルフェイズを終了! そして、ジャンク・アーチャーの効果!」



モノアイが光を放つ。

頭部の、正しく今光を放つ眼がある顔面を隠すように、格子状のマスクを展開した。

ジャンク・アーチャーがスターダストに向ける左腕の弓には矢は番えられておらず、ただ弦のみが絞られる。



「1ターンに一度、相手モンスター一体をエンドフェイズまでゲームから除外する!

 ディメンジョン・シュートッ!」



引き絞られた弦が、空撃ちされる。

ビンと張られた弦が撓るものの、そこからは何も発射される筈がない。

が、しかし。



空撃ちは空撃ちでなく、何も番えられていなかった弓からは、一条の閃光が放たれていた。

光速の一矢は違う事なくスターダストを狙い据え、その胴体へと突き刺さった。



スターダストが苦悶の叫びを放ち、消えていく。

薄れていく身体をもがくように動かしながら。

そしてこの瞬間、俺のフィールドは空となる。



これで、エンドフェイズに帰還するスターダストには、今までその力を盤石にしてきた効果はない。

パワー・フレームにより得た攻撃力も、D2シールドで得た守備力も、ファントムにより得た不死性も。

全てが消え、丸裸となったスターダスト・ドラゴンとして俺の場に帰還する。

攻撃力はターボ・ウォリアーと互角の2500。

攻撃すれば相討ち。当然アーチャーを止める事はできず、次のターンを速攻のかかしで防いでも、

その次のターンで何もできずに俺はやられる事になるだろう。

攻撃力を上回るアーチャーを破壊し、フィールドに残したとしても、次のターン。

このターンでは何とか凌いだターボ・ウォリアーの攻撃を防げず、矢張り負け。



だが、それは俺の場にスターダスト以外のカードがなければの話。

Dホイールにセットされた、伏せリバースカードを始動させる。



「この瞬間、罠トラップ発動、ゼロ・フォース!」

「ゼロ・フォース!?」



除外されたスターダストが残した残照が、光の0を形作る。

その0がジャンク・アーチャーとターボ・ウォリアーの二体の身体に刻印され、薄れて消えた。



「俺の場のモンスターがゲームから除外された時、全てのモンスターの攻撃力を0にする!」

「くっ…!」



これで二体のモンスターの攻撃力は0と化した。

その圧倒的なパワーを失ったモンスターたちは、最早帰還するスターダストの障害となりえる力は持っていない。



「オレはこれで、ターンエンドだ」

「エンドフェイズにスターダストはフィールドに戻る。

 フィールド全体に効果を及ぼすゼロ・フォースの効果を受けていない状態でな」



ジャンク・アーチャーの効果で除外されていたモンスターは、エンドフェイズにフィールドに戻る。

ゼロ・フォースの力を受け、力を失ったモンスターたちとは違い、万全の力を備えたスターダストが。

咆哮は高らかに、天敵をも見下す銀竜の雄叫びが響き渡る。



次の一手に繋げるための温存。それが遊星のとった戦略。

ならば俺は、その道を断ち切り、このまま勝つ事を考えていればいい。



「スターダスト・ドラゴンでジャンク・アーチャーを攻撃!」



攻撃力を失った以上、相手の力を半減させるターボ・ウォリアーは無力と化した。

ならば、優先して排除すべきは除外効果を持ち合わせるジャンク・アーチャー。



口腔に蓄えられ、増幅された音の波動が、開放される。

最早逃れるためにもがく力も残っていないのか、スターダストのブレスをそのままに受けるアーチャー。

胸部に直撃を受けた身体は爆砕され、四肢をバラバラに吹き飛ばされて霧散した。エグい。



攻撃力0となったジャンク・アーチャーではスターダストの攻撃力を全く止められない。

その威力は全て、プレイヤーである遊星に突き抜ける。

ジャンク・アーチャーを貫いたブレスは、そのまま遊星号に着弾した。



「ぐぅっ、あ…!」



ライフが一気に2500削られ、カウンターは僅か200となる。

これで互いにほぼオワタ式。後は先に一本をとった方が勝者となるだろう。



傾いたDホイールの体勢を立て直し、遊星は声を張り上げる。



「罠トラップカード、奇跡の残照!

 このターン、戦闘によって破壊されたモンスター一体を墓地から特殊召喚する!」



ジャンク・アーチャーの砕けた破片が集束し、再び同じ姿を取りる。

弾け飛んだ四肢は再生し、破壊された痕は微塵も見当たらない。

ゼロ・フォースにより奪われた攻撃力を取り戻した身は、先程を上回る力強さを持ち合わせていた。



「伏せリバースカードをセットしてターンエンド」



……このターン、通常召喚可能なモンスターを引き当てていたとすれば。

恐らくは、ここで勝ていた。



さて、その断てなかった禍根がどうなるのかといった所。



「オレのターン! ジャンク・アーチャーの効果、スターダスト・ドラゴンを除外する!」



腕のアーチがスターダストに照準され、弦が引き絞られる。

光の矢が番えられた弓弦が弾け、閃光はスターダストの胸へと突き立った。

効果を受け、除外された時にばら撒かれた残光は、此度はそのまま消失するのだった。



「ジャンク・アーチャーでダイレクトアタック! スクラップ・アロー!」



今回番えられるのは光の矢ではなく、鉄鏃と矢羽の付けられた代物。

そして格子状のモノアイを守るガードの奥から狙われているのは、モンスターではなく俺自身。



きりきりと弦を鳴らす音が消えると同時に、風を裂いて進む鏃の声が聞こえた。

その一撃の直撃を許せば、俺の風前の灯のライフは一瞬で吹き消される。

だが、それは通さない。



「手札の速攻のかかしの効果を発動。

 相手の直接攻撃宣言時、このカードを手札から墓地へ送り、その戦闘を無効にし、バトルフェイズを終了させる」



俺と、背後から寸前まで迫った矢との間に割り込む存在。

青いボディと、鉄製のフレームでできたかかし。

ボロボロのハットから覗く赤いサングラスを一度煌めかせ、それは俺の身代わりとなり、矢に穿たれた。

だがそのままでは消えず、ボディから下に伸びるフレームの後ろに据え付けられたブースターを吹かして舞い上がる。

俺と遊星のちょうど中間まで飛んだかかしは、そこで爆散した。



強制的に遊星のターンがバトルフェイズからメインフェイズ2に移行する。

どちらにせよバトルフェイズ中に出来る事は残っていなかったろうが。



「ゼロ・ガードナーを召喚し、ターンエンド」



青く小さい身体。平べったい形状の頭に、ぱっちりと大きく開いた眼が二つ。

肩から突き出たウイングと、背中にあるプロペラで飛行する身体には細い腕と丸い足。

細く伸びている腕には、自身の身体の4、5倍の大きさを持つ0型のオブジェを持っている。



「エンドフェイズにスターダストは帰還する」



星屑は 再び場地に 舞い戻る マリ句。

そいつはともかく。…場地って何だよ。ともかく。



星の欠片が降り注ぎ、一体の竜の形を成す。

スターダスト・ドラゴンの形状へと姿を変えた光が、完全に元の姿を取り戻した。



「俺のターン!」



互いのスピードカウンターが再び12を刻む。



「ゼロ・ガードナーの効果を発動!

 このカードをリリースし、このターンに発生する戦闘ダメージと、モンスターの戦闘破壊を無効にする!」



ゼロ・ガードナーが手にした0のオブジェを投げつける。

オブジェは遊星号の走るコース上に落ちた。

そいつをどうするものかと見ていると、何と遊星は大きく車体を揺らし始めた。

どっかんとタイヤが瓦礫を弾き、それと一緒に飛び跳ねる遊星号。



飛翔せよ、俺! である。

ヤックデカルチャー。



飛翔した遊星号が0のオブジェの中をフープをくぐるイルカの如く通り抜ける。

すると、その車体が淡い光を帯びた。

さて、一応考えてはおく。何の意味があるんだそのジャンプ。



「手札のモンスターカードを一枚墓地に送り、クイック・シンクロンを特殊召喚!」



手札に眠っていたカードを墓地へ送る事で、新たなるチューナーを呼び出す。



カウボーイハットを指で弾いて見せるガンマンが、腰からリボルバーを引き抜いた。

で、くるくる回して仕舞った。

…流石は蟹のモンスターである。だが俺はレアだぜとでもいいたげ。

しかしお前はノーマルだ。レアでもなければましてスーレアでもウルレアでもありはしない。



「更に伏せリバースカード発動オープン! エンジェルリフト!

 墓地よりレベル2以下のモンスター一体を特殊召喚する。俺はスピード・ウォリアーを選択する!」



再々度舞い戻る俺の天使。

肩で風を切り、疾走する様は最早カッコいいを超えてふつくしぃ…の域に達していると言っても過言ではあるまい。

俺的に考えて。

だがしかし、彼の出番はそれだけなのだった。



「レベル2のスピード・ウォリアーに、レベル5のクイック・シンクロンをチューニング!」



クイック・シンクロンの腹部のシグナルライトが点灯する。

ルーレットが前方に投影され、回転し始める。

それを見もせずに引き抜いたリボルバーの撃鉄を引き起こすとほぼ同時、引金は引かれ、銃弾は奔っていた。



穴を開けたカードはジャンク・シンクロン。

星と化したクイック・シンクロンはその力を得て、新たなる力を導きだす。



「フフフ…シンクロ召喚! 出でよ、ジャンク・バーサーカー!」



ジャンク・デストロイヤーすら凌駕する巨体。

紅に染まった鎧に身を包む狂戦士が咆哮を上げた。



暗紅の翼を二枚、大きく広げて羽ばたく戦士の手には、身の丈を上回る一振りの戦斧。

額から生えた金色の一本角、腰部の防具に意匠される仮面、人体として見ればバランスを崩すほど極度に肥大化した四肢。

威圧を放つ身からは、昏い眼洞の中の小さな青い光のみが、唯一感じ取れる鬼神の正気であった。



「だが、ゼロ・ガードナーの効果でこのターン、全ての攻撃は無効となる」

「確かに、攻撃は封じられている。ならば次のターンのために、そちらのモンスターに更なる枷を与えるだけだ。

 ジャンク・バーサーカーの効果を発動!」



鬼神が身動ぎする。張り上げられた雄叫びは、確実に俺の鼓膜にダメージを与えていた。

振り上げられる戦斧が軋みを上げ、自身の超重の様を見せつける。

それを軽々と振り上げたバーサーカーは、そこで一度停止した。



「自分の墓地のジャンクと名のついたモンスターを除外し、相手モンスターの攻撃力を除外したモンスターの攻撃力分ダウンする。

 俺が除外するのは墓地のジャンク・ウォリアー、攻撃力は2300。対象は当然、」



戦斧が叩き落とされる。地面を砕き、コンクリートと土砂をぶち撒けた。これぞソリッドヴィジョンの本気である。

叩き砕かれた地面に遊んでいた左手を突っ込むバーサーカー。



何をするかと見ていれば、何とバーサーカーのその中からジャンク・ウォリアーを引き抜いた。

墓地だからって地面に埋まっているのはどうかと思う。

ジャンク・バーサーカーの左手一本で持ち上げられるウォリアーを見ても、この鬼神の強大さが分かる。

機能を停止しているジャンク・ウォリアーを雄叫びと共にアーチャーへ向け、放つ。

投げるのかよ。



高速で飛来する砲弾に対し、身構えるジャンク・アーチャー。

回避はし切れず、同時に自身を上回る質量の砲撃を防御しきる事は当然出来ず。

左肩にそれを受け、ごっそりと左半身が大きく削ぎとられた。

武装のアーチごと腕を全て持って行かれ、全身に走り抜ける亀裂。



「ジャンク・アーチャー!」



遊星の切羽詰まった焦燥が聞こえる。



「これでジャンク・アーチャーの攻撃力は再び0だ! ターンエンド」

「オレのターン…!」



遊星の手札は1枚。その様子を見るに、逆転の可能性は持っていないカード。

っていうか多分マッシブ。

勝利の希望を繋ぐには、このドローで新たな手段を導かなくてはならない。

それが可能か否かは、大いなる蟹の味噌汁。違った、大いなる神のみぞ知る。



どちらにせよ、見えざる神の手が蠢いていたとして、今はそんなことを気にかける場面じゃない。

今この時、それは闘う場面以外の何時でもありはしない。

ただそうであるならば、一つだけ。



「…今だからこそ言わせてもらうが、このデッキは間違いなく君のモノのコピーだ。

 君のデッキの力は流石だった。例え自分と同質の力のデッキを相手にしても一歩も退かない結束。

 流石は不動遊星。俺の知るところ、全デュエリストの中でも三指に入る実力だ」

「称賛は受け取れない。それに言った筈だ。それはお前のデッキ、お前たちの絆だ」



遊星を見る。嫌味でも何でもなく、純粋な感想だと思えた。



「例え始まりがどこにあったとしても、お前がそのデッキと築き上げてきた想いはけして嘘じゃなかった。

 だからこそ、そのカードたちはお前の声に応えたんだ。

 この風スピードの中、お前のデュエリストとしての力と一緒に、聞こえてきた声。

 それは間違いなく、お前が持つデュエルとカードへの想いの強さだった」

「―――――」



…勝てなくなっていたからと言って、楽しめなくなっていたデュエル。

本当にこんなにも楽しかったものだったか。

いや、本当に楽しんでいたものは何だったか。



本当は、デュエルをする時以上に、彼らのデュエルを見ているのが一番だったような気がする。

彼らは色々なカードを使い、戦術を駆使し、勝利への道を切り開いた。

それを真似してみたくて、作っていたデッキたち。

それは彼らのデッキを模倣したものだったけど、そこにあったのは勝つための意思じゃなくて…

ただ純粋に、憧れと楽しさを求めていただけのような気がする。

こうすれば強いじゃなくて、こうしていたのがカッコよかったから始まった。



カッコいい戦士が好きで戦士族を組むように、強力なドラゴンが好きでドラゴン族を組むように、

海竜族が好きでOCG増やせとコナミに求めるように。いや、最後はどうだろう。



そっか、こいつらは今、遊星が作ったデッキじゃなくて、俺が作ったデッキだった。

遊星と闘ってきたカードたちじゃなくて、俺と一緒に闘っていくカードたちだった。

例え外見はコピーでも、中身はずっと俺と一緒の仲間たちだ。

遊星が俺のデッキを使っても力を発揮出来ないだろうし、俺が遊星のデッキを使っても駄目だろう。

ならこれは、きっと俺のデッキでいいんだろう。



ならもっと一緒に頑張ればいいんじゃないか。

まだ頑張れる事はある。



「だからこそ、オレはこのデュエルで見せられた、その想いに応えてみせる!

 オレのカードたちと共に!」



カードをドローする遊星。

その顔を見れば分かる。希望は、繋がったのだ。



「Spスピードスペル‐シフト・ダウンを発動!

 自分のスピードカウンターを6つ取り除く事で、カードを2枚ドロー!」



そして、最初のドローが繋いだ希望を更にその2枚が、最後の光をフィールドに託す。



「これがオレたちの最後の力、手札から2枚のスピードスペルを発動!

 Spスピードスペル‐チューンナップ・123ワンツースリー!

 そしてSpスピードスペル-スター・フォース!」



2枚は最後に繋げた。後は、最後の結果が出るのを待つのみとなる。

運命が導いたのではないだろう。ただ、勝ち取ったのだ。

ただ自らの命運を賭けた勝負から。



「スター・フォースの効果は、自分フィールドのモンスター一体を除外し、

 除外したモンスターのレベル×100ポイントの攻撃力を別のモンスターに与えるカード。

 ジャンク・アーチャーのレベルは7。この効果を受ければ、ターボ・ウォリアーの攻撃力は700となる」

「墓地のスキル・サクセサーと合わせても、攻撃力は1500。

 ターボ・ウォリアー自身の効果でスターダストの攻撃力は1250になるが、俺のライフ400は削り切れない。

 例えスターダストかバーサーカーを破壊出来たとしても、

 次のターン攻撃力が0に戻ったターボ・ウォリアーは破壊され、お前のライフは0になる」

「ああ、だからこそチューンナップ・123ワンツースリーの効果が必要になる。

 ダイスを振り、出た目が1、2の時には1。3、4の目が出た時は2。5、6の時は3。モンスターのレベルを上昇させる。

 この効果でジャンク・アーチャーのレベルを上げ、スター・フォースの効果を底上げする」



足りないのは僅か150ポイント。3以上の目が出れば、それで相手の勝ちとなる。

2/3の確立で当たりを引ける、有利な賭け。

例え、目が外れたとしても、モンスターを守備にし攻撃を凌ぐと言う手を取る事も出来る。

その筈なのに、遊星は2枚のカードの使用をすると宣言した。



「スター・フォースの発動宣言はチューンナップ・123ワンツースリーの効果処理後でいいだろう。

 確立の高い賭けとは言え、何故わざわざ今それを…」

「引き当てて見せる。お前とのデュエルに本当の意味で勝つためには、ここで全てを賭けなければならない」



遊星号の真上から、サイコロが射出された。

それこそ、ジャンク・アーチャーの矢の如き速度で発射されたそれは、俺達のDホイールの走行ルート上。

だが遥か前方に位置する場所に落とされた。

この速度で一瞬、それとすれ違う瞬間に確認しろ、と言う事なのだろう。



ほんの数秒でしかなかったが、互いが目を瞑り、その決着の時を待つ。



お互いが同時に、自然に眼を開いた時、その結果は二人の眼に刻み込まれた。



「出た目は、」



微かに溜め息を漏らす。一瞬の交差で見て取れたサイコロの目は、



「チューンナップ・123ワンツースリーの効果で出たダイスの目は、4!

 よって、ジャンク・アーチャーのレベルは2、アップする!」



これでジャンク・アーチャーのレベルは9。

片腕をもがれた戦士は、その位を上げて最期の使命を果たすべく空へと舞い上がった。



「そして、スター・フォースの効果! レベル9となったジャンク・アーチャーを除外する事で、

 ターボ・ウォリアーの攻撃力を900ポイントアップ!」



崩れ落ちるようにカタチを保たなくなったジャンク・アーチャーが九つの星となる。

一つ一つは小さい力だが、それは全ての力を残った戦士に託す事でこの場を切り拓くための力と化す。

ターボ・ウォリアーの胸に、全ての星が吸収された。



「墓地のスキル・サクセサーをゲームから除外し、効果発動! モンスター一体の攻撃力を800ポイントアップ!」



遊星の前にスキル・サクセサーの映像が出て、次元の狭間に消えていく。

その際に残した光はターボ・ウォリアーに。



これで奴の攻撃力は、1700となった。

スターダストを破壊して尚、突き抜ける威力は俺を葬るに余りある力。

俺には手札も、伏せリバースも残っていない。本当に全てを出し尽くしたデュエルだった。

なら、悔いは残らない。…と、言いたかったが。



俺に応えてくれたカードたちに応えられなかったのが、唯一最大の心残りか。



「―――来い、不動遊星!」

「これがオレたちの最後の一撃、ターボ・ウォリアァアアッ!」

「迎え討て、スターダスト・ドラゴンッ!」



最後の足掻きか。いや、それは努めか。

互いに全力をぶつけあって、それで負けた。でも、まだ負けてはいない。

このバトルが終わるまでは、俺はまだ負けていない。なら諦めちゃいけないも道理だ。

俺が最後までカードを信じてなくてどうするのか。



空中で二体のモンスターが衝突する。

突き出されるターボ・ウォリアーの腕を潜り抜けたスターダストの翼が、逆に胴体を打ち据える。

揺らいだ身体を立て直す間を与えずに、首を目掛けて牙を突き立てるべく、奔る頭部。



だがそれは届かず。

胴体を打った翼を捕まえたターボ・ウォリアーが、翼ごとスターダストの身体を振り乱した。

悲鳴に近い叫びを上げる竜が、大地へと叩き付けられる。



地面を仰向けに滑りながら、ビルの跡地に衝突して止まるスターダスト。

その身体に止めの一撃を突き立てるべく、爪を揃えて構えるターボ・ウォリアー。

背面のエグゾーストマフラーが嘶き、その一撃を放つための加速へ入る。



倒れていたスターダストは翼を折られ、その飛翔能力を発揮出来ぬまま、地表で身体を起こしていた。

だがその瞳からは戦意は消えず、こちらも最後の足掻きを繰り出すべく、口腔にエネルギーを集束し始める。



「アクセル・スラッシュッ!!」

「シューティング・ソニック!!」



放たれるブレスは敵の身体を丸々呑み込んだ。

音波の奔流は完全に相手の姿を消し去るほどの規模で放たれ、そしてそれは間違いなく威力を発揮した。

だが、それでも。



波動の中を逆流するかの如く、突き出した両腕で津波を切り裂きながら進行する。

その風景は数秒で終了した。

スターダストが片膝をつく。限界を超えた活動に耐えた身体は、既に死に体。

信じる事も、潮時だった。あとするべき事は、限界を超えた闘いを演じた敗者へと称賛を送る事。



「…よくやった、スターダスト」



ただ、呟くように。



最後の一撃を凌いだ勝者が、装甲を焼け爛れさせながらも、敗者に肉迫する。

それでも瞳に宿る闘志は消えず、しかしその意思を果たす事は出来ず、その肉体を貫かれた。

胴体を突き抜ける一撃を受けたスターダストは、最後に大きく雄叫び、星屑の残照を残して消え去った。



同時に、俺のライフカウンターが0を示す。

俺の負け、だった。



Dホイールのから白煙が噴き出し、モニターには「You Lose」という表示が。



遊星も俺の近くにDホイールを停止させ、ヘルメットを外す。



「いいデュエルだった。色々学ばされた」

「こちらこそ、だな。もっとも、俺のは受け売りだったが」



主にサンダーグレイモンの。

少し遊星の顔が緩んだ。うむ、奇抜すぎる髪型を除けば、普通にイケメンである。



「負けた以上、俺の正体も話さなければな…」



と言っても正体もクソもないんだが、異世界人が妥当か。

どうせ夢なのでヒポポタマスとかトンヌラとか名乗って笑いを狙いに行くべきなのだろうか。

などと、取りとめのない考えをしていたら、遊星は静かに首を横に振る。



「いや、いい。お前がデュエリストであると分かった以上、余計な詮索はしない。

 何か果たすべき目的があってやったのなら、それでいい」



…やはりイケメン。イケメンで、強いのね! 嫌いじゃないわ!!



「そうか、ならば言うまい。恐らく会う事はもうないだろうが…頑張れ、とでも残していこう」

「ああ、受け取っておこう」



俺はデュエルモードを解除したDホイールのハンドルを握りなおす。

通常走行モードの画面に、何やら見慣れないアイコンが増えていたが、とりあえず今はここを離れるのを優先すべきだろう。



アクセルを踏み込む。

殺人的な加速に、一瞬意識が吹っ飛んだが、何とか持ち直して頑張る。

一気に遊星の姿が見えなくなった。

そして感慨に浸る走行中、Dホイールが何故か謎発光し始め、俺の意識も吹っ飛んだ。







「…ジャック。俺はお前に会いに行く、奪われたものを、取り戻すために」



超速で走り去るDホイールの加速を見届けた遊星は、自身の造り上げたDホイールに目を向ける。

今のこいつにあそこまでのパワーはない。だがいずれ、このマシンが完成した時に。



奪われたDホイール、カード、そして―――絆。

その全てを取り返すために、ジャックの前に…いや、ジャックの後ろから追いついてみせる。

今ならば分かる。あの時の答えが。

その答えを伝えるためにも。











「と、いう夢を見たのさ」



ふぅと一息。

だよね、流石にいきなり遊戯王の世界に行っちゃうとかねーよ。

いや、順序踏んで行けても困るけどさ。



ふと眼を覚まして、バイクではなくベッドで寝ていたのだから間違いない。

あーそうとも間違いなくDホイールは夢だった。



…俺んち敷き布団だったけどな。



何故にベッドで寝ているのか、ここはどこなのか、それは分からない。

でもとりあえず一つ、鉄板すぎてやらないといけない気がする一発ネタを。



「知らないて」

「おや? 起きたのかニャ?」



ガチャリ、とドアノブを捻って登場。まさかの知らない天井キャンセル。

うおおい、ちょっとやってみたかったのに。ちょっとやってみたかったのに。



中に入ってきたのは、長身痩躯の男性。

眼鏡をかけ、細っそい眼をしているのがまず目に止まり、そして腰近くまで伸びている長髪も目立っている。

首の後ろで束ねていなければ、さぞ鬱陶しい事だろう。

そして目でなく耳で捉える情報。かっぺーだ、超かっぺーだ。

かごめぇえええええええ! と、台本違った。みたいな?



「え、と…」

「まさかでっかいバイクに乗ってここまで来ちゃうとは、流石の先生も予想してなかったにゃあ。

 今時のバイクは水上バイクに変形するのかニャ?」



しねぇよ。でも宇宙は走れるよ。あと合体もする。(ただしイリアステルに限る。



猫を抱えた、大徳寺某はそう質問しておきながら答えを聞かず、窓にかかったカーテンを開けた。

明るい。日差しの色的に多分、早朝なのかと思った。答えは知らないが。

照らされる部屋は間違いなく木造建築のレッド寮であり、それ以外とは考えにくい状況だった。



「えーと、あはは~、すいません」

「謝る事はないのにゃあ。ただ幾ら嬉しかったからと言って、フライングはあまり感心できないのにゃ」

「はい?」

「筆記試験200番、実技試験もギリギリでレッド寮の新入生の中でも、下から一番。

 落ちたと思ってたのがギリギリ補欠合格出来たとはいえ、入学前に死んでしまったら元も子もないにゃあ」



何だその酷い成績。そして誘発即時で自殺させる効果持ってそうな発言を止めてくれ。

俺そこまで頭は悪くないと思うと言うか、何で俺がそんな試験を受ける事になっているのか。

さっきの5D’sと違って、ただ出ただけじゃなく何か設定しょってるのか今回は。



「それって、つまり、俺がこの寮の生徒って事。です、よね?」

「そう、ここが今日から君が暮らすデュエルアカデミアの三つの寮の一つ、レッド寮。

 ちなみに、君が流れついたのは二日前。今日は入学式当日。荷物はそこにあるから、遅刻しないようにするのにゃ」



それだけ言って、大徳寺先生は部屋を出て行ってしまった。

よくよく部屋を見回してみると、何か色々雑多にモノが置いてある。

なるべく端っこに寄せてあるが、入口からシングルベッドに繋がっている一本道は整っているが、それ以外。

部屋の八割はカラーコーンだの石灰で線引くアレだの、詰め込んである。



つまり最下位にはちゃんとした部屋を貰う権利はなく、倉庫で暮せと。

くそう、コナミくんは一人部屋に老若男女が押し寄せる人気者だと言うのに。

何だこの扱いの差は!(ジャック風。



とにかく今度は、GXの世界に来てしまった様子であった。











後☆書☆王



やはりあった1話のデュエル間違い。



>>ターボウォーリアーへのエフェクトヴェーラーの効果使用ですが、ターボさんは星6以下のモンスターの効果対象になりません。

ついでにファントムの効果も間違ってました。攻撃力も800下がるのね。

まぁパワーフレームで実質リセットされてたからあんまり関係なかったけど。

指摘をしてくださったひふみ様、ありがとうございます。



ああ、そうそう。今回の指摘受けてどうしたもんかと悩んで、一時星屑のレベル下げればよくね?

という結論に至ったんですよ。トリッキーだし、なんとなく。結局安易に処理しましたが。

で、ターボさんの半減効果の効果処理は攻撃宣言時との事で、攻撃宣言時にチェーンしてレベル下げたらどうなるのか。

よく分からなかったので、事務局に電話したわけです。



Q:ターボ・ウォリアーのレベル6以上のシンクロモンスターに対しての攻撃宣言時、

  レベル・リチューナー等で攻撃対象となったシンクロモンスターのレベルが5以下になった場合、

  攻撃力の半減効果は適応されますか?

A:担当の者が確認していますので、回答しかねます。



これが巷で噂のA:調整中って奴か! こんな風な答えが返ってくるんだー!

と、何度か電話した事あるなかで初めての体験でテンションが上がりました。いや、ただそれだけですけど。

戦闘時に誘発効果ってこんなんが多いらしいですねー



>>第一話の

>>勝手に複線を張る。俺が張った複線は下っ端さんが体を張って回収してくれる

>>複線→伏線ではないでしょうか

修正しました、ご指摘ありがとうございます。



ファンゴ様よりご指摘。

>>第一話

>>>「罠トラップ>発動、シンクロ・ストライク!

>>>「スター・フォースの発動宣言はチューンナップ・<123ワンツースリーの効果処理後でいいだろう

共に修正しました。どうもありがとうございます。



ぶっちゃけ今見て1話は自分で気付いてるだけでもどでかい間違いが一つあったりする。

デュエルの内容半分くらいやりなおさなきゃいけないくらいの。


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