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No.26019の一覧
[0] 【ネタ】なのはちゃんが現実に来たんだよ!【なのは→現実】[七号](2011/02/14 20:10)
[1] 違わない。[七号](2011/02/15 20:22)
[2] 証明。[七号](2011/03/02 01:15)
[3] ナックルパート。[七号](2011/03/06 02:52)
[4] なまえをよびあって。[七号](2011/03/14 01:35)
[5] どーでもいい。[七号](2011/07/26 00:20)
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[26019] 【ネタ】なのはちゃんが現実に来たんだよ!【なのは→現実】
Name: 七号◆cbb0420c ID:023deec6 次を表示する
Date: 2011/02/14 20:10



 僕は平凡な男だ。
 なんて事をのたまってみたが、実際平凡かそうでないかは自己で判断出来るものではないだろう。
 人には人の価値観がある。誰かの普通は誰かの異常。それくらいは解っているつもりだ。
 解ってはいるが、それでも、僕は常々平凡な男で居たいと思っている。
 平凡で、それなりに幸せで、それなりに苦労している、極々普通の人間に。
 身長。体重。頭脳。体術。とりわけ何かがずば抜けている所は無い。劣っている訳でも無い。
 『特別』も『異常』も何も無い、普通の男。
 ただ、あえて特異な点を挙げるとしたら――――

「……親父、僕、ニュースを見たいんだけど」
「待ってくれ。今俺の嫁がパンチラしているんだ……くっ、この画面が邪魔だッ!」
「お袋、アンタの夫が浮気しているぞ。ニ次元に」
「ちょっち待って。あともう少しで倒せるの……うし! レアアイテムをドロップ!」
「どいつもこいつも……!」
「お兄ちゃん、ちょっと」
「……何だよ」
「ねぇ、この子が中々落ちないんだけど、どうしたらいいと思う? 男の人の観点から意見を聞きたいんだけど。あ、お兄ちゃんじゃ無理か。童貞乙」
「お前マジでこねくり回すぞ」

 ――――家族が変わっている事だ。
 『あえて』じゃねーな。あえて言う必要もねーな。もう異常だなこれ。異常だよ僕の家族。
 ところで僕は妹が言った『童貞おつ』なる言葉の意味が解らなかったのだが(無論、童貞では無く、おつの方だ)この家族は僕が理解出来ない言語を巧みに操るので、その辺はスルーした。だが、何となく馬鹿にされた感は否めないないのでとりあえず一言申す事にする。

「つーかさ、お前何で居間でゲームしてんの? 何でそのゲームは女の子の裸が映ってんの? 何でお前引き籠ってんの? 学校に行けよゴラァ!」

 訂正。一言では済まなかった。溜まりに溜まったフラストレーションの暴発である。

「……ぐすん。おかーさん、お兄ちゃんが苛める」
「あらあら。駄目よ、お兄さんなら妹にもっと優しくしないと」
「あんたらが甘過ぎんだよ……!」

 妹が明らかな嘘泣きで、パソコンのキーボードを狂った様に叩いていた母親に抱きつく。そして何故か窘められる僕。何でだ。
 無駄だとは思っているが、一応は抗議してみる事にする。

「大体さぁ、お前何で学校行かねぇんだよ。それこそ、イジメられてた訳じゃねーんだろ?」
「ふふふ、私の様な暗黒洞界硝嶺魔術の使い手は、あんな矮小な連中とは釣り合わないわね」
「頼む、日本語を話してくれ」
「くくく……暗黒洞界硝嶺魔術とは深淵の秘術。凡夫には理解出来まい」
「理解したくもねーよ」

 駄目だ。会話にならない。解っている事は、妹が学校に行く気が無い事と僕と会話する気が無い事。
 と、そこで今までテレビに齧りついていた親父がゆらりと立ちあがった。どうしよう、もうウザい。

「いいぜ……お前が「学校に行かなければならない」と思っているのなら、まずはその幻想を――」
「長い」
「そげぶっ!?」

 なにやらクソ面倒くさい長台詞を言う親父を、迷う事無く殴り飛ばす。謎の奇声を上げる親父。
 どうせまたアニメかなんかの台詞なんだろうが、一々前口上を述べるのは至極うっとおしいので止めて欲しい。と言うか死んで欲しい。

「死んで欲しい」
「ドストレート過ぎない!?」 

 声に出てしまった。ま、いいか。

「死んで欲しいんだけど」
「二度も!? ふっ、だが俺が死んだらこの家の生活費はどうするんだい?」
「保険金が入れば僕が大学卒業するぐらいまでは何とかなるだろ。ありがとう親父、どうか空高い所で家族を見守っていてくれ」
「綿密な将来設計!?」
「あらいいわね、それ」
「母さん!?」

 どうやら親父には多額の保険金がリアルに懸けられている様だ。
 まぁ至極どうでも良い話ではあるが。
 何にせよ、僕はニュースが見たかったのだが、仕方が無い。大人しく部屋に戻る事にする。
 階段の手摺に到達し、何の気も無く、ぐるりと部屋を見渡した。

 アニメ好きの父親がワーワー喚いている。
 ネットゲームなる物に興じている母親がクスクスと笑う。
 ノートパソコンの前でカタカタと妹がキーボートを打つ。

 僕はそんな家族の呈を見て、一つ嘆息した。
 今更の事で、毎度の事だけど、僕はやっぱり家族の事が好きになれないかもしれない。
 決して嫌いではないし、家族の皆だって悪い奴らでは無い、無いんだけど。
 僕がこう思うのは果たして家族の所為なのか。それとも只僕の視野が狭いからなのか。
 平凡。普通。異質。異常。
 その境界線は一体どこにあるのか。誰が引いているのか。
 家族が異常だとしたら、僕はどうなのだろうか。
 僕も異常なのか。異質なのか。
 解らない。解らないけど。
 
「にゃー」

 僕の足元で、飼い猫のリニスが鳴いている。
 屈んでその喉元を擽ると、また気持ち良さそうに「にゃー」と鳴いた。
 その様子を見て、僕は薄く笑う。

「僕は、平凡で居たいんだよ」
「にゃー?」

 猫相手に話し掛ける事は異常なのだろうか。
 それすらも、僕には解らない。






 と言うのが昨日の出来事だ。
 そう、これは昨日の話だ。過去の出来事だ。
 よって、僕がこうしてモノローグを垂れ流している間にも、時は刻々と流れている。
 だけれでも、僕はその流れに身を置きたくは無かった。
 変わっていても、異常だとしても、昨日は何時もと同じ『日常』だった。『日常』、だったのだ。
 だと言うのに。

「なんか食べたい物ある? 見たいテレビとかある? あ、お菓子をどうぞ!」
「ちょっとお父さん、そんなに一辺に喋っちゃ戸惑っちゃうでしょ。……ゴメンなさいね?」
「あ、あはははは。お気遣いなく……」

 誰だあの子は。
 僕は親父とお袋が甲斐甲斐しく世話を見ている子を見る。
 オレンジを基調とした長袖に、同じ色のスカート、黒いソックス。
 年頃は大体十歳をちょっと過ぎたぐらいだろうか。栗色の髪をツインテールにしているその様は、その子幼さを強調していた。

 ……幼女誘拐?


 そこまで脳みそが思い立ったところで、ハッとした。
 正直、学校から帰って来て居間に着いたら、見知らぬ女の子が歓迎を受けていたと言う意味不明で理解不能な展開が僕を待ちうけていたもんだから、多少茫然自失していた様だ。
 僕は右手を握ったり開いたりしてその感触を確かめながら、親父に近づいた。
 親父はそんな僕に気付き、手を振る。

「おお! お帰り!」
「ただいま死ね」
「げぶっ!?」

 僕の右ストレートが親父の顎を綺麗に捉え、華麗に吹っ飛ぶ親父。
 それを見て、例の女の子が目を丸くしているが、そんな事はどうでも良かった。

「お前さぁ、何してくれちゃってんの? あれほど人の道は外すなって言ったじゃーねか! こんな年端の行かない子をさぁ……! これで何度目だ? ん? また警察来んだろーがよぉ!」

 この台詞は息子に言われるもんでは無いと思う。普通は。
 だが、親父には前科がある。比喩じゃなく、マジで。
 親父は時たまこうして少女を拾って来る事がある。
 その少女は大体は訳ありで、その全部は無理やりでは無く、居場所を求めての事である。
 しかしこのご時世、如何なる事情があろうとも、余所様の子を勝手に家に招くなど言語道断。
 いつぞやだって、それで警察を呼ばれたのに。ホントに懲りねーなコイツは! こんな日常は要らねーんだよ!

「ち、ちちちち、違うって! 俺何にもしてないって! なぁ母さん!」
「ええ。今回は違うわよ、ねぇ?」
「は、はいっ」
「ああ? じゃあ何だって言うんだ?」

 弁解する親父と、にこやかに笑うお袋、そして、多少の緊張感を持ってそれに同意する女の子。
 益々意味が解らん。
 僕はてっきりまた親父が家出少女を拾って来たと思ったのだが、どうやら親父は関係ないらしい。

「ってかお前、この子誰か解らんの?」
「見覚えぐらいはある筈だけど」
「は? こんな子、見た事なんて……」

 いや、待てよ。
 記憶の底を探す。脳内の引き出しを開ける。探す。開ける。探す。開ける。
 ……引っ掛かるものがあった。
 見た事なんて無い筈なのに、どうしても『何か』が僕の脳裏を過ぎる。
 改めて女の子を見る。栗色の髪。ツインテール。あどけなさが目立つ整った顔。首から下げられている赤い石のアクセサリー。……そう言えば、どこかで……
 

「持って来たよー!」

 と、僕が記憶の海を漂っていると、やたらテンションが高い妹の声が聞こえた。
 僕がその声の方向を見ると、何やら沢山のDVDを両手に抱えた妹が階段から降りて来たところだった。 恐らく自室から持って来たのだろう。

「あ! お兄ちゃんお帰り!」
「あ、ああ。お前、何か妙に元気だな……」

 何時もは気だるげそうにしているし、何より普段から邪険な態度を取っている妹のその明るい様子に、僕は面を食らってしまった。こいつのこんな楽しそうな姿を見るのなんて、何時振りだろうか……
 僕が物思いに耽っていると、妹は鼻息荒くして、持っていたDVDを僕に見せる様に前面に押し出した。




「そりゃそうだよ! なのはちゃんが現実に来たんだよ!? 元気にもなるよ!」




 ……は?




「……スマン、もう一度言ってくれ」
「だから、なのはちゃんが現実に来たんだよ!」

 駄目だ。会話にならない。解っている事は、妹が冗談抜きの本気で言っている事とDVDのパッケージに例の女の子に良く似た子がアニメの絵として描かれている事。
 要は、何も解らないって事が解った訳だ。


「劇場版じゃないんだよ! アニメ版だよ!」
「にゃー」


 妹の意味不明な主張とリニスの鳴き声が妙に遠く聞こえる中、僕は紛れもない『異常』が訪れている事をはっきりと理解した。




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