<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.25912の一覧
[0] 【ネタ】サギタリウス・マギカ(まどか×Fate)【完結】[KCA](2011/07/04 13:06)
[1] 序幕:『贋作者は悪夢の牙から少女を護る』[KCA](2011/02/11 22:19)
[2] 第一幕:『狙撃手は最高の射手を師に仰ぐ』[KCA](2011/02/11 22:20)
[3] 第二幕:『先任下士官(ベテラン)は新米候補生(ヒヨッコ)に警告する』[KCA](2011/02/11 22:21)
[4] 終幕:『壊れた幻想、打ち砕かれた宿命(ブロークンファンタズム、ブロークンフェイト)』[KCA](2011/02/11 22:28)
[5] 幕間1:『砂糖菓子の弾丸では絶望を撃ち抜けない』[KCA](2011/03/21 17:45)
[6] 幕間2:『迷走する思春期のエゴグラム』[KCA](2011/03/21 17:54)
[7] 余幕:『魔女よりも強く鮮やかに魔法少女は夢を見る』[KCA](2011/07/04 13:06)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[25912] 幕間2:『迷走する思春期のエゴグラム』
Name: KCA◆1515fe95 ID:a8cb8461 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/21 17:54
 かの白い獣が評するところの「最大のイレギュラー」たる魔法少女、暁美ほむらは、自らも含めた魔法少女システムの裏側について、語ろうとしていた。
 「まず、最初に言っておくわ。わたしは、自分の時間逆行能力を使って、この時間──そうね、9月16日からの、およそ1ヶ月あまりを、すでに何度も繰り返している。それを前提として話を聞いて頂戴」
 「何度もって……ほむらちゃん、そんなに何回もタイムスリップしてるの?」
 途方もない話だったが、ほむらに多少隔意があるマミやさやかはともかく、素直なまどかはアッサリ彼女の言葉を信じたようだ。
 「そうよ……目的があるの。それを成し遂げるまで、わたしは何度でも……百万回だって時を繰り返すつもりよ」
 ほむらの言葉に込められた静かな意思は、3人の少女達が気押されるだけの重みをはらんでいた。
 「ふむ……まさに、「魔法」の領域の話だな。それが事実だとして、君の追い求める目的とやらを聞かせてもらってもよいかね?」
 形こそ違えど、かの弓兵もまた、理想を追い求めて幾度となく絶望的な戦いを繰り返した存在だ。いつ果てるともしれない戦いの日々の過酷さは身に染みて分かっている。
 だからこそ彼は、ほむらの瞳の色から、彼女が少なくとも嘘は言ってないだろうことを確信していた。
 「ええ──いえ、むしろぜひ聞いて、考えて欲しい」
 ほんの一瞬だけ瞼を閉じたほむらは、再び目を開けると、アーチャー、さやか、マミの順に視線を向け、最後にまどかの瞳を真っ直ぐに見詰めながら、自らの辿った軌跡を語り始めた。

 長期入院から復学したてで、勉強も運動も何もできないただの臆病な少女だった時、魔女の結界に誘い込まれて襲われかけたところを、すでに魔法少女になっていたまどかとマミに助けられたこと。
 魔法少女に関する話を聞き、まさに今のまどかとさやかのように、ふたりのあとをついて回ったこと。
 ワルプルギスの夜が襲来し、マミが斃れ、ひとり残ったまどかが玉砕覚悟で戦いに赴き、予想通り相討ちになったこと。
 友達であるまどかの危地に何もできなかった自分が嫌で、まどかの亡骸を前にキュウべぇと契約し、魔法少女になって時を遡る力を得たこと。

 「えーっ!? てことはつまり、わたし、もう魔法少女になってたの? しかもそんなに凄い……」
 自分が死んだという話をされた割に、まどかは別のところが気になっているようだ。
 「──そうね。まどか、魔法少女になったあなたは、とても愛らしく、でも凛々しくて……当時のわたしの憧れだったわ」
 「ほ、ほむらちゃん……」
 視線が絡み合い、そこはかとなく百合な雰囲気の漂う一角。
 「仲良きことは麗しきかな、だが……続きを話してくれないか?」
 反面、対照的に「ふたりの世界」から疎外されたマミとさやかの雰囲気が悪くなる。それを案じたアーチャーが、ほむらに続きを促した。
 「──コホン。そうね」
 気を取り直して、ほむらは話を続ける。

 退院当日に逆行したほむらは、積極的にまどかに自分も魔法少女であることを明かし、マミも含めた3人チームで戦っていくことになる。
 「もっとも、魔法少女になったばかりの新米だったわたしは、まだ戦力も経験も足りなくて、最初はふたりのお荷物になってばかりだった。
 まどかもそうだけど、巴マミ、あなたには当時よく助けられたわ」
 ほむらに軽く会釈をされて、戸惑うマミ。当然だろう。ほむらから見れば「過去の出来事」なのだろうが、逆にマミにとってはカケラも身に覚えのない話なのだから。
 (なるほど……だから「貴女とは戦いたくないのだけど」、か)
 ふたりの様子をさりげなく観察しながら、アーチャーは、以前マミと遭遇したほむらが漏らした言葉を思い返していた。
 かつての恩人に敵対することに対して、彼女も何も感じないわけではなかったのだ。

 「時を止めて爆弾を使う戦法で、ようやくわたしも戦力になれるようになった頃、あのワルプルギスの夜が現れたわ」
 3人で挑んだおかげか、マミは意識不明の重態、まどかとほむらもボロボロになりながら、かろうじてワルプルギスの夜を撃破し、3人とも生き残ることはできた。しかし……。
 「魔力を使いはたしてソウルジェムが真っ黒になったまどかが、突然苦しみだしたの」
 ビクン、と大きく震えるまどか。
 「い、一体どうなったんだよ!?」
 代わってさやかがほむらに問いかける。
 「その前にひとつ聞きたいのだけど……巴マミ、ソウルジェムが極限まで濁り真っ黒になった時、何が起こるか、貴女は知っている?」
 「え? そ、それは……」
 改めて問われて、自分がその答えを持っていなかったことに、マミは愕然とする。
 「やはり知らないのね。ソウルジェムが完全に汚染され、漆黒に染まった時……」
 「──グリーフシードとなる、かね?」
 「アーチャー! まさかそんな……」
 頼もしき従者の予想外な言葉に戸惑うマミだったが、続くほむらの言葉は無情だった。
 「いえ、その通りよ。どうしてわかったの?」
 意外そうな目で見るほむらに、アーチャーは肩をすくめてみせた。
 「私は物体の構造を解析する魔術を得意としていてね。その魔術で、マミのソウルジェムと、入手したグリーフシードを解析してみたことがある。結果は「解析不能」」
 「そう、そうよ! アーチャー、あなた、「詳しいことはわからない」って言ってたじゃない!?」
 一分の希望を求めるようにマミはアーチャーにすがりつくが、彼の言葉もまた残酷だった。
 「確かに「詳しく」はわからなかったが、それでもわかった事は皆無ではない。
 家にたとえるなら、中の間取りや家具の配置まではわからなくても、外観ぐらいはおぼろげにつかめたような状況だな。
 その結果、SGとGS、このふたつの「家」の建築様式が、非常に似通っていることは理解できたのだよ」
 「そんな……」
 放心したようなマミの肩に手をやり、少し乱暴に揺さぶるアーチャー。
 「マミ! しっかりしたまえ!! 仮にソウルジェムがグリーフシードに転化しうるモノだとしても、今すぐ君が魔女になるわけではない。そうだろう、暁美ほむら?」
 「──そうね。さっきも言ったとおり、ソウルジェムは極限まで汚染された時にグリーフシードに変わり、魔女を生む。逆に言えば、綺麗な状態を保っていれば問題ないわ」
 信頼するアーチャーの激励と、自らも魔法少女であるほむら自身の保証によって、マミは少しだけ平静を取り直した。
 「……取り乱してごめんなさい、アーチャー。確かにそうよね。でも、キュウべぇは、そんなこと何も言ってなかったのに……」
 「言うはずないじゃない。もし、その危険性を知られたら、進んで魔法少女になる娘がいなくなるもの」
 まだ信じられないという風に呟くマミに、ほむらはそう吐き捨てる。
 「まどかや美樹さんもそうでしょう?」
 ほむらの問いに、顔を見合わせるまどかとさやか。
 「えっと……」
 「さ、さすがに、死ぬ危険性だけじゃなく、下手したら魔女になるってのは、勘弁かな。ハハ……」
 まどかより「契約」に興味を示していたさやかですら、及び腰になっているようだ。
 「ええ、それが賢明ね」
 どうやら期せずして、ほむらの「まどかに契約させない」という願いは、実現する可能性が高くなったようだ。

 「ふむ。そして、暁美ほむら、君は再び時を遡ったというワケか」
 動揺した少女たちの心が小康状態を取り戻した頃合いを見計らって、アーチャーが、ほむらに続きを促した。
 「ええ。それとわたしの呼び方は、ほむらでいいわ」
 次のループでは、ふたりのほかにさやかも魔法少女になっていた。皆に「ソウルジェム=グリーフシード」の真実を伝えたものの、あまりに奇想天外な話のため、さやかを筆頭に誰も信じなかった。
 しかし、皮肉なことに、ワルプルギス戦より前に、そのさやかが真っ先に魔女化。これにより、ほむらの言葉が真実とわかったのはよいが、マミが錯乱して仲間のひとり、杏子のソウルジェムを撃ち抜いた。
 続いて、マミのリボンで束縛されてほむらもその標的となるはずだったが、間一髪、まどかがマミのソウルジェムを撃ち抜いてくれたのだと言う。
 「それと……ソウルジェムは、私たち魔法少女の魂を結晶化した、言わば命そのものよ。当然、壊されれば死ぬわ」
 さらなる衝撃的な事実を暴露するほむら。
 「うわっ、なんだよ、その「ひぐ●し」状態!? 結局、あたしとその杏子ってのとマミさんの三人とも死んだってワケ?」
 あまりに凄惨な結末に、さやかが呻く。
 (時間遡行に加えて魂の具現化か。やれやれ、魔法の大盤振る舞いだな)
 内心溜め息をつきつつ、それでもアーチャーは覇気のないマミを気遣う。
 「大丈夫か、マミ?」
 「ええ……大丈夫。わたしは真実を知らないといけないから」
 無論、強がりだろうが、まだ顔色は青いが、その瞳に再び意志の光が戻っていることが見てとれた。
 「平気よ。アーチャー、あなたは何があってもわたしを守ってくれるんでしょう?」
 「ああ、もちろん」
 ……と答えたところで、今度は自分達主従が3人の少女の注目(しろいめ)を浴びていることに気付く。
 「(コホン)済まない。続けてくれ、ほむら」
 鉄面皮なこの男にしては珍しく、決まり悪げな表情を浮かべつつ、仕切り直す。

 「──その後、わたしとまどかはふたりでワルプルギスの夜に挑んだけど、やっぱりボロボロになって、ソウルジェムもほとんど真っ黒になったわ」
 けれど、最後にひとつだけとってあったグリーフシードで、まどかはほむらのソウルジェムを回復させ、ひとつの願い事をしたのだ。
 「過去に戻り、自分がキュウべぇと契約する前に止めてくれ」と。
 「そして、もうひとつ。まどかは「魔女にはなりたくない」と言った。だから……だから、わたしは……」
 一瞬辛そうに目を伏せたものの、顔を上げ、しっかりとまどかの瞳を見つめるほむら。
 「わたしは、まどかのソウルジェムを撃った」
 「ほむらちゃん……」
 「許してなんて言わない。ほかに方法がなかったのは事実だけど、ソレを選択したのはわたし自身だから……」
 激情のままに言葉を紡ぐほむらを、まどかはそっと抱きしめる。
 「もぅ、いいよ。大事な友達だった「わたし」を自分の手にかけるなんて、きっとすごく辛かったよね。わたしは、その時の「わたし」じゃないけど、でも、その「わたし」もきっとほむらちゃんに感謝してると思う」
 「まど、か……」
 誰よりも待ち望んでいた「友」の優しい言葉に、ついに気丈な女戦士の仮面は剥がれる。
 滂沱と流れ落ちる涙を隠そうともせずに、ほむらはまどかの胸に顔を埋め、しばし嗚咽を上げるのだった。

 「──少し休憩を入れよう。お茶のお代わりとスコーンはいかがかね?」
 頃合いを見はからって、いつの間にか台所に姿を消していたアーチャーが、ティーポットとお菓子の入ったトレイを手に現れた。
 ほむらも席を外し、洗面所で顔を洗って来た時には、元のクールな表情を取り戻していた。
 無言のティータイムは、しかしこの部屋にほむらが来た当初と異なり、決して悪い雰囲気ではなかった。
 やがて、皆が落ち着いたことを見計らって、アーチャーはほむらに話しかける。
 「そして、それから何度もワルプルギスの夜を乗り越えようと、君は時を遡ったわけだな」
 「ええ。さっき言ったわたしの目的とは、「まどかを魔法少女にしないで」「ワルプルギスの夜を超える」ことよ。それは、あの子に誓ったわたしの使命」
 「ほむらちゃん……」
 「気にしなくていいわ、まどか。わたしが自分で望んでそう決めたの」
 幸いと言うべきか、この流れなら巴マミの協力は得られるだろう。また、イレギュラーではあるが、異世界の英雄たるこの男の力も借りられれば、ワルプルギスの夜を撃破する公算は決して低くない。
 「そうね。こうなった以上、わたしも協力することにやぶさかではないけど……ただ、それまでグリーフシードがもつかが問題ね」
 動揺から立ち直ったマミも、前向きな意見を述べられるようになったようだ。
 「ふむ。そのことなのだが……マミ、私もひとつ考えていることがある。君のソウルジェムを出してみてもらえないか?」
 「? いいけど……」
 掌に載せて差し出された琥珀色をした結晶に、アーチャーは虚空から取り出した(ように見える)「ソレ」をそっと触れさせた。
 「え!? うそ……」
 先ほどの戦闘で、少し曇りができていたマミのソウルジェムだが、アーチャーの手にあるソレに触れている部分から、ゆっくりと元の色を取り戻していく──まるでグリフシードを使った時のように。
 「!! これは、一体何なの?」
 当然のことながら、マミのみならず、ほむらの眼の色も変わっていた。
 「「全て遠き理想郷(アヴァロン)」と言う宝具……正確には、私の魔術で作り出したその模造品だな。アーサー王の伝説に登場するのだが、聞いたことはないかね?」
 古代ブリテンの英雄アーサーの名と聖剣エクスカリバーくらいなら、まどかやさやかも知っているが、さすがにそこまでは詳しくない。
 他方、優等生のマミとほむらは心あたりがあるようだった。
 「確か、アーサー王が死後に行くことになる妖精郷の名前が「アヴァロン」だったかしら?」
 「エクスカリバー以外に持つ、もう一本の宝剣カリバーンの鞘が特殊な力を持っていたと、何かの本で読んだことがあるわ」
 「どちらも正解だ。妖精の加護により、この鞘には「持ち主の老化を抑え、呪いを跳ね除け、傷を癒す」効果がある。もっとも、それは付随的なもので、本来は究極の防具として機能するのだがね。
 今は、その「呪いや汚れを浄化する」機能を、ソウルジェムに対して使えないか、試してみたわけだ」

 この日を境に、暁美ほむら──いや、すべての魔法少女とその候補たちの運命は、破滅に向かうその運命を大きく方向転換することになる。
 
-つづく?-
────────────────────
てな感じで、ひとまず「幕間」はおしまい。原作12話が終わったのち、「余演(アンコール)」を書いて、完結させるつもりです。
展開がセンチメンタル過ぎるという指摘はご勘弁。もともと、原作の雰囲気と合わないことを承知で、そういうモノを目指してますので……。
型月理論も好き放題に捻じ曲げてますが、「このご都合主義め!」と笑って許してやってください。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.052918910980225