よく分からないが、オーベルシュタインが仲間になった。
どうも、ゼークトのヒゲおやじの指図らしい。
なんだかんだで僕に対し一物あったあのヒゲおやじは、色々面倒臭い部下であるオーベルシュタインを差し向けることで、一石二鳥を狙ったようなのだ。
そんな感じで、優秀な部下が云々と伯父上に進言したらしい。
で、甥の昇進で鼻高々な伯父上がご褒美代わりに、オーベルシュタインを元帥府に召集したということだった。
と、アンスバッハさんがその辺の経緯を説明してくれた。
最近この人はこんな風に伯父上周辺の情報や、軍内部の派閥などの情報をちょくちょく僕に教えてくれる。
イゼルローンから帰って以来、こんな感じなのだが僕何かしたっけ?
さて、元帥府であるが数ヶ月前は烏合の衆であった30000も、そこそこの練度に仕上がった。
これもファーレンハイトさんとその幕僚陣の尽力の賜物である。
そのファーレンハイトさんも大将となり、新たに5000を追加した10000の艦隊を率いるのだ。
来るべきリップシュタット戦役にも希望が見えるというものだ。
「相変わらず青白くてひょろひょろと、もやしのようだな!」
「卿もさっさと自分の時代に帰ればいいのだ。石器のほうが手に合うのだろう?」
そして、よく分からないことがもう一つ。
なんか石器時代の勇者が居つくようになった。
今日もやってきたオフレッサーのおっさんと、ファーレンハイトさんが些細なことから喧嘩を始めた。
喧嘩といっても口喧嘩だ。
僕が仲裁しようとしても、二人から黙ってるよう怒鳴られる。
オーベルシュタインは我関せずで仕事を続け、シューマッハさんも初めこそ慌てていたものだが今では苦笑しながらも仕事をしている。
シュトライトさんとフェルナーさんは書類を持ってくるときにでくわすと、ああ、またかって顔ですぐに去ってしまう。
アンスバッハさんはこういうときは絶対来ない。
「では勝負といこうか!」
「おお、心得た!」
あ、決着だ。
「「飲み比べだ!」」
そして、支払いは何故か僕。
そんな平和な日常が一月ほど続いたのだが、あくる日アンスバッハさんの報告によって終わりを告げることになる。
「大規模な侵攻作戦?」
僕の疑問にアンスバッハさんが頷いた。
どうもラインハルトのローエングラム伯継承の件らしい。
原作だとアスターテがそれにあたったが、ここだとローエングラム伯になったのはアスターテの後だしな。
そうなると、もう元帥府できてるし数は40000ぐらいかな? とか考えていると、
「出撃艦艇は10万隻を超える規模で、おそらく3000万人以上の動員がかけられると思われます」
え?
なにそれ?
またしてもフェザーンである。
あのハゲ野郎、バランス取りのために帝国に逆アムリッツァをさせるつもりだ。
フェザーンの甘言に乗せられたあほの貴族どもが、あっちこっちで同盟の弱体化を吹聴している。
確かにアスターテに、先のイゼルローンで計60000ほどが消失しているが、それでも原作の内乱後ほど弱体化しているわけではないのだ。
半壊した11艦隊。
壊滅した2・4・6艦隊。
イゼルローンで失った20000を引いても、まだ最低でも7個艦隊はあるはず。
ヤンが死んでも、ビュコックとかウランフとかボロディンとか普通に健在である。
地の利もあっちにあるわけだし、ちょっと数が多いだけじゃ勝てる気しないんですけど。
僕の不安をよそに数日後、正式に同盟領侵攻作戦が決定した。
参加艦艇数13万隻、それに伴い動員されたのは実に4000万人以上になる。
内訳は、
ローエングラム元帥府より、50000。
ブラウンシュバイク元帥府より、40000。
その他の艦隊が、40000。
ローエングラム陣営は、覚醒ラインハルト本人に、双璧・ビッテンフェルト・ケンプ・メックリンガー・ケスラー・ルッツ・ワーレンなど歴戦の諸将が連ねている。
我がブラウンシュバイク陣営は、僕フレーゲルにファーレンハイトさん、オフレッサーのおっさんのほかは、オーベルシュタインにシューマッハさん、シュトライトさん、フェルナーさんと少々前線指揮官に欠けるのが寂しい。
これに加えて、メルカッツ艦隊・ゼークト艦隊・ヒルデスハイム艦隊・シュターデン艦隊・フォーゲル艦隊・エルラッハ艦隊が参加している。
いくつか不安な顔ぶれもあるが、今回の侵攻作戦の最大の問題は他にある。
今回、参加している帝国正規軍は半数ぐらい。
ローエングラム陣営は完全正規軍だが、我ブラウンシュバイク陣営は元から30000が伯父上の私兵。
そして、その他の艦隊が完全に貴族の私兵で構成されているという有様である。
どう考えても負けだろ、これ。
遠征軍の総司令官はもちろん覚醒ラインハルト元帥。
副司令官はメルカッツ上級大将。
そして、参謀長はなぜか僕、フレーゲル上級大将である。