『フォーク准将、そろそろ時間だが。……まだ要塞から知らせは来ないのかね?』
『コレは心外ですな? よもやこの作戦が失敗すると……御覧なさい! たった今、イゼルローン要塞陥落の知らせが!』
『む? 予定の符丁が無いようだが……』
『予定外の事態など戦場では間々あることでしょう。見なさい要塞から誘導が出ています! 作戦は成功です!』
『うむ。誘導に従い、入港せよ』
『ロボス元帥……了解しました』
僕の出した偽報に掛かり、要塞からの誘導にしたがってのこのこと雁首そろえた叛乱軍が近づいてくる。
映像も音声も無しで、文章のみでの通達だから引っかからないかもと思ったが、普通に掛かったみたいだ。
「ほう、叛徒どもは自殺志願者の群れか!」
司令部に響き渡るでかい声に振り向くと、さらに血化粧を増した石器時代の勇者がモニターを眺めている。
うえ、また吐くとこだった。
もう中身が空っぽだから、吐くもの胃液しか残ってないのに……
「主砲発射用意」
別のこと考えて、紛らわそう。
そう思った僕はトールハンマーの発射準備をさせる。
「叛乱軍の後方より艦影! これは……味方です!」
そんな時にこんな報告。
「数は?」
「はっ、……約15000!」
ほっ、どうやら攻撃を受けたわけではなさそうだ。
これだとうまく挟撃できるかも。
狙ったわけではまったく無いが、偶然挟み撃ちの形になっている。
正直、撤退させるのが精々かと思ったが、ゼークトのヒゲおやじがうまくやれば壊滅に追い込めるかもしれん。
「敵旗艦は識別できるか?」
「え? は、はい!」
「では旗艦に照準を」
僕の言葉に管制担当の士官が戸惑いながらも肯定の返事をする。
原作でも何で識別できたのか不明だが、ともかく可能らしい。
「もう、俺の出番はなさそうだな。休ませてもらうぞ!」
「はい、ご協力ありがとうございます」
僕でもこの先の展開は簡単に想像できるのだ、オフレッサーのおっさんもとうに理解しているのだろう。
僕に一声かけ、司令部から退室した。
しかし、おっさんに頼んでよかった。
装甲擲弾兵を借りにいったら、まさか本人がついてくるとは思わなかった。
地位が地位だけに、前線に立てなくて暇だったらしい。
最近は新兵訓練ぐらいしか体を動かす機会が無いとのこと。
結局、大隊ぐらい借りるつもりが連れて来れたのは100人ほどだから、おっさん本人が来てくれなかったらどうなっていたことやら。
そんなことを考えていると、
「司令! 叛乱軍旗艦に照準、主砲発射準備完了しました!」
準備完了の報告が入る。
「ん。要塞主砲、撃て」
僕の命令で、叛乱軍旗艦を含めたおよそ3000が一撃で消滅した。
『これは、どういうことだ? まさかイゼルローン要塞が陥落したとでも言うのか!』
『閣下、ここは――!』
『イゼルローン要塞、叛乱軍に攻撃を開始しました!』
『なんだ? これは……』
『閣下、おそらくフレーゲル大将が叛乱軍の策略を破ったのです。この機に乗じて後背より挟撃すべきかと』
旗艦が消滅し、浮き足立ったところに、イゼルローン駐留艦隊が後背より襲い掛かる。
おお、ゼークトのヒゲおやじもやるやる。
原作だと何の見せ場も無く死んじゃったからな~。
普通に戦えば強いのか。
……というか、かなり強くね?
叛乱軍が混乱しているというのを鑑みても、要塞主砲の射線に入らないよう混戦を避けれるのは普通に凄い気がする。
と思ったら、叛乱軍の一部がいつの間にやら射程外に……
ま、まあ、相手のほうが数が多いしね。
その後、3回ほど要塞主砲を撃ったころには10000ぐらいの叛乱軍が戦場から離脱していた。
駐留艦隊から掃討戦を開始する旨が入ったが、後詰の可能性があるので帰還を提案する。
ゼークトのヒゲおやじはしばし唸っていたが僕の提案を呑んでくれた。
これでようやく一息つくことが出来る。
あー、疲れた。