== 魔法少女リリカルなのは ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==
本来、戦うべき定めにある少女達が、ベンチに隣り合って座っている。
なのはもバリアジャケットから、普段着に戻っている。
そして、あらためて話すことが出来る状態になる。
・
・
と、こんな感じで頭を打って、あたしが出て来た……。」
なのはは、やさぐれフェイトに話し掛ける。
「あのね……。
この前は、ごめんなさい。」
「悪いと思ってるんだ……。」
「当然だよ。」
やさぐれフェイトは、邪悪な笑みを浮かべた。
これは、主導権を握れると……。
第7話 やさぐれと白い服の少女③
やさぐれフェイトは、なのはに話し掛ける。
「具体的に何が悪いと思ってるの……?」
「そ、それは……。
怪我させちゃったこととか……。
ずっと、謝れなかったこととか……。」
「つまり、君は、あたしに許して貰うことで、
その心の苦しみから抜け出したいだけなんだね……。」
「違う! 違うよ!」
やさぐれフェイトが、なのはを手で制す。
「分かった……。
許す……。
これで、いい……?」
なのはが首を振る。
「駄目……。
それじゃ、私は謝ってない。
無理やりに言わせただけ。」
「そう……。
具体的な罰があれば、いいのかな……?」
「罰……。
やさぐれちゃんが、それを望むなら。」
「分かったよ……。
あたしも、なのはのために条件を出す……。」
「うん。」
「でも、これはあたしの分……。
フェイトが目覚めたら、フェイトにも謝って……。」
「約束するよ。
ところで、私の名前をいつ知ったの?」
「デビルイヤーは、地獄耳……。
会話が聞こえただけ……。
じゃあ、罰を発表するね……。」
やさぐれフェイトは、ゆっくりと立ち上がり、なのはの少し前に立つ。
腰を落として両手を前に突き出し、手の付け根を合わす。
「り~……。」
両手をゆっくりと右の脇に添える形で引き戻した。
「り~……。
か~……。
る~……。
な~の~……。」
そして、バッと両手を突き出した。
「波ーっ……!
・
・
ここで、レイジングハートを突き出して、
ディバインバスターを撃ってくれるのを見せてくれたら、許す……。」
「明らかにおかしいよね!」
やさぐれフェイトは、首を傾げる。
「何が……?」
「これの何処が罰なの!」
「カメハメ波が見たい……。」
「……そんなのヤダ。」
やさぐれフェイトは、大げさに溜息をついてみせる。
「がっかりだよ……。
結局、謝る気はないんだ……。」
「違うよ!
でも、こんなの変だよ!」
「当たり前だよ……。
罰なんだから……。」
「でも!」
「君は、謝るのにも形から入るの……?
相手が納得しないのに自分が納得すれば、
謝ったことになるの……?」
「…………。」
なのはは、俯いた。
ユーノは、尤もらしいことを言っているが間違っていると思って聞いている。
「あたしだって、こんなの君の前でやりたくない……。
恥ずかしい……。
でも、恥ずかしいと思うことをやるのが罰……。」
「…………。」
「仕方ない……。
別のパターンで……。
あたしが『ドドドドドドドド……』って言ってるから、
君は、こう叫びながらシューターを撃つ……。
・
・
リリカル……。
リリカルリリカル……。
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
リリカル! リリカル! リリカル! リリカル!
ウゥゥゥリリリリィィィカァァァルゥゥゥ!!
マァァァジイイイィィィカァァァルゥゥゥ!! と……。」
「それ、七つの傷を持つ人!?」
「おしい……。
スタープラチナ……。」
「知らないよぉ……。」
「これで……。」
なのはにズーンと黒い影が落ちた。
「さっきのヤツでも、どっちでもいいよ……。」
「ううう……。
・
・
じゃあ、さっきので……。
それやれば、本当に許してくれるの?」
「うん……。
それどころか親友にもなれる……。」
なのはは、大きく息を吐いて覚悟を決めるとレイジングハートを起動する。
そして、頬を染めながら、腰を落とす。
「り、り~……。
り~か~る~……。
な~の~……波ーっ!」
やさぐれフェイトの前で、カメハメ波を撃つ体勢でディバインバスターが発動した。
なのはが、顔を真っ赤にして振り返る。
「こ、これで、許してくれるんだよね!」
「…………。」
「やさぐれちゃん?」
「ごめん……。
本当にやるとは思わなかった……。」
なのはは、さっき以上に顔を真っ赤にしてやさぐれフェイトを追い回した。
…
ユーノは、ベンチの上で溜息を吐いた。
一体、何の話をしに来たか分からなくなってしまった。
目の前では、レイジングハートを振り回して追いかけるなのは。
逃げ回るやさぐれフェイト。
「もう! ばかばかばかばか!」
「冗談……。
もう怒ってない……。
許すから……。」
「私が許さない!」
ユーノは、再び溜息を吐く。
そして、視線を戻すと先行して逃げるやさぐれフェイトがふらつき出した。
なのはが、立ち止まる。
「やさぐれちゃん?」
するとやさぐれフェイトが振り返り、なのはに抱きついた。
「ふぇ!?」
「あれは、私じゃないから!」
「わ、私?」
なのはの目の前の少女には、クマがない。
三白眼じゃない。
綺麗な目に涙を溜めている。
「私は、あんな変なことしないから!」
「も、もしかして……。
フェイトちゃん?」
少女は、頷いた。
「少しだけ出て来れたんだ。
それで……。」
「わ、分かるよ。
悪戯していたのが擬似人格さんだよね?」
フェイトが頷いた。
「修復が、まだ終わってないから時間がない。
お願い。
あの子が悪さをしたら、止めて。」
「へ? ええっ!?
私達は、敵同士……じゃなくて!
私は、謝りたくて!」
「ごめん……。
お願い……。」
「ちょ……!」
目の前の少女が三白眼に戻り、クマが出来る。
「時間切れ……。
本日のフェイトタイムは、ここまで……。
・
・
何かエライこと頼まれちゃったね……。」
「何で、人事なの!?
ど、どうしよう!?」
なのはは、ユーノに振り返る。
「ど、どうしようって……。」
「無視すればいいんじゃない……。」
「こ、困ったよぅ……。」
事態は、変な方向に捻じ曲がり始めた。