== 魔法少女リリカルなのは × ルパン三世 ~フェイトと赤いジャケットのおじさん~ ~ちょっとだけ、やさぐれフェイトさん~ ==
主の少女……フェイトに浮かぶ邪悪な笑み。
使い魔のアルフは、半歩下がって警戒する。
「あんた……。
本当にフェイトなのかい?」
フェイトは、にやりと唇の端を更に吊り上げ、邪悪な笑みを濃くする。
「あたしは……。
お前を倒すために地球からやって来たサイヤ人……。
穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士……。
スーパーサイヤ人……!」
「それは、どっかの野菜戦士じゃないか!」
アルフのグーが、フェイトに炸裂した。
第2話 やさぐれた理由
フェイトは、殴られた頭を擦る。
「あ~あ……。
怪我してる頭を殴っちゃった……。」
アルフは、ハッとしておろおろする。
「な~んてね……。
さっきの砲撃が直撃するぐらいの威力で、
あたしの頭をぶっ叩かなきゃ大丈夫……。」
「フェイト……。
本当に、どうしちゃったんだい?
目つきも悪くなっちゃったし、
クマも出来てるよ……。」
三白眼の目の下に出来たクマが、弥が上にも可憐な少女を邪悪な者に変える。
「仕方ないよ……。
あたしは、フェイトであって
フェイトじゃないんだから……。」
アルフは、目をパチクリとする。
「ど、どういうことだい?」
フェイトは、ガシガシと頭を掻くと、さっきのクセ毛を酷くする。
「ちょっと、待って……。
今、スイッチを作るから……。」
「スイッチ?」
フェイトは、目を閉じるとパチンと指を弾いた。
「いいよ……。
今の指を弾くのがスイッチだから……。」
「一体、何のスイッチだったんだい?」
アルフが、首を傾げる。
「フェイトに記憶の制限を掛けた……。」
「フェイトは、フェイトだろ?」
「あたしは、フェイトの擬似人格だよ……。」
「へ?」
「フェイトに緊急事態が起きたら、
勝手に出て来るんだ……。」
「ちょ……。」
アルフが、額に手を置いて、フェイトに手で静止を掛ける。
「さっぱり、分かんないよ……。」
「うん……。
それを説明するために、
フェイトに記憶の制限を掛けたんだ……。
知れば、ショックを受ける……。
フェイトには知らされていないから……。
・
・
話を聞いてくれる……?」
アルフは、頷いた。
「え~とね……。
フェイトは、人工的に作られた存在なんだ……。」
「…………。」
アルフは、言葉を失っている。
「『プロジェクトF.A.T.E』と呼ばれていた計画で作られたの……。」
「どうして……。」
「作られたのは分かるんだけど、
作った人間の思惑までは分からない……。
・
・
でね……。
フェイトを作った思想は、二つの人間の思想の合作なんだ……。
あたしは、基礎理論を作った人物の副産物的な存在……。
フェイトが、脳にダメージを受けた時に、
脳を修復する間だけ、フェイトを守る存在……。」
「それで、擬似人格なんだね?」
別人格のフェイトは、頷いた。
「ただ……。
少し今回は、特別……。
本当は、フェイトが気を失った時点であたしと切り替わって、
敵を殲滅して消えるはずだったんだけど……。
・
・
フェイトが、アルフを庇ったから、
プログラムにない条件で目覚めちゃった……。
殲滅する敵を持たない……。
本来、もっと凶悪で敵を殲滅するまで、
どんな手を使ってでも戦い続けるのに……。
あたしを作ったもう一人が、
別の人間の記憶をフェイトに植え付けたのも良くなかった……。
その人間が優し過ぎたせいで、
こんな中途半端な性格で目覚めちゃった……。」
「なるほど……。
それは、よく分かったよ。
・
・
でも、疑問がある。」
「何……?」
「あんたの漫画やアニメのネタは、
どっから得たものなんだい?
少なくともフェイトは、私とアニメなんて見てないよ。」
「アルフは、ネタを知ってたから、
アニメとか見てたんだね……。
あたしの知識は、基礎理論を作った人物から……。
アニメとかから、戦う知識を覚えさせようとして……。」
「馬鹿じゃないの……。」
「いいじゃん……。
あたし、アニメも漫画も好きだよ……。」
「間違いなくフェイトじゃない……。
フェイトは、元に戻るのかい?」
「うん……。
今、データの修復をしてる……。」
「データ?」
「うん……。
この体、あたしモードになると肉体が活性化するんだ……。
脳の修復は、大方、終わっているんだけど、
失われたデータを復元するには、フェイトの判断がいるから……。
例えば、アルフのご飯を魚にするか肉にするかの優先順位とか……。
戦闘で攻撃を回避するか受けるかとか……。
失われたデータが膨大だから、フェイトは、直ぐに出て来れない……。
特に後者だと、緊急性が高いから優先的に治さなきゃいけないし……。」
「そうか……。
じゃあ、暫くフェイトに会えないんだね。」
「うん……。
でも、修復が進めば、
フェイトは、ちょくちょく出て来るよ……。
データの順位付けが進んで似たようなものが一杯ある時は、
フェイトは、それの処理待ち状態になるからね……。
最終的には、それが頻繁に繰り返されるようになるから、
あたしとフェイトの入れ替わる時間は、
徐々に逆になっていくと思うよ……。」
「少し安心したよ……。」
「まあ、その間は、好きにさせて貰うけど……。」
「え?」
アルフが固まる中で、別人格のフェイトは、防護服であるバリアジャケットを解除する。
そして、元のフェイトの着ていた服を見る。
「機動性に欠ける……。」
ポイポイッと服を脱ぐと箪笥を漁る。
「これがいい……。」
別人格のフェイトは、黒いシャツと白いパンツを取り出した。
白いパンツを履いて、黒いシャツを着る。
シャツは、第二ボタンまで開けている。
「どう……?」
「どうって……。
服替えただけじゃないか。」
「…………。」
別人格のフェイトは、舌打ちした。
「寝る……。」
別人格のフェイトは、またベッドに寝転がった。
「これから、どうしよう……。
兎に角、あのやさぐれたフェイトが
別人格で安心したよ……。」
アルフは、頭を掻く。
「呼び方、分けようかな……。」
ここから、別人格のフェイトは、やさぐれフェイトで統一する。