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No.25676の一覧
[0] 【ネタ】 貴族な勇者様(ドラクエ3)[ささにしき](2011/01/30 09:18)
[1] 貴族な勇者様 序[ささにしき](2012/04/26 13:20)
[2] 貴族な勇者様2[ささにしき](2011/01/30 09:22)
[3] 貴族な勇者様3[ささにしき](2011/01/31 10:30)
[4] 貴族な勇者様4[ささにしき](2011/02/01 04:22)
[5] 貴族な勇者様5[ささにしき](2011/02/02 06:31)
[6] 貴族な勇者様6[ささにしき](2011/02/03 11:50)
[7] 貴族な勇者様7[ささにしき](2011/02/04 08:35)
[8] 貴族な勇者様8[ささにしき](2011/02/05 13:46)
[9] 貴族な勇者様9[ささにしき](2011/02/06 13:36)
[10] 貴族な勇者様10[ささにしき](2012/04/06 06:52)
[12] 貴族な勇者様11[ささにしき](2012/04/10 22:07)
[13] 貴族な勇者様12[ささにしき](2012/04/14 02:09)
[14] 貴族な勇者様13[ささにしき](2012/04/20 08:26)
[15] 設定とか色々[ささにしき](2012/04/17 08:32)
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[25676] 貴族な勇者様4
Name: ささにしき◆e73a7386 ID:28b517f1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/01 04:22
  貴族な勇者様4





 「どういうこった?」

 勇んで取引場所に向かった俺を待ち受けていたのは屍の山だった。

 誘拐犯と思しきゴロツキ共が無残に殺されている。一目では生存者は見当たらない。

 既に別の奴が助けたのだろうか。俺は手前にあった死体を観察する。

 (違うな・・・)

 殺害要因である傷痕から、明らかに人外の力が加わっている事が分かる。

 斬られた箇所、寧ろ削られていると言う方が正しいか。丁度脇腹の辺りがごっそりと無くなっていた。

 普通の人間にはまず出来ない芸当である。例外として化物染みた人間もいるにはいるが、少なくとも奴らはこんな所にはいない。

 恐らく、いや確実に魔物だ。しかも、かなり上位の種族の可能性が高い。

 ざっと見ただけだが、死体の主は相当に鍛えられた身体をしている。そんな強者を周辺の雑魚共が圧倒出来る訳が無い。

 臭い。真剣で臭っせぇ香りがぷんぷんしやがる。

 これは領民云々言ってられる次元じゃない気がする。下手すりゃ命に関わりかねん。

 矢張り帰ろう。あっさりと方針転換した俺は元来た道を戻ろうとする。

 ぐにゃり。何かを踏み付けた感触が伝わる。

 視線を下げて見るとそこにも野郎が転がっていた。ああ糞、ブランド物の靴が汚物で汚れる。

 俺は靴の価値を下げてくれた塵を蹴り飛ばし、今度こそ岐路に着こうとするが・・・。

 「―――う、ぅぅ・・・」

 か細い、爺婆には聞こえない程度の弱々しい声が鼓膜に流れ込んで来た。

 どうやら未だ生きていやがったらしい。下手に衝撃を与えたせいで起きてしまった。

 仕様が無い。情報収集と報告の為に色々聞いて置くか。

 いやいや転がした男に近付き、つま先で軽く小突く。

 「起きろ」

 ガスガスと打擲を続けると男の身体が徐々に揺れ始め、やがてゆっくりと目蓋が開かれた。

 「こ、こ・・は?」

 「レーベ東の平原だ。それより何があった」

 暫く現状認識に勤めていた男だったが、やがて意識がはっきりしてきた様だ。

 俺の言葉を咀嚼し、自分達の身に訪れた災厄を徐々に思いだし・・・

 「そうだお嬢! お嬢は無事なのか!?」

 途端に跳ね起きる。決して軽傷と言えない身体で中々のタフネスがあった。

 それにしてもお嬢だと? ゴロツキの一味に女も混じっていたのか。

 だがそんな事はどうでも良い。俺が真っ先に知りたいのは攫われた娘の行方だ。死んでるのか、生きているのか。

 「知るか。それより、てめぇらが拉致った女は如何した? 死んだか?」

 屈強なゴロツキ共が嬲り殺しにされる位だ。まず生存は期待できないだろうな。

 辺りを見回しても女の死体は無い。喰われちまったのかも知れん。

 「あ? 娘・・・。いや、違う! それは違うんだ!!」

 猛烈に首を振り、否定を続ける男。何がだよ。

 すっかりテンパってやがる。今いち訳が分からんので俺は男の胸倉を掴もうと腕を伸ばす。

 「何を言って―――」

 突如背筋に走る寒気。

 俺は身体を駆け抜けた直感と言う名の電流に逆らわなかった。

 あたふたするゴロツキ男に前蹴りを入れてふっ飛ばし、そのまま空中で回転する。

 直後、今まで俺達が立っていた直線上を赤色の閃光が駆け抜けて行く。

 あと少しでも反応が遅れていれば、俺はともかく男は蒸発していただろう。まだ、死んで貰う訳には行かない。

 一捻りして着地。後ろに向き直った俺が目にしたのは。

 (勘弁してくれよ。本当に)

 嫌~な予感ってのはどうしてこう的中するのか。どうせなら、ギャンブルの時に発揮して欲しい。

 1、2、3・・・合計4つか。俺からすれば大した労力じゃないが、この辺の冒険者に取っては絶望出来る光景。

 「おお? よーく避けたなぁぁあ?」

 中央の、有り得ない程に全身の筋肉が膨張した男が喋る。

 エリミネーターだと? 俺を怒らせるのも大概にしろ。

 どう考えてもアリアハンに出て来ていいレベルじゃないだろうが。A級クラスだぞ。

 周りの取り巻きも異色だ。ガルーダに、キラーエイプ、魔女。さっきの熱線はこの婆か。

 「有難てぇ~~。まぁた玩具が寄ってきやがったぁあ♪」

 それは嬉しそうに斧を取り出し、舌舐めずりをするマッチョ野郎。

 こびり付いた赤い染みが全てを物語っていた。こいつだ。

 「あ・・あいつだ。あの野郎が、皆を!!」

 後ろのゴロツキ男が同意する。震えながら指差す方向は俺と俺と同じ奴を捉えていた。

 どういう事だ。何故、こんな奴らがこの地に出て来れる?

 有り得ない事だ、と思考する。別に魔物の生息地が厳格に区分けされているのでは無く、純粋に異常だった。

 此処、アリアハン大陸に張り巡らされた結界は世界最高の精度だ。

 過去を遡る事数百年前。

 当時、魔物の進攻に頭を悩ませていた王が大賢者に創らせた聖障壁は、D級以上の魔物を締め出す事に成功した。

 それ以来強力な魔物が侵入できた事は一度も無い。俺をして、解析し切れない緻密な術式なんだからな。

 (結界が破られた? いや、基点には魔の者は近付けない筈だ)

 では何故。どうしてエリミネータークラスが存在できる?

 ますます以って分からない。俺は更に思考の海に埋没しようとし―――

 「なぁーに俯いてんだぁ? ビビって固まっちまったかぁぁあ」

 耳障りな声が響く。顔を上げれば、気持ち悪くなる筋肉野郎が腕を振りかぶっていた。

 取り敢えずは此処までか。後は、殺した後にじっくり考えよう。

 敵は大体B級前後。俺は即座に相応の術式を展開し、呪文を唱えて行く。

 「逝って来ぉぉおい!!」

 野太い腕が振り下ろされる。同時に左右の魔物が一息に俺達に飛び掛かってくる。

 俺は左手で剣を引き抜き、一瞬だけ後ろを振り返る。

 「死にたくなけりゃ走れ。全力でな」

 「あ、あんたは。おい、まさかこいつらと・・!?」

 お人好しなのか単なる弱気か。殺され掛かったんだから恐らく後者だろうが。

 俺はそれ程に筋肉質って訳でも長身でも無い。初見で俺を戦う者と判断するのは難しい。

 が、今長々と説明するのは自殺願望豊富な奴だけだ。忠告を果たした俺は前に向き直る。

 既に俺の意識からゴロツキは完全に葬られていた。一直線に近付く化け物共のみに注目する。

 50、40、30メートル。常軌を逸するスピードで距離を詰めて来る魔物。流石はB級。

 そしてその時が来る。残り十数メートルの所まで敵が踏み込むと同時に・・・

 「―――イオラ」

 編んでいた術を発動する。

 思わず目を覆いたくなる様な白色の光りが、全てを飲み込んで行く。

 見事に直撃だ。どれ程身体能力に優れ様が所詮は畜生。

 当然の結果に俺は満足する事は無い。爆発も納まらぬ中、猛烈スピードで敵陣に突っ込む。

 「死ね、死ね、死ね!」

 消滅し掛けていた魔物を細切れにしながら進む。

 遠くで馬鹿、という声が聞こえた気がした。まだいたのかあの男。

 心配するのは勝手だが、全く無意味だと言って置く。己が展開した術の影響を受けるなど2流以下の魔術師位だ。

 遠方で砲台に徹する魔術師とは違い、俺の様な魔法剣士には組み込んでおく戦術の一つだ。一見、暴挙と思える行動に呆気に取られている隙に―――

 「こんにちわ。―――そしてさようなら」

 ミスリル製の名剣を思い切り振り抜く。

 刀身をメラミでコーティングされた炎閃は、筋肉の鎧をあっさりと突き破った。


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