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No.25676の一覧
[0] 【ネタ】 貴族な勇者様(ドラクエ3)[ささにしき](2011/01/30 09:18)
[1] 貴族な勇者様 序[ささにしき](2012/04/26 13:20)
[2] 貴族な勇者様2[ささにしき](2011/01/30 09:22)
[3] 貴族な勇者様3[ささにしき](2011/01/31 10:30)
[4] 貴族な勇者様4[ささにしき](2011/02/01 04:22)
[5] 貴族な勇者様5[ささにしき](2011/02/02 06:31)
[6] 貴族な勇者様6[ささにしき](2011/02/03 11:50)
[7] 貴族な勇者様7[ささにしき](2011/02/04 08:35)
[8] 貴族な勇者様8[ささにしき](2011/02/05 13:46)
[9] 貴族な勇者様9[ささにしき](2011/02/06 13:36)
[10] 貴族な勇者様10[ささにしき](2012/04/06 06:52)
[12] 貴族な勇者様11[ささにしき](2012/04/10 22:07)
[13] 貴族な勇者様12[ささにしき](2012/04/14 02:09)
[14] 貴族な勇者様13[ささにしき](2012/04/20 08:26)
[15] 設定とか色々[ささにしき](2012/04/17 08:32)
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[25676] 貴族な勇者様11
Name: ささにしき◆e73a7386 ID:24ef4825 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/10 22:07
  貴族な勇者様11

 

 

 貴族に休みは無い。暇に見えたとしてもそれは綿密に調整されたスケジュールの賜物だ。

 特に俺様クラスの大貴族ともなれば小国並の領地を抱えるなんてざらにある。予め計画して置かなければとても回らない。

 実際携わるのは大まかなプロットと決裁位だが量が量だ。円滑な経営を続けるには優秀な駒をどれだけ獲得できるかに掛かっている。

 だが血筋が物を言うこの時代だ。それしか能が無い塵には事欠かないが、優秀と言える人間は限られている。

 ウチにしたって「考え」られるのは一握りの執事だけで残りは本当に糞っ垂れ。魔力が無限にあるなら人形で賄ってるね。

 下手に家柄が良いだけに報酬も馬鹿にならないと来てる。成果主義への体系移行が急務だと思っている。

 兎に角使えない人間が多いのだ。トップである俺がカバーしなければならない範囲は馬鹿広く、毎日カツカツなのだ。

 ぶっちゃけ勇者稼業なんぞに勤しんでいる暇は無く、王命が無ければ屋敷に引き籠って書類と睨めっこしてるよ。

 繰り返しになるが俺は非常に忙しい。無駄な事に時間を費やす余裕は無いのだ。・・・無いと言うのに。

 ふざけやがって。全く以って平民は俺を苛つかせる天才だぜ。そこに関しては尊敬する。

 

 

 「召喚された理由は言うまでもないな?」

 フェリクス邸執務室。家督を譲り受けた今では俺の書斎みたいなもんだ。常時は此処で大半を過ごす。

 現在、俺の聖域には場違いな人間が二人いる。色素の抜けた白髪を七三に分けた爺とそれなりに整った目鼻立ちの女。先日の一件の張本人である。

 化物との激闘から目覚めた俺を待っていたのは糞王の叱責だった。魔族を討ち取った英雄(は妹だけど)に対して何たる態度だろうか。

 城に引っ張られた俺はいたく不機嫌だったがそれも真相を聞くまでだった。半眼が一転して瞳孔が開いちまった。

 「狂言誘拐に五千Gの詐取。未遂にしても重刑不可避の立派な罪だ」

 比較的温いと言われるアリアハンも金銭犯罪には五月蠅い。金は正当な労働の対価として位置付けられているからだ。

 安易な違法行為で旨みを味わえばその堕落は経済を衰退させ、エスカレートすれば富裕層へ矛先が向きかねない。

 腕っ節に覚えのある冒険者共が大挙して屋敷に殴り込むかも知れない。私兵を抱えているのが常だが絶対数が違い過ぎる。

 そうさせない為の厳罰だ。初犯でも十年前後の労役が科されるし、強殺なんてした日には一族郎党磔に処される。

 幾ら劣等な平民と言ってもその程度の知識はあるのだろう。爺は顔を歪ませ、女は狼狽し顔面が蒼白となった。

 「反省している様で結構。判例に従えば財産没収に数年の強制労働を言い渡す所だ。通常なら、な」

 それで終わりならばどれだけ良かった事か。服用する胃薬の量を増やした主因はに比べれば可愛いとさえ思う。

 「所で」と一旦置いて、俺はとうとう本題を切り出した。

 「数日前にどこかの馬鹿が結界を破壊したらしいんだ。国民数万の命綱と言える聖壁をなあ。誰だか分からねぇが、とんでもない悪党もいたもんだぜ」

 二人の動揺具合が一層酷くなる。特に女の方はこの世の終わりを予感した顔となっている。

 「卑下する訳じゃないがアリアハンの軍事力は高くない。人間同士の戦争なんぞ久しく無いし、高ランクの魔物は結界に阻まれる。特に力を入れる必要は無いんだよ。それがちゃんと機能してるなら」

 俯く爺に土気色の女。私が関わりましたと告白している様なもんだが俺の怒りは納まらない。

 「だから上昇志向のある奴は大抵が国外に出る。より強い敵や、また危険な依頼をこなした方が効率が良いからな。分かるか?」

 椅子から立ち上がった俺は俯いたカス共に歩み寄り、手前にいた爺の腹を蹴り飛ばした。碌に身体も動かした事の無い老害は無様に引っくり返った。

 仰向けに倒れた死に損ないを更に踏み躙る。耳障りな苦鳴を漏らそうが足裏に込めた力を抜く気は全く無かった。

 「てめぇらのした事は国家転覆罪に他ならない。懲役云年? 一族郎党皆殺し、市中引き回しは覚悟して置け」

 誘いの洞窟に設置されていたのは最重要基点の一つ。勿論支点は他にもあるから全開放とはならなかったが、防御力が大幅に減退したのは明白だ。

 あの糞魔族が侵入出来たのがその証拠。不安定な聖域には高位の魔族なら制限付きで入り込めたと言う訳だ。あれで制限付きだってんだから馬鹿馬鹿しくなる。

 その後の調査で俺がぶっ殺したの以外に目ぼしい上級魔物は見掛けなかった。が、予断は許さず最厳重警戒は継続中。

 中央から呼んだ結界魔術師に24時間態勢で術式を展開して貰い、高ランクの冒険者達にも警邏を依頼した。初額で数万G、長引けば二桁などあっさり達成するだろう。

 そして金よりも余程痛いのが名誉の失墜。国王からの評価は地に堕ちているから良いが、他の官僚や諸侯の信頼を下げたのは厳しい。何派閥かは離反するかも知れない。

 「いいか家畜共。貴様等の死体を吊るす事は確定しているが、一つだけ質問に答えろ。どうやって結界の解除法を得た。あれは門外不出だった筈だ」

 踏み付けていた爺の襟を締め上げながら問う。頭を隅まで捏ね繰り回しても分からなかった。

 国家の存亡を左右する秘術である呪文は王家が保管している。持ち出すには国王と常任議員を含めた元老院の承認が必要だった。

 一介の平民如きがおいそれと手に入れられる代物じゃない。直接破壊するなぞ以っての他だ。ならば如何なる手段を用いた?

 老いぼれの顔面は一刻と青くなるが構うものか。証人はもう一人いるんだ、殺しちまって何らの問題は無い。

 「お止め下さい!!」

 酸素を欲した魚の様に爺が口をパクパクさせた頃、黙っていた女が遂に声を荒げた。割って入るように俺の腕を掴んだ女は、

 「悪いのは私なのです。己の欲に負けてしまった私が。ですから、責めるならば私を嬲って下さい!」

 中々に涙を誘う自己犠牲精神だ。ドラマなら感動のBGMが挿入される所だろう。

 だがなぁ、女。一体お前は誰に断って薄汚い手でこの俺に触れているのかな? 非常に不愉快なんだがねぇ。

 「そうかい。それならお言葉に甘えさせて貰って・・・」

 嘆願通りに爺を離した俺は女の肩に手を置いて圧縮した。痛覚を絶妙に刺激されて声にならない悲鳴を発した。

 完璧な力加減、気絶する程でも無く無視出来るレベルでも無い。人体の構造を把握する利点は医者だけに限られない。

 窒息状態から解放されて咳き込む爺を蹴り転がし、改めて女に向き直って続ける。

 「聞けば結婚を控えているそうじゃないか。俺は優しいからな、嫁入り前に傷を付けるなんて無粋な真似は慎むさ。安心してゲロってくれや」

 ぐいと肩に加えた握力を上げる。ギリギリで均衡を保っていた女は艶のある喘ぎを漏らした。

 「言います。一切告白します。ですから、お願いですからその御手を離して頂けませんか」

 やっぱり人を素直にさせる特効薬はダメージだよな。命令すんなよと最後に一握りした俺は女の言い訳に耳を傾けた。

 

 女の主張はこうだ。近々結婚が迫っていた女だったが、日時の経過と共に心身が不安定となっていった。

 食事は喉を通らず満足に睡眠も摂る事が出来ない。マリッジブルーと言われる兆候だった。そんな彼女を心配した周囲は一計を案じた。

 身代金五千Gを用意しろ。偽装誘拐を仕込む事で後ろ暗さを演出し、縁談の遅延・あわよくば破棄を狙ったのだと言う。主犯は俺の目の前で首を落とされた童貞野郎だと。

 俺が村を訪れたのも都合が良かった訳だ。勇者が出張る程の悪党に目を付けられていると知れれば、間違い無く相手は考える事だろう。平民が俺様を利用したという事実に沸騰し掛けたが先を促す。

 取引場所は俺が駆け付けた平原。そこで金を待つ予定だったが、時間を潰している最中にお嬢様に異変が生じたらしい。

 「声が聞こえたんです。とても気持ちの落ち着く心地よさで・・・」

 その声に従い、半ば操られる形で誘いの洞窟に足が進んだ。連れの連中には催したとでも誤魔化したんだろう。

 意識を保っていられたのは入口を潜るまでで、気付いた時には基点は破壊され、寒気のする様な美貌の女が微笑んでいたんだとか。

 「・・・・・・」

 話が終わって暫く、腕を組んで良く考える。考えて考えて考え尽くした末に俺は結論を出した。

 回復したばかりの魔力を掌に集める。小さな点は次第にマッチの灯火程になり、拳大まで膨張するのに時間は要し無かった。

 「残念ながら誠意が足りなかったらしいな。こいつにはてめぇらを100人殺しても釣りが来る力が込められている。その上でもう一度聞こう」

 火の玉を宙に浮かせる。揺らめいていた炎は徐々に勢力を広げ、部屋全体を紅蓮に染め上げた。目の前の平民二人は蒸し風呂に叩き込まれた様な熱さを味わっているだろう。

 「仮にその証言が事実だとして、それを真と言わせる手段を示してくれ。よもや罪人の言葉を信じろとでも?」

 かつて体験した事の無い圧倒的な暴力に、女は腰を抜かした。がくがくと足を震わせながらも何とか言葉を紡ぐ。

 「ですから、本当の事なんです。確かに証拠はありませんが頭に声が流れ込んで来て―――きゃあっ!」

 項を覆う辺りの後ろ髪を燃やしてやる。耳元で起きた爆発に女は思い切り仰け反った。

 仰天する女へと歩いた俺は脇腹を小突く。何度も入念につま先をめり込ませた後、乱雑に女の前髪を引き上げた。

 「はっきり言っちまえよ、私がやりましたって。守人はレーベから選出されるんだ。代々伝わる抜け道があるんじゃないのか?」

 至近距離で睨み、もう一方の手に更に炎を顕現させる。見せ付ける様に弄んだ球を接触擦れ擦れまで近付けた。

 嫌々と首を振る女。異臭に視線を下げれば失禁してやがった。汚らしい排泄物は高級絨毯に届く前に全て蒸発したが。

 「最後通告だ。どうやって封印を解いた? いい加減に白状しなければ―――」

 「余り領民を虐めるのは上品とは言えませんね、フェリクス侯」

 燃滅させんぞと言い切る前に、書斎を囲んだ業火がすっぱりと消え失せた。

 早過ぎる解術に眉を顰めながら漂って来た第四の音を探ると、扉に寄り掛かるように金髪を靡かせるノッポが立っていた。

 「ヴァレリオ卿。悪いが今は来賓に応じている間は無いのですがね」

 厄介な女が来やがった。舌打ちが隠せたかどうか、確証は無い。

 

 


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