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No.25644の一覧
[0] 【ネタ】剣と魔法と学園モノ。XTH【パロディ】[怪盗婦女子](2011/02/13 08:10)
[1] #1.旅は始まる[怪盗婦女子](2011/02/13 08:00)
[2] #2.女王の首飾り[怪盗婦女子](2011/02/13 08:01)
[3] #3.KoD’sアイテム[怪盗婦女子](2011/02/13 08:21)
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[25644] #2.女王の首飾り
Name: 怪盗婦女子◆5e609825 ID:32a983bb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/13 08:01

前髪が目元を隠すようになり、流石にアルセーヌもうっとおしく感じるようになった。
いつもそうであるように、髪を切るのはシャルに頼むしかないのだが、今回は後回しになる。

「ねえ、シャル?」
「なに?」
「これからお客さんが来るんだ。準備してもらっていいかな?」

シャルが呆れた顔で、ため息を吐いた。

「また?今度は何をしたの?」

シャルの問いに、アルセーヌはポケットから綺麗な青の宝石を取り出す。
やたら笑顔のアルセーヌに、もう一度シャルはため息を吐いた。

「今回は中々に洒落た置手紙を残したんだ。ルージュの伝言さ」
「誰のルージュよ」
「それはもちろん、我が親愛なるキルシュトルテ・ノイツェシュタント姫君のだよ。洗面台に書置きしてきた」

本日三度目のため息を吐くシャル。
これで、都合三回の幸せが逃げてしまった。
逃げた幸せが戻ってくる方法は無いものだろうか?なんて、しょうもない事を考えてしまうシャルだが、アルセーヌはまったく気にせず、会話を続ける。

「あの小さな体で、顔を真っ赤にして威嚇するのが可愛いのだよ」
「本当に良い性格してるわ……」
「そんな褒めなくても……ああ、どうやら到着したようだね」
「褒めてないから。それと、あんまり虐めないでよ?」
「それは難しいね」
「アルセーヌ!!!!!!!!!!」

話している間に、顔を真っ赤にしたディアボロスの小動物……もとい、キルシュトルテ・ノイツェシュタントが居間に怒鳴り込んできたのだった。



剣と魔法と学園モノ。XTH
#2.女王の首飾り



「……344回じゃ。これが何の数字か、お主は分かっておるか?」

地の底から響いてきたかの如き声で問いかけるキルシュトルテに、しかしアルセーヌは平然として答える。
この程度、慣れているのだ。

「婚約された数かい?モテ期の自慢でもしたいのかな?」
「違う!!お主が余に対しての嫌がらせを行った数じゃ!!!」
「嫌がらせとは心外だね。僕は君の事が可愛くて仕方が無いというのに」
「宝石を盗んだのが153回、現金を盗んだのが106回、顔に特製のペンで落書きされたのが85回じゃ!!思い出したが、起きたらベッドごとプールに浮かんでた事もあったの!!!」
「それだけしかないのかい?お恥ずかしい」
「お恥ずかしい、じゃないわ!!!!!!!!!」

怒鳴りすぎて、酸欠で体を震わせるキルシュトルテ。
その姿が可愛くて仕方が無いアルセーヌは、さらにイヂメル事を心に決めたのだった。

「冗談だよ。僕は一度たりとて、君が就寝の際に抱いている熊のヌイグルミが置かれた可愛い寝室になんか入った事さえないのだから」
「何を白々しい!」
「大体、今まで盗まれた物はプライド以外なら全部帰ってきてるのだろう?良心的じゃないか!」
「料理の中に混入されておったり、木に吊るされておったり、枕の中に隠したりするのを良心的と言うのなら、そうじゃろう!」
「悪戯をこよなく愛してるのだろう?ちょっとした茶目っ気じゃないか!笑って許してやれる器量を持ったらどうかな?」

笑いながら、頭でも撫でようとキルシュトルテに手を伸ばすが、即座に払われた。
肩を竦めながら椅子に腰掛け、足を組むアルセーヌ。
とてもでは無いが、王族に対する対応では無い……元を辿れば、アルセーヌも王族なのだが、今は庶民である。

「立ち話は疲れるだろう?座りなよ、キルシュトルテ王女。クラティウス君も、座ったらどうだい?」

座るように促すアルセーヌに、キルシュトルテは黙って従ったが、クラティウスは無言で首を振り、アルセーヌの勧めを断る。
そこへシャルが珈琲を一つ、紅茶を二つ持ってくた。
珈琲をアルセーヌへ、紅茶を一つキルシュトルテへ、クラティウスからはこちらも身振りで断られ、シャルは静かに退室した。

「そもそも、僕はノイツェシュタント王城に忍び込んで宝石を盗み出すようなリスクを背負わなければならない程に、金銭に困ってはいないよ。僕の個人資産は一つの都市の運用を賄える位なんだから」
「お主は嫌がらせをしたいだけであろうが!」
「証拠はあるのかい?」
「ぐっ」

言葉に詰まるキルシュトルテ。
アルセーヌが証拠の残す程のミスを犯した事は、今まで無かったからだ。

「大体だね、僕の名前で書置きがあったからと言って、直ぐに僕を疑うのはどうなのだろうね?まずは落ち着いて、自分の近辺を探してみる事さ。例えば、今、君が着ている服の胸ポケットの中とかね?」
「え、なっ!何時の間に!」
「最初からそこにあったのだろう?」
「お主が―――」
「それに、本来ならば王位に就くのは、衰退したるとは言えど我がクライス王家の方だ。ノイツェシュタント王家が王位に就いているのは、クライス王家の代わりに過ぎないじゃないか。なら、あそこにあるのは元々は僕の所有物と主張しても問題は無いだろう?」
「ノイツェシュタント王家は正統王家じゃ!!!」
「ニルダの杖がある以上、それは認めざるを得ないけどね……しかし、王位継承の証たるイアリシンの宝珠をアスカ・ジュラルド・マーフィーより受け継いだのが僕である以上、本来ならば王位に就くのが僕である事実も変わらないよ」

首から下げた中立の象徴にして、王位継承の証であるイアリシンの宝珠を見せる。
太古の昔に冒険者がエル’ケブレスより授かりし宝珠は、窓から差し込む光を受けて、わずかに輝いた。
悔しそうに顔を歪めるキルシュトルテに、笑顔を絶やさないアルセーヌ。
このタイミングで、クラティウスが初めて口を開いた。

「姫様、お時間が……」
「時間?おお、そうか!!」

クラティウスとキルシュトルテの会話についていけず、アルセーヌが視線のみでクラティウスに説明を求めた。

「一週間後に、姫様はドラッケン学園に入校が決まりました。その準備です」
「へえ、おめでとう……と言えば良いのかな?」
「ふん、心にも無い事を……見ておれ、帰ってきたならば、いの一番にお主をギャフンと言わせてくれる」
「期待せずに待たせてもらうよ。それと、これは入学祝いね」
「なんじゃ?」
「ぎゃふん」
「今言うな!!」

古典的ギャグだが、言っておかねば悪いだろう……何にかと聞かれれば、アルセーヌも困るしかないのだが。

「それでじゃな、アルセーヌ……」
「うん?何か用かな?」
「お主が良ければ、その、じゃな……」
「キルシュトルテ・ノイツェシュタント王女」
「!」
「僕はこう見えて忙しい。用件が無いのなら、お引取り願えるかな?」

はっきりとした拒絶に、キルシュトルテの顔が曇る。
しかし、この時点でアルセーヌはプリシアナ学院への入学を決めていた。
ちょっとした理由なのだが、それが無ければキルシュトルテの誘いに乗っていただろう。

「……そうか、そうじゃな……」
「なにを泣きそうな顔をしているんだい?生きている間くらいは笑っていたらどうかな?」
「ふん、一緒に来なかった事を後悔させてやるわ」

毎日が後悔の嵐だがね、なんて口にはしなかった。
退室するキルシュトルテを見送りながら、ふと考えた。
初めて会ったのが10歳の時で、それから五年の歳月が流れているのだ。

(次に会うときは、少しは成長しているのだろうかね?)

そう思い、ほんの少しだけ悲しくなる位には、キルシュトルテと付き合ってきたのだ。
首から下げたイアリシンの宝珠を弄りながら、遠くない日に再び会った時の事をアルセーヌは考えた。


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