※世界観をなるべく違和感なくWiki時系列に合わせられるように書いたらこんな感じになりました。
他の方はどうなってるのか知りませんが、私が書くとやっぱりAppleSeedとかスターウォーズ要素です本当にありがとうございました。
(;^ω^)どうしてこうなった……助けてクイントお姉ちゃん!
空があかね色に染まる頃、ミッドチルダのとある街の郊外にある森で、打撃音と破砕音が木霊していた。
その音の発生源の片方は身長130㎝に満たないほどの少年であり、もう片方は160㎝程の女性である。
「せいっ!」
「くッ…!ハァッ!!」
少年は空中に留まったまま体を回転させて連続で蹴りを放つ。
それを女性は気合の声と共にそれを避け、両手のナックルで往なし、防ぐ。
少年は蹴りの最後に軸足を踏み込んだ反動を利用し、更に1m程飛び上がる。
そこからさらに女性に向かって足を振ると、その足から氷の塊が蹴り放たれた。
女性はそれを避けるが、数発躱した所に今度は少年が足を振り下ろしながら落下してくる。
それをなんとか躱し、お返しとばかりに拳を振り抜くが、少年は降られた拳が当たる前に女性を中心に半円を描くように足を滑らせて移動する。
女性のすぐ背後に回った少年はそのまま女性に肩をぶつけながら、右こぶしを引き絞る。
肩をぶつけられて前に押し出された女性は体勢を崩すが、押される勢いに逆らわないまま振りぬいた方とは逆の拳で裏拳を入れる。
少年は裏拳をしゃがみながら体を反らせて躱し、女性はその間に体の向きを少年に向け直しながら距離を取る。
「あっぶな~…。本当に強くなったよねヴェル君。技の繋ぎに肩を当てるなんて考えたわね?」
「全身を使い切ってこそ近接格闘は生きるって言ったのはクイントさんですよ」
「ぐ…私が教える事はもう何もないわね」
「それはクイントさんに勝ってからかけて欲しい言葉ですよ、弟子としては」
「だって弟子の技がもうシューティングアーツじゃなくなってきてるんだもん…」
「あー、わかりました、手と足だけでいきますよ」
「む…でもそれはそれで手を抜かれてるみたいで悔しい」
「俺にどうしろってんだよこの(ピ-)歳……」
……あれ?クイントさんが今は(ピー)歳で、結婚したのが(ピー)年だから、その時のクイントさんの年齢は…よし、考えないようにしよう。
とりあえずゲンヤ・ナカジマは今度からロリコン親父で決定だ。
魔法学校に入学してからクイントさんと模擬戦をするのは学校が終わった後が基本になっている。相変わらずの週一回のペース。
クイントさんの休日が不定期なのもあるが、クイントさんから既に習う型はなく、準備運動の後はひたすら休憩を挟みながらの模擬戦である。
休憩のタイミングはどちらかが疲れるか、攻撃の手を止めて話をする時という暗黙の了解が出来ており、特に決めてはいないという正に耐久レースである。
そして、更に何度か拳を合わせ、お互いがそれとなく手を止めて休憩モードに入っている時に、クイントさんが先ほどの技について聞いてきた。
「そういえばヴェル君、さっき足から氷出してたけど、あれ新技?」
「あぁ、なんとなくやってみたかったので試してたら出来たんです。氷の足場の魔法の応用ですね」
「相変わらず氷魔法だけは理不尽なほど器用よね…まぁ、中距離での牽制にはかなり有効だと思うわ。避けた所に本命の蹴り下ろしが来てそこから〆のラッシュが理想かしら?」
「えぇ、蹴り下ろしで相手の体勢を崩してからのゼロ距離の溜め無し直射でノックダウンを考えてます」
「えげつないわねぇ…」
「初見で悉くそれを崩すクイントさんの方が理不尽だと思いますけどね」
「ふふん、丸二年も教えてればヴェル君の新技と氷魔法の気配には敏感にもなるよ。…あ、ごめんちょっと映像通信きたから離れるね」
「はい。……5年以内にあの人妻に勝てるヴィジョンが見えない件について」
『……残念だけど私にも見えないわね』
まさかあれを防がれるとは思ってもみなかった。
飛燕連脚から鷹爪落瀑蹴までは上手くつながったが、落下後の反撃を飛葉翻歩で躱したところからは完全に互角に持っていかれた。
掌底が無理だったのでタックルからの獅子戦吼という古典的な手法でいこうとしたが、裏拳で崩されてしまった。
そう、某物語RPGの格闘技である。だがやはりまだ練り込みが甘いらしく、クイントさんからは止められてしまったが。
ちなみに実際に使えそうな三散華、飛燕連脚、鷹爪蹴撃、飛燕連天脚、散華猛襲脚といった純粋な蹴り技はある程度再現出来るようになっていたりする。
殺劇舞荒拳の〆で広範囲魔力放出でそれっぽい見た目にしようとしたら森の一角が完全凍結したり
バインド代わりの遠距離四肢氷結魔法という点穴縛態から火龍炎舞ならぬ氷龍炎舞を出せるか試したらエフェクト代わりの氷の出しすぎで自分ごと氷の塊の中に埋まったりしたのは黒歴史である。
今回新しく習得した鷹爪落瀑蹴は飛び道具付きの蹴り落としだが、着地後の獅子戦吼キャンセルの獅吼爆砕陣が試したくなり編み出したものだ。
足場の氷を一時的に大型化し、蹴る勢いを加えて相手に飛ばすこれは中々便利である。フリーズランサーのように魔力スフィアを形成する必要がないのも美味しい。
もっとも、さすがにクイントさんに獅吼爆砕陣を撃つ余裕はないが。
『恥ずかしいとか言っておきながら割とそういう技を普通に使うようになったわよね』
『シューティングアーツは拳主体だから蹴りが少ないんだよ。あと技名叫ぶのが恥ずかしいのであって技模倣はそこまで恥ずかしくない。魔力で身体強化してるからオリジナル以上のスピードで繰り出せるし』
正直いよいよファラ+セルシウスのパターンが出来上がってきたが、気にしたら負けである。
これらの技を使う場合、いつでもどこでも氷の足場を作れるという能力が大変便利で、普通なら空中では宙ぶらりんになるしかない軸脚側に足場を作ったりする事で地上で繰り出すのと同じ感覚で使える。
『それにクイントさんの戦法なんて例えるとしたらまんま八咫雷天流だぞ…?』
直線という最短ルートで接近し、相手の攻撃や防御ごと拳の弾幕で叩き落とす。普通に八咫雷天流の散華にしかみえない。
StS本編のスバル対ギンガのワンシーンなんてまんま速度劣化の白狼の応酬だろう。
ちなみに本家クイントさんが白狼もどきをするとすれ違いざまに2回打撃がきます。
つまりヘル・アンド・ヘヴンが見えない速度で来るんです。理不尽にも程があるだろう。
『そういやあれにも氷属性のがいたっけ…あれ?確かあの人ってルートによっちゃ虎太郎先生の…』
これ以上考えるのはいけないと思った。主に八咫雷天流使いの不良教師に心酔する雪女的な意味で。
と、そんな事よりあの作品の人妖雪女が作中どんな使い方をしていたのかを思い出す事に集中する。
『んー…あんまり使えるような技はなかったなぁ。傷口凍らせて止血とかはそこそこ便利かね?』
『ヴェルの場合止血するだけなら傷口を氷で覆うってだけも出来るわね』
『あぁ確かに。って言っても絆創膏代わりだな』
と新しく思いついた氷キャラが没になったりもしつつ、九鬼先生ですら勝てない八咫雷天流を使う魔法若妻をどうやって倒すかと悩んだりしていると、通信を終えたクイントさんが戻ってきた。
「また応援要請の呼び出し…最近事件が増えてきて出動頻度上がってるし嫌になっちゃうわ…。ねぇねぇ、ヴェル君がうちの部隊に入ってくれたらお姉さんの仕事が減るんだけどなぁ?」
そう言ってしょんぼり顔をした後にやたら目をキラキラさせてこちらを見るクイントさん。
あえてもう一度言っておくが、この人は(ピ-)歳の人妻である。断じて女子○生ではない。
「その代り自分の寿命が減るのでお断りします。そういえばこの間、うちの父親も似たような話をクラナガンの友人から聞いたって言ってましたね」
うちの父親はその人柄からか地上本部にも何人か知り合いを持っている。
もっともレジアス・ゲイズやゼスト・グランガイツのような真面目組とは話が合わないとかであまり面識はないそうだが。
曰く「あいつら漢のロマンがわかってない」そうだ。
俺からしたらゼストなんか漢のロマンの塊に見えるが
「違う、違うんだよヴェル!漢ってのはもっとこう、熱く叫ぶもんなだよ!」
……正直父親のロマンは永遠に理解したくない。
「あぁ、やっぱりそうなんだ?うちの隊長もここの所書類仕事が増えて不機嫌だしねぇ」
「なんか本局の方でもここの所きな臭い事件が増えたとも言ってましたね」
旧世界の人型兵器をとある管理世界の某国が発掘しただの、火の七日間がどうだの。
まぁ例え一つの世界を滅ぼしたような超兵器がが現れてもうちの父親ならなんとかしてくれる筈だ。多分。
父親がなんとかできなくてもきっと姫姉様がなんとかしてくれる。
決してうちの母親の事ではない。そもそもうちの父親は事件捜査じゃなくて新世界探索が管轄だし。
「うわぁ…それってもしかしなくても、これからもっと忙しくなりそうな予感?っと呼び出し食らってたんだっけ。それじゃヴェル君お疲れ様ー!」
「お疲れさまでした」
走り去るクイントさんを見送りながら、適当な場所に腰を下ろす。
脳内ではいろいろと危ない説明をしたが、次元世界における機械兵器の歴史というのはそれなりに古くからあり、そのコンセプトも多岐に渡る。
宇宙を含む無重力空間内における3次元機動を目指したものや、陸上走破性を徹底追及した軽量なもの等、多くの次元世界がエネルギー資源に動力を頼った機動兵器を開発した。
旧世界においては先ほども話した超大型の機体に一撃で街一つを消し飛ばすような威力の武器を積んだものが開発されていたという痕跡や兵器そのものの残滓が遺跡等から見つかる事もある。
その何れもが最終的に目指す所がいわゆる「代理戦争」である。
冷戦などという生ぬるいものではなく、自動で戦争をしてくれる兵器の開発。それを実現するため人はさまざまな研究をした。
そして最終的には無人兵器というものを作り出すが、意志のない兵器同士の戦争はお互いが同性能ならば数を増やすしかなく、そのコストから次第に主戦兵器から防衛や補助兵器扱いになっていった。
その後に生み出された一番の禁忌こそが「生体兵器」である。
最初は人権のない人間や動物に武器を持たせた。それが破られれば今度は生き物そのものを強くしようとした。
その結果生まれたのが生体兵器である。古代ベルカの歴史の一部でも無人兵器と併せてその運用が遺跡や書物に確認されているほど爆発的にその技術は波及したと言われている。
本来持ちえないであろう強さを持った生き物。矛盾したそれはまさに殺戮兵器と呼べる。
だが旧世界の終焉と共にそれらの忌まわしき無人兵器や生体兵器の技術は忘れ去られる事となる。
旧暦の末期に交流のあった次元世界において質量兵器禁止法が公布されたことで、それらは完全に消え去り、人は忌まわしい過去と決別するために年号を「新暦」と改めた。
その後50年弱は魔法による治安維持と、旧世界の技術を引用した科学技術を環境改善や食料生産等の平和利用に限定することで、平和が維持されてきた。
だが、それは唐突に終わりを迎える事となる。新しい次元世界の発見とそれによる管理世界の登録数の増加に対して、管理局の人員が足りなくなり始めたのだ。
少ない人員で治安維持を行わなければならなくなった管理局では、死傷者が増加することとなる。
そしてそれは、医療技術の急激な発達を余儀なくされる事となる。
例えそれが旧世界と共に忘れ去られた技術であったとしても。
戦闘機人の基礎理論とも呼べる人と機械の融合についての論文が医療分野にて発表されたのは今から10年以上前である。
論文の著者の名前こそ違うが、これを考え出したのはジェイル・スカリエッティ本人だった筈だ。
この技術により、人は四肢や臓器を怪我や病気で失っても、ある程度なら問題なく補填することが出来るようになった。
それ以前の体細胞培養による人工臓器や他人からのドナー提供と違い、機械による生体のエミュレートによって動く疑似生体部品は拒否反応もなく、今では一般的な医療行為の一つとして認知されている。
だがそれと同時に、人には持ちえない力を持たせる事が出来る肉体改造用部品として不法に移植される事件が発生していくこととなる。
魔力を持たない一般人でも、魔導師と互角に戦える。そんなキャッチフレーズが囁かれるほど、次元世界の暗部の到るところでそれらが悪用される事となる。
それにより管理局では負傷者が多発し、管理局はその鎮圧のために一時期「緊急時における非殺傷設定解除規定」の緩和措置が議題に上った程である。
だがその議題はなんとか否決となり、代わりに高ランク魔導師の分割運用と強化生体部品を移植した相手と相対した場合の戦術理論の徹底化によって疑似生体部品事件は一応の沈静化を見せた。
それが俺が生まれる2年程前の出来事だというのだから、まったくもってこの世界は知れば知るほど殺伐としている。
そして現在、他の次元世界では失われた筈の機械兵器の噂が立ち始め、疑似生体パーツを用いた犯罪が再び増加している。
恐らくこれは前兆と呼べるのだろう。戦闘機人事件の。
管理局は6年前に構築した戦術理論と、増員された人員で対応しているが……
「考えてみると、機械化歩兵なんて言葉があるんだから、機械の歩兵がいたっておかしくないんだよな」
『なにそれ?』
「俺の世界の軍隊用語だよ。人機一体って奴だ」
『ヴェルの世界では機械の歩兵がいたの?』
「いや、あくまでそういうのは物語の世界だけだった。現実は機械は機械、人は人だったよ。ただ、進化した機械は戦場では人と同列になるんだなって思ってな」
『人が生きる上で科学や機械を手に入れたのは特筆すべき進化の一つだけれど、それで人が苦しむというのは因果応報なのかしら?』
「悪魔はどんな人だろうがただの人として同列に扱う。なのに人は他人を同列に見れないばっかりに機械と同列になってしまったのかもしれないな」
『そうね…でも私は人じゃなければ機械でもないから、人も機械も同じに見えるわ。私と一心同体のヴェルは機械や悪魔をどう見るのかしら?』
「悪魔だろうが機械だろうが、それが自分の意志を以ている限り同列に扱う。だから、機械も悪魔も人も意志を持って俺の命を脅かそうとするのなら、全て等しく凍らせてやる」
『ふふ、本当に冷たいのねヴェルは。だからこそヴェルは、私と一心同体にふさわしいわ』
「…ハッ、言ってろよバケモノ」
『えぇ、ヴェルというモノ以外に言うつもりはないわ』