一応3日くらい様子見るかなぁと思ってます。
でまぁ、その間にも閑話は書けたらあげていきます。
今回はEFBを使うとこうなるよ、という見本程度に。
夏休みも終わり、季節は日に日に涼しくなってきた。
ギンガはますますチートに磨きをかけ、氷の足場がないと使えないと思っていた飛燕連脚を覚えた。
正直激しく将来が不安である。ちゃんとリボルバーナックル使って闘うんだろうかこの子。
さて、季節は秋。凍結魔法使いはお役御免となる。
そうなると途端に影が薄くなるので目立ちたくないこちらとしては助かる。
「久しぶりに滑るか」
氷の足場の魔法を展開し、範囲魔法の術式を地面に通して簡易遊具を作る。
余談だが、マリーさんに空けてもらったソフィアの容量3割のうち2割をまたこれで埋めている。
といっても半分以上空いたうちの二割が埋まり、まだ3割程は空いているので授業に問題はあまり起きていない。
『今日はどう滑るの?』
「んー…ギンガに今度見せる約束してるからボードでいくか」
移動法としては秀逸なのだが、回りへの影響を考えて普段はあまり使わない氷の足場。
もっとも、ナカジマ家相伝のローラーブーツも普段はあまり使われていない。
まぁ当然である。人ごみや街中で使うものじゃないし。
『じゃあハーフパイプだけでいいわね』
「今日こそショーン・ホワイト超えてやんよ!」
『ショーン・ホワイトは知らないけどまぁ、頑張りなさいな』
ハーフパイプとなると自然と遊ぶ技はボードとなる。
いや、もちろんフリーラインスケートの延長なのだから、出来ない事はないのだが。
そんなわけでバック・トゥ・バック1080やらダブル・マック・ツイスト1260なんて名前の技を練習する。
「そもそもカットバックドロップターンがリアルで出来る世界で元の世界の技出してもあんまりなぁ…」
なんて事をボヤきながらだったが。だって物理法則無視上等の世界だぜ?
どうにもしまらない事を呟きながらも普通にショーン・ホワイト超えどころかトリプル・マック・ツイストも普通にこなしながら遊んでいたわけだが
「ヴェル・ロンドだな?」
「凍結魔法使ってる時点でまぁ間違いないだろう…しかしなんだこの氷で出来たスロープは?」
なんか全身タイツのお姉さん型が目の前に現れた。デデーンってレベルじゃない。
「これは…前回応援したのがフラグだったのか?」
『いや、そんな事言ってる場合じゃないでしょう』
いやそんな事言われてもなぁ…逃げる?残像が出る速さで動ける相手がいる時点で無理
追い払う?シングルSとAAが揃ってるのに勝てる気がしない。
「でまぁ、これはいよいよEFBしかないわけで」
『落ち着いてるのね』
「まぁ、誰もいないから、な……」
そう、ここは森。巻き込む相手はいない。
死体が二つ転がる事になるが……KOOLになって埋めてみるか?
「で、お姉さん方」
「「ん?」」
氷のハーフパイプを眺めている二人に声をかけた。
まぁ逃げたら即追いかけてくるだけだろうし向こうは落ち着いたものだ。
「襲い掛かってくるなら氷漬けの機械人間が二つ出来上がるだけだし、今後一切関与しないというのなら見逃しますよ?」
「……これは、舐められたものだな」
「あぁ。たかが子供一人に…ッ!?」
残念だがお姉さん型戦闘機人が二人もいる状況を前にして、普段クイントさんとやっているような戦い方は出来ない。
クイントさんがきてからは通常の封時結界だったが、久しぶりの隔離結界で自分とお姉さん二人の次元をズラす。
「立場が分かってないようだからもう一度だけ言うけど、死ぬのはそっち、生きるのは俺」
隔離した結界の中を魔力で満たして気温を一気に下げる。10m四方程度なら‐200度を下回るのなんて1秒で出来る。
生身の部分が硬直し、動かなくなり始めたのだろう。
既に両足は地面とくっついているだろう。だから何もできずに凍っていく。
「な…これは…!?」
「クッ!!」
小さい方のお姉さんがかろうじて動く手を振った瞬間、俺の回りにナイフが出現した。
自分に向かって飛んできたが、それは爆発することなく障壁に阻まれて落ちる。
当たり前だ。どんな爆発物に変えたのか知らんが、分子振動なくして反応するわけない。
「博士がガラクタを付けろと言っていたのはこれが理由か……!」
ふと、魔力の流出が途中から消えるのを感じた。
「IV型まで連れてきたのか。こりゃ警告どころじゃないね」
だが、分子の振動を止める魔力はAMFごときでどうにかなるものじゃない。
放出した側から空気中の水分子を凍りつかせる事ができる。よって
「ほんと、極悪だよね。水分がない場所なんてそうそうないもの」
『えぇ、だからこそ私は強いモノでいられたんだから。同じ事が出来るヴェルが弱いわけないでしょう?』
片っ端から空気中の水分を凝結させて、1m程の氷の塊を生成し、魔力反応が消失する場所に落とす。
100㎏の氷の塊を耐えられるわけもなく、ガジェットIV型は片端から潰れていく。
「なっ……!」
「ではごきげんようお姉さん方。俺としては将来有望そうなお姉さんたちには出来れば死んでほしくないのだけど。特に小さい方」
「小さい方言うな…!」
ムキになって否定する小さい方のお姉さんだったが、次第に凍る世界では何もできず、やがて二人とも動かなくなった。
「びっくりするほどあっけない。やっぱり反則だなこの能力」
「いや、凄まじいねヴェル・ロンド君。個人の能力としては出鱈目な強さだ」
唐突に目の前に通信ディスプレイが開き、画面の中には一人の男が映る。
「ジェイル・スカリエッティ」
「おや、私のような人間をご存じとは、まったく良く出来たお子さんだ」
「お噂はかねがね。それとうちの父さんから「ロマンは分かってるが非人道すぎるのはなぁ」って伝言預かってますよ。あと俺からは全身タイツをなんとかしろと言っておきます」
「ふふ、それは嬉しいね。それと全身タイツなのは諦めてくれないか。対AMF、魔力ダメージ用の優れものなんでね」
「全員にシェルコートとは言いませんけどせめて羽織るものくらい用意してあげてくださいよ。いい体格した女性の恰好がこれってちょっと問題ですよ」
下半身が既に氷に覆われ動かなくなっている二人を見ながら話す。まだギリギリ生きてるっぽいが寒そうだなぁ。
「ッ!?……あぁ、そうだね、検討しておくよ。それで、君に一つ提案があるのだがね?」
「言っときますけど、俺の関係者を人質に、なんて冗談はやめてくださいよ?
そういう事されてもこっちはただそちらを全員凍らせるだけなんですから。
あと、父さんの逆鱗に触れるでしょうから、手を出したら最後、殺傷モードのアイラで原子レベルまで分解されますよ?」
「……わかった。君に手を出すのはやめよう。AMFも効かないとなると、私にはお手上げだからね」
「それはよかった。あぁ、解放云々ですけど、流石にすぐに解凍するのは俺には出来ないんで、クアットロ以外の誰かを迎えに寄越してくださいね。どうせクアットロは普通に俺の関係者の誰かの側でしょ?」
「…本当に君はこちらを知っているようだね。そうか、では迎えに行かせよう。迎えに行くまでの間結界をそのままにしておいてくれないかね?」
「わかりました。それじゃもう会う事もないでしょうけど、ゆりかごの機動頑張ってください」
「…最後に一つだけいいかな?」
「なんですか?」
「君は何者かな?ただの凍結能力者というだけではないだろう」
「ただの冷たいモノですよ」
「成程。納得はいかないが少しだけ君の事がわかったよ。それではまた機会があれば会おう」
そして通信が切れ、俺は時間を潰すためにまた滑り始める。
だがハーフパイプは使わず、スケートのように滑る。
と、気温が上がってきて、凍っていた口の回りが溶けたのだろう、二人が首を動かしたのを見て近づく。
「ねぇ、お姉さん方」
「…なんだ?」
「こんな子供でさえ止められないスカさんに管理局の転覆なんて出来ると思います?」
「お前が異常すぎるんだ。お前さえいなければどうとでもなる。まさかドクターの敵に回るとまでは言うまい?」
「……わかりませんねぇ。回りの人間を傷つけられてみないと。ちなみに今まで俺の回りで死んだ人間にはこれっぽっちも悲しくなりませんでしたけど」
「それは、人として壊れている」
「でしょうね。何せ父親も母親も壊れてましたから」
「壊れていた?」
「えぇ。人を人と思わない。自分以外は全て他人。そんなの人間じゃない別のモノとしか言えないでしょう?」
「お前の両親は管理局員と元管理局員と聞いているが?」
「あぁ、今の両親じゃないです、前の両親って奴ですね。俺前世の記憶持ってるんですよ」
「成程…ならばその歳でそれほど落ち着いているのも納得はいく。博士がかつて研究していた記憶の複写というものもあるしな」
「まぁ、俺の場合は天然モノですけどね。さて、そろそろお仲間さんが着いたみたいですよ」
そう言って結界を解くと、そこには青い髪のお姉さんがいた。
「ッ!トーレ姉!チンク姉!大丈夫!?」
「あぁ、機械部品と保護されている部分はなんともない。もっとも、あれ以上温度を下げられたら保護機能ごと脳を凍らされて死んでいたがな」
「ちなみに10m四方なら‐275度までは2秒あれば行けますから。さっきのは-200度で地面を凍らせて、空間温度は-120度といったところです」
「あれで手加減していたのか」
「言ったでしょう、将来有望そうな人が死ぬのはもったいない、と」
「…その歳で女性をからかうのは感心しないぞ」
「生憎と回りが強い女性だらけなんでこれくらいしないと身が持たないんですよ」
「それは……」
「管理局員ですからスカさんの敵に彼女たちが廻る可能性があるのを考えると、スカさんご愁傷様としか言えないです」
「今のうちに排除は?」
「No。今排除したら確実に計画が発覚して阻止されます」
「お前が関わらせないようにするのは?」
「No。俺が関わると俺もスカさんの計画阻止に動く羽目になります」
「どうしようもないな…まぁいい、その時がきたら全力で相手をするだけだ」
「キャートーレサーン」
「なんだそれは?」
「言ってみただけです」
そんなやり取りをして「もう会う事もないだろうが、いつか博士から会いに行く事もあるかもしれない」なんてあまり嬉しくない事を言われながら別れた。
「なんか普通にスカさんフラグ回避してしまった。どうする?」
『私に聞かれてもねぇ…とりあえず喜んでみたら?』
「正直なんでこのタイミングでってツッコミたい気持ちの方が多いんだが」
「という夢を見たんだ」
『いきなりすぎるわね』
「自分でもびっくりするほどこうなっても不思議じゃないと思える夢だった」
『まぁ、私の台詞は当たってるわね』
「だろう?厨二全開なのにさして違和感ないんだ。っていうか実際出来る範囲でしか能力使ってないから困る」
『でも今まで使ってなかったわよね』
「非殺傷設定だからな。相手が人外でもなければホイホイ使えん」
『不便な世界よねぇ』
「全くだ」