気づいたら赤ん坊になっていた
夢オチだとかテンプレだとかそんなチャチなものだろうとどうにか心を落ち着け……
られる筈もなく混乱しまくったが赤ん坊が混乱しても泣きわめくだけでどうしようもなかった。
さて、ようやく母の腕の中から離れられた頃、俺はまずは回りを知ろうとあれこれ嗅ぎまわったわけだが
見る事知る事あまりにも今まで自分が暮らしてきた世界とは違っていたわけで。
どうやらこの世界には魔法、というものが存在して、しかもそれが割と普通の事として認識されていた。
魔法、といっても所謂「魔力」というエーテル理論に似ているもので現象を起こすわけだが
その現象を起こすための術式演算やら何やらがとても人間が短時間で行えるものではなく
それを行うのはデバイスという演算装置に魔力を通して現象を起こす。
魔法とは魔力放出から魔力変換後に現れる事を総称して呼ぶ。
魔法使いはリンカーコアと呼ばれる魔力タンクを体内に発言させていることが前提条件である。
リンカーコアとは体内に生成される特殊な器官とも呼べるものであり、それがない人は魔法は使えない。
殆どの人間はリンカーコアを持たないのだが、何人かに一人の割合で魔法資質、つまりリンカーコアが発現する。
人以外の生物にもリンカーコアが発現する場合があり、そういったものは総じて魔法生物と呼ばれている。
さて、空気中にある魔力や体内で精製された魔力をリンカーコアがため込む事で、魔法として使える魔力になる。
それをデバイスに送り込む事で、現象として発現させるために変換-人に使えるようにアセンブルする-される。
変換された魔力は物理干渉力を持つ魔力や精神干渉力など、さまざまな干渉力を持つ魔力になる。
物理干渉力とは、物体に対して影響を与える魔力として運用される。
もちろん魔力自体に物質への干渉力を持たせているため、他者への攻撃やそれからの防御等も行える。
精神干渉力を伴った魔力は、相手の精神に自分の魔力を送る事で、会話をしたり、精神へ負荷をかける事が可能となる。
それらを突き詰めれば相手を文字通り粉みじんにしたり、意のままに操る事もできるが、それは法で規制されているらしい。
治安維持を司る、管理局と呼ばれる組織が犯罪者へ魔力行使を行う場合、魔力が相手に当たった時の影響にリミッターをかけることで、どれだけ強力な魔力だろうと、相手に与えるのは物理的にしろ精神的にしろ強い衝撃を与えるのみにしてあるとか。
これにより、相手は気絶するのがせいぜいであり、死ぬ事はないというなんとも生ぬるい、もとい安全な治安維持を可能にしている。
一般人が使う魔法は専ら空間干渉力へ変換した魔力を用いての転送魔法や、物理干渉力を用いての飛行魔法や生活用魔法である。前者はともかく、後者はものによっては念話等の演算を必要としないものが多く、飛行魔法は治安維持という名目で街中では許可なく使用は禁止されている。
かといってそれらがなくても自分が生きていた頃以上に発達した科学文明を持つこの世界では殆ど意味のないものである。
よって魔法資質があろうがなかろうが、一般生活に関しては魔法というのは「あれば便利」くらいのものなのだ。
話を戻すが魔力変換というのは水や炎、電気などにもなるが、それらを行う場合それなりの負荷がかかる。
補助として詠唱や特殊な魔法陣による補助等の行為を用いての変換があるが、発動までのタイムロスは避けられない上に
一般的に魔法というのは行使者が魔力をデバイスに通すだけというのが普通である。
デバイスは人が身近に置いておけるもの、という前提があり
そういった属性変換を単体で出来るデバイスは高額だったり大型だったりと、一般人はまず持てないものである。
だが、一部の素質ある者-変換資質保持者と呼ばれる-の中には脳やリンカーコアに変換専用の器官を持っていたりするため
デバイスより早く、効率よく属性変換させる事が可能であり、そういった者達は通常魔法より属性魔法を使用する事が多い。
さて、長々と語ったが魔法といってもなんでも出来るわけでもない。
この世界で最もよく使われる魔法は「転送」と「攻撃行為」なのである。
何故かと言われたらそれ以外は全て科学で代用、それも魔法という不安定なものに頼らずとも安定して使えるからである。
では何故魔法での犯罪行為が後を絶たないのか。
それは魔法攻撃は本人の能力如何によっては質量兵器の禁止されたこの世界において
個人としては破格の攻撃力を持つ事が出来るからであり
転送魔法は科学では不可能に近い領域だからである。
こうして話すと、何をトチ狂ったのかと思わざるをえないが、自分がこれから生きるであろう世界の根幹にあるものである。
必死で覚えたこちらの身にもなってほしい。
だが、やはり一番の驚きは自分が生まれた場所というのがそもそも地球ではなかったことか。
ミッドチルダ。数ある魔法世界の中で最も魔法使い人口が多い世界の惑星である。
「さて、ここで問題。この世界はなーんだ?」
A,リリカルなのは
「第二問。これはつまり?」
A,いわゆる異世界転生
「では最後の問題。俺は一体なんでしょう?」
A,転生オリ主とかそんなチャチなもんだろ
そういうことであった。