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No.25391の一覧
[0] 【チラ裏からきました】 「銀トラ伝」 銀河英雄伝説・転生パチモノ[一陣の風](2013/09/22 13:53)
[1] 「第4次 イゼルローン攻略戦   前編」[一陣の風](2013/09/20 15:12)
[2] 「第4次 イゼルローン攻略戦  後編」[一陣の風](2013/09/20 19:02)
[3] 「 28 Times Later  前編 」[一陣の風](2013/09/20 15:27)
[4] 「 28 Times Later  中編」[一陣の風](2013/09/20 15:30)
[5] 「 28 Times Later 後編  part-1」[一陣の風](2014/07/21 23:09)
[6] 「 28 Times Later 後編 part-2」[一陣の風](2013/10/09 23:13)
[7] 「 28  Times Later 後編 part-3」[一陣の風](2013/09/20 18:02)
[8] 「 28  Times Later   エピローグ 」[一陣の風](2013/09/20 16:52)
[9] 「 The only Neat Thing to do 」  前編[一陣の風](2014/07/21 23:47)
[10] 「 The only Neat Thing to do 」  中編[一陣の風](2014/07/21 23:52)
[11] 「 The only Neat Thing to do 」  後編[一陣の風](2012/04/29 11:39)
[12] 「The only Neat Thing to do 」 エピローグ[一陣の風](2012/04/29 13:06)
[13] 「銀河マーチ」 前編[一陣の風](2013/02/25 19:14)
[14] 「銀河マーチ」 中編[一陣の風](2013/03/20 00:49)
[15] 「銀河マーチ」 後編[一陣の風](2013/09/06 00:10)
[16] 「銀河マーチ」 エピローグ[一陣の風](2013/10/18 22:31)
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[25391] 「 28  Times Later 後編 part-3」
Name: 一陣の風◆ba3c2cca ID:8350b1a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/20 18:02
 【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全滅菌まで、あと25分です。
   全職員は、すみやかに退避してください。 繰り返します…… 】


   第七話 【 28 Times Later 後編 part-3 】



「時間がない! 行くぞ!」
俺は空調ダクトに通じる、鉄階段を登りながら叫んだ。
トリューニヒトは慌てて走って来た。 
だが、ドールトンは俺の腕の中で、ボゥっと立ったまま、身じろぎ一つしない。

「ドールトン。 どうした行くぞ」
「……ママ」
じっと、その白き仮面を見つめている。
ええいくそっ。 俺がドールトンの腕をつかんで走り出そうとした、その時ー

 びしゃっびしゃっびしゃっ

嫌らしい音を立てて、赤い実から人が……人のようなモノが転がり落ちてきた。
緑色の肌。 ボコボコの瘤だらけの頭。 黒目だけの瞳。
 AHHAHAHAHAHAHAAA
甲高い、神経を参らせる声。
そしてなによりも……

その体に一瞬にして白い花が咲き、散る。
その後から、無数に実る赤い実。
体はおろか、背中にもみっしりと。 
中には顔半分が崩れ、そこから枝と赤い実が生えてるモノまでいた。

昔読んだSS小説を思い出す。
無人島に流れ着いた少女達が、生き残るためにその赤い実を食べ、次々とバケモノに変っていくとゆう
三文SS小説。
映画「マ〇ンゴ」をヒントに書かれたとゆう、B級ホラーSS小説。 愚作。
でもなぜか、俺の前世の記憶として残る、その小説。
その描写そのままの赤い実のバケモノ達が、今、俺の目の前に迫ってくる。


 【 アテンション・オールハンド。 本施設の消滅まで、あと20分です。
   メイン・ラボの段階的な滅菌作業を開始します。  繰り返します…… 】

 ー ゴバアアアアアッ!
突然の衝撃に、俺はひっくり返ってしまった。
ひっくり返ったまま、視線を走らせる俺の目に、次々に崩れていく構造物見えた。
くそっ。こいつが滅菌作業か。 たんなるYUKIHO(穴掘って埋まる)じゃねぇか!

 - ドゴバァ!
「少佐、上!」
あわてて起き上がる俺に、トリューニヒトが天井を指差しながら叫んだ。

 - ギシャアアアアアアアャアア
そこには天井を突き破り、樹液をしたたらせながら、俺達を見下ろすD体の姿が。
リオンはどうした? まさか?

 - ギシャアアアアアアアャアア
飛び降りてくる。
D体が俺とドールトンとの間に飛び降りてくる。
とっさに身を捻ってかわす。
だがその衝撃で、階段が粉砕され、俺とドールトンの間には絶望的な溝が穿かれてしまった。

「ドールトン、逃げろ!」
叫びながら飛び降りようとする俺を、トリューニヒトが羽交い絞めする。
「離せっ。 中尉。 離せ、ゴラァ!」
「いけません。 このままではあなたまで死んでしまう」
「構うかあ! ドールトンが、彼女が……」

D体がドールトンに迫る。
赤い実のバケモノどもも迫る。
けれどドールトンは、D体をただ見ているだけで……

「パパ……」
ドールトンが囁いた。
「パパ……なの?」

 ビクリッ
と、D体の動きが止まった。
止まったまま、じっとドールトンを……我が娘を凝視している。
見詰め合うドールトンとD体……いや、娘と父親。

 そっと。
娘がその手に触れる。
優しく、なでるように、D体の緑色のナイフのようにとがった爪に触れる。
ぽろぽろぽろと泣きながら、その手を握る。

「パパ……パパぁ」
「イ……イヴリン…………」
D体から声が漏れる。 軋むような声が漏れる。
「パパ。パパ。パパ……」
「に…逃げろぉ……イヴリン……」
「パパぁっ」
「…イヴリ……うあ”あ”あ”あ”」

 AHAHAHAHAHAHHAHA!
赤い実のバケモノどもが、ドールトンに襲い掛かる。

 - があああああああああ!
その全てをD体がなぎ倒した。
まるでドールトンを守るかのように。
まるで我が子を守る父親のように。
D体が、赤い実のバケモノどもを引き裂いていく。


 【 アテンション・オールハンド。 本施設の消滅まで、あと15分です。
   メイン・ラボ。及び、その周辺の段階的な滅菌作業を開始します 】

 - ゴバアッ!
「うわっ」
再び起こった振動が、俺とトリューニヒトの乗った階段を破壊する。
 しめた。
中途半端に崩れた分。 俺とドールトンの距離が縮まった。
けれどほんの少し足りない。 ほんの少し届かない。
トリューニヒトが足を支えてくれているのもかかわらず、まだほんの少し足りない。

「ドールトン。手を伸ばせ!」
不安定に揺れる階段に体を固定させ、
俺は屈んだまま、身動きひとつせずにうずくまるドールトンに叫んだ。
「さあ、俺の手をつかむんだ」
「ママ……パパ………」
だがドールトンは、うずくまったまま、何事かを呟くばかり。

「こらっ。ドールトン。このお子ちゃま! 聞こえないのか!? 手をつかめ!」
「パパとママがあんなに……私」
パトライトの赤いフラッシャーが点滅する中。 ドールトンが呟く。

「パパとママがあんなになって……誰もいない。  もう誰もいない。
 私を見てくれる人はもう、誰もいない。
 私…私はひとりぼっち。もう私は、明日からひとりぼっち……」
「ドールトン……」
「私はココにいる。ずっといる。 そしたら……そしたらきっと、さびしくない。
 パパとママと一緒にいれる。 ひとりじゃない。 きっと。 きっと、さびしくない……」
下を向き、人形を抱きしめながら呟く、ドールトン。

「まぁくんもいてくれる。私、さびしくない……さびしくなんて…ない」


「明日は何があるか分からない」
俺はゆっくりとドールトンに語りかけた。

「悲しい別れや惨めな失敗。 悲惨な死に出会うかもしれない」
「グエン……くん?」
ドールトンがゆっくりを視線を上げ、俺を見る

「-でも……」
俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「新たな発見があるかもしれない。
 新しい出会いがあるかもしれない。 
 新たなる成果を得られるかもしれない。  イヴリン……」
「え?」

「だからこそ、明日は面白い。 
 お前の母親が教えてくれた言葉だ。 そうだろ? そうだな、イヴリン?」
「グエン……くん」
「それを俺が、このグエン・バン・ヒューが教えてやる。 お前の明日を見せてやる」
ドールトンが立ち上がり、俺の差し出した手を見る。

「俺の手をつかめ! 一緒に明日を見よう!」
「グエンくん……」
ドールトンは俺を見る。 その瞳から、一筋の涙がこぼれる。
「さあ、来い! イヴリン」
俺はその名を呼んだ。

 「 イヴリン・ドールトン! 」
 
ドールトンは一気に駆け寄ると、俺の手を……


 -がぶっ。 ぎゃあああああああああああああ!

お約束通り。 力一杯、噛み付いた。    ……しくしく。


 
 【 アテンション・オールハンド。 本施設の消滅まで、あと10分です。
   メイン・ラボ。及び、その周辺の全面的な滅菌作業を開始します 】


出口に向って走る俺達に、なにかガラス状に、キラキラと輝くモノが降りかかってくる。 
これは……

「ゼッフル粒子です! 少佐っ。 ゼッフル粒子が蒔かれています」
引きつった声でトリューニヒトが叫ぶ。
俺だって焦った。
こんな狭い空間でゼッフル粒子が爆発すれば、そりゃもう、完全滅菌だよな。

「危ない!」
崩れた構造物から、小さな破片が無数に落ちてくる。
小さいとはいえ、当たれば大怪我確実だ。 けれどその全てを避ける事は不可能だ。

なんとかドールトンだけでも!
そう思って俺は彼女を抱きかかえるように上半身を倒す。 だがー
いつまでたっても、その衝撃はやってこない。 その代わり聞こえてきたものは。

 ピシっ。ピシっ。 と、何かを弾く音。

 KKEKEKEKEKEKEKEKEEEEEKKEke

その声に視線を上げると、あの赤い実の本体が……赤い実の無数に滴らせた植物体が、
その枝を触手のように震わせながら、破片を弾き、俺達を守っていた。

「ママ……」
ドールトンが囁く。
俺は見た。 確かに見た。
俺達を守ろうと触手をふるう赤い植物体の姿を。

 KEKEKEKEKEKEKEKKEEKEKEKKke

奇妙な声を上げながら。 奇声を発しながら。
その身を崩壊する構造物に削られ、緑色の血を流しながら。
それでも娘を守ろうとする植物体の……母の姿を。

その白い仮面のような顔に流れる涙を。
その無表情な顔の頬を伝う、幾多の涙を。
そしてー

「うわあ!」
またもトリューニヒトが悲鳴を上げる。   ガボッ とー
今度は天井の構造物が、まるごと1ブロック落ちてくる。
あんなもの避けようもない。
避けられたとしても、あんな物がココに落ちた途端に、その衝撃で蒔かれたゼッフル粒子が爆発するだろう。
いかに植物体いえども、あれは止められない。
 
 万事休す。      だがー

   まだ彼がいた。

 - グワギャヴァラヴァヴァアアア

D体が受け止めた。
その衝撃で足と手を粉砕されながら、D体が構造物を受け止めた。
「パパ!」 
思わずD体に駆け寄ってしまった俺の腕の中で、ドールトンが叫ぶ。
目の前の、その醜悪な顔に叫ぶ。

 - ギィシャウイヴヴヴヴン
もはや人語を話すこともできないのか、
その醜悪な顔をさらに歪ませて、D体が……いや、ウィリアム・ドールトンが呻く。

「パパ!」

 - イヴァヴヴガズズキロロロロウ
顔をゆっくりと振りつつ、愛でる様に我が娘を見る、ウィリアム。
その白目のない、赤黒い瞳が濡れていたのは、気のせいだったのか……


【 アテンション・オールハンド。 間もなくメインラボの完全滅菌を開始します。 30秒前 】

無機質な声が響き渡る。
俺は一目散に駆け出した。 振り返らず、駆け出した。
「早く! 少佐!」
一足先に扉にたどり着いたトリューニヒトが叫ぶ。

【 間もなくメインラボの完全滅菌を開始します。 10、9、8.7…… 】

「パパー! ママー!」
ドルートンが手を伸ばす。 
父と母に向って手を伸ばす。

 KEKEKEKEKEKEKKEKEKkkek……
 イヴァヴァアアアグラアァァァァァァァァアァァン……

植物体とD体が声を上げる。
破片に埋もれながら。
天井に押し潰されながら。
父と母が叫ぶ。

 その声はまるで………


 【 3.2.1。 インパクト 】

 ー 轟!

閉じた扉の向こうで、炎が吹き上がる音がする。
すべてを無にする音が響く。
扉に寄りかかりながら、俺は荒い息をついた。


  *****


 【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全消滅まで、あと5分です。
   職員はすみやかに退避してください。 繰り返します…… 】

休んでいる暇はなかった。
俺達は必死になって階段を駆け上がり、通路を疾走する。
ドールトンを抱きかかえながら、必死に走る。
その間、爆発でも起こっているのか、小さな振動が絶えず俺達の足元を揺らし、
天井から灰を落とす。


 【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全消滅まで、あと4分です。
   職員はすみやかに退避してください。 繰り返します…… 】

「少佐、だめです!」
トリューニヒトが絶望的な声を上げる。
「隔壁が開きません。 爆発の衝撃で歪んでいます」
見れば最後の隔壁が、歪み、はずれ、通路を覆い隠すかのように行く道をふさいでいた。

「くっ……」
「任せろ」
その言葉より早く、飛び込んで来た何かが、隔壁に痛烈な一撃を与える。

 - ガッッ
と、鈍い音と共に、隔壁はものの見事に吹き飛び、我々に道を開けた。

「遅いぞ!」
「これは失礼」
俺の叱責に、けれどリオンは戦斧を持ったまま、にっこりと微笑んだ。

どんな戦いをしてきたのか。
リオンのその戦闘服は細かな傷でボロボロだった。 
手に持つ戦斧も刃こぼれが無数に生じ、その柄も若干、歪んでいるような……
それにしても戦斧一本で、隔壁ひとつを吹き飛ばすなんて。
さすがコイツは……


 【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全消滅まで、あと3分です。
   職員はすみやかに退避してください。 繰り返します…… 】

「走れぇ!」
俺達は脱兎のごとく、走りだした。


【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全消滅まで、あと2分です。
   職員はすみやかに退避してください。 繰り返します…… 】

薄暗いアーク灯の光。
明滅するパトライト。
ときおり何故か点滅しだすストロボ群。
道を見失いそうになりながらも、なんとか俺達は救難ポッドの射出口にたどり着いた。

「遅いぞ!」
「これは失礼」
俺達を信じて、ちゃんと待っていてくれたムライの叱責に、俺はドールトンを抱えながら、にっこりと微笑み……
「グエン。貴様、顔が歪んでいるぞ。歯でもー」
「もー。ええっちゅーねん!!」
俺達は団子になってポッドの中に転がり込んだ。


【 アテンション・オールハンド。 本施設の完全消滅まで、あと1分です。
  職員はすみやかに退避してください。 
  本研究所。完全消滅まで、あと、59、58、57…… 】

 ーきゅいきゅいきゅい
と、音を立ててポッドの扉が閉まってゆく。

「座っている暇はない。みんな床に伏せろ!」
ムライが普段の奴からは想像できないほど、無茶な事を言う。
俺はドールトンを押し倒すと、その華奢な体を抱きしめた。

 
【30、29.28……】

 -コン と
軽い衝撃とともに、ポッドが床を離れる。
「噴かせぇ!」
「最大出力!」
「行け!行け!行け!」

【10、9、8.7……】
見る見る内に、研究所の建物が遠ざかって行く。 そしてー

【3.2.1. インパクト】

「うわあああああああああああっ」
衝撃で激しく揺れるポッドの中に、トリューニヒトの悲鳴が響く。
俺は見ていた。 惑星ゴラス生物研究所の最後を。 断末魔を。

光った! と思った次の瞬間。 あの赤い実よりもさらに赤い炎が巻き起こり、
それも一瞬に消え、残るのは、ただ拡散していく、黒い煙のみ。

こんな大騒ぎの顛末としては、まことにあっけない、静かで空虚なエンディングだった。


  *****


「艦長。ありがとうございました」
俺は輸送艦「ヴァガ・ロンガ」の艦長に感謝した。

「救助された全員になり代わり、お礼を申し上げます」
「いや、事前に少佐の要請があったからな。 そのおかげだ」
来る前。
どうも嫌な予感がしていた俺は、ムライと相談の上「ヴァガ・ロンガ」の艦長に対して、
なにか緊急の通報あれば、すぐさま引き返してきて欲しい。 と、要請していたのだ。

おかげで俺達は、先に脱出していた曹長や、所員達共々、それこそ
『足の濡れる暇もない』 ほどの早さで救助されていた。

「いえ。例え私の要請があったにせよ。 
それを信じ、なおかつ迅速に対応していただいた艦長の、ご決断があればこそです」
俺の謝辞に輸送艦「ヴァガ・ロンガ」艦長の、ラルフ・カールセン中佐は、照れたように微笑んだ。



 謳声に導かれる。

ドールトンを探して艦内をウロウロと彷徨うグエンの耳に、あの歌が響いてきた。
あの日。初めてドールトンに出会った夜。
同じように自分を彼女への元へと誘ってくれた、この曲。

 永久に輝く、希望の星への賛歌。

「何を見ているんだ」
グエンは最上層の展望ユニットで宇宙を眺めながら、ひとり静かに謳う、ドールトンを見つけた。

「ひとりで星を見ていたのか?」
「ひとりじゃないわ。 まぁくんと一緒」
そう言うとドールトンは、抱きしめていた猫のぬいぐるみをグエンに見せた。

 -まぁぁぁ
グロウラーでも入っているのか、そのぬいぐるみは変な声で鳴いた。

「なあ、ドールトン」
「あによぉ」
「もしかして『まあ』って鳴くから、まぁくんなのか?」
「そうよ。可愛いでしょ?」
「ふーん。 まあ不細工じゃあないな」
「何よそれ。素直に可愛いって言えばいいの」
「はいはい。可愛い可愛い。 大切なことなので二回言いました!」
「爆ぜろ!」
ドールトンが頬を膨らませ、むくれた。

「ごめん、ごめん。 まぁ、飲め」
そう言いつつ、手にしたカップの片方を差し出しす。

「アップルジュースだ。 ちなみに俺のおごりだ」
「ふん! こんなもんじゃ騙されないんだからね! ……でも、ありがと………」
ちびちびとカップをすする二人。

「……グエンくんのは何?」
「ん? 俺か? 俺のはただのコーヒーだよ。 ブラック」
「ちょっと飲ませてよ」
一瞬「間接キス」って単語が、グエンの脳裏に走る。 

 ブルブルブルっ。 何考えとんじゃ俺は! ムライか!

「おいおい。大丈夫か? 苦いぞ? 夜寝れないぞ?」
照れ隠しに説教じみた言い方になった。

「そんな子供じゃないわよ! ……にがっ」
「今、にがって言ったね? にがって言ったよね?」
「うっさい、バカ・グエン! ホント、デリカシーないわねえ!!
 そんなこっちゃ、いつまでたっても恋人のひとりも出来ないわよ!」
「うっせい! そんなことお前に心配してもらわんでいいわ!
 これでもハイネセンに戻れば、どっかん、どっかんのモテモテ・ウハウハなんだ!」

「……………」
「……………」
「……………」
「ごめんなさい。 嘘です。 しくしく……」

「ふんっ! 見栄なんか張るからよ! ……でも良かった」
「なんか言った?」
「なんでもないわ。 ねえ、ハイネセンには、あとどれ位で着くの?」
「んん? 28時間くらいかな。 なあ、ドールトン」
「はい?」
「ハイネセンに着いたら、お前はどうするんだ?」
「父の親戚が居るの。 だからたぶん、そこに引き取られるんだと思う」
「そうか……」

  しばしの沈黙。

「ねえ、グエンくん」
ドールトンが窓の外の星々を眺めながら、ポツリと言った。
「あの時、パパとママはなんて言ってたのかなぁ……」

 あの時ー
崩れゆくメイン・ラボの中で叫んでいた、植物体とD体。 母と父の叫び。

「私への怒りの声だったのかなぁ……」
喘ぐように言葉を紡ぐ。
「自分達を残して逃げて行く、私への怒りの声だったのかなぁ……」
「お前、やっぱりバカだろ」
「はぁっ。 ちょっとそれどうゆう……わふうううっ」

突然、グエンがドールトンの髪を、激しくなでる。
「はわわわわっ。 ちょっと、グエンくん。 何を……」
「あの時、あのふたりが何を言っていたか……」
グエンの声は、まるで軋むようだった。

「グエンくん?」
「あのふたりが最後の時、何を叫んでいたか。 そんなのは簡単だ」
「……………」

「その身を削られながら。
 その身を砕かれながら。
 それでも娘を助けようとした、あのふたり。
 それでもお前を守り続けた、父と母。
 そんなふたりが、お前に対して恨みの声を上げるハズがない。
 あれはなぁ、ドールトン……

 あれは『 さようなら 』 と言っていたんだ。
 二度と逢えない娘に『 さようなら 』 ーと言っていたんだ。 そしてー」

 グエンは絶対の真実のように言い切った。

「『生きろ』 ーと。
 これからは自分達の分まで『 生きろ 』 ーと、そう告げていたんだ」

「……………」
「ドールトン。泣いてもいいんだぞ」
「え?」
「ここにはお前と俺しかいない。 遠慮なく泣けばいい」
「はあ? いったい何を言っているの? 私は泣かないわよ。
 私は強いんだから泣いたり……ぐすっ。 
 泣いたりなんか……ひくっ……しないんだからぁ……ぅっぅぅぅ」
嗚咽が漏れる。

「……パパぁ、ママぁ。 ……ぅ、ぅぅぅぅうううあああああぁぁ」

「ああ。遠慮せずに泣け。 泣いてやれ。 それがあのふたりにできる精一杯の……」
「うううう…偉そうに……そ、そう言うグエンくんだって、泣いてるじゃない......」
「黙れ、お子ちゃま! 俺は泣いてなんかないぞ!
 俺は軍人なんだ。 
 指先ひとつで何万人もの兵士を死地に追い込む、非情で冷酷な指揮官なんだ!
 いちいちこんな事で泣いてられるか!  ……くぅぅぅ」
ふたりの嗚咽が狭い部屋に満ちてゆく。

 - まぁぁ と。

ドールトンが抱きしめた人形が、小さく鳴いた。





「ふたりとも頑固ですね」
「ああ。 頑固だなあ」
「まったく頑固なバッジェーオ(愚か者)達だ」

そんなふたりに、三人の仲間達が通路の陰で、そっと優しい「サイ(タメ息)」をついていた。








     Essere Continuato Un Epilogo( エピローグにつづく )





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『BIO HAZARD・DEGENRATION』 及び
拙作『 Un noce rosso 』 を、ご存知の方々(いや、こっちは大丈夫だろ。さすがに)

ー Tacere quinescit nescite loqui (タケト・クイネ・キスト・ロクイ )
    黙れぬ者は、語る資格がない (おひっ!)

そんな訳で、本作品。
一応エピローグ へと続きますが、こんだけテンプレ&ネタだらけであれば、
正直、いらなくね? とも思いますね(鹿馬)

まぁ、頑張って書きます。書かせていただきます。 がー
みな様の予想はほぼ、まんま当たってます(大鹿馬)

それとpart-2の最後にも書いたんですが、このクソ長い駄文。
ひとつに纏めた方が良いですかね?
纏めるとしたら、どの時点が区切ればいいですかね?
それても、このまま、こういう形で掲載していても良いですかね?

今更、文章を短く切る。 もしくは再編集する。 ーなんて芸当は、私はできませんので
文字数はこのままでって事で。
もちろん、そんな事。 こんな駄文にゃ関係ないから、このままでもいいんじゃね?
ってご意見もアリです。

それではお話しは、ネタ全開。テンプレで「声にならない」エピローグに続きます。
できればみな様。 変らぬご贔屓のほど、よろしくお願いします(伏)




 


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