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No.25391の一覧
[0] 【チラ裏からきました】 「銀トラ伝」 銀河英雄伝説・転生パチモノ[一陣の風](2013/09/22 13:53)
[1] 「第4次 イゼルローン攻略戦   前編」[一陣の風](2013/09/20 15:12)
[2] 「第4次 イゼルローン攻略戦  後編」[一陣の風](2013/09/20 19:02)
[3] 「 28 Times Later  前編 」[一陣の風](2013/09/20 15:27)
[4] 「 28 Times Later  中編」[一陣の風](2013/09/20 15:30)
[5] 「 28 Times Later 後編  part-1」[一陣の風](2014/07/21 23:09)
[6] 「 28 Times Later 後編 part-2」[一陣の風](2013/10/09 23:13)
[7] 「 28  Times Later 後編 part-3」[一陣の風](2013/09/20 18:02)
[8] 「 28  Times Later   エピローグ 」[一陣の風](2013/09/20 16:52)
[9] 「 The only Neat Thing to do 」  前編[一陣の風](2014/07/21 23:47)
[10] 「 The only Neat Thing to do 」  中編[一陣の風](2014/07/21 23:52)
[11] 「 The only Neat Thing to do 」  後編[一陣の風](2012/04/29 11:39)
[12] 「The only Neat Thing to do 」 エピローグ[一陣の風](2012/04/29 13:06)
[13] 「銀河マーチ」 前編[一陣の風](2013/02/25 19:14)
[14] 「銀河マーチ」 中編[一陣の風](2013/03/20 00:49)
[15] 「銀河マーチ」 後編[一陣の風](2013/09/06 00:10)
[16] 「銀河マーチ」 エピローグ[一陣の風](2013/10/18 22:31)
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[25391] 「第4次 イゼルローン攻略戦  後編」
Name: 一陣の風◆fc1b2615 ID:8350b1a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/20 19:02
爆音が鳴り響いた。
鼓膜を震わせ、大きな音が鳴り響いた。



 「光と人の渦が溶けてゆく。 あ、あれは憎しみの光だっ」



   第三話 【第4次 イゼルローン攻略戦 後編】


そんなハズはない。
そんなワケがない。

宇宙で爆音が響くことはない。
真空で爆音が轟くことはない。

それでも俺は聞いた。
それでも俺には聞こえた。

船という構造物が弾ける音を。
人という構成物が弾ぜる音を。

業火に身を焼かれながら上げる兵士達の叫び。
内臓をぶちまけながら、のた打ち回る兵士達の叫び。
そして叫ぶことさえ許されず、一瞬にして消滅する兵士達の無念の叫び。

俺にはその声が、はっきりと聞こえていた。



「戦艦バウータ撃沈!」
「副司令、ナモナッキー准将戦死!」
「第12分隊はサフランだけだ! シスコも被弾している!」
「スネークル。スネークル!?」
「巡航艦ジュピター。 『さよなら』を打電し続けています!」

雷神の鎚の一撃は、一瞬のうちに500隻もの艦艇を消滅させていた。


「こ、これがトゥールハンマーの威力……」
パストーレが呟くように言う。
「司令。このまま、後退を続けますか!?」
本艦の艦長が問いただす。
「艦隊の四分の一が一瞬で消滅……」
「司令!」
唖然とし続けるパストーレに艦長が詰め寄った。
俺は慌ててパストーレの耳元に口を寄せた。

「提督、しっかりしてください。兵が見ている」
「あ、ああ。そうだな。このまま後退を続けよう……」
「声が小さいです」
「す、すまない。 ぜ、全艦後退を続けろ!」
パストーレは予想外の事態に心ここにあらず-だった。
参謀長も放心状態だ。

もちろん俺だって予想外だ。
こんなにもトゥールハンマーが恐ろしいものだったとは……
見ると聞くとは大違いってやつだ。
いやもう、逃げるしかない。
ヤンではないが、いっそのこと「ケツまくって逃げろ!」と言いたかった。
だけど、やっぱり間に合わない。


「再度、イゼルローン上に高出力反応っ。 第2射、来ます!!」
オペレーターが発狂レベルの声で叫ぶ。
彼等とて、そう叫ぶことで辛うじて自我を保っているのだ。
「3.2.1。インパクト!」

 -ゴバァッ

光った。
風が吹き抜ける。
轟音が今度は本当に鳴り響いた。
殴り飛ばされたような衝撃で、俺は床に転がった。
被弾したのだ。

アカン。アカンて。ホンマ、もう死んじゃうよぉぉぉぉ!!
いや。いやいやいや。
俺は死なない。
少なくともこの場面では死なない。 それはまだ先のハズだ。
それだって死なない。 俺には原作知識がある。
要は調子にのって追撃をしなければ……

俺が混乱する頭を振りつつ起き上がると、辺りは阿鼻狂乱の巷と化していた。
爆沈した船の破片が当たったものだろうか。
構造物の一部がひしゃげ、歪んでいる。
天井からはむきだしのコードが幾重も垂れ下がっている。
中には火花を散らしてる物もある。

1階のオペレート席では何人もの兵士達がひっくり返り、呻き声を上げていた。
幸い空気漏れはないようだ。
応急のバブル(泡)が放出され、自動的に亀裂を防いでいる。
もう少し当たった破片が大きければ、俺達は宇宙に吸い出されていただろう。
クワバラクワバラ。

「作戦参謀。大丈夫か」
こんな中でも冷静な声に振り向けば、顔を煤けさせ、その自慢の髪型も振り乱した同期生。
蜘蛛の糸がゆっくりと歩み寄って来るところだった。
相変わらずマイペースだ。

「ムライ……やられたよぉ」
「うむ。まぁ、積もる話しもあるだろうが、今は後だ。 司令官は何処だ」
その問いに俺はハッとする。
そうだ。
なによりも司令官の安否だ。 もちろん、まだ死んじゃいないだろうが……居た。

パストーレは、長々と床に転がっていた。
幸い命には別状ないようだが、頭を強打したのであろう、意識は朦朧としていた。
「司令官負傷。メディックは至急、艦橋へ」
俺はそう艦内インカムに叫ぶと、もうひとりを探し始めた。
そう。参謀長だ。
司令官も副司令官も亡き今。艦隊の指揮を執ってもらわねば。

「参謀長。 ホーランド大佐! ウィレム・ホーランド大佐!」
俺はウロウロと探し回る。
ムライと手分けして探し回る。

倒れたパネルを持ち上げる。
部屋の隅をのぞく。
腰をかがめ机の下も見てみる。
まさかと思って、机の上の書類を持ち上げてみる。
……やっぱりいない。
2階の指揮官フロアには、その影も形もない。

あんのボケぇカスなお調子モン。いったい何処へ……
もしや?
俺とムライは、ある予感と共に、恐る恐る1階を覗き込んだ………居た。
衝撃で吹き飛ばされたのであろう。
1階の床の上で「大の字」になって寝ッ転がっている、ホーランドを見つけた。

あっ。ぴくぴくしてる。 あっ。痙攣し始めた。 あっ。口から泡吹いてる。
まるでカニだネ。
そうだ。 このままここで奴が死ぬか再起不能になれば、後の11艦隊の悲劇はなくならね?
このまま放置しようか?
うん。うん。 それがいい。そうしよう。それで決定!

「メディック。1階で参謀長が負傷している。すぐさま手当てを」
そんな俺の思いを知るよしもなく、ムライが命じる。
「命に別状はありません。 意識はありませんが……」
ホーランドを診察した、メディックが言う。
ちっ。
つい、舌打ちをしちまった。


「作戦参謀」
こんな修羅場に全く似つかわしくない冷静な声が俺を呼んだ。
「はい。艦長」
そこには茶色のヒゲモジャを煤で黒くした旗艦「アキレウス」の艦長が立っていた。
「作戦指揮を、お願いする」
「はあ?」
「先ほど報告があった。後部指揮所が壊滅。副長以下、他の参謀全員が死亡、または負傷だ」
「そんな………」
「今、この場で命令を…艦隊の行動命令を出せるのは貴様だけだ」
「待ってください」
ムライが割って入る。
「お言葉ですが艦長。参謀に命令権はありません。正式な移譲手続きもなく、グエンが命令を下すことは規則違反です。 それに彼は大尉にしか過ぎません!」
「今は非常時だ」
「非常時であればこそ、規則は重視されるべきです」

ううむ。
さすがはMr.秩序。 言ってることは全く正しい。
けど艦長の恐ろしげな顔を見れば、俺なら絶対、そんなこと言えないお?
だが、艦長の方が役者が一枚上手だった。

彼はムライをひと睨みすると、今しも担架で運ばれようとするパストーレにかがみ込み、何事かを囁いた。
「はっ? 全権をグエン参謀に? 分かりました」
「艦長?」
「司令官の許可は取ったぞ。 大尉。今から君が臨時指揮官だ」
こらこらこら。
今、勝手にしゃべったよね?
今、勝手にパストーレの手を持ち上げて、俺を指差しさせたよね?
アンタ何そのデギン・ザビ。

「さあ。指示を出し給え」
俺はこのとき、ブライトさんや、アクバー提督。新城直衛の気持ちが、少しだけ分かったような気がした。


「全艦、前進。全速で敵艦隊の中に突っ込め!」
俺は命じる。
「おい、グエン……」
「了解。最大戦速!」
ムライが何かを言う前に、艦長の大音声が響き渡った。
「奴等の中に突っ込め。 そうすればトゥールハンマーは撃てん!」

 - ああ。さすがはこの人だな
   その意味をよく分かっている
   まぁ難点なのは集中砲火を浴びるってことだが……
   この人には……猛将たる、この人には関係ないな。

俺は改めて戦艦「アキレウス」の艦長。 アップルトン大佐を見やった。
後に第8艦隊の指揮官として、俺の上司になる男を……


「空戦隊発進。 敵をかき乱せ!」
額に十字の傷を持つ、痩身長髪の女が率いるスパルタニアン達が飛び出して行く。
彼等は慌てる帝国軍の艦艇に肉薄すると、次々にビームやミサイルを撃ち込んでいく。
そうして乱れた艦列に、俺達は全速で突っ込んでいった。





  袋叩きにされました。



爆光が瞬く。
炎が上がる。
破片が飛び交い、人が…人だったモノが血を撒き散らしながら宇宙(ソラ)を漂う。
直撃を受けたスパルタニアンが一瞬で消滅する。
エンジン部分に被弾した巡航艦が暴走の挙句、敵艦を道連れに爆発する。
どんな力が働いたものか、文字通り真っ二つになった戦艦が、前後ばらばらに漂いだす。

 死が満ちる。

「突っ込め。突っ込め。 そのまま敵の反対側まで突き抜けろ!」
俺は叱咤する。
「止まるな。止まると助かるものも助からなくなるぞ!」
アップルトンが叫ぶ。
「絶対方位043。 間隙がある。 薄くなっている」
『秩序』をかなぐり捨てて、いつの間にか俺の作戦幕僚となったムライが告げる。
「全艦、我に続け」
俺達の艦隊は一丸となって突進して行く。
帝国艦隊は俺達を包み込むように追ってくる。

「いいぞ。前も後ろも右も左も敵ばかりだ。 撃ちまくれ!」
興奮したムライが叫ぶ。
いや、ちょっ、待っ。 おまっ。
それ俺の台詞だから!



突然、目の前に星空が広がった。
視界いっぱいの星空が広がった。

「ぬけた……」
気が付けば、あの狂乱の輝きもいつの間にか収まっていた。
誰もが不意におとずれた静けさに、惚け、安堵のタメ息をつく。
俺達はなんとか敵を振り切ったのだ。
目の前には元凶。 イゼルローンが妖しく輝いていた。

「艦長。このまま敵の背後につきます!」
呆けている暇はない。
俺はアップルトンに「命令」する。
「そのまま、敵艦隊とイゼルローンを牽制しつつ、味方の救助を待ちます」
「りょ、了解。取舵いっぱい。進路180っ」
「全艦、球状隊形を取れ。これからは防御に専念するぞっ」
「アイ・サー。全艦、球状隊形に移行。 これよりは防御戦闘に特化」

サーじゃねえっての! ムライさんよぉ。 俺はただの代理の臨時の大尉なんだからネ!

半数以下にまで撃ち減らされたパストーレ分遣隊が、前進してきた本隊に救助されたのは、
それから16時間後のことだった。



  ****


「君の報告書は読ませてもらった」
それからさらに36時間後。
首都ハイネセンに帰還する艦隊の中で、俺は今回の総参謀長。シドニー・シトレ中将の問責を受けていた。

「パストーレ分遣隊。出撃数2080隻。 帰還数996隻。 やられたものだな」
「しかし全体を見れば、我が艦隊が敵を混乱させた結果、帝国艦隊は我々に倍する艦艇を失っています。
 それを見ずして、我が艦隊の損失だけを評するのは、不公平な裁定と言わざるを得ません」
「はっきりと言う。気に入らんな……」
「どうも……」
「司令部が機能停止に陥った後、指揮をとったのは君だな」
「はい」
「浸透戦術か……なかなか見事だな」
「はあ?」
「ハイネセンへ帰還後、その戦術に対するレポートを私に提出し給え。 以上だ『少佐』。 退がってよろしい」


「よう、少佐殿。ご苦労さん」
「グエン少佐。お疲れさま」
狐につままれたような顔で俺がシトレの部屋を辞すると、ふたりの戦友が待っていてくれた。

「司令と参謀長は無事だ。しばらく養生すれば、すぐ復帰できるだろう」
アップルトン『准将』が言う。
「ちなみに、おふたりとも今回の件でのお咎めはないそうだ。 
 まぁ、しばらくは後方勤務だろうが、降格や軍法会議などはなさそうだ」
ある意味、危ないことをムライ『少佐』がサラリと言う。

「結局、イゼルローン攻略は失敗。これで誰かをスケープゴート(贖罪の山羊)にすれば、どこに飛び火するか分からん。
 死人に口なし。 死んだ奴のせいにして責任回避。
 そして命からがら逃げ出してきた俺達を昇進させて、口封じ。 
 なかなか上手い敗戦処理だな」
もっと危ないことを、アップルトンがさらりと言った。
うん。結構、この人も毒舌家なんだなぁ。

「まあ、私は生き残ったことを素直に喜びますよ」
旗艦「アキレウス」は結局、大破・廃艦判定。
乗員、司令部要員含めて、40パーセントが戦死または負傷。
そして、分遣隊だけでも、1万人以上の将兵が死んだのだ。

ある意味、俺が殺したのだ。
俺の命令で、それだけの人が死んだのだ。
ヤンの気持ちが良く分かるよ。  しくしく……



「どうだ。無事な生還を祝って一杯やらないか? いいスコッチがあるんだ」
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、アップルトンが言う。
「昇進祝いもかねて、今からどうだ?」
「提督。艦内での飲酒は禁止されております」
Mr.秩序が言う。
「将兵の見本たるべき将官が、自ら軍律を犯すなど許されることではありません」
「……おいおい。お前の相棒は、本当に頑固だなぁ」
「はあ……」

ムライが『誰が相棒か!』と、いう目で俺を睨む。
いや、俺が言ったんじゃないし……

「それに……」
「ん?」
ムライがカミングアウトする。

「それに、この男は酒は飲めません」
「は?」
「この、グエン・バン・ヒューという男は、食い意地だけの、まったくの下戸なのです」
「……マジなの?」
アップルトンの問いかけに、俺は無言でうなずく。
ちくしょう。 
酒が飲めたからエライって訳じゃないやい!
酒を飲まないと、言いたいことも言えないって訳じゃないやい!
俺は酒より、純粋ミックスジュースな方が好きなだけだい!

「そういうお前は真面目な顔して、底なしのザルじゃねえか」
反撃! と、ばかりに今度は俺がカミングアウトしてやった。
憮然とした顔で、ムライが黙る。
ざまみろっ!

「くっくっくっ……」
「提督?」
不意にアップルトンが笑いだした。
顔中を覆った茶色のお髭を震わせて、笑い出す。

「無茶な突撃を命じる『アタマノ螺子ノユルンダ』下戸な指揮官。
 秩序にうるさい、頭のカチカチな大酒飲みのテッパン参謀。
 やっぱりお前達は良い相棒(コンビ)だ」

ついにアップルトンは大きな声で笑い出す。
豪快な笑い声が響き渡る。
つい、つられて俺もムライも笑い出し……
怪訝な顔で俺達を見る乗組員達に構わず、俺達は笑いながら歩き続けた。

 とても暖かな笑い声だった。




こうして俺の「第4次イゼルローン攻略戦」は終わった。



やれやれ、生き残れたよ。





  *****



そしてハイネセンに帰還した俺を待っていたのは、後方基地勤務の辞令だった。
そこで俺はひとりの若い中尉と出会う。
その男の名は-


それはまた次回の講釈で。

      ジツワコレガ 死亡フラグダッタリスルンダヨナー! 



         
                つづく。 かもしんない。







参謀長落下ス のネタは>闇の皇子様よりいただきました。
感謝します。 使い切れてませんが(涙)

結局、私は「王道」「テンプレ」「ワンパターン」「ハッピーエンド」しか書けないのだと分かりました。
なにとぞお見捨てなく(星願)

そーいえば
ミックスジュースって、所によっては存在しないんですって?(鹿馬)


「スケープ・ゴート。贖罪の山羊」の表記に関しては、缶詰金魚さまより、ご指摘をいただき訂正しました。 改めて感謝いたします。


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