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No.25391の一覧
[0] 【チラ裏からきました】 「銀トラ伝」 銀河英雄伝説・転生パチモノ[一陣の風](2013/09/22 13:53)
[1] 「第4次 イゼルローン攻略戦   前編」[一陣の風](2013/09/20 15:12)
[2] 「第4次 イゼルローン攻略戦  後編」[一陣の風](2013/09/20 19:02)
[3] 「 28 Times Later  前編 」[一陣の風](2013/09/20 15:27)
[4] 「 28 Times Later  中編」[一陣の風](2013/09/20 15:30)
[5] 「 28 Times Later 後編  part-1」[一陣の風](2014/07/21 23:09)
[6] 「 28 Times Later 後編 part-2」[一陣の風](2013/10/09 23:13)
[7] 「 28  Times Later 後編 part-3」[一陣の風](2013/09/20 18:02)
[8] 「 28  Times Later   エピローグ 」[一陣の風](2013/09/20 16:52)
[9] 「 The only Neat Thing to do 」  前編[一陣の風](2014/07/21 23:47)
[10] 「 The only Neat Thing to do 」  中編[一陣の風](2014/07/21 23:52)
[11] 「 The only Neat Thing to do 」  後編[一陣の風](2012/04/29 11:39)
[12] 「The only Neat Thing to do 」 エピローグ[一陣の風](2012/04/29 13:06)
[13] 「銀河マーチ」 前編[一陣の風](2013/02/25 19:14)
[14] 「銀河マーチ」 中編[一陣の風](2013/03/20 00:49)
[15] 「銀河マーチ」 後編[一陣の風](2013/09/06 00:10)
[16] 「銀河マーチ」 エピローグ[一陣の風](2013/10/18 22:31)
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[25391] 「銀河マーチ」 後編
Name: 一陣の風◆5241283a ID:e1de2eae 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/06 00:10
 ーここは何処だろう

イヴリンは呟く。

 ー確かさっきまで、親友のフレデリカと一緒に新しくできたアクセサリーの店に居たはずなのに。

気が付けば此処にいた。
荒涼たる大地。
名も知れぬ背の高い草が、ぽつりぽつりと生えている。
そんな場所に、ドールトンはひとり立っていた。

 ー寂しい光景ね

その岩と砂でできた大地を生温い風が吹き抜けて行く。
その風にのり、微かなざわめきが彼女の耳に届く。
つられたように、ドールトンは歩き出した。
その音のする方向へ。
ひとり、ゆっくりと。

荒涼たる乾いた大地。
それは何処までも続いているかのようだった。



  第 15 話 「銀河マーチ」 後編



ロッカーから愛用のコルト・パイソン357 マグナム 6in を取り出し、フォルスターに突っ込む。
モスバーグM500A(二代目)は予備弾倉と一緒にバックの中に。

「懐かしい光景ですね」
彼はそう言った。


  ****

「お見舞いだ」

明けの明星が輝く頃。
再び病室を訪れたエリファズ・トリューニヒトは、人形の入った箱を俺に手渡した。

「一刻も早い彼女の回復を願っているよ」
俺は彼の目の前で、シトレからもらったファイルを消去する。
エリファズは小さく微笑むと、ゆっくりと部屋を出ていった。

 ーネオ・スキアヴォーニ河岸8492倉庫

嫌がらせのように。
人形のスカートの中に突っ込まれた紙片にはそう書かれていた。

俺はその情報をシトレに送ると学校に戻り、準備を整えた。


「で、君はなんのつもりなんだ」
 
 ー 懐かしい光景。
そう言った男。
ヨブ・トリューニヒトは防弾、防熱用のベストを羽織り、無粋なレーザーガンを持って立っていた。

「もちろん、少佐のお供ですよ。副官なんですから」
「今回の件。君には関係ない。ここで大人しく待っていたまえ」
「少佐が私と父との事を気にしているのなら、その配慮は無用です。父とは関係ありません。私の個人的な判断です」」
「…………」
「彼女は……ドールトン嬢はあの日、言ってくれたのです」
それはあの日。あの朝、 まだドールトンが元気良く走り回っていた、あの頃の話だ。

「ごめんなさい。と……」
「ごめんなさい?」
「ええ。少佐が…グエンくんがあんな事言ってごめんなさいと。でも本気で責めてる訳じゃないんだからね。と」

「…………」
「だけど、グエン君は本気で怒ってるんだよ。
 あなたの事が…ヨブさんの事が、本気で好きだから。と」
「…………」
「だから。
 だからこれからも毎朝、ここにホットケーキを食べに来てね。と」
「…………」
「そう言って彼女は私を優しくハグし、頬にキスをしてくました。そんな彼女を、奴は……奴等はっ」

 ー ブルブル と。

彼の肩が震える。
そこには軍人でも副官でも。ましてや怪物的な政治家などでもない、ひとりの人間としてトリューニヒトがいた。

「責任はもたないぞ」

 ー ありがとう
そう出かかった言葉を飲み込む。
そんな言葉は必要はない。
そんな言葉は意味がない。

「ええ。望むところです」
トリューニヒトは笑ってくれた。

「そんな訳で、ちょっくら行って来る」
俺は傍らに立つ、もうひとりの男に声をかけた。
「うむ。思い切りやってこい」
「お前さんらくない台詞だな。だが、さんきゅー。サドにもよろしくな」
俺の台詞に苦笑し頷く男。
ムライに軽く敬礼すると、俺はトリューニヒトと並んで、歩き出す。


「遅いですよ」
抜き身の戦斧を肩に抱き(いいのか、ソレ?) まるで「キ○ロのジョー」のように校門に寄りかかりながら、彼は言った。

「こりゃまた失礼。……だが君までなんのマネだい?」
「あなた方のようなひ弱な人達に、こんな荒事、任せてはおけませんからね」
俺の質問に、いたずらな微笑みを浮かべながら、彼は答えた。

「……貴様も、バッジェーオ(愚か者)だな」
「あなたの仲間ですからね」
うるむ視界の中で、シェーンコップはそう言ってくれた。

「では私達も、バッジェーオですね。うふふ」
「グランマ!?」
その穏やかな声に振り向けば、そこにはグランマと共に、ザキ大尉と十数人の男達が立っていた。

「……何なさってるんですか?」
つい言わずもがなな事を聞いてしまう。
「あらあら。もちろん私達もお供させていただきますわ」
やっぱり言わずもがなな答えが返ってくる。

「いや、しかし……」
「うふふふ。イヴリンちゃんは私の孫のようなものですからね。仇をとらないと」
「いや、仇って……ザキ大尉。君は止めなかったのか?」
「もちろん、止めました。けれど……」
「けれど?」
「私はグランマについて行くだけです」

 -不器用ですから

そんなセリフが聞こえてきそうだった。


「俺達も姉さんについて行きやす」
「グランマを独りにさせやしません」
「この命、お二人に預けやす!」
「お二人の仇は、俺達の仇です」
「そのタマ、ワシが獲ったるっ」
「ガンビア湾に沈めちゃる!」
「マウント・ロッコウはもう冷たいでぇ」
「イてもうたらぁ!」

ザキの後ろに並んだ男達が口々に叫ぶ。

「仁義なきか! 第一、お前達はパイロットだろう。陸戦隊員でもないのに、いったい何を考えてる!」
『アタマノ螺子ガ ユルンダ』彼等のセリフに思わずツッコみを入れてしまった。

「あらあら無駄ですよ」
微笑みながらグランマが言った。

「この子達はみんな、ザキちゃんの事が大好きなんですからね。どこまでも付いて来ますよ。うふふ」
「グランマ……」

 ーそりゃ軍閥化やん?

「それにね、グエンさん」
「はい?」
「彼等に好かれているのは、ザキちゃんだけじゃないんですよ」
「誰の事ですか?」
だがグランマは相変わらす微笑むばかり。
答えを求めるように、俺はトリューニヒトを見た。
だが奴はただ肩をすくめるだけ。

同じように、視線をシェーンコップに向ける。
だが彼もただ、口の端を歪ませるだけで……はっ! もしかして!

「お、お前等! ドールトンは……娘は絶対にやらんかんね!!」
俺のそのセリフに全員がズッこけた。
あれぇ……?


「ああ、もう行くぞ! これ以上、面倒くさい奴が増えたらたまらん!」
俺は宣言するように声を上げた。 けれどー

「待て! お前等、いったい何処へ行くつもりだ!」
いちばん面倒くさい奴が来た。



  ****

そこは大きな河だった。
今まで歩いて来た荒れた地と違って、そこには穏やかな美しい河と、何百と咲き乱れる綺麗なお花畑があった。
その河岸に、何十人もの人が集まり、一艘の船に乗り込もうとしていた。

「はあーい。間もなく船がでま~す。ご乗船の方はお急ぎくださぁーい」
船……というよりはもっと小さい。せいぜい20人も乗れば一杯になってしまうような小船の船首に立つ、おかっぱ頭の少女が声をあげた。

その声にぞろぞろと人が乗り込んでいく。
その誰も彼もが無言で下を向き、音もなく乗り込んで行く。
そんな不思議な光景を、ドールトンは驚いたように見つめていた。

「お嬢さんも乗りますか?」
船尾に立ち眼鏡をかけた、もうひとりの少女が、ドールトンに声をかけてきた。

「え? ええと? 乗る……のかな」
自分はこの船に乗るのだろうか。
乗って、この河を渡っていけば良いのだろうか。
このまま、先に進んでいけば良いのだろうか。

「ーかぁっ。この子はまだいいよ。先に行ってくれ」
逡巡するドールトンの前に現れた、また違う少女がそう言った。

「そう。じゃあ行くわね。良かった……」
眼鏡をかけた少女が、オールを手に答える。
「らじゃ。その子の事、やわっこく、よろしくね」
船首に立った、もうひとりの少女が言う。

「ああ。任せておいてくれ。……ゴンドラ出まーーす!」
残った少女がそう大きな声を上げた。
その言葉に押されるように、小舟は岸を離れ、対岸に向かって進みだす。
ゆっくりと、ゆっくりと。
静かに。穏やかに。 
船はふたりの少女の操舵で水を切って進んで行った。

「あの……」
船が見えなくなるまで無言で見送ったドールトンは、傍らに立つ、残った少女に声をかけようとして……思わず口をつぐんでしまった。

何故ならその少女の瞳は、とても悲しげに見えたから……

「さて、お嬢ちゃん。少しお話しをしましょうか」
少女はそう言うと、ドールトンの髪を優しくなででくれた。



  ****

「私の前では気をつけだ!」
いちばん面倒くさい奴。 アーサー・リンチはまず、そう言った。

「お前等いったい何を考えている! ああ、詳しい話はシトレ校長から聞いているぞ。
 だが何を考えているんだ! お前等は警務隊でも警察でもないだろ! お前等のやろうとしてる事は、ただの私念だ! たかが私念で、お前等は軍の行為を逸脱するのか!」

いっ気に言った。
私念か。
確かにその通りだ。これはたかが私念だ。
奴の……リンチの言ってる事は正論だ。まったく正しい。 だがー

「そうなれば責任問題に発展するぞ。お前等は、私……軍に迷惑をかけるのか!」
まるで心に響かなかった。

「アキノ大尉も大尉だ」
何故か矛先が、グランマに向かう。
「グエン少佐のような『アタマノ螺子ガユルンダ』奴ならいざ知らず、大尉まで、いったい何をやっているのか。どうかしている。
 上官として、年長者として、こいつ等を止めてもらわなければ困る。まったく情けない」

言いたい放題だ。
なんの事はない。
こいつはグランマなら何を言っても怒らないと知っているのだ。


 ー ぴきっ

なにかが弾ける音がする。
なにかの切れる音がする。
それはザキ大尉の音。そしてパイロット達の音。
上官を……いや、敬愛する人を貶められて鳴る、彼女と彼等の心の音。

「だいたいお前等は兵士だろ」
だが、そんな音に気付きもせず、得意気に「演説」を続けるリンチ。

「兵士は上官の命令で動けばいいのだ! ただ言われた通り。命令された通り。ただただ戦えば良いのだ。
 考えるな!
 お前等の考えなどいらん!
 ただ従え! ただ戦え!
 お前等に感情など不要だ!!」


 「しゃらくせぇ……」

 
それは地吹雪きのような声だった。

小さく、静かな声だった。
だがそれは、この場を凍りつかせるには十分な響きを持っていた。
誰も彼もが「フリーズ」の号令をかけられたかのように硬直し、指一本動かせなくなっていた。
唯一、かろうじて動きえたシェーンコップが、あわてて戦斧を握り締る。
それ程の殺気を帯びた声だった。
俺の穴という穴から、どっと、冷たく熱い汗が吹き出す。

 ーいったい誰が。

それは女性の声だった。
俺はただ一箇所動かせた目玉を使って、その声の主を探す。
ギョロギョロと。
目玉だけが独立した生物のように、俺の眼窟の中で動き回る。
今、この場にいる女性はふたりだけだ。
だがその内のひとり。ザキは驚いたように小さく口を開け、俺達と同じように硬直している。

 ーそうなると残るのは……

「確かにこれは私念です。あなたの言っている事は正しい……」
グランマだ!
グランマが無表情に。微動だにせず。
薄く目を開け。
まるで地の底から響いてくるかのような声で喋っているのだ。

「けれど私達は兵士である前に、まず人間です」
けれど、あくまで温厚に。
けれど、あくまで穏やかに。
グランマは話し続ける。

「兵士は己の良心に従って戦うことができます」
けれどその声は、ズシリ、ズシリと、俺達に響く。

「そして兵士は己の良心に従って戦いを止める事ができます」
ひとつひとつの言葉がまるで、スパルタニアンから放たれる銃弾のように、俺達の心に突き刺さる。

「あなたの言う、命令のみに従う兵士。良心を失った兵士。戦いを自分で止められなくなった兵士。
 そんな兵士に。そんな人間に。
 自分の大切なモノを……愛する者を奪われた人が、戦いを止めれますか?」
問われたリンチの顔色が、赤くなったり青くなったり黄色くなったり……嗚呼、まるで人が信号機のようだ。

「そこにあるのは、ただの殺し合い。相手の息の根を止めるまで。自分の心臓が止まるまで。
 傷つき。
 血を吐き。
 殺し合う。
 そんな終わりなき悲しいマラソンです」

これがグランマの。
撃墜数、四百を誇るエースパイロットの。
四百人以上の人間を殺した兵士の。

 心の声


「グランマ……」
ザキがかすれた声を上げる。
そこにあるのは、畏怖か、恐怖か、それとも……

「ですから私達は今から、自分達の良心に従って行動します。うふふ」
グランマが微笑む、

 -ほうっ と。
俺達の呪縛が解ける。
その微笑みに、ようやく俺達の呪縛が解けた。
誰もが身じろぎし、大きな「サイ(ため息)」をつく。

「だ、だが問題に…責任が……私の………」
リンチが震える声で、なおも言い募ろうとしたその時。

「ならば君も行けば良い」
ぶった切るかのように、シトレが言った。
「こ…校長……?」
そこにはいつの間にか俺達の背後に立ったシトレ校長が、恐い顔でこちらを睨んでいた。

「兵士に人間だの良心だのぬかす、ふざけた奴等に、現実の厳しさを君が自ら教育してやれ!」

 うわあ~
口ではそう言いながら、目が笑ってるよ、この人。
きっと今までどこかで、俺達の会話を笑いながら聞いていたに違いない。
俺はリンチを見やる。
かわいそうに、二階に上って、はしごを外されてしまったリンチを、そっと見やる。
嗚呼。また人間信号機。

 -シトレに嫌われるようなマネは絶対にすまい!

俺はそんなリンチを見ながら、心に固く決めるのであった……マル!



  ****

「ーかあっ。お嬢ちゃんはイヴリンっていうのか」
「うん。お姉さんは?」
「ウチの名前は、xxみ。よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
その時、ドールトンは確かに少女の名を聞いたはずなのに。
その後、彼女はどうしても、その名を思い出す事ができなかった。

「そっか。気がついたらここに居たのか」
「うん。お友達と一緒に買い物に来たハズなのに……私、どうしたのかなぁ」
「君はどうしたい?」
少女が耳元に輝る紅いピアスを揺らしながら訊ねてきた。

「え?」
「君はどうしたいんだい? このまま河を渡りたい? それとも元居た場所に帰りたい?」
「ええと、私は……」
「おや、誰か来たみたいだ」
戸惑うドールトンに、少女は優しく告げた。

「誰かって……えっ?」
少女が指差す方。
綺麗な花が咲き乱れる小高い丘。
その丘の上に、ふたつの人影が……あれは。

「パパ!? ママ!?」
そこでは、イヴリンの父と母。
ウィリアム・ドールトンと、アネット・ドールトンが、優しく微笑みながら立っていた。
思わず駆け寄るドールトンを、ふたりは優しく抱きしめてくれた。


 ー VFです!!



  ****

「アルファ・グルポ、位置に付きました」
「ブラヴォー・グルポ、準備よし」
「チャーリィ・グルポ、いつでも行けます」

そして ー
「リンチ・リーダー、スタンディング・バイ」

俺達の作戦は単純だった。
シィンとロキーが率いる2グループが正面から、クレッグが率いる1グループが裏側から突入。
敵がその対応に焦るスキに俺達本隊が二階の非常口から入り込み、バンデルを確保する。
名付けて「啄木鳥作戦」
単純なだけに成功する見込みの高い作戦だった。

「EO(光学式)および、RF(電波式)センサ作動。IRST(赤外線捜査追跡システム)に反応。一階正面に10人。裏口付近に4人の熱源を探知しました。うふふ」
上空三千メートルでホバリングするスパルタニアンから、グランマが報告してくる。

「あらあら。さらに二階の事務所に熱源 3。カージオイド(単一指向性MIC)にて音紋照合中……来ました。当該者をバンデル・メタリノームと断定」
「よし。作戦開始。Go!Go!Go!」
グランマの声に合わせて、俺は突入を指示する。

 -BANG!

と、窓や戸から放り込まれた、スタングレネードとスモークが炸裂する。

「全員、インフラット(赤外線)使用。悪いが相手はこちらが見えない。やっつけろ!」
スタングレネードで動きを止められ、スモークで何も見えなくなった相手に、にわか陸戦隊のパイロット達が突っ込んでいく。
大多数の敵はその場ですぐ引き倒され、拘束された。
何人かの敵が闇雲に銃を乱射するが、味方撃ちになり、より混乱を広げていた。

 その隙にー
非常階段から滑るかのように進入した俺達は、いっ気に廊下を駈け進んでいた。
「二人がそちらに向かっています」
グランマが教えてくれる。
俺達は廊下の角に身を潜めると、近づいてくるドタドタとした足音に身構えた。

「うわ!?」
角を曲がった途端。先頭の男は俺に足を引っ掛けられ転倒する。
「フリーズ!」
レーザーガンを構えたザキが叫びながら男を踏みつけ、その動きを止めた。

「ぎゃあ!」
咄嗟に銃を構えようとしたもうひとりの男を、シェーンコップが戦斧で薙ぎ倒す。
「安心しろ、峰打ちだ……また、つまらぬモノを切った」
何故かニヒルに言い放つ、シェーンコップ。
いやそれ「ザ・サード」の友人だから!

トリューニヒトがふたりを即座に拘束する。
見事なチームワーク!
俺達は完璧に、ひとつのチームとして機能していた。 これぞ絆の勝利か。
ちなみにこの時。
我等が愛すべき上司は、最後尾でただ腰を抜かしていた。


「チャーリー・グルポ。制圧完了。クリア」
「アルファ・グルポ、制圧完了。クリア」
「こちら、ブラボー・グルポ。銃を乱射してるバカがまだ、ふたり」
「グランマ?」
「はいはい。チャーリーさん達はそのまま前進したください。あと戸をふたつ開ければ彼等の背後に出れます。アルファさん達は左に展開してください。
 ブラボーさん達と合流して牽制。チャーリーさん達の援護を、お願いね」
『イエス、グランマ!』
男達の声が重なる。
それはハタで聞いていても、とても安心できる戦術指示だった。

「グランマ、バンデルの様子は?」
俺達は再び前進しながら訊ねた。
「……………」
返事がない。

「グランマ?」
「あらあら。おかしいわね。目標はまだ部屋の中です」
俺の再度の問いかけに、グランマは戸惑ったように答えた。

「動いてないんですか?」
「……ええ、ええ。小さく部屋の中を動き回ってはいますけど、どこかに逃げようとはしていないわね。あ、待ってください」
「どうしました」
「電波の発信を探知。部屋の中から発信されています」
「声を拾えますか」
「はい。ウルトラ・モード作動」
「音声をこちらにも送ってください」
「はあい」

 -ザッザッザッ…オレダ、バ…デ……ダッ

空電ノイズが混ざる中、奴の…バンデルの声が聞こえてくる。

 -アジトヲ…ラレタ。 ソウ…ワレワレワ…・・・ジダイノセンクシャ…にえ トナラン…ヒヒヒ…マカセテ…ケ タタ…イワ ツヅク…… 
  ケケケ……ミナゴロ…ダ ワレラ…ノ セイギトタイギ…タメ クククク……
  アハハハハ……ソウ スベテハ………ノ タメニィィィィヒヒヒヒヒヒヒィ!


「この部屋だ!」
俺は「事務所」と書かれた扉を蹴破るように室内に突入した。 そこにはー

 -ギィィィン

紅い眼を輝かせた、そいつがいた。

「パワードスーツ……だと」

 瞬間、目の前が爆発した。



 ****

「VF(心室細動)です!!」
ユキモリ看護士が叫ぶ。

 -ピィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーィ。

心拍モニターが平坦な音を上げる。

「CPA(心肺停止状態)!」
「緊急蘇生処置! 心臓マッサージ!」
叫びながらサドがなんのためらいもなく、ドールトンの上に馬乗りになると、その服をはだけ、幼い胸を露出させる。

「1.2.3.4.5………」
強く胸を押しながら数を数える。
「ユキモリ、AED(電気的除細動)の用意!」
「はい」
「気道確保! 人工呼吸!」
唇を重ね、サドはドールトンに空気を吹き込む。

「心拍、戻りません!」
「マッサージ続行! ムライちゃん、かわって!」
「お、おうっ」
ムライがドールトンの胸に手を当て、心臓マッサージを続ける。

「AED、準備よし!」
「衝撃いくわよ。ムライちゃん、離れて!」

 -ドン! と。

電撃がドールトンの体を跳ねさせる。

「ダメです!」
「もう一回いくわよ。衝撃に備えて!」

 -ドン!

再び、ドールトンの体が跳ねる。
「ダメです!」
ユキモリ看護士が悲鳴のように叫ぶ。

「心臓マッサージ再開! ユキモリ、パソプレッシン 40単位投与!」
「は、はい!」
「帰ってきて、イヴリン」
心臓マッサージを続けながら、サドが呟く。

「帰ってくるよの、イヴリン」
「パソプレッシン、投与しました!」

「さあ、帰ってきて、イヴリン」
1.2.3.4.5……

「みんな、あなたを待ってるの。みんなが、あなたを待ってるのよ」
1.2.3.4.5……

「死神なんかには渡さない。絶対に渡さない。あなたの林檎は食べさせない!」
1.2.3.4.5……

「さあ、グエン司令も待ってるわ。イヴリン。グエン司令が誰よりも、あなたを待ってる。だから…だから早く」
1.2.3.4.5………

「早くっ、早く、帰ってきなさい。 イヴリン。 イヴリン・ドールトン!!」
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10………



  戦いはまだ、続いていた。





   - つづく アイカワラズ ナガイ……ゴメンナサイ(涙)






 <><><><><><<><><>

いきなり襲うゲリラ豪雨。 突如巻き起こる竜巻。未だ続く熱波。
みな様、ご健勝でいらっしゃいますでしょうか?
ご無沙汰しております。 ようやく「後編」をUPさせていただきます
待っていてくれた、みな様(いない いない)
長らくお待たせしました!(だから 待ってない 待ってない)

「銀河マーチ」エピローグも、なるだけ早くUPさせていただきます(口だけ鹿馬)
どうかお見捨てなく、最後まで御贔屓のほど、よろしくお願いします。

 あ
ちなみに何度も言いますが、本作は決してクロスとかコラボとかではありません。
そう感じるならば、それはあなたの感性が優れているから……(大鹿馬)


追記1
『嘘から出た誠』 で。
PVが90000を超えました。

ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!
はひーはひーはひぃーーーーーーーぃぃぃぃぃ(涙目)

調子にのった、嘘つきピノキオの鼻な、SS界いちの無責任を自称する私は、次回UPを「潮」に、本板(その他)への移板を策謀しています。
どうか、お叱りください(スライディング土下座)


追記2 私信です
主催さま。
感想掲示板にて、師に対する私信を書かせていただきました。
お読みの上、また返事の一行でもいただれば幸いです(ジャンピング土下座)


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