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No.25391の一覧
[0] 【チラ裏からきました】 「銀トラ伝」 銀河英雄伝説・転生パチモノ[一陣の風](2013/09/22 13:53)
[1] 「第4次 イゼルローン攻略戦   前編」[一陣の風](2013/09/20 15:12)
[2] 「第4次 イゼルローン攻略戦  後編」[一陣の風](2013/09/20 19:02)
[3] 「 28 Times Later  前編 」[一陣の風](2013/09/20 15:27)
[4] 「 28 Times Later  中編」[一陣の風](2013/09/20 15:30)
[5] 「 28 Times Later 後編  part-1」[一陣の風](2014/07/21 23:09)
[6] 「 28 Times Later 後編 part-2」[一陣の風](2013/10/09 23:13)
[7] 「 28  Times Later 後編 part-3」[一陣の風](2013/09/20 18:02)
[8] 「 28  Times Later   エピローグ 」[一陣の風](2013/09/20 16:52)
[9] 「 The only Neat Thing to do 」  前編[一陣の風](2014/07/21 23:47)
[10] 「 The only Neat Thing to do 」  中編[一陣の風](2014/07/21 23:52)
[11] 「 The only Neat Thing to do 」  後編[一陣の風](2012/04/29 11:39)
[12] 「The only Neat Thing to do 」 エピローグ[一陣の風](2012/04/29 13:06)
[13] 「銀河マーチ」 前編[一陣の風](2013/02/25 19:14)
[14] 「銀河マーチ」 中編[一陣の風](2013/03/20 00:49)
[15] 「銀河マーチ」 後編[一陣の風](2013/09/06 00:10)
[16] 「銀河マーチ」 エピローグ[一陣の風](2013/10/18 22:31)
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[25391] 「 The only Neat Thing to do 」  後編
Name: 一陣の風◆fc1b2615 ID:8350b1a5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/29 11:39
「抹殺せよ。彼等を抹殺せよ」
影が命じた。



 第11話「 The only Neat Thing to do 」 後編



俺が現状と先の戦闘の報告と、ザキがもたらした敵基地の偵察情報を、秘匿通信で送ってから数時間後。

 ー For Commander Eyes Only (指揮官のみ閲覧)

最初に、そう記された返信がやってきた。

「彼等を抹殺せよ」
スクリーンの中のシトレが言う。
背後のパネルの光が強く、シトレ中将のその姿はシルエットのように浮かび上がっていた。

「まもなくエル・ファシルから避難民を乗せた船団が出港する。
 乗員の大部分は女性と子供である」
「もう少し待てないのですか?」
つい、そう問いかけてしまう。
実際にこの映像は。もう何時間も前に送信されたものであるとは分かっていても。

「待つことはできない」
ところがシトレは、俺がそんな質問をするのを見越したように答えてくる。
「艦隊司令部によると、帝国軍の侵攻が切迫しており、住民達の避難は、一刻の猶予もないとのことだ」
「増援は……」
「そんなわけで増援も間に合わない」
「………………」

まるで普通に会話しているようだ。
全てはお見通しか。
やっぱりコイツは狸だ。
それも何千年も生きてるかのような、古狸だ。


「宇宙海賊を抹殺せよ」
背後のパネルの光が強すぎて、その表情までも見えなくなったシトレが、重々しく、かつ、断固たる口調でもって命令した。

「今日から三日以内に抹殺せよ。
 いかなる犠牲を払っても。 いかなる損失を被っても。
 君達の手で。君達だけの手で、彼等を抹殺せよ。 
 捕虜の必要は認めない。
 そしてー」

最早、完全なる影だけとなった「ナニモノカ」が言う。

「彼等を帝国軍という事実は公表せず、あくまで宇宙海賊として葬りされ。
 あくまで無名の略奪者として葬りされ。
 グエン司令に命令する。
 抹殺せよ。彼等を抹殺せよ」

そう言うと、スクリーンは暗転する。
後には低いノイズが残るのみ。

 てめえは、科○隊、パリ本部のアラン隊員か!?
 てめえはもう、人間らしい心、失っちまったのかよー!!

俺は絶叫する。もちろんー
胸の中だけでね。 ……しくしく。


「エラい事になりましたね」
腕を三角巾で吊るしたトリューニヒトが、部屋の灯りを点けながら言った。
吹き飛ばされた時に強打したらしい。
聞けば脱臼程度で、どうという事もない ーだ、そうだ。 へえ……


「本艦一隻であの戦力と……」
「抹殺どころか、瞬殺されそうだ」
「無茶言ってくれる」
「やれやれ……だなぁ」
「難しいですね」
「あらあら……」

みんなが呟く。
そう。
何故か「 指揮官のみ閲覧 」の通信だったのに、その全てを主要幹部の全員が見ていた。

まっ、ぶっちゃけ。俺が見せたんだけどね。
秘密も時と場合による。
どんな情報も、いつ、どこで、どのうように部下に伝えるかは、指揮官の自由裁量だ。

 信頼第一
でなければ、こんな若造に誰も従いてきちゃくれねぇ。
俺はそう思っていた。
そしてそれこそが今回、俺がこの船に配属された理由。
俺が、サン・ミケーレ・アイランドに艦長兼司令官として送り込まれた理由。
そう分かっていた。

そう気付くだろうと、シトレが考えていたことも。
だから奴は言ったんだ。あえて。

 ー帝国軍と公表するな と。

バレバレの口止めだった。 『 全員 』に対する。
はぁぁぁぁ…..


「諸君。聞いてくれ」
だから俺は右手を上げ、みんなの口を封じると、ことさら重々しく言った。

「作戦を説明する。 これが 『 The only Neat Thing to do 』 だ」


 ****


「現在、総員の40パーセントまで退艦終了です」

グランマが報告してくる。

「医療部。主計部は、全員退艦完了。
 戦闘。航海。機関部は最小限の人員を残して退艦しました。
 整備部及び工作科は、スパルタニアン発艦後に退艦予定です」
「了解です。では副長も退艦なさってください」
「あらあら。私も残りますわ」
「は?」
「この船とのお付き合いも長いですから。最後まで看取ってあげないと」
「いや、しかし……」
「我々も最後までお付き合いさせていただきますぞ」
「機関長?」
振り向けば、そこにはトクナガ機関長を始め、シィマ航海長。ゴダイ砲雷長。アイバラ通信長といった各科の長が立っていた。

「我々、全員。ギリギリまでこの船に……」
トクナガ大尉が喰いつくかのような瞳で言う。
恐いよぉぉぉ……しくしく。


「これが『 The only Neat Thing to do 』 ってわけですか」
トリューニヒトが憮然として訊ねてくる。
「ああ、そうだ」
俺も憮然として答える。

トリューニヒトもまた、俺の副官という理由で、退艦を拒んだひとりだった。
 
  うん。強くなったね。

「それとても、海賊共を全部、抹殺することなんてできませんよ?」
「ああ。もちろん、無理だな」
「そんな!? それを分かっていて……」
「そうだ。分かっているからこそ、この作戦だ」
続々と輸送船SYー3に移乗していく兵士達を見ながら、俺は答えた。

「本当にそこまでする必要があるんですか?」
「ああ。 本当にそこまでする必要があるんだ」
「..................」
「どうした。この船に愛着でもわいてきたのか?」
「いえ、私は特に。 ですが......」
「うん?」
「彼等の心情を考えると……」
そう言うとトリューニヒトは、忙しく走り回る副長達に視線を向けた。

これから少し先の話し。
イゼルローン要塞を占領したヤンは、捕虜にした帝国軍兵士から、要塞の「やり残し」た仕事をさせてもらいたいー と、要望された時に
「愛着」という言葉で、それを許可した。
で、その時のヤンの気持ちが俺には良く分かった。

人は誰でも大切なモノを手放したくはないのだ。
「未練」と言ってもいい。
それが本人以外には、どんなにつまらないモノであっても。
それが本人以外には、なんの価値のないモノであっても。
人には命よりも大切なモノ。 が、あるのだ。

そんな乗組員達に、苦渋と悲しみの眼差しを浮かべるトリューニヒトの肩を、俺は強く叩いてやった。


 本当にこの男は、大化けするやもしれぬ。


「それでは回収地点で待機している」
「みんなぁ。死んだら駄目だよぉ。せめて私が手術出来るくらいには、生きて帰って来てねぇ」
あえての無表情で敬礼するムライに寄り添いながら、紅い髪と胸を揺らしながら、サド軍医長があえて笑いながら手を振った。

 了解。 了解。

「前進。速度三分の一」
俺はSYー3の指揮をムライに委ねると、サン・ミゲーレ・アイランドを、ゆっくりと発進させた。



 ****

「敵基地監視中のクレッグ機から入電。敵艦隊が活性化。出港の前兆と認む」
「司令!」
トリューニヒトが叫ぶ。

「よし」
俺は大きく頷くと命令を下した。

「ザキ大尉。空戦隊、全機出撃。打ち合わせ通り頼む」
「了解。野郎ども。聞いた通りだ。 いくぞ! 私について来い!」
「アイ・ショーティ!」
再び、妖精達の軌跡が宇宙(ソラ)に刻まれる。

「ナサダ技術長。空戦隊発艦後。整備部及び工作科は全員退艦」
「アイ・アイ・サー」
「機関部。トクナガ機関長。推力一杯。 
 シィマ航海長。航路を敵基地に固定。全速前進。
 各設定の終了後、機関部と航海部も、全員退艦せよ」
「アイ・スキッパー」

ドタバター と。
乗組員達の駆け出す足音が響く。
良かった。みな素直に退艦してくれて。
実は俺はもっと、みんながゴネるかと思っていたんだ。

そう。
俺はこの船。サン・ミケーレ・アイランドで、敵基地に特攻をかますつもりだった。


「あれぇ? パネルがない……」
とまどったようなトリューニヒトの声が響く。
「どうした中尉」
「はぁ、司令……あそこ。航路表のパネルがなくなっています」
「んん?」
見れば、航路表を示すパネルの一枚がなくなっている。

「うお。こっちではレバーの片方がない。ああ。あっちではスイッチが根こそぎ……
おおうっ。そっちでは、椅子がない! なんじゃこりゃ?」
「あらあら。機関部ではバルブやトルグの一部がなくなっているらしいですわ。 あと、板張り廊下の板や、水漏れするシャワーの蛇口。
 食堂のお皿や調理小物。船室のライトスタンド。軋むベッドのスプリング。とか……」
「副長、それって……」
「いい歳をして、みんな子供みたいですね。おほほ……」
グランマは俺の問いかけに、まるで卒業式の日に去りゆく先輩の第2ボタンをねだる、女学生のような微笑みで答えた。


「敵基地視認。空戦隊突入開始!」
「よしっ。 どハデにいくぜぇっっ。 
 砲雷長。ミサイル全弾発射。以降、火器管制を艦長席にシフト。
 通信長。ジャミング開始。処置終了後。両部署とも退艦開始」

まるで「無限ミサイル」か「たまに缶ビール」のような、無数のミサイルが敵基地に着弾する。
そこへ空戦隊が通り魔的に襲いかかった。

大型艦船に致命傷こそないが、小型艦や輸送艦。艦載機が爆発し、炎を上げる。
敵は大混乱に陥り始めた。

いざ、出撃! と気負ったその瞬間。
突然飛んできた無数のミサイルと、多数のスパルタイニアンによる奇襲的な攻撃で惑わされた挙句。
旧式とはいえ、空母がたった一隻で、しかも全速力で突入してくるのだ。
驚くな。 と、いう方が無理だろう。


「敵駆逐艦。急速接近!」
今やレーダー手を兼ねるトリューニヒトが報告してくる。
俺は管制パネルを操作すると主砲を撃ち放つ。
命中!
撃沈!とまではいかないまでも、かなりの打撃を与えたようだ。
よろよろと進路を外れていく。

もう一隻。今度は巡航艦がスパルタニアンの攻撃で爆発する。
その爆発に何隻かの砲艦と敵のスパルタニアンが巻き込まれる。
よし。いける!


 だが何事も、草々、上手くはいかない。


「敵艦隊、本艦を包囲するかのように展開中」
「構うな。このまま突っ込め!」
「敵艦発砲! ミサイルきます!」

ビームを浴びたバリアーが、真白く発光する。
俺の放った迎撃ミサイルに阻まれ、敵のミサイルが爆発する。
だが、とても全部は防ぎきれない。

 ードスンッ。グワンッ。 バカァンッ。
と爆音が艦内に響き、船体が揺れる。
サン・ミゲーレ・アイランドが激しく被弾する。

「あらあら。艦長。これ以上被弾すると船体がもちませんよ」
まるで明日の天気の話しでもするかのように、グランマが話しかけてくる。
だが、そう言う彼女も処理装置を使って、忙しく補修を行なっていた。

「敵艦隊。包囲を解き、前方に集結中。阻止線を張るようです」

 ードカン!
ひときわ大きな衝撃が襲う。

「司令。エンジン付近に被弾。速力低下します」
「了解」
くそ。どうすりゃいいのサ。
俺はとりあえず出力を維持しようと、圧力を上げようとして……

「艦長。そういう場合がこうするんです」
スピーカーから落ち着いた声が聞こえてくる。
「むやみに圧力を上がるより、逆にココとココの圧力弁を閉じれば……」
「機関回復しました。速力もどります」

「トクナガ機関長。いったい何故そこに……」
「被弾箇所の応急修理、こちらでも実行中。グランマ。お見事ですなぁ」
「あらあら」
「ナサダ技術長?」
機関長と同じように、スピーカーから物静かな声が響いてくる。

「司令。左舷弾幕薄いです。なにやってるんですか?」
「ゴダイ砲雷長?」
俺の右に立った砲雷長が、標準を合せ直す。

「被弾により、進路スレてます。修正。修正っと」
「シィマ航海長?」
俺の左に立った航海長が、進路を正す。

「ジャミング。全方位から収束して前方敵艦隊に集中します」
背後からダイヤルを回す音がする。

「アイバラ通信長まで……みな、何故、退艦していない!?」
「なあに。みんな司令と同じですよ」
「はあ?」
「そうですね……きっと」
アキノ副長が、全員の気持ちを代表するかのように言った。

「きっとこれが『 The only Neat Thing to do ーたったひとつの冴えたやり方 』ですね。おほほ」

…………
…………なんてみんな、お人好しな。

黙り込む俺に、みんなが、柔らかな微笑みを浮かべてくれた。


「あの敵のスパルタニアンのパイロットも、そうだったのかもしれませんね」
トリューニヒトがポツリ言った。
「あいつもそれが『 たったひとつの冴えたやり方 』だと思ったのかもしれませんね」

「死ぬつもりはない」
俺はきっぱりと言い切った。 
そんなの認めん。 逆立ちしたって、そんなの認めん。
特攻、だと? 体当たり、だと? 自爆、だと?

確かに俺達だって、俺たちだってな。
いつ、アイツと同じ運命になるかも知れない! でもだ。

「そんなのは認めん。絶対に認めんっ。  私は、こんな所で死ぬつもりはない」
そうサ。
俺はこんな所では死なない。
まだ、死なない。
あの時。あの場所まで。
俺は死なない。 死ぬはずがない。 いやー
 
 死ねない。

でもそれは……
俺は、全員の顔を見回しなが言い切った。

「それは、みんなも同じだ。誰ひとりとして死ぬことは許可しない。 ザキ大尉!」
「スワアァァァーーーーーーーーーーーーァ!」

不用心に密集した敵艦隊に、ザキ率いるスパルタニアン達が歓声を上げながら突入して行く。
たちまち巡航艦の一隻が爆発した。
敵は密集していたために、その懐に飛び込んだスパルタニアンに対応しきれない。
次々と射弾を浴び、爆炎を吹き上げる。
焦った敵は、闇雲に発弾し始め、ついには同士討ちまでが発生していた。

打ち合わせ通り。
まず空戦隊を囮として突っ込ませ。次に本艦を囮にして、敵艦隊の行動の自由を奪い。最後にやっぱり空戦隊で敵を撃滅する。

それが今回、俺が立てた作戦(というよりは、一種の賭けだネ)だった。
うん。思いの他、うまくハマったようだ。

 ーどごるヴぁぁぁっ!

と、また敵艦が華を咲かせる。 大輪の華が咲く。

 いまだ!

「トクナガ大尉! 出力一杯。機関、臨界出力。安全弁解除。
 シィマ中尉! 船体倒立。背中を敵に向けよ。
 ゴダイ中尉! フレアー全弾発射。赤外線チェフもだ。光学照準を狂わせろ。
 アイバラ少尉! ジャミング最大出力でブチかませ! 機材が壊れたって構わん。 
 我々が脱出するための時間をかせぐ。
 みな。これが本当に最後だ!」
俺は万感の想いを込めて、命令した。

 「総員退艦!!」


 ****

俺達は駆けていた。
狭い板張り廊下を一団となって駆けていた。
途中で、トクナガ機関長やナサダ技師長達とも無事合流。
最後に一隻だけ残しておいた救命艇の格納庫まで、一目散に駆けていた。

 ードズズルンッ
「あら?」
被弾の揺れに足を取られ、副長が転倒した。
「大丈夫ですか?」
「どうやら足をグネったみたい。立てませんわ。 おほほほほ」
相変わらずのグランマ・スマイルで答える。

「失礼します」
「あらあら」
ウムを言わさず。俺はグランマを背負うと、そのまま走り出した。
「まぁまぁ、この年になって……恥ずかしいですわ」
何故か赤面するグランマに、俺は軽いデジャヴを感じていた。

 あの時は幼女だったなぁ……


「これは......」
不意に俺の足が止まってしまう。
「うわあ......」
トリューニヒトの足も止まる。

見回す通路のあちこちに、それはあった。

 バカヤロー!
 ご苦労さま
 お疲れさん
 最後まで手間かけさせやがって
 お世話さま
 キル・ミー・ベイビー
 先に行っててくれ
 スマイル・スマイル
 Take care of yourself.
 いい子だったぜ  
 風が鳴いていますね
 我が良き友よ  
 お姫さま
 相棒
 コンチクショー!
 すぐに追いつく
 あばよ
 アデュー 
 グッバイ 
 Buona notte       そしてー
  

   さようなら
  

通路いっぱいに。
天井といわず、壁といわず、床といわず。
そこかしこに、そんなメッセージが書き込まれていた。
乗組員達の。 老兵達の。
この船の「子供達」の。
それぞれに、それぞれの「想い」が書き込まれていた。

そして最後の扉の前に立つ。
脱出艇区画に向かう最後の扉。
みんなが必ず通る最後の扉。
その前に立ち尽くす。 
そこにはたった一言。 こう書かれていた。


 【 ここからが、すべての始まり 】


 ****

宇宙(ソラ)では華が咲き誇っていた。
いろいろな色の華が、あちらこちらで、まるで競うかのように咲き誇っていた。

それはミサイルの炸裂であったり。
それはビームの蒼い閃光であったり。
それはフレアやチェフの燃炎であったり。
それは断末魔の最後の叫びであったり。

 美しい。

そんな綺麗な華々の中を、俺達は必死になって飛び抜けていった。
一度ならず、我々を乗せた脱出艇に向かって接近してくる、敵のスパルタニアンや砲艦がいたが、
その都度、王冠を載せた盾に獅子と馬に、真紅の薔薇の紋章をあしらった、ザキ大尉のスパルタニアンが、それらを追い払ってくれた。


「時間です」
グランマが静かに言う。
瞬間、振り返った俺の体を、短くも鮮烈な光が突き抜けて行った。
それが空母「サン・ミケーレ・アイランド」が最後に宇宙(ソラ)に咲かせた、ひときわ大きな美しい華の姿だった。


 ****

救命艇、SYー3に無事着艦。
空戦隊も次々と帰還してくる。

 戦果
巡航艦x3、駆逐艦x4、輸送艦x1・撃沈確実。 戦艦x1・撃破。 砲艦及びスパルタニアン 撃墜破多数。
そして敵基地の破壊に成功。

 損害
スパルタニアンx5(ただしパイロットは全員救出。 内、重傷1名は緊急手術により、一命を取り留めた)
そして軽空母x1・損失。

 大戦果!
と、誇っても良い戦績であった。 がー

気が付けば、誰もが「ムーンライト・SYー3」の甲板に立ち、静かに宇宙を見つめていた。
離れてゆく、遥かなる宇宙の一片に、じっと目を凝らしてした。
そこには、なんの歓声も。 なんの祝福もなかった。

ある者は目に涙を浮かべ。
ある者はそっと、敬礼し。
ある者は何事かをつぶやきながら。

誰もが静かに、その美しい星の海を見つめていた。
ただ静かに、空母「サン・ミケーレ・アイランド」が消えた星の海を見つめていた。


その、あふれんばかりに輝く星の海を見つめながら老兵達は、みな。
まるで赤ん坊のように ーわあわあ と、声を上げて泣きたい気持ちだった。





            エピローグに、つづく(ゴメンナサイ)
 





 名優・青野武氏のご冥福を、心からお祈りします。


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