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No.25264の一覧
[0] 【習作】一見スタイリッシュにファンタジー (オリジナル・ダンジョン系)[根っこ](2011/01/04 20:54)
[1] 第一話[根っこ](2011/01/04 20:50)
[2] 第二話[根っこ](2011/01/08 12:04)
[3] 第三話[根っこ](2011/05/07 23:29)
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[25264] 第二話
Name: 根っこ◆dc9bdb52 ID:edf474cb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/08 12:04
神殿地区、それはその名の通り神殿が集まった地区のことだ。
神々は基本的に対立したり争ったりしないので、それぞれの神殿もお互い気にせず乱立している。
どの国や街にも必ず神殿地区は存在知するが、やはりダンジョンがある街だとその区域が広い。
この街は美の神が作り出したダンジョンを中心にした、ダンジョンが出来て作り出された街なのでなおさら神殿が広いのだ(街全体の4割ぐらい)。
街が出来た流れを簡潔にまとめると『ダンジョン出来る → 神殿集まる → 人が集まる → 街が出来る』となるのだが、どのダンジョンのある街では例外なく神殿が2番目に来ている。
神々がそれぞれの神殿に啓示しているらしいが、商の神がダンジョンを作った時は次の日に商人(信徒達)の街が出来ていたという話は有名だ。
ちなみにこの世界は凄く広いので、世界中にダンジョンと国と街が出来上がっても領土問題は滅多に起こらないと言うか広すぎて人の方が足りない。

信じられない事に、この世界は水平な大地の上にあって今なお広がり続けていたりするが全く関係ないので気にしない事に。

それで神殿地区に着いたのだが、やはり商の神の神殿が大きい。
王族や貴族も訪れるのだから当然と言えば当然流通も激しくなり、商の神の信徒達も頑張っているのだろう。


窓口にいるのが知の神殿は眼鏡を掛けた青年、商の神殿は絶対に信徒じゃないだろう綺麗なお姉さん(後で聞けば美の神殿から派遣されているらしい)。
どっちを選ぶかなんて、美の神様が作り出したダンジョンに挑む者としては綺麗な方を選ぶのが真理。
窓口のお姉さんに話しかけたら執事服にが驚かれたが、少し談笑して授けられた褒美の鑑定を依頼しにきたのだと告げたら奥に案内される。
ダンジョンに挑戦している冒険者扱いで、王族とかを案内するだろう絨毯が引かれた通路とは別の通路を進むと出てきたのは何かの資料を読んでいる冴えないおっさんでした。
俺は他に来るだろう王族とかの挑戦者ではないので仕方が無いのだが、初見で鼻を鳴らされて『おら、見せろ』とか言われると頭にくるよね。
顔に浮かべるこれから長い付き合いになるだろう微笑は崩さず、今着ている執事服の鑑定を俺がイメージする執事らしく頼んだ。
おっさんは舌打ちしながら眼鏡を取り出し、紙とペンを取り出しながら俺の着ている執事服を見る。
父親も持っていたが、確か商の神から授けらるらしい鑑定専用の眼鏡だったはずだ。
つっても鑑定精度もピンキリで、実家の父親や長男の場合は『りんご:甘い』ぐらいの商人より果実農家の方が喜ばれるような鑑定具合。
カリカリと紙に書き終わったのか、面白くもなさそうにおっさんがペンを置いて左手を出してくる。
窓口に書かれていた鑑定料金を思い出し、規定の料金を支払い鑑定結果の書かれた紙を受け取った。
支払った料金が色付け無しできっちり払われているのを確認したおっさんが、こちらに聞こえる大きさで舌打ちしながら帰れと手を追い払うかのように振って読んでいた資料に眼を戻す。
顔は憶えたので、帰りに窓口でしっかりとおっさんの名前を閻魔帳的な意味で聞く事を決め、神殿の入り口に通じる通とを通りながら渡された紙を見た。


【 綺麗な執事服 】
・動きやすい
・汚れない
・破れない
・ポケットに物を多く詰め込める


まるで子供が適当に書き込んだかのような内容だが、俺はそれを見て微笑が深まり笑顔になろうとしていた口元を意識して押さえ込む。
この街に来てまだ3日、すぐにでも一生分の喜びを使い果たすのではないかと疑うぐらいにこの街は俺を喜ばせてくれる。
項目が4つ、鑑定したおっさんは父親の4倍程度にはやり手だろうが気づかなかったのだ。

動きやすい : どの程度?
汚れない  : 何をしても?
破れない  : 魔物の攻撃では?
ポケット  : 多くとはどれだけ詰め込める?

普通なら『~の重さに耐え切れる』とか『~の衝撃を受けると破損する』と書かれているはずの、やる気の感じられない鑑定結果。
それでも精度が高い、それこそ神殿の長が鑑定しても同じような鑑定結果になっただろう。
何故なら、神がそうした方が美しいとして授けた褒美なのだから。
動きにくい執事服より動きやすい執事服、汚れたり破けたりしたら美しくないし裾に隠れている専用ホルダーはまだしもポシェットはどう見ても邪魔だった。
戦いの神ではなくとも、神を基準として『動きやすい』となれば、それこそ美の神を基準とすれば。

この執事服を着ただけで、一切合財関係なく美しく動くことが出来るのだろう。


窓口でお姉さんと帰り際に談笑し、日も暮れてきたところで人目が無い場所を探し建物の裏路地に入り込んで屈伸。
体をほぐし、建物の壁と壁の距離を確認し、もう一度誰も見てないことを確かめ壁を押すようにして軽く蹴った。
反動で体が飛び出して、予想の範囲で言えば最大値のあたりと言える速度で反対側の壁に捻るかのように体を動かし壁へと着地。
そのまま上に飛び出すように壁を蹴り、最初に押し蹴った方の壁には行かないよう調節して月面宙返り。
壁に頭がぶつからない様に微調整、蹴った方の建物があっという間に下に見えたので体をさらに動かす。
想像通りに体が動き、慣性を無視し、建物の上に音も無く着地。
体の節々がちょっとした痛みを訴えているが無視できる程度で、慣れれば痛みも感じなくなるだろう。
広がる夜空を見上げながら、こんな場所で見つかれば不審者として捕まってしまうだろうと思考の冷静な部分か考え付く。
宿屋には建物の上を跳んで走って帰るのもありだが、どう考えてもリスクが高いから安全な方法を即実行。

気軽に建物から、高さで言えば3階建てマンションぐらいの高さから飛び降りた。

背中と腕部分を壁に当て、頭をこすらないよう気をつけながら落ちて行く。
痛くも無ければ熱くも無く、しっかりと減速しているのに体には僅かな振動しか伝わってこない。
地面へと落ちる前に本気で壁を蹴り、イメージ通りに最初の押し蹴った時より遅い速度で宙に舞う。
この執事服とは関係ない靴も、俺自身の身体能力も関係なく地面に静かに着地した。
確認すれば執事服の背中部分は当然のように、授かった時のままに新品同然の如く汚れも破けもせず存在している。

これが神の力、神から授かった道具、神の加護か。


最高の気分でそれを顔に出さず微笑を貼り付けたまま、宿屋に戻りダンジョンから戻ってきた時の焼き直しのようにベットに倒れこんだ。
今すぐにでもダンジョンに向かい、縦横無尽に暴れまわりたい衝動を抑え気分を落ち着ける。
少しずつ小出しに、最低限度を守りつつも出し惜しみながらダンジョンを進んで行くと決めた事を思い出し自らを諌めた。
明日のダンジョンで現れる魔物を、それに対する自分の動きを想像しつつゆっくりと眼を瞑る。
意識が落ちるまで微笑を浮かべ、無意識でも微笑を浮かべていろと俺自身に命令しながら。





神高画質なのに気持ち悪いほどにヌルヌル動く、人生とはまさに神の御業です。


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